(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、新しいディスプレイ及び照明技術のための基本であり、高解像度又は高画素数の高精細ディスプレイのアプリケーション並びに、高効率で広い面積の、可撓性の照明アプリケーションに良好に適合する。OLED装置は、カソードとアノードとの間に挟まれたエレクトロルミネセント有機材料の薄膜を含み、これらの電極の一方又は両方は透明な伝導体である。電圧がこれらの装置に印加されると、電子及び正孔は、それぞれ対応する電極から注入されて、放射性励起子の中間生成物を介してエレクトロルミネセント有機材料内に再結合する。
【0003】
OLED装置において、生成した光の70%以上が装置構造体内のプロセスのために典型的には失われる。より高い屈折率の有機層及び酸化インジウムスズ(ITO)層とより低い屈折率の基板層の間のインターフェースでの光の捕捉が、この低い抽出効率の主な原因である。放射された光の比較的少量のみが、透明な電極を通って「有用な光」として現われる。光の大半は内部反射し、これは装置の端部からの光の放射となるか、あるいは装置内で捕捉され、また繰り返されるパスを作った後、最終的には装置内で吸収されて失われる。
【0004】
蛍光染料若しくはリン光性材料を使用して、電荷注入層又は輸送層の改質などの方法によって、又は多層構造体(例えばK.ミーアホルツ(Meerholz)の「アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Adv.Funct.Materials)」(2001年、11巻、4号、251頁)を参照)を使用することによって、OLEDの内部量子効率(注入された電子1個当たり生成される光子の数)を改善する努力がなされてきた。光抽出効率(内部で生成される光子の数に対しての、構造体から現われる光子の数)は、発光層自体に対する外部の要因によって影響を受ける場合がある。
【0005】
ボトムエミッション型(bottom emitting)OLEDは、高屈折率層(光生成、キャリア移動、注入又はブロックのための有機層並びに典型的に、透明な導電性酸化物層)並びに低屈折率の基板材料(典型的にガラス、しかしポリマーフィルムの場合もある)を含有するコアからなると考えられることがある。よって、コア内で生成される光は、2つの高屈折率から低屈折率のインターフェースに衝突する場合があり、その場合には光は内部反射をする場合がある。第1のインターフェースでの衝突の結果、コアから逃げることのできない光は、導波路モードに制限され、その一方で、第1のインターフェースを通過するが、基板から空中へのインターフェースでの反射の結果、基板から逃げることのできない光は、基板モードに制限される。同様な光学的喪失が、トップエミッション型(top emitting)OLED内のインターフェースにより発生する。
【0006】
そのインターフェースを阻害(例えばマイクロレンズ又は粗面)することにより、基板から空中へのインターフェースに到達する光に影響を与えようとする、様々な解決策が提案されてきた。基板の中に又は接着剤の中に散乱要素を導入し、これにより基板モードを遮断し装置の外に光を再指向している者もいる(公開済みPCT出願国際公開第2002037580(A1)号(チョウ(Chou))を参照)。そのインターフェースで散乱又は回折要素を導入することにより、コアから基板へのインターフェースを阻害する、いくつかの予備的試みさえもある。散乱構造又は回折構造がこのインターフェースに配置されたとき、光抽出において最も効果的であるということを、詳細な解析が示している(M.フジタ(M.Fujita)らの「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Jpn.J.Appl.Phys.)」(2005年、44(6A)、3669〜77頁)。散乱又は回折要素と充填材料との間の屈折率差が大きいとき、及び屈折率差変動の長さスケールが光の波長に同程度であるとき、散乱効率は最大となる(例えば、F.J.P.スフーアマンス(Schuurmans)らの「サイエンス(Science)」(1999年、284(5411)、141〜143頁を参照)。
【0007】
この光抽出層と接触する、欠陥のないOLED装置の製造は、滑らかで平坦な表面を必要とし、よって光抽出フィルムの上面の平坦性が重要である。しかしながら、OLEDの外に光を結合するために、電極構造体に波形を付けるいくつかの研究がなされている(M.フジタ(M.Fujita)らの「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Jpn.J.Appl.Phys.)」(2005年、44(6A)、3669〜77頁)。これにより装置内の電場に対して得られる結果は、悪影響を有すると見込まれる。よって、このインターフェースの阻害の一方で、装置の電気的動作に悪影響を与えないように、多大な注意が払われなければならない。これらの相対する課題のバランスをとるための実用的な解決策はまだ提案されていない。
【0008】
無機発光ダイオード(LED)での外部効率において同様な問題が存在し、ここでは、活性物質のとても高い屈折率が、内部で生成した光の抽出を厳しく制限する場合がある。これらの場合において、フォトニック結晶(PC)材料を利用し、抽出効果を改善するいくつかの試みがなされている(S.ファン(Fan)、「フィジカル・レビュー・レターズ(Phys.Rev.Letters)」(1997年、78巻、第17号、3294頁);H.イチカワ(Ichikawa)、「アプライド・フィジカル・レターズ(Appl.Phys.Letters)」(2004年、84巻、457頁))。OLED効率改善に関連した、PCの利用における同様な報告(M・フジタ(Fujita)、アプライド・フィジカル・レターズ(Appl.Phys.Letters)(2004年、85巻、5769頁);Y.リー(Lee)、アプライド・フィジカル・レターズ(Appl.Phys.Letters)(2003年、82巻、3779頁))が登場し始めているが、既に報告された結果は、既存のOLED製造プロセスの中にそれらを組み入れるのを促進せず、時間がかかりコストのかかる手順である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態は、光を抽出するナノ構造体又は他のナノ構造体、ポリマー複製プロセスにおいては、ナノ粒子の直接成膜又はOLED装置のための光抽出フィルムを作製するための他のプロセスを含む。多機能フィルム製品は、光抽出を強化することに加えて、基板、封止材、バリア層、フィルタ、偏光板又は色変換器などの追加の機能の役割を果たすことができ、OLED装置の製造中又は製造後に用いてもよい。フィルムの構造は、装置内の高屈折率の層と低屈折率の層との間のインターフェースを改質することによる装置からの光抽出の改善された効率に関して、フォトニック結晶又は他のナノ構造体に基づいている。
