特許第5957424号(P5957424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957424
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】共有結合型ダイアボディとその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160714BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20160714BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160714BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160714BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160714BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160714BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160714BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20160714BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07K16/46ZNA
   C07K16/18
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 D
   A61P35/00
   A61P31/00
   A61P31/10
   A61P31/12
【請求項の数】22
【全頁数】143
(21)【出願番号】特願2013-159568(P2013-159568)
(22)【出願日】2013年7月31日
(62)【分割の表示】特願2008-506816(P2008-506816)の分割
【原出願日】2006年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-14363(P2014-14363A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年8月7日
(31)【優先権主張番号】60/671,657
(32)【優先日】2005年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, レスリー, エス.
(72)【発明者】
【氏名】ファン,リン
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0220388(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/016750(WO,A2)
【文献】 特表2009−508466(JP,A)
【文献】 FEBS Lett.,1999年 7月 2日,Vol.454, No.1-2,p.90-94
【文献】 Protein Eng.,2001年 2月 1日,Vol.14, No.12,pp.1025-1033
【文献】 Protein Eng. Des. Sel.,2004年 1月,Vol.17, No.1,pp.21-27
【文献】 ASANO R. et al.,A diabody for cancer immunotherapy and its functional nhancement by fusion of human Fc region,生化学,2004年 8月25日,Vol.76, No.8,p.992
【文献】 Acta. Pharmacol. Sin.,2005年 1月,Vol.26, No.1,p.1-9
【文献】 Cancer Lett.,2002年 3月 8日,Vol.177, No.1,p.29-39
【文献】 Leukemia,2004年 3月,Vol.18, No.3,p.513-520
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖からなり、前記第1及び第2のポリペプチド鎖が互いに共有結合したダイアボディ分子であって、
(a) 第1のポリペプチド鎖は、アミノ(N)末端及びカルボキシ(C)末端を有し、N末端からC末端の方向に、
(i) N末端からC末端に向けて、FcドメインのCH2ドメイン及びCH3ドメインを含むドメインC、
(ii) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含むドメインA、
(iii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含むドメインB、および
(iv) システイン残基(Cys1)を含むドメイン、
を含んでなり、
前記ドメインAと前記ドメインBが共有結合で連結されているが、前記ドメインAと前記ドメインBはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
(b) 第2のポリペプチド鎖は、アミノ(N)末端及びカルボキシ(C)末端を有し、N末端からC末端の方向に、
(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含むドメインD、
(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含むドメインE、および
(iii) システイン残基(Cys2)を含むドメイン、
を含んでなり、
前記ドメインDと前記ドメインEが共有結合で連結されているが、前記ドメインDと前記ドメインEはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
(c) (i) 前記ドメインAと前記ドメインEが互いに会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;
(ii) 前記ドメインBと前記ドメインDが互いに会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成しており;
(iii) 前記第1のエピトープと前記第2のエピトープは異なるものであり;そして、
(iv) 前記第1のポリペプチド鎖と前記第2のポリペプチド鎖が、前記システイン残基(Cys1)と、前記システイン残基(Cys2)の間のジスルフィド結合を介して互いに共有結合ている
ことを特徴とするダイアボディ分子。
【請求項2】
前記ドメインCは、さらに前記CH2ドメインのN末端にヒンジドメインを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のダイアボディ分子。
【請求項3】
前記第1のポリペプチド鎖の前記システイン残基(Cys1)を含むドメインは アミノ酸配列VEPKSC(配列番号79)又はAEPKSC(配列番号18の245−250位のアミノ酸残基)を含み、前記第2のポリペプチド鎖の前記システイン残基(Cys2)を含むドメインはアミノ酸配列FNRGEC (配列番号23)を含む請求項1または2に記載のダイアボディ分子。
【請求項4】
前記第1の免疫グロブリンまたは前記第2の免疫グロブリンがヒト又はヒト化免疫グロブリンであり、該ヒト又はヒト化免疫グロブリンがIgA、IgE、IgD、IgGまたはIgMである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項5】
前記ヒト又はヒト化免疫グロブリンがIgGであり、該IgGがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される、請求項4に記載のダイアボディ分子。
【請求項6】
Fcドメインがヒト又はヒト化Fcドメインである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項7】
少なくとも1つのエピトープ結合部位がFcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII受容体に対して特異的である、請求項1〜2及び4〜6のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項8】
Fcγ受容体がFcγRIII受容体であり、該FcγRIII受容体がFcγRIIIA(CD16A)受容体またはFcγRIIIB(CD16B)受容体である、請求項7に記載のダイアボディ分子。
【請求項9】
FcγRIII受容体がFcγRIIIA(CD16A)受容体である、請求項8に記載のダイアボディ分子。
【請求項10】
Fcγ受容体がFcγRII受容体であり、該FcγRII受容体がFcγRIIA(CD32A)受容体またはFcγRIIB(CD32B)受容体である、請求項7に記載のダイアボディ分子。
【請求項11】
FcγRII受容体がFcγRIIB(CD32B)受容体である、請求項10に記載のダイアボディ分子。
【請求項12】
少なくとも一つのエピトープ結合部位が病原性抗原に対して特異的である、請求項1〜2及び4〜11のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項13】
少なくとも一つのエピトープ結合部位が毒素または薬物に対して特異的である、請求項1〜2及び4〜11のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項14】
前記ダイアボディがCD32Bに特異的なエピトープ結合部位とCD16Aに特異的なエピトープ結合部位を有する、請求項7に記載のダイアボディ分子。
【請求項15】
Fcドメインが、野生型Fcドメインに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異型Fcドメインである、請求項1〜1のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項16】
前記ダイアボディ分子が二量体であり、該二量体が
(a) 前記第1のポリペプチド鎖と前記第2のポリペプチド鎖の対を含む第1の単量体、および
(b) 前記第1のポリペプチド鎖と前記第2のポリペプチド鎖の対を含む第2の単量体、
からなり、前記第1および第2の単量体が各単量体の第1のポリペプチド鎖の前記ドメインC中の少なくとも1つのシステイン残基間の少なくとも1つのジスルフィド結合を介して共有結合で連結されている、請求項1〜2及び4〜15のいずれか1項に記載のダイアボディ分子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のダイアボディ分子の第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子。
【請求項19】
請求項17または18に記載の核酸分子を含有する宿主細胞。
【請求項20】
病原性抗原により特徴づけられる疾患または障害の治療に使用するための医薬の製造における、該病原性抗原と結合する請求項12に記載のダイアボディ分子の使用。
【請求項21】
前記疾患または障害が癌である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記疾患または障害が感染性疾患である、請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年4月15日付の米国仮出願第60/671,657号の恩恵を主張するものであり、その全内容を参照として本明細書に組み入れる。
【0002】
1. 発明の分野
本発明は、ダイアボディ分子と、免疫疾患や癌を含む様々な疾患および障害の治療におけるその使用に関する。本発明のダイアボディ分子は、少なくとも2つのエピトープ結合部位(同一のまたは異なるエピトープを認識しうる)を形成するように結合している少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むものである。さらに、エピトープは同一のまたは異なる分子に由来しても、同一のまたは異なる細胞上に位置してもよい。ダイアボディ分子の個々のポリペプチド鎖は、非ペプチド結合型共有結合を介して共有結合されており、例えば、各ポリペプチド鎖内に存在するシステイン残基のジスルフィド結合により共有結合されるが、これに限定されない。特定の実施形態において、本発明のダイアボディ分子は、該分子に抗体様機能性をもたせるFc領域をさらに含む。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
共有結合型ダイアボディ(covalent diabody)の設計は一本鎖Fv構築物(scFv)に基づいている(Holligerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; その全内容を参照することにより本明細書に組み入れる)。完全な非修飾型のIgGでは、VLおよびVHドメインが別々のポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ軽鎖と重鎖に位置している。抗体軽鎖と抗体重鎖の相互作用、特にVLドメインとVHドメインの相互作用により、該抗体のエピトープ結合部位の1つが形成される。これに対して、scFv構築物では、抗体のVLおよびVHドメインが1本のポリペプチド鎖に含まれているが、これらのドメインは、機能性のエピトープ結合部位へとこれら2つのドメインが自己集合することを可能にする、十分な長さの柔軟性リンカーによって分離されている。リンカーの長さが不十分なため(約12アミノ酸残基より短いため)、これらのドメインが自己集合できない場合には、2つのscFv構築物が相互作用して二価の分子を形成する(一方の鎖のVLが他方の鎖のVHと結合する)(Marvinら, 2005, Acta Pharmacol. Sin. 26:649-658)。さらに、該構築物のC末端にシステイン残基を付加させると、ポリペプチド鎖同士のジスルフィド結合が可能となり、生じる二量体はその二価分子の結合特性の妨害なしに安定化することが分かっている (例えば、Olafsenら, 2004, Prot. Engr. Des. Sel. 17:21-27参照)。さらに、特異性が異なっているVLおよびVHドメインを選択する場合には、二価であるだけでなく、二重特異性を示す分子を構築することができる。
【0004】
二価のダイアボディは、治療や免疫診断を含めて、広範囲の用途を有する。二価にすると、様々な用途でのダイアボディの設計および工学的操作が非常にフレキシブルとなり、多量体抗原に対する結合活性の向上、異なっている抗原の架橋、両標的抗原の存在に依存する特定の細胞型への直接的なターゲッティングが可能となる。それらの増大した結合価、低い解離速度、および(約50kDa以下の、小サイズのダイアボディの場合は)循環系からの速やかなクリアランスのため、当技術分野で知られたダイアボディ分子は腫瘍イメージングの分野においても特別に使用されている (Fitzgeraldら, 1997, Protein Eng. 10:1221)。異なっている細胞の架橋、例えば細胞傷害性T細胞の腫瘍細胞への架橋は特に重要である (Staerzら, 1985, Nature 314:628-631、およびHolligerら, 1996, Protein Eng. 9:299-305)。ダイアボディのエピトープ結合ドメインはまた、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞または他の単核細胞上に発現されるCD3、CD16、CD32もしくはCD64のような免疫エフェクター細胞の表面決定基にも向けられる。多くの研究において、エフェクター細胞の決定基、例えばFcγ受容体(FcγR)へのダイアボディ結合はまた、エフェクター細胞を活性化することが見出された (Holligerら, 1996, Protein Eng. 9:299-305; Holligerら, 1999, Cancer Res. 59:2909-2916)。通常、エフェクター細胞の活性化は、抗原と結合した抗体がFc-FcγR相互作用を介してエフェクター細胞に結合することによって開始される。したがって、これに関連して、本発明のダイアボディ分子は、それらがFcドメインを含むかどうかに係りなく、(例えば、当技術分野で知られたまたは本明細書に例示されたエフェクター機能アッセイ(例えば、ADCCアッセイ)でアッセイするとき)Ig様機能を示すことができる。腫瘍細胞とエフェクター細胞を架橋させることによって、ダイアボディは腫瘍細胞のすぐ近くにエフェクター細胞を引き寄せるだけでなく、腫瘍の効果的な死滅をもたらす (例えば、Cao and Lam, 2003, Adv. Drug. Deliv. Rev. 55:171-197を参照;その全内容を参照することにより本明細書に組み入れる)。
【0005】
2.1 エフェクター細胞受容体および免疫系におけるその役割
伝統的な免疫機能では、抗体-抗原複合体と免疫系の細胞との相互作用は、広範囲の応答をもたらし、その範囲はエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害作用、肥満細胞脱顆粒、および食作用)から免疫調節シグナル(例えば、リンパ球増殖および抗体分泌の調節)にまで及ぶ。これらの相互作用はすべて、抗体または免疫複合体のFcドメインが造血細胞上の特殊な細胞表面受容体と結合することにより開始される。抗体と免疫複合体により開始される細胞応答の多様性は、Fc受容体の構造上の不均一性からもたらされる。Fc受容体は、細胞内シグナル伝達を媒介すると思われる構造的に関連した抗原結合ドメインを共有する。
【0006】
タンパク質の免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーであるFcγ受容体は、免疫グロブリン分子のFcγ部分と結合することができる表面糖タンパク質である。このファミリーの各メンバーは、Fcγ受容体のα鎖上の認識ドメインを介して1以上のアイソタイプの免疫グロブリンを認識する。Fcγ受容体は免疫グロブリンサブタイプに対するその特異性によって定義される。IgGに対するFcγ受容体はFcγRと、IgEに対するものはFcεRと、そしてIgAに対するものはFcαRと呼ばれる。さまざまなアクセサリー細胞が異なるアイソタイプの抗体に対するFcγ受容体を持ち、抗体のアイソタイプが所与の応答にどのアクセサリー細胞が関わるかを決定する(Ravetch J.V.ら 1991, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92;Gerber J.S.ら 2001 Microbes and Infection, 3:131-139;Billadeau D.D.ら 2002, The Journal of Clinical Investigation, 2(109):161-1681;Ravetch J.V.ら 2000, Science, 290:84-89;Ravetch J.V.ら, 2001 Annu. Rev. Immunol. 19:275-90;Ravetch J.V. 1994, Cell, 78(4):553-60に論評される)。種々のFcγ受容体、それを発現する細胞、およびそのアイソタイプ特異性を表1にまとめてある(「免疫生物学:健康と病気における免疫系(Immunobiology: The Immune System in Health and Disease)」, 第4版. 1999, Elsevier Science Ltd/Garland Publishing, New Yorkから引用)。
【0007】
Fcγ受容体
このファミリーの各メンバーは、免疫グロブリン関連ドメインのC2セットに関係する細胞外ドメイン、1回膜貫通ドメインおよび可変長の細胞質内ドメインを持つ内在性膜糖タンパク質である。3種の公知のFcγRがあり、それぞれFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)と呼ばれる。3種の受容体は異なる遺伝子によりコードされる;しかし3種のファミリーメンバー間の広範な相同性は、これらが共通の祖先から、恐らくは遺伝子複製により生じたことを示唆する。
【0008】
FcγRII(CD32)
FcγRIIタンパク質は40KDaの内在性膜糖タンパク質であり、モノマーIgに対して低親和性(106M-1)であるため複合体化したIgGとだけ結合する。この受容体は、単球、マクロファージ、B細胞、NK細胞、好中球、肥満細胞、および血小板を含めて、全ての造血細胞上に存在する最も広く発現されているFcγRである。FcγRIIは、その免疫グロブリン結合鎖中に免疫グロブリン様領域を2つだけ有し、従って、IgGに対してFcγRIより遥かに低い親和性を有する。3種のヒトFcγRII遺伝子(FcγRII-A、FcγRII-BおよびFcγRII-C)が存在し、それらは全て凝集体または免疫複合体のIgGと結合する。
【0009】
FcγRII-AとFcγRII-Bの細胞質内ドメイン内には明確な相違があるので、受容体ライゲーションに対して2つの機能的に異種の応答を創出する。基本的な相違は、Aアイソフォームが細胞活性化(例えば、食作用および呼吸バースト)に至る細胞内シグナル伝達を開始するのに対して、Bアイソフォームは抑制的シグナルを開始し、例えばB細胞活性化を抑制する、ことにある。
【0010】
FcγRIII (CD16)
このクラスの不均一性のため、FcγRIIIのサイズはマウスおよびヒトで40〜80kDaの範囲に及ぶ。2つのヒト遺伝子が2種の転写産物をコードしており、すなわち、内在性膜糖タンパク質のFcγRIIIAと、グリコシルホスファチジル-イノシトール(GPI)結合型のFcγRIIIBとをコードする。1つのマウス遺伝子は膜貫通ヒトFcγRIIIAに相同性のFcγRIIIをコードしている。FcγRIIIは他の2つのFcγRのそれぞれと構造上の特徴を共有する。FcγRIIと同様に、FcγRIIIは低い親和性でIgGと結合し、対応する2つの細胞外Ig様ドメインを含む。FcγRIIIAはマクロファージ、肥満細胞で発現され、NK細胞では唯一のFcγRである。GPI結合型のFcγRIIIBは、目下、ヒト好中球でのみ発現されることが知られている。
【0011】
FcγRを介するシグナル伝達
活性化と抑制の両方のシグナルは、ライゲーション後にFcγRを介して伝達される。これらの正反対の機能は、異なる受容体アイソフォーム間の構造上の相違からもたらされる。受容体の細胞質内シグナル伝達ドメイン内の2つの異なるドメイン、すなわち、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)または免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)が、この異なる応答の原因となる。これらの構造体への異なる細胞質酵素の動員が、FcγR媒介細胞応答の結果を規定する。ITAM含有FcγR複合体にはFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIAが含まれるが、ITIM含有複合体にはFcγRIIBだけが含まれる。
【0012】
ヒト好中球はFcγRIIA遺伝子を発現する。免疫複合体または特異的抗体架橋を介するFcγRIIAクラスター形成は、ITAMを、ITAMリン酸化を容易にする受容体関連キナーゼとともに凝集させるように作用する。ITAMリン酸化はSykキナーゼに対するドッキング部位として役立ち、Sykキナーゼの活性化は下流の基質(例えば、PI3K)の活性化をもたらす。細胞活性化により前炎症性メディエーターが放出される。
【0013】
FcγRIIB遺伝子はBリンパ球上に発現され、その細胞外ドメインはFcγRIIAと96%同一であって、識別できない様式でIgG複合体と結合する。FcγRIIBの細胞質ドメイン中のITIMの存在が、FcγRの抑制サブクラスを規定する。最近、この抑制の分子的基礎が確立された。活性化FcγRとともに結合されると、FcγRIIB中のITIMはリン酸化されて、イノシトールポリリン酸5'-ホスファターゼ(SHIP)のSH2ドメインを引き付け、これがホスホイノシトールメッセンジャー(ITAM含有FcγR介在チロシンキナーゼ活性化の結果として放出される)を加水分解し、その結果、細胞内Ca++の流入を抑制する。従って、FcγRIIBの架橋は、FcγRライゲーションに対する活性化応答を消失させ、細胞応答性を抑制する。このようにしてB細胞活性化、B細胞増殖および抗体分泌が停止する。
【表1】
【発明の開示】
【0014】
3. 発明の概要
本発明は、共有結合型ダイアボディおよび/または共有結合型ダイアボディ分子、ならびに癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患、および細菌、真菌もしくはウイルスが原因の感染症を含む各種の疾患および障害の治療におけるその使用に関する。好ましくは、本発明のダイアボディは2つの異なる細胞上の2つの異なるエピトープに結合することができ、ここにおいて、第1のエピトープは第2のエピトープとは異なる細胞型に発現されるものであり、その結果該ダイアボディはこれら2つの細胞を寄せ集めることができる。
[1]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖からなるダイアボディ分子であって、
第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1のドメインと第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1のドメインと第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) Fcドメインを含む第6のドメインを含んでなり、第4のドメインと第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4のドメインと第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
ここにおいて、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;さらに、第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している;
ことを特徴とする上記ダイアボディ分子。
[2]
第3のドメインがヒンジドメインをさらに含む、[1]に記載のダイアボディ分子。
[3]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖からなるダイアボディ分子であって、
第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) ヒンジドメインとFcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1のドメインと第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1のドメインと第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) ヒト軽鎖定常ドメインのC末端の少なくとも2〜8アミノ酸残基のアミノ酸配列を含む第6のドメインを含んでなり、第4のドメインと第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4のドメインと第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
ここにおいて、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;
第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している;
ことを特徴とする上記ダイアボディ分子。
[4]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖からなるダイアボディ分子であって、
第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) ヒンジドメインを含む第3のドメインを含んでなり、第1のドメインと第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1のドメインと第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) ヒト軽鎖定常ドメインのC末端の少なくとも2〜8アミノ酸残基のアミノ酸配列を含む第6のドメインを含んでなり、第4のドメインと第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4のドメインと第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
ここにおいて、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;
第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している;
ことを特徴とする上記ダイアボディ分子。
[5]
ヒト軽鎖がヒトκ軽鎖である、[3]または[4]に記載のダイアボディ分子。
[6]
ヒト軽鎖がλ軽鎖である、[3]または[4]に記載のダイアボディ分子。
[7]
第6のドメインがC末端の6アミノ酸のアミノ酸配列を含み、該配列がPheAsnArgGlyGluCys(配列番号23)である、[5]に記載のダイアボディ分子。
[8]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、第1のポリペプチド鎖上の第1ドメインと第2ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基と、第2のポリペプチド鎖上の第4ドメインと第5ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基の間の少なくとも1個のジスルフィド結合を介して共有結合で連結されている、[1]、[2]、[3]または[4]に記載のダイアボディ分子。
[9]
第1のポリペプチド鎖上のシステイン残基が第3のドメインにあり、第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基が第6のドメインにある、[8]に記載のダイアボディ分子。
[10]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖からなるダイアボディ分子であって、
第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1のドメインと第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1のドメインと第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、および(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメインを含んでなり、第4のドメインと第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4のドメインと第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
ここにおいて、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;
第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成しており;そして
第3のドメインが第1のドメインと第2のドメインの両方のN末端側にある;
ことを特徴とする上記ダイアボディ分子。
[11]
第3のドメインがヒンジ領域をさらに含む、[10]に記載のダイアボディ分子。
[12]
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、第1のポリペプチド鎖上の第1ドメインと第2ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基と、第2のポリペプチド鎖上の第4ドメインと第5ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基の間の少なくとも1個のジスルフィド結合を介して共有結合で連結されている、[10]または[11]に記載のダイアボディ分子。
[13]
第1のポリペプチド鎖上の前記少なくとも1個のシステイン残基が第1ドメイン、第2ドメインおよび第3ドメインのC末端側にあり、第2のポリペプチド鎖上の前記少なくとも1個のシステイン残基が第4ドメインおよび第5ドメインのC末端側にある、[12]に記載のダイアボディ分子。
[14]
前記分子が野生型第1ドメインに対して第1ドメインの少なくとも1個のアミノ酸改変と、野生型第5ドメインに対して第5ドメインの少なくとも1個のアミノ酸改変を含み、第1ドメインと第5ドメインのそれぞれにおける該少なくとも1個のアミノ酸改変がシステインによる置換を含んでなり、その結果第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、第1ドメイン中の置換システイン残基と第5ドメイン中の置換システイン残基の間のジスルフィド結合を介して共有結合で連結される、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[15]
Fcドメインが野生型Fcドメインに対してアミノ酸改変を含み、該アミノ酸改変がアラニンによる215位の置換を含んでなる、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[16]
前記分子が2つの単量体からなり、各単量体が第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含んでなり、該単量体同士が各単量体の第1のポリペプチド鎖の第3ドメイン中の少なくとも1個のシステイン残基間の少なくとも1個のジスルフィド結合を介して共有結合で連結される、[3]、[10]または[11]に記載のダイアボディ分子。
[17]
第1ドメインと第4ドメインがそれぞれ第2ドメインおよび第5ドメインのN末端側に位置する、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[18]
第1ドメインと第4ドメインがそれぞれ第2ドメインおよび第5ドメインのC末端側に位置する、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[19]
第6ドメインが第4ドメインおよび第5ドメインのC末端側にある、[1]または[2]に記載のダイアボディ分子。
[20]
第1および第2ドメイン間の共有結合がペプチド結合である、[1]、[3]、[4]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[21]
第4および第5ドメイン間の共有結合がペプチド結合である、[1]、[3]、[4]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[22]
第1および第2ドメインが0、1、2、3、4、5、6、7、8または9アミノ酸残基により分離されている、[20]に記載のダイアボディ分子。
[23]
第4および第5ドメインが0、1、2、3、4、5、6、7、8または9アミノ酸残基により分離されている、[21]に記載のダイアボディ分子。
[24]
第1および第2のポリペプチド鎖からなるダイアボディ分子であって、
第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、および(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメインを含んでなり、第1のドメインと第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1のドメインと第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第3のドメイン、および(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第4のドメインを含んでなり、第3のドメインと第4のドメインが共有結合で連結されているが、第3のドメインと第4のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;
ここにおいて、第1のドメインと第3のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており、該エピトープ結合部位はCD32Bに対して特異的であり;
第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成しており、該エピトープ結合部位はCD16に対して特異的であり;そして
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、第1のポリペプチド鎖上の第1ドメインと第2ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基と、第2のポリペプチド鎖上の第3ドメインと第4ドメインの外側の少なくとも1個のシステイン残基の間のジスルフィド結合を介して共有結合で連結されており、第1のポリペプチド鎖上の該システイン残基は第1のポリペプチド鎖のC末端にはなく、また第2のポリペプチド鎖上の該システイン残基は第2のポリペプチド鎖のC末端にはない;
ことを特徴とする上記ダイアボディ分子。
[25]
第1および第2ドメイン間の共有結合がペプチド結合である、[24]に記載のダイアボディ分子。
[26]
第3および第4ドメイン間の共有結合がペプチド結合である、[24]に記載のダイアボディ分子。
[27]
ジスルフィド結合が第1のポリペプチド鎖上の少なくとも2個のシステイン残基と第2のポリペプチド鎖上の少なくとも2個のシステイン残基の間にある、[24]に記載のダイアボディ分子。
[28]
第1のエピトープと第2のエピトープが異なるものである、[1]、[3]、[4]、[10]または[24]に記載のダイアボディ分子。
[29]
第1のエピトープと第2のエピトープが同一分子に由来するエピトープである、[28]に記載のダイアボディ分子。
[30]
第1のエピトープと第2のエピトープが異なる分子に由来するエピトープである、[28]に記載のダイアボディ分子。
[31]
第1の免疫グロブリンまたは第2の免疫グロブリンがヒトまたはヒト化免疫グロブリンである、[1]、[3]、[4]、[10]または[24]に記載のダイアボディ分子。
[32]
第1の免疫グロブリンまたは第2の免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンであり、該ヒト免疫グロブリンがIgA、IgE、IgD、IgGまたはIgMである、[31]に記載のダイアボディ分子。
[33]
ヒト免疫グロブリンがIgGであり、該IgGがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される、[32]に記載のダイアボディ分子。
[34]
FcドメインがヒトFcドメインである、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[35]
FcドメインがIgA、IgE、IgD、IgGまたはIgMのFcドメインである、[34]に記載のダイアボディ分子。
[36]
FcドメインがIgGのFcドメインであり、該IgGがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される、[35]に記載のダイアボディ分子。
[37]
少なくとも1つのエピトープ結合部位がB細胞、T細胞、食細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または樹状細胞に対して特異的である、[1]、[3]、[4]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[38]
少なくとも1つのエピトープ結合部位が細胞表面マーカーに対して特異的である、[1]、[3]、[4]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[39]
細胞表面マーカーがFc受容体である、[38]に記載のダイアボディ分子。
[40]
Fc受容体が活性化性Fc受容体である、[39]に記載のダイアボディ分子。
[41]
Fc受容体が抑制性Fc受容体である、[39]に記載のダイアボディ分子。
[42]
Fc受容体がFcγ受容体である、[39]に記載のダイアボディ分子。
[43]
Fcγ受容体がFcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII受容体である、[42]に記載のダイアボディ分子。
[44]
Fcγ受容体がFcγRIII受容体であり、該FcγRIII受容体がFcγRIIIA(CD16A)受容体またはFcγRIIIB(CD16B)受容体である、[43]に記載のダイアボディ分子。
[45]
FcγRIII受容体がFcγRIIIA(CD16A)受容体である、[44]に記載のダイアボディ分子。
[46]
第1のエピトープ結合部位を構成するVL1領域とVH1領域が第1の免疫グロブリンに由来し、該免疫グロブリンが抗体3G8である、[42]に記載のダイアボディ分子。
[47]
第2のエピトープ結合部位を構成するVL1領域とVH1領域が第2の免疫グロブリンに由来し、該免疫グロブリンが抗体3G8である、[24]に記載のダイアボディ分子。
[48]
抗体3G8がヒト化されている、[46]に記載のダイアボディ分子。
[49]
抗体3G8がヒト化されている、[47]に記載のダイアボディ分子。
[50]
VL1領域が配列番号73のアミノ酸配列を含み、VH1領域が配列番号71のアミノ酸配列を含む、[48]に記載のダイアボディ分子。
[51]
VL1領域が配列番号73のアミノ酸配列を含み、VH1領域が配列番号71のアミノ酸配列を含む、[49]に記載のダイアボディ分子。
[52]
Fcγ受容体がFcγRII受容体であり、該FcγRII受容体がFcγRIIA(CD32A)受容体またはFcγRIIB(CD32B)受容体である、[43]に記載のダイアボディ分子。
[53]
FcγRII受容体がFcγRIIA(CD32A)受容体である、[52]に記載のダイアボディ分子。
[54]
第1のエピトープ結合部位を構成するVL1領域とVH1領域が第1の免疫グロブリンに由来し、該免疫グロブリンが抗体IV.3である、[53]に記載のダイアボディ分子。
[55]
抗体IV.3がヒト化されている、[54]に記載のダイアボディ分子。
[56]
FcγRII受容体がFcγRIIB(CD32B)受容体である、[53]に記載のダイアボディ分子。
[57]
第1のエピトープ結合部位を構成するVL1領域とVH1領域が第1の免疫グロブリンに由来し、該免疫グロブリンが抗体2B6である、[56]に記載のダイアボディ分子。
[58]
第1のエピトープ結合部位を構成するVL1領域とVH1領域が第1の免疫グロブリンに由来し、該免疫グロブリンが抗体2B6である、[24]に記載のダイアボディ分子。
[59]
抗体2B6がヒト化されている、[57]に記載のダイアボディ分子。
[60]
抗体2B6がヒト化されている、[58]に記載のダイアボディ分子。
[61]
VL1領域が配列番号41、配列番号42、配列番号43のアミノ酸配列を含み、VH1領域が配列番号40のアミノ酸配列を含む、[59]に記載のダイアボディ分子。
[62]
VL1領域が配列番号41、配列番号42、配列番号43のアミノ酸配列を含み、VH1領域が配列番号40のアミノ酸配列を含む、[60]に記載のダイアボディ分子。
[63]
VL1領域が野生型2B6 VL1領域に対してアミノ酸改変を含み、該アミノ酸改変がシステインによる105位の置換からなり、かつVH1領域が野生型2B6 VH1領域に対してアミノ酸改変を含み、該アミノ酸改変がシステインによる44位の置換からなる、[59]に記載のダイアボディ分子。
[64]
VL1領域が野生型2B6 VL1領域に対してアミノ酸改変を含み、該アミノ酸改変がシステインによる105位の置換からなり、かつVH1領域が野生型2B6 VH1領域に対してアミノ酸改変を含み、該アミノ酸改変がシステインによる44位の置換からなる、[60]に記載のダイアボディ分子。
[65]
第2のエピトープ結合部位が病原性抗原に対して特異的である、[42]に記載のダイアボディ分子。
[66]
病原性抗原が腫瘍抗原、細菌抗原、ウイルス抗原または自己免疫抗原である、[65]に記載のダイアボディ分子。
[67]
病原性抗原が細菌抗原である、[66]に記載のダイアボディ分子。
[68]
細菌抗原がリポ多糖である、[67]に記載のダイアボディ分子。
[69]
病原性抗原がウイルス抗原である、[66]に記載のダイアボディ分子。
[70]
ウイルス抗原がヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルスおよび肝炎ウイルスに由来する抗原からなる群より選択される、[69]に記載のダイアボディ分子。
[71]
病原性抗原が自己免疫抗原である、[66]に記載のダイアボディ分子。
[72]
自己免疫抗原がDNA、RNAおよびコラーゲンからなる群より選択される、[71]に記載のダイアボディ分子。
[73]
第2のエピトープ結合部位が毒素に対して特異的である、[38]に記載のダイアボディ分子。
[74]
第2のエピトープ結合部位が薬物に対して特異的である、[38]に記載のダイアボディ分子。
[75]
第2のエピトープ結合部位が毒素に対して特異的である、[39]に記載のダイアボディ分子。
[76]
第2のエピトープ結合部位が薬物に対して特異的である、[39]に記載のダイアボディ分子。
[77]
第1のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的である、[1]に記載のダイアボディ分子。
[78]
第1のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的である、[3]に記載のダイアボディ分子。
[79]
第1のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的である、[4]に記載のダイアボディ分子。
[80]
第1のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的である、[10]に記載のダイアボディ分子。
[81]
第1のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的である、[11]に記載のダイアボディ分子。
[82]
第1のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的で、第2のエピトープ結合部位がCD16Aに特異的である、[24]に記載のダイアボディ分子。
[83]
第1のポリペプチド鎖が配列番号14のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号15のアミノ酸配列を含む、[77]に記載のダイアボディ分子。
[84]
第1のポリペプチド鎖が配列番号18のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号16のアミノ酸配列を含む、[78]に記載のダイアボディ分子。
[85]
第1のポリペプチド鎖が配列番号19のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含む、[81]に記載のダイアボディ分子。
[86]
第1のポリペプチド鎖が配列番号20のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含む、[80]に記載のダイアボディ分子。
[87]
第1のポリペプチド鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号11のアミノ酸配列を含む、[82]に記載のダイアボディ分子。
[88]
第1のポリペプチド鎖が配列番号11のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含む、[82]に記載のダイアボディ分子。
[89]
第3のドメインが変異型Fc領域を含み、該変異型Fc領域が野生型Fc領域に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含んでなる、[1]、[3]、[4]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[90]
前記改変がFc領域とFc受容体間の結合親和性を改変させる、[89]に記載のダイアボディ分子。
[91]
前記改変がFc領域とFc受容体間の結合をゼロにする、[90]に記載のダイアボディ分子。
[92]
[1]、[3]、[4]、[10]または[24]に記載のダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖または第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸。
[93]
[1]、[3]、[4]、[10]または[24]に記載のダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸。
[94]
[92]に記載の核酸を含有するベクター。
[95]
[93]に記載の核酸を含有するベクター。
[96]
発現ベクターである、[94]に記載のベクター。
[97]
発現ベクターである、[95]に記載のベクター。
[98]
[94]に記載の核酸を含有する宿主細胞。
[99]
[95]に記載の核酸を含有する宿主細胞。
[100]
ダイアボディ分子の組換え生産方法であって、
a. [98]に記載の宿主細胞を、ダイアボディ分子の発現に好適な条件下に培地中で培養し、
b. 該培地からダイアボディ分子を回収する、
ことを含んでなる上記方法。
[101]
ダイアボディ分子の組換え生産方法であって、
a. [98]に記載の宿主細胞を、ダイアボディ分子の発現に好適な条件下に培地中で培養し、
b. 該培地からダイアボディ分子を回収する、
ことを含んでなる上記方法。
[102]
病原性抗原により特徴づけられる疾患または障害の治療方法であって、それを必要とする患者に有効量の[66]に記載のダイアボディ分子を投与することを含んでなり、該ダイアボディ分子が該病原性抗原と結合するものである、上記方法。
[103]
前記疾患または障害が癌である、[102]に記載の方法。
[104]
前記疾患または障害が感染性疾患である、[102]に記載の方法。
[105]
病原性抗原に対する免疫寛容の誘発方法であって、それを必要とする患者に有効量の[66]に記載のダイアボディ分子を投与することを含んでなる上記方法。
[106]
解毒方法であって、それを必要とする患者に有効量の[73]に記載のダイアボディ分子を投与することを含んでなる上記方法。
[107]
解毒方法であって、それを必要とする患者に有効量の[74]に記載のダイアボディ分子を投与することを含んでなる上記方法。
[108]
第1のエピトープと第2のエピトープが異なる細胞に由来するものである、[28]に記載のダイアボディ分子。
[109]
Fcドメイン部分がCH2欠失部分からなる、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[110]
Fcドメイン部分がCH3欠失部分からなる、[1]、[3]または[10]に記載のダイアボディ分子。
[111]
前記分子が二量体であり、該二量体が
(a) 前記第1のポリペプチド鎖と前記第2のポリペプチド鎖の対からなる第1の単量体、および
(b) 前記第1のポリペプチド鎖と前記第2のポリペプチド鎖の対からなる第2の単量体、
からなり、第1および第2の単量体が各単量体の第1のポリペプチド鎖の第3ドメイン中の少なくとも1個のシステイン残基間の少なくとも1つのジスルフィド結合を介して共有結合で連結されている、[3]、[10]または[11]に記載のダイアボディ分子。
[112]
第1の単量体と第2の単量体が同一のものである、[111]に記載のダイアボディ分子。
[113]
第1の単量体と第2の単量体が異なるものである、[112]に記載のダイアボディ分子。
【0015】
一実施形態において、本発明は共有結合型二重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディは第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および、場合により(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および、場合により(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している。
【0016】
別の実施形態において、本発明は共有結合型二重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディは第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第3および第4のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している。
【0017】
特定の態様において、本発明はダイアボディ分子に関し、該分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は共有結合型二重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディはダイアボディ分子の二量体であり、各ダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;各ダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、各ダイアボディ分子の第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;各ダイアボディ分子の第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している。
【0019】
さらに他の実施形態において、本発明は共有結合型四重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディはダイアボディ分子の二量体であり、第1のダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成しており;そして第2のダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第3のエピトープに特異的な第3の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL3)を含む第1のドメイン、(ii) 第4のエピトープに特異的な第4の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH4)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第4の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL4)を含む第4のドメイン、(ii) 第3の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH3)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第3のエピトープと結合する第1の結合部位(VL3)(VH3)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第4のエピトープと結合する第2の結合部位(VL4)(VH4)を形成している。
【0020】
本発明の特定の態様において、第1のエピトープ、第2のエピトープ、適宜に、第3のエピトープ、および第4のエピトープは同一でありうる。他の態様では、第1のエピトープ、第2のエピトープ、適宜に、第3のエピトープ、および第4のエピトープが他とそれぞれ異なっていてもよい。第3のエピトープの結合ドメインを含む本発明の特定の態様では、第1のエピトープと第3のエピトープが同一でありうる。第4のエピトープの結合ドメインを含む本発明の特定の態様では、第1のエピトープと第4のエピトープが同一でありうる。第3のエピトープの結合ドメインを含む本発明の特定の態様では、第2のエピトープと第3のエピトープが同一でありうる。第4のエピトープの結合ドメインを含む本発明の特定の態様では、第2のエピトープと第4のエピトープが同一でありうる。本発明の好ましい態様では、第1のエピトープと第2のエピトープは異なっている。第3のエピトープの結合ドメインと第4のエピトープの結合ドメインを含む本発明のさらに他の態様では、第3のエピトープと第4のエピトープは異なっていてよい。前述の任意の組合せは本発明に包含されることを理解すべきである。
【0021】
本発明の特定の態様においては、ダイアボディまたはダイアボディ分子の第1のドメインと第5のドメインを同一の免疫グロブリンから誘導することができる。別の態様では、ダイアボディまたはダイアボディ分子の第2のドメインと第4のドメインを同一の免疫グロブリンから誘導することができる。さらに別の態様では、ダイアボディまたはダイアボディ分子の第1のドメインと第5のドメインを異なる免疫グロブリンから誘導することができる。さらに別の態様では、ダイアボディまたはダイアボディ分子の第2のドメインと第4のドメインを異なる免疫グロブリンから誘導することができる。前述の任意の組合せは本発明に包含されることを理解すべきである。
【0022】
本発明の特定の態様において、ダイアボディまたはダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖間の共有結合は、第1のポリペプチド鎖上の少なくとも1個のシステイン残基と第2のポリペプチド鎖上の少なくとも1個のシステイン残基間のジスルフィド結合を介するものでありうる。ジスルフィド結合に関与する第1または第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は、第1、第2、第3、第4、第5または第6のドメイン内を含めて、ポリペプチド鎖上のどこに存在してもよい。特定の実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第1ドメインに、そして第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第5ドメインに存在する。第1、第2、第4および第5のドメインは結合に関与する可変領域に相当する。好ましい実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖間のジスルフィド結合に関与するシステイン残基は、それぞれ第3および第6のドメイン内に位置づけられる。この実施形態の特定の態様では、第1のポリペプチド鎖の第3ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列によりコードされるヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸、FNRGEC (配列番号23)を含む。この実施形態の別の態様では、第2のポリペプチド鎖の第6ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列によりコードされるヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸、FNRGEC (配列番号23)を含む。この実施形態のさらに別の態様では、第1のポリペプチド鎖の第3ドメインは、配列番号80のヌクレオチド配列によりコードされるヒトIgGのヒンジドメインから誘導されるアミノ酸配列VEPKSC (配列番号79)を含む。この実施形態の別の態様では、第2のポリペプチド鎖の第6ドメインは、配列番号80のヌクレオチド配列によりコードされるヒトIgGのヒンジドメインから誘導されるアミノ酸配列VEPKSC (配列番号79)を含む。この実施形態の特定の態様では、第1のポリペプチド鎖の第3ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第2のポリペプチド鎖の第6ドメインはアミノ酸配列VEPKSC (配列番号79)を含む。この実施形態の他の態様では、第2のポリペプチド鎖の第6ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第1のポリペプチド鎖の第3ドメインはアミノ酸配列VEPKSC (配列番号79)を含む。この実施形態のさらに他の態様では、第1のポリペプチド鎖の第3ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第2のポリペプチド鎖の第6ドメインはヒンジドメインを含む。この実施形態の他の態様では、第2のポリペプチド鎖の第6ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第1のポリペプチド鎖の第3ドメインはヒンジドメインを含む。この実施形態のさらに他の態様では、第1のポリペプチド鎖の第3ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第2のポリペプチド鎖の第6ドメインはFcドメインまたはその一部を含む。この実施形態のさらに他の態様では、第2のポリペプチド鎖の第6ドメインは、ヒトκ軽鎖のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)を含み、そして第1のポリペプチド鎖の第3ドメインはFcドメインまたはその一部を含む。
【0023】
他の実施形態において、ジスルフィド結合に関与する第1または第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は、第1のポリペプチド鎖の第1、第2または第3ドメインの外側に、そして第2のポリペプチド鎖の第4、第5または第6ドメインの外側に位置していてよい。特に、第1のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第1ドメインのN末端、または第1ドメインのC末端に存在しうる。第1のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第2ドメインのN末端、または第2ドメインのC末端に存在してもよい。第1のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第3ドメインのN末端、または第3ドメインのC末端に存在してもよい。さらに、第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第4ドメインのN末端、または第4ドメインのC末端に存在しうる。第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第5ドメインのN末端、または第5ドメインのC末端に存在してもよい。これに応じて、第2のポリペプチド鎖上のシステイン残基は第6ドメインのC末端、または第6ドメインのN末端に存在してもよい。特定の態様では、ジスルフィド結合は第1のポリペプチド鎖上の少なくとも2個のシステイン残基と第2のポリペプチド鎖上の少なくとも2個のシステイン残基間にある。第3ドメインと第6ドメインがFcドメインまたはその一部を含まない特定の態様では、システイン残基が第1のポリペプチド鎖のC末端にあり、かつ第2のポリペプチド鎖のC末端にある。前述の任意の組合せは本発明に包含されることを理解すべきである。
