特許第5956370号(P5956370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5956370珪素含有下層膜材料及びパターン形成方法
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  • 特許5956370-珪素含有下層膜材料及びパターン形成方法 図000066
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956370
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】珪素含有下層膜材料及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20160714BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20160714BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20160714BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20160714BHJP
   C08F 30/08 20060101ALI20160714BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/095
   G03F7/26 511
   G03F7/039 601
   C08F30/08
   C08F220/26
【請求項の数】9
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2013-48801(P2013-48801)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-174428(P2014-174428A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−083668(JP,A)
【文献】 特表2005−517972(JP,A)
【文献】 特表2008−501985(JP,A)
【文献】 特開2005−115380(JP,A)
【文献】 特開2002−107938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィーで用いられるフォトレジスト下層膜材料であって、
該フォトレジスト下層膜材料は、少なくとも下記一般式(1)で示される繰り返し単位aを有するものを含むものであり、前記フォトレジスト下層膜材料は、酸によって分解する架橋基を有するものを含むものであることを特徴とする珪素含有下層膜材料。
【化1】
(式中Rは水素原子又はメチル基であり、R、R、R、Rは水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基であり、Rは単結合、ジアルキルシリレン基、R、R、R、R10、R11は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいは下記一般式(2)で表される基を示す。また、R、R、R、R10、R11はそれぞれ結合して環を形成しても良い。また、0<a<1.0である。)
【化2】
(ここで上記一般式(2)において、R12、R13、R14、R15、R16は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、0≦m≦10である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される繰り返し単位aに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基を有する下記繰り返し単位b1、b2を共重合してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の珪素含有下層膜材料。
【化3】
(上記一般式(3)において、R17、R19は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、R18、R20は単結合、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基で炭素数6〜16の芳香族基を有していても良く、又はフェニレン基、ナフチレン基である。X1、X2は単結合、フェニレン基、ナフチレン基、−C(=O)−O−R21−、−O−である。R21は単結合、炭素数1〜4のアルキレン基で、エーテル基、エステル基を有していても良い。n、pは1〜4の整数、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b1+b2<1.0である。)
【請求項3】
前記酸によって分解する架橋基を有するものとして、分子内に少なくとも2つ以上の熱によって酸分解性のアセタール基に変換されるエノールエーテル基を有する架橋剤及び/又は、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤を添加したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の珪素含有下層膜材料。
【請求項4】
前記分子内に少なくとも2つ以上の熱によって酸分解性のアセタール基に変換されるエノールエーテル基を有する架橋剤が、下記一般式(4―1)で示され、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤が、下記一般式(4−2)又は(4−3)で示されるものであることを特徴とする請求項3に記載の珪素含有下層膜材料。
【化4】
(上記一般式(4−1)〜(4−3)において、R22、R23、R24は同一、非同一の水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基、R25、R26、R29は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、R27、R28、R30、R31は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、R27とR28、R30とR31とが結合して環を形成しても良い。Y1、Y2、Y3は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基で二重結合、三重結合、炭素数6〜14のアリーレン基、エーテル基、エステル基、アミド基を有していても良い。r、s、tは1〜5の整数である。)
【請求項5】
前記酸によって分解する架橋基を有するものとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位aに加えて、下記一般式(5)記載の酸分解性のオキシラン環を有する繰り返し単位を共重合してなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の珪素含有下層膜材料。
【化5】
(上記一般式(5)において、R32、R37は水素原子、メチル基、R33、R34、R38は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、R35、R36、R39、R40は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、R35とR36、R39とR40とが結合して環を形成しても良い。0≦c1<1.0、0≦c2<1.0、0≦c1+c2<1.0である。)
【請求項6】
更に、有機溶剤、塩基性化合物、酸発生剤及び架橋剤のいずれか1つ以上を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の珪素含有下層膜材料。
