【実施例1】
【0016】
図1ないし
図4は、本発明の実施例1による自動車のカウル部構造を説明するための図である。
【0017】
図において、1は自動車のエンジン室Aと車室Bとを画成するカウル部を示している。
【0018】
このカウル部1は、車幅方向左,右外端部に配設され、車両前後に延びる閉断面構造を有するカウルサイドパネル2と、該左,右のカウルサイドパネル2に結合された車幅方向に延びるカウルインナパネル3と、該カウルインナパネル3と前記左,右のカウルサイドパネル2とに架け渡して結合されたスプリングサポート部材4と、該左,右のスプリングサポート部材4の後側に配設されたダッシュパネル5とを備えている。
【0019】
前記左,右のカウルサイドパネル2の後端部2aは、車両上下方向に延びるフロントピラー8に結合され、前端部2bは、荷重伝達部材10を介して車両前後方向に延びるサイドメンバ9に結合されている。
【0020】
前記スプリングサポート部材4は、不図示の前輪に連結されたショックアブソーバの上端部を支持する支持孔4cが形成された大略円形状のアッパサポート部4aと、該アッパサポート部4aに続いて下方に延びるロアサポート部4bとを有する。
【0021】
前記アッパサポート部4aの外側部は、前記カウルサイドパネル2の下辺部2cに結合されており、前記ロアサポート部4bの下端部は、前記サイドメンバ9に結合されている。
【0022】
前記カウルインナパネル3は、前壁部3a,後壁部3b及び該前,後壁部3a,3b同士を連結する底壁部3cを有する上方に大きく開放された断面大略コ字形状を有する。
【0023】
前記前壁部2aは、底壁部3cから斜め上方に起立して延びる起立部3dと、該起立部3dに続いて前方に延びる延長部3eとを有し、該延長部3eの前フランジ3fにより不図示のフードがシール部材を介して支持されている。前記後壁部3bは、略垂直をなすよう形成されている。
【0024】
前記カウルインナパネル3内の両端部には、
図3に示すように、板金製の補強板12が配設されている。この補強板12は、カウルインナパネル3の前,後壁部3a,3b間を覆うように形成された本体部12aと、該本体部12aに折り曲げ形成された前,後フランジ部12b,外フランジ部12cとを有する。
【0025】
前記前,後フランジ部12bは、前記カウルインナパネル3の前壁部3a,後壁部3bにそれぞれ溶接により結合されており、外フランジ部12cは、前記カウルサイドパネル2に溶接により結合されている。これによりカウルインナパネル3の口開きによる変形を防止している。
【0026】
前記スプリングサポート部材4のアッパサポート部4aの上壁4dの後端部には、結合部4eが段落ち状に形成されている。この結合部4eには、前記カウルインナパネル3の底壁部3cの前部が配置されている。また底壁部3cと結合部4eとの間には、前記ダッシュパネル5の上フランジ5aが挿入されている。そして前記結合部4e,上フランジ5a及び底壁部3cは、重ね合わせた状態で溶接により一体に結合されている。
【0027】
前記カウルインナパネル3の前壁部3aの起立部3dには、前方に開口する排水口3gが形成されている。この排水口3gは、前記スプリングサポート部材4の結合部4eに望む位置に形成されている。
【0028】
そして前記スプリングサポート部材4の上壁4dの外側部には、前記排水口3gに連なる導水部4fが車両前後方向に延びるよう形成されている。
【0029】
この導水部4fは、前記上壁4dの外側部を全長に渡って凹ますことにより形成されたものであり、前側ほど低所となるよう若干前下がりに傾斜している。
【0030】
前記導水部4fの後縁は、前記底壁部3cの排水口3gの下縁に連通しており、前縁は、前記アッパサポート部4aの前縁まで延びている。
【0031】
これにより、カウルインナパネル3内に流入した雨水や洗浄水は、前壁部3aの排水口3gから導水部4fを流れて車外に連通するエンジン室A内排出される。
【0032】
本実施例によれば、スプリングサポート部材4の上壁4dに形成された結合部4eにカウルインナパネル3の底壁部3cを結合し、該カウルインナパネル3の前壁部3aの前記結合部4eに望む位置に前方に開口する排水口3gを形成し、前記スプリングサポート部材4の上壁4dに前記排水口3gに連なる導水部4fを前後方向に延びるよう形成した。
【0033】
このように前記排水口3gをカウルインナパネル3の前壁部3aに形成したので、カウルサイドパネル2に開口を形成する必要がなく、該カウルサイドパネル2の断点をなくすことができる。これにより車両衝突時の入力やショックアブソーバを介して伝わるスプリングサポート部材4からの入力によりカウルサイドパネル2が座屈変形したり、振動したりするのを防止することができ、衝突エネルギー,路面振動を効率よく吸収することができる。
【0034】
また前記雨水等をエンジン室A内に排水するようにしたので、エンジン室A内の狙いとする排水位置に確実に雨水等を流すことができる。
【0035】
さらに前記導水部4fをスプリングサポート部材4の上壁4dに前後方向に延びるよう形成したので、ショックアブソーバからの入力を導水部4fを介して前,後に分散させて伝達することができるとともに、スプリングサポート部材自体の剛性を高めることができ、操縦安定性を向上できる。
【0036】
本実施例では、前記カウルサイドパネル2の開口を不要にできるので、カウルインナパネル3に設けた補強板12の板厚や大きさを必要最小限のものとすることができ、従来の板厚の大きい大型の補強部材を設ける場合に比べて車体重量及びコストの低減が可能となる。
【0037】
本実施例では、前記カウルインナパネル3の前壁部3aの結合部4eに対応した位置に排水口3gを形成したので、前壁部3aに開口を形成したことによるカウルインナパネル3の剛性低下を抑制することができる。
【0038】
なお、前記実施例では、導水部4fをスプリングサポート部材4の上壁4dを凹ますことにより形成したが、本発明は、
図5に示すように、上壁4dの車内側に排水口4gの内縁に連なる凸ビード4gを形成し、該凸ビード4gとカウルサイドパネル2の内側壁面2eとで導水部4fを形成してもよく、このようにした場合にも前記実施例と略同様の効果が得られる。
【0039】
また前記実施例では、ダッシュパネル5の上フランジ5aをスプリングサポート部材4の結合部4eとカウルインナパネル3の底壁部3cとの間に配置した場合を説明したが、本発明は、
図4の二点鎖線で示すように、ダッシュパネル5′をカウルインナパネル3の後壁部3bに沿うように上方に延長し、該延長部5a′を後壁部3bに結合した構造のものにも適用できる。このようにカウルインナパネルの前壁部に排水口を形成したので、ダッシュパネルの接合位置に左右されることなく、何れの構造にも適用できる。