特許第5973389号(P5973389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5973389
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】フレキシブル包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B65D30/16 K
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-136471(P2013-136471)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-9847(P2015-9847A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年2月24日
【審判番号】不服2016-632(P2016-632/J1)
【審判請求日】2016年1月14日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳内 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 淳
【合議体】
【審判長】 見目 省二
【審判官】 井上 茂夫
【審判官】 千葉 成就
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−520240(JP,A)
【文献】 特開2009−12800(JP,A)
【文献】 特開平11−54362(JP,A)
【文献】 実開昭60−15641(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の側面フィルムと第2の側面フィルムとを有し、これらの周縁部がシールされており、シールされた前記周縁部に囲まれた部分が収納部となる、自立性を有するフレキシブル包装体であって、
前記第1の側面フィルムおよび前記第2の側面フィルムの両側端の周縁部においてそれぞれシールされた領域である2つの側縁部の一方のみ設けられ、前記シールされた領域に囲まれて、上下方向に所定の長さにわたってシールされずに、気体が注入されている気体注入部と、
前記2つの側縁部の他方の上端に設けられた注出部とを備え、
前記気体注入部は、
mm以上50mm以下の一様な直径を有し
前記気体注入部の全体を覆うように、前記第1の側面フィルム側と前記第2の側面フィルム側から平坦面を有する2つの治具の各平坦面で挟み、その挟み幅が前記気体注入部の前記一様な直径の半分となるまで押し潰すのに要する力が、23℃、1atmにおいて、7N以上26N以下であり、
所定幅の前記シールされた領域によって前記収納部と隔てられて、前記フレキシブル包装体の持ち手となる、フレキシブル包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、粘体、粉体、固体等の内容物を包装するための包装体として、フィルムを重ね合わせてその周縁部をシールして形成したパウチ(フレキシブル包装体)が知られている。
【0003】
パウチは、例えば、2枚の側面フィルムの間に2つ折りにした底フィルムを折り目側から挿入し、互いに接するフィルム間の周縁部をシールすることによって製造される。このようなパウチでは、底フィルムを広げて2枚の側面フィルムを底部において筒形状とすることにより、パウチを自立させることが可能である。
【0004】
特許文献1が開示するパウチでは、各フィルムがシールされた領域に囲まれて、高さ方向に所定の長さにわたってシールされていない非融着部が設けられており、この領域には気体が注入され、エアバッグが形成されている。
【0005】
エアバッグによって、各側面フィルムはエアバッグおよびその近傍において、折れ曲がりにくくなっている。このため、パウチを自立させる際、パウチ全体の形も崩れにくく自立性が保たれやすくなっている。また、パウチを運搬したり内容物を取り出したりする際には、エアバッグの近傍が取っ手として機能するため、この部分をつかむことによって、パウチが持ちやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−123931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パウチにエアバッグのような気体注入部を設けても、気体注入部を押圧したときの反発力が弱いと、気体注入部が折れ曲がりやすく、パウチの安定した自立や注出のしやすさに寄与しない。また、反発力が強いと、内部の気体の圧力が高く、気体注入部の密封が破れて気体が漏れ出るおそれがあった。しかし、従来、好適な反発力の範囲について検討が十分されていなかった。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、一定の折れ曲がりにくさを有しかつ気体が漏れ出るおそれを低減した気体注入部を備えたフレキシブル包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、少なくとも第1の側面フィルムと第2の側面フィルムとを重ね合わせ、周縁部をシールして収納部を形成した自立性を有するフレキシブル包装体であって、第1の側面フィルムおよび第2の側面フィルムの両側端の周縁部においてそれぞれシールされた領域である2つの側縁部の一方または両方に、シールされた領域に囲まれて、上下方向に所定の長さにわたってシールされずに、気体が注入されて形成された、上下端を除いて一様な直径を有し、上下端において半球形状を有する、1つ以上の気体注入部が、フレキシブル包装体の持ち手として、設けられ、気体注入部は、一様な直径が3mm以上50mm以下であり、気体注入部の全体を覆うように、第1の側面フィルム側と第2の側面フィルム側から平坦面を有する2つの治具の各平坦面で挟み、その挟み幅が気体注入部の一様な直径の半分となるまで押し潰すのに要する力が、23℃、1atmにおいて、N以上26N以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一定の折れ曲がりにくさを有しかつ気体が漏れ出るおそれを低減した気体注入部を備えたフレキシブル包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るパウチの平面図
