特許第5935343号(P5935343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5935343-ケーブル 図000004
  • 特許5935343-ケーブル 図000005
  • 特許5935343-ケーブル 図000006
  • 特許5935343-ケーブル 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935343
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/02 20060101AFI20160602BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01B11/02
   H01B11/00 A
   H01B7/00 309B
   H01B7/18 H
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-9373(P2012-9373)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-149494(P2013-149494A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 智
(72)【発明者】
【氏名】越智 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小堀 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 多佳実
(72)【発明者】
【氏名】真山 裕平
【審査官】 月野 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−020981(JP,U)
【文献】 特開2002−298663(JP,A)
【文献】 特開2010−129200(JP,A)
【文献】 特開2010−198973(JP,A)
【文献】 特開2011−150896(JP,A)
【文献】 特開2010−146755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/17
H01B 11/00
H01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁体で覆った一対の絶縁電線を互いに撚り合わせ、これらの絶縁電線の周囲を内部シース及び外部シースからなるシースで覆ったケーブルであって、
前記導体は、複数本の素線を互いに撚り合わせた撚線を複数本集合させてさらに互いに撚り合わせてなり、
前記絶縁電線と前記シースとの密着力に対する前記導体と前記絶縁体との密着力の比が、0.59以上であることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルであって、
前記導体と前記絶縁体との密着力が、32N/35mm以上であることを特徴とするケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに撚り合わせた一対の絶縁電線を有するケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキシステム(ABS)などの各種制御システムにおいて、車輪速センサで発生した信号を伝送するABSセンサケーブルとして、2本の絶縁電線を撚り合わせ、外周をシースで覆った構造のものが使用されている。
この種のケーブルとしては、撚線導体に絶縁体を押出被覆した2本の絶縁電線を撚り合わせてツイストペアとした後、その外周に内部シースを押出被覆し、次いで、この内部シースの外周に外部シースを押出被覆したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/013291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のケーブルに対して端末加工を施す際には、外部シース及び内部シースを切断して軸方向へ引き抜くこととなる。ところが、絶縁電線の絶縁体が内部シースに密着しているため、外部シース及び内部シースを引き抜こうとすると、絶縁電線の絶縁体も引っ張られて伸びてしまうことがある。すると、外部シース及び内部シースを除去した際に、絶縁電線の絶縁体の長さが不揃いとなり、その後、絶縁体を除去して絶縁電線の導体を露出させる際に、露出寸法が所定寸法とならず、端末加工不良となるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、端末加工時に導体の露出寸法を所定寸法に揃えて良好に処理することが可能なケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明のケーブルは、
導体を絶縁体で覆った一対の絶縁電線を互いに撚り合わせ、これらの絶縁電線の周囲を内部シース及び外部シースからなるシースで覆ったケーブルであって、
前記導体は、複数本の素線を互いに撚り合わせた撚線を複数本集合させてさらに互いに撚り合わせてなることを特徴とする。
【0007】
本発明のケーブルにおいて、前記導体と前記絶縁体との密着力が、32N/35mm以上であることが好ましい。
【0008】
本発明のケーブルにおいて、前記絶縁電線と前記シースとの密着力に対する前記導体と前記絶縁体との密着力の比が、0.59以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーブルによれば、複数本の素線を互いに撚り合わせた撚線を複数本集合させて、さらに互いに撚り合わせて導体を構成したことで、導体の外周面に多数の細かい凹凸が形成される。それにより、導体の周囲に押出された絶縁体が導体の表面の凹凸に食い込む。また、導体の周囲に被覆した絶縁体と導体との接触面積が大きくなる。これらにより、導体と絶縁体との密着力が大きくなる。
これにより、シースを除去する際に絶縁体が導体に保持されて、絶縁体の伸びを抑制することができる。したがって、シースの除去後における絶縁電線の絶縁体の長さが揃い、絶縁体を除去して絶縁電線の導体を露出させる際に、導体の露出寸法を所定寸法に揃えて良好な端末加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るケーブルの一実施形態を示す断面図である。
