特許第5939440号(P5939440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939440
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】パルスレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/117 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   H01S3/117
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-207121(P2012-207121)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-63826(P2014-63826A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年11月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】宇野 進吾
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
(72)【発明者】
【氏名】石垣 直也
(72)【発明者】
【氏名】齊川 次郎
(72)【発明者】
【氏名】廣木 知之
【審査官】 佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228946(JP,A)
【文献】 特開2005−045019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/02
3/04−3/0959
3/098−3/102
3/105−3/131
3/136−3/213
3/23−4/00
H03C 1/00−1/62
H03K 7/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号を生成するRF信号生成部と、オン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を生成するRF制御信号部と、前記RF信号生成部からのRF信号の位相を反転し且つ前記RF制御信号部からのRF制御信号の位相を反転する位相変換部と、前記位相変換部で位相反転されたRF制御信号と前記RF制御信号部からのRF制御信号との波形を整形してV字型の波形信号を得る波形整形部と、前記位相変換部により位相反転されたRF信号と前記波形整形部により得られたV字型の波形信号とを乗算して第1乗算信号を得る第1乗算器と、前記RF信号生成部からのRF信号と前記RF制御信号部からのRF制御信号とを乗算して第2乗算信号を得る第2乗算器と、前記第1乗算器からの第1乗算信号と前記第2乗算器からの第2乗算信号とを加算する加算器とを備えるRF信号制御回路と、
励起光を発生するレーザダイオードを含む半導体レーザと、
前記半導体レーザからの励起光に応じて誘導放出光を発生する固体レーザ媒質と、
前記RF信号制御回路内の前記加算器からの信号にしたがって、前記固体レーザ媒質で発生された誘導放出光の基本波を変調することによりパルスエネルギーを制御する音響光学素子と、
前記半導体レーザと前記固体レーザ媒質とを挟むように配置されたミラーと、
を備えることを特徴とするパルスレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響光学素子に与えるRF(Radio Frequency)信号の制御を高速化することにより短パルスを生成するパルスレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のRF信号制御回路は、図8に示すように、RF信号生成部51と、RF制御信号部52と、乗算器60とを有している。RF信号生成部51は、正弦波信号からなるRF信号を生成し、RF制御信号部52は、RF信号の周波数よりも低く且つオン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を生成し、乗算器60は、RF信号生成部51からのRF信号とRF制御信号部52からのRF制御信号とを乗算し、図9に示すような波形を持つRF信号を得ている。
【0003】
図10は、図8に示す従来のRF信号制御回路を含むパルスレーザ装置の構成を示すブロック図である(特許文献1)。図10のRF発振器131は、図8のRF信号生成部51に対応し、図10のパルス幅変調回路134は、図8のRF制御信号部52に対応し、図10のRF変調回路135は、図8の乗算器60に対応する。
【0004】
図10に示すパルスレーザ装置は、RF変調回路135からの変調されたRF信号を信号分離回路136、信号ケーブル137を介して音響光学素子(Qスイッチ)124に供給している。
【0005】
このように、図10に示すパルスレーザ装置は、音響光学素子(Qスイッチ)124に供給するRF信号を、オン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を用いて制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−45019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のRF信号制御回路にあっては、音響光学素子に出力されるRF信号を高速にオン/オフ制御することができなかった。
【0008】
