(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ部内を前記目標圧力雰囲気に昇圧させる工程は、フィルタ部内を大気圧雰囲気にする工程であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタウエッティング方法。
前記フィルタ部内を目標圧力雰囲気に昇圧させるステップは、フィルタ部内を大気圧雰囲気にするステップであることを特徴とする請求項4または5に記載のフィルタウエッティング装置。
互いに接続された処理液供給源とフィルタ部とを備え、前記フィルタ部から気泡を除去するためのフィルタウエッティング装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし3のいずれか一項に記載されたフィルタウエッティング方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の処理液供給装置の一実施形態であるレジスト塗布装置1について説明する。このレジスト塗布装置1は、背景技術の項目で述べたフィルタウエッティング処理と、ウエッティングされたフィルタにより濾過したレジストを基板であるウエハWに供給するレジスト塗布処理と、を行う。
図1は、このレジスト塗布装置1の全体構成について示している。
【0013】
レジスト塗布装置1は、ウエハWを水平に保持するスピンチャック11を含むカップ13と、スピンチャック11に保持されたウエハWの中心部に処理液であるレジストを供給するためのノズル14とを備えている。さらに、前記レジスト塗布装置1は、前記ノズル14に接続される配管系を備えている。この配管系には上流側からレジスト供給源をなすレジスト供給源2、フィルタ部3、ポンプ25が設けられ、ポンプ25の動作によりレジスト供給源2のレジストが、フィルタ部3で濾過されてノズル14から吐出されるように構成されている。また、この配管系には前記フィルタウエッティング処理を行うための減圧部4が接続されている。
【0014】
前記カップ13は、スピンチャック11を囲むように設けられ、ウエハWから振り切られたレジストを受ける。カップ13の下部には、カップ内を排気する排気路及びカップ内の廃液を除去する廃液路が接続されている。
【0015】
レジスト供給源2について説明すると、前記レジスト供給源2は、ボトル21、N2(窒素)ガス供給部22及びリキッドエンドタンク23を備えている。
ボトル21はレジスト液を貯留する密閉型のボトルであり、当該ボトル21には配管101、102の各一端が接続されている。配管101の他端は、バルブV11を介してN2ガス供給部22に接続されている。このN2ガスはボトル21内の加圧用ガスである。配管102の他端は、バルブV12を介してリキッドエンドタンク23内に延伸されている。
【0016】
前記リキッドエンドタンク23は、レジストを下流側へと安定供給するために設けられ、図示しない液面センサを備え、液量の管理が行われている。リキッドエンドタンク23の上部には、排液管111の一端が接続され、排液管111の他端はバルブV13を介して大気雰囲気の排液路(ドレイン)に接続されている。リキッドエンドタンク23の底部には配管103の一端が接続され、配管103の他端はバルブV14を介してフィルタ部3に接続されている。このバルブV14は、フィルタ部3の一次側(レジスト供給源側)のバルブである。
【0017】
フィルタ部3は、上流側から下流側に向かうレジスト中に含まれる異物(パーティクル)を捕集し、当該レジスト液から除去する。フィルタ部3の構成について
図2の縦断側面図を参照しながら簡単に説明する。フィルタ部3は、カートリッジ31と、カートリッジ31を囲むカプセル32とを備えている。カートリッジ31は、起立した内筒部33と、内筒部33の周囲を覆う保持部34と、保持部34内に内筒部33の側周を囲むように設けられる濾過部材35と、を備えている。図中301は内筒部33内の流路、302は内筒部33の側壁に設けられる開口部、303は保持部34の側壁に設けられる開口部であり、304は保持部34の上部に設けられる開口部である。開口部301、302、304は互いに連通している。また、前記濾過部材35は、前記開口部302、303間を遮るように設けられている。
【0018】
カプセル32の上側には、ポート311、312、313が設けられている。ポート311は、前記配管103に接続されるレジスト導入ポートである。また、カプセル32内には、ガイド部材36が設けられ、前記レジスト導入ポート311から流入したレジストは、このガイド部材36によってカプセル32の底部側を通過してから外筒部32に沿って上側に向かうようにガイドされる。図中314はガイド部材36及びカプセル32の内壁により形成され、レジスト導入ポート311から下方へ向かう流路である。図中315は、前記流路314から水平に広がるようにカートリッジ31の下方に形成される流路、316は流路315から保持部34の外壁に沿って上側に伸びる流路である。
