特許第5982058号(P5982058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982058
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】タングステン酸ジルコニウム
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   C01G41/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-508102(P2015-508102)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】JP2014050226
(87)【国際公開番号】WO2014156215
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-72707(P2013-72707)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】高村 博
(72)【発明者】
【氏名】成田 里安
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 了
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−229515(JP,A)
【文献】 特開2002−265274(JP,A)
【文献】 特開2009−067619(JP,A)
【文献】 H. LIU et al.,Effects of HCl concentration on the growth and negative thermal expansion property of the ZrW2O8 nanorods,Ceramics International,2012年 3月,Vol.38, No.2,p.1341-1345
【文献】 T. HASHIMOTO et al.,Observation of two kinds of phase transitions of ZrW2O8 by power-compensated differential scanning calorimetry and high-temperature X-ray diffraction,Solid State Communications,2000年 9月,Vol.116, No.3,p.129-132
【文献】 K. D. BUYSSER et al.,Study of Negative Thermal Expansion and Shift in Phase Transition Temperature in Ti4+- and Sn4+-Substituted ZrW2O8 Materials,Inorganic Chemistry,2008年 1月21日,Vol.47, No.2,p.736-741
【文献】 R. ZHAO et al.,A novel route to synthesize cubic ZrW2-xMoxO8 (x=0-1.3) solid solutions and their negative thermal expansion properties,Journal of Solid State Chemistry,2007年11月,Vol.180, No.11,p.3160-3165
【文献】 Y. MORITO et al.,Preparation of Dense Negative-Thermal-Expansion Oxide by Rapid Quenching of ZrW2O8 Melt,Journal of the Ceramic Society of Japan,2002年,Vol.110, No.6,p.544-548
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折において2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピークの強度を100%とした場合に、2θ=23.5〜23.9°に位置する回折ピーク強度が102%〜115%であり、回折角2θ=15〜60°の範囲において、JCPDSのカードコード00−050−1868に登録されていない2θ位置にある回折ピークの強度が、2θ=21.4〜21.8°に位置するピーク強度を100%とした場合に2%以下であることを特徴とするタングステン酸ジルコニウム。
【請求項2】
2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピークの半価幅が0.05°以上0.2°以下であることを特徴とする請求項1に記載のタングステン酸ジルコニウム。
【請求項3】
2θ=22〜24°の3つの回折ピークの半価幅がそれぞれ0.25°以上であるか、若しくは2θ=33〜37°のピークが単一であるか、又は2θ=49°〜51°若しくは53°〜57°のピークが単一であるWO粉末を原料として用い、該WO粉末とZrO粉末とを混合した後、1190℃以上1200℃以下で30秒〜10時間加熱・保持し、次に200℃以下まで3分以内に急速冷却してタングステン酸ジルコニウムを作製することを特徴とするタングステン酸ジルコニウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の膨張係数を調整する際に使用する負の膨張係数(温度上昇とともに体積が小さくなる)を有する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、益々高精度化が要求される精密機械部品、光学部品、電子材料パッケージにおいては、外部環境に起因した温度変化に伴う歪みの発生を避ける対策が必要になっている。また、センサー類によっては、緊急時に確実に作動できるようにするため、このような応力による素子の劣化を避け、長寿命となる材料設計が要求されている。