【0014】
本発明の要素は、制御される光の波長と同程度又はそれ未満の寸法の構造体の提供と、構造体を囲む領域に充填し、またOELD構造体と接触するようになる、実質的に滑らかな表面を提示するために構造体を平坦化するための、対照的な屈折率を有する材料の提供と、光(すなわち、さもなければ同領域に捕捉されてしまうであろう光)を抽出するのに効果的であるために発光領域から十分短い距離内の、この対照的な屈折率のナノ構造化層の配置と、を含む。
【0015】
高屈折率の材料からの、低屈折率媒質を有するインターフェースの上への光の入射は、臨界角度θ
C(θ
C=sin
−1(n
2/n
1)によって定義される)を超える全ての入射角度に関して全反射(TIR)し、式中、n
1及びn
2は、それぞれ高屈折率領域及び低屈折率領域の屈折率である。TIRによって反射されたこの光に関する電磁場は、エバネセント定在波内のより低い屈折率の領域の中に延在するが、この電磁場の強度はインターフェースからの距離に伴い急激に減少する。このエバネセント区域内に配置された吸収又は分散体(entities)は、典型的に約1波長の厚さで、TIRを妨害し、光にインターフェースを通過させることができる。したがって、それが分散又は回折によって放射領域からの光の抽出を生じさせることにおいて最も効果的であるためには、ナノ構造化された屈折率差のある層がエバネセント区域内に位置されることが好ましい。
【0016】
複製マスターツールは、次第に大きくなる面積の上に、光抽出のために要求される平均周期である200ナノメートル(nm)〜2000ナノメートル(nm)の規則的又はランダムな構造体で、製造することができる。連続鋳造及び硬化(3C)などの、ミクロ複製プロセスと、このツールの能力との組み合わせは、フィルム基板の表面上の、フォトニック結晶構造体又は他のナノ構造体の形成を可能にする。3Cプロセスの実施例は、以下の特許:米国特許第4,374,077号、同第4,576,850号、同第5,175,030号、同第5,271,968号、同第5,558,740号及び同第5,995,690号に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
用語「ナノ構造体」又は「ナノ構造体(複数)」は2マイクロメートル未満、より好ましくは1マイクロメートル未満の、少なくとも1つの寸法(例えば、高さ、長さ、幅、又は直径)を有する構造体を指す。ナノ構造体は、粒子及び設計された形状を含むが、これらに必ずしも限定されない。粒子及び設計された形状は、例えば規則的又は不規則的な形状を有することができる。かかる粒子は、ナノ粒子とも呼ばれる。
【0018】
用語「ナノ構造化」は、ナノ構造体を有する材料又は層を指す。
【0019】
用語「フォトニック結晶構造体」は、材料内で可能な電磁場モードのスペクトラム内で、構造体がギャップを作るのを可能にする、十分に異なる屈折率の材料が散在された周期的又は準周期的光学ナノ構造体を指す。
【0021】
用語「充填材」は、構造体内の隙間を充填し、構造体を平坦化するための、構造体とは異なる屈折率の、構造体の中に組み込まれる材料を指す。
【0022】
用語「抽出要素」は、自発光型光源からの光抽出を強化するナノ構造体の任意のタイプ及び配置を示す。抽出要素は好ましくは、体積分布内に含有されない。
【0023】
ボトムエミッション型OLEDディスプレイ装置
図1は、光抽出フィルムを有するフィルム基板を有する、ボトムエミッション型OLED装置100の構造体を示す。ボトムエミッション型OLED装置は、基板を介して発光するOLED装置として定義されている。表1は、
図1で提供されている参照番号により識別される、装置100の代表的な要素及びこれらの要素の配置を記載する。装置100の各層は、下層上にコーティングすることができ、ないしは別の方法で下層に塗布することができる。
【0025】
基板114は、所望の放射された波長に実質的に透明(透過性)であり、装置に対して十分な機械的支持及び熱安定性をもたらす材料からなる。基板114は、好ましくは可撓性材料を含む。基板材料の例には、以下:ガラス、可撓性ガラス、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)又は他の半透明若しくは透明材料が挙げられる。基板114は、所望によりバリア層として機能することもできる。また、基板114は所望により染料又は粒子を含有することができ、それはテンターに張られ又はプリズム構造体を含むことができる。
【0026】
任意のバリア層112は、装置の層への、特に有機層への酸素及び水の浸透を効果的に阻止するか又は防ぐのを助ける。バリア層の実施例は、米国特許出願公開第2006/0063015号(無機バリア層を有する酸化ホウ素層を記載している)及び同第2007/0020451号(ダイヤモンド様ガラス(DLG)及びダイヤモンド様カーボン(DLC)を記載している)に記載されており、これらの両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
電極102及び106は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電性酸化物(TCO)又は、カルシウム、アルミニウム、金若しくは銀などの、電荷キャリアの注入を行うために好適な仕事関数を有する金属で実施することができる。
【0028】
有機層104は、光放射ポリマーなどの任意の有機エレクトロルミネセント材料で実施することができ、これらの実施例は米国特許第6,605,483号に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。好適な発光材料の他の実施例には、蒸着した小分子材料、発光デンドリマー、分子分散型(molecularly doped)ポリマー及び発光電気化学セルが挙げられる。
【0029】
本実施形態における光抽出フィルム116は、基板114、任意のバリア層112、低屈折率構造体110及び高屈折率構造体108からなる。光抽出フィルムを十分に平坦にしてOLED製造を可能にするために、高屈折率構造体は、低屈折率構造体の上で平坦化層を効果的に供給するための充填材媒質を使用する。充填材層はあるいは、他の光学的特性を有することができる。また、充填材層の材料は、水分若しくは酸素に対するバリアとして機能することができ、又はおそらくバリア特性に追加して、使用される材料のタイプに応じて、電気伝導をもたらすことができる。充填材層は、あるいは光学的に透明な接着剤によって実施することができ、その場合、抽出フィルムは、例えばトップエミッション型OLED装置に適用することができる。
