(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼管側へ移動された前記試料ボート移動棒を前記試料導入部側へ引き戻す際に、前記温度センサの温度測定値に基づいて、前記試料ボート移動棒が所定温度以下の温度で前記シール部材に接触するように引き戻し量を制御しながら前記試料ボート移動棒を移動させるための制御部をさらに備え、
前記ボート操作機構は、前記制御部の指示に沿って前記試料ボート移動棒を移動させるための駆動手段を備えている請求項1に記載の試料加熱装置。
【背景技術】
【0002】
液体や固体などの試料を試料ボートに載せて加熱する前処理を行なう試料加熱装置がある(例えば特許文献1を参照。)。このような試料加熱装置は例えば試料中の炭素分の測定に用いられる。
【0003】
図8は従来の試料加熱装置の概略的な構成図である。
試料導入部101の内部空間103にキャリアガスと支燃ガスを兼ねる酸素が常時一定流量で流されている。カバー105が開けられ、試料を収容した試料ボート107が試料ボートホルダ109に載せられる。その後、カバー105は閉じられる。試料ボートホルダ109は試料ボート移動棒111に固定されている。内部空間103の気密性を維持するために試料ボート移動棒111と試料導入部101の間にシール部材113が配置されている。
【0004】
試料導入部101の内部空間103に燃焼管115が連結されている。燃焼管115の内部に酸化触媒117が配置されている。燃焼管115は加熱炉119によって所定の温度に加熱されている。
【0005】
試料ボート107は、試料ボート移動棒111の操作によって試料ボートホルダ109とともに燃焼管115内へ移動される。試料ボート107に収容された試料は燃焼管115内で加熱される。試料中の炭素分が酸化及び分解されて二酸化炭素が発生する。発生した二酸化炭素はキャリアガスとともに二酸化炭素検出器に導かれる。二酸化炭素検出器は発生した二酸化炭素量を測定する。
【0006】
測定終了後、試料ボート107は、試料ボート移動棒111の操作によって内部空間103まで引き戻される。その後、カバー105が開けられて試料ボート107は内部空間103から取り出される。
【0007】
測定が行なわれている間、試料ボート移動棒111は、その先端側が燃焼管115内に配置され続けるので非常に高温になる。測定終了後、試料ボート移動棒111の先端側が高温な状態で試料ボート107が内部空間103まで引き戻されると、試料ボート移動棒111のシール部材113が損傷する。
【0008】
シール部材113の損傷を防止するために、例えば、試料ボート移動棒111のストロークの約1/2が引き戻され(以後「冷却位置」と呼ぶ。)、その位置で30秒保持される(以後「待ち時間」又は「冷却時間」と呼ぶ。)。冷却位置での待ち時間中に、試料ボート移動棒111の先端側の温度が低下する。待ち時間が経過した後、試料ボート107は内部空間103まで引き戻される。この待ち時間は、予め実験的に求めることが必要である。また、この待ち時間は加熱炉119の設定温度にも依存する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、試料加熱装置の一態様の一実施例を説明するための概略的な構成図である。
図2は、この実施例の試料ボート移動棒の気密シール近傍を拡大して示した概略的な断面図である。
【0021】
試料加熱装置1は、試料導入部3、燃焼管5、加熱炉7、ボート操作機構9、温度センサ11及び制御部13を備えている。
試料導入部3は、キャリアガスが供給される内部空間15、及び試料ボート出入口開閉機構17を備えている。
【0022】
燃焼管5は、試料導入部3の内部空間15に連結されている。燃焼管5は例えば石英ガラス製である。燃焼管5の内部に酸化触媒19が配置されている。キャリアガスは内部空間15から燃焼管5内へ流入する。
加熱炉7は燃焼管5を所定の温度に加熱するものである。
【0023】
ボート操作機構9は、試料ボート移動棒21と、試料ボートホルダ23と、シール部材25と、モータ27(駆動手段)とを備えている。ボート操作機構9は、試料導入部3の内部空間15内の試料ボート設置位置に配置された試料ボート29を燃焼管5内へ移動させるためのものである。試料ボート移動棒21は内部空間15の外部から操作可能に配置されている。試料ボートホルダ23は試料ボート29を保持するためのものである。