【0019】
前記ポート312は濾過されたレジストを外部に供給するための外部供給ポートであり、前記カートリッジ31の開口部304に開口している。前記ポート313はベント用ポートであり、前記流路316に開口している。これらポート311、312、313は、これらが接続される配管103、104、131に対して夫々着脱自在に構成される。
【0020】
前記濾過部材35について説明すると共に、背景技術の項目で述べたフィルタウエッティング処理時の問題を補足して説明する。前記濾過部材35は、例えば不織布により構成される膜部材を折り曲げて構成されている。この濾過部材35は、フィルタ部3を装置1に取り付ける際は乾燥しているが、使用時にはレジストに浸される。濾過部材35は多数の微細な孔321を備えている。
図3は、この孔321を極めて模式的に示したものである。図中の矢印322、矢印323は夫々濾過部材35へ向かうレジスト、濾過部材35を通過したレジストを示している。上流側のレジストに含まれる異物が、孔321より大きければ、濾過部材35に直接捕集される。そして、孔321より異物が小さくても、公知であるさえぎり捕集、慣性捕集、拡散捕集及び静電吸着捕集によって、当該異物は濾過部材35により捕集され、濾過部材35の下流側への流出が防がれる。しかし、上記のように孔321の大きさにはばらつきがあり、この孔321の大きさによっては孔321へのレジストの浸透が起こり難い。
【0021】
即ち、レジストをフィルタ部3に供給してフィルタウエッティングを行っても、濾過部材35においてレジストに浸らない領域が発生することが考えられる。そのような状態でレジスト塗布処理を行うと、上流側のレジストは濾過部材35のうち限られた範囲しか流通せずに、濾過部材35の下流側へと供給されることになる。そうなると、上記のさえぎり捕集、慣性捕集、拡散捕集、静電吸着捕集が十分に行われ難くなってしまう。それを防ぐために、このレジスト塗布装置1では前記フィルタウエッティング処理として、後述する負圧脱気処理及び大気開放処理が行われる。負圧とは大気圧よりも低い圧力である。
【0022】
図1に戻って配管系の説明を続ける。前記フィルタ部3の外部供給ポート312には、配管104の一端が接続され、配管104の他端はバルブV15を介してトラップタンク24の壁面に接続されている。トラップタンク24の上部側には、排液管112の一端が接続され、排液管112の他端はバルブV16を介して前記大気雰囲気の排液路に接続されている。図中V16は、排液管112に介在するバルブである。トラップタンク24は、レジスト中の気泡を捕集し、排液管112を介して除去する役割を有する。
【0023】
トラップタンク24の下部には配管105の一端が接続され、配管105の他端はバルブV17を介してポンプ25の上流側に接続されている。前記ポンプ25としては、例えばポンプ外部からの吸引加圧を反映する構造を有するポンプが用いられる。例としてはダイアフラムポンプなどの空圧ポンプが挙げられる。ポンプ25内に設けられる空間の内圧によりダイアフラムが変形して、それにより前記ダイアフラムにより構成されるレジストの流路の拡張、収縮が行われる。前記流路の拡張により、当該ポンプ25の上流側、つまりフィルタ部3の二次側(ノズル側)の減圧による負圧雰囲気の形成の結果、前記流路へのレジストの吸引が行われる。また、前記流路の収縮により、当該流路から下流側へのレジストの吐出が行われる。図中121は、前記空間を加圧するためにエアを供給するための配管、122は前記空間を減圧するために当該空間からエアを排気するための配管である。図中V21、V22は、配管121、122に夫々介設されるバルブである。
【0024】
前記バルブV18を介してポンプ25には配管106の一端が接続され、配管106の他端はトラップタンク26の壁面に接続されている。トラップタンク26は、前記トラップタンク24と同様、気泡の捕集及び除去を行うために設けられる。トラップタンク26の上部側には、排液管113の一端が接続され、排液管113の他端はバルブV19を介して前記排液路に接続されている。前記トラップタンク26の下部には配管107の一端が接続され、配管107の他端はバルブV23を介して前記ノズル14に接続されている。
【0025】