【0024】
上に記載した本発明の特定の実施形態においては、本発明の共有結合型ダイアボディはダイアボディ分子の二量体(各ダイアボディ分子が第1および第2のポリペプチド鎖を含む)を包含する。この実施形態のある態様では、ダイアボディ分子同士が共有結合で連結されて二量体を形成しているが、該共有結合はペプチド結合ではない。この実施形態の好ましい態様では、共有結合が二量体の各ダイアボディ分子の第1ポリペプチド鎖上にある少なくとも1個のシステイン残基間のジスルフィド結合である。本発明のさらに好ましい態様では、共有結合が二量体を形成している各ダイアボディ分子の第1ポリペプチド鎖上にある少なくとも1個のシステイン残基間のジスルフィド結合であるが、該少なくとも1個のシステイン残基が各第1ポリペプチド鎖の第3ドメインに存在する。
【0025】
本発明のある態様においては、第1のポリペプチド鎖上の第1ドメインが第2ドメインのN末端にあっても、第2ドメインのC末端にあってもよい。第1のポリペプチド鎖上の第1ドメインは第3ドメインのN末端にあっても、第3ドメインのC末端にあってもよい。第1のポリペプチド鎖上の第2ドメインは第1ドメインのN末端にあっても、第1ドメインのC末端にあってもよい。さらに、第1のポリペプチド鎖上の第2ドメインは第3ドメインのN末端にあっても、第3ドメインのC末端にあってもよい。これに応じて、第1のポリペプチド鎖上の第3ドメインは第1ドメインのN末端にあっても、第1ドメインのC末端にあってもよい。第1のポリペプチド鎖上の第3ドメインは第2ドメインのN末端にあっても、第2ドメインのC末端にあってもよい。第2のポリペプチド鎖に関しては、第4ドメインが第5ドメインのN末端にあっても、第5ドメインのC末端にあってもよい。第4ドメインは第6ドメインのN末端にあっても、第6ドメインのC末端にあってもよい。第2のポリペプチド鎖上の第5ドメインは第4ドメインのN末端にあっても、第4ドメインのC末端にあってもよい。第2のポリペプチド鎖上の第5ドメインは第6ドメインのN末端にあっても、第6ドメインのC末端にあってもよい。これに応じて、第2のポリペプチド鎖上の第6ドメインは第4ドメインのN末端にあっても、第4ドメインのC末端にあってもよい。第2のポリペプチド鎖上の第6ドメインは第5ドメインのN末端にあっても、第5ドメインのC末端にあってもよい。前述の任意の組合せは本発明に包含されることを理解すべきである。
【0026】
特定の実施形態において、第1ドメインと第2ドメインは第1のポリペプチド鎖上の第3ドメインのC末端に存在してもよいし、あるいは、第1ドメインと第2ドメインは第1のポリペプチド鎖上の第3ドメインのN末端に存在してもよい。第2のポリペプチド鎖に関して、第4ドメインと第5ドメインは第6ドメインのC末端に存在してもよいし、あるいは、第4ドメインと第5ドメインは第6ドメインのN末端に存在してもよい。この実施形態の特定の態様では、本発明は共有結合型二重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディはダイアボディ分子の二量体であり、各ダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく、第3のドメインは第1ドメインと第2ドメインの両方のN末端側にあり;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;各ダイアボディ分子の第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、各ダイアボディ分子の第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;各ダイアボディ分子の第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成している。
【0027】
さらに別の実施形態において、本発明は共有結合型四重特異性ダイアボディに関し、該ダイアボディはダイアボディ分子の二量体であり、第1のダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第1のエピトープに特異的な第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を含む第1のドメイン、(ii) 第2のエピトープに特異的な第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく、第3のドメインは第1ドメインと第2ドメインの両方のN末端側にあり;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を含む第4のドメイン、(ii) 第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第1のエピトープと結合する第1の結合部位(VL1)(VH1)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第2のエピトープと結合する第2の結合部位(VL2)(VH2)を形成しており;そして第2のダイアボディ分子は第1および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、ここで、第1のポリペプチド鎖は、(i) 第3のエピトープに特異的な第3の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL3)を含む第1のドメイン、(ii) 第4のエピトープに特異的な第4の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH4)を含む第2のドメイン、および(iii) Fcドメインまたはその一部を含む第3のドメインを含んでなり、第1および第2のドメインが共有結合で連結されているが、第1および第2のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく、第3のドメインは第1ドメインと第2ドメインの両方のN末端側にあり;ここで、第2のポリペプチド鎖は、(i) 第4の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL4)を含む第4のドメイン、(ii) 第3の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH3)を含む第5のドメイン、および(iii) 少なくとも1個のシステイン残基を含む第6のドメインを含んでなり、第4および第5のドメインが共有結合で連結されているが、第4および第5のドメインはエピトープ結合部位を形成するように会合することはなく;第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合で連結されているが、該共有結合はペプチド結合ではなく;その際、第1のドメインと第5のドメインが会合して、第3のエピトープと結合する第1の結合部位(VL3)(VH3)を形成しており;第2のドメインと第4のドメインが会合して、第4のエピトープと結合する第2の結合部位(VL4)(VH4)を形成している。
【0028】
上述したように、個々のポリペプチド鎖上のドメインは共有結合で連結されている。特定の態様では、第1と第2のドメイン間、第1と第3のドメイン間、第2と第3のドメイン間、第4と第5のドメイン間、第4と第6のドメイン間、および/または第5と第6のドメイン間の共有結合はペプチド結合でありうる。特に、第1と第2、および第4と第5のドメインが結合部位を形成するようには結合しないかぎり、第1と第2のドメイン、および第4と第5のドメインは、それぞれ第3のドメインおよび第6のドメインにより、または追加のアミノ酸残基により分離されていてもよい。アミノ酸残基の数は0、1、2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸残基であってよい。ある好ましい態様では、ドメイン間のアミノ酸残基の数が8個である。
【0029】
本発明の特定の態様では、Fcドメインを含む第1および第2のポリペプチド鎖のドメイン(すなわち、場合により、それぞれ第3および第6のドメイン)は、該ドメインがヒンジ-Fc領域を含むようにヒンジドメインをさらに含むことができる。これとは別の実施形態では、第1のポリペプチド鎖または第2のポリペプチド鎖が、Fcドメインを含むことなくヒンジドメインを含むことができる。本発明で用いる重鎖、軽鎖、ヒンジ領域、Fcドメイン、および/またはヒンジ-Fcドメインは、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMを含めて、どの免疫グロブリン型に由来するものであってもよい。好ましい態様では、免疫グロブリン型はIgGまたはそのいずれかのサブタイプ、すなわちIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4である。他の態様では、軽鎖および重鎖の由来となる免疫グロブリンはヒト化またはキメラ化されたものである。
【0030】
さらに、ダイアボディまたはダイアボディ分子が結合する第1エピトープと第2エピトープ、適宜に、第3エピトープと第4エピトープは、同一の抗原に由来する異なるエピトープであっても、異なる抗原に由来する異なるエピトープであってもよい。抗原は、抗体を生成することができるどのような分子であってもよく、例えば、タンパク質、核酸、細菌毒素、細胞表面マーカー、自己免疫マーカー、ウイルスタンパク質、薬物などである。特定の態様では、ダイアボディの少なくとも1つのエピトープ結合部位は、B細胞、T細胞、食細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞といった特定の細胞上の抗原に対して特異的である。
【0031】
本実施形態の特定の態様において、ダイアボディまたはダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合部位はFc受容体に特異的であり、該Fc受容体は活性化性Fc受容体または抑制性Fc受容体でありうる。特定の態様では、Fc受容体がFcγ受容体であり、Fcγ受容体はFcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII受容体である。より好ましい態様では、FcγRIII受容体がFcγRIIIA (CD16A)受容体またはFcγRIIIB (CD16B)受容体であり、さらに好ましくは、FcγRIII受容体がFcγRIIIA (CD16A)受容体である。別の好ましい態様では、FcγRII受容体がFcγRIIA (CD32A)受容体またはFcγRIIB (CD32B)受容体であり、さらに好ましくは、FcγRIIB (CD32B)受容体である。特に好ましい態様では、ダイアボディの1つの結合部位がCD32Bに特異的で、他の結合部位がCD16Aに特異的である。本発明の特定の実施形態では、ダイアボディまたはダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合部位が活性化性Fc受容体に特異的で、少なくとも1つの他の部位が抑制性Fc受容体に特異的である。この実施形態のある態様では、活性化性Fc受容体がCD32Aで、抑制性Fc受容体がCD32Bである。この実施形態の他の態様では、活性化性Fc受容体がBCRで、抑制性Fc受容体がCD32Bである。この実施形態のさらに他の態様では、活性化性Fc受容体がIgERIで、抑制性Fc受容体がCD32Bである。
【0032】
1つのエピトープ結合部位がCD16Aに特異的である場合には、VLおよびVHドメインがマウス抗体3G8(この配列はクローン化されており、本明細書に示される)のVLおよびVHドメインと同一であっても、類似していてもよい。1つのエピトープ結合部位がCD32Aに特異的である他の場合には、VLおよびVHドメインがマウス抗体IV.3のVLおよびVHドメインと同一であっても、類似していてもよい。1つのエピトープ結合部位がCD32Bに特異的であるさらに他の場合には、VLおよびVHドメインがマウス抗体2B6(この配列はクローン化されており、本明細書に示される)のVLおよびVHドメインと同一であっても、類似していてもよい。3G8、2B6およびIV.3抗体のVLまたはVHドメインのいずれもが任意の組合せで使用できることを理解すべきである。本発明はまた、第1のエピトープがCD32Bに特異的で、第2のエピトープがCD16Aに特異的である二重特異性ダイアボディまたはダイアボディ分子に関する。
【0033】
他の態様においては、エピトープ結合部位が病原性抗原に特異的であってよい。本明細書で用いる病原性抗原とは、癌、感染症、自己免疫疾患をはじめとする特定の病原性疾患に関わる抗原のことである。こうして、病原性抗原は腫瘍抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、または自己免疫抗原でありうる。病原性抗原の例としては、限定するものではないが、リポ多糖、ウイルス抗原(ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、呼吸器多核体ウイルス、西ナイルウイルス(例えば、E16および/またはE53抗原)、および肝炎ウイルスに由来するウイルス抗原からなる群より選択される)、核酸(DNAおよびRNA)、およびコラーゲンが挙げられる。好ましくは、病原性抗原は中和抗原である。好ましい態様において、一方のエピトープ結合部位がCD16AまたはCD32Aに特異的である場合、他方のエピトープ結合部位は自己免疫抗原を除く病原性抗原に特異的である。さらに別の好ましい態様において、一方のエピトープ結合部位がCD32Bに特異的である場合、他方のエピトープ結合部位はいずれかの病原性抗原に特異的である。特定の実施形態では、本発明のダイアボディ分子は同一細胞上の2つの異なる抗原に結合し、例えば、一方の抗原結合部位は活性化性Fc受容体に特異的であるが、他方は抑制性Fc受容体に特異的である。他の実施形態では、ダイアボディ分子は2つの異なるウイルス中和エピトープ(例えば、西ナイルウイルスのE16およびE53であるが、これに限定されない)に結合する。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態においては、本発明のダイアボディを用いて様々な疾患や障害を治療することができる。したがって、本発明は、有効量の本発明の共有結合型ダイアボディまたはダイアボディ分子を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる疾患または障害の治療方法に関し、該ダイアボディまたはダイアボディ分子は、少なくとも1つの結合部位が癌細胞の表面または細菌やウイルス粒子の表面に発現される抗原のような病原性抗原に特異的であり、そして少なくとも1つの他の結合部位がFc受容体(例えば、CD16A)に特異的である。
【0035】
さらに別の実施形態においては、本発明は、有効量の本発明のダイアボディまたはダイアボディ分子を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる疾患または障害の治療方法に関し、該ダイアボディまたはダイアボディ分子は、少なくとも1つの結合部位がCD32Bに特異的であり、そして少なくとも1つの他の結合部位がCD16Aに特異的である。
【0036】
さらに別の実施形態においては、本発明は、有効量の本発明の共有結合型ダイアボディまたはダイアボディ分子を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、病原性抗原に対する免疫寛容の誘発方法に関し、該ダイアボディまたはダイアボディ分子は、少なくとも1つの結合部位がCD32Bに特異的であり、そして少なくとも1つの他の結合部位が該病原性抗原に特異的である。この実施形態のいくつかの態様では、病原性抗原はアレルゲンまたは免疫寛容が望まれる別の分子(例えば、移植した組織に発現されるタンパク質)でありうる。
【0037】
さらに別の実施形態においては、本発明は、有効量の本発明の共有結合型ダイアボディまたはダイアボディ分子を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる解毒方法に関し、該ダイアボディまたはダイアボディ分子は、少なくとも1つの結合部位が細胞表面マーカーに特異的であり、そして少なくとも1つの他の結合部位が毒素に特異的である。特定の態様では、投与される本発明のダイアボディは、1つの結合部位がFcのような細胞表面マーカーに特異的で、他の結合部位が細菌毒素または薬物に特異的であるものである。ある態様では、細胞表面マーカーは赤血球上に存在しないものである。
【0038】
3.1 定義
特に断らないかぎり、本明細書で用いる全ての技術用語、表記法、その他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味を有するものとする。いくつかの場合には、通常理解される意味の用語であっても、明確さのためにおよび/または参考までに本明細書中で定義されるが、そうした定義を本明細書に含めても、当技術分野で一般的に理解されている意味に対する大きな相違を表すと必ずしも解釈されるべきでない。本発明の実施には、特にほかで示さないかぎり、当業者が容易に想到しうる分子生物学(組換え法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の分野の慣用技術を利用するものとする。そうした技術は文献に詳しく説明されており、例えば、Current Protocols in Immunology (J. E. Coliganら編, 1999, 2001年の増刊を含む); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubelら編, 1987, 2001年の増刊を含む); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版 (Sambrook and Russel, 2001); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら編, 1994); The Immunoassay Handbook (D. Wild編, Stockton Press NY, 1994); Bioconjugate Techniques (Greg T. Hermanson編, Academic Press, 1996); Methods of Immunological Analysis (R. Masseyeff, W. H. Albert, およびN. A. Staines編, Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993), Harlow and Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999; ならびにBeaucageら編, Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc., New York, 2000)を参照されたい。
【0039】
本明細書中で用いる「抗体」なる語は、モノクローナル、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)、細胞内発現抗体(intrabody)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Idおよび抗-抗Id抗体を含む)、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを意味する。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性フラグメント、すなわち抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子はいずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。
【0040】
本明細書中で用いる「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」および同様の用語は、抗原(例えば、エピトープまたは免疫複合体)と特異的に結合するが、他の分子とは特異的に結合しない分子をさす。抗原と特異的に結合する分子は、例えばイムノアッセイ、BIAcore、または当技術分野で知られた他のアッセイで測定して、より低い親和性で他のペプチドまたはポリペプチドと結合してもよい。好ましくは、抗原と特異的に結合する分子は他のタンパク質と交差反応しない。抗原と特異的に結合する分子は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に知られた他の技法により同定することができる。
【0041】
本明細書中で用いる「免疫複合体」とは、少なくとも1つの標的分子と少なくとも1つの異種Fcγ領域含有ポリペプチドが互いと結合して、より大きな分子量の複合体を形成するときに生じる構造体をさす。免疫複合体の例は抗原-抗体複合体であり、これは可溶性であっても粒状(例えば、細胞表面上の抗原/抗体複合体)であってもよい。
【0042】
本明細書中で用いる「重鎖」、「軽鎖」、「可変領域」、「フレームワーク領域」、「定常ドメイン」などの語は、免疫学分野でのそれらの通常の意味を有し、天然の免疫グロブリン中のドメインおよび合成(例えば、組換え)結合タンパク質(例えば、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体など)の対応するドメインをさす。天然の免疫グロブリン(例えば、IgG)の基本的な構造単位は、2本の軽鎖と2本の重鎖をもつ四量体であり、通常は約150,000 Daの糖タンパク質として発現される。各鎖のアミノ末端(「N」)部分は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端(「C」)部分は定常領域を規定しており、軽鎖が1つの定常ドメインを有し、重鎖が通常3つの定常ドメインとヒンジ領域を有する。したがって、IgG分子の軽鎖の構造はn-VL-CL-cであり、IgG重鎖の構造はn-VH-CH1-H-CH2-CH3-c (ここでHはヒンジ領域)である。IgG分子の可変領域は、抗原と接触する残基を含む相補性決定領域(CDR)と、フレームワークセグメントと呼ばれる非CDRセグメントから成り、該セグメントは一般に構造を維持し、CDRループの位置を決定する(しかし、特定のフレームワーク残基が抗原と接触してもよい)。したがって、VLおよびVHドメインは構造n-FR1, CDR1, FR2, CDR2, FR3, CDR3, FR4-cを有する。
【0043】
結合タンパク質または抗体(本明細書では広範に定義される)について述べるとき、各ドメインへのアミノ酸の帰属はKabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991)の定義に従う。免疫グロブリンの成熟重鎖および軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、その鎖中のアミノ酸の位置によって指定される。Kabatは多数の抗体のアミノ酸配列を記載し、各サブグループにつき共通のアミノ酸配列を同定し、そして各アミノ酸に残基番号を割り当てた。Kabatのナンバリング方式は、問題の抗体を、保存アミノ酸を基準にしたKabatの共通配列の1つとアライメントすることにより、彼の一覧表には含まれない抗体にまで拡張することができる。残基番号を割り当てるこの方法は、当該分野で標準的になってきており、様々な抗体(キメラやヒト化変異体を含む)において同等の位置のアミノ酸を容易に同定する。例えば、ヒト抗体軽鎖の50位のアミノ酸は、マウス抗体軽鎖の50位のアミノ酸と等しい位置を占めている。
【0044】
本明細書中で用いる「重鎖」なる用語は、IgG抗体の重鎖を特定するために使用される。完全な天然IgGでは、重鎖は免疫グロブリンドメインVH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3を含む。本明細書全体を通して、IgG重鎖中の残基の番号付けは、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, NH1, MD (1991)(参照として本明細書に組み入れる)におけるようなEUインデックスのそれである。「KabatにおけるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の番号付けをさす。ヒトIgG1のヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むアミノ酸配列の例を、以下に記載する図1Aおよび1Bに示す。図1Aおよび1Bには、IgG2、IgG3およびIgG4の重鎖のヒンジ、CH2およびCH3ドメインのアミノ酸配列も示される。IgG2、IgG3およびIgG4アイソタイプのアミノ酸配列は、それぞれのヒンジ領域の最初と最後のシステイン残基(重鎖間S-S結合を形成する)を同じ位置に配置することによって、IgG1配列とアライメントされる。IgG2とIgG3のヒンジ領域については、全ての残基がEUインデックスにより番号付けされるとは限らない。
【0045】
「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」は、一般的に、ヒトIgG1のGlu216からPro230までの広がりとして定義される。ヒトIgG1のヒンジ領域のアミノ酸配列の例を図1Aに示す(図1Aでのアミノ酸残基はKabatシステムに従って番号付けされる)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、図1Aに示すように重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することにより、IgG1配列とアライメントさせることができる。
【0046】
本明細書中で用いる「Fc領域」、「Fcドメイン」または同様の語は、IgG重鎖のC末端領域を規定するために用いられる。ヒトIgG1を含むアミノ酸配列の例を図1Bに示す。Kabatシステムに従って番号付けしたとき、境界はわずかに変化しうるが、Fcドメインはアミノ酸231から447まで延びている(図1Bでのアミノ酸残基はKabatシステムに従って番号付けされる)。図1Bには、IgGアイソタイプIgG2、IgG3およびIgG4のFc領域のアミノ酸配列の例も示される。
【0047】
IgGのFc領域は、2つの定常ドメイン、CH2およびCH3を含む。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、通常、Kabatのナンバリングシステムに従ってアミノ酸231からアミノ酸341まで延びている(図1B)。ヒトIgG Fc領域のCH3ドメインは、通常、Kabatのナンバリングシステムに従ってアミノ酸342からアミノ酸447まで延びている(図1B)。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメイン(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は、それがもう一つのドメインと密接に対合していないという点でユニークである。それどころか、完全な天然IgGの2つのCH2ドメイン間には、2つのN-結合分岐糖鎖が介在している。
【0048】
本明細書中で用いる「FcγR結合タンパク質」、「FcγR抗体」および「抗FcγR抗体」という用語は互換的に用いられ、さまざまな免疫グロブリン様タンパク質または免疫グロブリン由来タンパク質をさす。「FcγR結合タンパク質」はVLおよび/またはVHドメインとの相互作用を介してFcγRと結合する(Fcγ介在結合とは区別される)。FcγR結合タンパク質の例としては、完全にヒトの抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体(例えば、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む)、そのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント)、二官能性もしくは多官能性抗体(例えば、Lanzavecchiaら, 1987, Eur. J. Immunol. 17:105参照)、一本鎖抗体(例えば、Birdら, 1988, Science 242:423-26参照)、融合タンパク質(例えば、ファージディスプレイ融合タンパク質)、「ミニボディ」(例えば、米国特許第5,837,821号参照)、ならびにVLおよび/またはVHドメインまたはそのフラグメントを含む他の抗原結合タンパク質が挙げられる。ある態様において、FcγRIIIA結合タンパク質は「四量体抗体」であり、すなわち、一般的に天然のIgGの構造を有し、かつ可変ドメインと定常ドメインを含む(すなわち、VLドメインと軽鎖定常ドメインを有する軽鎖2本およびVHドメインと重鎖ヒンジおよび定常ドメインを有する重鎖2本を含む)。
【0049】
本明細書中で用いる「FcγRアンタゴニスト」および類似の用語は、FcγRの少なくとも1つの生物学的活性をアンタゴナイズする(例えば、シグナル伝達を遮断する)タンパク質および非タンパク質性物質(小分子を含む)をさす。例えば、本発明の分子はIgGのFcγRへの結合をブロックすることによってシグナル伝達を遮断する。
【0050】
本明細書中で用いる、ポリペプチドまたはタンパク質に関する「誘導体」なる語は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入により改変されているアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはタンパク質を指す。本明細書中で用いる「誘導体」はまた、改変されている、すなわち、ポリペプチドまたはタンパク質への任意のタイプの分子の共有結合により改変されているポリペプチドまたはタンパク質を意味する。例えば、限定するものではないが、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより改変することができる。誘導体ポリペプチドまたはタンパク質は、限定するものでないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含めて、当業者に公知の技術を用いる化学的修飾により製造することができる。さらに、誘導体ポリペプチドまたはタンパク質誘導体は、それが誘導される元のポリペプチドまたはタンパク質と同様のまたは同一の機能を保持する。
【0051】
本明細書中で用いる、非タンパク質誘導体に関しての「誘導体」なる語は、第1の有機または無機分子の構造に基づいて形成された第2の有機または無機分子を意味する。有機分子の誘導体は、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル、メチル、エチル、カルボキシルまたはアミン基の付加または欠失により、改変された分子を含む。有機分子はまた、エステル化、アルキル化および/またはリン酸化されてもよい。
【0052】
本明細書中で用いる「ダイアボディ分子」とは、2本またはそれ以上のポリペプチド鎖またはタンパク質の複合体であって、それぞれが少なくとも1つのVLおよびVHドメインまたはその断片を含み、両ドメインが単一のポリペプチド鎖内に含まれている該複合体をさす。いくつかの実施形態において、「ダイアボディ分子」にはFcまたはヒンジ-Fcドメインを含む分子が含まれる。かかる複合体のポリペプチド鎖は同一でも異なっていてもよく、すなわち、ダイアボディ分子はホモ多量体またはヘテロ多量体でありうる。特定の態様では、「ダイアボディ分子」には二量体または四量体が含まれ、つまり前記ポリペプチド鎖が両方ともVLおよびVHドメインを含む。多量体タンパク質を構成する個々のポリペプチド鎖は、鎖間ジスルフィド結合によって多量体の少なくとも1つの他のペプチドと共有結合で連結されていてもよい。
【0053】
本明細書中で用いる「障害」および「疾患」は、互換的に使用され、被験者の症状を意味する。特に、用語「自己免疫疾患」は「自己免疫障害」と互換的に使用され、被験者自身の細胞、組織および/または器官に対する被験者の免疫反応に起因する細胞、組織および/または器官の損傷により特徴づけられる被験者の症状を意味する。用語「炎症性疾患」は用語「炎症性障害」と互換的に使用され、炎症、好ましくは慢性炎症により特徴づけられる被験者の症状を意味する。自己免疫障害は炎症を伴っても伴わなくてもよい。さらに、炎症は自己免疫障害に起因してもしなくてもよい。従って、ある特定の障害は自己免疫障害と炎症性障害の両方により特徴づけられてもよい。
【0054】
本明細書中で用いる「同一のポリペプチド鎖」とは、ほぼ同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド鎖を意味し、例えば、1個以上のアミノ酸の相違を有するポリペプチド鎖、好ましくは2つのポリペプチド鎖の活性が有意に異ならないような保存的アミノ酸置換を有するポリペプチド鎖が含まれる。
【0055】
本明細書中で用いる「癌」なる語は、異常な無制御の細胞増殖から生じる新生物または腫瘍を意味する。本明細書中で用いる癌は、明確に白血病およびリンパ腫を含む。いくつかの実施形態において、癌は局在化したままで存在する良性腫瘍を意味する。他の実施形態において、癌は、近隣の身体構造に侵入して破壊し、離れた部位に広がる悪性腫瘍を意味する。いくつかの実施形態では、癌は特定の癌抗原を随伴する。
【0056】
本明細書中で用いる「免疫調節剤」およびその変形は、宿主の免疫系をモジュレートする薬剤を意味する。ある特定の実施形態においては、免疫調節剤は免疫抑制剤である。ある特定の実施形態においては、免疫調節剤は免疫賦活剤である。免疫調節剤としては、限定するものではないが、小分子、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質、抗体、無機分子、ミメチック、および有機分子を含む。
【0057】
本明細書中で用いる「エピトープ」なる語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて抗原性または免疫原性を有するポリペプチドもしくはタンパク質または非タンパク質分子の断片を意味する。免疫原性を有するエピトープは、動物において抗体応答を誘発するポリペプチドまたはタンパク質の断片である。抗原性を有するエピトープは、当業者に周知の方法、例えばイムノアッセイにより確認されるような、抗体が免疫特異的に結合するポリペプチドまたはタンパク質の断片である。抗原性エピトープは必ずしも免疫原性である必要はない。
【0058】
本明細書中で用いる「断片」または「フラグメント」とは、別のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5個連続したアミノ酸残基、少なくとも10個連続したアミノ酸残基、少なくとも15個連続したアミノ酸残基、少なくとも20個連続したアミノ酸残基、少なくとも25個連続したアミノ酸残基、少なくとも40個連続したアミノ酸残基、少なくとも50個連続したアミノ酸残基、少なくとも60個連続したアミノ酸残基、少なくとも70個連続したアミノ酸残基、少なくとも80個連続したアミノ酸残基、少なくとも90個連続したアミノ酸残基、少なくとも100個連続したアミノ酸残基、少なくとも125個連続したアミノ酸残基、少なくとも150個連続したアミノ酸残基、少なくとも175個連続したアミノ酸残基、少なくとも200個連続したアミノ酸残基、または少なくとも250個連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、ポリペプチドの断片は、そのポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。
【0059】
本明細書中で用いる「核酸」および「ヌクレオチド配列」なる語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNAおよびRNA分子の組合せまたはハイブリッドDNA/RNA分子、ならびにDNAまたはRNA分子の類似体を含む。このような類似体は、例えば、限定するものではないが、イノシンまたはトリチル化塩基を含むヌクレオチド類似体を用いて作製することができる。このような類似体はまた、分子に有益な属性を与える(例えば、ヌクレアーゼ耐性を付与したり、細胞膜を通過する能力を高める)改変された骨格を有するDNAまたはRNA分子を含んでもよい。核酸またはヌクレオチド配列は一本鎖、または二本鎖であってもよいし、一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含んでもよく、また、三本鎖部分を含んでもよい。しかし、好ましくは二本鎖DNAである。
【0060】
本明細書中で用いる「治療上有効な量」、「治療に有効な量」または「治療有効量」とは、疾患または障害を治療または管理するのに十分な治療剤の量を意味する。治療上有効な量は、疾患の発症を遅延させるかまたは最小限にする(例えば、癌の拡大を遅延させるかまたは最小限にする)のに十分な治療剤の量を指すこともある。治療上有効な量は、疾患の治療または管理において治療上の利益を与える治療剤の量を意味してもよい。さらに、本発明の治療剤についての治療上有効な量は、疾患の治療または管理において治療上の利益を与える、単独でのまたは他の治療剤と組み合わせた治療剤の量を意味する。
【0061】
本明細書中で用いる「予防剤」なる語は、障害の予防に、または障害の再発または拡大の予防に使用される薬剤を意味する。予防上有効な量は、過増殖性疾患(特に癌)の再発または拡大、または患者(限定するものではないが、過増殖性疾患の素因がある患者、例えば、遺伝的に癌の素因があるかまたは以前に発癌物質に曝された患者を含む)におけるそれらの発生を予防するのに十分な予防剤の量を意味しうる。予防上有効な量はまた、疾患の予防において予防上の利益を与える予防剤の量を意味してもよい。さらに、本発明の予防剤についての予防上有効な量は、疾患の予防において予防上の利益を与える、単独でのまたは他の薬剤と組み合わせた予防剤の量を意味する。
【0062】
本明細書中で用いる「予防」とは、予防剤または治療剤の投与から得られる、被験者における障害の1以上の症状の再発または発症の予防を意味する。
【0063】
本明細書中で用いる「組み合わせて」は、2種以上の予防剤および/または治療剤の使用を意味する。用語「組み合わせて」は、予防剤および/または治療剤を、障害のある被験者に投与する順序を制限するものではない。第1の予防剤または治療剤は、障害のある被験者に第2の予防剤または治療剤を投与する前(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週前)に、または第2の予防剤または治療剤を投与すると同時に、または第2の予防剤または治療剤を投与した後(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週後)に、投与することができる。
【0064】
本明細書において用いられる「エフェクター機能」は、抗体のFc領域と、Fc受容体または抗原との相互作用によりもたらされる生化学的事象を意味する。エフェクター機能の例としては、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、抗体依存性食作用(ADCP)、および補体依存性細胞傷害作用があるが、これに限定されるものではない。エフェクター機能には、抗原結合後に作用するエフェクター機能と、抗原結合とは無関係に作用するエフェクター機能の両方が含まれる。
【0065】
本明細書において用いられる「エフェクター細胞」は、1つ以上のFc受容体を発現し、1つ以上のエフェクター機能を媒介する、免疫系の細胞を意味する。エフェクター細胞の例としては、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、肥満細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞があるが、これらに限定されるものではなく、またエフェクター細胞は任意の生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルに由来し得るが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本明細書中で用いる「免疫複合体と特異的に結合する」および類似の用語は、ある免疫複合体と特異的に結合するが、別の分子とは特異的に結合しない分子を意味する。免疫複合体と特異的に結合する分子は、例えばイムノアッセイ、BIAcore、または当技術分野で公知の他のアッセイで測定して、より低い親和性で他のペプチドまたはポリペプチドと結合してもよい。好ましくは、免疫複合体と特異的に結合する分子は他のタンパク質と交差反応しないものである。免疫複合体と特異的に結合する分子は、例えばイムノアッセイ、BIAcore、または当技術分野で公知の他の技法により、確認することができる。
【0067】
本明細書中で用いる「安定な融合タンパク質」とは、当業者に知られた通常の生化学的および機能性アッセイを用いて評価したとき、製造および/または保存中に最小限ないし検出不能レベルの分解を受ける融合タンパク質を意味し、生物学的活性(例えば、FcγRとの結合)の低下なく、長期間保存することができる。
【0068】
4. 図面の説明
(本明細書の最後に記載する。)
【0069】
5. 好適な実施形態の説明
ダイアボディ分子の各ポリペプチド鎖は、VLドメインおよびVHドメインを含む。それらは、ドメインの自己集合が起こらないように共有結合によって連結されている。2つのポリペプチド鎖の相互作用により2つのVL-VH対合が生じ、2つのエピトープ結合部位、すなわち二価の分子を形成する。VHまたはVLドメインは、ポリペプチド鎖内のどの位置にも拘束されず、つまり、アミノ(N)末端またはカルボキシ(C)末端に制限されることはない。また前記ドメインは、互いの相対的位置に制限されることもなく、つまり、VLドメインがVHドメインに対してN末端側にあってもよいし、その逆であってもよい。唯一の制限は、機能的なダイアボディを形成するために、相補的なポリペプチド鎖が利用可能であるということである。VLおよびVHドメインが同一抗体に由来する場合、二本の相補的ポリペプチド鎖は、同一であってもよい。例えば、結合ドメインがエピトープAに特異的な抗体に由来する場合(すなわち、結合ドメインがVLA-VHA相互作用から形成される場合)、各ポリペプチドはVHAおよびVLAを含むことができる。抗体の2つのポリペプチド鎖のホモ二量体化は、2つのVLA-VHA結合部位の形成をもたらし、結果的に二価の単一特異性抗体が生じる。VLおよびVHドメインが異なる抗原に対して特異的な抗体に由来する場合、機能的な二重特異性ダイアボディの形成には、異なる二本のポリペプチド鎖の相互作用、すなわちヘテロ二量体の形成が必要となる。例えば、二重特異性ダイアボディの場合、1本のポリペプチド鎖はVLAおよびVLBから構成される。前記鎖のホモ二量体化は、結果的に、結合なしのまたは予測できない結合の、2つのVLA-VHB結合部位の形成をもたらし得る。これに対して、2つの異なるポリペプチド鎖が、例えば組換え発現系において自由に相互作用できる場合、一方はVLAおよびVHBから、他方はVLBおよびVHAからなり、二つの異なる結合部位、すなわちVLA-VHAおよびVLB-VHBを形成することができる。全てのダイアボディポリペプチド鎖の対に関して、2つの鎖のアライメントミスまたは結合ミス、すなわちVL-VLまたはVH-VHドメインの相互作用の可能性があり得る。しかし、機能的なダイアボディの精製は、適切に二量体化した結合部位の免疫特異性に基づいて、当該分野で公知のまたは本明細書で例示した、例えばアフィニティークロマトグラフィーといった親和性を基礎とする方法を用いることで、容易に行うことができる。
【0070】
他の実施形態では、ダイアボディの1以上のポリペプチド鎖がFcドメインを含んでいる。ダイアボディ分子のポリペプチド鎖におけるFcドメインは、優先的に二量体を形成し、結果的に免疫グロブリン様の性質(例えばFc-FcγR相互作用)を示すダイアボディ分子の形成をもたらす。Fcを含むダイアボディは、例えば、2本のポリペプチド鎖からなり、それぞれがVHドメイン、VLドメインおよびFcドメインを含む二量体であってもよい。前記ポリペプチド鎖の二量体化により、非改変型二価抗体の構造とは明確に区別される構造であるにもかかわらず、Fcドメインを含む二価のダイアボディが生じる(図11)。このようなダイアボディ分子は、野生型免疫グロブリンと比較すると、例えば、血中半減期や結合特性等の変化といった表現型の変化を示し得る。他の実施形態において、Fcドメインを含むダイアボディ分子は四量体であってもよい。前記四量体は、2本の「重い」ポリペプチド鎖、すなわちVL、VHおよびFcドメインからなるポリペプチド鎖と、2つの「軽い」ポリペプチド鎖、すなわちVLおよびVHからなるポリペプチド鎖を含む。前記軽い鎖および重い鎖は相互作用によって単量体を形成し、そしてこれらの単量体は、不対合状態のFcドメインを介して相互に作用してIgG様分子を形成する。このようなIg様ダイアボディは四価であり、単一特異性、二重特異性、または四重特異性であり得る。
【0071】
ダイアボディ分子の少なくとも2つの結合部位は、同一または異なるエピトープを認識できる。異なるエピトープは、同一抗原由来、または異なる抗原由来とすることができる。一の実施形態において、エピトープは異なる細胞由来である。他の実施形態において、エピトープは、同一細胞またはウイルス上の細胞表面抗原である。エピトープ結合部位は、抗体の作製が可能ないかなる抗原をも認識できる。例えば、タンパク質、核酸、細菌毒素、細胞表面マーカー、自己免疫マーカー、ウイルスタンパク質、薬剤等が挙げられる。具体的な態様では、ダイアボディの少なくとも1つのエピトープ結合部位は、特定の細胞、例えばB細胞、T細胞、貪食細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞または樹状細胞上の抗原に対して特異的である。
【0072】
ダイアボディのポリペプチド鎖の各ドメイン、すなわちVL、VHおよびFCドメインを、ペプチドリンカーによって隔てることができる。ペプチドリンカーは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸とすることができる。いくつかの実施形態で、アミノ酸リンカー配列は、配列番号76の核酸配列によりコードされたGGGSGGGG(配列番号10)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、ダイアボディ分子の各ポリペプチド鎖が、少なくとも1個のシステイン残基を含むように作製される。このシステイン残基は、本発明の2本目のポリペプチド鎖上の少なくとも1個のシステイン残基と相互作用して、鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。鎖間ジスルフィド結合は、ダイアボディ分子の安定化に貢献し、組換え系における発現および回収を改善することで、結果的に安定かつ一貫性のある調製物をもたらすのみならず、分離・精製された産物のin vivoでの安定性を改善する。前記少なくとも1個のシステイン残基は、単一のアミノ酸として、または比較的長いアミノ酸配列(例えばヒンジドメイン)の一部として、ポリペプチド鎖の任意の位置に導入することができる。具体的な実施形態では、前記少なくとも1個のシステイン残基を遺伝子操作によってポリペプチド鎖のC末端に存在するように設計する。いくつかの実施形態で、前記少なくとも1個のシステイン残基は、アミノ酸配列LGGCの内部に入れて、ポリペプチド鎖に導入される。具体的な実施形態では、本発明のダイアボディ分子を構成するポリペプチド鎖のC末端は、アミノ酸配列LGGCを含む。他の実施形態で、前記少なくとも1個のシステイン残基は、例えば配列番号1または配列番号4の、ヒンジドメインを構成するアミノ酸配列内部に入れて、ポリペプチド鎖に導入される。具体的な実施形態で、本発明のダイアボディ分子のポリペプチド鎖のC末端は、例えば配列番号1のようなIgGヒンジドメインのアミノ酸配列を含む。他の実施形態で、本発明のダイアボディ分子のポリペプチド鎖のC末端は、ヌクレオチド配列(配列番号80)でコードされ得るアミノ酸配列VEPKSC(配列番号79)を含む。他の実施形態で、前記少なくとも1個のシステイン残基は、ヌクレオチド配列(配列番号78)によってコードされ得るアミノ酸配列LGGCFNRGEC(配列番号17)内部に入れて、ポリペプチド鎖に導入される。具体的な実施形態で、本発明のダイアボディ分子を構成するポリペプチド鎖のC末端は、ヌクレオチド配列(配列番号78)によってコードされ得るアミノ酸配列LGGCFNRGEC(配列番号17)を含む。さらなる他の実施形態で、前記少なくとも1個のシステイン残基は、ヌクレオチド配列(配列番号77)によってコードされ得るアミノ酸配列FNRGEC(配列番号23)の内部に入れて、ポリペプチド鎖に導入される。具体的な実施形態で、本発明のダイアボディ分子を構成するポリペプチド鎖のC末端は、ヌクレオチド配列(配列番号77)によってコードされ得るアミノ酸配列FNRGEC(配列番号23)を含む。
【0074】
いくつかの実施形態で、ダイアボディ分子は少なくとも2本のポリペプチド鎖を含む。前記各ポリペプチド鎖はアミノ酸配列LGGCを含み、かつ前記LGGC配列中のシステイン残基間のジスルフィド結合によって共有結合している。他の具体的な実施形態で、ダイアボディ分子は少なくとも2本のポリペプチド鎖を含む。うち一方は、配列FNRGEC(配列番号23)を含むが、他方はヒンジドメイン(少なくとも1個のシステイン残基を含む)を含む。ここで、前記少なくとも2本のポリペプチド鎖は、FNRGEC(配列番号23)中のシステイン残基とヒンジドメイン中のシステイン残基の間でジスルフィド結合によって共有結合している。具体的な態様で、ヒンジドメイン中に存在して、ジスルフィド結合に関与するシステイン残基は、Cys-128(Kabat EUによる番号付け;改変されていない完全なIgG重鎖のヒンジドメインの中に位置する)である。そして、その相手方(カウンターパート)は、配列番号23中のシステイン残基Cys-214(Kabat EUによる番号付け;改変されていない完全なIgG軽鎖のC末端に位置する)である(Elkabetzら, 2005, J. Biol. Chem. 280:14402-14412:参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)。さらなる他の実施形態では、少なくとも1個のシステイン残基を、遺伝子操作によりアミノ酸鎖のN末端に存在させる。さらに他の実施形態では、少なくとも1個のシステイン残基を、遺伝子操作によりダイアボディ分子のポリペプチド鎖のリンカー部分に存在させる。さらなる実施形態で、VHまたはVLドメインは、親(操作前)のVHまたはVLドメインと比較して少なくとも1個のアミノ酸の改変を含むように遺伝子操作する。そのようなアミノ酸改変は、親のアミノ酸をシステインで置換することを含む。
【0075】
本発明は、Fcドメインまたはその一部(例えば、CH2ドメインまたはCH3ドメイン)を含むダイアボディ分子を包含する。Fcドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgG、IgEおよびIgMを含むがこれらに限定はされない、あらゆる免疫グロブリンのアイソタイプまたはアロタイプに由来するものであってもよい。Fcドメイン(またはその一部)は、IgGに由来するのが好ましい実施形態である。IgGアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4、またはそれらのアロタイプであることが特に好ましい実施形態である。ある実施形態で、ダイアボディ分子はFcドメインを含む。このFcドメインは、あらゆる免疫グロブリンアイソタイプから独立に選択されたCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む(すなわち、FcドメインはIgGに由来するCH2ドメインとIgEに由来するCH3ドメイン、またはIgG1に由来するCH2ドメインとIgG2に由来するCH3ドメイン等を含んでなる)。前記Fcドメインを、本発明のダイアボディ分子を構成するポリペプチド鎖の中に、前記ポリペプチド鎖の他のドメインまたは部分に対してどんな位置であっても、遺伝子操作で導入することができる(例えば、Fcドメインもしくはその一部が、ポリペプチド鎖のVLおよびVH両ドメインのC末端にあってもよく、VLおよびVH両ドメインのN末端にあってもよく、または一方のドメインのN末端と他方のドメインのC末端に(すなわち、ポリペプチド鎖の2つのドメインの間に)あってもよい)。
【0076】
本発明はまた、ヒンジドメインを含む分子を包含する。ヒンジドメインは、IgA、IgD、IgG、IgEおよびIgMを含むどんな免疫グロブリンのアイソタイプまたはアロタイプに由来するものであってもよい。好ましい実施形態では、ヒンジドメインはIgGに由来し、そのIgGアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4、またはそれらのアロタイプである。前記ヒンジドメインは、ダイアボディ分子がヒンジ−Fcドメインを含むように、ダイアボディ分子を構成するポリペプチド鎖の中にFcドメインと共に、遺伝子操作で導入することができる。いくつかの実施形態で、ヒンジおよびFcドメインは、当該分野で公知のまたは本明細書で例示したどの免疫グロブリンアイソタイプとも無関係に選択される。他の実施形態で、ヒンジおよびFcドメインは、ポリペプチド鎖の少なくとも1つの他のドメイン、例えば、VLドメインによって隔てられている。ヒンジドメインを、または任意でヒンジ−Fcドメインを、本発明のポリペプチドの中に、前記ポリペプチド鎖の他のドメインまたは一部に対してどんな位置であっても、遺伝子操作で導入することができる。いくつかの実施形態で、本発明のポリペプチド鎖はヒンジドメインを含むが、このヒンジドメインは、Fcドメインを含まないポリペプチド鎖のC末端に存在する。さらなる他の実施形態で、本発明のポリペプチド鎖は、ポリペプチド鎖のC末端に存在するヒンジ−Fcドメインを含む。さらなる実施形態で、本発明のポリペプチド鎖は、ポリペプチド鎖のN末端に存在するヒンジ−Fcドメインを含む。
【0077】
上述したように、本発明は、それぞれのポリペプチド鎖がVHおよびVLドメインを含むポリペプチド鎖の多量体を包含する。いくつかの態様において、前記多量体のポリペプチド鎖は、さらにFcドメインを含む。Fcドメインの二量体形成は、免疫グロブリン様の機能性、すなわちFcを介した機能(例えば、Fc-FcγR相互作用、補体結合等)を示すダイアボディ分子の形成をもらたす。いくつかの実施形態で、各ポリペプチド鎖を構成するVLおよびVHドメインは、同一の特異性を有し、前記ダイアボディ分子は、二価であって、かつ単一特異的である。他の実施形態で、各ポリペプチド鎖を構成するVLおよびVHドメインは、異なる特異性を有し、ダイアボディは二価で、かつ二重特異的である。
【0078】
さらに、他の実施形態で本発明のダイアボディ分子は、各ポリペプチド鎖がVHおよびVLドメインを含むポリペプチド鎖の四量体を包含する。いくつかの実施形態で、四量体の2つのポリペプチド鎖は、さらにFcドメインを含む。したがって、四量体は、それぞれがVL、VHおよびFcドメインから成る2本の「重い」ポリペプチド鎖と、VLおよびVHドメインから成る2本の「軽い」ポリペプチド鎖を含む。二価単量体への「重い」鎖と「軽い」鎖の相互作用と結びついた、「重い」鎖のFcドメインを介した二価単量体の二量体形成は、四価の免疫グロブリン様分子の形成をもたらし得る(実施例6.2および6.3に例示)。いくつかの態様で、単量体は同一であり、四価のダイアボディ分子は、単一特異性または二重特異性である。他の態様では、単量体は異なっており、四価の分子は、二重特異性または四重特異性である。
【0079】
上記四重特異性ダイアボディ分子の形成は、4本の異なるポリペプチド鎖の相互作用を必要とする。そのような相互作用を単細胞組換え生産系で効率的に行わせることは、鎖の潜在的なミスペアリングによる多数の変異体の存在により困難である。ミスペアリングの可能性が増加することに対する1つの解決策は、所望のポリペプチド鎖対の中に「knobs-into-holes」型変異を導入することである。このような変異は、ホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成が好ましい。例えば、Fc-Fc相互作用に関して、アミノ酸置換(「knob」を形成する嵩高な側鎖を含むアミノ酸、例えばトリプトファンと置換することが好ましい)をCH2またはCH3ドメインに導入して、立体障害が同様に変異させたドメインとの相互作用を妨げるようにし、かつ立体障害がその変異型ドメインを、相補的なまたは適合する変異(すなわち「the hole」、例えばグリシンで置換する)を遺伝子操作で導入したドメインと、強制的に対合させるようにする。このような変異のセットは、ダイアボディ分子を構成するどのポリペプチド対にも遺伝子操作で導入することができ、さらに、そのような対のポリペプチド鎖のどの部分にも遺伝子操作で導入することができる。ホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成に有利なタンパク質操作の方法、特に免疫グロブリン様分子の操作については、当該分野でよく知られており、それらは本明細書中に包含される(Ridgwayら., 1996, Protein Engr. 9:617-621、Atwellら, 1997, J. Mol. Biol. 270: 26-35、およびXiら、2005, J. Immunol. Methods 296:95-101を参照されたい;いずれの文献も参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)。
【0080】
本発明はまた、変異型Fcもしくは変異型ヒンジ−Fcドメイン(またはその一部)を含むダイアボディ分子を包含する。この変異型Fcドメインは、比較可能な野生型Fcドメインもしくは野生型ヒンジ−Fcドメイン(またはその一部)と比べて、少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、置換、挿入、または欠失)を含んでいる。変異型Fcドメインもしくは変異型ヒンジ−Fcドメイン(またはその一部)を含む分子(例えば、抗体)は、野生型Fcドメインもしくは野生型ヒンジ−Fcドメイン(またはその一部)を含む分子と比べて、通常は表現型が変化している。変異型の表現型は、NK依存性またはマクロファージ依存性アッセイでアッセイしたときに、血中半減期の変化、安定性の変化、細胞性酵素に対する感受性の変化、またはエフェクター機能の変化として現れることがある。エフェクター機能を変えると確認された変異型Fcドメインは、国際公開WO 04/063351号、米国特許出願公開2005/0037000号および2005/0064514号、米国仮出願第60/626,510号(2004年11月10日出願)、第60/636,663号(2004年12月15日出願)、および第60/781,564号(2006年3月10日出願)、本発明者の同時出願である米国特許出願第11/271,140号(2005年11月10日出願)および第11/305,787号(2005年12月15日出願)に開示されている。各特許文献は参照としてその全てが本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明の二重特異性ダイアボディは、2つの分離した、異なるエピトープに同時に結合できる。いくつかの実施形態では、エピトープは同一抗原由来である。他の実施形態では、エピトープは異なる抗原由来である。少なくとも1つのエピトープ結合部位は、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、または他の単核細胞で発現され、免疫エフェクター細胞上に提示される決定因子(例えば、CD3、CD16、CD32、CD64等)に特異的であることが実施形態として好ましい。一の実施形態において、ダイアボディ分子は、エフェクター細胞の決定因子に結合し、また前記エフェクター細胞をも活性化する。これに関連して、本発明のダイアボディ分子は、それらがさらにFcドメインを含んでいるかどうかとは無関係に、Ig様の機能性を示すことができる(例えば、当該分野で公知の、または本明細書で例示した、いずれかのエフェクター機能アッセイ(例えばADCCアッセイ)でアッセイしたとき)。いくつかの実施形態で、本発明の二重特異性ダイアボディは、腫瘍細胞上の癌抗原とエファクター細胞の決定因子の両方に結合すると同時にエフェクター細胞を活性化する。他に取り得る実施形態で、本発明の二重特異性ダイアボディまたはダイアボディ分子は、上記(背景技術の項を参照されたい)のように、同一細胞上の活性化受容体と抑制受容体に同時に結合し(例えば、CD32AとCD32B、BCRとCD32B、またはIgERIとCD32Bに結合する)、それらを連結することによって、標的(例えばエフェクター)細胞の活性化を阻害することができる。本実施形態のさらなる態様において、二重特異性ダイアボディは、ウイルス上の2つの中和エピトープ(例えば、RSVエピトープ;E16およびE53のようなWNVエピトープ)に同時に結合することによって、抗ウイルス性を示すことができる
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性ダイアボディ分子は、特定の細胞型を標的とするための無比の機会を提供する。例えば、二重特異性ダイアボディまたはダイアボディ分子を、遺伝子操作して標的細胞型または標的組織型に特異な抗原のセットを認識するエピトープ結合部位の組合せを含むようにすることができる。さらに、個々の抗原の一方または両方が、他の組織および/または細胞型において別個にかなり一般的なものである場合、低親和性結合ドメインを用いて、ダイアボディまたはダイアボディ分子を構築することができる。このような低親和性結合ドメインは、治療目的のために十分な結合力でもって個々のエピトープまたは抗原に結合できないであろう。しかし、エピトープまたは抗原の両方が、単一標的細胞または組織上に存在する場合、その細胞もしくは組織に対するダイアボディまたはダイアボディ分子の結合力は、抗原1つだけを発現している細胞もしくは組織のそれと比べれば増加するであろう。このように前記細胞もしくは組織は、本発明によって効率的に標的化されるであろう。前記二重特異性分子は、たった1つの抗原に対する特異性を持つ単一特異性ダイアボディまたは抗体と比べると、前記両方の抗原を発現している細胞上の一方のまたは双方の標的抗原に対して強化された結合性を示し得る。