【0024】
シール部材25は、試料導入部3と試料ボート移動棒21との間に配置され、内部空間15の気密を維持する。シール部材25は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製Oリングである。
【0025】
モータ27は、制御部13の指示に沿って試料ボート移動棒21を移動させるためのものである。モータ27の回転に応じて試料ボート移動棒21を移動させる機構の図示は省略されている。
試料ボート29は例えばセラミック製である。
【0026】
温度センサ11は、試料ボート移動棒21の温度を測定するためのものである。温度センサ11は、例えば、内部空間15内で試料ボート移動棒21に当接された熱電対によって構成されている。温度センサ11は、試料ボート移動棒21とシール部材25の接触位置の近傍に配置されている。
【0027】
制御部13は、モータ27の駆動を制御する。燃焼管5側へ移動された試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ引き戻す際には、制御部13は、温度センサ11の温度測定値に基づいて、試料ボート移動棒21が所定温度以下の温度でシール部材25に接触するように引き戻し量を制御しながら試料ボート移動棒21を移動させる。
【0028】
図3は、燃焼管側へ移動された試料ボート移動棒を引き戻す際の動作を説明するためのフローチャートである。
制御部13は、測定終了後、燃焼管5側へ移動された試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ引き戻すために、温度センサ11による温度測定を行なう(ステップS1)。
【0029】
制御部13は、温度センサ11が接触されている位置の試料ボート移動棒21の温度が予め設定された温度、例えば120℃以下であるかどうかを判断する(ステップS2)。試料ボート移動棒21において、温度センサ11の接触位置は、シール部材25の接触位置とは間隔をもっているが、温度センサ11の接触位置の温度を測定すればシール部材25の接触位置の温度を把握できる。これにより、シール部材25との接触位置における試料ボート移動棒21の温度が所定温度以下の温度であるかどうかを判断する。
【0030】
制御部13は、温度センサ11との接触位置の試料ボート移動棒21の温度が120℃以下であると判断した時(Yes)、モータ27を駆動させて試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ予め設定された距離、例えば5mm(ミリメートル)移動させる(ステップS3)。
【0031】
制御部13は、試料ボート移動棒21が試料ボート設置位置まで引き戻されたかどうかを判断する(ステップS4)。
制御部13は、試料ボート移動棒21が試料ボート設置位置まで引き戻されていないと判断した時(No)、ステップS1に戻って温度センサ11による温度測定を行なう。
【0032】
制御部13は、ステップS2で温度センサ11との接触位置の試料ボート移動棒21の温度が120℃よりも高いと判断した時(No)、ステップS1に戻って温度センサ11による温度測定を行なう。制御部13がステップS1とS2の処理を繰り返している間に、試料ボート移動棒21の温度が低下する。制御部13は、温度センサ11との接触位置の試料ボート移動棒21の温度が120℃以下になった時(Yes)、ステップS3に進んで試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ5mm移動させる(ステップS3)。
【0033】
制御部13は、ステップS4で試料ボート移動棒21が試料ボート設置位置まで引き戻されたと判断した時(Yes)、試料ボート移動棒21を引き戻す動作を終了する。
【0034】
このように、試料加熱装置1は、試料ボート移動棒21の温度を測定するための温度センサ11を備えている。これにより、試料加熱装置1は、温度センサ11の温度測定値に基づいて、シール部材25との接触位置における試料ボート移動棒21の温度を把握することができるので、十分な余裕をもった不必要に長い待ち時間を設定する必要がない。したがって、試料加熱装置1は、試料ボート移動棒21のシール部材25の損傷を防止しつつ、燃焼管5から試料ボート29を引き戻す時間を短縮することができる。ひいては、試料加熱装置1は、十分な余裕をもった待ち時間を設定する場合に比べて、測定時間を短縮することができる。