【0030】
低屈折率構造体110は、下層に、典型的には基板に、実質的に適合する屈折率を有する材料を有する。低屈折率構造体110は、ナノ構造化層からなり、これは、フォトニック結晶構造体などの、周期的、準周期的若しくはランダムな分布又はパターンを有することができる。それは別個のナノ粒子を含むことができる。ナノ粒子は、有機材料又は他の材料からなることができ、それらは任意の粒子形状を有することができる。ナノ粒子は、あるいは多孔質粒子で実施することができる。ナノ構造体の分布は、様々なピッチ及び形状寸法を有することもできる。抽出要素又はナノ構造体の少なくとも一部分は、好ましくは可撓性基板と接触し、抽出要素は、その下に隙間を有してもよい。ナノ粒子層は、単層内にナノ粒子で、又はナノ粒子の凝集体を有する層で実施することができる。
【0031】
有機層からのエバネセント波と同程度のナノ構造体の厚さを使用することにより、装置からの追加の光の抽出のために、エバネセント波のナノ構造体への結合をもたらすことができる。この結合は好ましくは、光抽出フィルムが自発光型光源の発光領域に隣接するとき、発生する。充填材層が構造化層よりも低屈折率を有する場合には、充填材層は好ましくは抽出要素と実質的に等しい厚さを有する。充填材層が構造化層よりも高屈折率を有する場合には、それでもエバネセント波と相互作用することができるのであれば、充填材層は、抽出要素よりも厚くてよい。いずれの場合においても、構造化層及び充填材層は好ましくは、少なくとも部分的に光出力表面からの光の抽出を生じさせるために、光出力表面に十分に近接している。
【0032】
層110内のナノ構造体形状は、以下:圧痕形成、エンボス加工、ナノインプリント、熱又は光ナノインプリントリソグラフィ、射出成形又はナノ転写プリントなどの、サブミクロン形状の複製のための任意の印刷技術を使用して製造することができる。抽出要素を製造するための別の技法は、米国特許6,217,984号の実施例18に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
高屈折率構造体108は、隣接する低屈折率ナノ構造化層に屈折率差をもたらす、高屈折率材料であり、同層に効果的な平坦層をもたらす。発光波長におけるナノ構造化層110と充填材媒質108との間での屈折率の不適合はΔnで示され、Δnのより大きな値は一般に、より良好な光抽出をもたらす。Δnの値は好ましくは0.3、0.4、0.5又は1.0以上である。抽出要素と充填材媒質との間の屈折率の不適合はいずれも、光抽出をもたらす。しかし、より大きな不適合は、より多くの光抽出をもたらす傾向があるので好ましい。充填材媒質108のために好適な材料の実施例には、高屈折率無機材料、高屈折率有機材料、ナノ粒子で充填されたポリマー材料、窒化シリコン、高屈折率の無機材料で充填されたポリマー及び高屈折率の共役ポリマーが挙げられる。高屈折率ポリマー及びモノマーの実施例は、C.ヤング(Yang)らの「ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chem.Mater.)」(1995年、7号、1276頁)及びR.ブルジンスキ(Burzynski)らの「ポリマー(Polymer)」(1990年、31号、627頁)並びに米国特許第6,005,137号に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。高屈折率の無機材料で充填されたポリマーの実施例は、米国特許第6,329,058号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。充填材層は、例えば以下の方法:液体コーティング、蒸着コーティング、粉体コーティング又は積層、の1つを使用して、平坦化層を形成するために塗布することができる。
【0034】
OLED装置のためのアノードとして働くための機能性は、ITO(n〜1.9〜2.1)などの高屈折率で、高透過性及び低シート抵抗を有する透明な電極をその上に成膜することによって構造に付加され得る。層が、光学的又は電気的特性に悪影響を与えず、構造体を充填し滑らかな層へと形成することができる場合、ITOは更に、構造体のための充填材として使用してもよい。あるいは、充填及び平滑化の後、代替の金属及び有機層が、米国特許出願公開第2004/0033369号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法で透明な伝導性被覆層を形成するために成膜されてもよい。
【0035】
フォトニック結晶構造体又はナノ構造体の抽出パターンの機能性における更なる可撓性は、フォトニック準結晶構造体の使用を通じて得ることができる。これらの準結晶構造体は、タイリング法(tiling rules)を使用して設計され、それらは真の周期性又は並進対称性のいずれも有さないが、長期的秩序の準周期性及び配向対称性を有し、それらの実施例は以下の参照:B.チャン(Zhang)ら「電流注入されたGaNベースの発光素子における人工窒化ガリウム/大気の周期的ナノ構造体の効果(Effects of the Artificial Ga-Nitride/Air Periodic Nanostructures on Current Injected GaN-Based Light Emitters)」(「フィジカステイタスソリディ(Phys.Stat.Sol.)(c)」、2005年、2(7)、2858〜61頁)に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。フォトニック準結晶構造体は、全ての伝搬方向に関して擬ギャップの可能性を提供し、それらは特有の光散乱動作を示す。特に、準フォトニック結晶構造体のこれらのパターンは、従来のフォトニック結晶構造体の規則性に起因する人為的な影響を削除することができ、それらは固有の発光プロファイルを作り出すために使用することができ、広帯域のOLEDエミッタと共に動作するときの、望ましくない色効果をおそらく削除することができる。フォトニック結晶構造体は、以下の特許:米国特許第6,640,034号、同第6,901,194号、同第6,778,746号、同第6,888,994号、同第6,775,448号及び同第6,959,127号に記載され、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