【0082】
本発明のダイアボディの結合特性は、結合活性および/または1以上のFcγRを介したエフェクター細胞機能(Fc-FcγR相互作用を通して、またはFcγRに対するダイアボディ分子の免疫特異的結合によって仲介される)を測定するためのin vitro機能アッセイにより特徴付けされることが好ましい(セクション5.4.2および5.4.3を参照)。FcγRに対する本発明の分子(例えばダイアボディ)の親和性および結合特性を、結合ドメイン−抗原またはFc-FcγR相互作用(すなわち、それぞれ、結合ドメインへの抗原の特異的結合、またはFcγRへのFc領域の特異的結合)を測定するための当該分野で知られるin vitroアッセイ法(生化学的なまたは免疫学をベースとするアッセイ法)を用いて測定することができる。前記in vitroアッセイ法には、ELISAアッセイ法、表面プラズモン共鳴アッセイ法、免疫沈降アッセイ法(セクション5.4.2参照)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の分子が(本明細書に記載され、開示されたような)in vivoモデルにおいて、in vitroベースのアッセイにおけるそれと同様の結合特性を有する実施形態が、最も好ましい。しかしながら、本発明は、in vitroベースのアッセイでは所望の表現型を示さないが、in vivoでは所望の表現型を示す本発明の分子を排除するものではない。
【0083】
ある実施形態では、本発明の分子を操作して、鋳型分子の匹敵する部分と比べて変化したグリコシル化パターンまたは変化したグリコフォームを含むようにすることができる。操作されたグリコフォームは、エフェクター機能を増強することを含むがそれに限定されない、様々な目的に有用であり得る。操作されたグリコフォームは、当業者に知られたどの方法ででも作ることができる。例えば、遺伝子操作されたもしくは変異型の発現株を用いる方法、1以上の酵素、例えばDI N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼIII (GnTIII)との共発現による方法、各種生物もしくは各種生物由来の細胞株で本発明のダイアボディを発現させることによる方法、またはダイアボディを発現させて精製した後に糖鎖を修飾することによる方法が挙げられる。遺伝子操作されたグリコフォームを作製する方法は、当該分野では公知である。かかる方法は、Umanaら、1999, Nat. Biotechnol 17:176-180;Daviesら、2001 Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shieldsら、2002, J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawaら、2003, J Biol Chem 278:3466-3473)、米国特許第6,602,684号;米国特許出願第10/277,370号;米国特許出願第10/113,929号;国際公開WO 00/61739A1号;国際公開WO 01/292246A1号;国際公開WO 02/311140A1号;国際公開WO 02/30954A1号;PotillegentTMtechnology (Biowa, Inc. Princeton, NJ);GlycoMAbTMglycosylation engineering technology (GLYCART biotechnology AG, Zurich, Switzerland)を含むが、これらに限定はされない。また、上記各方法は、参照としてその全てを本明細書に組み入れる。例えば、国際公開WO 00061739号;EA第01229125号;US第20030115614号;Okazakiら、2004, JMB, 336: 1239-49 を参照されたい。これらのいずれも参照としてその全てを本明細書に組み入れる。
【0084】
さらに本発明は、本発明のダイアボディを作製するために非天然アミノ酸を組み込むことを包含する。そのような方法は当業者には公知である。例えば、天然の生合成機構を用いてタンパク質内への非天然アミノ酸の組み込みを可能にする方法等がある。例えば、Wangら、2002, Chem. Comm. 1: 1-11;Wangら、2001, Science, 292: 498-500; van Hestら、2001, Chem. Comm. 19: 1897-1904を参照されたい。これらはいずれも参照としてその全てを本明細書に組み入れる。もう一つの方法として、アミノアシルtRNAの生合成に関与する酵素に焦点を当てたものがある。例えば、Tangら、2001, J. Am. Chem. 123(44): 11089-11090;Kiickら、2001, FEBS Lett. 505(3): 465を参照されたい。これらはいずれも、参照としてその全てを本明細書に組み入れる。
【0085】
いくつかの実施形態で、本発明は、グリコシル化部位を付加または欠失することによって、本発明の分子のVL、VHまたはFcドメインを改変する方法を包含する。タンパク質の糖鎖を改変する方法は、当該分野では周知であり、本発明中に包含される。例えば米国特許第6,218,149号;欧州特許第0,359,096B1号;米国特許公開第2002/0028486号;国際公開WO 03/035835号;米国特許公開第2003/0115614号;米国特許第6,218,149号;米国特許第6,472,511号を参照されたい。これらは全て参照としてその全内容が本明細書に組み込まれる。
【0086】
5.1. ダイアボディ結合ドメイン
本発明のダイアボディは、一般に免疫グロブリンまたは抗体に由来する抗原結合ドメインを含む。本発明の方法に使用する結合ドメインが由来する抗体は、鳥および動物(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ)を含むいずれの動物起源からのものであってもよい。抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体であることが好ましい。本明細書で用いる場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、そしてヒト免疫グロブリンライブラリーもしくは合成ヒト免疫グロブリンコード配列のライブラリーから、またはヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから、単離された抗体を含む。
【0087】
本発明は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患もしくは感染症の治療および/または予防用に当該分野で知られるあらゆる抗体を、本発明のダイアボディの結合ドメインのソースとして使用することを意図している。既知の癌抗体の非限定的な例をセクション5.7.1に示すだけでなく、列挙した標的抗原に特異的な他の抗体、およびセクション5.6.1で列挙した癌抗原に対する抗体を示す。自己免疫疾患および炎症性疾患の治療および/または予防用の既知の抗体の非限定的な例をセクション5.7.2に示すだけでなく、列挙した標的抗原に対する抗体およびセクション5.6.1で列挙した抗原に対する抗体も示す。他の実施形態では、セクション5.6.3に列挙した感染症に関連するエピトープに対する抗体を使用することができる。いくつかの実施形態で、前記抗体は1以上のアミノ酸改変を有する変異型Fc領域を含む。当該抗体は、本発明の方法によって同定され、付与されたエフェクター機能、並びに/または野生型Fc領域を含む匹敵する分子と比べてFcγRIIBに対する親和性の増強およびFcγRIIIAに対する親和性の低減を有することがわかっている。本発明により操作され得る炎症性疾患の治療または予防に使用される抗体の非限定的例を表9に示す。また、自己免疫疾患の治療または予防に使用される抗体の非限定的例を表10に示す。
【0088】
ヒトにおける抗体のin vivoでの使用およびin vitro検出アッセイを含むいくつかの使用に関しては、ヒト、キメラまたはヒト化抗体由来の可変ドメインを有するダイアボディを使用することが好ましい。完全なヒト抗体由来の可変領域は、被験者の治療のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いた上記のファージディスプレイ法を含む、当該分野で知られる様々な方法によって作成することができる。また、米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;並びに国際公開WO 98/46645号、WO 98/50433号、WO 98/24893号、WO 98/16654号、WO 96/34096号、WO 96/33735号およびWO 91/10741号も参照されたい。これらは、それぞれを参照としてその全てが本明細書に組み込まれる。
【0089】
ヒト化抗体は、所定の抗原に結合でき、かつヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域とヒト以外の免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するCDRを含む、抗体、その変異体もしくはフラグメントをいう。ヒト化抗体は、少なくとも1つの、一般的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含むことができる。当該可変ドメインでは、CDR領域の全部もしくは実質的に全部がヒト以外の免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のCDR領域と一致し、また全部もしくは実質的に全部のフレームワーク領域がヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のフレームワーク領域となっている。
【0090】
ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDR領域は、親配列と正確に一致する必要はない。例えば、ドナーCDRまたはコンセンサスフレームワークは、少なくとも1個の残基の置換、挿入もしくは欠失により変異誘発させて、変異誘発させた部位のCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスまたはドナー抗体に一致しないようにすることができる。しかしながら、そのような変異を広範囲に行うことは好ましくない。一般的には、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、大抵は90%以上、最も好ましくは95%を超える残基が、親のフレームワーク領域(FR)およびCDR配列のそれと一致する。ヒト化抗体は当該分野で知られる様々な技術を用いて作ることができる。限定はしないが、そのような技術には、CDRグラフト法(欧州特許第239,400号、国際公開WO 91/09967号、並びに米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)法またはリサーフェイシング(resurfacing)法(欧州特許第592,106号および第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489 498;Studnickaら、1994, Protein Engineering 7(6):805 814;および Roguskaら、1994, Proc Natl Acad Sci USA 91:969 973)、チェーンシャッフリング(chain shuffling)法(米国特許第5,565,332号)、並びに、例えば米国特許第6,407,213号、第5,766,886号、第5,585,089号、国際公開WO 9317105号、Tanら,2002, J. Immunol. 169:1119 25、Caldasら,2000, Protein Eng. 13:353 60、Moreaら,2000, Methods 20:267 79、Bacaら,1997, J. Biol. Chem. 272:10678 84、Roguskaら,1996, Protein Eng. 9:895 904、Coutoら, 1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s 5977s、Coutoら,1995, Cancer Res. 55:1717 22、Sandhu, 1994, Gene 150:409 10、Pedersenら,1994, J. Mol. Biol. 235:959 73、Jonesら, 1986, Nature 321:522-525、 Riechmannら,1988, Nature 332:323、およびPresta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596で開示された技術等が含まれる。しばしば、フレームワーク領域中のフレームワーク残基を、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換して、抗原結合性を変える、好ましくは改善することができる。これらのフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法で同定される。例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングして抗原結合性に重要なフレームワーク残基を同定する方法、および配列比較により特定の位置の普通でないフレームワーク残基を同定する方法が挙げられる(例えば、Queenらによる米国特許第5,585,089号;米国特許公開第2004/0049014号および第2003/0229208号;米国特許第6,350,861号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;および第5,530,101号、並びにRiechmannら, 1988, Nature 332:323を参照されたい。これらの全ては、参照としてその内容の全てを本明細書に援用する)。
【0091】
最も好ましい実施形態で、ヒト化結合ドメインは、ドナーであるマウス抗体と同一のエピトープに特異的に結合する。当業者には、本発明が一般に、抗体のCDRグラフト法を包含することが理解できるであろう。したがって、たとえ同一抗体クラスまたは同一抗体サブクラスであっても、ドナー抗体およびアクセプター抗体を同一種の動物由来にすることができる。しかし、より一般的には、ドナー側およびアクセプター側の抗体は、異なる種類の動物に由来する。典型的には、ドナー抗体はゲッ歯類のMAb等のヒト以外の抗体であり、アクセプター抗体はヒト抗体である。
【0092】
いくつかの実施形態では、ドナー抗体に由来する少なくとも1つのCDRがヒト抗体にグラフト化される。他の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域のそれぞれの、少なくとも2つ、好ましくは3つ全てのCDRがヒト抗体にグラフト化される。CDRは、カバット(Kabat)CDR、ループCDR、またはそれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態で、本発明は、少なくとも1つのCDRグラフト化重鎖と少なくとも1つのCDRグラフト化軽鎖を含むヒト化FcγRIIB抗体を包含する。
【0093】
本発明の方法で用いられるダイアボディには、修飾された誘導体、すなわち、ダイアボディへのあらゆるタイプの分子の共有結合により修飾された誘導体が含まれる。例えば、限定するつもりはないが、前記ダイアボディ誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンドもしくは他のタンパク質との結合等によって改変されたダイアボディを含む。多数の化学修飾のいずれをも既知の技術によって実行することができる。当該技術は、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含むが、これらに限定はされない。さらに、誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含むことができる。
【0094】
キメラ抗体は、例えば非ヒト抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリンの定常領域を有する抗体のように、キメラ抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子のことである。キメラ抗体を作る方法は、当該分野では公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら, 1986, BioTechniques 4:214; Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;並びに米国特許第6,311,415号、第5,807,715号、第4,816,567号および第4,816,397号を参照されたい。これらは参照としてその全てが本明細書に組み込まれる。
しばしば、フレームワーク領域内のフレームワーク残基を、CDRドナー抗体由来の対応する残基と置換して、抗原結合性を変える、好ましくは改善することができる。これらのフレームワーク置換は、当該分野において周知の方法によって同定することができる。例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングして抗原結合性に重要なフレームワーク残基を同定する方法や、配列を比較して特定位置におけるフレームワークの普通でない残基を同定する方法が挙げられる(例えば、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら、1988, Nature 332:323を参照されたい。これらは、参照としてその全てを本明細書に組み入れる)。
【0095】
本発明のダイアボディの結合ドメインの由来となるモノクローナル抗体は、当該分野で知られる様々な技術を用いて調製することができる。前記技術には、ハイブリドーマ、組換え体およびファージディスプレイ技術の使用、またはそれらの組合せが含まれる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて作製することができる。前記ハイブリドーマ技術には、当該分野では公知の技術の他、例えば、Harlowらの Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerlingらの in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, pp. 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981) (いずれも参照として本明細書にその全てを組み入れる)で教示される技術が含まれる。本明細書で使用する場合「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を介して作製された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を意味するのであって、それを生産する方法を意味するものではない。
【0096】
ハイブリドーマ技術を用いた特定の抗体を作製するためのおよびスクリーニングするための方法はルーチンなことであり、当該分野においては周知である。非限定的例では、マウスを対象の抗原またはそのような抗原を発現する細胞で免疫化することができる。例えば、抗原特異的抗体がマウス血清から検出されるように、ひとたび免疫応答が検出されるとマウス脾臓が摘出され、脾細胞が単離される。その後、その脾細胞を周知技術によって任意の適当なミエローマ細胞と融合させる。ハイブリドーマを限界希釈法により選択し、クローン化する。そのハイブリドーマクローンを、その後当該分野で既知の方法によって前記抗原に結合できる抗体を分泌する細胞に関してアッセイする。通常、高レベルの抗体を含むとされる腹水を、マウスの腹腔内に陽性ハイブリドーマクローンを接種することによって得ることができる。対象の抗原は、セクション5.8.1に記載した癌に関連する抗原、セクション5.8.2に記載した自己免疫疾患および炎症性疾患に関連する抗原、セクション5.8.3に記載した感染症に関連する抗原、並びにセクション5.8.4に記載した毒素を含む。ただし、これらに限定はされない。
【0097】
抗体はまた、当該分野で知られる様々なファージディスプレイ法を用いて作製することができる。ファージディスプレイ法では、機能性抗体ドメインが、それをコードしたポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子表面上に提示される。具体的な実施形態では、前記ファージを利用して、レパートリーもしくはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒトまたはマウス)から発現された抗原結合ドメイン(例えばFabやFv、またはジスルフィド結合安定化Fv)を提示することができる。対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて(例えば、標識した抗原、または固体表面もしくはビーズに結合または捕捉させた抗原を用いて)選択し、または同定することができる。これらの方法で用いられるファージは、一般にはfdやM13を含む繊維状ファージである。抗原結合ドメインは、ファージ遺伝子IIIまたはVIIIタンパク質のどちらかに組換えで融合させたタンパク質として発現される。本発明の免疫グロブリンまたはそのフラグメントの作製に用いることのできるファージディスプレイ法の例は、以下の文献中に開示されている方法を含む。すなわち、BrinkmanらによるJ. Immunol. Methods, 182:41-50, 1995;AmesらによるJ. Immunol. Methods, 184:177-186, 1995;Kettleboroughらによる Eur. J. Immunol., 24:952-958, 1994;PersicらによるGene, 187:9-18, 1997;BurtonらによるAdvances in Immunology, 57:191-280, 1994;国際出願PCT/GB91/01134号;国際公開WO 90/02809号;国際公開WO 91/10737号;国際公開WO 92/01047号;国際公開WO 92/18619号;国際公開WO 93/11236号;国際公開WO 95/15982号;国際公開WO 95/20401号;並びに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号である。これらの文献は、いずれも参照としてその全てを本明細書中に援用する。
【0098】
ファージディスプレイ技術を使用して、抗原に対する抗体の親和性を増大させることができる。この技術は、高親和性抗体を得るのに有用である。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異誘発、または同種抗原を用いたCDRウォーキングおよび再選択を使用して、初期抗体もしくは親抗体と比較した場合に抗原に対して、より高い親和力で結合する抗体を同定する(例えば、Glaserらの1992, J. Immunology 149:3903を参照されたい)。単一ヌクレオチドに対してというよりもコドン全体に対しての突然変異誘発は、結果的にアミノ酸変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異型クローンのプールからなるライブラリーを構築することができ、前記変異型クローンは、それぞれが1つのCDR中の単一アミノ酸の改変によって異なっており、かつ各CDR残基に関して可能なアミノ酸置換をそれぞれ提示する変異体を含んでいる。抗原に対する結合親和性が増加した変異体は、固定した変異体と標識した抗原との接触によってスクリーニングすることができる。当該分野で知られるどんなスクリーニング方法であっても、抗原に対する結合活性が増加した変異型抗体を同定するのに使用することができる(例えば、ELISA法)(Wuらの1998, Proc Natl. Acad Sci. USA 95:6037; Yeltonらの1995, J. Immunology 155:1994を参照されたい)。軽鎖をランダム変異させるCDRウォーキングも使用できる(Schierらの1996, J. Mol. Bio. 263:551を参照されたい)。
【0099】
本発明はまた、フレームワークもしくはCDR領域に変異(例えば、1以上のアミノ酸置換)を持った、本明細書に記載したもしくは当該分野で知られるいずれかの結合ドメインのアミノ酸配列からなる結合ドメインの使用を包含する。これらの結合ドメインにおける変異は、結合ドメインのFcγRIIB(これに結合ドメインが免疫特異的に結合する)に対する結合力および/または親和力を維持または増強することが好ましい。当業者に知られる標準的な技術(例えばイムノアッセイ)を使用して、特定の抗原に対する抗体の親和性をアッセイすることができる。
【0100】
当業者に既知の標準的な技術を使用して、抗体もしくはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列中に変異を導入することができる。そのような技術には、例えば結果的にアミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異誘発およびPCRを介した突然変異誘発等が挙げられる。誘導体は、元となった抗体もしくはそのフラグメントと比較して、15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、または2アミノ酸未満の置換を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、誘導体は、1以上の予測される非必須アミノ酸残基での保存的アミノ酸置換を有する。
【0101】
5.1.1. FcγRIIBと免疫特異的に結合するエピトープ結合部位を含むダイアボディ
具体的な実施形態において、本発明のダイアボディの少なくとも1つの結合ドメインは、FcγRIIBの少なくとも1つの活性にアゴナイズする。本発明の一の実施形態で、前記活性は、B細胞受容体を介したシグナル伝達を阻害することである。他の実施形態において、結合ドメインはB細胞の活性化、B細胞の増殖、抗体産生、B細胞の細胞内カルシウム流入、細胞周期の進行、またはFcγRIIBシグナル伝達経路における1以上の下流のシグナル伝達分子の活性を阻害する。さらなる他の実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIBのリン酸化またはSHIPの動員を増強する。本発明のさらなる実施形態で、結合ドメインはB細胞受容体を介したシグナル伝達経路でのMAPキナーゼ活性またはAkt動員を阻害する。他の実施形態において、結合ドメインは、FcεRIシグナル伝達のFcγRIIBを介した阻害にアゴナイズする。具体的な実施形態では、前記結合ドメインは、FcεRI誘導されたマスト細胞活性化、カルシウム動員、脱顆粒、サイトカイン産生、またはセロトニン放出を阻害する。他の実施形態で、本発明の結合ドメインは、FcγRIIBのリン酸化を刺激し、SHIPの動員を刺激し、SHIPのリン酸化およびSHIPとShcとの結合を刺激し、またはMAPキナーゼファミリーメンバー(例えばErk1、Erk2、JNK、p38等)の活性化を阻害する。さらなる他の実施形態で、本発明の結合ドメインは、p62dokのチロシンリン酸化、並びにそれとSHIPおよびrasGAPとの結合を増強する。他の実施形態で、本発明の結合ドメインは、単球またはマクロファージでのFcγRを介した食作用を阻害する。
【0102】
他の実施形態では、結合ドメインは、FcγRIIBの少なくとも1つの活性にアンタゴナイズする。一の実施形態で、前記活性とは、B細胞受容体を介したシグナル伝達の活性化である。具体的な実施形態で、結合ドメインは、B細胞活性、B細胞の増殖、抗体産生、B細胞の細胞内カルシウム流入、またはFcγRIIBシグナル伝達経路における1以上の下流のシグナル伝達分子の活性を増強する。さらなる他の実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIBのリン酸化またはSHIPの動員を減少させる。本発明のさらなる実施形態で、結合ドメインは、B細胞受容体を介したシグナル伝達経路でのMAPキナーゼ活性またはAkt動員を増強する。他の実施形態において、結合ドメインは、FcεRIシグナル伝達のFcγRIIBを介した阻害にアンタゴナイズする。具体的な実施形態では、前記結合ドメインは、FcεRI誘導されたマスト細胞活性化、カルシウム動員、脱顆粒、サイトカイン産生、またはセロトニン放出を増強する。他の実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIBのリン酸化を阻害し、SHIPの動員を阻害し、SHIPのリン酸化およびそれとShcとの結合を阻害し、またはMAPキナーゼファミリーメンバー(例えばErk1、Erk2、JNK、p38等)の活性化を増強する。さらなる他の実施形態で、本発明の結合ドメインは、p62dokのチロシンリン酸化、並びにそれとSHIPおよびrasGAPとの結合を阻害する。他の実施形態で、本発明の結合ドメインは、単球またはマクロファージでのFcγRを介した食作用を増強する。他の実施形態において、結合ドメインは、脾臓マクロファージによるオプソニン化粒子の食作用、クリアランスを妨げる。
【0103】
その他の実施形態において、少なくとも1つの結合ドメインを使用して、FcγRIIBを発現する細胞を本発明のダイアボディの標的とすることができる。
【0104】
一の具体的な実施形態で、結合ドメインの1つは、クローン2B6または3H7より産生されるマウスモノクローナル抗体に由来する。前記クローンは、それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する。2B6および3H7抗体を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collection (10801 University Blvd., Manassas, VA. 20110-2209)に2002年8月13日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に基づいて寄託され、それぞれ受託番号PTA-4591(2B6を産生するハイブリドーマ用)およびPTA-4592(3H7を産生するハイブリドーマ用)が付与された。これらは、参照により本明細書中に組み込まれる。結合ドメインはヒト由来であるか、またはヒト化されたものであることが実施形態として好ましい。3H7または2B6クローンから産生される抗体のヒト化バージョンに由来する結合ドメインが好ましい。
【0105】
本発明はまた、他の抗体由来の結合ドメインを有するダイアボディを包含する。他の抗体とは、特にFcγRIIB、好ましくはヒトFcγRIIB、より好ましくは天然のヒトFcγRIIBに結合し、かつ1D5、2E1、2H9、2D11および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有する)を含むがそれらに限定されないクローンに由来する。上記のクローンを産生するハイブリドーマは、ブダペスト条約の規定の下に、American Type Culture Collection (10801 University Blvd., Manassas, VA. 20110-2209)に2004年5月7日に寄託されている。それらのハイブリドーマは、参照によって本明細書中に組み込まれる。上記抗体由来の結合ドメインは、ヒト化されたものが実施形態としては好ましい。
【0106】
具体的な実施形態で、本発明のダイアボディに使用される結合ドメインは、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンにより産生される抗体の1以上の相補性決定領域(CDR)、好ましくは6つのCDR全てを含む)由来である。他の実施形態で、結合ドメインは、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンのそれぞれで産生されるマウスモノクローナル抗体と同一のエピトープに結合し、および/または、例えばELISAアッセイもしくは他の適当な競合イムノアッセイで測定したとき、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンにより産生されたマウスモノクローナル抗体と競合し、かつまた、その結合ドメインがFcγRIIAと結合するよりも強い親和性でFcγRIIBと結合する。
【0107】
本発明はまた、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるマウスモノクローナル抗体の重鎖可変部および/または軽鎖可変部のアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である重鎖可変部および/または軽鎖可変部のアミノ酸配列を含む結合ドメインを有するダイアボディを包含する。本発明はさらに、FcγRIIAに結合するよりも高い親和性でFcγRIIBに特異的に結合し、また2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるマウスモノクローナル抗体の1以上のCDRのアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である1以上のCDRのアミノ酸配列を含む、結合ドメインを持ったダイアボディを包含する。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントの決定は、BLASTタンパク質検索を含む当業者に公知のいずれの方法によっても決定することができる。
【0108】
本発明はまた、結合ドメインがFcγRIIAと結合するよりも強い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する結合ドメインを含むダイアボディの使用を包含する。この結合ドメインは、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるマウスモノクローナル抗体のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされている。好ましい実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIAよりも強い親和性でFcγRIIBと特異的に結合し、かつ2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるマウスモノクローナル抗体の軽鎖可変部および/または重鎖可変部のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変部および/または重鎖可変部を含む。他の好ましい実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIAよりも強い親和性でFcγRIIBと特異的に結合し、かつ2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるマウスモノクローナル抗体の1以上のCDRのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされる1以上のCDRを含む。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、限定はしないが、フィルターに結合したDNAを約45℃の温度下で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)溶液中にて処理した後、約50〜65℃下で0.2×SSC/0.1% SDS溶液にて1回以上洗浄するハイブリダイゼーションを含む。より高度のストリンジェントな条件は、例えばフィルターに結合したDNAを約45℃の温度下で6×SSC溶液中で処理した後、約60℃下で0.1×SSC/0.2% SDS溶液にて1回以上洗浄するハイブリダイゼーションを含む。あるいは、当業者に公知の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、Ausubel, F.M.ら編、1989 Current Protocols in Molecular Biology, vol. 1, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley and Sons, Inc., NY 6.3.1〜6.3.6ページおよび2.10.3ページを参照されたい;参照として本明細書に組み入れる)を含む。
【0109】
本発明はまた、フレームワークまたはCDR領域に変異(例えば、1以上のアミノ酸置換)を有する上記いずれかの結合ドメインのアミノ酸配列を含む結合ドメインの使用を包含する。これらの結合ドメインにおける変異は、結合ドメインが免疫特異的に結合するFcγRIIBに対する結合ドメインの結合力および/または親和性を維持または強化するものが好ましい。当業者に公知の標準的な技術(例えば、イムノアッセイ)を用いて、特定の抗原に対する抗体の親和性をアッセイすることができる。
【0110】
当業者に公知の標準的な技術を用いて抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列中に変異を導入することができる。そのような技術には、例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異誘発およびPCRを介した突然変異誘発が含まれる。誘導体は、元となった抗体もしくはそのフラグメントに対して15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、または2アミノ酸未満の置換を含むことが好ましい。誘導体が1以上の予測される非必須アミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を有することが実施形態として好ましい。
【0111】
好ましい実施形態では、結合ドメインはヒト化抗体に由来する。ヒト化FcγRIIB特異的抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでいてもよい。この可変ドメインでは、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(例えば、ドナー抗体)のCDR領域と一致し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域のコンセンサス配列となっている。
【0112】
本発明のダイアボディは、FcγRIIBに特異的なヒト化可変ドメインを含む。この可変ドメインでは、ヒト抗体(レシピエント抗体)の重鎖および/または軽鎖可変領域の1以上のCDRの1以上の領域が、FcγRIIAよりも強い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するドナーのモノクローナル抗体の1以上のCDRの類似部分で置換されている。そのようなモノクローナル抗体として、例えば、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンで産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。他の実施形態では、ヒト化抗体は、それぞれ2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2と同一のエピトープに結合する。
【0113】
好ましい実施形態で、ヒト化FcγRIIB結合ドメインのCDR領域は、FcγRIIBに特異的なマウス抗体に由来する。いくつかの実施形態で、本明細書に記載したヒト化抗体は、限定はしないが、アクセプター抗体のアミノ酸欠失、挿入、修飾を包含する改変を含む。ここで言うアクセプター抗体とは、すなわち、ヒト抗体であり、さらにドナーモノクローナル抗体の結合特異性を保持する上で必要な重鎖および/または軽鎖の可変ドメインのフレームワーク領域を意味する。いくつかの実施形態で、本明細書に記載したヒト化抗体のフレームワーク領域は、必ずしも天然のヒト抗体可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸配列と正確に同じである必要はなく、ヒト化抗体の性質を変えるアミノ酸欠失、挿入、修飾を含む(ただし、これらに限定はされない)様々な改変を包含する。ここで、ヒト化抗体の性質を変えるとは、例えば、マウスのFcγRIIB特異的抗体と同一の標的に対して特異的であるヒト化抗体領域の結合特性を改善すること等が該当する。最も好ましい実施形態では、非ヒトフレームワーク残基を広範に導入することを避け、かつヒトにおいてヒト化抗体の最小限の免疫原性を確保するために、フレームワーク領域に対して最少数の改変を行う。ドナーのモノクローナル抗体は、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0114】
具体的な実施形態で、結合ドメインは、FcγRIIAと結合するよりも強い親和力でFcγRIIBと特異的に結合するCDRグラフト化抗体の可変ドメインを包含する。ここで、CDRグラフト化抗体は、レシピエント抗体のフレームワーク残基と、ドナーモノクローナル抗体由来の残基からなる重鎖可変領域ドメインを含む。ドナーモノクローナル抗体は、例えば、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンより産生されるモノクローナル抗体のように、FcγRIIAと結合するよりも強い親和力でFcγRIIBと特異的に結合する抗体である。他の具体的な実施形態で、本発明のダイアボディは、CDRグラフト化抗体がFcγRIIAと結合するよりも強い親和力でFcγRIIBと特異的に結合する該CDRグラフト化抗体由来の可変ドメインを含む。ここで、CDRグラフト化抗体は、レシピエント抗体のフレームワーク残基と、ドナーモノクローナル抗体由来の残基からなる軽鎖可変領域ドメインを含む。ドナーモノクローナル抗体は、例えば、2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2クローンより産生されるモノクローナル抗体のように、FcγRIIAと結合するよりも強い親和力でFcγRIIBと特異的に結合する抗体である。
【0115】
本発明で用いられるヒト化抗FcγRIIBの可変ドメインは、CDR1(配列番号24もしくは配列番号25)および/またはCDR2(配列番号26もしくは配列番号27)および/またはCDR3(配列番号28もしくは配列番号29)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに/或いはCDR1 (配列番号32もしくは配列番号33)および/またはCDR2 (配列番号34、配列番号35、配列番号36もしくは配列番号37)および/またはCDR3(配列番号38もしくは配列番号39)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有していてもよい。
【0116】
具体的な実施形態で、ダイアボディはヒト化2B6抗体に由来する可変ドメインを含む。このダイアボディでは、VH領域がヒト生殖系列のVHセグメントであるVH1-18(Matsudaら、1998, J. Exp. Med. 188:2151062)およびJH6(Ravetchら1981, Cell 27(3 Pt. 2): 583-91)に由来するFRセグメントと、配列番号24、配列番号26または配列番号28のアミノ酸配列を有する2B6 VHの1以上のCDR領域とから成る。一の実施形態で、2B6 VHは配列番号40のアミノ酸配列を有する。他の実施形態で、2B6 VHドメインは、配列番号87のHu2B6VHのアミノ酸配列を有し、配列番号88のヌクレオチド配列によりコードされ得る。他の具体的な実施形態で、ダイアボディはVL領域をさらに含み、このVL領域はヒト生殖系列VLセグメントであるVK-A26(Lautner-Rieskeら、1992, Eur. J. Immunol. 22:1023-1029)およびJK4(Hieterら、1982, J. Biol. Chem. 257:1516-22)のFRセグメントと、配列番号32、配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号38のアミノ酸配列を有する、2B6 VLの1以上のCDR領域とから成る。一の実施形態で、2B6 VLは、配列番号41、配列番号42、または配列番号43のアミノ酸配列を有する。具体的な実施形態において、2B6 VLは、配列番号89のHu2B6VLのアミノ酸配列を有し、配列番号90のヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0117】
他の具体的な実施形態で、ダイアボディは、ヒト化3H7抗体に由来する可変ドメインを有する。このダイアボディでは、VH領域がヒト生殖系列VHセグメントに由来するFRセグメントと、配列番号37のアミノ酸配列を有する3H7 VHのCDR領域とから成る。他の具体的な実施形態において、ヒト化3H7抗体はさらにVL領域を含み、このVL領域はヒト生殖系列VLセグメントのFRセグメントと、配列番号44のアミノ酸配列を有する3H7VLのCDR領域とから成る。
【0118】
具体的には、結合ドメインは、天然のヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと免疫特異的に結合し、また以下の組合せのいずれかにおいて2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11または1F2のCDR配列を含む(あるいは、から成る)。前記組合せとは、VH CDR1およびVL CDR1;VH CDR1およびVL CDR2;VH CDR1およびVL CDR3;VH CDR2およびVL CDR1;VH CDR2およびVL CDR2;VH CDR2およびVL CDR3;VH CDR3 and a VH CDR1;VH CDR3およびVL CDR2;VH CDR3およびVL CDR3;VH1 CDR1、VH CDR2およびVL CDR1;VH CDR1およびVH CDR2およびVL CDR2;VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR3;VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2;VH CDR2、VH CDR2およびVL CDR3;VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1;VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2;VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR3;VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR2、VH CDR3、VL CDR2およびVL CDR3;VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2;VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3;VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1、VL CDR2、VL CDR3;VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、 およびVL CDR3;VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3;または本明細書で開示したVH CDRおよびVL CDRのいずれかの組合せをいう。
【0119】
本発明のダイアボディに含まれる結合ドメインの由来となる抗体は、FcγRIIAと比べてFcγRIIBに最も強い特異性をもった抗体を選択できるように、エピトープマッピングによってさらに特徴付けることができる。抗体のエピトープマッピング法は当該分野では周知であり、本発明の方法に包含される。いくつかの実施形態では、FcγRIIBの1以上の領域を含む融合タンパク質を、本発明の抗体のエピトープをマッピングするのに使用することができる。具体的な実施形態で、融合タンパク質は、ヒトIgG2のFc部分と融合したFcγRIIBの領域のアミノ酸配列を含んでいる。各融合タンパク質は、下記の表2に示すようなアミノ酸置換および/または相同受容体(例えばFcγRIIA)の対応領域による該受容体の特定領域の交換をさらに含むことができる。pMGX125およびpMGX132は、FcγRIIB受容体のIgG結合部位を含み(前者はFcγRIIBのC末端を有し、そして後者はFcγRIIAのC末端を有する)、C末端結合性を区別するために使用することができる。その他は、IgG結合部位におけるFcγRIIA置換、およびFcγRIIAまたはFcγRIIBのいずれかのN末端を有する。これらの分子は、抗体が結合する受容体分子の部分を決定するのに役に立つ。
【表2】
【0120】
融合タンパク質は、本発明の抗FcγRIIB抗体への結合を測定するためのいずれかの生化学的アッセイ法、例えばELISA法で使用することができる。他の実施形態においては、特定の残基をFcγRIIA配列由来の残基と置き換えたペプチドを用いて、エピトープ特異性のさらなる確認を行うことができる。
【0121】
抗体は、本発明の抗体の機能、特にFcγRIIBシグナル伝達を調節する活性、を同定するためのアッセイ法を用いて性状解析することができる。例えば、本発明の性状解析は、FcγRIIBのITIMモチーフ中のチロシン残基のリン酸化を測定したり、あるいは、B細胞受容体によって生じるカルシウム動員の阻害を測定することもできる。本発明の性状解析は、細胞ベースのアッセイ法または無細胞系アッセイ法とすることができる。
【0122】
マスト細胞においては、高親和性IgE受容体であるFcεRIとFcγRIIBとの共凝集が、抗原誘導性脱顆粒、カルシウム動員、およびサイトカイン産生の阻害をもたらすことは当該分野では十分に立証されている(Metcalfe D.D.ら 1997, Physiol. Rev. 77:1033;Long E.O. 1999 Annu Rev. Immunol 17: 875)。このシグナル伝達経路の分子的詳細については、最近明らかとなった(Ott V.L., 2002, J. Immunol. 162(9):4430-9)。ひとたびFcεRIと共凝集すると、FcγRIIBは、そのITIMモチーフ中のチロシン上で直ちにリン酸化され、その後Srcホモロジー2含有イノシトール-5-ホスファターゼ(Src Homology-2 containing inositol-5-phosphatase:SHIP)を動員する。この酵素は、SH2ドメイン含有イノシトールポリホスフェート5-ホスファターゼであって、順次リン酸化されて、Shcおよびp62dokと会合する。p62dokは、アダプター分子ファミリーのプロトタイプであり、ここでいうアダプター分子ファミリーは、例えば、アミノ末端のプレクストリン相同ドメイン(PHドメイン)のようなシグナル伝達ドメイン、PTBドメイン、およびPXXPモチーフと多数のリン酸化部位を含むカルボキシ末端領域を含む(Carpinoら、1997 Cell, 88: 197; Yamanshiら、1997, Cell, 88:205))。
【0123】
本発明で使用する抗FcγRIIB抗体は、同様に、1以上のIgE介在応答を調節する能力について性状解析することができる。IgEに対して高親和性の受容体およびFcγRIIBに対して低親和性の受容体を共発現する細胞株を、IgE介在応答の調節における抗FcγRIIB抗体の性状解析に用いることが好ましい。具体的な実施形態において、全長のヒトFcγRIIBでトランスフェクトしたラット好塩基球性白血病細胞株(RBL-H23; Barsumian E.L.ら1981 Eur. J. Immunol.11:317;参照として本明細書にその全てを組み入れる)由来の細胞を用いることができる。RBL-2H3は、十分に特徴付けられたラット細胞株であり、IgEを介した細胞活性化後のシグナル伝達機構を研究するのに広く使用されている。RBL-2H3細胞で発現され、そしてFcεRIと共凝集すると、FcγRIIBは、FcεRI誘導カルシウム動員、脱顆粒およびサイトカイン産生を阻害する(Malbecら、1998, J. Immunol. 160:1647;Daeronら、1995 J. Clin. Invest. 95:577;Ottら、2002 J. of Immunol. 168:4430-4439)。
【0124】
本発明で使用する抗体は、FcεRI誘導型マスト細胞活性化の阻害について性状解析することもできる。例えば、FcγRIIBでトランスフェクトされたラット好塩基球性白血病細胞株(RBL-H23; Barsumian E.L.ら1981 Eur. J. Immunol.11:317)由来の細胞を、IgEで感作し、そしてFcεRIだけを凝集するウサギ抗マウスIgGのF(ab’)2フラグメントで刺激するか、またはFcγRIIBとFcεRIを共凝集する完全なウサギ抗マウスIgGで刺激する。この系では、下流シグナル伝達分子の間接的な調節を、感作および刺激した細胞に本発明の抗体を添加したときにアッセイできる。例えば、FcγRIIBのチロシンリン酸化およびSHIPの動員とリン酸化、Erk1、Erk2、JNKまたはp38を含むがそれらに限定されないMAPキナーゼファミリーメンバーの活性化、並びにp62dokのチロシンリン酸化およびそれとSHIPおよびRasGAPとの会合をアッセイする。
【0125】
本発明の抗体によりFcεRI誘導型マスト細胞活性化の阻害を測定する1つの典型的なアッセイは、以下を含み得る。すなわち、ヒトFcγRIIBでRBL-H23細胞をトランスフェクトすること、IgEでRBL−H23細胞を感作すること、そしてウサギ抗マウスIgGのF(ab’)2(FcεRIのみを凝集し、FcεRI介在シグナル伝達を引き起こす;対照として用いる)でRBL−H23細胞を刺激するか、または完全なウサギ抗マウスIgG(FcγRIIBとFcεRIを共凝集し、結果的にFcεRI介在シグナル伝達を阻害する)でRBL−H23細胞を刺激することを含み得る。完全なウサギ抗マウスIgG抗体で刺激した細胞を、さらに、本発明の抗体とプレインキュベートすることができる。本発明の抗体とプレインキュベートした細胞、および本発明の抗体とプレインキュベートしていない細胞のFcεRI依存性活性を測定し、これらの細胞におけるFcεRI依存性活性のレベルを比較することで、本発明の抗体によるFcεRI依存性活性の調節を示すことができる。
【0126】
上記の典型的なアッセイを使用して、例えば、FcγRIIB受容体へのリガンド(IgG)結合をブロックし、かつおよびFcεRIとFcγRIIBの共凝集を妨げることによってFcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアンタゴナイズする抗体を同定することができる。同様にこのアッセイは、FcγRIIBとFcεRIの共凝集を増強し、かつFcγRIIBとFcεRIの共凝集を促進することでFcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアゴナイズする抗体を同定する。
【0127】
いくつかの実施形態で、本明細書で同定され記載されたまたは当該分野で知られた、本発明の抗FcγRIIB抗体のエピトープ結合ドメインを含む抗FcγRIIBダイアボディは、好ましくは細胞ベースのアッセイ法において、マスト細胞もしくは好塩基球の脱顆粒をモニターしおよび/または測定することにより、IgE介在応答を調節するその能力について性状解析される。このようなアッセイで用いるマスト細胞または好塩基球は、当業者に公知の標準的な組換え法を用いて、ヒトFcγRIIBを含むように遺伝子操作されていることが好ましい。具体的な実施形態で、本発明の抗FcγRIIB抗体は、細胞ベースのβヘキソサミニダーゼ(顆粒中に含まれる酵素)放出アッセイでIgE介在応答を調節するその能力について性状解析される。マスト細胞および好塩基球からのβヘキソサミニダーゼ放出は、急性アレルギー状態および急性炎症状態の最初の事象である(Aketaniら、2001 Immunol. Lett. 75: 185-9;Aketaniら、2000 Anal. Chem. 72: 2653-8)。セロトニンやヒスタミンを含むがこれらに限定されない他の炎症性メディエータの放出を本発明の方法に従ってアッセイし、IgE介在応答を測定してもよい。特定の作用機序に縛られるつもりはないが、マスト細胞および好塩基球からのβヘキソサミニダーゼ含有顆粒のような顆粒の放出は、FcγRIと多価抗原との架橋により開始される細胞内カルシウム濃度依存性のプロセスである。
【0128】
ヒトマスト細胞の研究の可能性は、適当な長期のヒトマスト細胞培養物がないことで制限されている。最近になって、LAD1およびLAD2と呼ばれる2種の新規幹細胞因子依存性のヒトマスト細胞株が、マスト細胞肉腫/白血病患者由来の骨髄液から樹立された(Kirshenbaumら、2003, Leukemia research, 27:677-82;参照としてその全てを本明細書に組み入れる)。両細胞株は、FcεRIおよびいくつかのヒトマスト細胞マーカーを発現することが記載されている。LAD 1細胞およびLAD2細胞は、IgE介在応答に本発明の抗体が及ぼす効果を評価するのに使用することができる。具体的な実施形態で、上記のような細胞ベースのβヘキソサミニダーゼ放出アッセイをLAD細胞で使用して、本発明の抗FcγRIIB抗体によるIgE介在応答のあらゆる調節を測定することができる。典型的なアッセイでは、例えば、LAD 1等のヒトマスト細胞を、ヒトキメラIgE抗ニトロフェノール(NP)で刺激し、多価抗原であるBSA-NPでチャレンジする。そして細胞の脱顆粒を、上清中に放出されるβヘキソサミニダーゼを測定することによりモニターする (Kirshenbaumら、2003, Leukemia research, 27:677-682;参照としてその全てを本明細書に組み入れる)。
【0129】
いくつかの実施形態で、当該分野で公知の標準的な方法、例えばFACS染色等を使用して測定したとき、ヒトマスト細胞の内在性FcγRIIBの発現が低い場合、本発明の抗FcγRIIBダイアボディにより媒介される阻害経路の活性化の差異をモニターおよび/または検出することは困難かもしれない。それ故、本発明は、サイトカインおよび特定の増殖条件を用いてFcγRIIB発現を上方制御することのできる別の方法を包含する。FcγRIIBは、THP1やU937等のヒト単球系細胞株(Tridandapaniら、2002, J. Biol. Chem., 277(7): 5082-5089)、およびヒト初代単球(Pricopら、2001, J. of Immunol., 166: 531-537)では、IL-4により高度に上方制御されることが記載されている。ジブチリル環状AMPによるU937の分化は、FcγRIIの発現を増加することが記載されている(Cameronら、2002 Immunology Letters 83, 171-179)。したがって、検出感度を増強するために、本発明の方法で使用するヒトマスト細胞での内在性FcγRIIBの発現は、例えばIL-4、IL-13のようなサイトカインを用いて上方制御することができる。
【0130】
抗FcγRIIBダイアボディは、B細胞受容体(BCR)を介したシグナル伝達の阻害についてアッセイすることもできる。BCRを介したシグナル伝達は、少なくとも1つ以上の下流の生物学的応答、例えばB細胞の活性化および増殖、抗体産生等を含み得る。FcγRIIBとBCRとの共凝集は、細胞周期の進行および細胞の生存の阻害をもたらす。さらに、FcγRIIBとBCRとの共凝集は、BCR介在シグナル伝達の阻害をもたらす。
【0131】
特に、BCRを介するシグナル伝達は、以下の少なくとも1つ以上を含む。すなわち、下流シグナル伝達分子の調節、例えば、FcγRIIBのリン酸化状態、SHIPの動員、Btkおよび/またはPLCγの局在、MAPキナーゼ活性、Akt(抗アポトーシスシグナル)の動員、カルシウム動員、細胞周期の進行、および細胞増殖が挙げられる。
【0132】
BCRシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害におけるエフェクター機能の多くはSHIPを介しているが、最近、SHIP欠損マウス由来のリポ多糖(LPS)活性化B細胞が、カルシウム動員、Ins(1,4,5)P3産生、並びにErkおよびAktのリン酸化の顕著なFcγRIIB介在阻害を示すことが立証された(Brauweiler A.ら、2001, Journal of Immunology, 167(1): 204-211)。したがって、SHIP欠損マウス由来のex vivo B細胞を用いて、本発明の抗体を特徴付けることができる。本発明の抗体によるBCRシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害を測定するための典型的なアッセイは、以下のステップを含み得る。すなわち、SHIP欠損マウスから脾臓B細胞を分離するステップ、前記細胞をリポ多糖で活性化するステップ、および前記細胞をF(ab’)2抗IgMで刺激してBCRを凝集させるか、または抗IgMで刺激してBCRをFcγRIIBと共凝集させるステップである。完全な抗IgMで刺激し、BCRをFcγRIIBと共凝集させた細胞を、さらに本発明の抗体とプレインキュベートすることができる。細胞のFcγRIIB依存性活性は、当該分野で知られる標準的な技術によって測定することができる。抗体とプレインキュベートした細胞およびプレインキュベートしていない細胞のFcγRIIB依存性活性のレベルを比較することにより、その抗体によるFcγRIIB依存性活性の調節を表すことができる。
【0133】
FcγRIIB依存性活性の測定は、例えば、フローサイトメトリーで細胞内カルシウム動員を測定すること、Aktおよび/もしくはErkのリン酸化を測定すること、PI(3,4,5)P3のBCR介在蓄積を測定すること、またはB細胞のFcγRIIB介在増殖を測定することを含み得る。
【0134】