【0035】
ところで、
図8に示された従来の試料加熱装置が使用される場合、上述のように、燃焼管115から試料ボート107を引き戻す際の冷却位置及び待ち時間の設定が必要である。この待ち時間は加熱炉119の設定温度に依存するので、加熱炉119の設定温度を変更するごとに待ち時間を変更しなければならない。また、加熱炉119の設定温度が高い場合は、冷却位置を複数設ける必要が生じる。
【0036】
本発明の試料加熱装置は、温度センサの温度測定値に基づいて、シール部材との接触位置における試料ボート移動棒の温度を把握することができるので、上記の冷却位置及び待ち時間を設ける必要がない。したがって、本発明の試料加熱装置は、加熱炉の設定温度に変更があった場合や加熱炉の設定温度が高い場合であっても、最短の引き戻し時間を得ることができる。
【0037】
図4は、試料加熱装置の一態様の他の実施例を説明するための概略的な構成図である。
図4において
図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されており、それらの部分の説明は省略される。
【0038】
この実施例の試料加熱装置31は、
図1に示された試料加熱装置1と比較して、制御部13及びモータ27を備えておらず、表示部33を備えている。表示部33は、温度センサ11の温度測定値を表示するためのものである。
【0039】
試料ボート移動棒21の移動は操作者によって行なわれる。操作者は、測定終了後、燃焼管5側へ移動された試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ引き戻す際に、表示部33に表示された温度を確認しながら試料ボート移動棒21を操作する。
【0040】
操作者は、表示部33に表示された温度がシール部材25を損傷させない温度、例えば120℃を超えたときには試料ボート移動棒21の引き戻し操作を停止する。操作者は、表示部33に表示された温度が120℃以下になったことを確認した後、試料ボート移動棒21を徐々に、例えば5mmずつ引き戻す。
【0041】
最終的に、操作者は、試料ボート移動棒21を試料ボート設置位置まで引き戻して、試料ボート移動棒21の引き戻し操作を終了する。これにより、操作者は、シール部材25を損傷させることなく、最短の引き戻し時間で、試料ボート移動棒21の引き戻し操作を行なうことができる。
【0042】
なお、表示部33は、上記実施例では温度センサ11の温度測定値を表示するものであるが、シール部材25を損傷させない温度であるか否かを温度数値以外の方法で表示する機能を有するものであってもよい。例えば、表示部33は、ランプの点灯と消灯によって、試料ボート移動棒21における温度センサ11との接触位置の温度、ひいてはシール部材25との接触位置の温度が予め設定されたシール部材25を損傷させない温度以下であるか否かを表示するものであってもよい。この場合も、操作者は、表示部33の表示に基づいて、試料ボート移動棒21の引き戻し操作を行なう。
【0043】
図5は、元素分析計の一実施例を説明するための概略的な構成図である。この実施例では、本発明の元素分析計をTOC(Total Organic Carbon)計に適用した。
【0044】
TOC計は、TC(Total Carbon)測定用の試料加熱装置1と、IC(Inorganic Carbon)測定用の試料加熱装置35とを備えている。試料加熱装置1と試料加熱装置35は直列に接続されている。
【0045】
TC測定用の試料加熱装置1は
図1を参照して説明したものと同じである。加熱炉7の炉温度は例えば900℃に設定される。キャリアガス供給部37から支燃ガスを兼ねるキャリアガス(酸素)が内部空間15へ連続的に例えば500mL/min(ミリリットル/分)の流量で導入される。キャリアガスは、試料加熱装置1、冷却管39、除湿部41、試料加熱装置35、再度除湿部41を経て、例えば非分散形赤外線ガス分析計(NDIR)からなる検出器43へと流れる。なお、符号45,47は冷却用ファンである。
【0046】