【請求項7】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成してパターン回路領域を露光した後、アルカリ現像液で現像してポジ型レジストの露光部分を溶解させると同時に珪素含有下層膜の露光部分も溶解させることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、基板上に珪素を含まない炭化水素からなる下層膜を形成し、その上に少なくとも、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成して露光と現像によってパターンを形成した後に、酸素、水素、アンモニア、水等のガスを用いたドライエッチングによって珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜を加工し、炭化水素下層膜をマスクにして基板を加工することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、基板上に珪素を含まない炭化水素からなる下層膜を形成し、その上に少なくとも、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成して露光と現像によってレジストパターンと珪素含有下層膜パターンを同時に形成した後に、酸素、水素、アンモニア、水から選ばれる1種以上のガスを用いたドライエッチングによって珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜を加工し、炭化水素下層膜をマスクにして基板にイオンを打ち込むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素含有下層膜材料と、該珪素含有下層膜材料を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOSデバイスのpウエルとnウエルを形成するためKrFレジスト膜をマスクにしてイオンを打ち込んで形成される場合があるが、レジストパターンの微細化の進行と共にArFレジスト膜が検討されるようになり、より微細化にはArF液浸リソグラフィーも提唱されている。イオンインプラントのためには、レジスト膜のスペース部分の基板面が現れている必要がある。レジスト膜の下に反射防止膜(BARC)層が存在すると、BARC層によってイオンがトラップされてしまうためである。しかしながら、BARC層無しでフォトレジスト膜をパターニングすると、基板反射による定在波が発生し、現像後のレジストパターンの側壁に強い凹凸が生じてしまう。定在波による凹凸をスムージングによって滑らかにするために、酸の拡散を大きくするための酸拡散し易い分子量の小さい酸が発生する酸発生剤(PAG)や、高温PEBの適用が効果的とされている。KrF露光のイオンインプラントレジスト膜が解像する200〜300nmの寸法では酸拡散の増大によって解像性が劣化することがなかったが、ArF露光のイオンインプラントレジスト膜が解像する200nm以下の寸法では酸の拡散によって解像性が劣化したりプロキシミティーバイアスが大きくなったりするため、好ましいことではない。
【0003】
フォトレジスト膜自体に吸収を持たせることによって定在波の発生を防止するダイ入りレジスト材料は、最も古典的な方法であり、i線やg線のノボラックレジスト材料から検討されてきた。ArF露光に用いられる吸収成分としてはベンゼン環がベースポリマーへ導入されたり、ベンゼン環を有する添加剤の検討が行われている。しかしながら、吸収成分によって完全に定在波を防止することはできないし、吸収を大きくすると定在波は低減するもののレジストパターンの断面が台形のテーパー形状になってしまう問題が生じる。
【0004】
レジスト膜の上層に反射防止膜(TARC)を設けることも検討されている。TARCは定在波低減には効果があるが基板の凹凸によるハレーションの防止効果が無い。TARCの屈折率はフォトレジスト膜の屈折率の平方根が理想的であるが、ArFレジスト膜に用いられているメタクリレートの波長193nmにおける屈折率が1.7と比較的低いために、この平方根の1.30を達成できる低屈折率の材料がないなどの欠点がある。
【0005】
そこで、非特許文献1,2では、現像液に溶解するBARCの検討が行われている。当初、現像液に非等方性に溶解するBARCが検討されたが、溶解が進行しすぎるとレジストパターンの下にアンダーカットが入り、溶解が足りないとスペース部分に残渣が残り、寸法制御性に難があった。次に検討されたのは、感光性のBARCである。BARCとして機能するには、反射防止効果とその上にフォトレジスト材料を塗布したときにフォトレジスト溶液に溶解しないこと、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こさないことが必要である。BARC溶液を塗布後のベーク時に架橋することによってフォトレジスト溶液への溶解とインターミキシングを防止する。
【0006】
また、特許文献1では、塗布後のベークの架橋機構として、ビニルエーテルを架橋剤として用いる方法が示されている。ここでは、まず、ヒドロキシスチレンにビニルエーテル系架橋剤をブレンドしておいて、塗布後のプリベークで架橋し、アルカリ現像液に不溶な膜にする。
そして、ビニルエーテル基とフェノール基の熱反応によってアセタール基が生成し、露光によって酸発生剤から酸が発生し、酸と水分と熱によってアセタール基が脱保護し、露光部分がアルカリ可溶のポジ型レジストとして機能する。
また、特許文献2、3では、この機構が現像液溶解型BARC(DBARC)に応用されている。
【0007】
ここで、イオンインプランテーションを行う基板には凹凸が存在し、凹んだ基板上のBARCの膜厚は厚くなる。平坦基板上にDBARCを適用した場合は、露光部分がフォトレジスト膜と同時にBARC膜もアルカリ現像液に溶解するが、段差基板にDBARCを適用させると凹んだ部分のDBARCが溶解しないという問題が生じる。これは、DBARCは強い吸収を持っているので、膜厚が厚くなると下まで光が届かなくなるためにDBARC内の酸発生剤から発生してくる酸の量が少なくなり、特に段差の下のDBARCの膜厚の厚い部分の基板付近では感光しづらくなり溶解しなくなるためである。
【0008】
また、イオンインプランテーションにトライレイヤープロセスを用いる方法も考えられる。この場合、まず基板上に炭化水素の下層膜を塗布し、ベークによって架橋し、その上に珪素含有中間膜を塗布し、ベークによって架橋し、その上にフォトレジストを塗布する。
次に、露光と現像によってレジストパターンをマスクにしてフロロカーボンガスで珪素含有中間膜をドライエッチングし、珪素含有中間膜をマスクにしてドライエッチングで下層膜を加工し、下層膜をマスクにしてイオンを打ち込む。
ここで、下層膜のエッチングは、通常は酸素ガスが用いられるが、イオン打ち込みでは基板表面が酸化されるとイオンストッパーとなってしまうために水素ガスを用いることが好ましい。
【0009】
トライレイヤープロセスは基板からの反射を完全に防ぐことが可能であり、レジストパターンの側壁に定在波由来の凹凸が生じることがない。しかしながら、珪素含有中間層にシルセスキオキサンベースのSOG膜を用いた場合、高い珪素含有率のSOG膜はレジストパターンをマスクにして珪素含有中間膜を加工するドライエッチングの速度が速く、下層膜のエッチングに於いてはエッチング速度が遅く、優れたハードマスクとしての機能を有するが、イオンを打ち込んだ後の溶液剥離が出来ないという問題がある。
通常は、SOG中間膜は弗酸で除去するが、これを用いると基板が珪素酸化膜の場合のダメージが大きい。そこで、SOG中間膜をドライエッチングによって剥離する場合はフロロカーボン系ガスを用いるが、この場合でも基板が珪素酸化膜の時のダメージが大きい。
【0010】
一方、メタクリルエステルの先に珪素をペンダントした珪素含有中間膜を用いればイオンを打ち込んだ後の剥離が可能である。しかしながらこの場合は珪素の含有量が少なく、レジストをマスクにして珪素含有中間膜を加工するときのエッチング選択比が低いという問題がある。
【0011】
例えば、非特許文献3では、メタクリルエステルの珪素含有酸不安定基を有するバイレイヤーレジストが提案されており、Si−Si結合を有する酸不安定基が示されている。
また、特許文献4では、Si−Si結合は波長200nm以下に吸収を有するとして、これを用いたArFエキシマレーザー用反射防止膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−230574号公報
【特許文献2】WO2005/111724号公報
【特許文献3】特表2008−501985号公報
【特許文献4】特許3781960号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5039 p129 (2003)