前記アッセイを用いて、例えば、本発明で使用する以下のようなダイアボディまたは抗FcγRIIB抗体を同定することができる。すなわち、FcγRIIB受容体のリガンド(IgG)結合部位をブロックし、かつFcγRIIBとBCRの共凝集を妨げることによりBCRシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアンタゴナイズすることで、BCRシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害を調節するダイアボディまたは抗FcγRIIB抗体である。また、前記アッセイを用いて、FcγRIIBとBCRの共凝集を増強しかつBCRシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアゴナイズする抗体を同定することもできる。
【0135】
抗FcγRIIB抗体は、ヒト単球/マクロファージにおいてFcγRIIを介したシグナル伝達についてアッセイすることもできる。FcγRIIBと免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif:ITAM)を有する受容体との共凝集は、SHIPをエフェクターとして用いるFcγR介在食作用を下方制御するように作用する(Tridandapaniら、2002, J. Biol. Chem. 277(7):5082-9)。FcγRIIAとFcγRIIBの共凝集は、FcγRIIBのITIMモチーフ上のチロシン残基の迅速なリン酸化をもたらし、これはSHIPのリン酸化の増強、SHIPとShcとの結合、および120kDaおよび60〜65kDaの分子量を有するタンパク質のリン酸化を引き起こす。さらに、FcγRIIAとFcγRIIBの共凝集は、Aktのリン酸化の下方制御をもたらす。Aktは、セリン・トレオニンキナーゼであり、細胞制御に関与し、またアポトーシスを抑制する働きをもつ。
【0136】
抗FcγRIIBダイアボディは、ヒト単球/マクロファージにおいてFcγRを介した食作用の阻害についてアッセイすることができる。例えば、ヒト単球系細胞株THP-1由来の細胞を、FcγRIIに対するマウスモノクローナル抗体IV.3のFabフラグメントおよびヤギ抗マウス抗体(FcγRIIAのみを共凝集させる)で刺激するか、完全なIV.3マウスモノクローナル抗体およびヤギ抗マウス抗体(FcγRIIAとFcγRIIBを共凝集させる)で刺激することができる。この系では、下流のシグナル伝達分子の調節、例えばFcγRIIBのチロシンリン酸化、SHIPのリン酸化、SHIPとShcの結合、Aktのリン酸化、および120kDaおよび60〜65kDaの分子量を有するタンパク質のリン酸化等を、刺激した細胞に本発明の分子を加えることでアッセイすることができる。さらに、単球系細胞株のFcγRIIB依存性食作用効率を、本発明の抗体の存在下および非存在下で直接、測定することができる。
【0137】
本発明の抗体によるヒト単球/マクロファージにおけるFcγR介在食作用の阻害を測定するための他の典型的なアッセイは、以下を含み得る。すなわち、THP-1細胞を、IV.3マウス抗FcγRII抗体のFabおよびヤギ抗マウス抗体で刺激する(FcγRIIAのみを凝集させ、FcγRIIA介在シグナル伝達を誘導する)か、マウス抗FcγRII抗体およびヤギ抗マウス抗体で刺激する(FcγRIIAとFcγRIIBを共凝集させ、FcγRIIA介在シグナル伝達を阻害する)ことを含む。マウス抗FcγRII抗体およびヤギ抗マウス抗体で刺激した細胞を、さらに本発明の分子とプレインキュベートすることができる。本発明の分子とプレインキュベートした刺激済み細胞および本発明の分子とプレインキュベートしなかった細胞のFcγRIIA依存性活性を測定すること、並びにこれらの細胞におけるFcγRIIA依存性活性のレベルを比較することで本発明の抗体によるFcγRIIA依存性活性の調節を示すことができる。
【0138】
記載された典型的なアッセイを使用して、例えば、以下のような結合ドメインを同定することができる。すなわち、FcγRIIB受容体のリガンド結合をブロックし、かつFcγRIIBとFcγRIIAの共凝集を妨げることによってFcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアンタゴナイズする結合ドメインである。同様に、このアッセイで、FcγRIIBとFcγRIIAの共凝集を増強し、かつFcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害にアゴナイズする結合ドメインを同定することができる。
【0139】
対象となるFcγRIIB結合ドメインは、以前に報告された方法(Tridandapaniら、2000, J. Biol. Chem. 275: 20480-7)により、フルオレセイン化IgGオプソニン化ヒツジ赤血球(SRBC)を貪食するTHP-1細胞の能力を測定することでアッセイできる。例えば、食作用を測定するための典型的なアッセイは、THP-1細胞を本発明の抗体でまたはFcγRIIに結合しない対照抗体で処理するステップ、前記細胞の活性レベルを比較するステップから構成される。その際、細胞の活性(例えば、ロゼット形成活性(IgG被覆SRBCと結合するTHP-1細胞の数)、付着活性(THP-1細胞に結合したSRBCの総数)、および食作用率)の差異が、本発明の抗体によるFcγRIIA依存性活性の調節を示すことができる。このアッセイを用いて、例えば、FcγRIIB受容体のリガンド結合をブロックし、かつ食作用のFcγRIIB介在阻害にアンタゴナイズする抗体を同定することができる。このアッセイは、FcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在阻害を増強する抗体を同定することもできる。
【0140】
好ましい実施形態で、結合ドメインは、ヒト単球/マクロファージにおけるFcγRIIB依存性活性を、以下の少なくとも1以上の方法で調節する。すなわち、下流シグナル伝達分子の調節(例えば、FcγRIIBのリン酸化状態の調節、SHIPリン酸化の調節、SHIPとShcの結合の調節、Aktのリン酸化の調節、約120kDaおよび60〜65kDaの更なるタンパク質のリン酸化の調節)および食作用の調節である。
【0141】
5.1.2 CD16A結合ドメイン
以下のセクションでは、CD16A結合タンパク質について論ずる。このタンパク質は、共有結合型ダイアボディの作製のための軽鎖および重鎖の可変領域のソースとして使用することができる。本発明では、CD16A結合タンパク質は、抗CD16A抗体のVLおよびVHドメインからなる分子を含む。このVLおよびVHドメインを、本発明のダイアボディの作製に使用する。
【0142】
様々なCD16A結合タンパク質を、本発明に関連して用いることができる。適当なCD16A結合タンパク質は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体、並びにCD16A結合抗体フラグメント(例えば、scFvまたは1本鎖抗体、Fabフラグメント、ミニボディ)、および軽鎖可変領域ドメイン、重鎖可変領域ドメイン、またはその両方との相互作用を介してCD16Aに結合する他の抗体様タンパク質を含む。
【0143】
いくつかの実施形態で、本発明に従って使用するためのCD16A結合タンパク質は、非ヒト抗CD16A抗体(例えばマウス抗CD16A抗体)に由来する配列をもつ1以上のCDRと、1以上のヒト免疫グロブリンのフレームワーク配列に由来する1以上のフレームワーク領域とを有する、VLおよび/またはVHドメインを含む。CDRおよび他の配列を得ることのできる多数の非ヒト抗CD16Aモノクローナル抗体が知られている(例えば、TammとSchmidt, 1996, J. Imm. 157:1576-81;Fleitら、1989,p.159;LEUKOCYTE TYPING II: HUMAN MYELOID AND HEMATOPOIETIC CELLS, Reinherzら編、New York: Springer-Verlag,1986;LEUCOCYTE TYPING III: WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS, McMichael A J,編、Oxford: Oxford University Press,1986;LEUKOCYTE TYPING IV: WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS, Kapp ら編、Oxford Univ. Press, Oxford;LEUKOCYTE TYPING V: WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS, Schlossman ら編、Oxford Univ. Press, Oxford;LEUKOCYTE TYPING VI: WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS, Kishimoto編、Taylor & Francisを参照されたい)。さらに、実施例で説明するように、細胞上に提示されるヒトCD16Aを認識する新たなCD16A結合タンパク質は、モノクローナル抗体または関連する結合タンパク質の作製および選択のための周知の方法(例えば、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイ法等)を用いて得ることができる。例えば、O'Connelらの2002, J. Mol. Biol. 321:49-56;HoogenboomとChamesの2000, Imm. Today 21:371078;Krebsらの2001, J. Imm. Methods 254:67-84;および本明細書で引用した他の文献を参照されたい。ヒト以外の種由来のモノクローナル抗体を、当該分野において知られている抗体のヒト化技術を用いてキメラ化またはヒト化することができる。
【0144】
あるいはまた、CD16Aに対する完全なヒト抗体は、ヒト免疫系の成分を有するトランスジェニック動物を用いて(例えば、米国特許第5,569,825号および第5,545,806号)、ヒト末梢血細胞を用いて(Casaliら、1986, Science 234:476)、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをHuseら、1989, Science 246:1275で概説された通常のプロトコルに従ってスクリーニングすることにより、および他の方法により作製することができる。
【0145】
結合ドナーは、例えば、米国特許出願第2004/0010124号(参照としてその全てを本明細書に組み入れる)に開示されているような、3G8抗体またはそのヒト化型由来であることが実施形態として好ましい。いくつかの目的には、3G8が結合するエピトープと同一のエピトープで、または3G8による結合をブロックするために当該エピトープに少なくとも十分に近接するエピトープで、CD16A受容体に結合するCD16A結合タンパク質を使用することが有利であると考えられる。所望の結合特性をもつ結合タンパク質を同定するためのエピトープマッピング法および競合的結合実験は、実験免疫学の当業者には周知である。例えば、上記で引用したHarlowとLaneの論文;Stahlらの1983, Methods in Enzymology 9:242-53;Kirklandらの1986, J. Immunol. 137:3614-19;Morelらの1988, Molec. Immunol. 25:7-15;Cheungらの1990, Virology 176:546-52;およびMoldenhauerらの1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82を参照されたい。例えば、2つの抗体が同一部位に結合するかどうかは、一方の抗体を用いてELISAプレート上で抗原を捕捉し、その後捕捉された抗原に結合する第2の抗体の能力を測定することによって、確認することが可能である。また、エピトープの比較は、第1の抗体を直接的にもしくは間接的に酵素、放射性核種または蛍光団で標識し、細胞上の、溶液中のまたは固相上の抗原への第1の抗体の結合を阻害する未標識の第2の抗体の能力を測定することによって達成することもできる。
【0146】
CD16A受容体とELISAプレート上に形成された免疫複合体との結合をブロックする抗体の能力を測定することも可能である。前記免疫複合体は、まずフルオレセイン等の抗原でプレートを被覆し、次に特異的な抗フルオレセイン抗体をプレートにアプライすることによって形成される。この免疫複合体は、その後、sFcRIIIaのような可溶性Fc受容体のリガンドとして働く。あるいはまた、可溶性の免疫複合体を形成させて、酵素、放射性核種または蛍光団で直接的にもしくは間接的に標識してもよい。その後、これらの標識された免疫複合体と、細胞上の、溶液中のまたは固相上のFc受容体との結合を阻害する抗体の能力を測定することができる。
【0147】
本発明のCD16A結合タンパク質は、ヒト免疫グロブリンFc領域を含んでいてもよいし、含まなくともよい。Fc領域は、例えば、scFv結合タンパク質中には存在しない。Fc領域は、例えば、ヒトもしくはヒト化四量体モノクローナルIgG抗体には存在する。上記のように、本発明のいくつかの実施形態では、CD16A結合タンパク質は、エフェクター機能が改変されているFc領域を含む。改変されたエフェクター機能として、例えば、未改変Fc領域(例えば天然のIgG1タンパク質のFc等)と比較した場合のFc受容体または補体のC1成分のようなエフェクターリガンドに対する親和性の低下が挙げられる。一の実施形態で、Fc領域は、297位に相当するFc領域のアミノ酸がグリコシル化されていない。このような抗体はFcエフェクター機能を欠いている。
【0148】
したがって、CD16A結合タンパク質は、結合タンパク質中にFcドメインを欠くことから、Fc受容体または補体のC1成分のようなエフェクターリガンドへのFc介在結合を示さないことがあるが、他のケースでは、結合やエフェクター機能の欠如は抗体の定常領域の変化に起因している。
【0149】
5.1.2.1 mAb 3G8 CDR配列に類似するCDR配列を含むCD16A結合タンパク質
本発明の実施に際して使用することができるCD16A結合タンパク質は、マウスモノクローナル抗体3G8のCDRに由来する(すなわち同一もしくは類似の配列を有している)CDR配列を含むタンパク質を包含する。マウス3G8モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする相補的cDNA(CDRをコードする配列を含む)を、記載したようにクローン化して配列決定した。3G8の核酸配列およびタンパク質配列を以下に示す。マウス可変領域およびCDR配列を用いて、3G8のCDRに由来する相補性決定領域を含む数多くのキメラおよびヒト化モノクローナル抗体を作製し、それらの特性を解析した。CD16Aに高親和性で結合し、さらに他の所望の性質を有するヒト化抗体を同定するために、3G8由来のCDRを有するVH領域を含む抗体重鎖を作製し、3G8由来のCDRを有するVL領域を含む抗体軽鎖と(共発現により)結合させて、解析用の四量体抗体を作製した。得られた四量体抗体の性質を以下に記載のように測定した。以下で説明するように、3G8のCDRを含むCD16A結合タンパク質、例えば、本明細書に記載したヒト化抗体タンパク質を本発明に従って使用することができる。
【0150】
5.1.2.1.1 VH領域
一態様において、本発明のCD16A結合タンパク質は、少なくとも1つのCDR(通常は3つのCDR)がマウスモノクローナル抗体3G8重鎖の1つのCDR(一般的には3つ全てのCDR)の配列を有し、該結合タンパク質の残りの部分が実質的にヒトの配列を有する(ヒト抗体の重鎖可変領域に由来し、実質的にそれに類似する)、重鎖可変ドメインを含むことができる。
【0151】
一態様において、本発明は、実質的にヒトのフレームワーク中に3G8抗体由来のCDRを含むヒト化3G8抗体または抗体フラグメントであって、重鎖可変ドメインの少なくとも1つのCDRが対応するマウス抗体3G8重鎖CDRと配列の点で異なる、上記抗体を提供する。例えば、一の実施形態で、CDRは、当該分野で公知のまたは表3および表4A〜Hで開示したような、CD16Aへの3G8の結合に影響することが当該分野で知られている1以上のCDR置換を少なくとも有することで、3G8のCDR配列とは異なる。適当なCD16結合タンパク質は、これらの置換を0、1つ、2つ、3つまたは4つ、あるいはそれ以上含み(多くの場合、1〜4つの置換を有する)、任意で、追加の置換をも有することができる。
【表3】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【表4D】
【表4E】
【表4F】
【表4G】
【表4H】
【0152】
一の実施形態で、CD16A結合タンパク質は、Hu3G8VH-1構築物(配列番号70に示す)のVHドメインと同一のまたは類似する重鎖可変ドメインの配列を含むことができる。例えば、本発明は、(1)表1に記載した、0、1またはそれ以上のCDR置換によりHu3G8VH-1(配列番号70)のVHドメインとは異なり、(2)表1に記載した、0、1またはそれ以上のフレームワーク置換によりHu3G8VH-1のVHドメインとは異なり、(3)残りの位置でHu3G8VH-1のVH配列と少なくとも約80%同一である、多くの場合少なくとも約90%、時には少なくとも約95%同一である、または少なくとも約98%も同一である、配列を有するVHドメインを含むCD16A結合タンパク質を提供する。
【0153】
本発明のCD16A結合タンパク質の典型的なVHドメインは、3G8VH、Hu3G8VH-5およびHu3G8VH-22の配列(それぞれ、配列番号81、配列番号71および配列番号72)を有する。3G8VHおよびHu3G8VH-5の配列(それぞれ、配列番号81および配列番号71)をコードする典型的なヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号82および配列番号83に示す。
【0154】
VHドメインは、表3で示した置換の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つによってHu3G8VH-1(配列番号70)の配列と異なる配列を有することができる。これらの置換は、CD16Aに対する親和性の増加をもたらし、および/またはヒトに投与した場合にCD16A結合タンパク質の免疫原性を減じると考えられている。いくつかの実施形態で、残りの位置のHu3G8VH-1のVHドメインとの配列同一性の程度は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%である。
【0155】
限定ではなく例示として、多数のCD16A結合タンパク質のVHドメインの配列を表4に示す。ヒトCγ1定常領域と融合させた、これらの配列を含む重鎖を、hu3G8VL-1軽鎖(以下に記載)と共に共発現させて、四量体の抗体を形成させた。また、CD16Aに対する該抗体の結合性を測定して、アミノ酸置換の効果をhu3G8VH-1のVHドメインと比較して評価した。VHドメインがhu3G8VH-1、2、3、4、5、8、12、14、16、17、18、19、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、42、43、44および45の配列を有する構築物は高親和結合性を示し、hu3G8VH-6および-40のVHドメインは中間の結合性を示した。hu3G8VH-5およびhu3G8VH-22(それぞれ、配列番号71および配列番号72)のVHドメインを含むCD16A結合タンパク質は、特に好ましい結合性質を有すると考えられる。
【0156】
5.1.2.2 VL領域
好ましい結合特性を有する軽鎖可変ドメイン配列を同定するために同様の研究を行った。一の態様において、本発明は、以下のような軽鎖可変ドメインを含むCD16A結合タンパク質を提供する。このドメインでは、少なくとも1つのCDR(通常は3つのCDR)が、マウスモノクローナル抗体3G8軽鎖の1つのCDR(通常は3つ全てのCDR)の配列を有し、該結合タンパク質の残りの部分は実質的にヒトの配列を有する(ヒト抗体の軽鎖可変領域に由来し、実質的にそれに類似する)。
【0157】
一の態様において、本発明は、実質的にヒトのフレームワーク中に3G8抗体由来のCDRを含むヒト化3G8抗体のフラグメントであって、軽鎖可変ドメインの少なくとも1つのCDRがマウスモノクローナル抗体3G8の軽鎖CDRと配列において異なる、上記抗体フラグメントを提供する。一の実施形態で、CDRは1以上のアミノ酸置換、例えば表2で示した1以上の置換(例えば、CDR1の24位のアルギニン;CDR1の25位のセリン;CDR1の32位のチロシン;CDR1の33位のロイシン;CDR2の50位のアスパラギン酸、トリプトファンもしくはセリン;CDR2の53位のセリン; CDR2の55位のアラニンもしくはグルタミン;CDR2の56位のスレオニン;CDR3の93位におけるセリン;および/またはCDR3の94位のスレオニン)をCDR中に少なくとも有することで、3G8配列とは異なっている。様々な実施形態で、可変ドメインは、このような置換を0、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上有し(多くの場合、1〜4つの前記置換)、任意で更なる置換をも有することができる。
【0158】
実施形態の一つにおいて、適当なCD16A結合タンパク質は、Hu3G8VL-1(配列番号73)構築物のVLドメインと同一のまたは類似する軽鎖可変ドメイン配列を含むことができる。この配列を表6に示す。例えば、本発明は、(1)表5に記載した、0、1またはそれ以上のCDR置換によりHu3G8VL-1(配列番号73)のVLドメインとは異なり、(2)表5に記載した、0、1またはそれ以上のフレームワーク置換によりHu3G8VL-1のVLドメインとは異なり、(3)残りの位置でHu3G8VL-1のVL配列(配列番号73)と少なくとも約80%同一である、多くの場合少なくとも約90%、時には少なくとも約95%同一である、または少なくとも約98%も同一である、配列を有するVLドメインを含むCD16A結合タンパク質を提供する。
【表5】
【表6A】
【表6B】
【表6C】
【表6D】
【表6E】
【表6F】
【表6G】
【表6H】
【0159】
本発明のCD16結合タンパク質の典型的なVLドメインは、表5および6で示すように、3G8VL、Hu3G8VL-1またはHu3G8VL-43の配列(それぞれ、配列番号84、配列番号73および配列番号74)を有する。3G8VL(配列番号84)およびHu3G8VL-1(配列番号73)をコードする典型的なヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号85および配列番号86に示す。
【0160】
VLドメインは、表2で示した置換の0、1、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたは少なくとも9つによってHu3G8VL-1の配列(配列番号73)とは異なる配列をもつことができる。これらの置換は、CD16Aに対する親和性の増加をもたらし、および/またはヒトに投与した場合にCD16A結合タンパク質の免疫原性を減じると考えられる。いくつかの実施形態で、残りの位置の配列同一性の程度は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%である。
【0161】
限定ではなく例示として、多数のCD16A結合タンパク質のVLドメイン配列を表6に示す。ヒトCκ定常ドメインと融合させたこれらの配列を含む軽鎖を、Hu3G8VH重鎖(上記)と共発現させ、四量体の抗体を形成させた。また、CD16Aに対する該抗体の結合性を測定して、アミノ酸置換の効果をHu3G8VL-1のVLドメイン(配列番号73)と比較して評価した。VLドメインがhu3G8VL-1、2、3、4、5、10、16、18、19、21、22、24、27、28、32、33、34、35、36、37、および42の配列を有する構築物は高親和結合性を示した。また、hu3G8VL-15、17、20、23、25、26、29、30、31、38、39、40および41は中間の結合性を示した。hu3G8VL-1、hu3G8VL-22およびhu3G8VL-43(それぞれ、配列番号73、配列番号75および配列番号74)のVLドメインを含むCD16A結合タンパク質は、特に好ましい結合性質を有すると考えられている。
【0162】
5.1.2.2.1 VLおよび/またはVHドメインの組合せ
当該分野では公知であり、また本明細書の他の箇所でも記載したように、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それらの鎖が結合してダイアボディを産生する条件下で、組換え技術によって発現させることができ、またin vitroでそのように組み合わせることができる。したがって、本明細書で記載した3G8由来のVLドメインを本明細書に記載した3G8由来のVHドメインと組み合わせて、CD16A結合性ダイアボディを作製することができ、そのような組合せの全てが意図されていることがわかるであろう。
【0163】
限定ではなく例示として、有用なCD16Aダイアボディの例は、少なくとも1つのVHドメインと少なくとも1つのVLドメインを含むダイアボディであり、そのVHドメインがhu3G8VH-1、hu3G8VH-22またはhu3G8VH-5(それぞれ、配列番号70、配列番号72および配列番号71)に由来し、またVLドメインがhu3G8VL-1、hu3G8VL-22またはhu3G8VL-43(それぞれ、配列番号73、配列番号75および配列番号43)に由来する。特に、hu3G8VH-22(配列番号22)とhu3G8VL-1、hu3G8VL-22またはhu3G8VL-43(それぞれ、配列番号73、配列番号72および配列番号73)、またはhu3G8VH-5(配列番号71)とhu3G8VL-1(配列番号73)を含むヒト化抗体は、好ましい性質を有する。
【0164】
本明細書に記載したVLおよびVHドメインの配列を、当該分野で公知の方法、例えば親和性成熟等(Schierら、1996, J. Mol. Biol. 263:551-67;Daughertyら、1998, Protein Eng. 11:825-32;Boderら、1997, Nat. Biotechnol. 15:553-57; Boderら、2000, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 97:10701-705;HudsonとSouriau, 2003, Nature Medicine 9:129-39を参照されたい)によって、さらに改変することができることは、当業者であれば十分理解できるであろう。例えば、CD16A結合タンパク質を、親和性成熟技術を用いて改変し、CD16Aに対する親和性の増加したおよび/またはCD16Bに対する親和性の低下したタンパク質を同定することができる。
【0165】
典型的なCD16結合タンパク質の一つは、マウス3G8抗体である。ヒト化3G8のVHおよびVLドメインを含むアミノ酸配列を図2、9、14に記載し、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73および配列番号74で示す。
【0166】
5.2 Fc領域またはその一部を含むダイアボディ
本発明は、Fcドメインまたはその一部(例えば、CH2もしくはCH3ドメイン)を含むダイアボディ分子を包含する。いくつかの実施形態で、Fcドメインまたはその一部は、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域(例えばCH2もしくはCH3)の1以上の定常ドメインを含む。他の実施形態で、本発明は、Fcドメインまたはその一部を含む分子を包含し、ここで、前記Fcドメインまたはその一部は、匹敵する野生型Fcドメインまたはその一部に対して少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、置換)を含んでいる。変異型Fcドメインは当該分野ではよく知られており、前記変異型Fcドメインを含む抗体の表現型(当該分野で周知の結合活性解析法またはエフェクター機能解析法のいずれか、例えばELISA、SPR解析もしくはADCC等でアッセイされる)を変えるのに主として用いられる。このような変異型Fcドメインまたはその一部は、Fcドメイン(またはその一部)を含む本発明のダイアボディ分子によって示されるエフェクター機能(例えばNK依存的もしくはマクロファージ依存的アッセイ等で機能的にアッセイされる)を付与するまたは改変することにより、本発明において使用される。エフェクター機能を改変すると同定されたFcドメイン変異体は、国際公開WO 04/063351号、米国特許出願公開第2005/0037000号および同第2005/0064514号、2004年11月10日に出願された米国仮出願第60/626,510号、2004年12月15日に出願された同第60/636,663号および2006年3月10日に出願された同第60/781,564号、並びに本発明者の同時出願である2005年11月10日に出願された米国特許出願第11/271,140号および2005年12月15日に出願された同第11/305,787号中に開示されている。これらはいずれも参照としてその全てを本明細書中に組み入れる。
【0167】
他の実施形態で、本発明は、当該分野で知られるあらゆるFc変異体の使用も包含する。例えば、Duncanら、1988, Nature 332:563-564;Lundら、1991, J. Immunol 147:2657-2662;Lundら、1992, Mol Immunol 29:53-59;Alegreら、1994, Transplantation 57:1537-1543;Hutchinsら、1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984;Jefferisら、1995, Immunol Lett. 44:111-117;Lundら、1995, Faseb J 9:115-119;Jefferisら、1996, Immunol Lett 54:101-104;Lundら、1996, J Immunol 157:49634969;Armourら、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624;Idusogieら、2000, J Immunol 164:41784184;Reddyら、2000, J Immunol 164:1925-1933;Xuら、2000, Cell Immunol 200:16-26;Idusogieら、2001, J Immunol 166:2571-2575;Shieldsら、2001, J Biol Chem 276:6591-6604;Jefferisら、2002, Immunol Lett 82:57-65;Prestaら、2002, Biochem Soc Trans 30:487-490;米国特許第5,624,821号;米国特許第5,885,573号;米国特許第6,194,551号;国際公開WO 00/42072号;国際公開WO 99/58572号(いずれも参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)で開示されたFc変異体等が挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態で、Fc領域のアミノ酸に対する前記1以上の改変は、Fc領域の、したがって本発明のダイアボディ分子の、1以上のFcγR受容体に対する親和性および結合力を減じる。特定の実施形態で、本発明は、変異型Fc領域もしくはその一部を含むダイアボディを包含し、ここで、前記変異型Fc領域は、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、変異型Fcドメインのみが1つのFcγRと結合し、該FcγRがFcγRIIIAである。他の特定の実施形態で、本発明は、変異型Fc領域もしくはその一部を含むダイアボディを包含し、ここで、前記変異型Fc領域は、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、変異型Fc領域のみが1つのFcγRと結合し、該FcγRがFcγRIIAである。他の特定の実施形態で、本発明は、変異型Fc領域もしくはその一部を含むダイアボディを包含し、ここで、前記変異型Fc領域は、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、変異型Fc領域のみが1つのFcγRと結合し、該FcγRがFcγRIIBである。いくつかの実施形態で、本発明は、変異型Fcドメインを含む分子を包含し、ここで、前記変異体は、当業者に公知であり、また本明細書に記載された方法を用いて測定したときに、Fcドメインを含まない分子もしくは野生型Fcドメインを含む分子と比較して、ADCC活性の増加および/またはFcγRIIA(CD32A)に対する結合増加を付与するか、または仲介する。別の実施形態で、本発明は変異型Fcドメインを含む分子を包含し、ここで、前記変異体は、当業者に公知で、かつ本明細書に記載された方法を用いて測定したときに、Fcドメインを含まないもしくは野生型Fcドメインを含む分子と比較して、ADCC活性(もしくは他のエフェクター機能)の低下および/またはFcγRIIB (CD32B)への結合増大を付与するか、または仲介する。
【0169】
本発明はまた、2以上のIgGアイソタイプに由来するドメインまたは領域を含むFcドメインの使用を包含する。当該分野で知られているように、Fc領域のアミノ酸改変は、Fcを介するエフェクター機能および/または結合活性に大きな影響を及ぼし得る。しかし、機能特性のこうした改変は、選択したIgGアイソタイプという背景で行う場合、さらに洗練され、かつ/または操作され得る。同様に、Fcアイソタイプの天然の特性は、1以上のアミノ酸改変により操作することができる。複数のIgGアイソタイプ(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)は、ヒンジおよび/またはFcドメインのアミノ酸配列の違いゆえに、異なった物理学的および機能的性質、例えば血中半減期、補体結合、FcγR結合親和性、およびエフェクター機能活性(例えばADCC、CDC)を示す。いくつかの実施形態で、所望の特徴をもつダイアボディを設計するために、アミノ酸改変およびIgG Fc領域は、それらのそれぞれの個別の結合性および/またはエフェクター機能活性に基づいて、独立に選択される。たいていの実施形態では、前記アミノ酸改変およびIgGヒンジ/Fc領域は、IgG1という状況において本明細書に記載されまたは当該分野で公知であるような結合性および/またはエフェクター機能活性に関して別々にアッセイされている。いくつかの実施形態で、前記アミノ酸改変およびIgGヒンジ/Fc領域は、ダイアボディ分子または他のFc含有分子(例えば免疫グロブリン)という状況においてFcγR結合性またはエフェクター機能について別々にアッセイしたとき、類似の機能性、例えばFcγRIIAに対する親和性の増加等を示す。前記アミノ酸改変と選択したIgG Fc領域の組み合わせは、その後、相加的にまたはより好ましくは相乗的に作用して、野生型Fc領域を含む本発明のダイアボディ分子と比較して、本発明のダイアボディ分子の前記機能性を改変する。他の実施形態において、前記アミノ酸改変およびIgGのFc領域は、本明細書に記載したまたは当該分野で公知の野生型Fc領域を含むダイアボディ分子もしくは他のFc含有分子(例えば、免疫グロブリン)という状況においてFcγR結合性および/またはエフェクター機能について別個にアッセイしたとき、相反する機能性、例えばFcγRIIAに対する親和性のそれぞれ増加および低下を示す。前記「相反する」アミノ酸改変および選択したIgG領域の組合せは、Fc領域を含まないまたは同一アイソタイプの野生型Fc領域を含む本発明のダイアボディと比較すると、本発明のダイアボディの特異的機能性を選択的に弱めるまたは減少させるように作用する。あるいはまた、本発明は、新規の性質を示す、当該分野で公知のアミノ酸改変と選択したIgG領域との組合せを含む変異型Fc領域を包含する。かかる性質は、前記改変および/または領域を本明細書で記載したように独立にアッセイした場合には検出不能である。
【0170】
複数のIgGアイソタイプ、およびそのドメインの機能特性は、当該分野では周知である。IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のアミノ酸配列を、図1A〜1Bに示す。本発明の方法に用いる特定のIgGアイソタイプに由来する2以上のドメインの選択および/または組合せは、FcγRに対する親和性を含めて、親アイソタイプのいずれかの既知パラメータを基にすることができる(表7;FleschとNeppert、1999, J. Clin. Lab. Anal. 14:141-156;Chappelら、1993, J. Biol. Chem. 33:25124-25131;Chappelら、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9036-9040;いずれも参照としてその全てを本明細書中に援用する)。例を挙げると、FcγRIIBへの限定された結合を示すか、またはFcγRIIBへの結合を示さないIgGアイソタイプ(例えばIgG2またはIgG4)に由来する領域もしくはドメインの使用は、活性化受容体への結合を最大にし、抑制性受容体への結合を最小にするようにダイアボディを操作することが望れる場合に、特に有用である。同様に、C1qまたはFcγRIIIAと優先的に結合することが知られる、例えばIgG3(Brueggemannら、1987, J. Exp. Med 166:1351-1361)等のIgGアイソタイプに由来するFc領域もしくはドメインの使用は、ADCCを増強することが当該分野で知られるFcアミノ酸改変と組み合わせて、エフェクター機能活性(例えば、補体活性化またはADCC)が最大となるようにダイアボディ分子を操作することができる。
【表7】
【0171】
5.3 分子結合体
本発明のダイアボディ分子を、異種ポリペプチド(すなわち、関連性のないポリペプチド、またはその一部、好ましくはそのポリペプチドの少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸、少なくとも90アミノ酸もしくは少なくとも100アミノ酸)と、組換えによって融合させて、または化学的に結合(共有結合、非共有結合の両方を含む)させて、融合タンパク質を作製することができる。融合は、必ずしも直接的である必要はないが、リンカー配列を介して起こり得る。
【0172】
さらに、本発明のダイアボディ分子(すなわち、ポリペプチド)は、治療薬または所与の生物学的応答を改変する薬剤成分と結合することができる。直接的な結合に代わるものとして、本発明の多価(例えば四価)のダイアボディ分子上の複数のエピトープ結合部位により、ダイアボディの少なくとも1つの結合領域は、ダイアボディの結合に影響することなく、治療薬または所望の薬剤成分と結合するようにデザインすることができる。
【0173】
治療薬または薬剤成分は、古典的な化学治療薬であるとは限らない。例えば、薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質としては以下が含まれる:アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素(すなわち、PE-40)またはジフテリア毒素等の毒素、リシン、ゲロニンおよびポークウィード(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、αインターフェロン(IFN-α)およびβインターフェロン(IFN-β)を含むがこれらに限定はしないインターフェロン、神経成長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、アポトーシス剤(例えば、TNF-α、TNF-β、国際公開WO 97/33899号に記載のAIM I)、AIM II(国際公開WO 97/34911号参照)、Fasリガンド(Takahashiら、J. Immunol., 6:1567-1574, 1994)、およびVEGI(国際公開WO 99/23105号)等のタンパク質、血栓剤もしくは血管新生阻害剤(例えば、アンジオスタチンもしくはエンドスタチン)、または例えばリンホカイン(例えば、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF))、または成長因子(例えば、成長ホルモン(GH))のような生物学的応答改変物質、プロテアーゼ、あるいはリボヌクレアーゼ。
【0174】
本発明のダイアボディ分子(すなわち、ポリペプチド)を、例えば精製を容易にするペプチド等のマーカー配列と融合させることができる。好ましい実施形態において、マーカーアミノ酸配列はヘキサヒスチジンペプチドであり、例えば、市販品の数ある中でも特にpQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)中にて提供されるタグが挙げられる。Gentzらが1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:821-824で記載しているように、例えば、ヘキサヒスチジンは融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質のエピトープに相当するヘマグルチニン「HA」タグ(Wilson ら、Cell, 37:767 1984)、および「Flag」タグ(Knappikら、Biotechniques, 17(4):754-761, 1994)が含まれるが、これらに限られない。
【0175】
更なる融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリングおよび/またはコドンシャッフリング(正確には「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技術を介して作製することができる。DNAシャッフリングを使用して、本発明の分子の活性(例えば、より高い親和性とより低い解離速度を持ったエピトープ結合部位)を変えることができる。一般には、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号;および第5,837,458号、並びにPattenら、1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16:76;Hanssonら、1999, J. Mol. Biol. 287:265;LorenzoとBlasco, 1998, BioTechniques 24:308(いずれも参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)を参照されたい。本発明のダイアボディ分子、または本発明の分子をコードする核酸は、さらにエラープローン(error-prone)PCR法、ランダムヌクレオチド挿入法または他の方法を用いたランダム変異誘発により、組換え前に改変することができる。本発明の分子をコードするポリヌクレオチドの1以上の部分を、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片等と組み換えることができる。
【0176】
また、本発明は、診断薬もしくは治療薬、または他のいずれかの分子(血中半減期の増加/減少が望まれる分子および/または細胞の特定の小集団を標的とする分子)と結合した、またはそれらを免疫特異的に認識する本発明のダイアボディ分子も包含する。本発明の分子を診断に使用して、例えば、疾患、障害、または感染の発生もしくは進行を臨床試験の一環としてモニターして、例えば所与の治療計画の効果を測定することができる。本発明の分子を検出可能な物質と結合させることにより、または検出可能な物質を免疫特異的に認識する分子により、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、各種酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。検出可能な物質は、本発明の分子と直接的に、もしくは媒介物質(例えば、当該分野で公知のリンカー)を介して間接的に、当該分野で公知の方法を用いて連結または結合することができる。あるいは、当該分子が検出可能な物質を免疫特異的に認識する(すなわち、前記物質と免疫特異的に結合する)ことができる。例えば、本発明の診断薬として用いるための抗体と結合させることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。前記診断および検出は、検出可能な物質を免疫特異的に認識するように該分子をデザインするか、または本発明の分子を検出可能な物質と連結することにより、達成することができる。ここで検出可能な物質は、限定はしないが、各種酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ(ただし、これらに限定はしない);ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン等の補欠分子族複合体(ただし、これらに限定はしない);ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン フルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリン等の蛍光物質(ただし、これらに限定しない)、ルミノール等の発光物質(ただし、これに限定しない)、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリン等の生物発光物質(ただし、これらに限定しない)、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、亜リン酸(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム (99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン (133Xe)、イッテルビウム (169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn)等の放射性物質(ただし、これらに限定しない)、様々な陽電子放射断層撮影で用いられる陽電子放出金属、並びに非放射性常磁性金属イオンを含む。
【0177】
本発明のダイアボディ分子は、細胞毒素(例えば、細胞増殖抑制剤もしくは殺細胞剤)、治療剤、または放射性元素(例えば、α放射体、γ放射体等)のような治療成分を免疫特異的に認識するか、またはそれと結合することができる。細胞毒素または細胞毒性剤は細胞に有害などんな薬剤をも包含する。例として、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアンスラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-ジハイドロテストステロン、糖コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびプロマイシンまたはそれらの類似体または同族体を含む。治療剤は、限定はしないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス ジクロロジアミン白金(II) (DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン類(例えば、ダウノルビシン(かつてのダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗体(例えば、ダクチノマイシン(かつてのアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアンスラマイシン(AMC)、並びに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含む。
【0178】
さらに、本発明のダイアボディ分子は、治療成分、例えば放射性物質または放射性金属イオンと結合させるのに有用な大環状キレート剤と結合させるか、またはそれを免疫特異的に認識するようにデザインすることができる(放射性物質の上記例を参照されたい)。いくつかの実施形態で、大環状キレート剤は、リンカー分子を介してポリペプチドに結合することのできる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)である。前記リンカー分子は、当該分野で普通に知られており、Denardoら、1998, Clin Cancer Res. 4:2483-90;Petersonら、1999, Bioconjug. Chem. 10:553;およびZimmermanら、1999, Nucl. Med. Biol. 26:943-50にも記載されている。これらはいずれも参照としてその全てを本明細書中に援用する。
【0179】
前記治療成分を、例えばFcドメインを含めて、ポリヌクレオチドと結合させる方法は周知である。例えば、Arnonら“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編)、1985, pp. 243-56, Alan R. Liss, Inc.;Hellstromら“Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinsonら(編)、1987, pp. 623-53, Marcel Dekker, Inc.;Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編)、1985, pp. 475-506;“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編)、1985, pp. 303-16, Academic Press;and Thorpeら、Immunol. Rev., 62:119-58, 1982を参照されたい。
【0180】
本発明のダイアボディ分子は、当該分子と結合した治療成分と共にもしくは治療成分なしで投与してもよいし、単独で投与してもよいし、または治療処置用の細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて投与してもよい。単独で投与する場合、多価の、例えば四価のダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープは、治療薬(例えば、細胞毒性因子および/またはサイトカイン)を免疫特異的に認識するように設計できる。この治療薬は、本発明の分子と同時に、またはそれに続いて投与することができる。このように、ダイアボディ分子は、直接的な結合と類似した方法で治療薬を特異的に標的とすることができる。あるいはまた、本発明の分子を抗体に結合させて、Segalが米国特許第4,676,980号に記載しているように抗体ヘテロ結合体を形成させることができる。この文献は、参照としてその全てを本明細書中に組み入れる。本発明のダイアボディ分子は、固相支持体に結合することもできる。これは、特に標的抗原のイムノアッセイまたは精製に有用である。このような固相支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含むが、これらに限定はされない。
【0181】
5.4 ダイアボディ分子の結合の性状解析
本発明のダイアボディ分子は、各種方法で性状解析することができる。特に、本発明の分子は、例えばFcRIIIAもしくはFcRIIB等の抗原と免疫特異的に結合する能力について、または当該分子がFcドメイン(もしくはその一部)を含む場合には、Fc-FcγR相互作用(すなわち、Fcドメイン(もしくはその一部)のFcγRへの特異的結合)を示す能力について、アッセイすることができる。前記アッセイは、溶液中で(例えば、Houghten, Bio/Techniques, 13:412 421, 1992)、ビーズ上で(Lam, Nature, 354:82 84, 1991)、チップ上で(Fodor, Nature, 364:555 556, 1993)、細菌上で(米国特許第5,223,409号)、胞子上で(米国特許第5,571,698号、第5,403,484号および第5,223,409号)、プラスミド上で(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1865 1869, 1992)、またはファージ上で(ScottとSmith, Science, 249:386 390, 1990;Devlin, Science, 249:404 406, 1990;Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378 6382, 1990;およびFelici, J. Mol. Biol., 222:301 310, 1991)(これらの文献は、参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)実施することができる。抗原に免疫特異的に結合することが同定されている分子、例えばFcγRIIIAは、その後、抗原に対する特異性および親和性についてアッセイすることができる。
【0182】
複数のエピトープ結合ドメインを含むように作製した本発明の分子は、1以上の抗原(例えば、癌抗原)に対する免疫特異的な結合性および他の抗原(FcγR)との交差反応性について、またはその分子がFcドメイン(もしくはその一部)を含む場合にはFc-FcγR相互作用について、当該分野で公知のいずれかの方法によってアッセイすることができる。免疫特異的結合、交差反応性、およびFc-FcγR相互作用を解析するために用いることができるイムノアッセイ法には、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ法、ELISA法(酵素結合免疫吸着解析法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、免疫沈降アッセイ法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、イムノラジオメトリック法、蛍光イムノアッセイ法、プロテインAイムノアッセイ法等と、ほんの数例ではあるが、これらの技術を用いた競合および非競合アッセイ系が含まれる。ただし、これらの技術に限定はしない。前記アッセイ法は、当該分野では日常的に行われており、周知である(例えば、Ausubelら編、1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。これらは参照によりその全てを本明細書中に援用する)。
【0183】
抗原−結合ドメインの相互作用、またはFc-FcγR相互作用の結合親和性および解離速度を競合結合アッセイ法によって測定することができる。競合結合アッセイ法の一例に、ラジオイムノアッセイ法がある。この方法は、標識された抗原、例えば四量体FcγR(例えば、3Hまたは125I、セクション5.4.1を参照)と対象の分子(例えば、複数のエピトープ結合ドメインを含む本発明の分子)とを、四量体FcγR(セクション5.4.1を参照)のような未標識エピトープの量を増加していきながら、インキュベーションし、標識抗原に結合した該分子を検出することを含む。抗原に対する本発明の分子の親和性および結合解離速度は、Scatchard解析法による飽和率から測定することができる。
【0184】
抗原またはFcγRに対する本発明の分子の親和性および結合特性は、初めに抗原-結合ドメインまたはFc-FcγR相互作用について当該分野では公知のin vitroアッセイ法(生化学または免疫学に基づくアッセイ法)を用いて測定することができる。ここで、in vitroアッセイ法は、ELISA法、表面プラズモン共鳴解析法、免疫沈降アッセイ法を含むが、これらに限定はされない。また、本発明の分子の結合特性を、セクション5.4.2に記載したような1以上のFcγR介在エフェクター細胞機能を測定するためのin vitro機能アッセイ法によって特徴付けすることが好ましい。最も好ましい実施形態において、本発明の分子は、in vitroベースのアッセイにおける結合特性と同様の結合特性をin vivoモデル(例えば、本明細書で記載し、かつ開示したもの)でも有する。しかし、本発明は、in vitroベースのアッセイでは所望の表現型を示さないが、in vivoでは所望の表現型を示す本発明の分子を排除するものではない。
【0185】
いくつかの実施形態で、複数のエピトープ結合ドメイン、および任意でFcドメイン(もしくはその一部)を含む分子のスクリーニングおよび同定は、機能に基づくアッセイ法、好ましくは高速処理能力を持つ方法で行われる。機能に基づくアッセイ法は、例えば、本明細書中のセクション5.4.2および5.4.3に記載されているような、1以上のFcγR介在エフェクター細胞機能を特徴付けるための当該分野で公知のいずれかアッセイ法とすることができる。本発明の方法で使用できるエフェクター細胞機能の非限定的な例として、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性食作用、食作用、オプソニン化、オプソニン食作用、細胞結合性、ロゼット形成、C1q結合、および補体依存性細胞を介した細胞毒性を含む。ただし、これらに限らない。
【0186】
BIAcore動態解析を使用して、抗原またはFcγRに対する本発明の分子の結合速度および解離速度を測定する実施形態が好ましい。BIAcore動態解析は、抗原またはFcγRの結合と解離を、固定した分子(例えば、それぞれエピトープ結合ドメインまたはFcドメイン(もしくはその一部)を含む分子)をその表面に担持したチップ上で解析することを含む。BIAcore解析は、セクション5.4.3で説明する。
【0187】
当業者に公知のいずれかの方法を用いた蛍光活性化セルソーティング装置(FACS)を、免疫学または機能に基づくアッセイ法に用いて、本発明の分子を性状解析することが好ましい。フローソーターは、本発明の分子によって結合された(例えばそれによってオプソニン化された)多数の細胞を個別に、かつ迅速に調べることができる(例えば1時間あたり1000万〜1憶個の細胞)(Shapiroら、Practical Flow Cytometry, 1995)。さらに、ダイアボディの挙動を最適化するのに使用される特定のパラメータには、限定はしないが、抗原濃度 (すなわち、FcγR四量体複合体、セクション5.4.1を参照)、動態競合時間、またはFACSストリンジェンシーが含まれる。これらをそれぞれ変化させて、特異的な結合特性(例えば複数のエピトープへの同時結合)を示す本発明の分子を包含するダイアボディ分子を選択することができる。生体細胞を分取して調べるフローサイトメーターは、当該分野では周知である。公知のフローサイトメーターは、例えば、米国特許第4,347,935号;第5,464,581号;第5,483,469号;第5,602,039号;第5,643,796号;および第6,211,477号に記載されている。これらの文献の内容の全ては、参照として本明細書中に組み込まれる。他の公知のフローサイトメーターには、Becton Dickinson and Companyより市販されているFACS VantageTMシステム、およびUnion Biometricaより市販されているCOPASTMシステムがある。
【0188】
標的抗原結合親和性またはFc-FcγR結合親和性の性状解析、および細胞表面上の標的抗原密度またはFcγR密度の評価は、当該分野で周知の方法、例えばScatchard解析法等により、またはメーカー使用説明書に従ったキット、例えばQuantumTM Simply Cellular(Simply Cellularは登録商標)(Bangs Laboratories, Inc., Fishers, IN)の使用により、行うことができる。1以上の機能アッセイは、当業者に公知のまたは本明細書中に記載したような1以上のFcγR介在エフェクター細胞機能を特徴付けるための当該分野で公知のいずれのアッセイでもよい。特定の実施形態で、複数のエピトープ結合ドメイン、および任意でFcドメイン(もしくはその一部)を含む本発明の分子は、1以上の標的抗原または1以上のFcγR(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIA、FcγRIIA)への結合についてELISAアッセイ法でアッセイされ、続いて1以上のADCCアッセイでアッセイされる。いくつかの実施形態で、本発明の分子は、さらに表面プラズモン共鳴に基づいたアッセイ、例えばBIAcoreを用いてアッセイされる。表面プラズモン共鳴に基づいたアッセイは、当該分野では周知であるが、セクション5.4.3でさらに説明し、本明細書中でも例えば実施例6.1において例証される。
【0189】
最も好ましい実施形態で、複数のエピトープ結合ドメイン、および任意でFcドメイン(もしくはその一部)を含む本発明の分子は、さらに標的抗原(例えばFcγR)との相互作用またはFc-FcγR相互作用について動物モデルで特徴付けされる。Fc-FcγR相互作用をアッセイする場合、本発明の方法で使用する上で好ましい動物モデルは、例えば、ヒトFcγRを発現するトランスジェニックマウス、例えば米国特許第5,877,397号および第6,676,927号に記載されているいずれかのマウスモデルである。これらの文献は、参照としてその全てを本明細書中に組み入れる。さらに、前記方法で使用するトランスジェニックマウスは、限定はしないが、ヒトFcγRIIIAを担持しているFcγRIIIAノックアウトヌードマウス;ヒトFcγRIIAを担持しているFcγRIIIAノックアウトヌードマウス;ヒトFcγRIIBおよびヒトFcγRIIIAを担持しているFcγRIIIAノックアウトヌードマウス;ヒトFcγRIIBおよびヒトFcγRIIAを担持しているFcγRIIIAノックアウトヌードマウス;ヒトFcγRIIIAおよびFcγRIIAを担持しているFcγRIIIAおよびFcγRIIAノックアウトヌードマウス、並びにヒトFcγRIIIA、FcγRIIAおよびFcγRIIBを担持しているFcγRIIIA、FcγRIIAおよびFcγRIIBノックアウトヌードマウスを含む。
【0190】
5.4.1 FcγRを含む結合アッセイ
