特許第5962855号(P5962855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962855
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   G01N23/223
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-519602(P2015-519602)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2013075569
(87)【国際公開番号】WO2014192173
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-110689(P2013-110689)
(32)【優先日】2013年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 博朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛治
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229973(JP,A)
【文献】 特開2011−13028(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2116842(EP,A1)
【文献】 発明協会公開技報公技番号2010−505135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/223
JSTPlus(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料に一次X線を照射するためのX線源と、
b)一次X線が照射されることにより前記試料から発せられる蛍光X線を検出するための検出器と、
c)前記X線源から発せられた一次X線の導入口及び前記検出器の検出口を備え、前記導入口と前記試料を結ぶ一次X線の光路と、前記試料と前記検出口を結ぶ蛍光X線の光路を含む空間を閉鎖する分析チャンバと、
d)ヘリウムガスを前記導入口を通して前記分析チャンバ内に導入するための第1導入手段と、
e)ヘリウムガスを前記検出口を通して前記分析チャンバ内に導入するための第2導入手段と、
f)前記第1導入手段及び前記第2導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する流量制御手段と
を備えることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記流量制御手段が、前記第1導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する第1流量制御手段と、前記第2導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する第2流量制御手段から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記第1導入手段が、入口側端部がヘリウムガス供給源に接続され、出口側端部が前記導入口に接続された第1導入管から構成され、
前記第2導入手段が、入口側端部が前記ヘリウムガス供給源に接続され、出口側端部が前記検出口に接続された第2導入管から構成され、
前記第1導入管及び前記第2導入管の少なくとも一方から前記分析チャンバ内に大気を強制的に導入するための大気導入手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体・粉体・液体試料にX線を照射したときに該試料より発生する蛍光X線ピークの波長(エネルギー)や強度を検出することにより、該試料中の原子番号23未満の軽元素成分の定性・定量分析を行う蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析装置は、X線源から発せられる一次X線を分析チャンバ内の試料に照射することにより該試料から発せられる蛍光X線を検出器で検出し、そのピークの波長(エネルギー)や強度を測定することにより試料中の元素成分の定性・定量分析を行う。ここで、X線源から試料までの一次X線の光路や試料から検出器までの蛍光X線の光路に大気が存在すると、一次X線や蛍光X線が大気に吸収されて減衰する。特に原子番号が23未満の軽元素は発生する蛍光X線の波長(エネルギー)が大きく(小さく)、大気による吸収の影響を強く受ける。そこで、分析対象に軽元素が含まれる場合は、分析チャンバ内を大気よりもX線の吸収が少ないヘリウムガスで置換するようにしている。
【0003】
分析チャンバにはガス供給口及びガス出口が設けられており、ガス供給口からヘリウムガスを供給しつつガス出口から大気を押し出すことにより該分析チャンバ内がヘリウムガスで置換される。分析チャンバは、ガス供給口やガス出口とは別にX線源からの一次X線の導入口や検出器の検出口等の開放部を有していることから、従来は、これら開放部を通した気体の出入りを防止するために該開放部を薄い有機膜で覆い、ヘリウムガス置換作業の効率化を図っている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記した従来の方法は、X線の吸収が少ない有機膜が用いられているものの、一次X線の照射により発せられる蛍光X線の波長(エネルギー)が大きい(小さい)軽元素の場合は、一次X線の光路や蛍光X線の光路に有機膜が存在することによるX線の吸収の影響が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−349852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、原子番号が23未満の軽元素の分析精度の向上を目的としながら、分析チャンバ内のヘリウムガス置換作業の効率化を図ることができる蛍光X線分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る蛍光X線分析装置は、