【非特許文献2】Proc. SPIE Vol. 6153 p61532P (2006)
【非特許文献3】Proc. SPIE Vol. 3678 p241 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
イオンインプラント工程に用いられるフォトレジスト膜としては、開口した領域にイオンを打ち込むために現像後に露光部分の基板面が開口している必要がある。この場合、基板としてはシリコン基板が用いられるために基板からの反射が大きい。TARCは定在波を抑える効果があるが、定在波を完全に抑える最適な低屈折材料が存在しないために定在波が発生することと、基板に凹凸が存在するときの乱反射(ハレーション)を抑える効果がない。吸収成分入りレジスト膜は、吸収が強いと基板反射を抑える効果が高まるが、テーパー形状になり、テーパー形状が発生しないぐらいの少ない吸収の場合、基板反射を抑える効果が小さく、定在波による凹凸が発生する。BARCは吸収剤による光吸収と、最適な膜厚設定による入射光と反射光の相殺の2つの効果によって反射を抑えるために反射防止効果が非常に高いが、現像後にBARC面が現れてしまい、基板内部にイオンを打ち込むことができない。感光性のDBARCは段差基板の凹んだ部分の膜厚が厚くなるために、この部分が溶解しないという問題がある。
【0015】
トライレイヤープロセスは、珪素含有中間膜にシルセスキオキサンベースのSOG膜を使った場合、イオンを打ち込んだ後の基板にダメージを与えずにこれを剥離することが出来ない。珪素ペンダント型中間膜はイオン打ち込み後の剥離は可能だが、珪素の含有率が低いためにレジストパターンをマスクにして珪素含有中間膜をドライエッチングするときの選択比が低いという問題がある。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、イオン打ち込み後の剥離が可能な珪素ペンダント型下層膜に於いて、露光と現像によってレジストと同時にパターンが形成可能なDBARCとしての機能を有する珪素含有下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明では、リソグラフィーで用いられるフォトレジスト下層膜材料であって、少なくとも下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、酸によって分解する架橋基を有するものを含むものであることを特徴とする珪素含有下層膜材料を提供する。
【化1】
(式中Rは水素原子又はメチル基であり、R、R、R、Rは水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基であり、Rは単結合、ジアルキルシリレン基、R、R、R、R10、R11は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいは下記一般式(2)で表される基を示す。また、R、R、R、R10、R11はそれぞれ結合して環を形成しても良い。また、0<a<1.0である。)
【化2】
(ここで上記一般式(2)において、R12、R13、R14、R15、R16は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、0≦m≦10である。)
【0018】
このような珪素含有下層膜材料であれば、現像後にポジレジストと同時に珪素含有下層膜のパターンも同時に形成し、その後にその下の炭化水素膜等をドライエッチングによって加工し、イオン打ち込みを行い、酸性の剥離液によって剥離することが可能なトライレイヤープロセス法が可能となる。
【0019】
また、前記一般式(1)で示される繰り返し単位aに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基を有する下記繰り返し単位b1、b2を共重合してなるものが好ましい。
【化3】
(上記一般式(3)において、R17、R19は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、R18、R20は単結合、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基で炭素数6〜16の芳香族基を有していても良く、又はフェニレン基、ナフチレン基である。X1、X2は単結合、フェニレン基、ナフチレン基、−C(=O)−O−R21−、−O−である。R21は単結合、炭素数1〜4のアルキレン基で、エーテル基、エステル基を有していても良い。n、pは1〜4の整数、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b1+b2<1.0である。)
【0020】
このように、繰り返し単位aには、上記(3)式に示すb、b単位を共重合することができる。これによって上層レジスト膜との密着性が向上し、架橋剤との架橋を行なう事ができる。
【0021】
また、前記酸によって分解する架橋基を有するものとして、分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤及び/又は、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤を添加したものが好ましい。
【0022】
このような架橋剤を添加することによって、架橋している膜をアルカリ現像液に溶解することができる。
【0023】
また、前記分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤が、下記一般式(4―1)で示され、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤が、下記一般式(4−2)又は(4−3)で示されるものが好ましい。
【化4】
(上記一般式(4−1)〜(4−3)において、R22、R23、R24は同一、非同一の水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基、R25、R26、R29は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、R27、R28、R30、R31は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、R27とR28、R30とR31とが結合して環を形成しても良い。Y1、Y2、Y3は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基で二重結合、三重結合、炭素数6〜14のアリーレン基、エーテル基、エステル基、アミド基を有していても良い。r、s、tは1〜5の整数である。)
【0024】
このような分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤及び分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤が好ましい。
【0025】
また、前記酸によって分解する架橋基を有するものとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位aに加えて、下記一般式(5)記載の酸分解性のオキシラン環を有する繰り返し単位を共重合してなるものが好ましい。
【化5】
(上記一般式(5)において、R32、R37は水素原子、メチル基、R33、R34、R38は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、R35、R36、R39、R40は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状のアルキレン基で、R35とR36、R39とR40とが結合して環を形成しても良い。0≦c1<1.0、0≦c2<1.0、0≦c1+c2<1.0である。)
【0026】
このように、酸によって分解する架橋基としては、繰り返し単位aに加えて、上記のような酸分解性のオキシラン環を有する繰り返し単位を共重合することができる。
【0027】
更に、有機溶剤、塩基性化合物、酸発生剤、架橋剤のいずれか1つ以上を含有するものが好ましい。
【0028】