Fcドメイン(もしくはその一部)を含む、および/またはFcγRに特異的なエピトープ結合ドメインを含む分子によるFcγRへの結合の特徴付けは、限定はしないがFcγRの多型変異体を含めて、いずれのFcγRを使用しても行うことができる。いくつかの実施形態では、158位にフェニルアラニンを含むFcγRIIIAの多型変異体が使用される。他の実施形態では、158位にバリンを含むFcγRIIIAの多型変異体を用いて特徴付けが行われる。FcγRIIIA 158Vは、IgG1に対して158Fよりも高い親和性、およびADCC活性の増加を示す(例えば、Koeneら、1997, Blood, 90:1109-14;Wuら、1997, J. Clin. Invest. 100: 1059-70;いずれも参照としてその全てを本明細書中に組み入れる)。この残基は、実際IgG1の下部ヒンジ領域と直接相互作用するが、このことはIgG1-FcγRIIIAの共結晶化研究によって最近明らかにされた(例えば、Sondermanら、2000, Nature, 100: 1059-70を参照されたい。この文献は参照としてその全てが本明細書中に援用される)。研究により、いくつかのケースにおいて、治療用抗体はFcγRIIIA-158Vホモ接合患者で向上した効果を有することが明らかとなった。例えば、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブ(Rituximab)は、FcγRIIIA-158Fホモ接合患者と比べてFcγRIIIA-158Vホモ接合患者で、より治療効果があった(例えば、Cartronら、2002 Blood, 99(3): 754-8を参照されたい)。他の実施形態で、この領域を含む治療用分子はまた、FcγRIIIA-158VおよびFcγRIIIA-158Fに関してヘテロ接合の患者において、並びにFcγRIIIA-131Hをもつ患者でも、効果的であり得る。特定の作用機序に縛られるつもりはないが、別のアロタイプを用いた本発明の分子の選択は、ひとたび治療用ダイアボディに作製されたら、そのようなアロタイプについてホモ接合性の患者に対して臨床的により効果があると思われる変異体を提供することができる。
【0191】
FcγR結合アッセイが、本発明の分子とFcγRとの結合を測定するために、特に、FcドメインとFcγRとの結合を測定するために開発された。このアッセイにより、リガンドに対する受容体の親和性が本質的に弱くても、例えばFcγRIIBとFcγRIIIAについてマイクロモルの範囲であっても、Fc-FcγR相互作用の検出および定量が可能となった。前記方法は、国際公開WO 04/063351号および米国特許出願公開第2005/0037000号および第2005/0064514号にその詳細が記載されている。いずれも参照としてその全てを本明細書に援用する。簡単に言えば、この方法は、当該分野で知られるいずれかの標準的なイムノアッセイ法、例えばFACS、ELISA、表面プラズモン共鳴等で追跡することができるFcγR複合体の形成を含む。さらに、FcγR複合体は、複合体形成していないFcγRと比べると、Fc領域に対して改善された結合活性を有している。本発明によれば、好ましい分子複合体は四量体の免疫複合体であり、この免疫複合体は、(a) FcγRの可溶性領域(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIAまたはFcγRIIBの可溶性領域);(b) FcγRの可溶性領域(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIAまたはFcγRIIBの可溶性領域)のC末端に機能し得るように連結されたビオチン化15アミノ酸AVITAG配列(AVITAG);および(c)ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE)を、四量体FcγR複合体を形成するモル比で(好ましくは5:1のモル比で)含んでなる。この融合タンパク質は、例えば15アミノ酸AVITAG配列中のリジン残基を特異的にビオチン化する大腸菌ビオチンリガーゼBirA酵素を用いて、酵素的にビオチン化されている。ビオチン化された可溶性FcγRタンパク質を、その後、四量体FcγR複合体を形成させるためにSA-PEと、1×SA-PE:5×ビオチン化可溶性FcγRのモル比で混合する。
【0192】
Fc領域を含むポリペプチドは、単量体の非複合FcγRよりも少なくとも8倍高い親和性で四量体FcγR複合体と結合することがわかった。Fc領域を含むポリペプチドの四量体FcγR複合体への結合性は、当業者には公知の標準的な技術、例えば蛍光活性化セルソーティング法(FACS)、ラジオイムノアッセイ法、ELISA法等を用いて測定することができる。
【0193】
本発明は、細胞ベースのまたは無細胞系のアッセイでFc領域を含む分子の機能性を測定するための、上記方法により形成される本発明の分子を含む免疫複合体の使用を包含する。
【0194】
便宜上、試薬は、アッセイキットで、すなわちFcγR四量体複合体と結合するFc領域を含んだ分子の能力をアッセイするためにパッケージされた試薬の組合せで提供され得る。Fc-FcγR相互作用を測定するのに使用する分子複合体の他の形態は、本発明の方法での使用も考慮されている。例えば、2003年1月13日出願の米国仮出願第60/439,709号(参照としてその全てを本明細書に組み入れる)に記載されているように形成された融合タンパク質が挙げられる。
【0195】
5.4.2 変異型重鎖をもつ分子の機能性アッセイ
本発明は、複数のエピトープ結合ドメインと、場合によりFcドメイン(またはその一部)とを含む本発明の分子を、該分子のエフェクター細胞機能を同定するための当業者に知られたアッセイを使用して、特徴づけることを包含する。特に、本発明は、本発明の分子を、FcγR介在エフェクター細胞機能について特徴づけることを包含する。さらに、本発明のダイアボディ分子の標的抗原の少なくとも1つがFcγRである場合、ダイアボディ分子によるFcγRの結合は、FcγR-Fc結合により活性化される経路と類似したFcγR介在経路を活性化するのに役立ちうる。こうして、ダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合ドメインがFcγRを認識する場合には、ダイアボディ分子は、Fcドメイン(またはその一部)を含むことなく、または付随するFc- FcγR結合なしに、FcγR介在エフェクター細胞機能を誘発することができる。本発明に従ってアッセイすることができるエフェクター細胞機能の例として、限定するわけではないが、以下が含まれる:抗体依存性細胞傷害、食作用、オプソニン作用、オプソニン食作用、Clq結合、および補体依存性細胞傷害。エフェクター細胞機能活性を判定するために、当業者に知られた細胞ベースのアッセイまたは無細胞アッセイはいずれも使用することができる(エフェクター細胞アッセイについては、以下を参照:Perussiaら、2000, Methods Mol. Biol. 121: 179-92;Baggioliniら、1998 Experientia, 44(10): 841-8;Lehmannら、2000 J. Immunol. Methods, 243(1-2): 229-42;Brown EJ. 1994, Methods Cell Biol., 45: 147-64;Munnら、1990 J. Exp. Med., 172: 231-237, Abdul-Majidら、2002 Scand. J. Immunol. 55: 70-81;Dingら、1998, Immunity 8:403-411(それぞれの全内容を参照として本明細書中に組み入れる))。
【0196】
ある実施形態では、本発明の分子をヒト単球でFcγR介在食作用についてアッセイすることができる。あるいはまた、本発明の分子のFcγR介在食作用をその他の食細胞、例えば、好中球(多形核白血球;PMN);ヒト末梢血単球、単球由来マクロファージでアッセイすることもできる。これらは当業者に知られた標準的手順を使用して取得することができる(例えば、Brown EJ. 1994, Methods Cell Biol., 45: 147-164参照)。一実施形態では、本発明の分子の機能を、既述された方法(Tridandapaniら、2000, J. Biol. Chem. 275: 20480-7)により、フルオレセイン化IgG-オプソニン化ヒツジ赤血球細胞(SRBC)を貪食するTHP-1細胞の能力を測定することによって、特徴付ける。
【0197】
本発明の分子の食作用を判定するための別の例示的なアッセイは、抗体依存性オプソニン食作用アッセイ(ADCP)であり、これは以下のステップを含むことができる:大腸菌(Escherichia coli)-標識FITC(Molecular Probes)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)-FITCなどの標的生体粒子を、(i)フルオレセインに対する抗体である野生型4-4-20抗体(FcγR依存性ADCPについての対照抗体として)(全内容を参照として本明細書に組み入れるBedzykら、1989, J. Biol. Chem, 264(3): 1565-1569参照)、または(ii)FcγRIIIへの結合をノックアウトするD265A突然変異を保有する4-4-20抗体(FcγR依存性ADCPについてのバックグラウンド対照として)、(iii)4-4-20のエピトープ結合ドメインおよびFcドメインおよび/またはFcγRIIIに特異的なエピトープ結合ドメインを含むダイアボディ、でコートすること;そしてオプソニン化した粒子を形成させること;記載したオプソニン化粒子(i〜iii)のいずれかをTHP-1エフェクター細胞(単球細胞系、ATCCより入手可能)に1:1、10:1、30:1、60:1、75:1、または100:1の比で添加して、FcγR介在食作用を発生させること;好ましくは該細胞と大腸菌-FITC/抗体を37℃で1.5時間インキュベートすること;インキュベーション後、細胞にトリパンブルーを添加して(好ましくは室温で2〜3分)、内部に取り込まれないで細胞表面の外側に付着した細菌の蛍光を消失させること;細胞をFACSバッファー(例えば、PBS中の0.1%BSA、0.1%アジ化ナトリウム)中に移し、FACS(例えば、BD FACS Calibur)を用いてTHP1細胞の蛍光を分析すること。好ましくは、このアッセイに用いられるTHP-1細胞を、FACSにより細胞表面上のFcγRの発現について分析する。THP-1細胞はCD32AとCD64の両方を発現する。CD64は、本発明の方法に従ってADCPアッセイを実行する際にブロックされる、高親和性FcγRである。THP-1細胞を、好ましくは100μg/mLの可溶性IgG1または10%ヒト血清でブロックする。ADCPの程度を分析するため、ゲートを好ましくはTHP-1細胞に設定し、蛍光強度の中央値を測定する。個々の突然変異体についてのADCP活性を算出し、得られた野生型chMab 4-4-20に対して標準化した数値として記録する。オプソニン化した粒子をTHP-1細胞に添加して、Tオプソニン化粒子とTHP-1細胞の比が30:1または60:1になるようにする。最も好ましい実施形態では、ADCPアッセイを以下のような対照を用いて実施する:培地中の大腸菌-FITC、大腸菌-FITCおよびTHP-1細胞(FcγR非依存性ADCP活性として役立つ)、大腸菌-FITC、THP-1細胞および野生型4-4-20抗体(FcγR依存性ADCP活性として役立つ)、大腸菌-FITC、THP-1細胞、4-4-20 D265A(FcγR依存性ADCP活性についてのバックグラウンド対照として役立つ)。
【0198】
別の実施形態では、本発明の分子を、当業者に知られた標準的な方法のいずれかを使用して、エフェクター細胞、例えばナチュラルキラー細胞で、FcγR介在ADCC活性についてアッセイすることができる(例えば、Perussiaら、2000, Methods Mol. Biol. 121: 179-92;Wengら、2003, J. Clin. Oncol. 21:3940-3947; Dingら、Immunity, 1998, 8:403-11)参照)。本発明の分子のADCC活性を判定するための例示的なアッセイは、以下のステップを含む5lCr放出アッセイに基づくものである:標的細胞を[51Cr]Na2CrO4で標識すること(この細胞膜透過性分子が標識用に一般的に使用される。なぜならば、これは細胞質タンパク質と結合し、細胞から速度論的に緩慢に自発放出されるが、標的細胞の壊死後、大量に放出されるからである);変異型重鎖を含む本発明の分子で標的細胞をオプソニン化すること;オプソニン化した放射性標識標的細胞とエフェクター細胞とを、標的細胞とエフェクター細胞の適切な比で、マイクロタイタープレートにて混合すること;細胞の混合物を16〜18時間、37℃でインキュベートすること;上清を回収すること;および放射活性を分析すること。その後、本発明の分子の細胞傷害性を、例えば以下の式を使用して算出することができる: 溶解%=(実験cpm−標的漏出cpm)/(界面活性剤溶解cpm−標的漏出cpm)x100%、あるいは、溶解%=(ADCC-AICC)/(最大放出−自発放出)。比溶解は以下の式を使用して算出することができる:比溶解=本発明の分子の存在下での溶解%−本発明の分子の不在下での溶解%。標的:エフェクター細胞の比または抗体濃度のいずれかを変更することによって、グラフを作成することができる。
【0199】
好ましくは、本発明のADCCアッセイで使用するエフェクター細胞は末梢血単核細胞(PBMC)である。これは好ましくは、当業者に知られた標準的方法、例えばFicoll-Paque密度勾配遠心分離を使用して、正常ヒト血液から精製される。本発明の方法で使用するのに好ましいエフェクター細胞は、異なるFcγR活性化受容体を発現する。本発明は、重鎖抗体突然変異体が野生型IgGl抗体に比較して増加したADCC活性および食作用を示すかどうかを判定するために、エフェクター細胞、FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIBを発現するTHP-1、ならびにFcγRIIIAとFcγRIIBの両方を発現する、ヒト全血に由来する単球由来の一次マクロファージを包含する。
【0200】
ヒト単球細胞系であるTHP-1は、高親和性受容体FcγRIおよび低親和性受容体FcγRIIAの発現を介して食作用を活性化する(Fleitら、1991, J. Leuk. Biol. 49: 556)。THP-1細胞は、FcγRIIAまたはFcγRIIBを構成的に発現しない。サイトカインを用いてこれらの細胞を刺激すると、FcR発現パターンが影響される(Pricopら、2000 J. Immunol. 166: 531-7)。サイトカインIL4の存在下でのTHP-1細胞の生育はFcγRIIB発現を誘発し、FcγRIIAおよびFcγRI発現の減退をもたらす。また、FcγRIIB発現も細胞密度の増加によって増大される(Tridandapaniら、2002, J. Biol Chem. 277: 5082-9)。対照的に、IFNγはFcγRIIIAの発現を導くことができると報告されている(Pearseら、1993 PNAS USA 90: 4314-8)。細胞表面上の受容体の存在または不在は、当業者に知られた一般的方法を使用して、FACSによって確認することができる。サイトカインにより誘発される細胞表面上でのFcγRの発現は、FcγRIIBの存在下で活性化および抑制の両方を試験する系を提供する。THP-1細胞がFcγRIIBを発現することができない場合は、本発明は別のヒト単球細胞系であるU937をさらに包含する。これらの細胞は、IFNγおよびTNFの存在下で、最終的にマクロファージに分化することが分かっている(Korenら、1979, Nature 279: 328-331)。
【0201】
FcγR依存性腫瘍細胞死滅は、マウス腫瘍モデルではマクロファージとNK細胞によって仲介される(Clynesら、1998, PNAS USA 95 : 652-656)。本発明は、食作用およびADCCアッセイの両方で、標的細胞の細胞傷害を誘発するFc突然変異体の効力を分析するため、エフェクター細胞としての、ドナー由来のエルトリエートした(elutriated)単球の使用を包含する。FcγRI、FcγRIIIA、およびFcγRIIBの発現パターンは、異なる増殖条件によって影響を受ける。エルトリエートして凍結させた単球、新鮮なエルトリエートした単球、10% FBS中に維持した単球、FBS+GM-CSF中および/またはヒト血清中で培養した単球からのFcγR発現は、当業者に知られた一般的方法を使用して測定することができる。例えば、細胞をFcγR特異的抗体で染色し、FACSによって分析してFcγRプロファイルを決定することができる。その後、マクロファージのin vivo FcγR発現を最もよく模倣する条件を本発明の方法で使用する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明は、特に適合するFcγRプロファイルを持つヒト細胞を取得することができない場合には、マウス細胞の使用を包含する。いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトFcγRIIIAでトランスフェクトすることができるマウスマクロファージ細胞系RAW264.7(ATCC)、および当技術分野で知られた方法を使用して単離された安定なトランスフェクタントを包含する(例えば、Ralphら、J. Immunol. 119: 950-4参照)。トランスフェクタントは、通常の実験操作を用いたFACS分析によって、FcγRIIIA発現について定量し、高発現体を本発明のADCCアッセイに使用することができる。別の実施形態では、本発明は、本明細書で開示したものなどのノックアウトトランスジェニックマウスからの、ヒトFcγRを発現する脾臓腹腔マクロファージの単離を包含する。
【0203】
リンパ球は、Ficoll-Paque勾配(Pharmacia)を使用して、ドナーの末梢血(PBM)から回収することができる。単離された細胞の単核集団内では、ほとんでADCC活性が、その表面にFcγRIIIAを含むがFcγRIIBは含まないナチュラルキラー細胞(NK)を介して生じる。これらの細胞を用いた結果は、NK細胞ADCCの誘発に対する突然変異体の効力を示し、エルトリエートした単球を用いて試験するための試薬を確立する。
【0204】
本発明のADCCアッセイで使用する標的細胞として、限定するわけではないが、以下が含まれる:乳癌細胞系、例えばSK-BR-3(ATCC受託番号 HTB-30)(例えば、Trempら、1976, Cancer Res. 33-41参照);Bリンパ球;バーキットリンパ腫由来の細胞、例えばRaji細胞(ATCC受託番号CCL-86)(例えば、Epsteinら、1965, J. Natl. Cancer Inst. 34: 231-240参照)、およびDaudi細胞(ATCC受託番号CCL-213)(例えば、Kleinら、1968, Cancer Res. 28: 1300-10参照)。標的細胞はアッセイすべきダイアボディ分子の抗原結合部位によって認識されるものでなければならない。
【0205】
ADCCアッセイは、アポトーシス経路によって細胞死を仲介するNK細胞の能力に基づいている。NK細胞は、一部には細胞表面の抗原に結合したIgG FcドメインのFcγRIIIA認識によって、細胞死を仲介する。本発明の方法に従って使用するADCCアッセイは、放射性ベースのアッセイまたは蛍光ベースのアッセイでもよい。変異型Fc領域を含む本発明の分子を特徴付けるるために使用するADCCアッセイは以下のステップを含む:標的細胞、例えばSK-BR-3、MCF-7、OVCAR3、Raji、Daudi細胞を標識すること;標的細胞を、抗原結合部位を介して標的細胞上の細胞表面受容体を認識する抗体でオプソニン化すること;標識したオプソニン化標的細胞とエフェクター細胞とを適切な比(これは通常の実験操作によって決定することができる)で混合すること;細胞を回収すること;使用した標識に基づく適切な検出スキームを使用して、溶解した標的細胞の上清中の標識を検出すること。標的細胞は当技術分野で知られた標準的方法を使用して、放射性標識または蛍光標識で標識することができる。例えば、標識として、限定するわけではないが、以下が含まれる:[51Cr]Na2Cr04;および蛍光増給リガンドである2,2':6',2''-ターピリジン-6-6''-ジカルボン酸(TDA)のアセトキシメチルエステル。
【0206】
特定の好ましい実施形態では、蛍光増強リガンドである2,2':6',2''-ターピリジン-6-6''-ジカルボン酸(TDA)のアセトキシメチルエステルで標識した標的細胞に対するADCC活性を測定するために、時間分解蛍光測定アッセイを使用する。こうした蛍光測定アッセイは、当技術分野で知られている。例えば、Blombergら、1996, Journal of Immunological Methods, 193: 199-206(その全内容を参照として本明細書に組み入れる)を参照されたい。簡単に述べると、標的細胞を膜透過性TDAのアセトキシメチルジエステルである(ビス(アセトキシメチル)2,2':6',2''-ターピリジン-6-6''-ジカルボン酸(BATDA))で標識する。これは生細胞の細胞膜を通過して迅速に拡散する。細胞内エステラーゼがエステル基を開裂させ、再生された膜非透過性TDA分子は細胞内に捕捉される。エフェクター細胞および標的細胞を例えば少なくとも2時間、長くとも3.5時間、37℃、5% CO2下でインキュベートした後、溶解標的細胞から放出されたTDAをEu3+でキレート化し、生成したユーロピウム-TDAキレートの蛍光を時間分解蛍光光度計(例えば、Victor 1420, PerkinElmer/Wallace)で定量する。
【0207】
別の特定の実施形態では、複数のエピトープ結合部位、および場合によりFcドメイン(またはその一部)を含む本発明の分子を特徴付けるために使用するADCCアッセイは以下のステップを含む: 好ましくは4〜5x106個の標的細胞(例えば、SK-BR-3、MCF-7、OVCAR3、Raji細胞)をビス(アセトキシメチル)2,2':6',2''-ターピリジン-t-6''-ジカルボン酸(DELFIA BATDA試薬, Perkin Elmer/Wallac)で標識する。最適な標識効率のため、ADCCアッセイで使用する標的細胞の数は、好ましくは5x106個を超えないようにすべきである。この細胞にBATDA試薬を添加し、混合物を37℃、好ましくは5%CO2下で、少なくとも30分間インキュベートする。次に細胞を生理学的バッファー(例えば、0.125mMスルフィンピラゾールを含むPBS)、および0.125mMスルフィンピラゾールを含有する培地で洗浄する。次に標識した標的細胞を、EcγRIIAに特異的なエピトープ結合ドメイン、および場合によりFcドメイン(またはその一部)を含む本発明の分子でオプソニン化(コート)する。好ましい実施形態では、ADCCアッセイで使用する分子はまた、細胞表面受容体、腫瘍抗原、または癌抗原に特異的である。本発明のダイアボディ分子は、セクション5.6.1に列挙するものなどの癌または腫瘍抗原と特異的に結合することができる。ADCCアッセイで使用する標的細胞は、本発明のダイアボディが標的細胞の細胞表面受容体と特異的に結合するように、該ダイアボディに導入されたエピトープ結合部位に従って選択される。
【0208】
標的細胞をエフェクター細胞、例えばPBMCに、エフェクター:標的の比が約1:1、10:1、30:1、50:1、75:1、または100:1になるように添加する。エフェクターおよび標的細胞を少なくとも2時間、長くとも3.5時間、37℃、5%CO2下でインキュベートする。細胞上清を回収し、酸性ユーロピウム溶液(例えば、DELFIAユーロピウム溶液, Perkin Elmer/Wallac)に添加する。生成したユーロピウム-TDAキレートの蛍光を、時間分解蛍光光度計(例えば、Victor 1420, Perkin Elmer/Wallac)で定量する。最大放出(MR)および自発放出(SR)は、標的細胞を、それぞれ1% TX-100および培地のみとインキュベートすることによって測定する。抗体非依存性細胞傷害(AICC)を、試験分子(例えば本発明のダイアボディ)の不在下で標的およびエフェクター細胞をインキュベーションすることによって測定する。各アッセイは、好ましくは3回反復して実施する。比溶解の平均パーセントを以下によって算出する:実験放出値(ADCC)-AICC)/(MR-SR)x100。
【0209】
本発明は、Fcドメイン(またはその一部)を含む本発明の分子によるC1qの結合および補体依存性細胞傷害(CDC)の仲介を特徴づけるための、当技術分野で公知でありかつ本明細書に例示されるアッセイを包含する。C1q結合性を測定するために、C1q結合ELISAを実施することができる。例示的なアッセイは、以下のステップを含み得る:アッセイプレートを、コーティングバッファー中で本発明の分子または出発ポリペプチド(対照)により、4℃で一晩コーティングする。次いでこのプレートを洗浄し、ブロックする。洗浄後、ヒトC1qのアリコートを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートする。さらに洗浄した後、100μLのヒツジ抗補体C1qペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートする。プレートを再度洗浄バッファーで洗浄し、OPD(O-フェニレンジアミン二塩酸塩(Sigma))を含む100μlの基質バッファーを各ウェルに添加する。黄色の出現によって観察される酸化反応を30分間進行させて、100μlの4.5 NH2SO4の添加によって該反応を停止させる。次いで吸光度を(492〜405)nmで読み取る。
【0210】
補体活性化を評価するために、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを、例えば参照としてその全体を本明細書に組み入れるGazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されるように、実施することができる。簡潔に言うと、(変異型)Fcドメイン(またはその一部)を含む分子およびヒト補体を様々な濃度にバッファーで希釈する。ダイアボディ分子が結合する抗原を発現する細胞は、1ml当たり約1x106細胞の密度に希釈する。(変異型)Fcドメイン(またはその一部)を含むダイアボディ分子、希釈したヒト補体および抗原を発現する細胞の混合物を、平底組織培養96ウェルプレートに添加して、37℃、5%CO2下で2時間インキュベートさせて、補体介在細胞溶解を促進させる。次いで、50μLのアラマーブルー(Accumed International)を各ウェルに添加して、37℃で一晩インキュベートする。吸光度は530nmの励起および590nmの発光を有する96ウェル蛍光光度計を用いて測定する。結果は相対蛍光単位(RFU)で表すことができる。サンプル濃度を標準曲線から求めて、非変異型分子(すなわち、Fcドメインを含まないかまたは非変異型Fcドメインを含む分子)と比較した活性%を対象の変異体について記録する。
【0211】
5.4.3 その他のアッセイ
複数のエピトープ結合ドメイン、および場合によりFcドメイン、を含む本発明の分子は、抗原結合ドメインまたはFc-FcγR結合の速度論的パラメーターを特徴付けるための、当技術分野で知られた表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイのいずれかを使用してアッセイすることができる。限定するわけではないが以下を含む市販のSPR装置のいずれかを本発明で使用することができる:Biacore AB製のBIAcore装置(Uppsala, Sweden);Affinity Sensors製のIAsys装置(Franklin, MA.);Windsor Scientific Limited製のIBISシステム(Berks, UK);日本レーザ電子製のSPR-CELLIAシステム(北海道、日本);およびTexas Instruments社製のSPR Detector Spreeta(Dallas, TX)。SPRに基づく技法の概説については、以下を参照されたい:Mulletら、2000, Methods 22: 77-91;Dongら、2002, Review in Mol. Biotech., 82: 303-23;Fivashら、1998, Current Opinion in Biotechnology 9:97-101;Richら、2000, Current Opinion in Biotechnology 11: 54-61(その全体を参照として本明細書中に組み入れる)。さらに、米国特許第6,373,577号;第6,289,286号;第5,322,798号;第5,341,215号;第6,268,125号(その全体を参照として本明細書中に組み入れる)に記載されたタンパク質-タンパク質相互作用を測定するためのSPR装置およびSPRに基づく方法のいずれをも、本発明の方法に含むものとする。
【0212】
簡単に述べると、SPRベースのアッセイは、結合ペアの一方を表面に固定化すること、および溶液中の結合ペアの他方との相互作用をリアルタイムでモニタリングすることを含む。SPRは、複合体の形成または解離時に生じる表面付近での溶媒の屈折率の変化を測定することに基づくものである。固定化を行う表面はセンサーチップであって、これがSPR技法の心臓部となるものである。これは金の薄層でコートされたガラス表面からなり、分子の表面への結合性を最適化するように設計された特殊な表面領域の基礎を形成する。様々なセンサーチップが特に上記の会社から市販されており、これらのすべてを本発明の方法で使用することができる。センサーチップの例としては、BIAcore AB, Inc.から市販されているもの、例えばSensor Chip CM5、SA、NTA、およびHPAが挙げられる。本発明の分子は、限定するわけではないが、以下を含む、当技術分野で知られた固定化方法および化学作用を使用して、センサーチップの表面に固定化することができる:アミン基を介した直接共有結合、スルフヒドリル基を介した直接共有結合、アビジンコート表面へのビオチン結合、炭水化物基へのアルデヒド結合、およびヒスチジンタグを介したNTAチップとの結合。
【0213】
いくつかの実施形態では、複数のエピトープ結合部位および場合によりFcドメインを含む本発明の分子と、抗原またはFcγRとの結合の速度論的パラメーターは、BIAcore装置(例えば、BIAcore装置1000, BIAcore Inc., Piscataway, NJ)を使用して測定することができる。上で述べたように(セクション5.4.1参照)、ダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合部位がFcγRを免疫特異的に認識する場合、および/またはダイアボディ分子がFcドメイン(またはその一部)を含む場合、任意のFcγRを使用して本発明の分子の結合を評価することができる。特定の実施形態では、FcγRはFcγRIIIA、好ましくは可溶性の単量体FcγRIIIAである。例えば、一実施形態では、可溶性単量体FcγRIIIAは、リンカー-AVITAG配列に結合されたFcγRIIIAの細胞外領域である(米国仮出願番号60/439,498号、2003年1月9日出願(代理人整理番号11183-004-888)および米国仮出願番号60/456,041号、2003年3月19日出願を参照されたい(これらの全体を参照として本明細書中に組み入れる))。別の特定の実施形態では、FcγRはFcγRIIB、好ましくは可溶性の二量体FcγRIIBである。例えば、一実施形態では、可溶性二量体FcγRIIBタンパク質を以下に記載された方法に従って調製する:米国仮出願番号60/439,709号、2003年1月13日出願(その全体を参照として本明細書に組み入れる)。
【0214】
全ての免疫学的アッセイにおいて、本発明の分子によるFcγRの認識/結合は複数のドメインによって影響される。ある特定の実施形態では、本発明の分子は複数のエピトープ結合ドメインのうちの1つを介してFcγRを免疫特異的に認識する。本発明の分子がFcドメイン(またはその一部)を含む、さらに他の実施形態では、ダイアボディ分子はFc-FcγR相互作用を介してFcγRを免疫特異的に認識することができる。本発明の分子がFcドメイン(またはその一部)と、FcγRを免疫特異的に認識するエピトープ結合部位の両方を含む、さらに他の実施形態では、ダイアボディ分子はエピトープ結合ドメインとFcドメイン(またはその一部)の一方または両方を介してFcγRを認識することができる。複数のエピトープ結合部位および場合によりFcドメイン(またはその一部)を含む本発明の分子の、抗原および/またはFcγRに対する速度論的パラメーターを、BIAcore装置を用いて測定するための例示的なアッセイは、以下を含む:第1の抗原をセンサーチップ表面の4つのフローセルの1つに、好ましくはアミンカップリング化学を介して固定化し、それにより約5000反応単位(RU)の第1の抗原が表面に固定化されるようにする。好適な表面が調製された時点で、第1の抗原を免疫特異的に認識する本発明の分子を、好ましくは20μg/mL溶液の流速5μL/mLでの1分間の注入によって、該表面を通過させる。この段階で該表面に結合した本発明の分子のレベルは、一般的に400〜700RUの範囲である。次に、HBS-Pバッファー(20mM HEPES, 150mM NaCl, 3mM EDTA, pH 7.5)中の第2の抗原(例えば、FcγR)またはFcγR受容体の一連の希釈系列を表面上に100μL/分で注入する。異なる第2の抗原または受容体希釈物間での分子の再生は、好ましくは100mM NaHCO3 pH 9.4;3M NaClの1回の5秒間注入によって行われる。当技術分野で知られたいずれの再生技術も本発明の方法で想定されている。
【0215】
全てのデータセットが収集された時点で、得られる結合曲線を、SPR装置製造元、例えばBIAcore社(Piscataway, NJ)から供給されているコンピュータアルゴリズムを使用して、包括的に適合させる。これらのアルゴリズムでは、KonおよびKoffの両方を算出し、これらから見かけの平衡結合定数Kdを、2つの速度定数の比(すなわち、Koff/Kon)として演繹する。個々の速度定数をどのようにして誘導するかについてのさらに詳細な処理法は、BIAevaluaion Software Handbook(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)から得られる。作成したデータの解析は、当技術分野で知られたどの方法を使用しても実施することができる。作成した速度論的データを解釈する各種方法の概説については、以下を参照されたい:Myszka, 1997, Current Opinion in Biotechnology 8: 50-7;Fisherら、1994, Current Opinion in Biotechnology 5: 389-95;O'Shannessy, 1994, Current Opinion in Biotechnology, 5:65-71;Chaikenら、1992, Analytical Biochemistry, 201: 197-210;Mortonら、1995, Analytical Biochemistry 227: 176-85;O'Shannessyら、1996, Analytical Biochemistry 236: 275-83(これらの全体を参照として本明細書中に組み入れる)。
【0216】
好ましい実施形態では、SPR分析、例えばBIAcoreを使用して測定した速度論的パラメーターは、本発明の分子が機能的アッセイ、例えばADCC中で、どのように機能するかを予測するための指標として使用することができる。SPR分析から取得した速度論的パラメーターに基づいて本発明の分子の効力を予測するための例示的な方法は、以下を含む:本発明の分子の(エピトープ結合ドメインおよび/またはFcドメイン(もしくはその一部)を介した)FcγRIIIAおよびFcγRIIBとの結合についてのKoff値を測定すること;ADCCデータに対して、(1) FcγRIIIAについてのKoff(wt)/Koff(mut);(2) FcγRIIBについてのKoff(mut)/Koff(wt)をプロットすること。1よりも高い数値が、野生型と比較して、FcγRIIIAについての減少した解離速度、およびFcγRIIBについての増加した解離速度を示し、増大したADCC機能を有することを示す。
【0217】
5.5 本発明のダイアボディ分子の製造方法
本発明のダイアボディ分子は、当技術分野で周知の各種方法により製造することができ、de novoタンパク質合成、結合タンパク質をコードする核酸の組換え発現といった方法がある。所望の核酸配列は組換え法(例えば、所望のポリヌクレオチドの以前に作製された変異体のPCR突然変異誘発)により、または固相DNA合成により得ることができる。通常は組換え発現が用いられる。ある態様において、本発明はCD16A VHおよび/またはVLをコードする配列を含むポリヌクレオチドを提供する。別の態様では、本発明はCD32B VHおよび/またはVLをコードする配列を含むポリヌクレオチドを提供する。遺伝子コードの縮重のため、それぞれの免疫グロブリンアミノ酸配列を種々の核酸配列がコードしており、本発明はここに記載する結合タンパク質をコードするあらゆる核酸を包含する。
【0218】
5.5.1 本発明の分子をコードするポリヌクレオチド
本発明は、本発明の分子(ポリペプチドおよび抗体を含む)をコードするポリヌクレオチドをも含む。当技術分野で知られたいずれかの方法により、本発明の分子をコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。
【0219】
本発明の方法によって同定される分子のヌクレオチド配列が決定されたら、そのヌクレオチド配列を当技術分野で周知の方法、例えば組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCR等を使用して操作し(例えば以下に記載された技術を参照されたい:Sambrookら、2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY;およびAusubelら編集、1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY(これらの両方の全体を参照として本明細書に組み入れる))、例えばアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生じさせることによって、例えば異なるアミノ酸配列をもつ抗体を作製することができる。
【0220】
一実施形態では、ヒトライブラリーまたは当技術分野で利用し得るその他のライブラリーを当技術分野で知られた標準的技術によってスクリーニングして、本発明の分子をコードする核酸をクローニングすることができる。
【0221】
5.5.2 本発明の分子の組換え発現
本発明の分子(すなわち、抗体)をコードする核酸配列が得られた時点で、該分子を産生するためのベクターを、組換えDNA技術により当技術分野で周知の技術を用いて作製することができる。当業者に周知の方法を利用して、本発明の分子のコード配列および適当な転写・翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝的組換えが挙げられる(例えば、Sambrookら, 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY、およびAusubelら編, 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NYに記載される技術を参照されたい)。
【0222】
本発明の方法により同定された分子のヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、従来技術(例えば、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、およびリン酸カルシウム沈降)により宿主細胞に導入し、次いでトランスフェクトした細胞を従来技術により培養して、本発明の分子を産生させることができる。特定の実施形態においては、本発明の分子の発現を構成的、誘導性、または組織特異的なプロモーターにより制御する。
【0223】
本発明の方法により同定された分子を発現させるために利用する宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)であるか、または好ましくは、特に完全な組換え免疫グロブリン分子を発現させるためには、真核細胞でありうる。特に、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターとの併用において、免疫グロブリンのための有効な発現系である(Foeckingら, 1998, Gene 45:101;Cockettら, 1990, Bio/Technology 8:2)。
【0224】
様々な宿主-発現ベクター系を利用して、本発明の方法により同定された分子を発現させることができる。このような宿主-発現系は、本発明の分子のコード配列を産生し、続いて精製することができるビヒクルに相当するが、適当なヌクレオチドコード配列により形質転換またはトランスフェクトされると本発明の分子をin situで発現することができる細胞にも相当する。これらとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:例えば、本発明の方法により同定された分子のコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌(例えば大腸菌(E.coli)や枯草菌(B. subtilis)等)の微生物;本発明の方法により同定された分子をコードする配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属、ピキア属);本発明の方法により同定された分子をコードする配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;本発明の方法により同定された分子をコードする配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV))を感染させたまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、293T、3T3細胞、リンパ球(米国特許第5,807,715号を参照)、Per C.6細胞(Crucellにより開発されたヒト網膜細胞))。
【0225】
細菌系においては、発現される分子に対して意図される用途に応じて、多くの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体の医薬組成物を調製するために大量のタンパク質を産生させる必要がある場合には、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターとしては、限定するものではないが、抗体コード配列をベクター中にlacZコード領域と共にインフレームで個々に連結して融合タンパク質が産生されるようにする大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)などが挙げられる。また、pGEXベクターを用いて、外来ポリペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞から、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着および結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出により容易に精製することができる。pGEXベクターはトロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されており、その結果、クローニングされた標的遺伝子産物をGST成分から切り離すことが可能である。
【0226】
昆虫系においては、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)(ACNPV)が外来遺伝子を発現させるためのベクターとして利用される。このウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。抗体コード配列をウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中に個々にクローニングして、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置させることができる。
【0227】
哺乳動物宿主細胞においては、多くのウイルスベースの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、目的の抗体コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3分節(tripartite)リーダー配列と連結することができる。このキメラ遺伝子を次いでアデノウイルスゲノムにin vitroまたはin vivo組換えにより挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入により、感染した宿主内で生存可能でありかつ免疫グロブリン分子を発現することができる組換えウイルスが得られる(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359を参照されたい)。特定の開始シグナルも、挿入した抗体コード配列の効率的な翻訳のために必要でありうる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、全インサートの翻訳を確実にするために、目的のコード配列のリーディングフレームと同じフェーズになければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、様々な起源のものであってよく、天然でも合成でもよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることにより増強することができる(Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153:51-544を参照されたい)。
【0228】
さらに、挿入した配列の発現をモジュレートしたり、遺伝子産物を所望の特定の様式で改変またはプロセシングしたりする宿主細胞株を選択することができる。このようなタンパク質産物の修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)はタンパク質の機能にとって重要でありうる。例えば、特定の実施形態では、本発明のダイアボディ分子を含むポリペプチドは単一の遺伝子産物として(例えば単一のポリペプチド鎖として、すなわちポリタンパク質前駆体として)発現させることができるが、かかる単一の遺伝子産物は本発明のダイアボディ分子の別個のポリペプチドを形成するために天然のまたは組換えの細胞機構によるタンパク質分解切断を必要とする。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドを含むポリタンパク質前駆体分子をコードする核酸配列(該ポリタンパク質前駆体の翻訳後切断を指令することができるコード配列を含む)を遺伝子工学的に作製することを包含する。ポリタンパク質前駆体の翻訳後切断は本発明のポリペプチドをもたらす。本発明のポリペプチドを含む前駆体分子の翻訳後切断はin vivo(すなわち、天然のまたは組換えの細胞系/機構、例えば適切な部位でのフューリン切断、により宿主細胞内)で起こってもよいし、in vitro(例えば、既知の活性のプロテアーゼもしくはペプチダーゼを含む組成物および/または所望のタンパク質分解作用を促すことが知られている条件もしくは試薬を含む組成物中での該ポリペプチド鎖のインキュベーション)で起こってもよい。組換えタンパク質の精製および修飾は当技術分野でよく知られており、ポリタンパク質前駆体の設計には当業者が容易に理解しうるいくつかの実施形態が含まれる。上記の前駆体分子の修飾のためには当技術分野で知られたプロテアーゼまたはペプチダーゼを使用することができ、例えば、トロンビン(アミノ酸配列LVPRGS (配列番号91)を認識する)、またはXa因子(アミノ酸配列I(E/D)GR (配列番号92)を認識する(Naganiら, 1985, PNAS USA 82:7252-7255、およびJennyら, 2003, Protein Expr. Purif. 31:1-11;その全内容を参照として本明細書に組み入れる))、エンテロキナーゼ(アミノ酸配列DDDDK (配列番号93)を認識する(Collins-Racieら, 1995, Biotechnol. 13:982-987;その全内容を参照として本明細書に組み入れる))、フューリン(アミノ酸配列RXXR^を認識し、RX(K/R)Rを優先的に認識する(それぞれ配列番号94および配列番号95)(P6位の追加のRは切断を促進するようである))、およびAcTEV(アミノ酸配列ENLYFQ^G (配列番号96)を認識する (Parksら, 1994, Anal. Biochem. 216:413;その全内容を参照として本明細書に組み入れる))、ならびに口蹄疫ウイルスプロテアーゼC3が使用される。例えば、セクション6.4を参照されたい。
【0229】
それぞれの宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に対する特徴的かつ特異的な機構を有する。適当な細胞株または宿主系を選ぶことにより、発現される外来タンパク質の正しい修飾とプロセシングを確実にすることができる。このために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構をもつ真核宿主細胞を用いることができる。このような哺乳動物宿主細胞としては、限定するものではないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47D、CRL7030およびHs578Bstが挙げられる。
【0230】
組換えタンパク質を長期間、高収率で産生させるためには、安定した発現が好ましい。例えば、本発明の抗体を安定に発現する細胞株を遺伝子工学的に作製することができる。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使うよりもむしろ、選択マーカーおよび適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNAで宿主細胞を形質転換する。外来DNAを導入した後に、遺伝子操作した細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与するので、細胞が安定してプラスミドをその染色体中に組み込み、増殖して巣を形成し、続いてクローニングして細胞株に増やすことが可能である。この方法は、本発明の抗体を発現する細胞株を遺伝子工学的に作製するために有利に使用することができる。このような遺伝子工学的に作製された細胞株は、本発明の分子と直接的または間接的に相互作用する化合物をスクリーニングして評価する上で特に有用である。
【0231】
多くの選択系を利用することができ、それらには、限定するものではないが、以下のものが含まれる:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22:817)遺伝子はそれぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞において使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性は以下の遺伝子を選択するための基礎として用いることができる:メトトレキセート耐性を与えるdhfr(Wiglerら, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:357;O'Hareら, 1981, Proc. NATL. Acad. Sci. USA 78: 1527);ミコフェノール酸耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. NATL. Acad. Sci. USA 78: 2072);アミノグリコシドG-418耐性を与えるneo(Clinical Pharmacy 12:488-505;WuおよびWu, 1991, 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, 1993, Science 260:926-932;MorganおよびAnderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217;May, 1993, TIB TECH 11(5):155-215);ならびにヒグロマイシン耐性を与えるhygro(Santerreら, 1984, Gene 30:147)。組換えDNA技術の分野で一般的に知られる利用可能な方法は、Ausubelら編, 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY;Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY;ならびに第12および13章, Dracopoliら(編), 1994, Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY;Colberre-Garapinら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1に記載されている。
【0232】
本発明の分子の発現レベルはベクター増幅により増加させることができる(概要については、BebbingtonおよびHentschel, 「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞でのクローン化遺伝子の発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの利用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」, Vol.3, Academic Press、New York、1987を参照されたい)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルを増加させると、マーカー遺伝子のコピー数が増加するだろう。増幅された領域はダイアボディ分子のポリペプチドのヌクレオチド配列と結びついているので、該ポリペプチドの産生も増加するだろう(Crouseら, 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0233】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、すなわち、ダイアボディ分子の第1のポリペプチドをコードする第1のベクターおよびダイアボディ分子の第2のポリペプチドをコードする第2のベクターで同時トランスフェクトすることができる。これら2つのベクターは、両方のポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択マーカーを含有してもよい。あるいは、両方のポリペプチドをコードする単一のベクターを用いてもよい。本発明の分子のポリペプチドをコードする配列は、cDNAまたはゲノムDNAでありうる。
【0234】
本発明の分子(すなわち、ダイアボディ)が組換えにより発現された時点で、これを、当技術分野で公知の、ポリペプチド、ポリタンパク質またはダイアボディを精製するための当技術分野で公知の方法(抗原選択性に基づく抗体精製スキームに類似)のいずれかで精製することができる。かかる精製法として、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に(任意で、ダイアボディ分子がFcドメインまたはその一部を含む場合はプロテインAによる選択の後に)特異的抗原に対する親和性によるもの、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、またはポリペプチド、ポリタンパク質もしくはダイアボディを精製するための他の標準的な技法がある。
【0235】
5.6 予防および治療方法
本発明の分子は、FcγRにより仲介されるエフェクター細胞機能(例えば、ADCC)が望まれる疾患、障害または感染(例えば、癌、感染性疾患)を治療および/または予防するのに特に有用である。以下で述べるように、本発明のダイアボディは、Fcドメインを含まないにもかかわらず、エフェクター機能を引き出すのに抗体に似た機能性を示しうる。FcγRを免疫特異的に認識する少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを含むことにより、ダイアボディ分子はFc-FcγR相互作用に類似したFcγR結合および活性を示すことができる。例えば、本発明の分子は免疫エフェクター細胞(例えば、NK細胞)上の細胞表面抗原とFcγR(例えば、FcγRIIIA)と結合して、該細胞に対してエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、食作用、オプソニン化など)を刺激する。
【0236】
他の実施形態において、本発明のダイアボディ分子はFcドメイン(またはその一部)を含むものである。かかる実施形態では、Fcドメインは野生型Fcドメイン(またはその一部)に対して少なくとも1つのアミノ酸修飾をさらに含み、かつ/または1以上のIgGアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)由来のドメインを含むことができる。変異型Fcドメインを含む本発明の分子は、野生型Fcドメインを含む分子と比べて、賦与されたまたは改変された表現型、例えば改変されたまたは賦与されたエフェクター機能活性(例えば、NK依存性またはマクロファージ依存性アッセイでアッセイされる)を示しうる。この実施形態において、エフェクター機能活性が賦与または改変されている本発明の分子は、エフェクター機能活性の増大した効力が望まれる疾患、障害または感染の治療および/または予防に有用である。ある特定の実施形態では、Fcドメイン(またはその一部)を含む本発明のダイアボディ分子が補体依存性カスケードを仲介する。エフェクター機能を改変するものとして確認されたFcドメイン変異体は、国際出願WO04/063351、米国特許出願公開2005/0037000および2005/0064514、米国仮出願60/626,510(2004年11月10日出願)、60/636,663(2004年12月15日出願)、および60/781,564(2006年3月10日出願)、ならびに米国特許出願11/271,140(2005年11月10日出願)、および11/305,787(2005年12月15日出願)(本発明者らの同時出願)に開示されており、それぞれの全内容を参照として本明細書に組み入れる。
【0237】
本発明は、被験者に、治療に有効な量の1種以上の分子を投与することを含んでなる、被験者の癌を治療、予防または管理するための方法ならびに組成物を包含し、前記分子は1つ以上のエピトープ結合部位および場合により本発明に従って遺伝子操作されたFcドメイン(またはその一部)を含み、かつ該分子は癌抗原とさらに結合する。本発明の分子は原発性腫瘍、癌細胞の転移、および感染性疾患の予防、阻止、増殖抑制または退行に特に有用である。特定の作用機構によって束縛されるものではないが、本発明の分子はエフェクター機能を仲介して腫瘍の消失、腫瘍の抑制、またはその両方をもたらす。別の実施形態では、本発明のダイアボディは、細胞表面抗原および/または受容体の架橋およびアポトーシスまたは負の増殖調節のシグナル伝達の増加により治療活性を仲介する。
【0238】
特定の作用機構によって束縛されるものではないが、本発明のダイアボディ分子は当技術分野で知られた治療用抗体と比べて増大した治療効力を示すが、これは一部には、例えばダイアボディ-エピトープ相互作用の向上した結合力ゆえに標的細胞上により長く留まっているダイアボディの能力によって、ダイアボディが特定の抗原(例えば、FcγR)を低レベルで発現する標的細胞と免疫特異的に結合できるためである。
【0239】
抗原(例えば、FcγR)に対する親和性および結合力が増大している本発明のダイアボディは、標的細胞集団ではFcγRが低レベルで発現される被験者において、癌または別の疾患もしくは障害を治療、予防または管理するのに特に有用である。本明細書中で用いる場合、細胞でのFcγR発現は、細胞あたりの該分子の密度によって定義され、これは当業者に公知の通常の方法を用いて測定される。複数のエピトープ結合部位、および場合によりFcγR(またはその一部)を含む本発明の分子はまた、好ましくは、標的抗原(例えば、癌抗原)を30,000〜20,000分子/細胞の密度で、20,000〜10,000分子/細胞の密度で、10,000分子/細胞もしくはそれ以下の密度で、5000分子/細胞もしくはそれ以下の密度で、または1000分子/細胞もしくはそれ以下の密度で発現する細胞において、結合力および親和性および/またはエフェクター機能が賦与されているか、または増大されている。本発明の分子は、標的細胞集団では標的抗原が低レベルで発現される亜集団において、癌のような疾患または障害を治療、予防または管理するのに特に利用される。
【0240】
本発明の分子はまた、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患のような疾患を治療または予防するための当技術分野で公知の他の治療薬と組み合わせて、有利に使用することもできる。特定の実施形態では、本発明の分子を、例えば該分子と相互作用して免疫応答を高めるエフェクター細胞の数または活性を増加させるのに役立つ、造血性増殖因子(例えば、IL-2、IL-3およびIL-7など)、リンホカイン、またはモノクローナルもしくはキメラ抗体と併用してもよい。本発明の分子はまた、疾患、障害、または感染を治療するために用いる1種以上の薬物、例えば抗癌剤、抗炎症剤または抗ウイルス剤と組み合わせて有利に利用することもでき、これらは、例えば、以下のセクション5.7に詳述される。
【0241】
5.6.1 癌
本発明は、被験者に治療上有効な量の、複数のエピトープ結合ドメインを含む1種以上の分子を投与することを含む、被験者の癌を治療または予防するための方法および組成物を包含する。いくつかの実施形態において、本発明は、FcγR多型を有する被験者(例えば、FcγRIIIA-158VまたはFcγRIIIA-158F対立遺伝子についてホモ接合性の被験者)の癌を治療または予防するための方法および組成物を包含する。いくつかの実施形態において、本発明は、FcγRIIIA(158F)と免疫特異的に結合する、ダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを工学的に操作することを包含する。他の実施形態では、本発明は、FcγRIIIA(158V)と免疫特異的に結合する、ダイアボディ分子の少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを工学的に操作することを包含する。
【0242】
標準的なモノクローナル抗体療法の効力は、被験者のFcγR多型に依存する(Cartonら、2002 Blood, 99: 754-8;Wengら、2003 J Clin Oncol. 21(21): 3940-7;この両者の全体を参照として本明細書に組み入れる)。これらの受容体はエフェクター細胞の表面上に発現され、ADCCを仲介する。低親和性の活性化受容体の高親和性対立遺伝子は、ADCCを仲介するエフェクター細胞の能力を改善する。Fc-FcγR相互作用に頼ってエフェクター機能を果たすのとは対照的に、本発明の方法は、低親和性の活性化受容体を免疫特異的に認識するように分子を操作して、該分子を特定の多型用に設計することを包含する。これとは別に、またはこれに加えて、本発明の分子はエフェクター細胞上のFcγRに対して(野生型Fcドメインと比べて)増大した親和性を示す変異型Fcドメインを含むように操作してもよい。本発明の操作された分子は、患者についてそのFcγR多型にかかわらず、よりよい免疫療法試薬を提供する。