実施形態は、回折又は散乱ナノ構造体のフィルム製品の中への組み込みを含むことができ、これは例えば、高屈折率充填材媒質の成膜が後に続く、3C複製プロセスに供給されるポリマーフィルム又は超バリア(ultrabarrier)コーティングされたフィルム基板を有するウェブライン上で連続的に製造することができる。フィルムの中に回折又は分散ナノ粒子を組み込む代替的な方法は、粒子の分散をコーティングする溶液を含む。このフィルムは、その上にボトムエミッション型OLEDが製造される基板として直接使用されるために設計されてもよく、光抽出の強化に加えて、多くの使用が可能であるフィルムの製造を可能にする。
【0037】
任意の超バリアフィルム上の抽出構造を形成することによって、追加の機能性を光抽出フィルム製品の中に組み込むことができ、これは優れた水分及び酸素バリア特性をもたらす。超バリアフィルムは、例えば、米国特許第5,440,446号、同第5,877,895号及び同第6,010,751号(これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ガラス又は他の好適な基板上の多数の層内に連続的に2つの無機誘電性材料を真空蒸着することにより、あるいは無機材料の層と有機ポリマーの層とを交互に並べることにより、作製された多層フィルムを含む。
【0038】
分散を介して光抽出を強化するため又は光をフィルタリングする、カラーシフトさせる又は偏光させるための材料をフィルム内に組み込んでもよい。最後に、表面コーティング又は構造体、例えば機能層115は、光抽出フィルムの機能性及びおそらく価値を更に増加させるために、光抽出フィルムの空気表面に適用することができる。かかる表面コーティングは、例えば光学的、機械的、化学的又は電気的機能を有することができる。かかるコーティング又は構造体の実施例は以下の機能又は特性:防曇、帯電防止、惑光防止、反射防止、耐摩耗(耐引掻)、防汚、疎水性、親水性、接着促進、屈折要素、カラーフィルタ、紫外線(UV)フィルタ、スペクトルフィルタ、色ずれ、色修正、偏光修正(線形若しくは円形)、光再指向、拡散又は光学回転、を有するものが挙げられる。空気表面に適用される、他の可能な層には、バリア層又は透明な導電性材料が挙げられる。
【0039】
トップエミッション型OLEDディスプレイ装置
図2は光抽出フィルムを有するフィルム基板を有する、トップエミッション型OLED装置120の構造を示す。表2は、
図2で提供されている参照番号により識別される、装置120の例示の要素及びこれらの要素の配置を示す。装置の各層は、下層上にコーティングされるか、ないしは別の方法で下層に塗布されてもよい。
図1及び2に示される構成は、例示目的のためにのみ提供され、ボトムエミッション型及びトップエミッション型OLEDディスプレイ装置の他の構成も可能である。
【0041】
本実施形態の光抽出フィルム142は、基板122、任意のバリア層124、低屈折率構造体126及び高屈折率構造体128からなる。低屈折率構造体126及び高屈折率構造体128は、上記に例示の材料及び構造体で実施することができる。層128及び130は所望により単一層で実施することができる。基板122及び140、任意のバリア層124、電極132及び138、並びに有機層136は、上に記した例示の材料で実施することができる。
【0042】
任意の薄膜封止材134は、例えば、水分及び酸素から有機層を保護するための任意の好適な材料で実施することができる。OLED装置の封止材の実施例は、米国特許第5,952,778号及び米国特許出願第11/424997号(2006年6月19日出願)に記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
OLED装置、特に
図2に示されるているようなトップエミッション型OLED装置は、所望により、典型的には反透明な電極上に、薄膜封止材を成膜することにより完成される。OLED装置のこの構造は、利点をもたらし、特に装置の製造の完成後に臨界高屈折率の装置から空中のインターフェースへのアクセスを作り、光抽出フィルムのアプリケーションのための積層プロセスを可能にする。トップエミッション型OLED装置に関して、実施形態はボトムエミッション型OLED装置に関して上記のように、光抽出フィルムを含む。あるいは、OLED装置を光抽出層に光学的に結合するために、好適な高屈折率接着剤と組み合わされて光学層130として機能するとき、フィルムはトップエミッション型OLED構造体上のキャップ(capping)層であるように設計することができる。封止材の材料それ自体は、光抽出層を形成するためのナノ構造体を充填する屈折率差のある材料として機能してもよい。
【0044】
OLED固体(solid state)照明要素
トップエミッション型OLED装置120又はボトムエミッション型OLED装置100は、OLED固体照明要素を実施するために使用することもできる。上記に示した基板に加えて、トップエミッション型OLED固体照明装置に有用な、可撓性金属箔を含む基板の実施例は、以下の論文:D.U.ジン(Jin)らの「ステンレス鋼箔上の、14cm(5.6インチ)の可撓性フルカラートップエミッション型AMOLEDディスプレイ(14 cm(5.6-inch)Flexible Full Color Top Emission AMOLED Display on Stainless Steel Foil)」(「SID 06ダイジェスト(DIGEST)」、2006年、1855〜1857頁);及びA.チュワン(Chwang)らの「可撓性ステンレス鋼基板上のフルカラー100dpi AMOLEDディスプレイ(Full Color 100 dpi AMOLED Displays on Flexible Stainless Steel Substrates)」(「SID 06ダイジェスト(DIGEST)」2006年、1858〜1861頁)に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
図3は、固体照明装置における使用のために、空間的に調節されたOLED装置を有する装置220を示す図である。装置220は、複数のOLED装置223、224、225及び226を支持する基板222を含み、これらのそれぞれは、ボトム又はトップエミッション型OLEDディスプレイ装置に関して上記の構造体に対応することができる。OLED装置223〜226のそれぞれは、線228及び230によって示されているように個々に制御することができ、これは装置223〜226においてアノード及びカソードに電気的接続をもたらす。装置220は、電気的接続を有するOLED装置223〜226を任意の数だけ含むことができ、基板222はそれらを収容するような大きさとすることができる。装置223〜226の個々の制御は、接続部228及び230を介して、それらが個々に又はグループで特定のシーケンス又はパターンで点灯されるように、それらの空間的調節を提供してよい。装置220は固体照明において、例えば剛性又は可撓性基板222上で使用することができる。