図2】本発明の実施形態に係るパウチの平面図
図3】本発明の実施形態に係るパウチの断面図
図4】本発明の実施形態に係るパウチの気体注入部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1に本実施形態に係るパウチ(フレキシブル包装体)100の平面図を示す。パウチ100は、第1の側面フィルム101と、第2の側面フィルム102と、これらの間に所定の挿入長さで、2つ折りの状態で折り目側から挿入された底フィルム103とを重ね合わせて形成される。これらのフィルムの互いに接するフィルム間の周縁部を、内容物を注入するための箇所を除く周縁部をシールすることで、収納部105が形成される。パウチ100の底フィルム103が挿入された端部を下方向とすると、内容物を挿入するための箇所は、例えば第1の側面フィルム101の第2の側面フィルム102の上端である。
【0013】
パウチ100の材質は、例えば樹脂またはアルミニウムを含み一定の剛性を有する積層体を用いることができる。積層体の一例として、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、ナイロン、ポリエチレンを含む積層体を挙げることができる。
【0014】
第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の周縁部のシールされた領域のうち、左右方向の端部である側縁部108には、上下方向に所定の長さにわたって、シールされた領域に囲まれて、シールされていない領域である未シール領域106が設けられている。未シール領域106は左右の側縁部108の一方のみに設けられてもよく、両方に設けられてもよい。未シール領域106内の上端近傍には十字形状のスリット111が形成されている。スリット111は、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102を貫通して左右方向および上下方向に延びる2つの切り込みによって形成される。スリット111は、未シール領域106の上端近傍ではなく下端近傍等、他の箇所に形成されてもよい。また、このようなスリット111の代わりに、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の少なくとも一方を貫通する切り込みまたは孔が形成されてもよい。スリット111は、後述するように、未シール領域106への気体注入のために用いられる。
【0015】
またパウチ100には、内容物の注出のために開口が予定される注出部104が設けられている。注出部104は、一例として、図1に示すように、第1の側面フィルム101と第2の側面フィルム102との間にスパウト部材が取り付けられて形成される。注出部104の形状、構造はこれに限定されず、また、なくてもよい。
【0016】
収納部105は、内容物を注入した後、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102の上端がシールされて、封止される。パウチ100は、底フィルム103を広げ、第1の側面フィルム101と第2の側面フィルム102とを底フィルム103がシールされた側で筒形状とすることにより、底フィルム103を底面として自立させることが可能である。図2に、この状態のパウチ100の平面図を示し、図3図2のX−X´線に示す断面図を示す。
【0017】
未シール領域106には、スリット111から気体が注入され、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102が円柱状に膨らんだ形状の気体注入部107が形成されている。また、スリット111が形成された領域において、気体注入部107の形成後、第1の側面フィルム101および第2の側面フィルム102がシールされることで、気体がスリット111から抜けることを防いでいる。スリット111が未シール領域106の上端近傍に位置する場合は、収納部105の封止のためのシールとスリット111近傍のシールとを同一工程で行うことができる。
【0018】
パウチ100の自立の安定性および注出のしやすさは、気体注入部107が折れ曲がりにくいほど向上する。気体注入部107を押し潰したときの反発力が大きいほど、気体注入部107は、折れ曲がりにくい。発明者は、気体注入部107全体を第1の側面フィルム101側と第2の側面フィルム102側とから挟み、その挟み幅が気体注入部107の直径Rの半分となるまで押し潰した際の反発力を測定する方法によって、気体注入部107の折れ曲がりにくさを好適に評価できることを見出した。図4に、押し潰していない状態(a)および押し潰した状態(b)における気体注入部107の拡大断面図を示す。このように、気体注入部107の全体を、2つの治具112の平坦面で挟み、直径Rの半分の幅まで押し潰すことにより、気体注入部107の体積減少率を、その直径Rや長さによらない一定値とすることができる。また、このときに治具112が受ける反発力は、気体注入部107全体が、元の形状に戻ろうとする復元力と捉えることができる。したがって、この方法により、気体注入部107のサイズに大きく依存することなく、その折れ曲がりにくさを評価できると考えられる。
【0019】