本発明の課題は、RF信号を高速にオン/オフ制御することができるパルスレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るパルスレーザ装置は、RF信号を生成するRF信号生成部と、オン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を生成するRF制御信号部と、前記RF信号生成部からのRF信号の位相を反転し且つ前記RF制御信号部からのRF制御信号の位相を反転する位相変換部と、前記位相変換部で位相反転されたRF制御信号と前記RF制御信号部からのRF制御信号との波形を整形してV字型の波形信号を得る波形整形部と、前記位相変換部により位相反転されたRF信号と前記波形整形部により得られたV字型の波形信号とを乗算して第1乗算信号を得る第1乗算器と、前記RF信号生成部からのRF信号と前記RF制御信号部からのRF制御信号とを乗算して第2乗算信号を得る第2乗算器と、前記第1乗算器からの第1乗算信号と前記第2乗算器からの第2乗算信号とを加算する加算器とを備えるRF信号制御回路と、励起光を発生するレーザダイオードを含む半導体レーザと、前記半導体レーザからの励起光に応じて誘導放出光を発生する固体レーザ媒質と、前記RF信号制御回路内の前記加算器からの信号にしたがって、前記固体レーザ媒質で発生された誘導放出光の基本波を変調することによりパルスエネルギーを制御する音響光学素子と、前記半導体レーザと前記固体レーザ媒質とを挟むように配置されたミラーとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、RF信号を高速にオン/オフ制御することができるパルスレーザ装置を提供することができる。また、高速にRF信号をオン/オフ制御することにより、パルスレーザ装置においては、レーザ共振器のロス制御が高速化し、よりパルスレーザの立ち上がり時間を短縮することができ、短パルス幅のパルスレーザを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係るRF信号制御回路を含むパルスレーザ装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例1に係るパルスレーザ装置内のRF信号制御回路の構成を示すブロック図である。
図3図2に示すRF信号制御回路内の波形整形部の具体的な一例を示す図である。
図4図2に示すRF信号制御回路内の乗算器55の出力信号を示す図である。
図5図2に示すRF信号制御回路内の乗算器56の出力信号を示す図である。
図6図2に示すRF信号制御回路内の乗算器55の出力信号と乗算器56の出力信号との加算を示す図である。
図7図2に示すRF信号制御回路内の乗算器55の出力信号と乗算器56の出力信号とを加算した後の出力信号と、図8に示す従来の乗算器60の出力信号とを示す図である。
図8】従来のパルスレーザ装置内のRF信号制御回路の概略構成を示すブロック図である。
図9図8に示す従来のRF信号制御回路内の乗算器60の出力信号を示す図である。
図10】従来のパルスレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のRF信号制御回路を含むパルスレーザ装置の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係るRF信号制御回路を含むパルスレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
このパルスレーザ装置は、半導体レーザ1、固体レーザ媒質2、音響光学素子3、2つのミラー4、RF信号制御回路5を備えている。
【0015】
なお、固体レーザ媒質2、音響光学素子3およびミラー4から構成される部分を共振器と呼ぶ。
【0016】
半導体レーザ1は、例えばレーザダイオードと、そのレーザダイオードで発生されたレーザ光を集束するレンズ(何れも図示は省略する)によって構成されており、励起光を発生する。この半導体レーザ1で発生された励起光は、固体レーザ媒質2に照射される。
【0017】
固体レーザ媒質2は、レーザ発振の元となる物質であり、例えば、YAGレーザと呼ばれる固体レーザにおいては、イットリウム、アルミニウムおよびガーネット(Yttrium Aluminum Garnet)などといった物質が用いられる。この固体レーザ媒質2は、半導体レーザ1から励起光が照射されることにより誘導放出光を発生する。この固体レーザ媒質2で発生された誘導放出光は、音響光学素子3に送られる。
【0018】
音響光学素子3は、Qスイッチを構成し、RF信号制御回路5から送られてくるRF信号にしたがって、固体レーザ媒質2で発生された誘導放出光の基本波を変調することによりパルスエネルギーを制御し、パルス幅の狭いピークの大きなパルスレーザを出力する。
【0019】
RF信号制御回路5は、RF信号を生成し、生成されたRF信号を音響光学素子3に送るもので、図2に示すように、RF信号生成部51、RF制御信号部52、位相変換部53、波形整形部54、乗算器55,56、加算器57を備えている。
【0020】
RF信号生成部51は、正弦波信号からなるRF信号を生成し、RF制御信号部52は、RF信号の周波数よりも低く且つオン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を生成する。
【0021】
位相変換部53は、PLL回路(Phase Lock Loop)や反転増幅器などで構成され、RF信号生成部51からのRF信号の位相を反転(位相を180°逆転)させ、位相反転されたRF信号を乗算器55に出力する。また、位相変換部53は、RF制御信号部52からのRF制御信号の位相を反転させ、位相反転されたRF制御信号を波形整形部54に出力する。なお、位相反転に限らず、位相を略180°(例えば179°、181°)変換しても良い。
【0022】
波形整形部54は、アナログ回路などで構成され、位相変換部53で位相反転されたRF制御信号の波形を制御するもので、具体的には、位相変換部53で位相反転されたRF制御信号と、RF制御信号部52からのRF制御信号との波形を整形してV字型の波形信号を得る。波形整形部54の詳細については、後述する。
【0023】