a)試料に一次X線を照射するためのX線源と、
b)一次X線が照射されることにより前記試料から発せられる蛍光X線を検出するための検出器と、
c)前記X線源から発せられた一次X線の導入口及び前記検出器の検出口を備え、前記導入口と前記試料を結ぶ一次X線の光路と、前記試料と前記検出口を結ぶ蛍光X線の光路を含む空間を閉鎖する分析チャンバと、
d)ヘリウムガスを前記導入口を通して前記分析チャンバ内に導入するための第1導入手段と、
e)ヘリウムガスを前記検出口を通して前記分析チャンバ内に導入するための第2導入手段と、
f)前記第1導入手段及び前記第2導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する流量制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記蛍光X線分析装置においては、前記流量制御手段が、前記第1導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する第1流量制御手段と、前記第2導入手段によって前記分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を制御する第2流量制御手段から構成されていることが好ましい。このような構成によれば、導入口や検出口の位置や構造等に応じて該導入口や該検出口から分析チャンバ内に導入されるヘリウムガスの流量を適宜に調整することができる。
【0009】
また、前記第1導入手段が、入口側端部がヘリウムガス供給源に接続され、出口側端部が前記導入口に接続された第1導入管から成り、前記第2導入手段が、入口側端部が前記ヘリウムガス供給源に接続され、出口側端部が前記検出口に接続された第2導入管から成り、前記第1導入管及び前記第2導入管の少なくとも一方から前記分析チャンバ内に大気を強制的に導入するための大気導入手段を備えることが好ましい。
このような構成によれば、分析チャンバ内のヘリウムガスを大気で置換するために要する時間を短縮することができる。また、導入口や検出口に溜まったヘリウムガスを確実に大気で置換することができるため、大気雰囲気で試料を分析する際のヘリウムガスの影響をなくすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1導入手段及び第2導入手段を設けて、分析チャンバの開放部である一次X線の導入口及び検出器の検出口からヘリウムガスを導入するようにしたので、従来は置換が困難であったこれら開放部内を効率よくヘリウムガスで置換することができる。このため、ヘリウムガスの導入開始から検出器によって検出される軽元素の蛍光X線強度が安定するまでの時間を短縮でき、分析時間の短縮、さらには、分析処理能力の向上を図ることができる。
また、従来に比べて、一次X線の導入口及び検出器の検出口のヘリウムガス置換率が向上するため、検出器によって検出される軽元素の蛍光X線強度が増加し、分析感度や分析精度の向上を図ることができる。
さらに、従来の蛍光X線分析装置と異なり、一次X線や蛍光X線の光路上にX線を吸収する部材が存在しないため、試料に照射される一次X線や試料から発せられて検出器に検出される蛍光X線の強度の低下を抑えることができ、試料中の原子番号23未満の軽元素成分の定性・定量分析精度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例に係る蛍光X線分析装置の概略構成図。
図2】従来の蛍光X線分析装置(a)及び本実施例に係る蛍光X線分析装置(b)のチャンバ内にヘリウムガスを導入した時のヘリウムガス流量と置換率との関係を示す図。
図3】従来の蛍光X線分析装置(a)及び本実施例に係る蛍光X線分析装置(b)の蛍光X線(Na-Kα)強度の時間的変化を示す図。
図4】従来の蛍光X線分析装置(a)及び本実施例に係る蛍光X線分析装置(b)の蛍光X線(S-Kα)強度の時間的変化を示す図。
図5】従来の蛍光X線分析装置の概略構成図。
図6】本発明の第2実施例に係る蛍光X線分析装置の概略構成図。
図7】本発明の第3実施例に係る蛍光X線分析装置の概略構成図。
図8】本発明の第4実施例に係る蛍光X線分析装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のいくつかの具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の第1実施例である蛍光X線分析装置の概略的構成を示す図である。本実施例の蛍光X線分析装置10は下面照射型の蛍光X線分析装置であり、一次X線を生成するためのX線管球12、試料から発生する蛍光X線(二次X線)を検出するための検出器13(例えば半導体検出器、比例計数管)、X線の通過口141を備える試料台14等を備えている。
【0014】