【0046】
OLEDバックライトユニット
図4は光抽出フィルムを有するトップエミッション型OLEDバックライトユニット180の図である。表3は、
図4に提供されている参照番号により識別される、バックライトユニット180の例示の要素及びこれらの要素の配置を記載する。バックライトユニット180の各層は、下層上にコーティング、ないしは別の方法で下層に塗布することができる。あるいは、ボトムエミッション型OLEDはバックライトユニットのために使用することもできる。
【0048】
本実施形態における光抽出フィルム208は、任意のプリズム層184、任意のディフューザー188、低屈折率構造体190及び高屈折率構造体192からなる。低屈折率構造体190及び高屈折率構造体192は、上記の例示の材料及び構造で実施することができる。本実施形態の他の要素は、表3に提供されているとおり、上に記した例示の材料で実施することができる。層192及び194は、あるいは、単一層で実施することができる。
【0049】
図5は、LCDパネル240のための液晶ディスプレイ(LCD)バックライトユニット242として使用されるOLED装置を示す図である。バックライトユニット242は構造体180と対応することができる。バックライトユニット242はあるいは、
図3に示される空間的に調節された照明パネルで実施され得る。LCDパネル240は典型的には、バックライト及び駆動電子機器を除く、LCD装置全体を含む。例えば、LCDパネル240は、典型的には、バックプレーン(サブピクセル電極)、フロント及びバックプレート、液晶層、カラーフィルタ層、偏光フィルタ、並びに場合によっては他のタイプのフィルムを包む。バックライトとしてのOLED装置の使用は、LCDのための薄くて、低消費電力のバックライトを提供することができる。LCDパネル部品及びバックライトユニットの実施例は、米国特許第6,857,759号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
高屈折率/低屈折率領域及び表面の構成
図6〜9は抽出要素の、可能な空間的構成を示す図である。
図6は、ナノ構造体の規則的なパターンを有する低屈折立構造体250を、ナノ構造体の上に平坦化層を供給する高屈折率構造体251と共に示す。構造体250及び251は、低屈折率基板246とOLED装置領域247との間に配置されている。
図7は、ナノ構造体の不規則的なパターンを有する低屈折立構造体252を、ナノ構造体の上に平坦化層を供給する高屈折率構造体253と共に示す。構造体252及び253は、低屈折率基板248とOLED装置領域249との間に配置されている。
図6及び7において、低屈折率構造体及び高屈折率構造体は、基板とOLED装置(発光)領域との間に配置されている。
【0051】
図8は、低屈折率充填材領域254内の高屈折率抽出要素255を、平坦化層を供給する低屈折領域254と共に示す。抽出要素255及び充填材254は、低屈折率基板260とOLED装置領域259との間に配置されている。
図9は、高屈折率充填材領域256内の低屈折率抽出要素257を、平坦化層を供給する高屈折率領域256と共に示す。抽出要素257及び充填材256は、低屈折率基板261とOLED装置領域262との間に配置されている。
図8及び9に示されている実施形態において、抽出要素はエバネセント区域に集中している。
図6〜9に示されている層は、上記の低屈折率構造体及び高屈折率構造体のパターン及びインターフェースを示す。
【0052】
図10〜14は抽出要素の可能な表面構成を示す平面図である。
図10及び11は、抽出要素の規則的な周期的アレイを示す。
図12は、抽出要素のランダムな分布を示す。
図13は、抽出要素のパターン形成された領域を示す。
図13は、特に、規則的パターン264又は不規則的パターン265においてあり得る、形状263の異なる分布内に散在する形状の一部分を示す。規則的パターン246又は不規則的パターン265はそれぞれ、異なる分布263に沿って、それぞれが、抽出要素の周期的、準周期的又はランダムな分布を有してもよい。かかるパターンの領域は、これらの領域での光の特定の波長(例えば赤、緑及び青の光に対応する波長)の抽出を最適化するのに有用であることができる。その場合、抽出領域は、ディスプレイ装置のピクセルを含む赤、緑及び青の領域に対応し、かつ整列することができ、各抽出領域は、対応する赤、緑及び青の領域から光を抽出するためにそれぞれ最適化することができる。
図14は抽出要素の準結晶(傾斜したパターン)を示す。
【0053】
抽出要素の作製のための技法の実施例は、米国特許出願第11/556719号(2006年11月6日出願)に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
図10〜14は、上記のナノ構造体又は他の抽出要素の可能な表面構成を、ナノ構造体の上に平坦化層を供給する充填材媒質と共に示す。
【0054】
追加の技法は、ナノスケール領域を、可撓性ポリマーウェブ上に成膜された感光性ポリマーに露光させるためのリソグラフィ又は干渉リソグラフィの使用を含むことができる。露光及び現像工程の後、残った感光性ポリマーは、次いでナノ構造化表面を画定する。あるいは、このナノ構造化感光性ポリマー表面は、エッチングプロセスにおいて表面の露光のためのエッチングマスク(etch mask)として機能することができる。このエッチング技法は、ナノスケールのパターンを、下層のポリマーウェブの表面の中に又は酸化ケイ素などの更に硬質な材料の層(これはリソグラフィの工程の前にポリマーウェブ上にすでに成膜されている)の中に転写する。これらの方法のいずれかで画定されたナノスケール表面は、次いで、屈折率差のある媒質と共に充填され、光散乱又は回折層を形成することができる。
【0055】
光抽出のためのナノ粒子の分布
本実施形態は、例えば、ITO、窒化ケイ素(Si
3N
4、本明細書においてSiNと示される)、CaO、Sb
2O
3、ATO、TiO
2、ZrO
2、Ta
2O
5、HfO
2、Nb
2O
3、MgO、ZnO、In
2O
3、Sn
2O
3、AlN、GaN、TiN又は任意の他の高屈折率材料などのナノ粒子を、OLED製造又は封止において使用される基板上にコーティングし、次いで低屈折率コーティング、例えばSiO
2、Al
2O
3、DLG、DLC又はポリマー材料をナノ粒子の上にコーティングして、散乱又は回折効率のために必要となる屈折率差を提供し、かつ表面を平坦化することによって作製された、ランダムに分布された高屈折率のナノ構造を含む、屈折率差のあるフィルムを使用して、OLEDからの強化された光抽出を提供する。ランダムに分布したナノ構造は、基板と接触する、基板と近接する、共に所々に群をなす,又は基板に近接する任意のランダムな構成であり得る。潜在的に同様の有効性をもたらす逆の構造は、SiO