TC測定用の試料加熱装置1において、試料が収容された試料ボート29は、試料導入部3の試料ボート出入口開閉機構17から内部空間15内へ入れられ、試料ボートホルダ23に搭載される。試料ボート出入口開閉機構17が閉じられた後、例えば120秒間の待機時間が設けられる。これにより、試料ボート出入口開閉機構17の開閉時に内部空間15を介して分析計流路内に流入した大気を分析計外に完全に流出させる。検出器43のベースラインが安定したことが確認された後、制御部13は、モータ27を駆動させて試料ボート移動棒21を移動させ、試料ボート29を燃焼管5内に挿入する。なお、検出器43のベースラインの確認が省略されて、試料ボート出入口開閉機構17が閉じられてから所定時間が経過した後に試料ボート29が燃焼管5内に挿入される構成であってもよい。
【0047】
燃焼管5内で試料中の有機物は蒸発したり分解したりして酸素を含むキャリアガスと共に酸化触媒19に達し、触媒の作用によりすべての有機物が酸化されて二酸化炭素ガスとなる。この二酸化炭素ガスは、キャリアガスと共に冷却管39、除湿部41、試料加熱装置35、再度除湿部41を経て、検出器43に導かれて試料中のTCが測定される。NDIRからなる検出器43は、流入する二酸化炭素ガスをベースライン上のピークとして捉え、その面積から二酸化炭素量を測定する。測定終了後、制御部13は、
図3を参照して説明された引き戻し動作によって試料ボート移動棒21を引き戻す。
【0048】
IC測定用の試料加熱装置35は、基本的には、TC測定用の試料加熱装置1と同様の構成である。IC測定用の試料加熱装置35において、TC測定用の試料加熱装置1と同じ機能を果たす部分にはTC測定用の試料加熱装置1と同じ符号が付されている。
【0049】
IC測定用の試料加熱装置35において、試料が収容された試料ボート29は、試料導入部3の試料ボート出入口開閉機構17から内部空間15内へ入れられ、試料ボートホルダ23に搭載される。試料ボート出入口開閉機構17が閉じられた後、例えば120秒間の待機時間が設けられる。この待機時間の経過後に、酸分注器から試料ボート29内の試料に無機酸が添加される。酸としては、不揮発性酸であるリン酸が好適である。検出器43のベースラインが安定したことが確認された後、制御部13は、モータ27を駆動させて試料ボート移動棒21を移動させ、試料ボート29を燃焼管5内に挿入する。
【0050】
IC測定用の試料加熱装置35において、加熱炉7の加熱温度は、TC測定用の試料加熱装置1の加熱炉7に比べ比較的低温、例えば200℃である。ここでは試料中のIC成分と酸との反応が促進され、さらには加熱による攪拌や追い出し作用を受けて、反応によって変換生成された二酸化炭素の気相への抽出が迅速に行なわれる。抽出された二酸化炭素ガスはキャリアガスと共に除湿部41を経て検出器43に導かれて、TC測定と同様に、試料中のICが測定される。IC測定用の試料加熱装置35へのキャリアガスの供給は、キャリアガス供給部37からTC測定用の試料加熱装置1、冷却管39、除湿部41を経て行なわれる。測定終了後、制御部13は、
図3を参照して説明された引き戻し動作によって試料ボート移動棒21を引き戻す。
【0051】
図6は、試料加熱装置の他の態様の一実施例を説明するための概略的な構成図である。
図6において、
図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0052】
試料加熱装置51は、試料導入部3、燃焼管5、加熱炉7、ボート操作機構9及び制御部53を備えている。試料加熱装置51における試料導入部3、燃焼管5、加熱炉7、ボート操作機構9の構成は、
図1に示された試料加熱装置1のものとほぼ同じである。ただし、試料加熱装置51は、
図1に示された試料加熱装置1と比較して温度センサ11を備えていない。
【0053】
制御部53は、モータ27の駆動と加熱炉7の温度を制御する。燃焼管5側へ移動された試料ボート移動棒21を試料導入部3側へ引き戻す際には、制御部53は、加熱炉7の温度に対応する冷却時間の間、試料ボート移動棒21を留まらせるように、モータ27の駆動を制御して試料ボート移動棒21を移動させる。
【0054】
制御部53は、加熱炉7が設定温度になるように加熱炉7の動作を制御する。なお、加熱炉7の温度の制御は、制御部53とは別の制御系によって行われてもよい。この場合、制御部53に、加熱炉7の設定温度及び測定温度のうちの少なくとも一方の情報が入力される。
【0055】