このように有機溶剤を加えれば、ベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等を溶解することができ、塩基性化合物の種類や量を調整することによって下層膜の感度を調整し、レジストパターンのアンダーカットや裾引き形状を矯正することが出来る。また、酸発生剤を添加することで、露光部分がアルカリ現像液に溶解し、架橋剤を添加することで、酸脱離性の架橋基を形成することができる。
【0029】
本発明では、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、前記珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成してパターン回路領域を露光した後、アルカリ現像液で現像してポジ型レジストの露光部分を溶解させると同時に珪素含有下層膜の露光部分も溶解させることを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0030】
このように珪素含有膜がレジストの現像によるパターン形成と同時にパターンが形成できれば、レジストパターンをマスクにして珪素含有膜をドライエッチングで加工するときの選択比が低いという問題を解消できる。
【0031】
また、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、基板上に珪素を含まない炭化水素からなる下層膜を形成し、その上に少なくとも、上記珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成して露光と現像によってパターンを形成した後に、酸素、水素、アンモニア、水等のガスを用いたドライエッチングによって珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜を加工し、炭化水素下層膜をマスクにして基板を加工することが好ましい。
【0032】
このようなパターン形成方法であれば、レジストパターンをマスクにしてフロロカーボンガスによって珪素含有下層膜を加工する工程を省くことができる。
【0033】
また、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、基板上に珪素を含まない炭化水素からなる下層膜を形成し、その上に少なくとも、上記珪素含有下層膜材料を用いて珪素含有下層膜を基板上に形成し、該下層膜上にポジ型フォトレジスト膜を形成して露光と現像によってレジストパターンと珪素含有下層膜パターンを同時に形成した後に、酸素、水素、アンモニア、水から選ばれる1種以上のガスを用いたドライエッチングによって珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜を加工し、炭化水素下層膜をマスクにして基板にイオンを打ち込むことが好ましい。
【0034】
このように、炭化水素膜パターンをマスクにしてイオンの打ち込みを行うことができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の珪素含有下層膜材料は、露光部がアルカリ現像液に溶解するレジスト下層反射防止膜として機能し、レジストパターンのドライエッチング転写を行わなくても珪素含有膜にパターンを転写することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明のパターン形成方法を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述のように、シルセスキオキサンベースの珪素含有膜は、レジストパターンをマスクにして珪素含有膜を加工するとき、及び珪素含有膜のパターンをマスクにしてその下の炭化水素膜を加工するときのドライエッチングの選択比が高く、優れた寸法制御性を示す。
しかしながら、イオン打ち込み後にシルセスキオキサンベースの珪素含有膜を溶液で剥離しようとすると弗酸を用いる必要があるが、弗酸によって下地の酸化膜がダメージを受ける問題がある。また、フルオロカーボンガスによるドライエッチングによって剥離することも可能であるが、この場合も下地の酸化膜にダメージを与えてしまう。一方、珪素ペンダント型の珪素含有膜は、下地にダメージを与えない酸で剥離可能であるが、珪素の含有率が低いために、レジストパターンをマスクにして珪素含有膜をドライエッチングで加工するときの選択比が低く寸法制御性も低いという問題があった。
従って、エッチング選択比が高くて寸法制御性が高く、イオン打ち込み後に剥離可能なトライレイヤープロセス用の珪素含有下層膜材料の開発が望まれていた。
【0038】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、珪素含有下層膜がレジストの現像によるパターン形成と同時にパターンが形成できれば、レジストパターンをマスクにして珪素含有下層膜をドライエッチングで加工するときの選択比が低いという問題は解消され、下地の炭化水素膜を塗布するときに平坦化していれば、その上の珪素含有下層膜の膜厚は一定であり、珪素含有下層膜の膜厚変動によってスペース部分が溶解しないという問題も解消されることを見出した。
【0039】
その結果、本発明者らは、少なくとも、酸脱離性の珪素ペンダント高分子化合物と、酸脱離性の架橋基を形成するエノールエーテル基やオキシラン基を含有する架橋剤を添加してなるレジスト下層反射防止膜材料を用いたトライレイヤープロセスを用いることによって、現像後にポジレジストと同時に珪素含有下層膜のパターンも同時に形成し、その後にその下の炭化水素膜をドライエッチングによって加工し、イオン打ち込みを行い、酸性の剥離液によって剥離することが可能なトライレイヤープロセス法が可能であることに想到し、本発明を完成させた。
【0040】
即ち、本発明は、リソグラフィーで用いられるフォトレジスト下層膜材料であって、
少なくとも下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、酸によって分解する架橋基を有するものを含むものであることを特徴とする珪素含有下層膜材料である。
【化6】
(式中Rは水素原子又はメチル基であり、R、R、R、Rは水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基であり、Rは単結合、ジアルキルシリレン基、R、R、R、R10、R11は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいは下記一般式(2)で表される基を示す。また、R、R、R、R10、R11はそれぞれ結合して環を形成しても良い。また、0<a<1.0である。)
【化7】
(ここで上記一般式(2)において、R12、R13、R14、R15、R16は同一、非同一の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、0≦m≦10である。)
【0041】
ここで、一般式(1)で示される珪素含有の繰り返し単位は、具体的には下記に例示することが出来る。
【化8】
【0042】
前記一般式(1)で示される繰り返し単位aに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基を有する下記繰り返し単位b1、b2を共重合してもよい。
【化9】
【0043】
上記一般式(3)で示される繰り返し単位b1、b2を得るためのモノマーは、ヒドロキシ基の水素原子が重合時にはアセチル基やホルミル基、ピバロイル基、アセタール基、炭素数が4〜16の3級アルキル基、トリメチルシリル基などで置換されていてもよく、重合後の脱保護によってヒドロキシ基にしても良い。
【0044】
また、一般式(3)記載のヒドロキシ基、カルボキシル基含有の繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示することが出来る。特に、ヒドロキシ基としては、架橋効率が高い1級のヒドロキシ基、フェノール性のヒドロキシ基が好ましい。
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
レジスト下層膜としては、下層膜上にレジスト溶液をディスペンスしたときにレジスト溶液に溶解しないことと、レジスト膜とミキシングしない特性が必要である。そのため、下層膜塗布後のベークによって架橋する必要がある。
しかしながら、架橋した膜はアルカリ現像液には溶解せず、露光部分に酸が発生し、酸によって一般式(1)で示される珪素含有酸不安定基が脱保護反応を起こしカルボン酸が発生したとしても、膜内が架橋している場合はアルカリ現像液には不溶である。