図2】シースを除去する際の絶縁体の状態を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれケーブルの端部における概略側面図である。
図3】絶縁電線とシースとの密着力の測定の方法を示す測定箇所の概略斜視図である。
図4】導体と絶縁体との密着力の測定の方法を示す測定箇所の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るケーブル10は、一対の絶縁電線1を有している。
【0012】
このケーブル10は、例えば、ABSなどの各種制御システムにおいて、車輪速センサで発生した信号を伝送するABSセンサケーブルとして用いられる。なお、ケーブル10は、ABSセンサケーブル以外にも使用可能である。
このケーブル10を構成する絶縁電線1は、導体4とその外周を覆う絶縁体5からなる。一対の絶縁電線1は互いに撚り合わせられている。
【0013】
導体4は、錫銅合金からなるものであり、例えばその断面積は0.18mm以上0.30mm以下である。なお、導体4の錫銅合金における錫の濃度は例えば0.2質量%以上0.6質量%以下である。導体4には、軟銅線や硬銅線を使用することもできる。
【0014】
この導体4は、複数本の撚線4aを集合させて互いに撚り合わせて構成されている。さらに、導体4を構成する撚線4aは、複数本の素線4bを撚り合わせることで構成されている。つまり、導体4は、複数の素線4bを互いに撚り合わせた撚線4aを複数本集合させて、さらに互いに撚り合わせて構成されている。
撚線4aを構成する素線4bは、例えば、外径0.08mm程度とされており、撚線4aは、例えば、16本の素線4bを互いに撚り合わせて構成されている。そして、導体4は、例えば、3本の撚線4aを撚り合わせて構成されている。これにより、導体4は、例えば、合計で48本の素線4bから構成され、その外径は、約0.82mmとされている。
【0015】
導体4を覆う絶縁体5は、例えば、架橋難燃ポリエチレン(PE)から形成されている。この絶縁体5の外径である絶縁電線1の外径は、約1.4mmとされている。これにより、互いに撚り合わされた一対の絶縁電線1の撚り合わせの外径は、約2.8mmとされている。
【0016】
互いに撚り合わされた一対の絶縁電線1の周囲は、シース6によって覆われている。シース6は、介在である内部シース2と外被である外部シース3とからなる二層構造になっている。
内部シース2は、一対の絶縁電線1の周囲に押出被覆されたものであり、例えば、架橋難燃ポリエチレン(PE)から形成されている。内部シース2は、ケーブル10の横断面における真円度を向上させる機能も有する。そして、この内部シース2の外径は、約3.4mmとされている。
【0017】
外部シース3は、内部シース2の周囲に押出被覆されたものであり、例えば、架橋難燃熱可塑性ポリウレタン(TPU)から形成されている。そして、外部シース3の外径であるケーブル10の外径は、約4.0mm程度の細径とされている。
【0018】
導体4は、複数本の素線4bを互いに撚り合わせた複数本の撚線4aをさらに互いに撚り合わせて構成されている。これにより、導体4は、その外周面に多数の細かい凹凸が形成される。したがって、この導体4の周囲に押出被覆された絶縁体5は、導体4の周囲の凹凸に食い込む。また、絶縁体5は導体4との界面の接触面積が大きくなる。これらにより導体4と絶縁体5との密着力が大きくなる。これにより、導体4と絶縁体5との密着力は、32N/35mm以上になる。そして、絶縁電線1とシース6との密着力(絶縁体5と内部シース2との密着力)に対する導体4と絶縁体5との密着力の比が、0.59以上となっている。
【0019】
上記のケーブル10を製造するには、まず、一対の絶縁電線1を互いに撚り合わせ、その周囲に、架橋難燃ポリエチレンを押出被覆することにより、内部シース2を形成する。内部シース2を形成することにより、絶縁電線1を撚り合わせた表面の凹凸(撚り波)が埋められて断面略円形の丸線形状になる。
次に、内部シース2の周囲に、架橋難燃熱可塑性ポリウレタンを押出被覆することにより、外部シース3を形成する。これにより、内部シース2と外部シース3とからなるシース6によって一対の絶縁電線1が被覆されてケーブル10となる。
【0020】
ケーブル10に対して端末加工を施す際には、まず、外部シース3及び内部シース2からなるシース6を端部から所定の長さの位置で切断して軸方向へ引き抜き、絶縁電線1を露出させる。その後、露出させた絶縁電線1の絶縁体5を除去し、導体4を所定の寸法で露出させる。
【0021】
絶縁電線1の絶縁体5が内部シース2に密着しているため、従来構造のケーブルでシース6を引き抜こうとすると、図2(a)に示すように、絶縁電線1の絶縁体5には、引き抜かれるシース6との密着力による引っ張り力Fが生じる。また、絶縁体5は、導体4との間の密着力によって引っ張り力Fに対抗する2本分の抗力fが生じる。このとき、絶縁体5の導体4との密着力が小さいと抗力fも小さくなる。そして、2本の絶縁電線1の抗力fが引っ張り力Fよりも小さいと(F>f)、絶縁電線1の絶縁体5が、引き抜かれるシース6によって引っ張られて伸びてしまい、絶縁電線1の絶縁体5の長さが不揃いとなることがある。すると、その後に絶縁体5を除去して絶縁電線1の導体4を露出させる際に、導体4の露出寸法が所定寸法とならず、端末加工不良となってしまう。
【0022】
本実施形態に係るケーブル10によれば、複数本の素線4bを互いに撚り合わせた複数本の撚線4aをさらに互いに撚り合わせて導体4を構成したことで、導体4の外周面に多数の細かい凹凸が形成される。したがって、導体4の周囲の凹凸に絶縁体5が食い込み、また、この導体4の周囲に被覆した絶縁体5の導体4との界面の接触面積が大きくなって、導体4と絶縁体5との密着力を大きくすることができる。具体的には、導体4と絶縁体5との密着力は、32N/35mm以上にできる。これにより、絶縁電線1とシース6との密着力に対する導体4と絶縁体5との密着力の比が大きくなる。具体的には、絶縁電線1とシース6との密着力に対する導体4と絶縁体5との密着力の比を、0.59以上とすることができる。
【0023】