燃焼管側へ移動された試料ボート移動棒を引き戻す際の動作を説明する。
制御部13は、測定終了後、モータ27の駆動を制御して、燃焼管5側へ移動された試料ボート移動棒21を冷却位置まで引き戻す。冷却位置は、例えば、試料ボート移動棒21のストロークの約1/2の位置である。ただし、冷却位置は、この位置に限定されず、シール部材25の損傷を防止しつつ、試料ボート移動棒21を冷却できる位置であればよい。
【0056】
制御部13は、モータ27の駆動を停止させて、試料ボート移動棒21を所定の冷却時間の間、冷却位置に留まらせる。冷却時間は加熱炉7の温度に応じて設定される。例えば、冷却時間は加熱炉7の設定温度に基づいて制御部53によって自動で算出される。例えば、加熱炉7の設定温度が900℃の場合、冷却時間は30秒に設定される。また、加熱炉7の設定温度が200℃の場合、冷却時間は10秒に設定される。なお、加熱炉7の温度を測定するセンサを設置して、冷却時間は加熱炉7の測定温度に基づいて算出されるようにしもよい。
【0057】
冷却時間の算出方法は、例えば、加熱炉7の温度と冷却時間との関係を示す予め求められた関数を用いてもよいし、加熱炉7の温度と冷却時間との関係を示すテーブルを用いてもよい。
【0058】
制御部13は、冷却時間の経過後、モータ27の駆動を制御して、試料ボート移動棒21を試料ボート設置位置(試料ボート29が交換される位置)まで引き戻す。このとき、試料ボート移動棒21はシール部材25を損傷させない程度に十分に冷却されている。
【0059】
操作者の手動によって試料ボート移動棒21の操作が行われると、試料ボート移動棒21が十分に冷却される前に試料ボート設置位置まで引き戻されることがあった。
これに対し、試料加熱装置51は、操作者の誤操作に起因する試料ボート移動棒21の冷却不足を排除できる。したがって、試料加熱装置51は、試料ボート移動棒21の冷却不足に起因するシール部材25の損傷を防止することができる。また、操作者の火傷を未然に防ぐ安全面の効果も得られる。
【0060】
さらに、試料ボート移動棒21を冷却位置で留まらせる冷却時間は加熱炉7の温度に応じて決定されるので、加熱炉7が低温に設定されているときは、加熱炉7が高温に設定されているときに比べて冷却時間が短くなる。したがって、試料加熱装置51は、燃焼管5から試料ボート29を引き戻す時間の短縮、ひいては測定時間の短縮も実現できる。
【0061】
上記実施例では、制御部53は、試料ボート移動棒21を冷却位置まで引き戻した後、モータ27の駆動を停止させて、試料ボート移動棒21を所定の冷却時間の間、冷却位置に留まらせるが、試料ボート移動棒21の引き戻し動作はこれに限定されない。
【0062】
例えば、冷却位置は、複数設けられていてもよいし、試料ボート移動棒のストロークのうちの一部の範囲で設定されていてもよい。
複数の冷却位置が設けられている場合、試料ボート移動棒は、冷却位置ごとに停止され、間欠的に引き戻される。
また、冷却位置が試料ボート移動棒のストロークのうちの一部の範囲で設定されている場合、試料ボート移動棒は、冷却位置の範囲において、比較的遅い移動速度で移動されて、冷却される。
【0063】
図7は、元素分析計の他の実施例を説明するための概略的な構成図である。
図7において、
図5と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0064】
この実施例のTOC計は、TC測定用の試料加熱装置51と、IC測定用の試料加熱装置55とを備えている。
図5に示されたTOC計の実施例と比較すると、この実施例のTOC計は、
図5の試料加熱装置1に替えて試料加熱装置51を備え、
図5の試料加熱装置35に替えて試料加熱装置55を備えている。
【0065】
TC測定用の試料加熱装置51は
図6を参照して説明したものと同じである。
この実施例のTOC計におけるキャリアガスの流れ及びTC測定用の試料加熱装置51の動作は、
図5を参照して説明したキャリアガスの流れ及びTC測定用の試料加熱装置1の動作と同様である。ただし、TC測定が終了した後に行われる試料ボート移動棒21を引き戻す際の動作は試料加熱装置51の制御部53によって行われる。制御部53の制御による試料ボート移動棒21の引き戻し動作は、
図6を参照して説明したとおりである。
【0066】