【0003】
膨張歪みは、異なる材料の接合界面において体積変化量が異なることからから生じ、時には剥離や破壊の大きな原因となる。
温度上昇と共に体積が収縮する負の膨張材料は、大半の物質に共通に見られる正の熱膨張を有する材料と複合化することにより、その複合素材の熱膨張率を制御することが可能となるため注目されている。特にタングステン酸ジルコニウム(ZrW)は、熱収縮係数が大きく、広い温度範囲で一様に等方的な負の熱膨張を示す特長がある。さらには環境規制基準が厳しくなる昨今、鉛を使用しない非鉛系材料であることから非常に期待された材料となっている。
【0004】
しかしながら、ZrWは1960年代に負の熱膨張を報告された後、様々な研究がなされているが、ペロブスカイトの高い結晶比率を示し、且つ量産できる製法は未だ確立されていない。
【0005】
従来技術では、下記特許文献1に、大形で純度の高い単相のタングステン酸ジルコニウム(ZrW)を、安定的に作製することができるという趣旨の方法が提案されている。文献1の方法は、先ず液相法(ゾル−ゲル法)を使って目的物質の元素が正確な化学量論比になっているアモルファス粉末を作り、次に、それを放電プラズマ焼結等の方法で通電加圧焼結する。好ましくは、上記アモルファス粉末を常圧において温度500℃から700℃で焼成することにより、種結晶を予め作っておき、それを放電プラズマ焼結等の方法で通電加圧焼結するという方法である。
【0006】
そして、このようにすることにより、より優れた結晶性を有する単相のタングステン酸ジルコニウム(ZrW)を得ることができるということが提案されている。しかし、この方法でも、アモルファス粉末を液相反応させる工程では長時間必要であり、グラファイト製金型(治具径20mmΦ)に充填し、プレスするというバッチ式の処理となるため、本当の意味での量産化(毎月数トン以上の生産ライン)という面では不向きであった。
【0007】
他の従来技術として、特許文献2に、酸化物(WOとZrO) を出発原料とし、該原料を二極化された粒径分布とし、この原料粉を所望の型に入れて焼結させる製造方法が提案されている。しかし、特許文献2に開示された酸化物粉末の焼結法では、長時間の混合と長時間の焼結を必要とし、短時間での製造が事実上できず、製造コストがかかるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に、2種類の金属元素が酸素を介して化学結合している化合物(A4+6+) を、酸化塩化ジルコニウムとNaイオンを含まないタングステン酸塩を出発物質とし、HOで10時間加水分解させ、HClを加え、48時間還流し、固形物をろ過して、7日間熟成させた後、常圧において600 ℃で10時間焼成してタングステン酸ジルコニウム(ZrW) を作製することが提案されている。
しかし、このような液相法で調整した粉末原料を常圧焼結する方法では、タングステン成分が不安定であり、安定した製造ができず、焼成に長時間を要するため量産性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−44953号公報
【特許文献2】特開2003−342075号公報
【特許文献3】米国特許第6183713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来のように、結晶化の合成に長時間かかるという問題点があり、これまで製品への応用が進んでいなかった。実験室レベルでは白金坩堝を使用して作製した報告はあるが、量産化には不向きであった。また、酸化タングステンは揮発しやすく(950℃−2hで0.3%の重量減少がある)、組成の制御が困難であるという問題があった。本願発明は、組成の変動を少なくし、品質と歩留りを向上させ、結晶化への合成を極めて短時間で行うことによる製造コストの低減化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、以下の発明を提供するものである。
1)X線回折において2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピークの強度を100%とした場合に、2θ=23.5〜23.9°に位置する回折ピーク強度が92〜115%であることを特徴とするタングステン酸ジルコニウム。
【0012】
2)2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピークの半価幅が0.05°以上0.2°以下であることを特徴とする上記1)に記載のタングステン酸ジルコニウム。
【0013】
3)回折角2θ=15〜60°の範囲において、JCPDSのカードコード00−050−1868に登録されていない2θ位置にある回折ピークの強度が、2θ=21.4〜21.8°に位置するピーク強度を100%とした場合に2%以下であることを特徴とする上記1)又は2)に記載のタングステン酸ジルコニウム。
4)2θ=22〜24°の3つの回折ピークの半価幅がそれぞれ0.25°以上であるか、若しくは2θ=33〜37°のピークが単一であるか、又は2θ=49°〜51°若しくは53°〜57°のピークが単一である、WO粉末を、原料として用いることを特徴とするタングステン酸ジルコニウムの製造方法。
5)上記WO粉末をZrO粉末と十分に混ぜ合わせた後、1190℃以上で30秒以上保持し、200℃以下まで3分以内に急速冷却して作製することを特徴とする上記4)記載のタングステン酸ジルコニウムの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