2、多孔質SiO
2、ホウケイ酸(BK)、Al
2O
3、MgF
2、CaF、LiF、DLG、DLC、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート、PET、低屈折率ポリマーなどの低屈折率ナノ粒子若しくはナノ構造、又は、真空蒸着されたSi
3N
4又は溶剤がコーティングされた粒子充填ポリマー若しくは高屈折率ポリマーなどの対照的な高屈折率フィルタ材料を有する任意の他の低屈折率材料の、ランダムな分布を含むことができる。
【0056】
スピンコーティング、ディップコーティング及びナイフコーティングなどのコーティングプロセスは、表面上のナノ粒子を分布させるために使用してもよく、同様なプロセスが、充填材/平坦化層をコーティングするために使用されてもよい。かかる技法の使用は、プロセスを簡易で、製造規模への移行が容易で、かつウェブライン又はロールツーロールプロセスを介して製造されたフィルム製品への組み込みに適したものにするべきである。
【0057】
ある特定の方法は、第1の屈折率を有するナノ粒子を可撓性基板の上に塗布し、ナノ粒子上に充填材層をオーバーコーティングし、それらの上に平坦化層を形成することを含む。充填材層は、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する材料を含む。好ましくは、光学フィルムが、自発光型光源に対して配置されたとき、ナノ粒子の相当な部分が自発光型光源の発光領域に隣接するエバネセント区域内にある。例えば、ナノ粒子の相当な部分が、基板と接触し、エバネセント区域内であることができるが、いくつかの実施形態においては、エバネセント区域内のナノ粒子の相当な部分が基板と接触する必要はない。
【0058】
ナノ粒子を塗布することは、溶媒内に分散されたナノ粒子を可撓性基板の上にコーティングし、充填材層をオーバーコーティングする前に溶液を蒸発させることを含んでもよい。ナノ粒子を塗布することは、それらを乾燥状態で可撓性基板に塗布し、次いで充填材層でそれらをオーバーコーティングすることを含んでもよい。この方法の代替は、剥離剤付きの基板を使用することを含み、ここでは、粒子は剥離剤付きの基板に塗布され、粒子を有する基板は、それと接触する粒子と共に装置基板に適用され、次いで基板は、装置基板に粒子を移動させるために剥離される。
【0059】
複製方法
ナノ構造を有するマスターツールを形成するための1つの解決方法は、干渉リソグラフィの使用を含む。100nm〜150nmほど小さい規則的な周期的形状は、この方法を使用して急速に描画することができる。利点はこれらのパターンを広い面積にわたって描画できることを含み、これは製造に対してプロセスをより受け入れやすくすることができる。
【0060】
パターンの複製のためのマスターツールの製造は以下を含むことができる。基板はフォトレジストの被覆層でコーティングされ、次いで、1つ以上のUV干渉パターンで照射され、所望の形状寸法を有する規則的なパターンにレジストを露光する。レジストの現像は次いで、ホール(hole)又はポスト(post)のアレイを残す。このパターンはエッチングプロセスを介して下層の基板の中に実質的に転写することができる。もし基板材料が複製ツールとして使用するのに適していない場合、マスターツールは標準的な電鋳プロセスを使用して作製することができる。この金属複製は、次いでマスターツールになる。
【0061】
別の方法は、ランダムに分布したナノ構造を有するマスターツールを形成することを含む適切な寸法の、かつ凝集を防止するのに適切な表面改質が施されたナノ粒子を含む溶液が調製される。かかる溶液を調製するための方法は一般に、分散される特定のナノ粒子に特有であり、一般的な方法は他の文献、例えば、米国特許第6,936,100号及びモレキュラー・クリスタルズ・アンド・リキッド・クリスタルズ(Molecular Crystals and Liquid Crystals)(2006年、444号、247〜255頁)に記載されており、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる。溶液は次いで、ナイフコーティング、ディップコーティング又は噴射コーティングを含む様々な溶液コーティング技法の1つを使用して、可撓性基板の上にコーティングされる。プラズマエッチングなどの方法を使用する基板の前処理は、溶液コーティングの均一性を保証するために必要とされ得る。溶液の蒸発の後、ナノ粒子は顕微鏡的にはランダムに、しかし肉眼的には均一になるように分布させるべきである。上記の、均一なツール製造プロセスでの場合のように、このパターンは次いで、エッチング又はエンボスプロセスを介して下層の基板材料に移動させることができ、あるいは金属ツールは標準的な電鋳プロセスを使用して作製することができる。
【0062】
これらの場合のいずれかにおいて、平坦なマスターツールが製造された場合、そのマスターツール又はその複製は、米国特許第6,322,652号(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように大きなツールを形成するために一緒に組み合わされてもよく、又はロールツーロール複製プロセスに適合するために円筒状のツールに形成されてもよい。
【0063】
いったんマスターツールが製造されると、ポリマーの中への構造体の複製は、3Cプロセスなどの様々な複製プロセスの1つを使用して行うことができる。この複製のための基板は、選択された複製プロセスと適合性のある任意のポリマーシートであることができ、それは上記の超バリアフィルムで既にコーティングされていてもよい。次いで、充填は、例えば、SiN又はITOなどの高屈折率材料を成膜することができる化学蒸着(CVD)又はスパッタリングプロセスにて下流で実施され、これは構造体を充填し、次いで平坦にして滑らかな層にすることができる。SiNが使用される場合、導電性の上層が要求されるならば、ITO成膜プロセスがこの後に続いてもよい。あるいは下流の充填は、適切な材料を使用する溶液コーティングプロセスで実施されてもよい。
【実施例】
【0064】
表4は、実施例にて使用された材料のための定義及び調達元を提供する。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例1−厚く高屈折率の蒸着された充填材を有する低屈折率ナノ構造体の周期的アレイ
ナノ構造体の規則的周期的アレイは、干渉リソグラフィを使用して低屈折率ポリマー層の中に製造された。2ビーム干渉に関して、縞のピーク間隔は(λ/2)/sin(θ/2)によって与えられることが知られており、式中、λは波長であり、θは2つの干渉波間の角度である。この技法は、構造体のパターン形成を露光波長の1/2ほども小さくすることができる。