したがって、架橋している膜をアルカリ現像液に溶解するためには、熱によって架橋し、酸によって架橋基が分解する機構が必要であり、酸によって分解するアセタール基や3級エステル基で熱架橋する架橋剤が好ましい。
【0055】
即ち、酸によって分解する架橋基を有するものとして、分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤及び/又は、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤を添加することができる。
【0056】
また、分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤は、下記一般式(4―1)で示され、分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤は、下記一般式(4−2)又は(4−3)で示されるものである。
【化20】
【0057】
上記のように、アセタール基によって架橋を形成する架橋剤としては、分子内に複数のエノールエーテル基を有する化合物を挙げることが出来る。
一般式(4)−1で示される分子内に少なくとも2つ以上のエノールエーテル基を有する架橋剤は、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレングリコールジプロペニルエーテル、トリエチレングリコールジプロペニルエーテル、1,2−プロパンジオールジプロペニルエーテル、1,4−ブタンジオールジプロペニルエーテル、テトラメチレングリコールジプロペニルエーテル、ネオペンチルグリコールジプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、ヘキサンジオールジプロペニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールトリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、ソルビトールテトラプロペニルエーテル、ソルビトールペンタプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、特開平6−230574号、特表2007−536389号、特表2008−501985号に例示される。
【0058】
更には下記例示の架橋剤を用いることも出来る。
【化21】
【0059】
エノールエーテル基は、熱によってヒドロキシ基とアセタール結合し、分子内に複数のエノールエーテル基を有する化合物を添加することによって、アセタール基による熱架橋が行われる。そして、アセタール基は露光部分に発生する酸によって分解し、露光部分がアルカリ現像液に溶解する下層膜が形成される。
【0060】
分子内に少なくとも2つ以上のオキシランを含有する酸脱離性の3級エステル基を有する架橋剤としては、特開2006−96848号に例示されており、オキシランが熱によって架橋し、3級エステル部分が酸によって分解する。
【0061】
一方、酸によって分解する架橋基を有するものとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位aに加えて、下記一般式(5)記載の酸分解性のオキシラン環を有する繰り返し単位を共重合することができる。
【化22】
【0062】
一般式(5)記載の酸脱離性のオキシラン環を有する繰り返し単位としては、特開2001−226430号記載の繰り返し単位を用いることが出来る。特開2001−226430号にはオキシラン環の熱による架橋と、酸による分解機構が示されている。
【0063】
一般式(5)記載の酸分解性のオキシラン環を有する繰り返しは、具体的には下記に例示することが出来る。
【化23】

ここでRは水素原子、又はメチル基である。
【0064】
珪素含有下層膜を反射防止膜として機能させるには、光吸収の高い芳香族を有する繰り返し単位を共重合する必要がある。
光吸収性のモノマーdとしては、具体的には下記に例示することが出来る。
【0065】
【化24】
【0066】
更に、レジストとの密着性やレジストからの酸やアミンの拡散移動を防止するためのモノマーeを共重合することが出来る。 ここで示されるモノマーeとはレジストの密着性基として用いられるヒドロキシ基、ラクトン環、エステル基、エーテル基、シアノ基、酸無水物を有するモノマーであり、具体的には下記に例示される。
【0067】
【化25】
【0068】
【化26】
【0069】
本発明の珪素含有下層膜に用いられるベースポリマーとしては、下記一般式(6)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位f1〜f3を共重合することができる。
【化27】
式中、R40、R44、R48は水素原子又はメチル基、R41は単結合、フェニレン基、−O−R48’−、又は−C(=O)−Y−R48’−である。Yは酸素原子又はNH、R48’は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R42、R43、R45、R46、R47、R49、R50、R51は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R52−、又は−C(=O)−Z−R52−である。Zは酸素原子又はNH、R52は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Mは非求核性対向イオンを表す。)
【0070】
ここで、a〜fの具体的な構造は上記の通りであるが、共重合の比率としては0<a≦1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b1+b2<1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e≦0.8、0≦f1≦0.3、0≦f2≦0.3、0≦f3≦0.3、0≦f1+f2+f3≦0.3の範囲であり、より好ましくは、0.1≦a≦0.9、0≦b1≦0.9、0≦b2≦0.9、0≦b1+b2≦0.9、0≦c≦0.7、0≦d≦0.7、0≦e≦0.7、更に好ましくは0.15≦a≦0.8、0≦b1≦0.8、0≦b2≦0.8、0≦b1+b2≦0.8、0≦c≦0.6、0≦d≦0.6、0≦f1≦0.2、0≦f2≦0.2、0≦f3≦0.2、0≦f1+f2+f3≦0.2の範囲である。
【0071】
なお、a+b1+b2+c+d+e+f1+f2+f3=1であることが好ましいが、a+b1+b2+c+d+e+f1+f2+f3=1とは、繰り返し単位a、b1、b2、c、d、e、f1、f2、f3を含む高分子化合物(共重合体)において、繰り返し単位a、b1、b2、c、d、e、f1、f2、f3の合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示す。
【0072】
これら本発明の珪素含有下層膜材料に含まれる共重合体を合成するには、1つの方法としてはモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤あるいはカチオン重合開始剤を加え加熱重合を行う。ヒドロキシ基を含むモノマーのヒドロキシ基をアセチル基で置換させておき、得られた高分子化合物を有機溶剤中アルカリ加水分解を行い、アセチル基を脱保護することもできる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。カチオン重合開始剤としては、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸などの酸、BF、AlCl、TiCl、SnClなどのフリーデルクラフツ触媒のほか、I、(CCClのようにカチオンを生成しやすい物質が使用される。
【0073】
反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0074】
本発明に係る共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、1,500〜200,000の範囲が好ましく、より好ましくは2,000〜100,000の範囲である。分子量分布は特に制限がなく、分画によって低分子体及び高分子体を除去し、分散度を小さくすることも可能であり、分子量、分散度が異なる2つ以上の一般式(1)の重合体の混合、あるいは組成比の異なる2種以上の一般式(1)の重合体を混合してもかまわない。