続いて減圧部4について説明する。この減圧部4は、以下に述べる配管(排気管と記載したものも含む)、トラップタンク41、42、真空トラップタンク43、排気路136及び各バルブにより構成される。前記フィルタ部3のベント用ポート313には、配管131の一端が接続される。配管131の他端は、ベントバルブであるバルブV41を介して前記トラップタンク41の底部に接続されている。このトラップタンク41は、前記負圧脱気処理時にその内部が負圧雰囲気にされ、フィルタ部3から吸引されるレジストをトラップする。トラップタンク41の底部には排液管114の一端が接続され、排液管114の他端はバルブV42を介して前記排液路に接続されている。トラップタンク41の上部には排気管132の一端が接続され、排気管132の他端は、バルブV43を介して真空トラップタンク43に接続されている。
【0026】
また、フィルタ部3の外部供給ポート312に接続される配管104において、バルブV15の前段側には配管133の一端が接続されている。配管133の他端は、フィルタ部3の二次側バルブをなすバルブV44を介してトラップタンク42の底部に接続されている。このトラップタンク42は、トラップタンク41と同様に負圧脱気処理時に、その内部が負圧雰囲気とされ、フィルタ部3から吸引されるレジストをトラップする。トラップタンク42の底部にはトラップタンク42に貯留されたレジストを排液路に除去するための排液管115の一端が接続されている。排液管115の他端はバルブV45を介して前記排液路に接続されている。トラップタンク42の上部には排気管134の一端が接続され、排気管134の他端は、バルブV46を介して真空トラップタンク43に接続されている。
【0027】
真空トラップタンク43は、排気路136へのレジストの流入をより確実に抑える役割を有する。真空トラップタンク43に設けられる内部空間44は減圧され、当該内部空間44内にトラップタンク41、42から排気管132、134を介して漏洩したレジストを貯留する。前記内部空間44には液面計45が設けられ、前記漏洩したレジストの液面を検出すると、所定の信号を後述の制御部10へと出力する。真空トラップタンク43の上側には、排気管135の一端が接続され、排気管135の他端は、バルブV47を介してエアの排気路136に介設された排気量調整部46に接続されている。排気量調整部46により、排気管135の排気流量が適切な値に調整される。図中47は真空計であり、排気管135内の真空度に応じて制御部10に信号を出力する。
【0028】
レジスト塗布装置1は、制御部10を備えている。制御部10はプログラム、CPU、及びバスなどからなる。前記プログラムは、前記制御部10から装置1の各部に制御信号を出力し、後述の処理が行われるように命令(各ステップ)が組まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部に格納されてメインメモリにインストールされる。前記プログラムとしては、スピンチャック11の回転や、各バルブの開閉によるポンプ25の動作、レジストの下流側への通流、及び負圧脱気処理を行うためのプログラムが含まれており、各プログラムは前記CPUを介してこれらの動作を実行する。
【0029】
制御部10は図示しない操作部を備えている。装置1のオペレータが、この操作部から所定の操作を行うことにより、自動で前記フィルタウエッティング処理が行われるように装置1の各部に制御信号が出力される。また、制御部10は真空計47及び液面計45からの信号を監視し、真空度の異常及びレジストの漏洩が検出されたときは、図示しないアラーム発生部によりアラームを出力する。アラームは例えば音声や画面表示である。
【0030】
既述のフィルタウエッティング処理は、レジストをフィルタ部3に導入して濾過部材35をレジストに浸漬する浸漬処理と、前記フィルタ部3内を負圧雰囲気として脱気する負圧脱気処理と、フィルタ部3内を大気開放する大気開放処理と、フィルタ部3の一次側からノズル14へレジストを通流させる通流処理とからなり、この順に各処理が行われる。以下、レジスト塗布装置1の各バルブが開閉する様子を示した
図4〜
図11と、フィルタ部3の内部をレジストが流通する様子を示した
図12〜
図20とを互いに対応させながら、前記フィルタウエッティング処理と、その後に行われるレジスト塗布処理とについて説明する。
図4〜
図11では配管中のレジストの流れを太線で示している。
図13〜
図20では、各ポート311〜313に接続されるバルブV14、V41、V15、V44の開閉状態についても示している。
【0031】
先ず、
図12に示す新規なフィルタ部3、即ち前記濾過部材35が液体に浸されておらず、乾燥した状態のフィルタ部3を用意する。このフィルタ部3が、
