特許第5951459号(P5951459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951459
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】自動車のカウル部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   B62D25/08 E
   B62D25/08 G
   B62D25/08 H
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-259943(P2012-259943)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104883(P2014-104883A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航太
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265483(JP,A)
【文献】 実開平4−127079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向外端部に配設されたカウルサイドパネルと、該カウルサイドパネルに車幅方向端部が結合され、前,後壁部及び底壁部を有する上方に開放された断面大略コ字形状のカウルパネルと、該カウルパネル及び前記カウルサイドパネルに結合されたスプリングサポート部材とを備えた自動車のカウル部構造において、
前記スプリングサポート部材の上壁面には、前記カウルパネルの底壁部下面が結合され、
該カウルパネルの前壁部の、前記底壁部のスプリングサポート部材結合部に望む部分には、前方に開口する排水口が形成されており、
前記スプリングサポート部材の上壁には、前記排水口に連なる導水部が前後方向に延びるよう形成されている
ことを特徴とする自動車のカウル部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルパネル内に流入した水を車外に排出する排水口を備えた自動車のカウル部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンルームの前後寸法に制約のある小型車では、左,右のカウルサイドパネルと、該左,右のカウルサイドパネルに結合されたカウルインナパネルとにスプリングサポート部材を架け渡して結合する場合がある。
【0003】
また自動車のカウル部では、カウルパネル内に流入した雨水や洗車時の水を車外に排出するための排水口を前記カウルサイドパネルに形成する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−126149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のカウル部構造では、前記カウルサイドパネルに形成した排水口が外力に対して断点となり易い。このため車両衝突時の入力によってカウルサイドパネルが座屈変形したり、路面からスプリングサポート部材を介して伝わる入力によってカウルサイドパネルが振動したりするおそれがあり、これらの入力を効率よく吸収するできる対策が要請されている。
【0006】
このような外力によるカウルサイドパネルの変形や振動を防止するには、例えばカウルサイドパネルとカウルインナパネルとの間に補強部材を配設して両者を結合することが考えられるが、このようにすると車体重量及びコストが上昇するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、車体重量及びコストの上昇を招くことなく、外力によってカウルサイドパネルが変形したり、振動したりするのを防止できる自動車のカウル部構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車幅方向外端部に配設されたカウルサイドパネルと、該カウルサイドパネルに車幅方向端部が結合され、前,後壁部及び底壁部を有する上方に開放された断面大略コ字形状のカウルパネルと、該カウルパネル及び前記カウルサイドパネルに結合されたスプリングサポート部材とを備えた自動車のカウル部構造において、前記スプリングサポート部材の上壁面には、前記カウルパネルの底壁部下面が結合され、該カウルパネルの前壁部の、前記底壁部のスプリングサポート部材結合部に望む部分には、前方に開口する排水口が形成されており、前記スプリングサポート部材の上壁には、前記排水口に連なる導水部が前後方向に延びるよう形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカウル部構造によれば、スプリングサポート部材の上壁面にカウルパネルの底壁部下面を結合し、該カウルパネルの前壁部のスプリングサポート部材結合部に望む部分に前方に開口する排水口を形成し、該スプリングサポート部材の上壁に前記排水口に連なる導水部を前後方向に延びるよう形成した。
【0010】
前記構成としたので、カウルパネル内に流入した雨水や洗車時の水は、前壁部の排水口から導水部を介して車外に連通しているエンジンルーム内に排出されることとなる。
【0011】
このように排水口をカウルパネルの前壁部に形成したので、カウルサイドパネルに開口を形成する必要がなく、該カウルサイドパネルの断点をなくすことができる。これにより車両衝突時の入力やスプリングサポート部材からの入力によりカウルサイドパネルが変形したり、振動したりするのを防止することができ、衝突エネルギー,路面振動を効率よく吸収することができる。
【0012】
本発明では、前記カウルサイドパネルの開口を不要にできるので、新たに補強部材を設ける必要がなく、車体重量及びコストの上昇を回避できる。また補強部材を設けた場合には、該補強部材の板厚や大きさを必要最小限のものとすることができ、車体重量及びコストの低減が可能となる。
【0013】
本発明では、前記カウルパネルの前壁部のスプリングサポート部材結合部分に排水口を形成したので、該前壁部に開口を形成したことによるカウルパネルの剛性が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1による自動車のカウル部の側面図である。
図2】前記カウル部の斜視図である。
図3】前記カウル部の斜視図である。
図4】前記カウル部の断面図である。
図5】前記実施例のカウル部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車のカウル部構造を説明するための図である。
【0017】
図において、1は自動車のエンジン室Aと車室Bとを画成するカウル部を示している。
【0018】