【0067】
この実施例に関してUV感光性フォトレジスト(PR)の薄膜は薄いガラス基板の上にスピンコーティングされた。PRは次いで、325nmのアルゴンイオンレーザーから2ビーム干渉パターンによって露光され、高強度及び低強度の周期的パターンがPRにおいて520nmの周期の露光された領域の線を作製した。基板は次いで、90度回転され、別の露光がなされた。これは、現像の後、PRにおいて、520nm間隔のホールを有する矩形のホールのパターンとなり、ホールの寸法は約250nmであり、ホールの深さは約200nmである。このパターンは次いで、プラズマ化学気相成長(PECVD)のSi
3N
4により実施例3に記載の方法で厚さ1000nmの厚さに充填された。
【0068】
実施例2−薄く高屈折率の、平坦化され蒸着された充填材を有する低屈折率ナノ構造体の周期的アレイ
より高度な平坦化を得るために、フォトレジスト(サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg)のエレクロトマテリアルズ社(Electronic Materials Inc.)から入手可能なシプレイ(Shipley)PR1813など)の厚い層(1.3マイクロメートル)が、実施例1で調製されたような基板を使用して、スピンコーティングによってSiN層の上にコーティングされた。次いで、反応性イオンエッチング(RIE)が、PR及びSiNの一部をエッチングして除去するために実施された。反応性イオンエッチング(RIE、モデル プラズマラボ(PlasmaLab)(商標)システム100、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)(英国、ヤットン(Yatton))から入手可能)が、表5に記載の条件に従って実施された。
【0069】
【表5】
【0070】
この光抽出構造体は次いで、基板全体を被覆するITOを除き、実施例3に記載されているものと同様な方法で、ボトムエミッション型の緑のOLEDの成膜のために基板として機能した。この場合、OLED層は40ミリメートル(mm)×40mmのシャドーマスクを介して、以下の順序:2.8%FTCNQでドーピングされた3000ÅMTDATA/400ÅNPD/1%のC545Tでドーピングされた300ÅAIQ/7ÅLiFで成膜された。この40mm×40mmシャドーマスクは、数個の平行な3mm×25mm開口部を含むマスクに置き換えられ、それを介して2500ÅのAlカソード金属が次いで成膜された。これは、複数の個別にアドレス可能な3mm×25mmピクセルを含むOLED装置をもたらした。
【0071】
得られたOLEDからのカソードストライプから放射された光が観察された。カソードストライプは、周期的なパターンを有する面積及び有さない面積の上を通過し、両方の領域にわたって同じ電圧を印加された状態で、パターン形成された領域及びパターン形成されていない領域を同時に観察することを可能にする。周期的なパターンを有する面積が周期的なパターンを有さない面積よりも明るいということは、きわめて明瞭であった。
【0072】
実施例3−高屈折率平坦化層を有する低屈折率ナノ粒子のランダムな分布
シリカ(SiO
2)ナノ粒子(NP)の市販のゾルを基板に塗布し、100℃で5分間乾燥させることによって、NPのコーティングが、50mm×50mmのガラス基板上に作製された。ゾルは、SiO
2ナノ粒子懸濁46重量%水溶液(ナルコ社(Nalco Company)、イリノイ州ネーパビル(Naperville)、Wディールロード(Diehl Rd.)1601))からなる。このゾル内の粒子寸法は、60nm〜300nm直径の範囲であり、平均直径244nmを有する。あるいは、20nm〜1000nmの範囲において少なくとも1つの寸法(例えば直径)を有する粒子を使用することも可能である。
【0073】
ナノ粒子をガラス基板の一部にコーティングした後、窒化ケイ素(Si
3N
4)の300nm厚さの層が、基板のSiO
2NP及びベアガラス部分の上に、表6に記載されたパラメータを使用して、プラズマ化学気相成長(PECVD、モデルプラズマラボ(PlasmaLab)(商標)システム100、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)(英国、ヤットン)から入手可能)によってコーティングされた。
【0074】
【表6】
【0075】
SiNコア層の屈折率はメトリコン(Metricon)モデル2010プリズムカプラー(Prism Coupler)(メトリコン社(Metricon Corporation)、ニュージャージー州ペニントン(Pennington))を使用して測定され、結果として得られたSiN表面の1.8.SEM画像は、残渣の偏差は残っているが、300nmのSiNコーティングによってSiO
2NP表面の粗さは大きく削減されたということを示す結果であるということが判明した。
【0076】
屈折率差のあるナノ構造化光散乱層をOLEDの中に組み込むために、110nmのITOが、OLEDアノードとして機能するために、5mm×5mmの画素化されたシャドーマスクを介して、SiN上に成膜された。その後、単一の緑の有機放射層及びカソードが、OLEDを完成させるために成膜された。OLEDは標準的な熱蒸着によって、ベルジャー型真空システム内で製造された。OLED層は以下の順で5mm×5mmITOピクセルを被覆する40mm×40mmシャドーマスクを介して成膜された:2.8%FTCNでドーピングされた3000Å MTDATA/400Å NPD/1%C545Tでドーピングされた300Å AlQ/200Å AlQ/7ÅLiF。5mm×5mmのシャドーマスクは、次いで再配列され、Al金属の2500Åが成膜され、ピクセルの頂部に接触するカソードが形成された。これは、ナノ粒子の上に成膜されたいくつかのピクセル及びナノ粒子の上に成膜されていない他のピクセルを有する、複数の個別にアドレス可能な5mm×5mmピクセルを含むOLED装置をもたらした。
【0077】
得られたOLEDのカソードから放射された光が観察された。ナノ粒子コーティングを有するこれらの装置が、ナノ粒子コーティングを有さないが、同一条件下で調製された装置よりも質的に明るいということは明らかだった。これらの装置についてのその後の定量的な測定は、これらの結果を実証した。装置を同一の電圧で駆動するか同一の電流で駆動するかに関わらず、改質を行った装置に関して、インターフェースの改質のない装置を超える、明るさにおける著しい増加が観察された。効率測定(カンデラ毎アンペア)は、この単純な改質で約40%の改善を示す。
【0078】
実施例4−低屈折率充填材を有する高屈折率ナノ粒子のランダムな分布