試料台14の下部には分析チャンバ16が設けられている。分析チャンバ16には一次X線の導入口17と検出器13の先端部が取り付けられるハウジング18が設けられている。X線管球12から発せられた一次X線は導入口17から分析チャンバ16内を通り、通過口141を介して試料台14に保持された試料Sに照射される。また、ハウジング18の先端には検出口181が設けられており、試料Sから発せられ通過口141から出射された蛍光X線は、分析チャンバ16を通り、検出口181を経て検出器13に入射される。
【0015】
分析チャンバ16の内部は導入管20を通じてヘリウムガス供給源であるヘリウムガスボンベ22に連通している。導入管20には流量制御バルブ24が設置されており、制御装置25からの指示によって流量制御バルブ24の開度が調整され、分析チャンバ16内に適宜の流量のヘリウムガスが導入されるようになっている。
分析チャンバ16の下部壁161のうち導入口17の近傍にはガイドブッシュ171が取り付けられており、このガイドブッシュ171には第1ガス導入口162が設けられている。
【0016】
また、ハウジング18には第2ガス導入口164が設けられている。ヘリウムガスボンベ22から延びる導入管20は途中で二つに分岐しており、各分岐管201、202の先端部は第1ガス導入口162及び第2ガス導入口164にそれぞれ接続されている。分岐管201及び分岐管202がそれぞれ本発明の第1導入管及び第2導入管に相当する。流量制御バルブ24は分岐管201、202よりも手前(ヘリウムガスボンベ22側)の導入管20に設置されている。
【0017】
上記構成の蛍光X線分析装置10において、導入管20のヘリウムガスの流量を変えて分析チャンバ16内にヘリウムガスを導入したときのヘリウムガスの置換率(He置換率)を調べた。ここでは、プレス加工した硫酸ナトリウム(Na2SO4)の粉末試料を用い、そのときのNa-Kα強度とS-Kα強度を測定した値(実測値)から次のようにしてHe置換率を求めた。
【0018】
分析チャンバ16内がヘリウムガスで置換されているときのNa-KαとS-Kαの蛍光X線強度は、理論上、次の(1)式及び(2)式で表すことができる。
(Na-Kα強度)=(真空でのNa-Kα強度)×(一次X線の減衰率)×(Na-Kαの減衰率) …(1)
(S-Kα強度)=(真空でのS-Kα強度)×(一次X線の減衰率)×(S-Kαの減衰率)
…(2)
(1)式及び(2)式において、一次X線の減衰率、Na-Kα及びS-Kαの減衰率はヘリウムガスによる減衰率を示す。つまり、分析チャンバ16内が完全に(100%)ヘリウムガスで置換されている場合、理論上は、真空でのNa-Kα強度にヘリウムガスによる一次X線及びNa-Kαの減衰率を乗じた値がNa-Kα強度の実測値となり、真空でのS-Kα強度にヘリウムガスによる一次X線及びS-Kαの減衰率を乗じた値がS-Kα強度の実測値となる。
【0019】
硫酸ナトリウムから発せられる蛍光X線の真空でのNa-Kα強度とS-Kα強度、当該Na-Kα及びS-Kαのヘリウムガスによる減衰率、一次X線のヘリウムガスによる減衰率は既知であることから、Na-KαとS-Kαの実測値からチャンバ16内の気体がヘリウムガスで置換された割合(He置換率)を求めることができる。
【0020】
ただし、実際は大気圧下の分析チャンバ16をヘリウムガスで置換するため、Na-Kα強度やS-Kα強度の実測値は、分析チャンバ16内の大気による一次X線や蛍光X線の吸収の影響を受ける。そこで、本実施例では、ヘリウムガスだけでなく大気による一次X線やNa-Kα及びS-Kαの減衰も考慮した、Na-Kαの実測値及びS-Kαの実測値とHe置換率との関係を表すデータテーブルを作成し、このデータテーブルをメモリに記憶しておくことにより、Na-Kαの実測値及びS-Kαの実測値からHe置換率を求めることとした。
【0021】
図2に、ヘリウムガスの流量とHe置換率との関係を示す。また、図3にヘリウムガスの導入開始からのNa-Kα強度の変化を、図4にヘリウムガスの導入開始からのS-Kα強度の変化を示す。なお、図2図4の(a)は、分析チャンバ16の下部壁161に設けたガス導入口からヘリウムガスを導入する従来の蛍光X線分析装置100(図5参照、以下、従来装置という)の結果を、(b)は本実施例の蛍光X線分析装置10(以下、実施装置という)の結果を示す。また、図2中、横軸はHe流量(L/min)を、縦軸はHe置換率(%)を示す。ただし、図2では、分析チャンバ16内が真空状態のときのNa-Kα強度及びS-Kα強度のときを100%と表すこととする。また、図2では、検出器13側(試料−検出器間)のHe置換率を*で、一次側(X線管球−試料間)のHe置換率を◆で示す。
【0022】
図2から明らかなように、従来装置では、全てのHe流量において検出器13側よりも一次側のHe置換率が低く、特に、He流量が0.5〜1.5L/minのときは一次側のHe置換率が非常に低かった。これに対して、実施装置では、He流量が0.5〜1.5L/minのときの一次側のHe置換率は検出器13側よりもわずかに低いが、大幅に改善されていた。また、He流量が1.5L/min以上のときは検出器13側及び一次側のHe置換率はほぼ同じとなり、しかも90%以上のHe置換率が得られた。
【0023】
また、図3及び図4から明らかなように、全てのHe流量において、He導入開始直後から実施装置のNa-Kα及びS-Kαの蛍光X線強度は従来装置よりも高くなった。さらに、従来装置では、He導入開始から300秒経過してもNa-KαとS-Kαの蛍光X線強度は平衡(安定)状態に達しなかったが、実施装置では、He流量が1.5L/min以上のときにHe導入開始から100秒程度で平衡状態に達した。従って、実施装置では、従来装置に比べてHe置換作業に要する時間を短縮できることがわかる。