このカウル部1は、車幅方向左,右外端部に配設され、車両前後に延びる閉断面構造を有するカウルサイドパネル2と、該左,右のカウルサイドパネル2に結合された車幅方向に延びるカウルインナパネル3と、該カウルインナパネル3と前記左,右のカウルサイドパネル2とに架け渡して結合されたスプリングサポート部材4と、該左,右のスプリングサポート部材4の後側に配設されたダッシュパネル5とを備えている。
【0019】
前記左,右のカウルサイドパネル2の後端部2aは、車両上下方向に延びるフロントピラー8に結合され、前端部2bは、荷重伝達部材10を介して車両前後方向に延びるサイドメンバ9に結合されている。
【0020】
前記スプリングサポート部材4は、不図示の前輪に連結されたショックアブソーバの上端部を支持する支持孔4cが形成された大略円形状のアッパサポート部4aと、該アッパサポート部4aに続いて下方に延びるロアサポート部4bとを有する。
【0021】
前記アッパサポート部4aの外側部は、前記カウルサイドパネル2の下辺部2cに結合されており、前記ロアサポート部4bの下端部は、前記サイドメンバ9に結合されている。
【0022】
前記カウルインナパネル3は、前壁部3a,後壁部3b及び該前,後壁部3a,3b同士を連結する底壁部3cを有する上方に大きく開放された断面大略コ字形状を有する。
【0023】
前記前壁部2aは、底壁部3cから斜め上方に起立して延びる起立部3dと、該起立部3dに続いて前方に延びる延長部3eとを有し、該延長部3eの前フランジ3fにより不図示のフードがシール部材を介して支持されている。前記後壁部3bは、略垂直をなすよう形成されている。
【0024】
前記カウルインナパネル3内の両端部には、図3に示すように、板金製の補強板12が配設されている。この補強板12は、カウルインナパネル3の前,後壁部3a,3b間を覆うように形成された本体部12aと、該本体部12aに折り曲げ形成された前,後フランジ部12b,外フランジ部12cとを有する。
【0025】
前記前,後フランジ部12bは、前記カウルインナパネル3の前壁部3a,後壁部3bにそれぞれ溶接により結合されており、外フランジ部12cは、前記カウルサイドパネル2に溶接により結合されている。これによりカウルインナパネル3の口開きによる変形を防止している。
【0026】
前記スプリングサポート部材4のアッパサポート部4aの上壁4dの後端部には、結合部4eが段落ち状に形成されている。この結合部4eには、前記カウルインナパネル3の底壁部3cの前部が配置されている。また底壁部3cと結合部4eとの間には、前記ダッシュパネル5の上フランジ5aが挿入されている。そして前記結合部4e,上フランジ5a及び底壁部3cは、重ね合わせた状態で溶接により一体に結合されている。
【0027】
前記カウルインナパネル3の前壁部3aの起立部3dには、前方に開口する排水口3gが形成されている。この排水口3gは、前記スプリングサポート部材4の結合部4eに望む位置に形成されている。
【0028】
そして前記スプリングサポート部材4の上壁4dの外側部には、前記排水口3gに連なる導水部4fが車両前後方向に延びるよう形成されている。
【0029】
この導水部4fは、前記上壁4dの外側部を全長に渡って凹ますことにより形成されたものであり、前側ほど低所となるよう若干前下がりに傾斜している。
【0030】
前記導水部4fの後縁は、前記底壁部3cの排水口3gの下縁に連通しており、前縁は、前記アッパサポート部4aの前縁まで延びている。
【0031】
これにより、カウルインナパネル3内に流入した雨水や洗浄水は、前壁部3aの排水口3gから導水部4fを流れて車外に連通するエンジン室A内排出される。
【0032】
本実施例によれば、スプリングサポート部材4の上壁4dに形成された結合部4eにカウルインナパネル3の底壁部3cを結合し、該カウルインナパネル3の前壁部3aの前記結合部4eに望む位置に前方に開口する排水口3gを形成し、前記スプリングサポート部材4の上壁4dに前記排水口3gに連なる導水部4fを前後方向に延びるよう形成した。
【0033】
このように前記排水口3gをカウルインナパネル3の前壁部3aに形成したので、カウルサイドパネル2に開口を形成する必要がなく、該カウルサイドパネル2の断点をなくすことができる。これにより車両衝突時の入力やショックアブソーバを介して伝わるスプリングサポート部材4からの入力によりカウルサイドパネル2が座屈変形したり、振動したりするのを防止することができ、衝突エネルギー,路面振動を効率よく吸収することができる。
【0034】
また前記雨水等をエンジン室A内に排水するようにしたので、エンジン室A内の狙いとする排水位置に確実に雨水等を流すことができる。
【0035】
さらに前記導水部4fをスプリングサポート部材4の上壁4dに前後方向に延びるよう形成したので、ショックアブソーバからの入力を導水部4fを介して前,後に分散させて伝達することができるとともに、スプリングサポート部材自体の剛性を高めることができ、操縦安定性を向上できる。
【0036】
本実施例では、前記カウルサイドパネル2の開口を不要にできるので、カウルインナパネル3に設けた補強板12の板厚や大きさを必要最小限のものとすることができ、従来の板厚の大きい大型の補強部材を設ける場合に比べて車体重量及びコストの低減が可能となる。
【0037】
本実施例では、前記カウルインナパネル3の前壁部3aの結合部4eに対応した位置に排水口3gを形成したので、前壁部3aに開口を形成したことによるカウルインナパネル3の剛性低下を抑制することができる。
【0038】
なお、前記実施例では、導水部4fをスプリングサポート部材4の上壁4dを凹ますことにより形成したが、本発明は、図5に示すように、上壁4dの車内側に排水口4gの内縁に連なる凸ビード4gを形成し、該凸ビード4gとカウルサイドパネル2の内側壁面2eとで導水部4fを形成してもよく、このようにした場合にも前記実施例と略同様の効果が得られる。
【0039】
また前記実施例では、ダッシュパネル5の上フランジ5aをスプリングサポート部材4の結合部4eとカウルインナパネル3の底壁部3cとの間に配置した場合を説明したが、本発明は、図4の二点鎖線で示すように、ダッシュパネル5′をカウルインナパネル3の後壁部3bに沿うように上方に延長し、該延長部5a′を後壁部3bに結合した構造のものにも適用できる。このようにカウルインナパネルの前壁部に排水口を形成したので、ダッシュパネルの接合位置に左右されることなく、何れの構造にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 カウル部
2 カウルサイドパネル
3 カウルインナパネル
3a 前壁部
3b 後壁部
3c 底壁部
3g 排水口
4 スプリングサポート部材
4d 上壁
4e 結合部
4f 導水部
図1
図2
図3
図4
図5