【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係るRF信号制御回路を含むパルスレーザ装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
このパルスレーザ装置は、半導体レーザ1、固体レーザ媒質2、音響光学素子3、2つのミラー4、RF信号制御回路5を備えている。
【0015】
なお、固体レーザ媒質2、音響光学素子3およびミラー4から構成される部分を共振器と呼ぶ。
【0016】
半導体レーザ1は、例えばレーザダイオードと、そのレーザダイオードで発生されたレーザ光を集束するレンズ(何れも図示は省略する)によって構成されており、励起光を発生する。この半導体レーザ1で発生された励起光は、固体レーザ媒質2に照射される。
【0017】
固体レーザ媒質2は、レーザ発振の元となる物質であり、例えば、YAGレーザと呼ばれる固体レーザにおいては、イットリウム、アルミニウムおよびガーネット(Yttrium Aluminum Garnet)などといった物質が用いられる。この固体レーザ媒質2は、半導体レーザ1から励起光が照射されることにより誘導放出光を発生する。この固体レーザ媒質2で発生された誘導放出光は、音響光学素子3に送られる。
【0018】
音響光学素子3は、Qスイッチを構成し、RF信号制御回路5から送られてくるRF信号にしたがって、固体レーザ媒質2で発生された誘導放出光の基本波を変調することによりパルスエネルギーを制御し、パルス幅の狭いピークの大きなパルスレーザを出力する。
【0019】
RF信号制御回路5は、RF信号を生成し、生成されたRF信号を音響光学素子3に送るもので、
図2に示すように、RF信号生成部51、RF制御信号部52、位相変換部53、波形整形部54、乗算器55,56、加算器57を備えている。
【0020】
RF信号生成部51は、正弦波信号からなるRF信号を生成し、RF制御信号部52は、RF信号の周波数よりも低く且つオン/オフの2つの状態を持つRF制御信号を生成する。
【0021】
位相変換部53は、PLL回路(Phase Lock Loop)や反転増幅器などで構成され、RF信号生成部51からのRF信号の位相を反転(位相を180°逆転)させ、位相反転されたRF信号を乗算器55に出力する。また、位相変換部53は、RF制御信号部52からのRF制御信号の位相を反転させ、位相反転されたRF制御信号を波形整形部54に出力する。なお、位相反転に限らず、位相を略180°(例えば179°、181°)変換しても良い。
【0022】
波形整形部54は、アナログ回路などで構成され、位相変換部53で位相反転されたRF制御信号の波形を制御するもので、具体的には、位相変換部53で位相反転されたRF制御信号と、RF制御信号部52からのRF制御信号との波形を整形してV字型の波形信号を得る。波形整形部54の詳細については、後述する。
【0023】
乗算器55は、位相変換部53により位相反転されたRF信号と波形整形部54により得られたV字型の波形信号とを乗算して、乗算信号を加算器57に出力する。乗算器56は、RF信号生成部51からのRF信号とRF制御信号部52からのRF制御信号とを乗算し、乗算信号を加算器57に出力する。
【0024】
加算器57は、乗算器55からの乗算信号と乗算器56からの乗算信号とを加算する。
【0025】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るRF信号制御回路及びこれを用いたパルスレーザ装置の動作を説明する。ここでは、RF信号制御回路6の動作のみを説明する。
【0026】
まず、正弦波信号からなるRF信号は、RF信号生成部51により生成され、RF信号の周波数よりも低く且つオン/オフの2つの状態を持つRF制御信号は、RF制御信号部52により生成される。
【0027】
RF信号生成部51からのRF信号は、位相変換部53により位相反転され、位相反転されたRF信号は乗算器55に出力される。
【0028】
また、RF制御信号部52からのRF制御信号は、位相変換部53により位相反転され、位相反転されたRF制御信号は波形整形部54に出力される。
【0029】
位相変換部53で位相反転されたRF制御信号と、RF制御信号部52からのRF制御信号とは、波形整形部54により波形が整形されてV字型の波形信号が得られる。このV字型の波形信号は、
図3に示すような具体的な波形整形部54によって得られる。
【0030】
図3に示す波形整形部54は、コンパレータCP1,CP2、ダイオードD1,D2を備える。コンパレータCP1の出力端子にはダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードは、負荷Rの一端とコンパレータCP1の反転入力端子とに接続されている。
【0031】
コンパレータCP2の出力端子にはダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードは、負荷Rの一端とコンパレータCP2の反転入力端子とに接続されている。負荷Rの他端は接地されている。
【0032】
以上のように構成された波形整形部54によれば、位相変換部53からの位相反転されたRF制御信号がコンパレータCP1の非反転入力端子に入力される。また、RF制御信号部52からのRF制御信号がコンパレータCP2の非反転入力端子に入力される。
【0033】
位相反転されたRF制御信号は、
図3に示すように、“0”から徐々に“1”に変化していく。RF制御信号は、“1”から徐々に“0”に変化していく。RF制御信号が“1”の近傍では、コンパレータCP2の出力はHレベルとなり、ダイオードD2がオンして、負荷Rに電流が流れる。このとき、位相反転されたRF制御信号は、“0”の近傍であり、コンパレータCP1の出力はLレベルとなり、ダイオードD1のカソードはHレベルであるため、ダイオードD1はオフとなる。この状態は、RF制御信号が“1”〜“0.5”まで続く。
【0034】
RF制御信号が“0.5”未満となり、位相反転されたRF制御信号が“0.5”を超えると、コンパレータCP2の出力がLレベルとなり、ダイオードD2がオフとなる。このとき、コンパレータCP1の出力がHレベルとなり、ダイオードD1がオンして、負荷Rに電流が流れる。このため、負荷Rには、
図4に示すように、“0.5”〜“1”まで変化するV字型の直流の波形信号が得られる。
【0035】
次に、位相変換部53により位相反転されたRF信号と波形整形部54により得られたV字型の直流の波形信号とは、乗算器55により乗算されて、
図4に示すように、V字型の正弦波信号が得られる。
【0036】
また、RF信号生成部51からのRF信号とRF制御信号部52からのRF制御信号とは、乗算器56により乗算されて、
図5に示すように、“0”から徐々に増加していく正弦波信号が得られる。
【0037】
次に、
図5に示す“0”から徐々に増加していく正弦波信号と、
図4に示すV字型の正弦波信号とが加算器57により、
図6に示すように加算されると、加算出力として、
図7に示すRF信号が得られる。
図7に示すRF信号を音響光学素子3に送る。
【0038】
図7において、太線の波形は、本発明のRF信号の波形を示し、細線の波形は、
図9に示す従来技術のRF信号の波形を示している。
図7からもわかるように、本発明のRF信号は、従来の技術のRF信号よりも短パルスとなる。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るRF信号制御回路及びこれを用いたパルスレーザ装置によれば、RF信号及びRF制御信号を位相反転し、位相反転されたRF制御信号とRF信号との波形を整形し、整形された波形信号と位相反転されたRF信号とを乗算して第1乗算信号を得て、RF信号とRF制御信号とを乗算して第2乗算信号を得て、第1乗算信号と第2乗算信号とを加算するので、短パルスのRF信号が得られる。従って、高速にRF信号をオン/オフ制御することができる。
【0040】
また、高速にRF信号をオン/オフ制御することにより、パルスレーザ装置においては、レーザ共振器のロス制御が高速化し、よりパルスレーザの立ち上がり時間を短縮することができ、短パルス幅のパルスレーザを得ることができる。