ITO NPの市販のゾルを基板に塗布し、5分間100℃で乾燥させることによって、高屈折率NPのコーティングが、ガラス基板上に作製された。ゾルは、20重量パーセントの、ITOナノ粒子懸濁溶液(1:1のイソプロパノール/水)(アドバンスト・ナノ・プロダクツ社(Advanced Nano Products Co. LTD.)、韓国、忠清北道中原郡(Chungwon-kun, Chungcheonbuk-do))で構成された。このゾル内の粒子寸法は、直径30nm〜300nmの範囲であり、86nmの平均直径を有する。ナノ粒子をガラス基板の一部にコーティングした後、酸化ケイ素の200nm〜400nmの厚さの層が、基板のITO−NP及びベアガラス部分の上に、表7に記載されたパラメータを使用して、プラズマ化学気相成長(PECVD、モデルプラズマラボ(PlasmaLab)(商標)システム100、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)社(英国、ヤットン(Yatton))から入手可能)によってコーティングされた。
【0079】
【表7】
【0080】
これらのパラメータで、酸化ケイ素フィルムに関して1.46の屈折率を得ることができ、ITOの屈折率は約1.95である。PECVDプロセスの完了で、低屈折率充填材を有する高屈折率ナノ粒子が生成した。次の、この改質された基板上へのOLED装置の成膜は、パターン化されていない部分と比較したとき、NPを有するパターン化された装置の部分から抽出された光の、大きな強化という結果をもたらした。効率測定(カンデラ毎アンペア)は、この単純な改質で約60〜80%の改善を示す。
【0081】
実施例5−バリアコーティングを有する可撓性シート上のナノスケール構造体の製造
その上に酸素/水分バリア層が事前に成膜されているフィルムで、実験は開始された。このバリアフィルムは典型的には、第1のポリマー層でオーバーコーティングされ、並びに少なくとも1つの第2のポリマー層によって分離された、少なくとも2つの可視光の透過性無機バリア層で更にオーバーコーティングされたPETを含む。かかるバリアフィルムは、23℃及び相対湿度90%で、0.005cc/m
2/日未満の酸素透過率を立証し、例えば、米国特許第7,018,713号及び同第6,231,939号において、より詳細に記載され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
これらのバリアフィルムの試料は、2.5cm×2.5cm(1インチ×1インチ)の小片に切断され、メタノール及び蒸留水で洗浄された。フォトレジスト(シプレイ(Shipley)UV5)の層が成膜され、次いで60秒間135℃でベーキングされ、0.56マイクロメートルの厚さのコーティングが製造された。この試料は次いで、上記の実施例1に記載のとおり干渉レーザービームに露光され、露光された要素の矩形のアレイを製造した。得られたパターンは各方向において1.6マイクロメートルの周期性及び約50%の通電率を有した。試料は次いで、ホットプレート上に配置され、90秒間130℃でベーキングされた。試料は冷却された後、それは次いで現像槽(ローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)からのMF−CD−26)内に10秒間、攪拌しながら配置された。空気中で約3時間乾燥した後、試料は次いでホットプレート上で1分間130℃で加熱され、すべての残留する水分を取り除いた。
【0083】
得られたフィルムは、介在するバリア層を有する可撓性基板上に配置された、光抽出に有用なナノ構造体の例である。このフィルムは、
図1内の要素110、112及び114並びに
図2内の要素126、124及び122に対応する。
【0084】
実施例6−バリアコーティングを有する可撓性シート上の低屈折率充填材を有する、高屈折率ナノ粒子のランダムな分布
その上に酸素/水分バリア層が事前に成膜されているフィルムで、実験は開始された。このバリアフィルムは典型的には、第1のポリマー層でオーバーコーティングされ、並びに少なくとも1つの第2のポリマー層によって分離された、少なくとも2つの可視光透過性無機バリア層で更にオーバーコーティングされたPETを含む。かかるバリアフィルムは、23℃及び相対湿度90%で、0.005cc/m
2/日未満の酸素透過率を立証し、例えば、米国特許第7,018,713号及び同第6,231,939号において、より詳細に記載され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
これらのバリアフィルムの試料は、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の小片に切断された。ITO NPの市販のゾルを基板に塗布し、5分間100℃で乾燥させることによって、高屈折率NPのディップコーティングが、可撓性シート上に作製された。ゾルは、20重量パーセントの、ITOナノ粒子懸濁溶液(1:1のイソプロパノール/水)(Lot−3M−060330−1、アドバンスト・ナノ・プロダクツ社(Advanced Nano Products Co. LTD.)、韓国、忠清北道中原郡(Chungwon-kun, Chungcheonbuk-do))で構成された。このゾル内の粒子寸法は、直径30nm〜300nmの範囲であり、86nmの平均直径を有する。ナノ粒子を可撓性シート基板の一部にコーティングした後、酸化ケイ素の200nm〜400nmの厚さの層が、基板のITO−NP及びベア可撓性シート部分の上に、表7に記載されたパラメータを使用して、プラズマ化学気相成長(PECVD、モデルプラズマラボ(PlasmaLab)(商標)システム100、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments)(英国、ヤットン(Yatton))から入手可能)によってコーティングされた。
【0086】
これらのパラメータで、酸化ケイ素フィルムに関して1.46の屈折率を得ることができ、ITO NPの屈折率は約1.95である。PECVDプロセスの完了で、低屈折率充填材を有する高屈折率ナノ粒子が生成された。次の、この改質された基板上へのOLED装置の成膜は、パターン化されていない部分と比較したとき、NPを有するパターン化された装置の部分から抽出された光の、大きな強化という結果をもたらした。
【0087】
これらの装置についてのその後の定量的な測定は、これらの結果を実証した。装置を同一の電圧で駆動するか同一の電流で駆動するかに関わらず、改質された装置に関して、インターフェースの改質のない装置を超える、明るさにおける著しい増加が観察された。効率測定(カンデラ毎アンペア)は、この単純な改質で約100%の改善を示す。