【0075】
本発明の珪素含有下層膜材料に添加される酸発生剤として、露光部分をアルカリ現像液に溶解させるために光酸発生剤が必要である。それも、塗布後のベーク架橋で分解しない高い熱安定性を有する光酸発生剤が好ましい。この様な光酸発生剤としては、スルホニウム塩系の光酸発生剤を挙げることが出来る。酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 f1〜f3の重合性の光酸発生剤が共重合されている場合は添加型の光酸発生剤は必ずしも必要ではない。
【0076】
前述した光酸発生剤の添加量は、ベースポリマー100部に対して好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部より多ければ、酸発生量が多く、露光部分のアルカリ溶解速度が十分となり、50部より少なければ、上層レジストへ酸が移動することによるミキシング現象を抑制できる。
【0077】
更に、本発明の珪素含有下層膜材料には、塩基性化合物を配合することができる。塩基性化合物の種類や量を調整することによって下層膜の感度を調整し、レジストパターンのアンダーカットや裾引き形状を矯正することが出来る。即ち、レジストパターンが裾引き形状の場合は塩基性化合物の添加量を少なくし、アンダーカット形状の場合は塩基性化合物の添加量を増やす。
【0078】
塩基性化合物としては、酸発生剤から発生した酸をトラップし、酸の拡散を制御してコントラストを向上させる効果があり、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する化合物を挙げることができる。
【0079】
また、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及び特許第3991462号公報に記載のカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして併用することもできる。また、α位がフッ素化されていないスルホン酸およびカルボン酸のオニウム塩系のクエンチャーは塩基性がないが、α位がフッ素化された超強酸と塩交換することによってα位がフッ素化されたスルホン酸を中和することによってクエンチャーとして働く。
【0080】
なお、クエンチャーの配合量は、ベース樹脂100部に対して0.001〜15部、特に0.01〜10部が好適である。配合量が0.001部より多ければ、配合効果が大きく、15部を以下であれば、感度が低下しすぎる恐れがない。
【0081】
特開2008−239918号公報記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。このものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型のクエンチャーは、ネガレジストの場合の頭張りやブリッジを低減させる効果がある。
【0082】
本発明の珪素含有下層膜材料は、トライレイヤープロセス用の中間膜として用いることが出来る。この珪素含有中間膜の上にはフォトレジスト膜を形成し、下には炭化水素からなる下層膜を形成する。ここで、炭化水素下層膜としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノールとアルデヒド類との反応によるノボラック樹脂を挙げることが出来る。更には、フェノール化合物をアルデヒドを使わずにジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンと共重合した樹脂を挙げることも出来る。
【0083】
更には、ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレン、アルコキシビニルナフタレン、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類から選ばれる下層膜材料を挙げることが出来る。
【0084】
更には高炭素樹脂として、特開2004−205658号、同2004−205676号、同2004−205685号、同2004−271838号、同2004−354554号、同2005−10431号、同2005−49810号、同2005−114921号、同2005−128509号、同2005−250434号、同2006−053543号、同2006−227391号、同2006−259249号、同2006−259482号、同2006−285095号、同2006−293207号、同2006−293298号、同2007−140461号、同2007−171895号、同2007−199653号、同2007−316282号、同2008−26600号、同2008−65303号、同2008−96684号、同2008−257188号、同2010−160189号、同2010−134437号、同2010−170013号、同2010−271654号、同2008−116677号、同2008−145539号に示される下層膜材料を挙げることが出来る。
【0085】
炭化水素からなるレジスト下層反射防止膜材料における架橋剤の配合量は、ベースポリマー(全樹脂分)100部(質量部、以下同じ)に対して5〜50部が好ましく、特に10〜40部が好ましい。5部以上であれば、レジスト膜とミキシングを起こす恐れがなく、50部以下であれば、反射防止効果を有し、架橋後の膜にひび割れが入る恐れはない。
炭化水素膜用架橋剤としては、前述の熱によって架橋し、酸によって分解する複数のエノールエーテルを有する化合物や、複数の3級エステルのオキシランを有する化合物を用いることが出来る。これ以外には、前述の高炭素樹脂の下層膜出願に例示されている架橋剤を用いることも出来る。
【0086】
前述の炭化水素下層膜材料においては、熱などによる架橋反応を更に促進させるための酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0087】
本発明の珪素含有下層膜材料は、シルセスキオキサン等をベースにした珪素含有膜に比べて珪素含有率が低い。シルセスキオキサンベースの珪素含有膜は珪素が30質量%以上であるが、本発明のペンダント型のメタクリレートをベースとする珪素含有下層膜中の珪素含有率は10〜30質量%の範囲である。従って、その下の炭化水素下層膜の炭素の割合が高すぎると、酸素ガスや水素ガスを用いて珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜をエッチングするときの選択比が低くなってしまう場合がある。この場合は、炭化水素下層膜の炭素の割合を下げる。ここで、炭化水素下層膜の炭素の割合は好ましくは90質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。炭素の割合を75質量%以下にするには、クレゾールノボラック樹脂は好ましくなく、ヒドロキシスチレンに(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、シクロオレフィン、糖類等を共重合あるいはブレンドした下層膜材料が好ましく用いられる。
【0088】
炭素含有率が低い下層膜としては、WO2004/034148号、特開2002−323771号、同2007−256773号、同2007−17949号、同2007−17950号に示されている。Oガス、Hガスによるエッチング速度を早くするには炭素の割合を下げる必要があるが、炭素の割合は40質量%以上、好ましくは50質量%以上であれば、イオンを打ち込む時や、その下の基板をフロロカーボンガス等でドライエッチングする時の耐性が不足する恐れがない。
【0089】
本発明の珪素含有下層膜材料、炭化水素膜材料、レジスト材料において使用可能な有機溶剤としては、前記のベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル,プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明の珪素含有下層膜材料においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0090】
有機溶剤の配合量は、全ベースポリマー100部に対して200〜10,000部が好ましく、特に300〜8,000部とすることが好ましい。