これにより、図2(b)に示すように、絶縁体5では、導体4との間の密着力による引っ張り力Fに対抗する2本の絶縁電線1の抗力fが大きくなり、2本分の抗力fが引っ張り力F以上であると(F≦f)、シース6を除去する際の絶縁体5の伸びを抑制することができる。したがって、シース6の除去後における絶縁電線1の絶縁体5の長さが揃えられ、絶縁体5を除去して絶縁電線1の導体4を露出させる際に、導体4の露出寸法を所定寸法に揃えて良好な端末加工を行うことができる。
【実施例】
【0024】
互いに撚り合わせた一対の絶縁電線1の外周をシース6で被覆した各種(表1参照)のケーブル10を製造し、それぞれのケーブル10について、密着力測定、密着力比の算出、伸び測定及び端末加工の良否判定を行った。
【0025】
【表1】
【0026】
〈試験対象ケーブル〉
(実施例1)
(1)ケーブル外径:4.0mm
(2)導体
導体サイズ:0.25mm、導体構成:外径0.08mmの素線を16本撚り合わせた3本の撚線をさらに撚り合わせる、材質:錫銅合金、撚外径:0.82mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.4mm、撚外径:2.8mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:3.4mm
(4−2)外部シース
材質:架橋難燃熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:4.0mm
【0027】
(実施例2)
(1)ケーブル外径:4.0mm
(2)導体
導体サイズ:0.25mm、導体構成:外径0.08mmの素線を16本撚り合わせた3本の撚線をさらに撚り合わせる、材質:錫銅合金、撚外径:0.82mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.4mm、撚外径:2.8mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:3.4mm
(4−2)外部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:4.0mm
【0028】
(実施例3)
(1)ケーブル外径:4.3mm
(2)導体
導体サイズ:0.25mm、導体構成:外径0.08mmの素線を16本撚り合わせた3本の撚線をさらに撚り合わせる、材質:錫銅合金、撚外径:0.82mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.45mm、撚外径:2.9mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:3.6mm
(4−2)外部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:4.3mm
【0029】
(実施例4)
(1)ケーブル外径:3.4mm
(2)導体
導体サイズ:0.18mm、導体構成:外径0.08mmの素線を12本撚り合わせた3本の撚線をさらに撚り合わせる、材質:錫銅合金、撚外径:0.71mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.2mm、撚外径:2.4mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:2.9mm
(4−2)外部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:3.4mm
【0030】
(比較例1)
(1)ケーブル外径:4.0mm
(2)導体
導体サイズ:0.25mm、導体構成:外径0.08mmの素線を48本撚り合わせた撚線、材質:錫銅合金、撚外径:0.65mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.4mm、撚外径:2.8mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:3.4mm
(4−2)外部シース
材質:架橋難燃熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:4.0mm
【0031】
(比較例2)
(1)ケーブル外径:4.0mm
(2)導体
導体サイズ:0.25mm、導体構成:外径0.08mmの素線を48本撚り合わせた撚線、材質:錫銅合金、撚外径:0.65mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.4mm、撚外径:2.8mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:3.4mm
(4−2)外部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:4.0mm
【0032】
(比較例3)
(1)ケーブル外径:3.4mm
(2)導体
導体サイズ:0.18mm、導体構成:外径0.08mmの素線を36本撚り合わせた撚線、材質:錫銅合金、撚外径:0.56mm
(3)絶縁体
材質:架橋難燃ポリエチレン(PE)、外径:1.2mm、撚外径:2.4mm
(4)シース
(4−1)内部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:2.9mm
(4−2)外部シース
材質:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、外径:3.4mm
【0033】
〈測定方法及び判定方法〉
(1)密着力測定
(1−1)絶縁電線とシースとの密着力
図3に示すように、シース6の部分の長さを35mmとしたケーブル10の端部から露出された一対の絶縁電線1をダイス21に形成された挿通孔21aに通し、ダイス21をシース6の端面に当接させる。一対の絶縁電線1の先端をクランパ22でクランプし、クランパ22をダイス21から離間する方向(図3中矢印方向)へ引っ張る。これにより、35mmの長さにわたりシース6から絶縁電線1を引き抜く。このときの最大の力を密着力として測定する。なお、絶縁電線1をシース6から引き抜く際の引き抜き速度は、100mm/分とする。
(1−2)導体と絶縁体との密着力