【0243】
本発明に従って作製されたダイアボディ分子は、培養細胞系または患者由来のPMBC細胞を用いたADCCによって試験して、ADCCを増大させるFc変異体の能力を判定する。本明細書に開示した方法を使用して、標準的ADCCを実施する。Ficoll-Paque勾配(Pharmacia)を使用して、リンパ球を末梢血から回収する。標的細胞(すなわち、培養細胞系または患者由来の細胞)にユーロピウム(PerkinElmer)を負荷し、エフェクターとともに37℃で4時間インキュベートする。蛍光プレートリーダー(Wallac)を使用して、放出されたユーロピウムを検出する。得られたADCCデータは、NK細胞介在細胞傷害を誘発する本発明の分子の効力を示し、どの分子が患者サンプルおよびエルトリエートした(elutriated)単球の両方を用いて試験できるかを立証する。その後、ADCC活性を誘発させるのに最大の能力を示すダイアボディ分子を、患者由来のPBMCを用いたADCCアッセイで試験する。健康なドナー由来のPBMCがエフェクター細胞として用られる。
【0244】
したがって本発明は、癌抗原を免疫特異的に認識するダイアボディ分子を作製することによって、癌抗原により特徴付けられる癌を予防または治療する方法を提供するが、該ダイアボディ分子はそれ自体が細胞傷害性(アポトーシスまたは増殖性シグナルのダウンレギュレーションを増大させる細胞表面受容体の架橋による)であり、かつ/または本発明に従ってFcドメインを含み、かつ/または1以上のエフェクター機能(例えば、ADCC、食作用)を仲介するように作製される。本発明に従って作製されたダイアボディは、細胞傷害活性(例えば、増大した腫瘍細胞殺傷および/または増大したADCC活性もしくはCDC活性)をもつので、癌の予防または治療に有用である。
【0245】
癌抗原を伴う癌は、癌抗原に結合しかつ細胞傷害性であり、かつ/または本発明の方法に従って操作したことにより増大したエフェクター機能を示すダイアボディの投与によって治療または予防することができる。例えば、限定するわけではないが、以下の癌抗原を伴う癌を本発明の方法および組成物によって治療または予防することができる:KS 1/4 汎癌腫抗原(Perez and Walker, 1990, J. Immunol. 142: 3662-3667;Bumal, 1988, Hybridoma 7(4): 407-415)、卵巣癌抗原(CA125)(Yuら、1991, Cancer Res. 51(2): 468-475)、前立腺酸性ホスフェート(Tailorら、1990, Nucl. Acids Res. 18(16): 4928)、前立腺特異的抗原(Henttu and Vihko, 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 160(2):903-910;Israeliら、1993, Cancer Res. 53 :227-230)、黒色腫関連抗原p97(Estinら、1989, J. Natl. Cancer Instit. 81(6): 445-446)、黒色腫抗原gp75(Vijayasardahlら、1990, J. Exp. Med. 171(4): 1375-1380)、高分子量黒色腫抗原(HMW-MAA)(Nataliら、1987, Cancer 59: 55-63;Mittelmanら、1990, J. Clin. Invest. 86: 2136-2144)、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)(Foonら、1994, Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 13: 294)、多形性上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪小球抗原、結直腸腫瘍関連抗原(例えばCEA、TAG-72(Yokataら、1992, Cancer Res. 52: 3402-3408)、C017-lA(Ragnhammarら、1993, Int. J.Cancer 53: 751-758);GICA 19-9(Herlynら、1982, J. Clin. Immunol. 2: 135)、CTA-1およびLEA)、バーキットリンパ腫抗原-38.13,CD19(Ghetieら、1994, Blood 83: 1329-1336)、ヒトB-リンパ腫抗原-CD20(Reffら、1994, Blood 83: 435-445)、CD33 (Sgourosら、1993, J. Nucl. Med. 34: 422-430)、黒色腫特異的抗原(例えばガングリオシドGD2(Salehら、1993, J. Immunol., 151,3390-3398)、ガングリオシドGD3(Shitaraら、1993, Cancer Immunol. Immunother. 36: 373-380)、ガングリオシドGM2(Livingstonら、1994, J. Clin. Oncol. 12: 1036-1044)、ガングリオシドGM3(Hoonら、1993, Cancer Res. 53: 5244-5250))、腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA)(例えばDNA腫瘍ウイルスのT抗原およびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を始めとするウイルス誘発腫瘍抗原など)、腫瘍胎児抗原-アルファフェトプロテイン(例えば結腸のCEA)、膀胱腫瘍胎児抗原(Hellstromら、1985, Cancer. Res. 45: 2210-2188)、分化抗原(例えばヒト肺癌抗原L6、L20(Hellstromら、1986, Cancer Res. 46: 3917- 3923))、線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原-Gp37(Bhattacharya-Chatterjeeら、1988, J of Immun. 141: 1398-1403)、新生糖タンパク質、スフィンゴリピド、乳癌抗原(例えばEGFR(上皮成長因子受容体))、HER2抗原(pl85HER2)、多形上皮ムチン(PEM)(Hilkensら、1992, Trends in Bio. Chem. Sci. 17: 359)、悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1 (Bernhardら、1989, Science 245: 301-304)、分化抗原(Feizi, 1985, Nature 314: 53-57)(例えば胎児赤血球および初期内胚葉中のI抗原)、胃腺癌中のI(Ma)、乳房上皮中のM18およびM39、骨髄細胞中のSSEA-1、結直腸癌中のVEP8、VEP9、Myl、VIM-D5およびD156-22、TRA-1-85(血液型H)、結腸腺癌中のC14、肺腺癌中のF3、胃癌中のAH6、胚性癌細胞中のYハプテンであるLeY、TL5(血液型A)、A431細胞中のEGF受容体、膵癌中のElシリーズ(血液型B)、胚性癌細胞中のFC10.2、胃腺癌抗原、腺癌中のCO-514 (血液型Lea)、腺癌中のNS-10、CO-43(血液型Leb)、G49、EGF受容体、結腸腺癌中のMH2(血液型ALeb/Ley)、結腸癌、胃癌ムチン中の19.9、骨髄細胞中のT5A7、黒色腫中のR24、胚性癌細胞中の4.2、GD3、Dl.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、およびMl:22:25:8、ならびに4〜8細胞胚中のSSEA-3およびSSEA-4。別の実施形態では、抗原は皮膚T細胞リンパ腫からのT細胞受容体由来ペプチドである(Edelson, 1998, The Cancer Journal 4: 62参照)。
【0246】
本発明の方法および組成物によって治療または予防することができる癌およびこれに関連する疾患には、限定するわけではないが、以下が含まれる:白血病(限定するものではないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血球性白血病、および脊髄形成異常症候群など)、慢性白血病(限定するわけではないが、慢性骨髄性(顆粒球)白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞白血病など));真性赤血球増加症;リンパ腫(限定するわけではないが、ホジキン病、非ホジキン病など);多発骨髄腫(限定するわけではないが、非定型的多発骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫など);ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;特徴未確定の単クローングロブリン血症;良性単クローングロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫(限定するわけではないが、骨部肉腫, 骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管腫 (血管肉腫)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫など);脳腫瘍(限定するわけではないが、グリオーマ、星状細胞腫、脳幹グリオーマ、上衣細胞腫、希突起グリオーマ、非グリア腫、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽腫、初発脳リンパ腫など);乳癌(限定するわけではないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、管内癌、髄様乳癌、粘液乳癌、管状乳癌、乳頭癌、ページェット病、および炎症性乳癌など);副腎癌、(限定するわけではないが、クロム親和性細胞腫および副腎皮質癌など);甲状腺癌(限定するわけではないが、乳頭性もしくは小胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌および未分化甲状腺癌など);膵癌、(限定するわけではないが、膵島細胞腫、ガトリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドもしくは膵島細胞腫瘍など);下垂体癌(限定するわけではないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、末端肥大症、および尿崩症など);眼の癌(限定するわけではないが、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫などの眼部黒色腫、および網膜芽腫など);膣癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫など);外陰部癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびページェット病など);子宮頚部癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌、および腺癌など);子宮癌(限定するわけではないが、子宮内膜癌および子宮肉腫など);卵巣癌(限定するわけではないが、卵巣上皮癌、境界性腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質腫瘍など);食道癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌など);胃癌(限定するわけではないが、腺癌、菌状(ポリープ状)、潰瘍性、表在性、拡散性、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫など);結腸癌;直腸癌;肝癌(限定するわけではないが、肝細胞癌および肝芽腫など);胆嚢癌(限定するわけではないが、腺癌など);胆管癌(限定するわけではないが、乳頭様、結節性、および拡散性など);肺癌(限定するわけではないが、非小細胞肺癌、扁平上皮癌(表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌など);精巣癌(限定するわけではないが、胚腫瘍、精上皮腫、未分化性、古典的(典型的)、精子細胞、非精上皮腫、胎児性癌、奇形腫、絨毛癌(卵黄のう腫瘍)など);前立腺癌(限定するわけではないが、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫など);陰茎癌;口腔癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌など);基底癌;唾液腺癌(限定するわけではないが、腺癌、粘膜表皮癌、および腺様嚢胞癌など);咽頭癌(限定するわけではないが、扁平上皮癌、および疣状癌など);皮膚癌(限定するわけではないが、基底細胞癌、扁平上皮癌および黒色腫、表在性黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端性黒子性黒色腫など);腎癌(限定するわけではないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行性細胞癌(腎骨盤および/または子宮));ウィルムス腫瘍;膀胱癌(限定するわけではないが、移行性細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫など)。さらに、癌は以下を含む:粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌および乳頭腺癌(こうした疾患の総説については、以下を参照されたい:Fislunanら、1985, Medicine, 第2版, J. B. Lippincott Co., Philadelphia およびMurphyら、1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A.,Inc., United States of America)。
【0247】
したがって、本発明の方法および組成物は、限定するわけではないが、以下を含む多様な癌またはその他の異常増殖性疾患の治療または予防においても有用である:癌(膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、前立腺、子宮頚部、甲状腺および皮膚の癌を含む);扁平上皮癌など;リンパ造血系腫瘍、例えば白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など;骨髄造血系腫瘍、例えば急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病など;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫および横紋筋肉腫など;その他の腫瘍、例えば黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽腫およびグリオーマなど;中枢および末梢神経系の腫瘍、例えば星状細胞腫、神経芽腫、グリオーマ、および神経鞘腫など;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫など;ならびにその他の腫瘍、例えば黒色腫、色素性乾皮症(、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺小胞癌および奇形癌等。アポトーシスの異常に起因する癌も、本発明の方法および組成物によって治療しうると想定される。こうした癌として、限定するわけではないが以下が含まれる:小胞腫、p53突然変異を伴う癌、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに家族性腺腫様ポリープ症および脊髄形成異常症候群などの前癌性病変。特定の実施形態では、卵巣、膀胱、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓または子宮において、悪性疾患もしくは増殖異常変化(異形成および形成不全等)、または過剰増殖性疾患を、本発明の方法および組成物によって治療または予防する。別の特定の実施形態では、肉腫、黒色腫、または白血病を、本発明の方法および組成物によって治療または予防する。
【0248】
特定の実施形態では、本発明の分子(例えば、複数のエピトープ結合ドメイン、および任意にFcドメインまたはその一部を含むダイアボディ)は、癌細胞の増殖を、本発明の該分子の不在下での癌細胞の増殖と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、または少なくとも10%、抑制するかまたは減少させる。
【0249】
特定の実施形態では、本発明の分子(例えば、複数のエピトープ結合ドメイン、および任意にFcドメインまたはその一部を含むダイアボディ)は、親分子よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%多く、細胞を殺傷するか、癌細胞の増殖を抑制または軽減する。
【0250】
5.6.2 自己免疫疾患および炎症性疾患
いくつかの実施形態において、本発明の分子は、本発明の方法に従って操作された、FcγRIIBに特異的なエピトープ結合ドメインおよび/または変異型Fcドメイン(またはその一部)を含み、該Fcドメインが野生型Fcドメインと比べてより大きなFcγRIIBに対する親和性、および低下したFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAに対する親和性を示す。そのような結合特性を有する本発明の分子は、免疫応答の調節、例えば自己免疫疾患または炎症性疾患に関連する免疫応答の抑制、において有用である。いずれの作用機構にも拘束されることを意図しないが、FcγRIIBに対する親和性を有する、および/または増大したFcγRIIBに対する親和性と低下したFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAに対する親和性を有するFcドメインを含む、本発明の分子は、FcγRに対する活性化応答を弱め、かつ細胞応答性の抑制をもたらし、したがって自己免疫疾患の治療および/または予防において治療効力を有すると考えられる。
【0251】
本発明はまた、被験者における、炎症性障害に関連する1以上の症状を予防し、治療し、または管理する方法を提供し、該方法は、1以上の抗炎症薬の、治療上または予防上有効な量を被験者に投与することをさらに含む。本発明はまた、自己免疫疾患に関連する1以上の症状を予防し、治療し、または管理する方法を提供し、該方法は、1以上の免疫調節薬の、治療上または予防上有効な量を被験者に投与することをさらに含む。セクション5.7は、抗炎症薬および免疫調節薬の非限定的な例を掲げる。
【0252】
本発明の分子を投与することにより治療できる自己免疫障害の例は、限定されるものでないが、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎および睾丸炎、自己免疫血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎(celiac sprue-dermatitis)、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素病、クローン病、円板状狼蒼、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴズ病、ギヤン-バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、I型または免疫を介する糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎脈管炎のような血管炎、白斑、およびヴェーゲナー肉芽腫症を含む。炎症性障害の例は、限定されるものでないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー障害、敗血症ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性的なウイルスまたは細菌感染から生じる慢性炎症を含む。本明細書のセクション2.2.2に記載の通り、いくつかの自己免疫障害は炎症性障害と関連している。このように、自己免疫障害と考えられる障害と炎症性障害と考えられる障害との間には重複がある。従って、いくつかの自己免疫障害は炎症性障害としても特徴付けることができる。本発明の方法に従って予防、治療または管理することができる炎症性障害の例としては、限定されるものでないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー障害、敗血症ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性的なウイルスまたは細菌感染から生じる慢性炎症が挙げられる。
【0253】
FcγRIIBに特異的な少なくとも1つのエピトープ結合ドメインおよび/または増大したFcγRIIB親和性および低下したFcγRIIIA親和性を有する変異型Fcドメインを含む本発明の分子はさらに、炎症性障害のある動物(特に哺乳動物)が被る炎症を軽減するために使用することもできる。特定の実施形態では、本発明の分子は動物の炎症を、前記分子を投与されてない動物の炎症と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%,または少なくとも10%軽減する。
【0254】
FcγRIIBに特異的な少なくとも1つのエピトープ結合ドメインおよび/または増大したFcγRIIB親和性および低下したFcγRIIIA親和性を有する変異型Fcドメインを含む本発明の分子はさらに、移植の拒絶反応を防止するために用いることもできる。
【0255】
5.6.3 感染性疾患
本発明はまた、被験者における感染症の治療または予防の方法を包含し、該方法は、感染症と関連した感染性病原体に特異的な少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを含む、1種以上の本発明の分子の治療上または予防上有効な量を投与することを含む。特定の実施形態において、本発明の分子は感染性病原体に対して毒性であり、該分子の不在下での免疫応答と比べて、該病原体に対する免疫応答を増強するか、または該病原体に対するエフェクター機能を増強する。本発明の分子によって治療または予防し得る感染症は、限定するものではないが、ウイルス、細菌、真菌、原虫、およびウイルスを含む感染性病原体により引き起こされる。
【0256】
本発明の方法との関連で、本発明の分子を用いて治療または予防し得るウイルス性疾患は、限定するものでないが、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルス(HSV-I)、II型単純ヘルペスウイルス(HSV-II)、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、天然痘ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、I型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-I)、II型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-II)、およびウイルス性髄膜炎、脳炎、デング熱または天然痘のようなウイルス性疾患の病原体により引き起こされるものを含む。
【0257】
本発明の方法との関連で、本発明の分子を用いて治療または予防し得る細菌性疾患は、限定するものでないが、マイコバクテリア、リケッチア、マイコプラズマ、ナイセリア、肺炎球菌(S. pneumonia)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)(ライム病)、炭疽菌(炭疽病)、破傷風菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、マイコバクテリウム、破傷風菌、百日咳菌、コレラ菌、ペスト菌、ジフテリア菌、クラミジア、黄色ブドウ球菌(S. aureus)およびレジオネラ菌を含む細菌により引き起こされるものを含む。
【0258】
本発明の方法との関連で、本発明の分子を用いて治療または予防し得る原虫性疾患は、限定するものでないが、リーシュマニア、コクシジウム(kokzidioa)、トリパノソーマまたはマラリア原虫を含む原虫により引き起こされる。
【0259】
本発明の方法との関連で、本発明の分子を用いて治療または予防し得る寄生虫性疾患は、限定するものでないが、クラミジアおよびリケッチアを含む寄生虫により引き起こされる。
【0260】
本発明の1つの態様によれば、感染性病原体に特異的な少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを含む本発明の分子は、該病原体(例えば病原性タンパク質)に対する抗体エフェクター機能を示す。感染性病原体の例として、限定するものではないが、細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、腸球菌(Enterococcus faecials)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、スタフィロコッカス・ビリダンス(Staphylococcus viridans)およびシュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、病原体(例えば、Bリンパ球向性パポバウイルス(LPV);ボルダテラ・ペルツッシス(Bordatella pertussis);ボルナ病ウイルス(BDV);ウシコロナウイルス;脈絡髄膜炎ウイルス;デング熱ウイルス;ウイルス、大腸菌;エボラ;エコーウイルス1;エコーウイルス11(EV);エンドトキシン(LPS);腸内細菌;腸内オーファンウイルス;腸内ウイルス;ネコ白血病ウイルス;手足口病ウイルス;テナガザル白血病ウイルス(GALV);グラム陰性細菌;ヘリコバクター・ピロリ(Heliocacter pylori);B型肝炎ウイルス(HBV);単純ヘルペスウイルス;HIV-1;ヒトサイトメガロウイルス;ヒトコロナウイルス;インフルエンザA、BおよびC;レジオネラ菌;リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania mexicana);リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);はしかウイルス;髄膜炎菌;麻疹ウイルス;マウス肝炎ウイルス;マウス白血病ウイルス;マウスガンマヘルペスウイルス;マウスレトロウイルス;マウスコロナウイルス;マウス肝炎ウイルス;ミコバクテリウム・アビウムM(Mycobacterium avium-M);リン菌(Neisseria gonorrhoeae);ニューキャッスル病ウイルス;パーボウイルスB19;熱帯熱マラリア原虫;ポックスウイルス;シュードモナス;ロタウイルス;サルモネラ・チフィムリウム(Samonella typhiurium);赤痢菌;連鎖球菌;T-細胞リンパ球ウイルス1;ワクシニアウイルス)が挙げられる。
【0261】
5.6.4 解毒
本発明はまた、毒素(例えば、毒性の薬物分子)にさらされた被験者の解毒方法を包含し、該方法は、毒性の薬物分子に特異的な少なくとも1つのエピトープ結合ドメインを含む1種以上の本発明の分子の治療上または予防上有効な量を投与することを含む。特定の実施形態において、本発明の分子の毒素への結合は該毒素の有害な生理学的作用を軽減または排除する。さらに他の実施形態では、本発明のダイアボディの毒素への結合は、該ダイアボディの不在下での毒素の除去、分解もしくは中和と比べて、毒素の除去、分解もしくは中和を増大または増強する。本発明の方法に従う免疫毒素療法は、ジゴキシン、PCP、コカイン、コルヒチン、三環式抗うつ薬を含むがこれらに限らない薬物の過剰投与または該薬物への曝露を治療するために使用することができる。
【0262】
5.7 併用療法
本発明はさらに、限定するわけではないが、現行の標準的および実験的化学療法、ホルモン療法、生物学的療法、免疫療法、放射線療法または外科手術を含む、癌、自己免疫疾患、感染症、または中毒の治療または予防について当業者に知られたその他の療法と併用して、本発明の分子を投与することを包含する。いくつかの実施形態では、本発明の分子を、治療上または予防上有効な量の1種以上の薬剤、治療用抗体、または癌、自己免疫疾患、感染症、もしくは中毒の治療および/または予防について当業者に知られた他の薬剤と併用して、投与することができる。
【0263】
特定の実施形態では、1種以上の本発明の分子を、癌の治療に有用なその他の1種以上の治療薬と同時に、哺乳動物、好ましくはヒトに投与する。「同時に」なる用語は、予防薬または治療薬の正確な同時投与に限定するものではなく、むしろ本発明の分子とその他の薬剤を哺乳動物に連続的かつ一定の時間間隔以内に投与して、本発明の分子がその他の薬剤と共に作用して、これらを別々に投与した場合よりも増大した利益を提供するようにしたものを意味する。例えば、予防または治療用(例えば、化学療法、放射線療法、ホルモン療法または生物学的療法)薬のそれぞれを、同時に、または任意の順序で連続的に、異なる時点で投与することができる。しかし、同時に投与しない場合は、所望の治療または予防効果が提供されるように、時間的に十分近接させて投与すべきである。各治療薬は、任意の適切な形態で、かつ任意の好適な経路で、別々に投与することができる。種々の実施形態では、予防薬または治療薬を以下のように投与する:1時間未満の間隔、約1時間間隔、約1時間〜約2時間間隔、約2時間〜約3時間間隔、約3時間〜約4時間間隔、約4時間〜約5時間間隔、約5時間〜約6時間間隔、約6時間〜約7時間間隔、約7時間〜約8時間間隔、約8時間〜約9時間間隔、約9時間〜約10時間間隔、約10時間〜約11時間間隔、約11時間〜約12時間間隔、24時間間隔以下または48時間間隔以下。好ましい実施形態では、2種以上の成分を患者の同一来診時に投与する。
【0264】
別の実施形態では、予防薬または治療薬を、約2〜4日間隔、約4〜6日間隔、約1週間間隔、約1〜2週間間隔、2週間以上の間隔で、投与する。好ましい実施形態では、予防薬または治療薬を、両方の薬剤が依然活性である時間枠内に、投与する。当業者ならば、投与する薬剤の半減期を測定することによって、こうした時間を決定することができるだろう。
【0265】
特定の実施形態では、本発明の予防薬または治療薬を、被験者に周期的に投与する。周期的治療には、第1薬剤をある期間投与した後、第2薬剤および/または第3薬剤をある期間投与し、この連続投与を反復することを含む。周期的治療は、1種以上の療法に対する耐性の進行を減少させ、療法の1つの副作用を回避するかまたは減少させ、かつ/または治療の効力を向上させることができる。
【0266】
ある実施形態では、予防薬または治療薬を、約3週間未満の周期で、約2週間毎に1回、約10日毎に1回、または約1週間毎に1回、投与する。1周期には、周期毎に約90分間、周期毎に約1時間、周期毎に約45分間かけて注入することによる、治療薬または予防薬の投与が含まれる。各周期は少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止期を含む。投与する周期の回数は約1〜約12周期、より典型的には約2〜約10周期、より典型的には約2〜約8周期である。
【0267】
さらに別の実施形態では、本発明の治療および予防薬を、メトロノーム的投薬方式で、長期の休止期間を置かない連続注入または頻繁投与のいずれかによって投与する。こうしたメトロノーム的投与には、休止期間のない、一定の間隔での投薬が含まれうる。典型的には、治療薬、特に細胞傷害薬を低用量で使用する。こうした投薬方式には、長期間の比較的低用量の連日投与が含まれる。好ましい実施形態では、低用量の使用は、毒性副作用を最少にし、休止期間を排除することができる。特定の実施形態では、治療および予防薬は、以下の範囲で、連日低用量投与または連続注入によって送達される:約24時間から約2日まで、約1週間まで、約2週間まで、約3週間まで、約1ヶ月まで、約2ヶ月まで、約3ヶ月まで、約4ヶ月まで、約5ヶ月まで、約6ヶ月まで。こうした投薬方式のスケジュールは腫瘍専門家が最適化することができる。
【0268】
別の実施形態では、複数の治療コースを哺乳動物に同時に投与する。すなわち、個別の用量の治療薬を別々に投与するけれども、本発明の分子が別の薬剤と協同して作用できるような時間間隔内に投与する。例えば、ある成分を1週間に1回投与し、それと組み合わせて、別の成分を2週間毎に1回、または3週間毎に1回投与してもよい。言い換えれば、治療薬の投薬レジメンは、治療薬が同時にまたは患者の同一来診時に投与されないときでさえ、同時に実施される。
【0269】
他の予防および/または治療薬と併用する場合、本発明の分子と他の予防および/または治療薬は相加的に、より好ましくは相乗的に、作用することができる。1つの実施形態では、本発明の分子を1以上の治療薬とともに同一の医薬組成物中で同時に投与する。別の実施形態では、本発明の分子を1以上の治療薬とともに別々の医薬組成物として同時に投与する。さらに別の実施形態では、本発明の分子を、他の予防または治療薬の投与前、またはその後に投与する。本発明は、同一または異なる投与経路、例えば経口および非経口で、本発明の分子を他の予防または治療薬と併用して投与することを想定している。特定の実施形態では、本発明の分子を、限定するわけではないが、毒性などの有害副作用をもたらす可能性がある他の予防または治療薬と同時に投与する場合、その予防または治療薬は、有害副作用が誘発される閾値より低い用量で投与することが有利である。
【0270】
本明細書で提供する投薬量および投与頻度は、治療上有効なおよび予防上有効なという用語により包含されている。投薬量および頻度はさらに、典型的には各患者に特有な要因に従って、投与する特定の治療または予防薬、癌の重篤度およびタイプ、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、応答性、および過去の病歴に応じて、変更されよう。好適な治療計画は、こうした要因を考慮し、例えば文献に報告され、また以下で推奨されている投薬量に従うことによって、当業者が選択し得るものである:Physician's Desk Reference (第56版, 2002)。
【0271】
5.7.1 抗癌剤
特定の実施形態では、本発明の方法は、1以上の本発明の分子を、癌の治療および/または予防のために使用される1以上の治療薬とともに投与することを包含する。1つの実施形態では、血管新生阻害薬を本発明の分子と併用して投与することができる。本発明の方法および組成物中で使用することができる血管新生阻害薬としては、限定するわけではないが以下が含まれる:アンギオスタチン(Angiostatin)(プラスミノーゲン断片);抗血管新生抗トロンビンIII;アンギオザイム(Angiozyme);ABT-627;Bay 12-9566;ベネフィン(Benefin);ベバシズマブ(Bevacizumab);BMS- 275291;軟骨由来阻害薬(CDI);CAI;CD59 補体断片;CEP-7055;Col 3;コンブレタスタチン(Combretastatin)A-4;エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片);フィブロネクチン断片;Gro-β;ハロフギノン(Halofuginone);ヘパリナーゼ類;ヘパリンヘキササッカライド断片;HMV833;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);IM-862;インターフェロンα/β/γ;インターフェロン誘導性タンパク質 (IP-10);インターロイキン-12;クリングル(Kringle)5(プラスミノーゲン断片);マリマスタット(Marimastat);メタロプロテイナーゼ阻害薬(TIMPs);2-メトキシエストラジオール;MMI 270(CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット(Neovastat);NM-3;パンゼム(Panzem);PI-88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;血小板因子-4(PF4);プリノマスタット(Prinomastat);プロラクチン16kDa断片;プロリフェリン(Proliferin)関連タンパク質(PRP);PTK787/ZK 222594;レチノイド;ソリマスタット(Solimastat);スクアラミン(Squalamine);SS 3304;SU 5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチゾール-S;テトラチオモリブダート;サリドマイド;トロンボスポンジン-1(TSP-1);TNP-470;トランスフォーミング増殖因子β(TGF-b);バスキュロスタチン(Vasculostatin);バソスタチン(Vasostatin)(カルレチキュリン断片);ZD6126;ZD 6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬(FTI);およびビスホスホナート類。
【0272】
本発明の医薬組成物および剤形ならびにキットを含む、本発明の各種の実施形態において本発明の分子と併用して使用することができる抗癌薬としては、限定するわけではないが以下が含まれる:アシビシン(acivicin);アクラルビシン(aclarubicin);塩酸アコダゾール(acodazole);アクロニン(acronine);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);アルトレタミン(altretamine);アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン(ametantrone);アミノグルテチミド(aminoglutethimide);アンサクリン(amsacrine);アナストロゾール(anastrozole);アントラマイシン(anthramycin);アスパラギナーゼ;アスペルリン(asperlin);アザシチジン(azacitidine);アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット(batimastat);ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド(bicalutamide);塩酸ビサントレン(bisantrene);ジメシル酸ビスナフィド(bisnafide);ビゼレシン(bizelesin);硫酸ブレオマイシン(bleomycin);ナトリウムブレキナル(brequinar);ブロピリミン(bropirimine);ブスルファン(busulfan);カクチノマイシン(cactinomycin);カルステロン(calusterone);カラセミド(caracemide);カルベチメル(carbetimer);カルボプラチン(carboplatin);カルムスチン(carmustine) ;塩酸カルビシン(carubicin);カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴル(cedefingol);クロランブシル(chlorambucil);シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン(cisplatin);クラドリビン(cladribine);メシル酸クリスナトル(crisnatol);シクロホスファミド;シタラビン(cytarabine);ダカルバジン(dacarbazine);ダクチノマイシン(dactinomycin);塩酸ダウノルビシン(daunorubicin);デシタビン(decitabine);デキソルマプラチン(dexormaplatin);デザグアニン(dezaguanine);メシル酸デザグアニン(dezaguanine);ジアジクオン(diaziquone);ドセタキセル(docetaxel);ドキソルビシン(doxorubicin);塩酸ドキソルビシン(doxorubicin);ドロロキシフェン(droloxifene);クエン酸ドロロキシフェン(droloxifene);プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone);ジュアゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート(edatrexate);塩酸エフロルニチン(eflornithine);エルサミトルシン(elsamitrucin);エンドプラチン(enloplatin);エンプロマート(enpromate);エピプロピジン(epipropidine);塩酸エピルビシン(epirubicin);エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin);エストラムスチン(estramustine);リン酸エストラムスチン(estramustine)ナトリウム;エタニダゾール(etanidazole);エトポシド(etoposide);リン酸エトポシド(etoposide);エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フロキシウリジン(floxuridine);リン酸フルダラビン(fludarabine);フルオロウラシル;フルロシタビン(flurocitabine);フォスキドン(fosquidone);ナトリウムフォストリエシン(fostriecin);ゲムシタビン(gemcitabine);塩酸ゲムシタビン(gemcitabine);ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン(idarubicin);イフォスファミド(ifosfamide);イルモフォシン(ilmofosine);インターロイキンII(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-nl;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン(iproplatin);塩酸イリノテカン(irinotecan);酢酸ランレオチド(lanreotide);レトロゾール(letrozole);酢酸ロイプロリド(leuprolide);塩酸リアロゾール(liarozole);ロメトレキソル(lometrexol)ナトリウム;ロムスチン(lomustine);塩酸ロソキサントロン(losoxantrone);マソプロコル(masoprocol);メイタンシン(maytansine);塩酸メクロレタミン(mechlorethamine);酢酸メゲストロル(megestrol);酢酸メレンゲストロル(melengestrol);メルファラン(melphalan);メノガリル(menogaril);メルカプトプリン ;メトトレキサート;ナトリウムメトトレキサート;メトプリン(metoprine);メツレデパ(meturedepa);ミチンドミド(mitindomide);ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン(mitocromin);ミトギリン(mitogillin);ミトマルシン(mitomalcin);マイトマイシン;ミトスペル(mitosper);ミトタン(mitotane);塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone);ミコフェノール酸(mycophenolic acid);ノコダゾール(nocodazole);ノガラマイシン(nogalamycin);オルマプラチン(ormaplatin);オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル(paclitaxel);ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン(pentamustine);硫酸ペプロマイシン(peplomycin);ペルホスファミド(perfosfamide);ピポブロマン(pipobroman);ピポスルファン(piposulfan);塩酸ピロキサントロン(piroxantrone);プリカマイシン(plicamycin);プロメスタン(plomestane);ポルフィマー(porfimer)ナトリウム;ポルフィロマイシン(porfiromycin);プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン(procarbazine);ピューロマイシン(puromycin);塩酸ピューロマイシン(puromycin);ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン(riboprine);ログレチミド(rogletimide);サフィンゴル(safingol);塩酸サフィンゴル(safingol);セムスチン(semustine);シントラゼン(simtrazene);ナトリウムスパルフォサート(sparfosate);スパルソマイシン(sparsomycin);塩酸スピロゲルマニウム(spirogermanium);スピロムスチン(spiromustine);スピロプラチン(spiroplatin);ストレプトニグリン(streptonigrin);ストレプトゾシン(streptozocin);スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テコガラン(tecogalan)ナトリウム;テガフル(tegafur);塩酸テロキサントロン(teloxantrone);テモポルフィン(temoporfin);テニポシド(teniposide);テロキシロン(teroxirone);テストラクトン(testolactone);チアミプリン(thiamiprine);チオグアニン(thioguanine);チオテパ(thiotepa);チアゾフリン(tiazofurin);チラパザミン(tirapazamine);クエン酸トレミフェン(toremifene);酢酸トレストロン(trestolone);リン酸トリシリビン(triciribine);トリメトレキサート(trimetrexate);グルクロン酸トリメトレキサート(trimetrexate);トリプトレリン(triptorelin);塩酸ツブロゾール(tubulozole);ウラシルマスタード(uracil mustard);ウレデパ(uredepa);バプレオチド(vapreotide);ベルテポルフィン(verteporfin);硫酸ビンブラスチン(vinblastine);硫酸ビンクリスチン(vincristine);ビンデシン(vindesine);硫酸ビンデシン(vindesine);硫酸ビンエピジン(vinepidine);硫酸ビングリシナート(vinglycinate);硫酸ビンレウロシン(vinleurosine);酒石酸ビノレルビン(vinorelbine);硫酸ビンロシジン(vinrosidine);硫酸ビンゾリジン(vinzolidine);ボロゾール(vorozole);ゼニプラチン(zeniplatin);ジノスタチン(zinostatin);塩酸ゾルビシン(zorubicin)。その他の抗癌薬として、限定するわけではないが、以下が含まれる:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3 ;5-エチニルウラシル;アビラテロン(abiraterone);アクラルビシン(aclarubicin);アシルフルベン(acylfulvene);アデシペノル(adecypenol);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);ALL-TK拮抗薬;アルトレタミン;アンバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミフォスチン(amifostine);アミノレブリン酸;アンルビシン(amrubicin);アンサクリン(amsacrine);アナグレリド(anagrelide);アナストロゾール(anastrozole);アンドログラホリド(andrographolide);血管形成阻害薬;拮抗薬D;拮抗薬G;アンタレリクス(antarelix);抗背方化形態発生タンパク質-1 ;抗アンドロゲン前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィジコリン(aphidicolin);アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アシュラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン(atrimustine);アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン2 ;アキシナスタチン3 ;アザセトロン(azasetron);アザトキシン(azatoxin);アザチロシン(azatyrosine);バッカチンIII誘導体;バラノル(balanol);バチマスタット(batimastat);BCR/ABL拮抗薬;ベンゾクロリン類;ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);βラクタム誘導体;βアレチン(beta-alethine);βクラマイシン(betaclamycin)B;ベチュリン酸;bFGF阻害薬;ビカルタミド(bicalutamide);ビサントレン(bisantrene);ビサジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド(bisnafide);ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン(bizelesin);ブレフラート(breflate);ブロピリミン(bropirimine);ブドチタン(budotitane);ブチオニンスルホキシイミン(buthionine sulfoximine);カルシポトリオル(calcipotriol);カルホスチン(calphostin)C;カンプトテシン(camptothecin)誘導体;カナリポクス(canarypox)IL-2;カペシタビン(capecitabine);カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害薬;カルゼレシン(carzelesin);カゼインキナーゼ阻害薬(ICOS);カスタノスペルミン(castanospermine);セクロピン(cecropin)B;セトロレリクス(cetrorelix);クロルン(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト(cicaprost);cisポルフィリン;クラドリビン(cladribine);クロミフェン(clomifene)類似体;クロトリマゾール(clotrimazole);コリスマイシン(collismycin)A;コリスマイシンB;コンブレタスタチン(combretastatin)A4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン(conagenin);クランベシジン(crambescidin)816;クリスナトル(crisnatol);クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシン(curacin)A;シクロペンタアントラキノン類;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン(cypemycin);シタラビンオクホスファート(cytarabineocfosfate);細胞溶解因子;シトスタチン(cytostatin);ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン(decitabine);デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン(deslorelin);デキサメタゾン(dexamethasone);デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン(dexrazoxane);デクスベラパミル(dexverapamil);ジアジクオン(diaziquone);ジデミン(didemnin)B ;ジドクス(didox);ジエチルノルスペニン(diethylnorspennine);ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9- ;ジオキサマイシン(dioxamycin);ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine);ドセタキセル(docetaxel);ドコサノル(docosanol);ドラセトロン(dolasetron);ドキシフルリジン(doxifluridine);ドロロキシフェン(droloxifene);ドロナビノル(dronabinol);ジュオカルマイシン(duocarmycin)SA;エブセレン(ebselen);エコムスチン(ecomustine);エデルフォシン(edelfosine);エドレコロマブ(edrecolomab);エフロルニチン(eflornithine);エレメン(elemene);エミテフル(emitefur);エピルビシン(epirubicin);エプリステリド(epristeride);エストラムスチン(estramustine)類似体;エストロゲン作動薬;エストロゲン拮抗薬;エタニダゾール(etanidazole);リン酸エトポシド(etoposide);エキセメスタン(exemestane);ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フィルグラスチム(filgrastim);フィナステリド(finasteride);フラボピリドル(flavopiridol);フレゼラスチン(flezelastine);フルアステロン(fluasterone);フルダラビン(fludarabine) ;塩酸フルロダウノルニシン(fluorodaunorunicin);ホルフェニメクス(forfenimex);ホルメスタン(formestane);ホストリエシン(fostriecin);ホテムスチン(fotemustine);テキサフィリンガドリニウム(gadolinium texaphyrin);硝酸ガリウム;ガロシタビン(ga
locitabine);ガニレリクス(ganirelix);ゲラチナーゼ阻害薬;ゲムシタビン(gemcitabine);グルタチオン阻害薬;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン(heregulin);ヘキサメチレンビスアセトアミド;ハイペリシン(hypericin);イバンドロン酸;イダルビシン(idarubicin);イドキシフェン(idoxifene);イドラマントン(idramantone);イルモフォシン(ilmofosine);イロマスタット(ilomastat);イミダゾアクリドン類;イミキモド(imiquimod);免疫刺激ペプチド類;インスリン様成長因子-1受容体阻害薬;インターフェロン作動薬;インターフェロン類;インターロイキン類;イオベングアン(iobenguane);ヨードドキソルビシン(iododoxorubicin);イポメアノル(ipomeanol),4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン(irsogladine);イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン(itasetron);ジャスプラキノリド(jasplakinolide);カハラリド(kahalalide)F;3酢酸ラメラリン(lamellarin)-N;ランレオチド(lanreotide);レイナマイシン(leinamycin);レノグラスチム(lenograstim);硫酸レンチナン(lentinan);レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール(letrozole);白血病抑制因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン(leuprorelin);レバミソール(levamisole);リアロゾール(liarozole);線状ポリアミン類似体;親油性ジサッカライドペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン(lobaplatin);ロンブリシン(lombricine);ロメトレキソル(lometrexol);ロニダミン(lonidamine);ロソキサントロン(losoxantrone);ロバスタチン(lovastatin);ロキソリビン(loxoribine);ルルトテカン(lurtotecan);テキサフィリンルテチウム(lutetium texaphyrin);リソフィリン(lysofylline) ;溶解性ペプチド類;マイタンシン(maitansine);マンノスタチン(mannostatin)A;マリマスタット(marimastat);マソプロコル(masoprocol);マスピン(maspin);マトリリシン(matrilysin)阻害薬;マトリックス金属プロテイナーゼ阻害薬;メノガリル(menogaril);メルバロン(merbarone);メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ;メトクロプラミド(metoclopramide);MIF阻害薬;ミフェプリストン(mifepristone);ミルテホシン(miltefosine);ミリモスチム(mirimostim);ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトラクトル(mitolactol);マイトマイシン類似体;ミトナフィド(mitonafide);マイトトキシン線維芽成長因子-サポリン(saporin);ミトキサントロン(mitoxantrone);モファロテン(mofarotene);モルグラモスチム(molgramostim);モノクローナル抗体、ヒト絨毛ゴナドトロフィン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモル(mopidamol);多重薬剤耐性遺伝子阻害薬;多発性腫瘍抑制因子1ベースの治療;マスタード抗癌薬;マイカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン(myriaporone);N-アセチルジナリン(acetyldinaline);N-置換ベンズアミド類;ナファレリン(nafarelin);ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン(naloxone)+ペンタゾシン(pentazocine);ナパビン(napavin);ナフテルピン(naphterpin);ナルトグラスチム(nartograstim);ネダプラチン(nedaplatin);ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド(nilutamide);ニサマイシン(nisamycin);一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);06-ベンジルグアニン;オクトレオチド(octreotide);オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド類;オナプリストン(onapristone);オンダンセトロン(ondansetron);オンダンセトロン(ondansetron);オラシン(oracin);経口サイトカイン誘導薬;オルマプラチン(ormaplatin);オサテロン(osaterone);オキサリプラチン(oxaliplatin);オキサウノマイシン(oxaunomycin);パクリタキセル(paclitaxel);パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体類 ;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin);パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン(panomifene);パラバクチン(parabactin);パゼリプチン(pazelliptine);ぺグアスパルガーゼ(pegaspargase);ペルデシン(peldesine);ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン(pentostatin);ペントロゾール(pentrozole);パーフルブロン(perflubron);パーホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン(phenazinomycin);酢酸フェニル;リン酸塩阻害薬;ピシバニル(picibanil);塩酸ピロカルピン(pilocarpine);ピラルビシン(pirarubicin);ピリトレキシム(piritrexim);プラセチン(placetin)A;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害薬;白金複合体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマー(porfimer)ナトリウム;ポルフィロマイシン(porfiromycin);プレドニゾン(prednisone);プロピルbis-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害薬;タンパク質Aベースの免疫モジュレーター;タンパク質キナーゼC阻害薬;タンパク質キナーゼC阻害薬類、ミクロアルガル(microalgal);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害薬;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害薬;プルプリン類;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;raf拮抗薬;ラルチトレキセド(raltitrexed);ラモセトロン(ramosetron);rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;ras阻害薬;ras-GAP阻害薬;脱メチル化レテリプチン(retelliptine);レニウムRe186エチドロナート;リゾキシン(rhizoxin);リボザイム類;RIIレチナミド(retinamide);ログレチミド(rogletimide);ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド(romurtide);ロキニメクス(roquinimex);ルビギノン(rubiginone)Bl;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴル(safingol);サイントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトル(sarcophytol)A;サルグラモスチン(sargramostim);Sdi 1模倣体;セムスチン(semustine);セネセンス誘導阻害薬1;センスオリゴヌクレオチド類;シグナル導入阻害薬;シグナル導入モジュレーター;一本鎖抗原結合性タンパク質;シゾフィラン(sizofiran);ソブゾキサン(sobuzoxane);ボロカプト酸ナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロル(solverol);ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルホジン酸(sparfosic acid);スピカマイシンD;スピロムスチン(spiromustine);スプレノペンチン(splenopentin);スポンギスタチン(spongistatin)1;スクアラミン;幹細胞阻害薬;幹細胞分裂阻害薬;スチピアミド(stipiamide);ストロメリシン(stromelysin)阻害薬;スルフィノシン(sulfinosine);高作用性血管作用性腸内ペプチド拮抗薬;スラジスタ(suradista);スラミン(suramin);スウェインソニン(swainsonine);合成グリコサミンオグリカン;タリムスチン(tallimustine);タモキシフェンメチオジド(tamoxifen methiodide);タウロムスチン(tauromustine);タザロテン(tazarotene);テコガラン(tecogalan)ナトリウム;テガフル(tegafur);テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害薬;テモポルフィン(temoporfin);テモゾロミド(temozolomide);テニポシド(teniposide);テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン(tetrazomine);タリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン(thiocoraline);トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン(thymalfasin);チモポエチン(thymopoietin)受容体作動薬;チモトリナン(thymotrinan) ;甲状腺刺激ホルモン;チエニルエチオプルプリン;チラパザミン(tirapazamine);2塩化チタノセン;トプセンチン(topsentin);トレミフェン(toremifene);全能性幹細胞因子;翻訳阻害薬;トレチノイン(tretinoin);トリアセチルウリジン;トリシリビン(triciribine);トリメトレキサート;トリプトレリン(triptorelin);トロピセトロン(tropisetron);ツロステリド(turosteride);チロシンキナーゼ阻害薬;チルホスチン類;UBC阻害薬;ウベニメクス(ubenimex);尿生殖洞由来成長抑制因子;ウロキナーゼ受容体拮抗薬;バプレオチド(vapreotide);バリオリン(variolin)B;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療;ベラレソル(velaresol);ベラミン(veramine);ベルジン類;ベルテポルフィン(verteporfin);ビノレルビン(vinorelbine);ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン(vitaxin);ボロゾール(vorozole);ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン(zeniplatin);ジラスコルブ(zilascorb);およびジノスタチンスチマラマー(zinostatin stimalamer)。好ましいその他の抗癌薬は5-フルオロウラシルおよびロイコボリン(leucovorin)である。