【0091】
更に、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、前記炭化水素の下層膜を形成し、その上に本発明の珪素含有下層膜を形成し、該下層膜の上にフォトレジスト組成物によるレジスト膜を形成して、該レジスト膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジストと珪素含有下層膜のパターンを同時に形成し、該パターンが形成された珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素膜をエッチングし、更に基板をエッチングによってパターンを形成する、あるいは炭化水素膜をマスクにしてイオンを打ち込むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0092】
炭化水素膜の下層は、被加工基板、あるいはイオン打ち込み基板となるSi、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜、あるいはFin−FETの段差基板が用いられ、通常10〜10,000nm、特に20〜5,000nm厚さに形成し得る。
被加工基板と本発明の珪素含有下層膜との間に、被加工基板を加工するためのハードマスクを敷いても良く、ハードマスクとしては被加工基板がSiO系の絶縁膜基板の場合はSiN、SiON、p−Si、p−Si、α−Si、W、W−Si、アモルファスカ−ボン等が用いられる。また、被加工基板がp−Si、W−Si、Al−Si等のゲート電極の場合はSiO、SiN、SiON等が用いられる。
【0093】
本発明の珪素含有下層膜材料を用いたパターンの形成方法について図1を用いて具体的に説明する。
図1(A)に示したように、基板10の上に、炭化水素下層膜20をスピンコート法などで形成した後、図1(B)に示すように、珪素含有下層膜30を形成する。本発明の珪素含有下層膜材料は、通常のフォトレジスト膜の形成法と同様にスピンコート法などで基板上に形成することが可能である。
その上に図1(C)に示すようにレジスト膜40を形成する。その後、有機溶剤を蒸発させ、レジスト膜40とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜300℃の範囲内で、10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。なお、このレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、5〜200nm、特に10〜150nmとすることが好ましく、反射防止効果の高い膜厚を選択することが出来る。
トライレイヤープロセスに適用した場合の珪素含有反射防止効果に最適な光学定数(n、k値)は、特開2006−293207号に記載されているように、n値が1.5〜1.9、k値が0.15〜0.3、膜厚が250〜130nmの範囲である。
【0094】
この場合、このレジスト膜40を形成するためのフォトレジスト組成物としては例えば特開平9−73173号公開、特開2000−336121に示されるような公知の炭化水素系からなるベースポリマーを使用することができる。
なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、20〜500nm、特に30〜400nmが好ましい。
【0095】
上記フォトレジスト組成物によりレジスト膜を形成する場合、前記レジスト珪素含有下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法などが好ましく用いられる。レジスト膜をスピンコート法などで形成後、プリベークを行うが、80〜180℃で、10〜300秒の範囲で行うのが好ましい。
【0096】
その後、常法に従い、図1(D)に示すように、レジスト膜40のパターン回路領域の露光を行い、図1(E)に示すようにポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得ると同時に珪素含有下層膜30のパターンを得る。
レジスト膜の上層にレジスト保護膜を適用することも出来る。レジスト保護膜としては、反射防止機能を有することも出来、水溶性と非水溶性の材料がある。非水溶性材料としては、アルカリ現像液に溶解するものとアルカリ現像液に溶解せず、フッ素系溶媒で剥離する材料があるが、前者の方がレジストの現像と同時に剥離可能である分だけプロセス的なメリットがある。液浸露光の場合は、レジストからの酸発生剤などの添加剤の溶出を防ぐ目的と滑水性を向上させる目的で保護膜を設ける場合がある。
【0097】
ここで、保護膜としては、水に溶解せず、アルカリに溶解する特性を有するものが好ましく、αトリフルオロメチルヒドロキシ基を有する高分子化合物を炭素数4以上の高級アルコールや炭素数8〜12のエーテル化合物に溶解したものが用いられる。保護膜の形成方法としては、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜用液をスピンコートし、プリベークによって形成する。保護膜の膜厚としては10〜200nmの範囲が好ましく用いられる。ドライまたは液浸露光後、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液で10〜300秒間現像を行う。アルカリ現像液は2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられている。現像可溶の保護膜を用いた場合、保護膜の剥離とレジスト膜の現像を同時に行うことができる。
【0098】
また、PEB前に、レジスト膜上に水が残っていると、PEB中に水がレジスト中の酸を吸い出してしまい、パターン形成ができなくなる。PEB前に保護膜上の水を完全に除去するため、PEB前のスピンドライ、膜表面の乾燥空気や窒素によるパージ、あるいは露光後のステージ上の水回収ノズル形状や水回収プロセスの最適化などによって膜上の水を乾燥あるいは回収する必要がある。
【0099】
現像は、アルカリ水溶液を用いたパドル法、ディップ法などが用いられ、特にはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液を用いたパドル法が好ましく用いられ、室温で10秒〜300秒の範囲で行われ、その後純水でリンスし、スピンドライあるいは窒素ブロー等によって乾燥される。アルカリ現像によってポジ型レジストの露光部分が溶解するが、同時に露光部分の珪素含有下層膜30も溶解する。炭化水素下層膜20に熱によって架橋し酸によって分解する架橋剤と光酸発生剤を添加している場合は、露光部分が珪素含有下層膜30の溶解と共に炭化水素膜の表面近くが溶解する。しかしながら、炭化水素膜20は光吸収が強いのと膜厚が厚いために、基板10まで溶解することはない。
【0100】
次に、図1(F)に示すようにレジストパターンとその下の珪素含有下層膜30をマスクにしてドライエッチングなどで、炭化水素膜20のエッチングを行う。アルカリ現像液に溶解しない珪素含有下層膜の場合は、レジストパターンをマスクにしてフロロカーボンガスによって珪素含有下層膜を加工する必要があるが、本発明のパターン形成方法ではこれをスキップすることが出来る。炭化水素膜のドライエッチングは、酸素ガス、水素ガスに加えてHe、Arなどの不活性ガスや、CO、CO、NH、SO、N、NOガスを加えることも可能である。更に基板を加工する場合、基板がSiO、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、ポリシリコン(p−Si)やAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。また、図1(G)に示すように、イオンを打ち込む場合は基板の加工は必ずしも必要ではなく、炭化水素膜パターンをマスクにしてイオンの打ち込みを行う。図1(H)に示すように、イオンを打ち込んだ後に、本発明の珪素含有下層膜30と炭化水素下層膜20の剥離を行う。この剥離は、硫酸過酸化水素水などで剥離することが出来る。特に、珪素含有下層膜と炭化水素下層膜の架橋がビニルエーテルのアセタールで行われている場合は、この結合は酸によって分解するので、硫酸だけで剥離できる。過酸化水素水を含んでいない剥離剤を用いれば、基板が酸化されることがない。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