図4に示すように、絶縁体5の部分の長さを35mmとした絶縁電線1の端部から露出された導体4をダイス31に形成された挿通孔31aに通し、ダイス31を絶縁体5の端面に当接させる。導体4の先端をクランパ32でクランプし、クランパ32をダイス31から離間する方向(図4中矢印方向)へ引っ張る。これにより、35mmの長さにわたり絶縁体5から導体4を引き抜く。このときの最大の力を密着力として測定する。なお、導体4を絶縁体5から引き抜く際の引き抜き速度は、100mm/分とする。
(1−3)密着力比
絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)に対する導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)の比(密着力2/密着力1)を算出する。
(2)伸び測定
シース6を構成する内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法を測定する。
(3)良否判定
シース6を構成する内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸びが1mm以下である場合を合格(○)とし、絶縁体5の伸びが1mmを超える場合を不合格(×)とする。
【0034】
(評価試験結果)
上記の測定結果及び判定結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例1〜4)
実施例1では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は60N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は37N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.61となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、0mm〜0.3mmであった。
実施例2では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は63N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は37N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.59となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、0.3mm〜0.5mmであった。
実施例3では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は61N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は41N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.67となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、0mm〜0.2mmであった。
実施例4では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は53N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は32N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.60となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、0mm〜0.3mmであった。
このように、実施例1〜4では、何れも導体4と絶縁体5との密着力が高い値(32N/35mm以上の高い値)となり、密着力比が0.59以上となった。
そして、これらの実施例1〜4では、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法が1mm以下であり、全て合格(○)となった。
【0037】
(比較例1〜3)
比較例1では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は60N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は20N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.33となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、1.0mm〜1.2mmであった。
比較例2では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は58N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は19N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.33となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、1.0mm〜1.5mmであった。
比較例3では、絶縁電線1とシース6との密着力(密着力1)は53N/35mmであった。また、導体4と絶縁体5との密着力(密着力2)は17N/35mmであった。そして、これらの密着力の比(密着力2/密着力1)は、0.32となった。また、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法は、1.5mm〜2.0mmであった。
このように、比較例1〜3では、何れも導体4と絶縁体5との密着力が低い値(32N/35mmより低い値)となり、密着力比が0.59よりも低くなった。
そして、これらの比較例1〜3では、内部シース2及び外部シース3を同時に除去して絶縁電線1を露出させた際の絶縁体5の伸び寸法が1mmを超えてしまい、全て不合格(×)となった。
【符号の説明】
【0038】
1:絶縁電線、2:内部シース、3:外部シース、4:導体、4a:撚線、4b:素線、5:絶縁体、6:シース、10:ケーブル
図1
図2
図3
図4