【0273】
本発明の方法で使用することができる治療用抗体の例としては、限定するわけではないが、以下が含まれる:ZENAPAXS(登録商標)(daclizumab)(Roche Pharmaceuticals, Switzerland)(急性腎同種移植片拒絶反応の予防用の、免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体);PANOREXTM(マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体)(Glaxo Wellcome/Centocor);BEC2(マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体)(ImClone System);IMC-C225(キメラ抗EGFR IgG抗体)(Clone System);VITAXINTM(ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);Smart M195(ヒト化抗CD33 IgG抗体)(Protein Design Lab/Kanebo);LYMPHOCIDETM(ヒト化抗CD22IgG抗体)(Immunomedics);ICM3(ヒト化抗ICAM3抗体(ICOS Phann);IDEC-114(霊長類化抗CD80抗体)(IDECPharm/Mitsubishi);IDEC-131(ヒト化抗CD40L抗体)(IDEC/Eisai);IDEC-151(霊長類化抗CD4抗体)(IDEC);IDEC-152(霊長類化抗CD23抗体)(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3(ヒト化抗CD3 IgG)(Protein Design Lab);5G1.1(ヒト化抗補体因子5(C5)抗体)(Alexion Pharm);D2E7(ヒト化抗TNF-α抗体)(CAT/BASF);CDP870(ヒト化抗TNF-αFab断片)(Celltech);IDEC-151(霊長類化抗CD4 IgGl抗体)(IDECPharm/SmithKline Beecham);MDX-CD4(ヒト抗CD4 IgG抗体)(Medarex/Eisai/Genmab);CDP571(ヒト化抗TNF-αIgG4抗体)(Celltech);LDP-02(ヒト化抗α4β7抗体)(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4A(ヒト化抗CD4 IgG抗体)(Ortho Biotech);ANTOVATM(ヒト化抗CD40L IgG抗体)(Biogen);ANTEGRENTM(ヒト化抗 VLA-4 IgG抗体)(Elan);およびCAT-152(ヒト抗TGF-β2抗体)(Cambridge Ab Tech)。本発明に従って使用することができる治療用抗体のその他の例を表8に示す。
【表8】
【0274】
5.7.2 免疫調節薬および抗炎症薬
本発明は、本発明の分子を他の治療薬とともに投与することを含む、自己免疫疾患および炎症性疾患の治療方法を提供する。免疫調節薬の例としては、限定するものではないが、メトトレキセート、エンブレル(ENBREL)、レミケード(REMICADETM)、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、およびマクロライド抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin)、ブレキナル(brequinar)、マロノニトリルアミド(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体モジュレーター、およびサイトカイン受容体モジュレーターを含む。
【0275】
抗炎症薬は、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療において成功をおさめており、現在、このような疾患のための共通かつ標準の治療薬となっている。当業者に知られたいずれの抗炎症薬も本発明の方法に使用することができる。抗炎症薬の非限定的な例は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド系抗炎症薬、β作動薬、抗コリン作動薬、およびメチルキサンチンを含む。NSAIDの例は、限定するものではないが、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREXTM)、ジクロフェナク(VOLTARENTM)、エトドラク(LODINETM)、フェノプロフェン(NALFONTM)、インドメタシン(INDOCINTM)、ケトロラク(TORADOLTM)、オキサプロジン(DAYPROTM)、ナブメトン(RELAFENTM)、スリンダク(CLINORILTM)、トルメチン(TOLECTINTM)、ロフェコキシブ(VIOXXTM)、ナプロキセン(ALEVETM、NAPROSYNTM)、ケトプロフェン(ACTRONTM)およびナブメトン(RELAFENTM)を含む。このようなNSAIDはシクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1および/またはCOX-2)を阻害することにより機能する。ステロイド系抗炎症薬の例は、限定するものではないが、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRONTM)、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONETM)、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アザルフィジン、およびエイコサノイド、例えばプロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエンを含む。
【0276】
炎症性疾患の治療または予防のために本発明の分子と併用して使用することができる抗体の非限定的な例を表9に示し、また、自己免疫疾患の治療または予防のために使用することができる抗体の非限定的な例を表10に示す。
【表9】
【表10】
【0277】
5.7.3 感染症治療用の薬剤
いくつかの実施形態では、本発明の分子は、感染症の治療および/または予防のために、当業者に公知の1種以上のさらなる治療薬の治療上または予防上有効な量と組み合わせて投与することができる。本発明は、感染症の治療および/または予防のための当業者に公知の抗生物質と組み合わせた、本発明の分子の使用を想定している。本発明の分子と組み合わせて用いることができる抗生物質としては、限定するものではないが、マクロライド(例えばトブラマイシン(Tobi(登録商標))、セファロスポリン(例えばセファレキシン(Keflex(登録商標))、セフラジン(Velocef(登録商標))、セフロキシム(Ceftin(登録商標))、セフプロジル(Cefzil(登録商標))、セファクロール(Ceclor(登録商標))、セフィキシム(Suprax(登録商標))またはセファドロキシル(Duricef(登録商標)))、クラリスロマイシン(例えばクラリスロマイシン(Biaxin(登録商標))、エリスロマイシン(例えばエリスロマイシン(EMycin(登録商標))、ペニシリン(例えば、ペニシリンV(V-Cillin K(登録商標)またはPen Vee K(登録商標)))またはキノロン(例えばオフロキサシン(Floxin(登録商標))、シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))またはノルフロキサシン(Noroxin(登録商標)))、アミノ配糖体系抗生物質(例えばアプラマイシン、アルベカシン、バンバーマイシン(bambermycin)、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレネート、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、およびスペクチノマイシン)、アンフェニコール(amphenicol)系抗生物質(例えばアジダムフェニコール(azidamphenicol)、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、およびチアンフェニコール)、アンサマイシン系抗生物質(例えばリファマイド(riphamide)およびリファンピン)、カルバセフェム系(例えばロラカルベフ)、カルバペネム系(例えばビアペネムおよびイミペネム)、セファロスポリン系(例えばセファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン(cefazedone)、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、およびセフピロム)、セファマイシン系(例えばセフブペラゾン、セフメタゾール、およびセフミノクス)、モノバクタム系(例えばアズトレオナム、カルモナム、およびチゲモナム(tigemonam))、オキサセフェム系(例えばフロモキセフ、およびモキサラクタム)、ペニシリン系(例えばアムジノシリン(amdinocillin)、アムジノシリンピボキシル(amdinocillin pivoxil)、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナムシリン、ペネタメートヒドリオダイド(penethamate hydriodide)、ペニシリンo-ベネタミン、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン(penicillin V hydrabamine)、ペニメピシクリン(penimepicycline)、およびフェンシヒシリン(phencihicillin)カリウム)、リンコサミド系(例えばクリンダマイシン、およびリンコマイシン)、アンフォマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンジュラシジン、エンビオマイシン、テトラサイクリン系(例えばアピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、およびデメクロサイクリン)、2,4-ジアミノピリミジン系(例えばブロジモプリム(brodimoprim))ニトロフラン系(例えばフラルタドン、および塩化フラゾリウム(furazolium chloride))、キノロンおよびその類似体(例えばシノキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、およびグレパグロキサシン(grepagloxacin))、スルホンアミド系(例えばアセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルフアミド、ノプリルスルフアミド、フタリルスルフアセトアミド、スルフアクリソイジン(sulfachrysoidine)、およびスルファシチン(sulfacytine))、スルホン系(例えばジアチモスルホン(diathymosulfone)、グルコスルホンナトリウム、およびソラスルホン(solasulfone))、シクロセリン、ムピロシンおよびチュベリン(tuberin)を含む。
【0278】
特定の実施形態では、本発明の分子は、治療上または予防上有効な量の1種以上の抗真菌剤と組み合わせて投与することができる。本発明の分子と組み合わせて用いることができる抗真菌剤には、限定するものではないが、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イントラセカル(intrathecal)、フルシトシン、ミコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、ニスタチン、テルコナゾール、チオコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ハロプログリン(haloprogrin)、ナフチフィン、テルビナフィン、ウンデシレネート、およびグリセオフルビンが含まれる。
【0279】
いくつかの実施形態では、本発明の分子は、治療上または予防上有効な量の1種以上の抗ウイルス薬と組み合わせて投与することができる。本発明の分子と組み合わせて用いることができる有効な抗ウイルス薬には、限定するものではないが、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤およびヌクレオシド類似体が含まれる。抗ウイルス薬の例としては、限定するものではないが、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、およびリバビリン、並びにホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、αインターフェロン;アデフォビル、クレバジン(clevadine)、エンテカビル、プレコナリルが挙げられる。
【0280】
5.8 ワクチン療法
本発明は、本発明の組成物を用いて、抗原性または免疫原性物質に対する免疫応答を誘発することをさらに包含し、該物質としては、限定するものではないが、癌抗原および感染症抗原(これらの例は後述する)が含まれる。本発明のワクチン組成物は、1以上の抗原性または免疫原性物質(それに対する免疫応答が望まれる)を含み、該1以上の抗原性または免疫原性物質は、FcγRIIIAに対する増大した親和性を有する本発明の変異型抗体によりコートされる。本発明のワクチン組成物は、抗原性または免疫原性物質に対する免疫応答、好ましくは防御性免疫応答を引き起こすのに特に有効である。
【0281】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチン組成物中の抗原性または免疫原性物質は、ウイルス(それに対する免疫応答が望まれる)を含む。ウイルスは組換え体またはキメラでもよく、好ましくは弱毒化されている。組換え体、キメラ、および弱毒化ウイルスの産生は、当業者に公知の標準的な手法を用いて行うことができる。本発明は、本発明に従って製剤化される生組換えウイルスワクチンまたは不活化組換えウイルスワクチンを包含する。生ワクチンが好ましく、なぜなら宿主内での複製が、自然な感染において起こるのと同種かつ同程度の持続的な刺激をもたらし、従って十分な、長期的な免疫を付与するためである。そのような生組換えウイルスワクチン製剤の生産は、細胞培養物またはニワトリ胚尿膜中でのウイルス増殖と、それに続く精製を含む従来の方法を用いて達成し得る。
【0282】
具体的な実施形態では、組換えウイルスは、それが投与される被験者に対して非病原性のものである。これに関して、ワクチン用に遺伝子操作ウイルスを使用するには、これらのウイルス株が弱毒化特性をもつ必要がある。トランスフェクションに用いる鋳型に適当な突然変異(例えば欠失)を導入すると、弱毒化特性を有する新規ウイルスが得られる。例えば、温度感受性または寒冷適応に関連する特定のミスセンス突然変異を、欠失突然変異中に導入することができる。これらの突然変異は、寒冷または温度感受性変異体に関連する点突然変異よりも安定であるはずであり、復帰突然変異の頻度が極めて低いはずである。組換えウイルスを作製するための組換えDNA技術は、当技術分野で公知であり、本発明に包含される。例えば、負鎖RNAウイルスの改変のための技術が当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,166,057号を参照されたい(その全文を参照として本明細書に組み入れる)。
【0283】
あるいはまた、「自殺」特性を有するキメラウイルスが、本発明の皮内ワクチン製剤での使用のために構築され得る。そのようなウイルスは、宿主内でわずかに1〜数回の複製しか行うことがない。ワクチンとして用いたときには、組換えウイルスは限られた複製サイクルを行い、十分なレベルの免疫応答を誘発するが、ヒト宿主中でさらに複製サイクルを行って、病気を引き起こすことはない。あるいはまた、不活化(死滅)ウイルスを本発明に従って製剤化することができる。不活化ワクチン製剤は、キメラウイルスを「死滅させる」ための、従来の方法を用いて調製することが可能である。不活化ワクチンは、その感染性が破壊されているという意味で「死んでいる」。理想的には、ウイルスの感染性がその免疫原性を損なうことなく破壊される。不活化ワクチンを調製するためには、キメラウイルスを細胞培養物もしくはニワトリ胚尿膜中で増殖させ、ゾーン超遠心により精製し、ホルムアルデヒドもしくはβ-プロピオラクトンにより不活化してプールする。
【0284】
特定の実施形態では、完全に外来性のエピトープ(他のウイルス性または非ウイルス性病原体に由来する抗原を含む)が本発明の皮内ワクチン製剤に使用するためのウイルスへと遺伝子工学的に操作される。例えば、例えばHIV(gp160、gp120、gp41)のような非関連ウイルスの抗原、寄生虫抗原(例えばマラリア)、細菌もしくは真菌抗原または腫瘍抗原を操作して、弱毒化株にすることができる。
【0285】
事実上あらゆる異種遺伝子配列が、皮内ワクチン製剤で使用するための本発明のキメラウイルスへと構築され得る。好ましくは、異種遺伝子配列は、生物学的応答の改変因子として作用する部分またはペプチドである。好ましくは、様々な病原体のいずれかに対して防御性免疫応答を引き起こすエピトープ、または中和抗体に結合する抗原が、キメラウイルスによって、またはその一部として発現される。例えば、本発明のキメラウイルスに構築され得る異種遺伝子配列は、限定するものではないが、インフルエンザおよびパラインフルエンザの血球凝集素、ノイラミニダーゼおよび融合糖タンパク質(例えばヒトPIV3のHNおよびF遺伝子)を含む。また別の実施形態では、キメラウイルスへと操作し得る異種遺伝子配列には、免疫調節活性を有するタンパク質をコードするものが含まれる。免疫調節タンパク質の例としては、限定するものではないが、サイトカイン、I型インターフェロン、γインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン-1、-2、-4、-5、-6、-12、およびこれらの物質のアンタゴニストが含まれる。
【0286】
また別の実施形態では、本発明は、変異型抗体を表面に発現する病原性細胞またはウイルス、好ましくは弱毒化ウイルスを包含する。
【0287】
代替的な実施形態では、本発明のワクチン組成物は、抗原性または免疫原性物質がFcγRIIIAに対する増大した親和性を有する本発明の変異型抗体と機能的に連結されている、融合ポリペプチドを含む。本発明のワクチン組成物に使用するための融合ポリペプチドの操作は、慣例的な組換えDNA技術の方法を用いて行われ、通常の技能の範囲内である。
【0288】
本発明は、本発明の組成物を投与することにより、被験者において免疫寛容を誘発する方法をさらに包含する。好ましくは、被験者において免疫寛容を誘発するのに適した組成物は、本発明の変異型抗体によってコートされた抗原性または免疫原性物質を含み、その際、該変異型抗体はFcγRIIBに対してより高い親和性を有するものである。特定の作用機構に拘束されることを意図しないが、そのような組成物はFcγRIIBを介した阻害経路を活性化することにより免疫寛容を誘発するのに有効である。
【0289】
5.9 組成物および投与方法
本発明は、複数のエピトープ結合ドメインおよび任意にFcドメイン(またはその一部)を含む本発明の分子(すなわちダイアボディ)を含んでなる方法および医薬組成物を提供する。本発明はまた、疾患、障害または感染に関連する1以上の症状を治療、予防、および改善する方法であって、被験者に有効な量の、本発明の融合タンパク質もしくはコンジュゲート分子、または本発明の融合タンパク質もしくはコンジュゲート分子を含む医薬組成物を投与することによる上記方法をさらに提供する。好ましい態様では、抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲート分子は、実質的に精製されている(すなわち、その効果を限定するかまたは望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。具体的な実施形態では、被験者は動物、好ましくは哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザルおよびヒト)である。好ましい実施形態では、被験者はヒトである。また別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は被験者と同じ生物種に由来するものである。
【0290】
様々な送達系が知られていて、本発明の分子を含む組成物を投与するために利用することができるが、例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセル内への封入、抗体または融合タンパク質を発現することができる組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。本発明の分子を投与する方法には、限定するものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内および口腔経路)が含まれる。具体的な実施形態では、本発明の分子を筋肉内、静脈内、または皮下に投与する。組成物を任意の都合のよい経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介する吸収により投与してもよく、他の生物学的活性薬剤と一緒に投与してもよい。投与は全身的でも局所的でもよい。さらに、例えば、吸入器または噴霧器の使用により、およびエアロゾル化剤を用いる製剤化により肺投与を採用することもできる。例えば、米国特許第6,019,968;5,985,320;5,985,309;5,934,272;5,874,064;5,855,913;5,290,540;および4,880,078号;ならびにPCT公開WO 92/19244;WO 97/32572;WO 97/44013;WO 98/31346;およびWO 99/66903を参照されたい(これらのそれぞれの全体を参照として本明細書に組み入れる)。
【0291】
本発明はまた、本発明の分子を密閉容器(例えばアンプルまたは小袋)中にパッケージして、抗体の量を表示することを提供する。一実施形態では、本発明の分子を、乾燥した無菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として密閉容器に入れて供給し、そして例えば水または生理食塩水を用いて被験者に投与するための適当な濃度に再調製する。好ましくは、本発明の分子を、乾燥した無菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として密閉容器に入れて、少なくとも5mg、さらに好ましくは少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位用量にて供給する。凍結乾燥した本発明の分子はその元の容器内で2〜8℃の間で貯蔵しなければならず、また、該分子は、再調製した後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与しなければならない。代替的な実施形態では、本発明の分子を、液剤として密閉容器に入れて、該分子、融合タンパク質、またはコンジュゲート分子の量および濃度を表示して供給する。好ましくは、本発明の分子の液剤を、密閉容器に入れて、少なくとも1mg/ml、さらに好ましくは少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlの該分子にて供給する。
【0292】
疾患に関連する1以上の症状を治療、予防または改善するために有効でありうる本発明の組成物の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。製剤中で用いる正確な用量はまた、投与経路や病状の重篤度にも左右され、医師の判断および各患者の状況によって決定されねばならない。有効な用量をin vitroまたは動物モデル試験系から誘導した用量-応答曲線から推定することができる。
【0293】
本発明により包含されるダイアボディの場合、患者に投与される投与量は、典型的には、0.0001mg/kg〜100mg/kg(患者の体重)である。好ましくは、患者に投与される用量は、0.0001mg/kg〜20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.0001mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg/kgまたは0.01〜0.10mg/kgである。本発明のダイアボディの投与量と頻度は、例えば、リピド化などの修飾によりダイアボディの取込みおよび組織浸透を増強することによって、低減または変更することができる。
【0294】
一実施形態では、患者に投与される本発明の分子の投与量は、単剤療法として用いるとき、0.01mg〜1000mg/日である。他の実施形態では、本発明の分子を他の治療用組成物と一緒に用いて、患者に投与される投与量を、上記分子を単剤療法として用いるときより低くする。
【0295】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を、治療の必要な部位に局所投与することが望ましい。これは、例えば、限定するものではないが、局所注入により、注射により、またはシアラスチック(sialastic)メンブランなどのメンブランまたは繊維を含む多孔質、非多孔質、またはゼラチン状の材料からなる移植片を用いて達成することができる。好ましくは、本発明の分子を投与するとき、該分子が吸収されない材料を使うように注意しなければならない。
【0296】
他の実施形態では、組成物を小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treatら「感染症と癌の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」, Lopez-Berestein and Fidler (編), Liss, New York, pp.353-365 (1989);Lopez-Berestein, 前掲, pp.317-327 を参照されたい;一般的には前掲を参照)。
【0297】
さらに他の実施形態では、組成物を制御放出または持続放出システムで送達することができる。本発明の1種以上の分子を含む持続放出製剤を作るために、当業者に公知のいずれの技術を用いてもよい。例えば、米国特許第4,526,938号;PCT公開WO 91/05548;PCT公開WO 96/20698;Ningら, 1996,「持続放出ゲルを用いたヒト大腸癌異種移植片の腫瘍内放射線免疫療法(Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel)」 Radiotherapy & Oncology 39:179-189, Songら, 1995, 「長循環エマルジョンの抗体を介する肺ターゲティング(Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions)」 PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397;Cleekら, 1997, 「心血管適用のためのbFGF抗体に対する生物分解性ポリマー担体(Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application)」 Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;およびLamら, 1997, 「局所送達のための組換えヒト化モノクローナル抗体のマイクロカプセル化(Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery)」 Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照されたい(それぞれの全体を参照として本明細書に組み入れる)。一実施形態では、ポンプを制御放出システムで用いることができる(Langer, 前掲;Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20;Buchwaldら, 1980, Surgery 88:507;およびSaudekら, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。他の実施形態では、ポリマー材料を用いて抗体の制御放出を達成することができる(例えば「制御放出の医療上の応用例(Medical Applications of Controlled Release)」, LangerおよびWise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御放出薬物バイオアベイラビリティー、医薬品設計と性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen およびBall (編), Wiley, New York (1984);RangerおよびPeppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61;(またLevyら, 1985, Science 228:190;Duringら, 1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardら, 1989, J. Neurosurg. 7 1:105も参照);米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開WO 99/15154;およびPCT公開WO 99/20253を参照)。持続放出製剤に使用されるポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられる。さらに他の実施形態では、制御放出システムを治療標的(例えば、肺)の近位に配置することで、全身用量の一部しか必要としないようにすることができる(例えば、Goodson, 「制御放出の医療上の応用(Medical Applications of Controlled Release)」, 前掲, vol. 2, pp.115-138 (1984)を参照)。他の実施形態では、制御放出移植片として有用なポリマー組成物が、Dunnら(米国特許第5,945,155号を参照)に従い用いられる。この特定の方法は、ポリマー系からの生物活性物質のin situ制御放出の治療効果に基づく。移植は一般的に、治療処置を必要とする患者体内のいずれの場所で行ってもよい。他の実施形態では非ポリマー系の持続送達システムが使用されるが、この場合には、被験者体内の非ポリマー移植片が薬物送達システムとして使用される。体内に移植すると、移植片の有機溶媒が、該組成物から周囲組織液中に散逸、分散または浸出して、非ポリマー材料が徐々に凝集または沈降し、固体の微孔質マトリックスを形成する(米国特許第5,888,533号を参照)。
【0298】
制御放出システムは、Langerによる文献(1990, Science 249:1527-1533)に述べられている。本発明の1種以上の治療薬を含む持続放出製剤を作るために、当業者に公知のいずれの技術を用いてもよい。例えば、米国特許第4,526,938号;国際公開WO 91/05548およびWO 96/20698;Ningら, 1996, RadioTherapy & Oncology 39:179-189;Songら, 1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397;Cleekら, 1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;およびLamら, 1997, Proc. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照されたい(それぞれの全体を参照として本明細書に組み入れる)。
【0299】
具体的な実施形態では、本発明の組成物が本発明のダイアボディをコードする核酸である場合、これを適当な核酸発現ベクターの一部として構成し、それが細胞内に取り込まれるようにこれを投与することによって、そのコード化されたダイアボディの発現を促進するために該核酸をin vivoで投与することができる。細胞内への取り込みは、例えば、レトロウイルスベクターを使用することによって(米国特許第4,980,286号を参照)、または直接注射によって、または微粒子衝突(例えば遺伝子銃;Biolistic, Dupont)によって、または脂質、細胞表面受容体もしくはトランスフェクト試薬でコーティングすることによって、または核に侵入することが知られるホメオボックス様ペプチドと連結して投与する(例えば、Joliotら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照)こと等によって行う。あるいはまた、核酸を細胞内に導入して、相同的組換えによって発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0300】
治療上または予防上有効な量の本発明の分子を用いる被験者の治療は、単回治療であってもよいが、好ましくは、一連の治療を含む。好ましい例においては、約0.1〜30mg/kg(体重)の本発明の分子を用いて、週1回、約1〜10週間にわたって、好ましくは約2〜8週間にわたって、さらに好ましくは約3〜7週間にわたって、より一層好ましくは約4、5、または6週間にわたって、被験者を治療する。他の実施形態では、本発明の医薬組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する。他の実施形態では、医薬組成物を週1回、週2回、2週毎に1回、月1回、6週毎に1回、2ヶ月毎に1回、年2回または年1回投与する。治療に使用する分子の有効投与量が、特定の治療期間を通して増加したり減少したりすることもまた理解されよう。
【0301】
5.9.1 医薬組成物
本発明の組成物は、医薬組成物の製造に有用であるバルク薬組成物(例えば、不純なまたは非滅菌の組成物)および単位投与剤形の調製に利用できる医薬組成物(すなわち、被験者または患者に投与するのに適した組成物)を含む。そのような組成物は、予防上または治療上有効な量の本明細書中に開示した予防薬および/または治療薬またはそれらの薬剤の組合せと、製薬上許容し得る担体とを含む。好ましくは本発明の組成物は、予防上または治療上有効な量の1種以上の本発明の分子および製薬上許容される担体を含む。
【0302】
本発明はまた、本発明のダイアボディ分子と、特定の癌抗原に特異的な治療用抗体(例えば腫瘍特異的モノクローナル抗体)と、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物を包含する。
【0303】
特定の実施形態において、「製薬上許容し得る」との用語は、動物、特にヒトでの使用について、連邦政府または州政府の規制当局により認可された、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に掲げられたことを意味する。「担体」との用語は、治療薬がそれらとともに投与される、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような製薬上の担体は、水や油などの無菌液体であってもよく、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む。医薬組成物を静脈内投与するとき、水は好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール水溶液は、特に注射液用の、液状担体として利用することができる。好適な製薬上の賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。所望であれば、組成物はまた、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳化液、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉剤、持続放出製剤などの剤形をとり得る。
【0304】
一般的に、本発明の組成物の成分は、別々にまたは一緒に混合して単位投与剤形で、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、密閉容器、例えばアンプルまたは小袋に入れ、活性薬剤の量を表示して供給される。組成物を注入により投与する場合は、薬品級の滅菌水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて調剤してもよい。組成物を注射により投与する場合は、無菌の注射用水または生理食塩水のアンプルを提供して、諸成分が投与前に混合されるようにすることができる。
【0305】
本発明の組成物を、中性または塩形態として製剤化してもよい。製薬上許容し得る塩としては、限定するものではないが、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるアニオンにより形成された塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたカチオンにより形成された塩が含まれる。
【0306】
5.9.2 遺伝子治療
特定の実施形態では、本発明の分子をコードする配列を含む核酸を投与することにより、遺伝子治療を用いて疾患、障害、または感染に関連する1以上の症状を治療、予防、または改善する。遺伝子治療は、発現されるまたは発現可能な核酸を被験者に投与することにより行われる治療を意味する。本発明のこの実施形態では、核酸が、治療または予防効果を媒介するそのコード化抗体または融合タンパク質を産生する。
【0307】
当技術分野で利用しうるいずれの遺伝子治療法も本発明に従って使用することができる。代表的な方法を以下に記載する。
【0308】
遺伝子治療法の一般的総括については、Goldspielら, 1993, Clinical Pharmacy 12:488-505;WuおよびWu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, Science 260:926-932 (1993);およびMorgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217;May, 1993, TIBTECH 11 (5) :155-215を参照されたい。利用することができる組換えDNA技術の技術分野で公知の方法は、Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993);およびKriegler, Gene Transfer and Expression. A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に記載されている。
【0309】
好ましい態様では、本発明の組成物は本発明のダイアボディをコードする核酸を含み、該核酸は好適な宿主内で抗体を発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸は、抗体コード領域と機能的に連結されたプロモーター、好ましくは異種プロモーターを有し、上記プロモーターは誘導性、構成的、場合によっては組織特異的なものでありうる。他の特定の実施形態では、抗体コード配列および他の所望の配列が、ゲノム内の所望の部位での相同的組換えを促進する領域によって挟まれており、その結果として、抗体をコードする核酸の染色体内発現をもたらすような核酸分子が使用される(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. ACAD. Sci. USA 86:8932-8935;ならびにZijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
【0310】
他の好ましい態様では、本発明の組成物は融合タンパク質をコードする核酸を含み、上記核酸は好適な宿主において融合タンパク質を発現する発現ベクターの一部分である。特に、このような核酸は、融合タンパク質のコード領域と機能的に連結されたプロモーター、好ましくは異種プロモーターを有し、上記プロモーターは誘導性、構成的、場合によっては組織特異的なものでありうる。他の特定の実施形態では、融合タンパク質のコード配列および他の所望の配列が、ゲノム内の所望の部位での相同的組換えを促進する領域によって挟まれており、その結果として、融合タンパク質をコードする核酸の染色体内発現をもたらすような核酸分子が使用される。
【0311】
核酸の被験者への送達は、直接的(この場合には被験者を核酸または核酸担持ベクターに直接曝す)または間接的(この場合には細胞を最初に核酸でin vitroにて形質転換し、次いで被験者に移植する)のいずれであってもよい。これらの2つの手法は、それぞれ、in vivoまたはex vivo遺伝子治療として知られている。
【0312】
特定の実施形態では、核酸配列を直接in vivoで(そこで発現されて、コードされた産物をもたらす)投与する。これは、当技術分野で公知の多数の方法のいずれかにより、例えばそれを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、それを細胞内に取込まれるように投与することにより、実施することができる。このような取込みは、例えば、欠損もしくは弱毒化レトロウイルスまたは他のベクターを使った感染により(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接注入により、または微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)により、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション試薬のコーティングにより、またはリポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセル内への封入により、あるいは核に侵入することが知られるペプチドとそれらを連結して投与することにより、受容体介在エンドサイトーシスを受ける抗原と連結して投与することにより(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)(この方法は受容体を特異的に発現する細胞型を標的とするために用いられる)、実施することができる。別の実施形態では、核酸-抗原複合体(この抗原はエンドソームを破壊する融合性ウイルスペプチドを含む)を形成させて、核酸のリソソーム分解を回避させることができる。さらに別の実施形態では、核酸は、特異的受容体を標的とすることにより、in vivoで細胞特異的な取込みおよび発現へと目標を定めることができる(例えば、PCT公開WO 92/06180;WO 92/22635;W092/20316;W093/14188;WO 93/20221を参照)。あるいはまた、核酸は、細胞内に導入して、相同的組換えによって、発現のために宿主細胞DNA内に組込むことができる(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935 ;およびZijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
【0313】
特定の実施形態では、本発明の分子(例えばダイアボディまたは融合タンパク質)をコードする核酸配列を含有するウイルスベクターが用いられる。例えば、レトロウイルスベクターを利用することができる(Millerら, 1993, Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNA中への組込みのために必要な成分を含有する。遺伝子治療に利用する抗体または融合タンパク質をコードする核酸配列は1以上のベクター中にクローニングされ、これによりヌクレオチド配列の被験者への送達が容易になる。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細はBoesenら(1994, Biotherapy 6:291-302)に見出すことができ、これは、化学療法により耐性のある造血幹細胞を作る目的でmdr 1遺伝子を幹細胞へ送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献には以下のものがある:Clowesら, 1994, J. Clin. Invest. 93:644-651;Kleinら, 1994, Blood 83:1467-1473;SalmonsおよびGunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4:129-141;ならびにGrossmanおよびWilson, 1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3:110-114。
【0314】
アデノウイルスは、遺伝子治療に利用しうる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸器上皮に送達する運搬体として特に興味をそそる。アデノウイルスは元来、呼吸器上皮に感染して軽度の疾患を引き起す。アデノウイルスに基づく送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは分裂しない細胞に感染することができるので有利である。KozarskyおよびWilson(Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503, 1993)はアデノウイルスに基づく遺伝子治療法の総説を報じている。Boutら(Human Gene Therapy, 5:3-10,1994)は、遺伝子をアカゲザルの呼吸器上皮へ導入するためのアデノウイルスベクターの利用を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの利用の他の例は、Rosenfeldら, 1991, Science 252:431-434;Rosenfeldら, 1992, Cell 68 :143-155;Mastrangeliら, 1993, J. Clin. Invest. 91:225-234;PCT公開W0 94/12649;ならびにWangら, 1995, Gene Therapy 2:775-783に見出すことができる。好ましい実施形態では、アデノウイルスベクターが用いられる。
【0315】
アデノ随伴ウイルス(AAV)も遺伝子治療における利用が提案されている(例えば、Walshら, 1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300および米国特許第5,436,146号を参照)。
【0316】
遺伝子治療に対する他のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムを介したトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法により、組織培養物中の細胞に遺伝子を導入することを含む。通常、導入の方法は、選択マーカーの細胞への導入を含む。次いで細胞を選択に供し、回収し、かつ導入した遺伝子を発現する細胞を単離する。次いでそれらの細胞を被験者に送達する。
【0317】
この実施形態では、核酸を細胞中に導入した後に、得られる組換え細胞をin vivo投与する。このような導入は、当技術分野で公知のいずれかの方法、例えば、限定するものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体を介した遺伝子導入、微小細胞を介した遺伝子導入(microcell mediated gene transfer)、スフェロプラスト融合などにより実施することができる。外来遺伝子を細胞中に導入するための多数の技術は当技術分野で公知であり(例えば、Loeffler and Behr, 1993, Meth. Enzymol. 217:599-618;Cohenら, 1993, Meth. Enzymol. 217:618-644;およびClin. Pharma. Ther. 29:69-92,1985を参照)、受容細胞の必要な発生的および生理学的機能が破壊されないことを条件として本発明に従って利用することができる。その技術は核酸の細胞への安定な導入を提供して、それにより核酸が細胞により発現可能になり、そして好ましくはその細胞子孫に遺伝してかつ発現されうるものでなければならない。
【0318】
得られる組換え細胞は、当技術分野で公知の様々な方法により被験者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。使用のために想定される細胞量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者が決定することが可能である。
【0319】
遺伝子治療の目的で核酸が導入される細胞は、あらゆる所望の入手可能な細胞型を包含し、限定するものではないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;様々な幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られるものを含む。
【0320】
好ましい実施形態では、遺伝子治療に使用される細胞は被験者自身に由来するものである。
【0321】
組換え細胞を遺伝子治療に使用する実施形態では、抗体または融合タンパク質をコードする核酸配列を細胞中に導入して、それらが該細胞またはその子孫により発現されるようにし、次いでその組換え細胞を治療効果のためにin vivoで投与する。具体的な実施形態では、幹細胞または前駆細胞を用いる。分離可能でin vitroで維持できる幹細胞および/または前駆細胞はどれも本発明のこの実施形態に従って利用できる可能性がある(例えば、PCT公開WO 94/08598;StempleおよびAnderson, 1992, Cell 7 1:973-985;Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A :229;ならびにPittelkowおよびScott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771を参照されたい)。
【0322】
特定の実施形態では、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、コード領域と機能的に連結された誘導性プロモーターを含み、それにより適当な転写誘導物質の存在または不在を制御することにより核酸の発現が制御可能となる。
【0323】
5.9.3 キット
本発明は、本発明の分子を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。さらに、疾患の治療に有用な1以上の他の予防または治療薬を、医薬パックまたはキット中に含んでもよい。本発明はまた、本発明の医薬組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたはキットも含む。場合によっては、このような容器に、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局が指示した形式で、ヒト投与のための製造、使用または販売の行政当局による認可を反映する注意書きを添付してもよい。
【0324】
本発明は、上記の方法で使用することができるキットを提供する。一実施形態では、キットは1以上の本発明の分子を含む。他の実施形態では、キットはさらに、1以上の容器中に、癌の治療に有用な1以上の他の予防または治療薬を含む。別の実施形態では、キットはさらに、癌に関連する1以上の癌抗原と結合する1以上の細胞傷害性抗体を含む。ある実施形態では、他の予防または治療薬は化学療法剤である。他の実施形態では、予防または治療薬は生物学的またはホルモン治療薬である。
【0325】
5.10 治療上の有用性の特徴付けおよび検証
ヒトに使用する前に、本発明の医薬組成物、予防または治療薬のいくつかの態様は、好ましくは、in vitroで、細胞培養系で、および動物モデル生物で、例えばげっ歯類動物モデル系で、所望の治療活性について試験される。例えば、特定の医薬組成物の投与が適切なものかを確認するのに用いることができるアッセイは、細胞培養アッセイを含み、該アッセイにおいては、患者組織サンプルを培養で増殖させ、本発明の医薬組成物に曝すかまたは別の方法で接触させ、そして組織サンプルに対する該組成物の効果を観察する。組織サンプルは患者から生検により得ることができる。この試験により、個々の患者に対して治療上最も有効な予防または治療分子を同定することができる。様々な具体的実施形態では、in vitroアッセイを、自己免疫疾患または炎症性疾患に関係する細胞型の代表的細胞(例えば、T細胞)を用いて実施し、本発明の医薬組成物がそのような細胞型に対して所望の効果を奏するかを確認することができる。
【0326】
予防薬および/または治療薬の組合せは、ヒトで使用する前に、適当な動物モデル系で試験することができる。このような動物モデル系としては、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられる。当技術分野で周知のいずれの動物系を使用してもよい。本発明の具体的な実施形態では、予防および/または治療薬の組合せはマウスモデル系で試験する。このようなモデル系は広く使用されていて、当業者に周知である。予防および/または治療薬は反復して投与することができる。手順のいくつかの様相は様々でありうる。かかる様相には、予防および/または治療薬の投与の時間的管理、およびこのような薬剤を別々に投与するのか混合物として投与するのかが含まれる。
【0327】
本発明の方法に使用する好ましい動物モデルは、例えば、マウスエフェクター細胞上にFcγRを発現するトランスジェニックマウスであり、例えば、米国特許第5,877,396号(その全体を参照として本明細書に組み入れる)に記載されたいずれかのマウスモデルを本発明に用いることができる。本発明の方法に使用するトランスジェニックマウスとしては、限定するものではないが、ヒトFcγRIIIAを保有するマウス;ヒトFcγRIIAを保有するマウス;ヒトFcγRIIBおよびヒトFcγRIIIAを保有するマウス;ヒトFcγRIIBおよびヒトFcγRIIAを保有するマウスが挙げられる。好ましくは、上記の機能的アッセイにおいて最高レベルの活性を示した変異を、ヒトでの使用に先立って動物モデル研究での使用について試験する。十分量の抗体は、上記の方法を用いて、動物モデルでの使用のために調製することが可能であり、例えば本明細書に開示され例示される哺乳類発現系および精製法を用いて調製することができる。
【0328】
マウス異種移植モデルを用いて、腫瘍特異的標的に対して作製されたマウス抗体の効力を、本発明のダイアボディ分子のエピトープ結合ドメインの親和性と特異性、および免疫応答を引き出すダイアボディの能力に基づいて試験することができる(Wuら, 2001, Trends Cell Biol. 11: S2-9)。マウスエフェクター細胞上にヒトFcγRを発現するトランスジェニックマウスはユニークであり、ヒトFc-FcγR相互作用の効力を試験するためのテーラーメイド動物モデルである。Jeffrey Ravetch博士の研究室で作製されたFcγRIIIA、FcγRIIBおよびFcγRIIAトランスジェニックマウス系統のペアが利用可能であり(Rockefeller大学とSloan Kettering癌センターとのライセンス契約を介して)、以下の表11に挙げられているようなものである。
【表11】
【0329】
本発明の併用療法の抗炎症活性は、当技術分野で公知の、かつCrofford L. J.およびWilder R. L.「動物の関節炎と自己免疫(Arthritis and Autoimmunity in Animals)」、Arthritis and Allied Conditions:A Textbook of Rheumatology, McCartyら (編), 第30章(Lee and Febiger, 1993)に記載の様々な炎症性関節炎の実験動物モデルを利用して確認することができる。炎症性関節炎および自己免疫リウマチ疾患の実験的および自然発生的動物モデルはまた、本発明の併用療法の抗炎症活性を評価するために利用することもできる。以下は例として掲げたいくつかのアッセイであり、限定するものではない。
【0330】
当技術分野で公知の、かつ広く利用される関節炎または炎症性疾患の主な動物モデルは、以下のものを含む:アジュバント誘導関節炎ラットモデル、コラーゲン誘導関節炎ラットおよびマウスモデル、ならびに、抗原誘導関節炎ラット、ウサギおよびハムスターモデル。これらは全て、Crofford L. J.およびWilder R. L.「動物の関節炎と自己免疫(Arthritis and Autoimmunity in Animals)」、Arthritis and Allied Conditions:A Textbook of Rheumatology, McCartyら (編), 第30章(Lee and Febiger), 1993に記載されている(その全体を参照として本明細書に組み入れる)。
【0331】
本発明の併用療法の抗炎症活性は、カラゲナン誘導関節炎ラットモデルを用いて評価することができる。カラゲナンが誘導する関節炎はまた、慢性関節炎または炎症の研究において、ウサギ、イヌおよびブタでも利用されている。定量的な組織形態計測的評価が治療効力の決定に用いられる。このようなカラゲナン誘導関節炎モデルを利用する方法は、Hansra P.ら,「ラットにおけるカラゲナン誘導関節炎(Carrageenan-induced Arthritis in the Rat)」, Inflammation, 24(2):141-155, (2000)に記載されている。また、ザイモサン誘導炎症動物モデルも一般的に利用されており、当技術分野で公知である。
【0332】