従来は、結晶化の合成に長時間かかるという問題点があり、これまで製品への応用が進んでいなかった。実験室レベルでは白金坩堝を使用して作製した報告はあるが、量産化には不向きであった。また、酸化タングステンは揮発しやすく(950℃−2hで0.3%の重量減少がある)、組成の制御が困難であるという問題があった。
本願発明は、これらの問題を解決することが可能となり、組成の変動を少なくすることができ、品質と歩留まりを向上させ、結晶化への合成が比較的短時間で行うことによる製造コストの低減化が達成できるという著しい効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】WO粉末のXRDの結果を示す図である。
図2】標準的なZrO粉末のXRDの結果を示す図である。
図3】実施例1〜3のXRDの結果を示す図である。
図4】実施例4〜6のXRDの結果を示す図である。
図5】比較例1〜2のXRDの結果を示す図である。
図6】比較例3〜5のXRDの結果を示す図である。
【0016】
本願発明のタングステン酸ジルコニウムは、X線回折において2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピーク強度を100%とした場合に、2θ=23.5〜23.9°に位置するピークが92〜115%であることを特徴とする。
タングステン酸ジルコニウムでX線回折(JCPDS: Joint Committee for Powder Diffraction Standards )で登録されているのは、下記の表1に記載する4種類がある。すなわち、カードコード00−013−0557、00−050−1868、01−083−1005、01−087−1528の4種である。
いずれも2θ=21.552〜21.690°の回折ピーク強度の方が、2θ=23.643〜23.789°の回折ピーク強度より大きくなっている。
一方、本願発明では、後者の回折ピークは従来の相対強度比より大きくなる特徴があり、従来はこの特徴を示す「タングステン酸ジルコニウム」は存在していない。
【0017】
【表1】
【0018】
この特徴を活かして、下記に示すように、タングステン酸ジルコニウムを有効に利用できる。本発明のタングステン酸ジルコニウムの熱膨張係数をTMA(熱機械分析)で計測すると、−9.6x10−6/Kとなり、従来と同等もしくはそれ以上の大きな負の熱膨張特性を示した。このタングステン酸ジルコニウムは非常に大きな負の膨張係数を有するので、主体となる正の膨張材料に添加することにより、膨張率が限りなくゼロに近い、ゼロ膨張材料をより効果的に作製することが可能となる。
また異なる材料が接合される素子においては、負膨張材を添加することにより、両材料の膨張係数を近づけて膨張歪みの発生を抑えられる対策がとられるが、その場合においても、従来に比べて同等以下の添加量で同じ効果が得られるため非常に有効となる。
【0019】
また、本願発明のタングステン酸ジルコニウムの製造に際しては、WOの標準的な結晶構造(カードコード01−083−0950)とは異なり、2θ=22〜24°の3つの回折ピークの半価幅がそれぞれ0.25°以上であるか、若しくは2θ=33〜37°の回折ピークがほぼ一体化して単一であるか、又は2θ=49°〜51°若しくは53°〜57°のピークがブロード状になっている結晶化が不十分な状態のWO粉末(図1.a)と標準的なZrO粉末(図2)を混合粉砕し、平均粒径2μm以下の加熱合成前の原料を準備した。
【0020】
前記結晶化が不十分な状態のWO粉末については、回折ピークにより判定(評価)することができる。すなわち、回折ピークの半価幅がそれぞれ0.25°以上であるか、若しくは2θ=33〜37°の回折ピークがほぼ一体化して単一であるか、又は2θ=49°〜51°若しくは53°〜57°のピークがブロード状になっているものは、いずれも結晶化が不十分な状態のWO粉末であると言える。
そして、1190℃以上の高温で30秒以上保持してタングステン酸ジルコニウム(ZrW)に結晶化させた後、降温時にWOやZrOに再度、分解するのを避けるために瞬時に冷却することにより達成できる。その際の冷却速度は、200℃以下の温度になるまでに、3分以内、より好ましくは1分以内であることが望ましい。
【0021】
以上に説明した本願発明の「タングステン酸ジルコニウム」は、加熱時に、従来に比べて極めて短時間でタングステン酸ジルコニウムの結晶構造を有する材料に変換できるため、蒸気圧の高いWOの揮発を抑え、組成の変動を少なくすることが可能となり、品質と歩留まりを向上させることができる。またこの短時間の合成は量産化や製造コストの低減のおいても可能となる。
さらに、本願発明のタングステン酸ジルコニウムは、2θ=21.4〜21.8°に位置するX線回折ピークの半価幅が0.05°以上0.2°以下であるタングステン酸ジルコニウム及びJCPDSのカード00−050−1868に登録されていない2θ位置にある回折ピークの強度が、2θ=21.4〜21.8°に位置するピーク強度を100%とした場合に2%以下である特性を備えている。
【実施例】
【0022】
本願発明を、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
【0023】
(実施例1−3)
APT(パラタングステン酸アンモニウム)から金属タングステンに還元する際の中間生成物である完全なWOの結晶構造を有さないWO粉末(図1.a)と、CaやY等の添加でジルコニアを安定化させていない純ZrO粉末をモル比で2:1になるように秤量し、粉砕機で平均粒径0.3μmまで混合・微粉砕した。
【0024】