珪素含有ポリマー1
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化28】
【0102】
珪素含有ポリマー2
分子量(Mw)=6,900
分散度(Mw/Mn)=1.75
【化29】
【0103】
珪素含有ポリマー3
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化30】
【0104】
珪素含有ポリマー4
分子量(Mw)=7,400
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化31】
【0105】
珪素含有ポリマー5
分子量(Mw)=7,400
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化32】
【0106】
珪素含有ポリマー6
分子量(Mw)=7,400
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化33】
【0107】
珪素含有ポリマー7
分子量(Mw)=7,900
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化34】
【0108】
珪素含有ポリマー8
分子量(Mw)=7,100
分散度(Mw/Mn)=1.72
【化35】
【0109】
珪素含有ポリマー9
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.73
【化36】
【0110】
珪素含有ポリマー10
分子量(Mw)=7,600
分散度(Mw/Mn)=1.84
【化37】
【0111】
比較珪素含有ポリマー1
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化38】
【0112】
比較珪素含有ポリマー2
分子量(Mw)=7,500
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化39】
【0113】
[珪素含有レジスト下層反射防止膜材料の調製]
上記珪素含有ポリマー1〜10で示される樹脂、比較ポリマー1、2で示される樹脂、下記で示される酸発生剤、下記架橋剤1〜8、比較架橋剤1、2で示される架橋剤を、FC−4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって珪素含有下層膜材料(Si下層膜1〜13、比較Si下層膜1〜3)をそれぞれ調製した。比較珪素含有ポリマー1と2は、珪素とエステルがプロピレン基でつながっているために酸によって脱保護されることがない。
【0114】
上記で調製した珪素含有下層膜材料(Si下層膜1〜13、比較Si下層膜1〜3)の溶液をシリコン基板上に塗布して、190℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚80nmのレジスト下層反射防止膜を形成した。
レジスト下層膜の形成後、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける屈折率(n,k)を求め、その結果を表1に示した。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示されるように、Si下層膜1〜13では、レジスト下層膜の屈折率のn値が1.5〜1.8、k値が0.2〜0.45の範囲であり、特に30nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの最適な屈折率(n)と消光係数(k)を有することがわかる。
【0117】
【化40】
【0118】
比較架橋剤
【化41】
【0119】
光酸発生剤: PAG1(下記構造式参照)
【化42】
【0120】
クエンチャー: Quencher1〜5(下記構造式参照)
【化43】
【0121】
表2に示す組成で炭化水素下層膜樹脂1〜9、酸発生剤、架橋剤をFC−4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表2に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって炭化水素下層膜を調製した。
【0122】
【表2】
【0123】
炭化水素下層膜樹脂1
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化44】
【0124】
炭化水素下層膜樹脂2
分子量(Mw)=10,100
分散度(Mw/Mn)=2.05
【化45】
【0125】
炭化水素下層膜樹脂3
分子量(Mw)=960
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化46】
【0126】
炭化水素下層膜樹脂4
分子量(Mw)=3,300
分散度(Mw/Mn)=3.33
【化47】
【0127】
炭化水素下層膜樹脂5
分子量(Mw)=4,600
分散度(Mw/Mn)=4.66
【化48】
【0128】
炭化水素下層膜樹脂6
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.55
【化49】
【0129】
炭化水素下層膜樹脂7
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.75
【化50】
【0130】
炭化水素下層膜樹脂8
【化51】
【0131】
炭化水素下層膜樹脂9
【化52】
【0132】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH:シクロヘキサノン
【0133】
熱酸発生剤: TAG1(下記構造式参照)
【化53】
【0134】
表3に示す組成でArF単層レジストをFC−4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表3に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってArF単層レジストを調製した。
【表3】
【0135】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=7,500
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化54】
【0136】
レジストポリマー2
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化55】
【0137】
炭化水素下層膜材料の溶液(炭化水素下層膜1〜8)をSi基板上に塗布して、200℃で60秒間ベークして膜厚150nmの炭化水素下層膜を形成した。その上に珪素含有下層膜材料の溶液(Si下層膜1〜13、比較Si下層膜1〜3)を塗布し、80nm膜厚の珪素含有下層膜を形成した。その上に、ArF単層レジスト1、2を塗布しプリベーク110℃60秒間行って膜厚120nmのレジスト膜を形成した。次いでArF露光装置((株)ニコン製;S307E、NA0.85、σ0.93、2/3輪体照明、6%ハーフトーン位相シフト)で露光し、90℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、ポジ型の80nmラインアンドスペースパターンを得た。現像後のウェハーを割断し、レジストパターンとその下の珪素含有下層膜のパターンが形成されているかどうかを確認した。次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにして珪素含有下層膜をマスクにして炭化水素下層膜の加工を行った。
現像後のウェハーを割断し、炭化水素下層膜のパターンが形成されているかどうかを確認した。結果を表4に示す。
【0138】
エッチング条件は下記の通りである。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
H2ガス流量 45sccm
時間 150sec
【0139】
【表4】
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0141】
10…基板、 10b…イオンが打ち込まれた基板の領域、 20…炭化水素下層膜、
30…珪素含有下層膜、 40…レジスト膜
図1