本発明の併用療法の抗炎症活性はまた、カラゲナンが誘導するラットの足浮腫(paw edema)の抑制を、Winter C. A.ら,「抗炎症薬アッセイとしての、カラゲナンが誘導するラット後足浮腫(Carrageenan-Induced Edema in Hind Paw of the Rat as an Assay for Anti-inflammatory Drugs)」Proc. Soc. Exp. Biol Med. 111, 544-547, (1962)に記載される方法の改変法を用いて測定することにより、評価することもできる。このアッセイはほとんどのNSAIDの抗炎症活性に対する一次in vivoスクリーニングとして用いられており、ヒトでの効力を予測すると考えられている。試験予防薬または治療薬の抗炎症活性は、ビヒクルを投与した対照群に対する試験群の後足重量増加の抑制パーセントとして表される。
【0333】
さらに、炎症性腸疾患の動物モデルを、本発明の併用療法の効力を評価するのに用いることもできる(Kimら, 1992, Scand. J. Gastroentrol. 27:529-537;Strober, 1985, Dig. Dis. Sci. 30(12 Suppl):3S-10S)。潰瘍性大腸炎およびクローン病は、動物で誘導しうるヒト炎症性腸疾患である。硫酸化された多糖類(限定するものではないが、アミロペクチン、カラゲナン、硫酸アミロペクチンおよび硫酸デキストランを含む)または化学刺激剤(限定するものではないが、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)および酢酸を含む)を動物に経口投与して炎症性腸疾患を誘導することができる。
【0334】
自己免疫疾患の動物モデルもまた、本発明の併用療法の効力を評価するのに用いることができる。自己免疫疾患、例えばI型糖尿病、甲状腺自己免疫、全身性エリテマトーデス、および糸球体腎炎の動物モデルが開発されている(Flandersら, 1999, Autoimmunity 29:235-246;Kroghら, 1999, Biochimie 81:511-515;Foster, 1999, Semin. Nephrol. 19:12-24)。
【0335】
さらに、当業者に公知のアッセイはどれも、自己免疫および/または炎症性疾患に対する本明細書に開示した併用療法の予防上および/または治療上の有用性を評価するのに用いることができる。
【0336】
本発明の予防および/または治療プロトコルの毒性および効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法により確認することができ、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%における治療有効量)を決定する手法により確認することができる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表現される。大きな治療指数を示す予防および/または治療薬が好ましい。毒性副作用を示す予防および/または治療薬を使用することはできるが、このような薬物を罹患組織の部位にターゲッティングする送達システムを設計して、非罹患細胞の起こりうる損傷を最小限に抑え、それにより副作用を軽減するよう注意を払うべきである。
【0337】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用する予防および/または治療薬の投与量の範囲を決定するのに利用することができる。このような薬物の投与量は、好ましくは、毒性が低いか全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用する投与剤形および利用する投与経路に依存して変わりうる。本発明の方法で使用するいずれの薬物に対しても、治療上有効な用量はまず細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定したIC50(すなわち、症状の最大の2分の1の抑制(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて決定してもよい。このような情報は、ヒトに有用な投与量をさらに正確に決定するのに用いることができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0338】
本発明に従って使用される治療法の抗癌活性はまた、癌研究用の様々な実験動物モデル、例えばSCIDマウスモデルまたはトランスジェニックマウスまたはヒト異種移植片をもつヌードマウス、動物モデル、例えば、ハムスター、ウサギなどを用いることにより決定することもでき、これらは当技術分野で公知であり、かつRelevance of Tumor Models for Anticancer Development (1999, FiebigおよびBurger編);Contributions to Oncology (1999, Karger);The Nude Mouse in Oncology Research (1991, Boven and Winograd編);およびAnticancer Drug Development Guide (1997 編Teicher)(これらの全体を参照として本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0339】
本発明の分子の治療効力を決定するのに好ましい動物モデルは、マウス異種移植モデルである。異種移植腫瘍の供給源として用いることができる腫瘍細胞株は、限定するものではないが、SKBR3およびMCF7細胞を含み、それらは乳腺癌の患者に由来する。これらの細胞は、erbB2とプロラクチン受容体の両者を有する。SKBR3細胞は、ADCCおよび異種移植腫瘍モデルとして、当技術分野において通常用いられている。これとは別に、ヒト卵巣腺癌に由来するOVCAR3細胞を異種移植腫瘍の供給源として用いることができる。
【0340】
本発明のプロトコルと組成物は、ヒトで使用する前に、好ましくは、in vitroで、次いでin vivoで、所望の治療または予防活性について試験される。治療薬および治療法は、腫瘍または悪性培養細胞株の細胞を用いてスクリーニングすることができる。当技術分野において標準的な多くのアッセイを、このような生存および/または増殖を評価するのに用いることができる;例えば、細胞増殖は3H-チミジン取込みを測定することにより、直接細胞計数より、プロトオンコジーン(例えば、fos、myc)または細胞周期マーカーなどの公知の遺伝子の転写活性の変化を検出することにより評価することができる;細胞生存率はトリパンブルー染色により評価することができ、分化は形態の変化、軟寒天中での増殖および/またはコロニー形成の減少または三次元基底膜または細胞外マトリックス調製物中の管状ネットワーク形成などに基づいて視覚的に評価することができる。
【0341】
治療に用いる化合物は、ヒトで試験する前に好適な動物モデル系で試験することができ、動物としては、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどがあり、例えば、上記の動物モデルで試験することができる。化合物はその後、適当な臨床試験で使用される。
【0342】
さらに、当業者に公知のアッセイはどれも、癌、炎症性疾患、または自己免疫疾患の治療または予防について本明細書に開示した併用療法の予防上および/または治療上の有効性を評価するのに用いることができる。
【実施例】
【0343】
6.1 共有結合型二重特異性ダイアボディの設計と特徴付け
単一特異性共有結合型ダイアボディおよび二重特異性共有結合型ダイアボディを構築し、それぞれの組換え体の作製、精製および結合特性を評価した。本明細書に記載した組換え発現系によって作製され、アフィニティー精製されたダイアボディ分子は、SDS−PAGEおよびSEC解析により単一の二量体種から成ることが判明した。ELISAおよびSPR解析により、共有結合型二重特異性ダイアボディは双方の標的抗原に親和性を示すこと、および双方の抗原と同時に結合できることがさらに明らかになった。
【0344】
<材料と方法>
ポリペプチド分子の構築および設計
核酸発現ベクターを設計し、図2で模式図により示した4つのポリペプチド構築物を作製した。構築物1(配列番号9)は、FcγRIIBを認識するヒト化2B6抗体のVLドメイン、およびFcγRIIIAを認識するヒト化3G8抗体のVHドメインを含む。構築物2(配列番号11)は、Hu3G8のVLドメイン、およびHu2B6のVHドメインを含む。構築物3(配列番号12)は、Hu3G8のVLドメイン、およびHu3G8のVHドメインを含む。構築物4(配列番号13)は、Hu2B6のVLドメイン、およびHu2B6のVHドメインを含む。
【0345】
PCRおよび発現ベクターの構築
VLおよびVHドメインのコード配列を、第1PCR産物が重複配列を含むように設計したフォワードおよびリバースプライマーを用いて鋳型DNAから増幅した。これにより、重複PCRで所望のポリペプチド構築物のコード配列を作製することが可能となる。
【0346】
鋳型DNAの第1PCR増幅
約35ngの鋳型DNA(例えば、目的の抗体の軽鎖および重鎖)、1μlの10μMフォワードプライマーおよびリバースプライマー、2.5μlの10×pfuUltraバッファ(Stratagene, Inc.)、1μlの10mM dNTP、1μlの2.5ユニット/μlのpfuUltra DNAポリメラーゼ(Stratagene, Inc.)、および総量25μlになるように加えた蒸留水を、微量遠心チューブ内で静かに混合し、微量遠心機で短時間スピンして反応混合物をチューブの底に集めた。PCR反応を、GeneAmp PCR System 9700 (PE Applied Biosystem)を用いて行った。反応は、94℃で2分間;続いて94℃で15秒間、58℃で30秒間および72℃で1分間を25サイクルに設定した。
【0347】
Hu2B6のVLは、Hu2B6の軽鎖からフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および58)を用いて増幅した。Hu2B6のVHは、Hu2B6の重鎖からフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号59および60)を用いて増幅した。Hu3G8のVLは、Hu3G8の軽鎖からフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および61)を用いて増幅した。Hu3G8のVHは、Hu3G8の重鎖からフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号62および63)を用いて増幅した。
【0348】
1%アガロースゲルにてPCR産物を120ボルトで30分間、電気泳動した。PCR産物をゲルから切り出した後、MinEluteゲル抽出キット(Qiagen, Inc.)を用いて精製した。
【0349】
重複PCR
第1PCR産物を下記のように結合させて、鋳型DNAの最初の増幅で説明したPCR条件と同一の条件を用いて増幅した。重複PCRの産物も、上記のように精製した。
【0350】
構築物1をコードする核酸配列(配列番号9)(図2に模式図で示す)をHu2B6のVLおよびHu3G8のVHのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および63)を混合して増幅した。構築物2をコードする核酸配列(配列番号11)(図2に模式図で示す)をHu3G8のVLおよびHu2B6のVHのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および60)を混合して増幅した。構築物3をコードする核酸配列(配列番号12)(図2に模式図で示す)をHu3G8のVLおよびHu3G8のVHのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および63)を混合して増幅した。構築物4をコードする核酸配列(配列番号13)(図2に模式図で示す)をHu2B6のVLおよびHu2B6のVHのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および60)を混合して増幅した。
【0351】
VLドメインのフォワードプライマー(すなわち、配列番号57)およびVHドメインのリバースプライマー(すなわち、配列番号60および配列番号63)は、発現ベクター内への最終産物のクローニングを可能にするユニークな制限部位を含んでいる。精製された重複PCR産物を制限エンドヌクレアーゼNheIおよびEcoRIで切断し、哺乳動物発現ベクターpCIneo(Promega, Inc.)内に導入してクローン化した。構築物をコードするプラスミドを表12に示すように命名した。
【表12】
【0352】
ポリペプチド/ダイアボディの発現
構築物1をコードするpMGX0669を、構築物2をコードするpMGX0667と共に、リポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いて、使用説明書に従ってHEK-293細胞にコトランスフェクションした。これら2つのプラスミドのコトランスフェクションは、FcγRIIBおよびFcγRIIIAの双方に対して免疫特異的な共有結合型二重特異性ダイアボディ(CBD) (h2B6-h3G8ダイアボディ)が発現するように設計されている。構築物3および4をそれぞれコードするpMGX0666およびpMGX0668を、それぞれFcγRIIIAに対して免疫特異的な共有結合型単一特異性ダイアボディ(CMD)(h3G8ダイアボディ)およびFcγRIIBに対して免疫特異的な共有結合型単一特異性ダイアボディ(CMD)(h2B6ダイアボディ)の発現のために、HEK-293細胞に別々にトランスフェクトした。培養3日後、分泌された産物を条件培地から精製した。
【0353】
精製
ダイアボディを条件培地から、CNBr活性型セファロース4Bと結合させた関連する抗原を用いて回収した。ローディング前にアフィニティーセファロース樹脂を20mM Tris/HCl(pH 8.0)で平衡化した。ローディング後、溶出前に、樹脂を平衡バッファーで洗浄した。ダイアボディを、50mMグリシン(pH 3.0)を用いて洗浄済み樹脂から溶出した。溶出したダイアボディを、1M Tris/HCl(pH 8.0)で直ちに中和し、遠心分離型濃縮器を用いて濃縮した。濃縮したダイアボディを、さらにPBSで平衡化したSuperdex 200カラムを用いてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
【0354】
SEC
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、カラムから溶出されたダイアボディのおおよそのサイズと異質性を分析した。SEC解析は、PBSで平衡化したGEヘルスケア社のSuperdex 200HR 10/30カラムで行われた。全長IgG(約150 kDa)、Fabフラグメント(約50 kDa)および一本鎖Fv(約30 kDa)の溶出プロファイルとの比較を対照として用いた。
【0355】
ELISA
溶出および精製されたダイアボディの結合性を、ELISAアッセイによってセクション5.4.2で説明したように、性状解析した。1ウェルあたり50μlの2μg/mlのsCD32B-Ig溶液を、炭酸バッファーの入った96ウェルMaxisorpプレート上に4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS-T(PBS+0.1% Tween20)で3回洗浄し、PBS-T中の0.5% BSAで30分間、室温にてブロッキングした。続いて、h2B6-h3G8 CBD、h2B6 CMDまたはh3G8 CMDを、ブロッキングバッファーを用いて2倍希釈で連続希釈し、0.5μg/mlから0.001μg/mlまでの範囲のダイアボディ濃度を作製した。その後、プレートを室温で1時間インキュベーションした。PBS-Tで3回洗浄した後、0.2μg/mlのsCD16A-ビオチンを1ウェルあたり50μlで、各ウェルに加えた。プレートを再び室温で1時間インキュベーションした。PBS-Tで3回洗浄した後、1:5000希釈したHRP結合ストレプトアビジン(Amersham Pharmacia Biotech)を検出のために1ウェルあたり50μl用いた。HRP-ストレプトアビジンを45分間、室温でインキュベーションした。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、TMB基質を1ウェルあたり80μl用いて発色させた。10分間のインキュベーション後、1% H2SO4を1ウェルあたり40μl加えることによって、HRP-TMB反応を停止させた。OD450を96ウェルプレートリーダーとSOFTmaxソフトウェアを用いて読み込み、結果をGraphPadPrism 3.03ソフトウェアを用いてプロットした。
【0356】
BIAcore解析
溶出および精製されたダイアボディの動態パラメータを、セクション5.4.3で説明したようにBIAcoreアッセイ(BIAcore instrument 1000, BIAcore Inc., Piscataway, N.J.)および付属のソフトウェアを用いて解析した。
【0357】
sCD16A、sCD32B、またはsCD32A(陰性対照)を、センサーチップ表面の4つのフローセルのうちの1つ(フローセル2)に、いずれの受容体も約1000の応答ユニット(response units:RU)が表面上に固定されるように、(NHS/EDCの混合物によるカルボキシメチル基の修飾によって)アミン結合化学を介して固定した。これに続いて、未反応の活性エステルを、1M Et-NH2を加えて「キャップオフ(capped off)」した。適当な表面が調製されたら、共有結合型二重特異性ダイアボディ(h2B6-h3G8 CBD)または共有結合型単一特異性ダイアボディ(h2B6 CMDもしくはh3G8 CMB)を表面に、6.25〜200nMの溶液を70mL/minの流速で180秒間導入することにより、流した。h3G8 scFVも比較用にテストした。
【0358】
全データセットを回収した時点で、得られた結合曲線を、製造業者であるBIAcore, Inc.社 (Piscataway, NJ)より提供されるコンピュータアルゴリズムを用いて、全体的にフィット(近似)させた。これらのアルゴリズムにより、KonおよびKoffの双方が算出された。これから、見かけの平衡結合定数KDが2つの速度定数の比(すなわちKoff/Kon)として推定される。個々の速度定数をどうやって導き出したかについてのより詳細な処理については、BIAevaluaionソフトウェアハンドブック(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)で知ることができる。
【0359】
結合期および解離期は別々にフィットさせた。解離速度定数を、180秒の解離期において32〜34秒間隔で得られた。結合期フィットを1:1 Langmuirモデルで得た。基底フィットを二重特異性ダイアボディとscFvに関するRmaxおよびカイ二乗法に基づいて選択した。二価分析物フィットはCMD結合に使用された。
【0360】
<結果>
非還元条件下でのSDS-PAGE解析により、h3G8 CMD、h2B6 CMDおよびh2B6-h3G8 CBD発現系の精製産物は、それぞれ単一種であり、約50kDa(図3のそれぞれレーン4、5および6)の推定分子量をもつことが明らかとなった。還元条件下では、CMDの各発現系から精製された産物は、単一バンド(レーン1および2)として移動したが、h2B6-h3G8 CBD系から精製された産物は、2つに分離するタンパク質(図3、レーン3)であることが明らかとなった。発現系から精製され、還元条件下でSDS-PAGEによって視覚化された全ポリペプチドは、約28kDaの位置に移動した。
【0361】
各発現系産物のSEC解析でも、それらが単一分子種であり(図4B)、それぞれIgGのFabフラグメント(約50kDa)とほぼ同じ時間で溶出されること(図4A)が明らかとなった。これらの結果は、アフィニティー精製した産物がCMD発現系の場合は同種の共有結合型ホモ二量体であり、またh2B6-h3G8 CBDの場合は同種の共有結合型へテロ二量体であることを示している。
【0362】
ELISAサンドイッチアッセイを使用して、CD32Bおよび/またはCD16Aのいずれか一方または両方に対するh2B6-h3G8 CBDの結合特異性を試験した(図5)。CD32Bを標的抗原として使用し、またCD16Aを第2プローブとして使用した。ELISAの陽性シグナルにより、ヘテロニ量体であるh2B6-h3G8 CBDは両抗原に対して特異性を有することが明らかとなった。h3G8 CMD (CD32Bに結合しないはずである)での同様の試験では、シグナルが見られなかった。
【0363】
SPR解析は、h3G8 CMDがsCD16を免疫特異的に認識するがsCD32Bは認識できないこと、h2B6 CMDがsCD32Bを免疫特異的に認識するがsCD16は認識できないこと、そしてh2B6-h3G8 CBDがsCD16とsCD32Bの両方を免疫特異的に認識できることを示した(図6A〜B)。試験したダイアボディはいずれも、対照受容体sCD32Aには結合しなかった(図6C)。
【0364】
また、SPR解析を使用して、sCD16および/またはsCD32Bに対する2つのCMDおよびh2B6-h3G8 CBDの速度定数および平衡定数を推定した。結果をh3G8 scFVについて算出された上記定数と比較した。図7A〜Eは、SPR解析の結果をグラフで示したものである。図7で描かれた結果から計算された、onおよびoff速度、並びに平衡定数を表13に示す。
【表13】
【0365】
ELISA解析の結果と合わせると、h2B6-h3G8共有結合型へテロニ量体はCD32BおよびCD16の双方に対して特異性を保持していること、および両抗原に同時に結合することができることが実験から裏付けられた。本分子を図8に模式図で示してある。
【0366】
6.2 Fcドメインを含む共有結合型二重特異性ダイアボディの設計と性状解析
IgG様分子、つまりFcドメインを含む分子を作るために、実施例6.1で示したヘテロ二量体CBD分子を含むポリペプチドの1つを、Fcドメインをさらに含む(抗体の重鎖および軽鎖に類似する「重い」鎖および「軽い」鎖を作り出す)ように改変した。したがって、ヘテロ二量体の二重特異性分子が同種分子と二量体化するFcドメインを含むことで、四価の四量体IgG様分子(すなわち、ヘテロ二量体の二重特異性分子のFcドメインを介して二量体化することで形成される分子)が形成されるだろう。興味深いことに、このような四量体分子は、例えば標的抗原に対する免疫特異的結合性について条件培地を試験するといった機能アッセイを用いて、組換え発現系の条件培地中には検出されなかった。その代わりに、VL、VHおよびFcドメインからなる単量体を含む二量体分子のみが、前記機能アッセイで検出された。理論上の四量体構造が安定性の面で問題となるかどうかを試験するために、Fcドメインを含むポリペプチドがヒンジ領域をさらに含むように遺伝子操作し、一方「軽い」鎖を含むポリペプチドはヒトκ型軽鎖の定常ドメインの6個のC末端アミノ酸を含むように遺伝子操作した。このように遺伝子操作した「重い」および「軽い」鎖を組換え発現系で共発現させたとき、機能アッセイによって、標的抗原と抗Fc抗体の双方に免疫特異的に結合できるダイアボディ分子が検出された。
【0367】
<材料と方法>
ポリペプチド分子の構築および設計
実施例6.1で示した構築物1および2の改変型を作製するために、核酸発現ベクターを設計した。構築物5(配列番号14)および6(配列番号15)は、さらにFcドメインを含むように、それぞれ構築物1および2を遺伝子操作することにより作製された。構築物7(配列番号16)は、構築物1を遺伝子操作して、さらにそのC末端に配列FNRGEC(配列番号23)を含むように作製された。構築物8(配列番号18)は、構築物2を遺伝子操作して、さらにヒンジ領域とFcドメイン(V215A変異を含む)を含むように作製された。構築物5〜8の模式図を図9に示す。
【0368】
PCRおよび発現ベクターの構築
PCRおよびPCR産物の精製プロトコルは全て、実施例6.1で説明した通りである。プラスミドpMGX0669およびpMGX0667を、それぞれ構築物1および2のコード配列用の鋳型として用いた。HuIgGのFcドメイン用のおよび/またはヒンジドメイン用のコード配列は、それぞれ配列番号5または配列番号1および配列番号5とした。鋳型DNAのコード配列はフォワードおよびリバースプライマーを用いて増幅したが、PCR産物が重複配列を含み、重複PCRが所望の産物のコード配列を生成させるようなプライマーを用いた。
【0369】
構築物1のコード配列は、pMGX0669からフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号64)を用いて増幅された。構築物2のコード配列は、pMGX0667から、フォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号65)を用いて増幅された。HuIgGヒンジ-Fcは、フォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号67および配列番号68)を用いて増幅した。構築物7(配列番号16)のコード配列は、pMGX0669から、フォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号69)を用いて増幅された。
【0370】
重複PCR
第1PCR産物を以下に記載したように組み合わせ、実施例6.1で説明したように増幅および精製した。
【0371】
構築物5(配列番号14)(図9に模式図で示す)をコードする核酸配列は、構築物1およびHuIgG FcのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号66)を組み合わせて増幅した。構築物6(配列番号15)(図9に模式図で示す)をコードする核酸配列は、構築物2およびHuIgG FcのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号66)を組み合わせて増幅した。構築物8(配列番号18)(図9に模式図で示す)をコードする核酸配列は、構築物2およびHuIgGヒンジ−FcのPCR増幅産物、並びにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ配列番号57および配列番号68)を組み合わせて増幅した。
【0372】
最終産物を、前述のように哺乳動物発現ベクターpCIneo(Promega, Inc.)内にクローン化した。構築物をコードするプラスミドは表14に示したように命名した。
【表14】
【0373】
ポリペプチド/ダイアボディの発現
セクション6.1で記載したように、リポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてHEK-293細胞内に別個に4つのコトランスフェクションを行った。前記コトランスフェクションは、すなわち、構築物1および6をそれぞれコードするpMGX0669およびpMGX0674、構築物2および5をそれぞれコードするpMGX0667およびpMGX0676、並びに構築物7および8をそれぞれコードするpMGX0677およびpMGX0678である。
【0374】
これらのプラスミドのコトランスフェクションは、FcγRIIBおよびFcγRIIIAの双方に免疫特異的なIgG様構造を有する、四価の二重特異性ダイアボディ(CBD)を発現するように設計された。構築物6および5をそれぞれコードするpMGX0674およびpMGX0676の追加的なコトランスフェクションも行った。培養3日後、条件培地を回収した。条件培地中の分泌産物の量を、精製されたFcを基準に用いて、抗IgG Fc ELISAによって定量化した。その後、サンプル中の産物の濃度を定量値に基づいて正規化し、この正規化したサンプルを以降のアッセイに使用した。
【0375】
ELISA
培地中に分泌されたダイアボディ分子の結合性を、上記サンドイッチELISAでアッセイした。特に示した場合を除き、CD32Bをプレートコーティング用に、つまり標的タンパク質として用いた。また、HRP結合CD16をプローブとして使用した。
【0376】
<結果>
ELISAアッセイを用いて、構築物1および6(pMGX669−pMGX674)、構築物2および5(pMGX667−pNGX676)、並びに構築物5および6(pMGX674−pMGX676)を含む組換え発現系由来の正規化したサンプルを、CD32BおよびCD16Aと同時に結合可能なダイアボディ分子の発現について試験した(図10)。ELISAデータは、構築物1および6を用いたコトランスフェクション、または構築物2および5を用いたコトランスフェクションでは、一方または両方の抗原に結合できる産物は生じなかった(図10、それぞれ□および▲)。しかしながら、構築物5および6のコトランスフェクションは、CD32BおよびCD16Aの両抗原に結合できる産物の分泌をもたらした。後者の産物は、構築物5および6の二量体であり、図11に模式図で示した構造を有し、それぞれの抗原に対する1つの結合部位を含んでいる。
【0377】
IgG様へテロ四量体構造の形成を導くため、付加的な6アミノ酸のコード配列を構築物1のC末端に付加して、構築物7(配列番号16;図9に模式図で示す)を作製した。付加的な6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)は、κ型軽鎖のC末端に由来し、通常IgG分子内で重鎖の上部ヒンジドメインと相互に作用する。また、ヒンジドメインを構築物6の内部に遺伝子操作で導入し、構築物8(配列番号18、および図9)を作製した。構築物8は、さらに、上部ヒンジ領域中にアミノ酸変異A215Vを含んでいた。構築物7および構築物8をコードする発現プラスミドである、それぞれpMGX677およびpMGX678を、その後HEK-293細胞にコトランスフェクションし、上記のように発現させた。
【0378】
構築物7および8(pMGX0677 + pMGX0678)を含む組換え発現系から産生されたダイアボディ分子は、ELISAアッセイでCD32BおよびCD16Aとの結合に関して、構築物1および6(pMGX669+pMGX674)、構築物2および8(pMGX669+pMGX678)、並びに構築物6および7(pMGX67+pMGX674)(図12)を含む発現系から産生されたダイアボディ分子と比較した。
【0379】
既に述べたように、構築物1および6(pMGX669 + pMGX674)を含む発現系によって産生された分子は、CD32AおよびCD16Aのいずれにも結合できないことがわかった(図10および図12)。これに対して、構築物7および6(pMGX0677 + pMGX0674)の共発現、または構築物7および8(pMGX0677-pMGX0678)の共発現から得られる産物は、CD32AおよびCD16Aの両方と結合できた(図12)。構築物7がC末端配列FNRGEC (配列番号23)を含むことを除けば構築物1に類似していること、並びに構築物8がヒンジドメインおよびA215V変異を含むことを除けば構築物6に類似していることが注目される。このデータは、C-κ型軽鎖のC末端に由来する余分な6アミノ酸(FNRGEC;配列番号23)を、Fcを持たない「軽い」鎖に付加することが、対応する重い鎖がヒンジドメインを含むか否かにかかわらず(すなわちpMGX0677 + pMGX0674およびpMGX0677-pMGX0678、図12)、四量体IgG様ダイアボディ分子の形成を安定化するのに役立つ、ことを示している。Fcを有する「重い」ポリペプチドにヒンジドメインを付加することは、対応する「軽い」鎖へのC末端配列FNRGEC(配列番号23)の付加なしでは、明らかに同様の安定化を達成することができなかった(つまり、構築物2および8(pMGX669 + pMGX67)のコトランスフェクションの産物による結合が欠如している)。四量体ダイアボディ分子の構造を図13に模式図で示す。
【0380】
6.3 四量体IgG様ダイアボディの形成におけるドメインの順番および追加的なジスルフィド結合の効果
四量体IgG様ダイアボディ分子の「軽い」および「重い」ポリペプチド鎖間の追加的な安定化の効果を、ポリペプチド鎖上の選択された残基のシステインによる置換によって調べた。付加的なシステイン残基は、「重い」および「軽い」鎖間に付加的なジスルフィド結合を付与する。さらに、Fcドメインまたはヒンジ−Fcドメインをポリペプチド鎖のC末端からN末端に移すことで、結合活性おけるドメインの順番を調べた。付加的なジスルフィド結合を含む分子の結合活性は、そのような結合をもつ先に構築されたダイアボディ分子と比べて変わらなかったが、Fcもしくはヒンジ−Fcドメインを、ダイアボディを構成する「重い」ポリペプチド鎖のN末端に移すと、その標的抗原の一方もしくは双方に対する二重特異性分子の結合親和性および/または結合力が驚くほど改善された。
【0381】
<材料と方法>
ポリペプチド分子の構築および設計
実施例6.2で示した構築物5、6および8の改変型を作製するために、核酸発現ベクターを設計した。構築物9(配列番号19)および構築物10(配列番号20)(いずれも図13に模式図で示す)は、それぞれFcドメインまたはヒンジ−FcドメインがポリペプチドのC末端からN末端にシフトしていることを除けば、構築物8および6と類似する。さらに、使用したFcドメインは全て、野生型IgG1のFcドメインである。構築物11(配列番号21)(図14に模式図で示す)は、C末端が配列FNRGEC(配列番号23)をさらに含むように設計されていることを除けば、実施例6.1からの構築物2に類似する。構築物12(配列番号22)(図14に模式図で示す)は、Fcドメインがさらにヒンジ領域を含むことを除けば、実施例6.2からの構築物5に類似する。また、構築物11および12に関しては、2B6のVLドメインおよび2B6のVHドメインは、各ドメイン中のグリシンをシステインに置換するための単一アミノ酸変異(それぞれG105CおよびG44C)を含んでいる。
【0382】
PCRおよび発現ベクターの構築
PCRおよびPCR産物の精製プロトコルは全て、実施例6.1および6.2で説明した通りである。
【0383】
重複PCR
実施例6.1および6.2に記載の方法を用いて、最終産物を構築し、増幅し、精製した。
【0384】
最終産物を、前記のように哺乳動物発現ベクターpCIneo(Promega, Inc.)内にクローン化した。構築物をコードするプラスミドは表15に示すように命名した。
【表15】
【0385】
ポリペプチド/ダイアボディの発現
セクション6.1で記載したようにリポフェクトアミン2000を用いてHEK-293細胞内に別個に3つのコトランスフェクションを行った。前記コトランスフェクションは、すなわち構築物1および9をそれぞれコードするpMGX0669およびpMGX0719、構築物1および10をそれぞれコードするpMGX0669およびpMGX0718、並びに構築物11および12をそれぞれコードするpMGX0617およびpMGX0717である。これらのプラスミドのコトランスフェクションは、FcγRIIBおよびFcγRIIIAの双方に免疫特異的なIgG様構造をもった四価の二重特異性ダイアボディ(CBD)を発現するように設計されている。培養3日後、条件培地を回収した。条件培地中の分泌産物の量を、抗IgG Fc ELISAによって、精製したFcを基準として用いて定量化した。その後、サンプル中の産物の濃度を定量値に基づいて正規化し、この正規化したサンプルを以降のアッセイに使用した。
【0386】
ELISA
培地中に分泌されたダイアボディ分子の結合性を、上記サンドイッチELISAによってアッセイした。特に示した場合を除き、CD32Bをプレートコーティング用に、つまり標的タンパク質として用いた。また、HRP結合CD16をプローブとして使用した。
【0387】
ウェスタンブロット
上記3つのコトランスフェクションからの条件培地約15mlをSDS-PAGEによって非還元条件下で解析した。一枚のゲルをSimply Blue Safestain (Invitrogen)で染色し、続いて、同一ゲルを一般的な転写方法を用いてPVDFメンブレン(Invitrogen)に転写した。転写後、メンブレンを1×PBS中の5%脱脂粉乳でブロッキングした。その後、メンブレンを、2%脱脂粉乳1×PBS/0.1% Tween 20中の1:8000希釈したHRP結合ヤギ抗ヒトIgG1 H+L抗体10ml中で室温にて1時間静かに撹拌しながらインキュベーションした。1×PBS/0.3% Tween 20で、それぞれ5分間ずつ2回洗浄した後、ECLウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences)を用いて、使用説明書に従って室温で20分間、メンブレンを露光した。フィルムをX線処理装置で現像した。
【0388】
<結果>
構築物1および9、構築物1および10、並びに構築物11および12を含む組換え発現系由来の条件培地を、SDS-PAGE(非還元条件下)解析およびウェスタンブロッティング(抗IgGをプローブとして使用)によって解析した。ウェスタンブロットにより、構築物11および12を含む系または構築物9および1を含む系由来の産物は、主に約150kDaの単一分子種(それぞれ図15のレーン3および2)を形成することが明らかとなった。これらの産物はいずれも、内部ジスルフィド結合がダイアボディを構成する「軽い」および「重い」鎖の間に設計されている。一方、「軽い」および「重い」鎖の間に内部ジスルフィド結合を設計されていない構築物10および1から形成された分子は、分子量約75 kDaおよび約100 kDa(図15のレーン1)の少なくとも2つの分子種を形成した。
【0389】
ウェスタンブロットの結果にもかかわらず、3つの産物のそれぞれがCD32AおよびCD16の両方と結合できることがわかった(図16)。驚いたことに、C末端にヒンジ−Fcドメインを含む産物(構築物11および12から形成された)と比べて、Fc(またはFc−ヒンジ)ドメインが、Fc含有ポリペプチド鎖(すなわち「重い」鎖)のアミノ末端にある両方の発現系由来の産物(構築物9+1および構築物10+1)では、その標的ペプチド(すなわちCD32Bおよび/またはCD16)の一方または両方に対する親和性および/または結合力が増強されることが実証された。
【0390】
6.4 ポリプロテイン前駆体のプロセシングにおける内部/外部切断部位の効果、および共有結合型二重特異性ダイアボディの発現;ヒトIgGラムダ鎖およびヒンジドメインの一部を含む二重特異性ダイアボディの設計および性状解析
本明細書で説明したように、本発明のダイアボディの個々のポリペプチド鎖またはダイアボディ分子を、単一のポリプロテイン前駆体分子として発現させることができる。実施例6.1〜6.3で説明した組換え系の、前記ポリプロテイン前駆体から機能的なCBDを適切にプロセシングして発現する能力は、内部切断部位(特にフューリン切断部位)によって分離されるCBDの第1および第2ポリペプチド鎖の両方をコードする核酸を作製することによって試験した。機能的なCBDは、ポリプロテイン前駆体分子を含む組換え系から単離した。
【0391】
実施例6.3で既に述べたように、ヒトκ軽鎖由来のC末端の6アミノ酸FNRGEC (配列番号23)の付加は、ダイアボディ形成を安定化することがわかった。おそらく、これは、配列番号23を含むドメインと、Fcドメインもしくはヒンジ−Fcドメインを含むドメインとの間で鎖間相互作用が増強されるためと思われる。このラムダ鎖/Fc様相互作用の安定効果を、どちらのポリペプチド鎖もFcドメインを含まないCBDで試験した。ダイアボディの一方のポリペプチド鎖を遺伝子操作して、そのC末端に配列番号23を導入した。その相手方となるポリペプチド鎖は、IgGのヒンジドメインに由来するアミノ酸配列VEPKSC(配列番号79)を含むように遺伝子操作した。このCBDと構築物1および2を含むCBD(実施例6.1由来)との比較により、ヒンジドメインおよびラムダ鎖に由来するドメインを含むCBDは、その標的エピトープの一方または両方に対して僅かに大きい親和性を示すことが明らかとなった。
【0392】
<材料と方法>
ポリペプチド分子の構築および設計
(ポリプロテイン前駆体)
2つのポリプロテイン前駆体分子を作製するために核酸発現ベクターを設計した。両分子とも図17に模式図で示してある。構築物13(配列番号97)は、ポリペプチド鎖のN末端側から順に、3G8のVLドメイン、2.4G2のVHドメイン(mCD32Bに結合する)、フューリン切断部位、2.4G2のVLドメイン、および3G8のVHドメインを含んでいる。構築物13をコードするヌクレオチド配列を配列番号98に示す。構築物14(配列番号99)(図17)は、ポリペプチド鎖のN末端側から順に、3G8のVLドメイン、2.4G2のVHドメイン(mCD32Bに結合する)、フューリン切断部位、FMD(口蹄疫ウイルスプロテアーゼC3)部位、2.4G2のVLドメイン、および3G8のVHドメインを含んでいる。構築物14をコードするヌクレオチド配列を配列番号100に示す。
【0393】
核酸発現ベクターを、実施例6.1で示した構築物1および2の改変型を作製するために設計した。構築物15(配列番号101)(図17)は、構築物15のC末端がアミノ酸配列FNRGEC(配列番号23)を含むことを除けば、実施例6.1で示した構築物1(配列番号9)に類似している。構築物15をコードする核酸配列を配列番号102に示す。構築物16(配列番号103)(図17)は、構築物16のC末端がアミノ酸配列VEPSK(配列番号79)を含むことを除けば、実施例6.1で示した構築物2に類似している。構築物16コードする核酸配列を配列番号104に示す。
【0394】
PCRおよび発現ベクターの構築
PCRおよびPCR産物の精製プロトコルは全て、実施例6.1および6.2で説明した通りである。
【0395】
重複PCR
実施例6.1および6.2に記載の方法を用いて、適当なプライマーを使って、最終産物を構築し、増幅し、精製した。
【0396】
最終産物を、前述のように哺乳動物発現ベクターpCIneo(Promega, Inc.)内にクローン化した。構築物をコードするプラスミドは表16に示すように命名した。
【表16】
【0397】
ポリペプチド/ダイアボディの発現
セクション6.1で記載したようにリポフェクトアミン2000を用いてHEK-293細胞内に1回のトランスフェクションおよび1回のコトランスフェクションを行った。単独のトランスフェクションでは、構築物13をコードするpMGX0750を、また、コトランスフェクションでは構築物15および16をそれぞれコードするpMGX0752およびpMGX0753を用いた。培養3日後、条件培地を回収し、分泌された産物を上記のようにアフィニティー精製した。
【0398】
ELISA
培地中に分泌されたダイアボディ分子の結合性を上記サンドイッチELISAによってアッセイした。マウスCD32Bを標的タンパク質として用いてプレートをコーティングした。また、HRP結合CD16を、構築物15および16のコトランスフェクションの産物用プローブとして使用した。mCD32Bを標的タンパク質として使用し、またビオチン結合CD16Aを構築物13を含む組換え系用のプローブとして使用した。
【0399】
<結果>
構築物13を含む組換え発現系から得られた条件培地を、サンドイッチELISAで解析した。ELISAアッセイは、mCD32Bおよび/またはCD16の一方または両方への特異性についてCBDの結合性を試験した(図18)。CD32Bを標的抗原として利用し、またCD16Aを二次プローブとして用いた。ELISAにおける陽性シグナルにより、ポリプロテイン前駆体から生成されるヘテロ二量体h2.4G2-h3G8 CBDは両抗原に対して特異性を有することが明らかとなった。
【0400】
同様に、構築物15および16をコードするベクターのコトランスフェクションによって生じた精製産物をELISAアッセイで試験し、構築物1および2からなる産物(実施例6.1)と比較した。CD32Bを標的抗原として利用し、またCD16Aを二次プローブとして用いた。構築物1および2からなる産物と同様、構築物15および16の産物は、同時にCD32BおよびCD16Aと結合できることがわかった。むしろ、構築物15および16の産物が、標的抗原、すなわちCD32BまたはCD16Aの一方または両方に対して僅かに増強された親和性を有することがわかった。これは、おそらく構築物1および2からなる産物にはない、ラムダ鎖領域FNRGEC(配列番号23)とヒンジ領域VEPKSC(配列番号79)の相互作用によって与えられる鎖間結合の安定性および/または忠実度の増加(野生型のVH-VLドメインの相互作用と比較したとき)によるものと思われる。
【0401】
本発明においては、当業者にとって明らかであるように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、多数の改変および変異を含むことができる。本明細書に記載した具体的な実施形態は、単に例示の目的で提示したものである。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその権利が付与される均等の範囲によってのみ限定されるべきである。このような修飾は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0402】
本明細書で引用した全ての文献、特許および非特許文献は、個々の刊行物、特許または特許出願の全内容を参照として組み込むことが明確かつ個別に示される程度に、あらゆる目的のためにその全内容を参照として本明細書に組み入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0403】
図1A図1Aは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のヒンジドメインのアミノ酸配列を示す (IgG1ヒンジドメイン(配列番号1);IgG2ヒンジドメイン(配列番号2);IgG3ヒンジドメイン(配列番号3);IgG4ヒンジドメイン(配列番号4))。図1Aで示されたアミノ酸残基は、Kabat EUのナンバリングシステムにしたがって番号を付している。アイソタイプ配列については、重鎖間のS-S結合を形成する各ヒンジ領域の最初と最後のシステイン残基を同一位置に配置することによって、IgG1配列とのアライメントを行っている。
図1B図1Bは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFcドメインのアミノ酸配列を示す(IgG1 Fcドメイン(配列番号5);IgG2 Fcドメイン(配列番号6);IgG3 Fcドメイン(配列番号7);IgG4 Fcドメイン(配列番号8))。図1Bで示されたアミノ酸残基は、Kabat EUのナンバリングシステムにしたがって番号を付している。図1Bでは、CH2ドメイン中の残基を+で示し、CH3ドメイン中の残基を〜で示している。
図2】共有結合型二機能性ダイアボディのポリペプチド鎖の模式図を示す。共有結合型二機能性ダイアボディのポリペプチドは、短いペプチドリンカーで分離された抗体VLドメインおよび抗体VHドメインから成る。8アミノ酸残基のリンカーは、一本鎖ポリペプチドのscFv構築物への自己集合を妨げており、その代わりに、異なるポリペプチド鎖のVLドメインおよびVHドメイン間の相互作用が優先する。4つの構築物を作製した(各構築物は、構築物の左側のアミノ末端「n」から図の右側のカルボキシ末端「c」まで記載されている):構築物(1)(配列番号9)は、n−Hu2B6のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−およびC末端配列(LGGC)−cを含み、構築物(2)(配列番号11)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−およびC末端配列(LGGC)−cを含み、構築物(3)(配列番号12)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−およびC末端配列(LGGC)−cを含み、構築物(4)(配列番号13)は、n−Hu2B6のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−およびC末端配列(LGGC)−cを含む。
図3】アフィニティー精製されたダイアボディのSDS-PAGE分析を示す図である。アフィニティー精製されたダイアボディを還元(レーン1〜3)または非還元(レーン4〜6)条件下でSDS-PAGE分析にかけた。標準品のおおよその分子量を(レーン3および4の間に)示している。レーン1および4はh3G8 CMDを、レーン2および5はh2B6 CMDを、レーン3および6はh2B6-h3G8 CBDを示す。
図4A】アフィニティー精製されたダイアボディのSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)分析を示す図である。アフィニティー精製されたダイアボディをSEC分析にかけた。既知標準品、すなわち、全長IgG (〜150 kDa)、IgGのFabフラグメント(〜50kDa)、およびscFv(〜30kDa) の溶出プロファイル。
図4B】アフィニティー精製されたダイアボディのSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)分析を示す図である。アフィニティー精製されたダイアボディをSEC分析にかけた。既知標準品、すなわち、h2b6 CMD、h3G8 CMDおよびh2B6-h3G8 CBDの溶出プロファイル。
図5】h2B6-h3G8 CBDのsCD32BおよびsCD16Aとの結合を示す図である。h2B6-h3G8 CBDとsCD32BおよびsCD16Aとの結合を、サンドイッチELISAで分析した。sCD32Bを標的タンパク質として使用した。二次プローブは、HRPコンジュゲートsCD16Aとした。CD16Aに結合するh3G8 CMDを対照として使用した。
図6A-C】sCD16A、sCD32BおよびsCD32Aとのダイアボディの結合のBIAcore解析を示す図である。2B6-h3G8 CBD、h2B6 CMDおよびh3G8 CMDとsCD16A、sCD32BおよびsCD32A (陰性対照)との結合をSPR解析によって分析した。h3G8 scFvも対照として試験した。(A) sCD16との結合、(B) sCD32Bとの結合、および(C)sCD32Aとの結合。ダイアボディを100nMの濃度で、scFvを200nMの濃度で、流速50ml/分にて60秒間、受容体表面に投入した。
図7A-C】sCD16Aとのダイアボディの結合のBIAcore解析を示す図である。h3G8 CMDおよびh2B6-h3G8 CBDとsCD16Aとの結合をSPR解析によって分析した。h3G8 scFvも対照として試験した。(A) h3G8 CMD sCD16Aとの結合;(B) h2B6-h3G8 CBDとsCD16Aとの結合;(C) h3G8 scFvとsCD16Aとの結合。ダイアボディを6.25〜200nMの濃度で、流速70ml/分にて180秒間、受容体表面に投入した。
図7D-E】sCD32Bとのダイアボディの結合のBIAcore解析を示す図である。h2B6 CMDおよびh2B6-h3G8 CBDとsCD32Bとの結合をSPR解析によって分析した。(D) h2B6 CMDとsCD32Bとの結合、および(E) h2B6-h3G8 CBDとsCD32Bとの結合。ダイアボディを6.25〜200nMの濃度で、流速70ml/分にて180秒間、受容体表面に投入した。
図8】共有結合型二重特異性ダイアボディ分子を形成するためのVLおよびVHドメインを含んだポリペプチド鎖の相互作用を示す模式図である。NH2およびCOOHは、それぞれ各ポリペプチド鎖のアミノ末端およびカルボキシ末端を表す。Sは、各ポリペプチド鎖のC末端システイン残基を表す。VLおよびVHは、それぞれL鎖可変ドメインおよびH鎖可変ドメインを示す。点線および破線は、2つのポリペプチド鎖同士を区別するためのものであり、特に前記鎖のリンカー部分を表している。h2B6 Fvおよびh3G8 Fvは、それぞれCD32BおよびCD16に特異的なエピトープ結合部位を示す。
図9】共有結合型二重特異性ダイアボディのFcドメインを含むポリペプチド鎖の模式図を示す。本発明のダイアボディ分子のポリペプチド構築物の模式図(各構築物は、構築物の左側のアミノ末端「n」から図の右側のカルボキシ末端「c」まで記載されている)。構築物(5)(配列番号14)は、n−Hu2B6のVLドメイン−第1リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−第2リンカー(LGGC)−およびヒトIgG1のC末端Fcドメイン−cを含み、構築物(6)(配列番号15)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−および第2リンカー(LGGC)−およびヒトIgG1のC末端Fcドメイン−cを含み、構築物(7)(配列番号16)は、n−Hu2B6のVLドメイン−第1リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−およびC末端配列(LGGCFNRGEC) (配列番号17)−cを含み、構築物(8)(配列番号18)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−および第2リンカー(LGGC)−およびヒトIgG1のC末端ヒンジ/Fcドメイン(A215Vのアミノ酸置換を有する)−cを含む。
図10】Fcドメインを含むダイアボディ分子とsCD32BおよびsCD16Aとの結合を示す図である。Fcドメインを含むダイアボディ分子とsCD32BおよびsCD16Aとの結合をサンドイッチELISAで分析した。分析したダイアボディは、次の3つの組換え発現系により産生された:構築物1および6をそれぞれ発現するpMGX669およびpMGX674のコトランスフェクション、構築物2および5をそれぞれ発現するpMGX667およびpMGX676のコトランスフェクション、構築物5および6をそれぞれ発現するpMGX676およびpMGX674のコトランスフェクション。sCD32Bを標的タンパク質として用いた。第2プローブはHRPコンジュゲートsCD16Aとした。
図11】二価の共有結合型ダイアボディ分子を形成するために、それぞれ1つのFcドメインを含む、2つのポリペプチド鎖の相互作用を示す模式図である。NH2およびCOOHは、各ポリペプチド鎖のアミノ末端およびカルボキシ末端をそれぞれ表す。Sは、各ポリペプチド鎖の第2リンカー配列中のシステイン残基間の少なくとも1つのジスルフィド結合を表す。VLおよびVHは、それぞれL鎖可変領域およびH鎖可変領域を示す。点線および破線は、2つのポリペプチド鎖同士を区別するためのものであり、特に前記鎖の第1リンカー部分を表す。CH2およびCH3は、FcドメインのCH2およびCH3定常ドメインを示す。h2B6 Fvおよびh3G8 Fvは、それぞれCD32BおよびCD16に特異的なエピトープ結合部位を示す。
図12】ヒンジ/Fcドメインを含むダイアボディ分子のsCD32BおよびsCD16Aに対する結合性を示す図である。Fcドメインを含むダイアボディ分子とsCD32BおよびsCD16Aとの結合については、サンドイッチELISAで分析した。分析したダイアボディは、次の4つの組換え発現系により産生された:構築物1および6をそれぞれ発現するpMGX669+pMGX674のコトランスフェクション、構築物2および8をそれぞれ発現するpMGX669+pMGX678のコトランスフェクション、構築物7および6をそれぞれ発現するpMGX677+pMGX674のコトランスフェクション、構築物7および8をそれぞれ発現するpMGX677+pMGX678のコトランスフェクション。sCD32Bを標的タンパク質として使用した。第2プローブは、HRPコンジュゲートsCD16Aとした。
図13】四量体ダイアボディ分子を形成するためのポリペプチド鎖の相互作用を示す模式図である。NH2およびCOOHは、各ポリペプチド鎖のそれぞれアミノ末端およびカルボキシ末端を表す。Sは、Fcを持つ「重い」ポリペプチド鎖の第2リンカー配列中のシステイン残基と、Fcを持たない「軽い」ポリペプチド鎖のC末端配列中のシステイン残基間の少なくとも1つのジスルフィド結合を表す。VLおよびVHは、それぞれL鎖可変ドメインおよびH鎖可変ドメインを示す。点線および破線は、2つのポリペプチド鎖同士を区別するためのものであり、特に前記重い鎖の第1リンカー部分または前記軽い鎖のリンカーを表す。CH2およびCH3は、FcドメインのCH2およびCH3定常ドメインを示す。h2B6 Fvおよびh3G8 Fvは、それぞれCD32BおよびCD16に特異的なエピトープ結合部位を示す。
図14】共有結合型二重特異性ダイアボディを形成するFcドメインを含むポリペプチド鎖の模式図である。本発明のダイアボディ分子を形成するポリペプチド構築物の模式図(各構築物は、構築物の左側のアミノ末端「n」から図の右側のカルボキシ末端「c」まで記載されている)。構築物(9)(配列番号19)は、n−ヒトIgG1のヒンジ/Fcドメイン−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG(配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−リンカー(GGGSGGGG(配列番号10))−およびC末端LGGC配列−cを含み、構築物(10)(配列番号20)は、n−ヒトIgG1のFcドメイン−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG(配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−およびC末端LGGC配列−cを含み、構築物(11)(配列番号21)は、n−Hu2B6のVLドメイン(G105C)−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−およびA215Vのアミノ酸置換を有するヒトIgG1のC末端ヒンジ/Fcドメイン−cを含み、構築物(12)(配列番号22)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン(G44C)−およびC末端FNRGEC(配列番号23)配列−cを含む。
図15】アフィニティー四量体ダイアボディのSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を示す図である。構築物10および1、構築物9および1、構築物11および12を発現するベクターでコトランスフェクションされた組換え発現系によって産生されたダイアボディを、非還元的条件のSDS-PAGE分析(A)、およびヤギ抗ヒトIgG1 H+Lをプローブとして用いたウェスタンブロット分析(B)にかけた。SDS-PAGEゲル中のタンパク質をシンプリー ブルー セーフステイン(Simply Blue Safestain;Invitrogen社)で視覚化した。AおよびBの両パネルにおいて、構築物10および1、構築物9および1、構築物11および12Aを含むダイアボディ分子は、それぞれレーン1、2、3に相当する。
図16】Fcドメインおよび遺伝子操作によって作られた鎖間ジスルフィド結合を含むダイアボディ分子のsCD32BおよびsCD16Aに対する結合性を示す図である。Fcドメイン、および「軽い」ポリペプチド鎖と「重い」ポリペプチド鎖の間の遺伝子操作によって作られたジスルフィド結合を含むダイアボディ分子と、sCD32BおよびsCD16Aとの結合をサンドイッチELISAでアッセイした。アッセイしたダイアボディは、次の3つの組換え発現系により産生された:それぞれ構築物1および10を発現する系、構築物1および9を発現する系、並びに構築物11および12を発現する系。sCD32Bを標的タンパク質として使用した。第2プローブはHRPコンジュゲートsCD16Aとした。h3G8の結合を対照として用いた。
図17】ダイアボディ分子のポリタンパク質前駆体の模式図、およびラムダ軽鎖および/またはヒンジドメインを含むポリペプチド鎖の模式図である。本発明のダイアボディ分子を形成するポリペプチド構築物の模式図(各構築物は、構築物の左側のアミノ末端「n」から図の右側のカルボキシ末端「c」まで記載されている)。構築物(13)(配列番号97)は、n−3G8のVLドメイン−第1リンカー(GGGSGGGG(配列番号10))−2.4G2VHのVHドメイン−第2リンカー(LGGC)−フューリン認識部位(RAKR(配列番号95))−2.4G2のVLドメイン−第3リンカー(GGGSGGG (SEQ ID NO:10)−3G8のVHドメイン−およびC末端LGGCドメインを含み(配列番号97をコードするヌクレオチド配列は配列番号98に示す)、構築物(14)(配列番号99)は、n−3G8のVLドメイン−第1リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−2.4G2VHのVHドメイン−第2リンカー(LGGC)−フューリン認識部位(RAKR(配列番号95))−FMD(口蹄疫ウイルスプロテアーゼC3)部位−2.4G2のVLドメイン−第3リンカー(GGGSGGG(配列番号10)−3G8のVHドメイン−およびC末端LGGCドメインを含む(配列番号99をコードするヌクレオチド配列は配列番号100に示す)。構築物(15)(配列番号101)は、n−Hu2B6のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu3G8のVHドメイン−およびC末端FNRGEC (配列番号23)ドメインを含む(配列番号101をコードするヌクレオチド配列は配列番号102に示す)。構築物(16)(配列番号103)は、n−Hu3G8のVLドメイン−リンカー(GGGSGGGG (配列番号10))−Hu2B6のVHドメイン−C末端VEPKSC(配列番号79)ドメインを含む(配列番号103をコードするヌクレオチド配列は配列番号104に示す)。
図18】ポリタンパク質前駆体分子に由来するダイアボディ分子のmCD32BおよびsCD16Aに対する結合性を示す図である。ポリタンパク質前駆体分子構築物13(配列番号97)に由来するダイアボディ分子とマウスCD32B(mCD32B)および可溶性CD16A(sCD16A)との結合をサンドイッチELISAで解析した。mCD32Bを標的タンパク質として用いた。第2プローブはビオチンコンジュゲートsCD16Aとした。
図19】ラムダ鎖および/またはヒンジドメインを含むダイアボディのsCD32BおよびsCD16Aに対する結合性を示す図である。ヒトラムダ軽鎖のC末端に由来するドメインおよび/またはIgGのヒンジドメインを含むダイアボディと、sCD32BおよびsCD16Aとの結合をサンドイッチELISAでアッセイし、構築物1および2(図5)からなるダイアボディと比較した。アッセイしたダイアボディは、構築物15および16(それぞれ配列番号101および配列番号103)を発現する組換え発現系により産生された。sCD32Bを標的タンパク質として使用した。第2プローブはHRPコンジュゲートsCD16Aとした。小点状模様のバーは構築物15/16の組合せ物を表し、また市松模様のバーは構築物1/2の組合せ物を表す。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A-C】
図7A-C】
図7D-E】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]