【0024】
以上より次のことが分かる。本実施例では、一次X線の導入口17の近傍に第1ガス導入口162を設けると共に、検出器13のハウジング18に第2ガス導入口164を設け、導入口17及び検出器13の検出口181を通じて分析チャンバ16内にHeを導入するようにした。一次X線の導入口17及び検出器13の検出口181はその構造上、ヘリウムガスの置換が難しく、従来はこれらの箇所のHe置換率が低かったが、本実施例では、導入口17及び検出器13の検出口181のHe置換率を向上させることができる。この結果、検出器13で検出される軽元素の蛍光X線強度が増加するため、検出感度や分析精度の向上を図ることができる。また、導入口17及び検出器13の検出口181を効率よくヘリウムガスで置換することができるため、ヘリウムガスの導入開始から蛍光X線強度が安定するまで(平衡状態に達するまで)の時間を短縮することができ、分析時間の短縮化を図ることができる。この結果、単位時間当たりのサンプル処理量が増大し、サンプル処理能力を向上することができる。
【実施例2】
【0025】
図6は本発明の第2実施例に係る蛍光X線分析装置10Aを示している。この蛍光X線分析装置10Aでは、流量制御バルブ24に代えて流量制御バルブ24A,24Bを導入管20の分岐管201,202にそれぞれ設置している。流量制御バルブ24A及び24Bはそれぞれ制御装置25からの指示によって個別に開度が調整される。このような構成により、本実施例では、分岐管201及び分岐管202を流れるヘリウムガスの流量をそれぞれ個別に調整することができる。このため、例えば導入口17の方が検出口181よりも構造が複雑でヘリウムガスが分析チャンバ16内に流入し難い場合でも、分岐管202よりも分岐管201の方がヘリウムガスの流量を多くすることで、導入口17から分析チャンバ16内に導入されるヘリウムガスの量と検出口181から分析チャンバ16内に導入されるヘリウムガスの量を同じにすることができる。
【実施例3】
【0026】
図7は本発明の第3実施例に係る蛍光X線分析装置10Bを示している。この蛍光X線分析装置10Bは、導入管20のうちヘリウムガスボンベ22と流量制御バルブ24の間に切換制御バルブ30を設置し、この切換制御バルブ30にコンプレッサ32を接続した点が第1実施例の蛍光X線分析装置10と異なる。そして、分析チャンバ16内にヘリウムガスを導入するときは、切換制御バルブ30を切り換えてヘリウムガスボンベ22と導入管20を連通させ、大気雰囲気下で分析を行う場合は、切換制御バルブ30を切り換えてコンプレッサ32と導入管20を連通させるようにした。
【0027】
本実施例によれば、次の作用、効果が得られる。すなわち、分析チャンバ16内をヘリウムで置換して分析を行った後に大気雰囲気で分析を行う場合は、分析チャンバ16(光学系)内を大気開放するが、導入口17やハウジング18内に溜まったヘリウムガスが完全に放出されずに残留分として残ることがある。この状態で分析を行うと、完全に大気で置換された状態で分析を行った場合よりも検出器13で検出される軽元素の蛍光X線強度が高くなり、軽元素の定量結果がヘリウムガスの残留量によって変動することになる。ファンダメンタル・パラメーター(FP)法による定量では、軽元素の分析結果が他の重元素の定量結果に大きく影響するため、軽元素の定量結果が変動することは好ましくない。
【0028】
これに対して、本実施例では、大気雰囲気下で分析を行う場合はコンプレッサ32により分析チャンバ16内に大気を強制導入することができる。従って、導入口17や検出器13の先端部のハウジング18内に溜まったヘリウムガスを効率よく大気で置換することができるため、定量分析精度を向上することができる。また、分析チャンバ16内を大気で置換するための時間も短縮することができる。
【実施例4】
【0029】
図8は本発明の第4実施例に係る蛍光X線分析装置10Cを示している。この蛍光X線分析装置10Cは、第2実施例の蛍光X線分析装置10A(図6参照)の導入管20に切り替え制御バルブ30及びコンプレッサ32を設置した構成を有している。このような構成においても上記した第3実施例に係る装置10Bと同様の作用、効果が得られる。
【0030】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施例はいずれも、試料台の上面に載置された試料に対して該試料台の下方から一次X線を照射するいわゆる下面照射型蛍光X線分析装置への本発明の適用例であるが、試料に対して上方から一次X線を照射する上方照射型蛍光X線分析装置や、試料に対して側方から一次X線を照射する側方照射型蛍光X線分析装置に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
10、10A、10B、10C…蛍光X線分析装置
12…X線管球
13…検出器
14…試料台
141…X線通過口
16…分析チャンバ
162…第1導入口
164…第2導入口
18…ハウジング
181…検出口
20…導入管
201、202…分岐管
22…ヘリウムガスボンベ
24…流量制御バルブ
25…制御装置
30…切換制御バルブ
32…コンプレッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8