IC測定用の試料加熱装置55は、基本的には、TC測定用の試料加熱装置51と同様の構成である。IC測定用の試料加熱装置55において、TC測定用の試料加熱装置51と同じ機能を果たす部分にはTC測定用の試料加熱装置51と同じ符号が付されている。
【0067】
IC測定用の試料加熱装置55の動作は、
図5を参照して説明したIC測定用の試料加熱装置35の動作と同様である。ただし、IC測定が終了した後に行われる試料ボート移動棒21を引き戻す際の動作は試料加熱装置55の制御部53によって行われる。制御部53の制御による試料ボート移動棒21の引き戻し動作は、
図6を参照して説明したとおりである。
【0068】
なお、TC測定用の試料加熱装置51において加熱炉7の炉温度は例えば900℃に設定される。また、IC測定用の試料加熱装置55において、加熱炉7の加熱温度は、TC測定用の試料加熱装置51の加熱炉7に比べ比較的低温、例えば200℃に設定される。
【0069】
TC測定用の試料加熱装置51及びIC測定用の試料加熱装置55において、制御部53は、加熱炉7の温度に対応する冷却時間の間、試料ボート移動棒21を冷却位置で留まらせる。したがって、IC測定用の試料加熱装置55における冷却時間は、TC測定用の試料加熱装置51における冷却時間に比べて短い。IC測定用の試料加熱装置55において試料ボート移動棒21の引き戻しに要する時間は、TC測定用の試料加熱装置51において試料ボート移動棒21の引き戻しに要する時間に比べて短くなる。
【0070】
以上、本発明の実施例を説明したが、実施例における構成、配置、数値等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、本発明の試料加熱装置及び元素分析計は、TOC計以外の元素分析計にも適用できる。
【0072】
本発明の試料加熱装置は、キャリアガスが供給される内部空間、及び試料ボート出入口開閉機構をもつ試料導入部と、上記試料導入部の上記内部空間に連結され、上記内部空間からキャリアガスが流入する燃焼管と、上記燃焼管を加熱するための加熱炉と、上記試料導入部の上記内部空間内に配置された試料ボートを、シール部材によって上記内部空間の気密性を維持しつつ上記内部空間の外部から操作可能な試料ボート移動棒によって上記燃焼管内へ移動させるためのボート操作機構と、を備えた試料加熱装置であれば、どのような構成のものにも適用できる。
【0073】
本発明の元素分析計は、そのような試料加熱装置と、上記試料加熱装置にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給部と、上記試料加熱装置の上記燃焼管からキャリアガスとともに流出する、上記試料ボートに収容された試料に含まれる目的の成分を検出するための検出器と、を備えた元素分析計であれば、どのような構成のものにも適用できる。
【0074】
例えば、試料に含まれる炭素、水素、窒素、硫黄などを測定する元素分析計に本発明の試料加熱装置及び元素分析計は適用され得る。また、液体試料の例は、河川水、湖沼水、海洋水、雨水、地下水などの環境水や、各種の試験や研究で発生する液体試料などである。また、固体試料の例は、土壌、堆積物、農畜産物や、各種の試験・研究で発生する固体試料などである。ただし、本発明の試料加熱装置及び元素分析計が対象とする測定成分、液体試料及び固体試料はこれらに限定されない。
【0075】
上記実施例では、温度センサ11は熱電対であるが、本発明の試料加熱装置における温度センサはこれに限定されない。本発明の試料加熱装置において、温度センサは、試料ボート移動棒の温度を測定できるものであれば、どのような温度センサであってもよい。
【0076】
上記実施例では、温度センサ11による試料ボート移動棒21の温度測定位置は内部空間15内に配置されているが、本発明の試料加熱装置における試料ボート移動棒の温度測定位置はこれに限定されない。本発明の試料加熱装置において、温度センサによる試料ボート移動棒の温度測定位置は、シール部材との接触位置における試料ボート移動棒の温度を把握できる位置であれば、どのような位置であってもよい。例えば、温度センサによる試料ボート移動棒の温度測定位置は、試料導入部の外部であってもよいし、試料導入部に設けられた試料ボート移動棒用の貫通孔の内部であってもよい。
【0077】
また、試料ボート移動棒を移動させるための駆動手段はモータ以外の駆動手段であってもよい。