乗算器55は、位相変換部53により位相反転されたRF信号と波形整形部54により得られたV字型の波形信号とを乗算して、乗算信号を加算器57に出力する。乗算器56は、RF信号生成部51からのRF信号とRF制御信号部52からのRF制御信号とを乗算し、乗算信号を加算器57に出力する。
【0024】
加算器57は、乗算器55からの乗算信号と乗算器56からの乗算信号とを加算する。
【0025】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るRF信号制御回路及びこれを用いたパルスレーザ装置の動作を説明する。ここでは、RF信号制御回路6の動作のみを説明する。
【0026】
まず、正弦波信号からなるRF信号は、RF信号生成部51により生成され、RF信号の周波数よりも低く且つオン/オフの2つの状態を持つRF制御信号は、RF制御信号部52により生成される。
【0027】
RF信号生成部51からのRF信号は、位相変換部53により位相反転され、位相反転されたRF信号は乗算器55に出力される。
【0028】
また、RF制御信号部52からのRF制御信号は、位相変換部53により位相反転され、位相反転されたRF制御信号は波形整形部54に出力される。
【0029】
位相変換部53で位相反転されたRF制御信号と、RF制御信号部52からのRF制御信号とは、波形整形部54により波形が整形されてV字型の波形信号が得られる。このV字型の波形信号は、図3に示すような具体的な波形整形部54によって得られる。
【0030】
図3に示す波形整形部54は、コンパレータCP1,CP2、ダイオードD1,D2を備える。コンパレータCP1の出力端子にはダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードは、負荷Rの一端とコンパレータCP1の反転入力端子とに接続されている。
【0031】
コンパレータCP2の出力端子にはダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードは、負荷Rの一端とコンパレータCP2の反転入力端子とに接続されている。負荷Rの他端は接地されている。
【0032】
以上のように構成された波形整形部54によれば、位相変換部53からの位相反転されたRF制御信号がコンパレータCP1の非反転入力端子に入力される。また、RF制御信号部52からのRF制御信号がコンパレータCP2の非反転入力端子に入力される。
【0033】
位相反転されたRF制御信号は、図3に示すように、“0”から徐々に“1”に変化していく。RF制御信号は、“1”から徐々に“0”に変化していく。RF制御信号が“1”の近傍では、コンパレータCP2の出力はHレベルとなり、ダイオードD2がオンして、負荷Rに電流が流れる。このとき、位相反転されたRF制御信号は、“0”の近傍であり、コンパレータCP1の出力はLレベルとなり、ダイオードD1のカソードはHレベルであるため、ダイオードD1はオフとなる。この状態は、RF制御信号が“1”〜“0.5”まで続く。
【0034】
RF制御信号が“0.5”未満となり、位相反転されたRF制御信号が“0.5”を超えると、コンパレータCP2の出力がLレベルとなり、ダイオードD2がオフとなる。このとき、コンパレータCP1の出力がHレベルとなり、ダイオードD1がオンして、負荷Rに電流が流れる。このため、負荷Rには、図4に示すように、“0.5”〜“1”まで変化するV字型の直流の波形信号が得られる。
【0035】
次に、位相変換部53により位相反転されたRF信号と波形整形部54により得られたV字型の直流の波形信号とは、乗算器55により乗算されて、図4に示すように、V字型の正弦波信号が得られる。
【0036】
また、RF信号生成部51からのRF信号とRF制御信号部52からのRF制御信号とは、乗算器56により乗算されて、図5に示すように、“0”から徐々に増加していく正弦波信号が得られる。
【0037】
次に、図5に示す“0”から徐々に増加していく正弦波信号と、図4に示すV字型の正弦波信号とが加算器57により、図6に示すように加算されると、加算出力として、図7に示すRF信号が得られる。図7に示すRF信号を音響光学素子3に送る。
【0038】
図7において、太線の波形は、本発明のRF信号の波形を示し、細線の波形は、図9に示す従来技術のRF信号の波形を示している。図7からもわかるように、本発明のRF信号は、従来の技術のRF信号よりも短パルスとなる。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るRF信号制御回路及びこれを用いたパルスレーザ装置によれば、RF信号及びRF制御信号を位相反転し、位相反転されたRF制御信号とRF信号との波形を整形し、整形された波形信号と位相反転されたRF信号とを乗算して第1乗算信号を得て、RF信号とRF制御信号とを乗算して第2乗算信号を得て、第1乗算信号と第2乗算信号とを加算するので、短パルスのRF信号が得られる。従って、高速にRF信号をオン/オフ制御することができる。
【0040】
また、高速にRF信号をオン/オフ制御することにより、パルスレーザ装置においては、レーザ共振器のロス制御が高速化し、よりパルスレーザの立ち上がり時間を短縮することができ、短パルス幅のパルスレーザを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のRF信号制御回路は、パルスレーザ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 半導体レーザ
2 固体レーザ媒質
3 音響光学素子
4 ミラー
5 RF信号制御回路
51 RF信号生成部
52 RF制御信号部
53 位相変換部
54 波形整形部
55,56,60 乗算器
57 加算器
D1,D2 ダイオード
CP1,CP2 コンパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10