上記反発力は、23℃、1atm(101.325kPa)で、4N以上であれば、パウチ100の自立状態における安定性が向上する。また、反発力が7N以上であれば、注出時のパウチ100の形状が崩れず、注出しやすさが向上するためより好ましい。また反発力は、30N以下であれば、23℃で、気体注入部107が破れたり、気体注入部107近傍のシール箇所が剥離したりして、気体が外部に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。反発力が26N以下であれば、気体注入部107が50℃の高温となっても、このような気体の漏れを防ぐことができるためより好ましい。したがって、反発力は、23℃、1atmにおいて、4N以上30N以下であることが好ましく、4N以上26N以下であればより好ましい。このような反発力の調整は、気体注入部107内に吹き込む気体の圧力を調整することによって行うことができる。
【0020】
(評価1)
パウチ100において、気体注入部107の直径Rを6mmとし、上述の反発力を相異ならせたサンプル1〜15を作成し、1atmで、23℃(常温)、40℃、50℃の各気温で1か月間保存し、各サンプルの自立の安定性と注出のしやすさとを評価した。各サンプルは、高さ282.5mm、幅178mm、容量900mmとした。気体注入部107は、幅10mmの未シール領域106に気体を注入して、直径Rが6mmの円柱形状とした。また、気体注入部107近傍のシール強度は110N/15mmとした。また、各サンプルは、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、ナイロン、ポリエチレンを含む積層体を用いて作成した。評価結果を以下の表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1中の++は、評価結果が良好で、気体注入部107が折れ曲がりにくいことによって、安定して自立させることができ、また、注出時に気体注出部107を持ちやすく、かつ、注出部104の方向を安定させやすく、内容物の注出がしやすかったことを意味する。また+は、評価結果が++に比べて劣り、内容物の注出しやすさは得られなかったものの、安定して自立させることができ、許容範囲内であったことを意味する。また、−は評価結果が不良で、気体注入部107が、折れ曲がりやすいか、気体が漏れ出てしまい、自立の安定性や注出しやすさに寄与せず、気体注入部107を設ける効果が確認できなかったことを意味する。
【0023】
いずれの温度で保存した場合でも、サンプル4〜13(反発力7N以上26N以下)は、良好な結果が得られ、サンプル3は、許容範囲内の結果が得られた。しかし、サンプル14(反発力28N)は、23℃および40℃で保存した場合は、良好であったが、50℃で保存した場合、気体注入部107からパウチ100の側端縁にかけてシールが剥離し、気体が漏れ出た。また、サンプル15(反発力30N)は、23℃で保存した場合、良好であったが、40℃および50℃で保存した場合、同様にシールが剥離し気体が漏れ出た。また、サンプル1、2(反発力3N以下)では、気体注入部107が折れ曲がりやすく、安定した自立および注出しやすさに寄与しなかった。
【0024】
したがって、パウチ100を23℃程度の常温で保存する場合、反発力は4N以上30N以下が好ましく、さらに7N以上30N以下とすることがより好ましいことが確認できた。
【0025】
また、高温の内容物が注入されたり、高温の環境下に放置されたりして、気体注入部107が50℃以上になる可能性がある場合は、反発力は4N以上26N以下が好ましく、さらに、7N以上26N以下とすることがより好ましいことが確認できた。
【0026】
(評価2)
上述のサンプル1〜15において、気体注入部107の直径Rを3mm、20mm、50mmにそれぞれ変更した、各サンプルを作成し、1atm、気温50℃で1か月間保存し、各サンプルの自立の安定性と注出のしやすさとを評価した。評価結果を以下の表2に示す。表2には、比較のため、気体注入部107の直径Rが6mmである上述のサンプル1〜15についての結果を再度示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2中の++、+、−の意味は、表1における意味と同様である。いずれの直径の場合でも、反発力7N以上26N以下の場合は、結果は良好であった。また、反発力28N、30Nの場合は、直径Rが3mmでは結果は良好であったが、直径6mm以上では、気体が漏れ出てしまい結果は不良であった。また、反発力5Nの場合、直径Rが3mm、6mmでは結果は許容範囲内であり、20mm、50mmでは、結果は良好であった。また、反発力1N、3Nの場合、結果はいずれも不良であった。
【0029】
また、高温の内容物が注入されたり、高温の環境下に放置されたりして、気体注入部107が50℃以上になる可能性がある場合は、気体注入部107の直径Rの範囲を3mm以上50mm以下の範囲とし、反発力は4N以上26N以下とすることが好ましく、さらに、7N以上26N以下とすることがより好ましいことが確認できた。
【0030】
以上パウチの一例として、底フィルム103を備える自立性のパウチ100を用いて説明した。しかし、底フィルムを備えないパウチであっても、形状を崩れにくくし、内容物の注出をしやすくするため、気体注入部107を備えてもよい。本発明は、気体注入部を備えたパウチであれば、その形状、サイズ等に関わらず適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、フレキシブル包装体等に有用であり、とくに、気体注入部を備えたフレキシブル包装体に有用である。
【符号の説明】
【0032】
100 パウチ
101 第1の側面フィルム
102 第2の側面フィルム
103 底フィルム
104 注出部
105 収納部
106 未シール領域
107 気体注入部
108 側縁部
111 スリット
112 治具
図1
図2
図3
図4