この原料を石英坩堝の内張りに白金箔を貼った容器に入れ、大気中1200℃で10時間(実施例1)、1時間(実施例2)、10分(実施例3)保持した後、炉温1200℃のままの状態から坩堝を取り出し、十分な水量のある20℃の水の中へ、速やかに坩堝を反転させ原料を投入した。この条件で得られたX線回折の結果を図3に示した。
【0025】
また、2θ=21.4〜21.8°に位置して回折ピーク強度比を100とするピークの具体的な2θとその半価幅の値、及びタングステン酸ジルコニウムのもう一方のメインピークである2θ=23.5〜23.9°に位置する回折ピークの具体的な2θとその強度比の値、さらには2θ=15〜60°の範囲においてJCPDSカード00−050−1868に登録されていない2θ位置にある回折ピークを2θ=21.4〜21.8に位置するピークと比較した値を表2に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例1〜3は、いずれも純度の高いタングステン酸ジルコニウムになっており、また強度比は従来のJCPDSカードには存在しない102%,106%,115%の比率となった。これは原料としたWOが不安定な結晶構造のため、完全なWOの結晶構造を有する材料より、タングステン酸ジルコニウムへの結晶化が従来になく急速に進んだ可能性がある。また1200℃からの急速冷却が十分に適切で、高温での形成された結晶構造を大きく変化させることなく降温できたためと考えられる。さらに2θ=21.4〜21.8°に位置して回折ピーク半価幅が0.05°以上0.2°以下と狭いため、結晶度が高いことも分かる。
【0028】
(実施例4−6)
実施例1−3と同様に準備したWOとZrOの混合原料を甲鉢に入れ、連続炉(ローラーハース炉)で、大気中1200℃、1時間加熱した後、冷却ゾーンで液体窒素のシャワーを導入し急速冷却した。
実施例4−6は、甲鉢内で上方に位置した材料(実施例4)、甲鉢の側面に位置した材料(実施例5)、内部に位置した材料(実施例6)になる。X線回折結果は図4に、そのピークの分析結果を表2に示した。
【0029】
実施例4〜6は、いずれも純度の高いタングステン酸ジルコニウムになっており、またX線回折強度比は従来のJCPDSカードには存在しない94%、95%、92%の比率となった。
実施例1〜3より強度比が低下したのは、水中に投入するよりも熱容量の関係で冷却速度が幾分遅くなったことが影響している可能性があるが、従来にない結晶性を有するタングステン酸ジルコニウムを得ることができた。
【0030】
(比較例1)
十分なWOの結晶構造を有するWO粉末(図1.b)と、実施例1〜6で使用したZrO粉末を用いて混合粉砕し、石英坩堝の内張りに白金箔を貼った容器に入れ、大気中1200℃で10時間加熱処理し、実施例1〜3と同様に水中へ投入した。そのX線回折結果を図5に示した。タングステン酸ジルコニウムの結晶構造は得られなかった。
【0031】
(比較例2)
実施例1と同条件で原料作製と加熱を行い、冷却方法のみ8時間かけて室温に戻す降温を行った。得られた材料のX線回折結果を図5に示した。タングステン酸ジルコニウムの結晶構造は得られなかった。
【0032】
(比較例3)
実施例1〜3と同様に原料を準備し、1200℃までの昇温速度が8時間と遅く、また1200℃での保持時間が60時間となる条件で熱処理し、実施例1〜3と同様に水中投入で冷却した。得られた材料のX線回折結果を図6に示した。また、そのピークの分析結果を表2に示した。
結晶構造は主としてタングステン酸ジルコニウムであることを示したが、2θ=21.3°付近にZrWとは異なるピークが出現しており、この強度比は29%であった。これは熱処理中にWOが蒸発してZrOがリッチな相になったためと考えられる。
【0033】
(比較例4−5)
WOの熱処理中の揮発を考慮して、WOとZrO粉末をモル比で2.1:1として混合粉砕し、石英坩堝の内張りに白金箔を貼った容器に入れ、大気中1200℃で1時間(比較例4)と30時間(比較例5)で加熱処理し、実施例1〜3と同様に水中へ投入した。得られた材料のX線回折結果を図6に、そのピークの分析結果を表2に示した。
【0034】
結晶構造は主としてタングステン酸ジルコニウムであることを示したが、2θ=23.7°の前後にZrWとは異なるピークが出現しており、この強度比は37%と7%であった。これはWOに関係するピークであり、WOが蒸発するよりも過剰に残留したためと考えられる。
長時間熱処理する場合は、WOの蒸発を考慮する必要がり、安定した品質を得るのが難しい。一方、実施例にあるように極めて短時間で結晶化できる場合は狙った配合で安定して製造できる特長がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記の従来のように、結晶化の合成に長時間かかるという問題点があり、これまで製品への応用が進んでいなかった。実験室レベルでは白金坩堝を使用して作製した報告はあるが、量産化には不向きであった。また、酸化タングステンは揮発しやすく(950℃−2hで0.3%の重量減少がある)、組成の制御が困難であるという問題があった。本願発明は、X線回折において2θ=21.4〜21.8°に位置する回折ピークの強度を100%とした場合に、2θ=23.5〜23.9°に位置する回折ピーク強度が92〜115%であるタングステン酸ジルコニウムを提供する。
【0036】
これにより、組成変動を少なくすると共に品質の向上により歩留まりを向上させ、結晶化への合成が比較的短時間で行うことによる製造コストの低減化を可能とするものである。このように負の膨張係数(温度上昇とともに体積が小さくなる)を有する品質に優れた材料を提供できるので、ガラス等の膨張係数を調整する際に使用する産業に大きく貢献できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6