図1において当該フィルタ部3が取り外された状態の装置1に装着される。具体的には、前記ポート311、312、313に配管103、104、131を接続し、
図1に示すレジスト塗布装置1が形成される。例えば各バルブV11〜V47は、この時点では閉鎖されている。
【0032】
レジスト塗布装置1のオペレータが、制御部10の操作部から所定の操作を行うと、バルブV12、V14、V41、V42が開放され、ボトル21からフィルタ部3及びトラップタンク41を介して排液路に至るまでの経路が開放されて、フィルタ部3の浸漬処理が開始される。バルブV11が開放され、ボトル21にN2ガスが供給されてその内圧が上昇し、
図4中に示すように、レジスト供給源2からフィルタ部3へレジストが流通する。フィルタ部3へ供給されたレジストは、
図13に示すようにレジスト導入ポート311からカプセル32内の流路314、315、316に供給され、濾過部材35に供給される。そして
図14に示すように、さらにレジストが流路316に供給されて当該流路316を満たし、ベント用ポート313を介して排液路へ流れると共に、レジストが流路316から濾過部材35に浸透していく。
【0033】
浸漬処理を開始してから所定の時間が経過すると、バルブV41、バルブV42が閉鎖され、フィルタ部3のベント用ポート313からトラップタンク41を介して排液路に至る経路が遮断される。この経路の遮断と共に、
図5に示すようにバルブV44、V45が開放され、フィルタ部3の外部供給ポート312からトラップタンク42を介して排液路に至る経路が開放される。それによってレジストは
図15に示すように、濾過部材35を介して前記流路316の内側の流路301へ向かって流れ、当該濾過部材35の浸漬がさらに進行する。レジストの流通が続けられ、流路301にレジストが満たされ、外部供給ポート312からトラップタンク42を介して排液路に排出される。このとき、濾過部材35において開口部303に面していない領域は、開口部303に面している領域に比べてレジストに接触し難く、また、上記のようにレジストは濾過部材35を均一に浸透しないことから、
図16に示すように濾過部材35にはレジストに浸されていない箇所、即ち気泡40が残留している箇所が存在している。
【0034】
前記浸漬処理開始から所定の時間が経過すると、バルブV11、V12、V14が閉鎖され、N2ガスのボトル21への供給が停止すると共にボトル21からフィルタ部3に至る経路が閉鎖され、浸漬処理が終了する。それに並行してバルブV45が閉鎖され、トラップタンク42から排液路に至る経路が閉鎖される。そして、
図6に示すようにバルブV41、V43、V44、V46、V47が開放され、フィルタ部3のベント用ポート313からトラップタンク41、真空トラップタンク43を介して排気路136に至る経路、及びフィルタ部3の外部供給ポート312からトラップタンク42、真空トラップタンク43を介して排気路136に至る経路が開放される。これによって、負圧脱気処理が開始され、フィルタ部3のカプセル32の内部が吸引、減圧される。
【0035】
前記カプセル32内は負圧雰囲気となり、例えば−51kPa〜−80kPaに維持される。この例では−80kPa(−80000Pa)に維持される。
図17を用いて、このときのフィルタ部3の内部の様子を説明すると、レジストに含まれる気泡40の容積が大きくなり、当該レジストに対する浮力が大きくなる。また、ポート312、313からこのようにレジストを吸引することにより、フィルタ部3内でのレジストの流動が起きる。このレジストの流動はレジストに吸引力が作用することの他に、後述の評価試験でも示すように負圧雰囲気が形成されたことにより、カプセル32の内部が収縮することにも起因して発生する。このレジストの流動によって、濾過部材35におけるレジストの毛細管現象が促進され、レジストはそれまで気泡40が蓄積されていた濾過部材35の流路に浸透していくと共に、気泡40は濾過部材35から引き出される。そのように引き出された気泡40は浮力が大きくなっていることから、
図18に示すように吸引が行われているポート312、313へ向かうように集まる。このようにして、濾過部材35から気泡40が除去される。
【0036】
この負圧脱気処理時にポート312、313から吸引されたレジストは、トラップタンク41、42に捕集されて貯留される。負圧脱気処理の開始から所定時間が経過すると、バルブV43、V46、V47が閉鎖され、トラップタンク41、42から真空トラップタンク43を介して排気路136に至る経路が閉鎖されて、負圧脱気処理が終了する。この経路の閉鎖に並行してバルブV42、V45が開放される大気開放処理が行われ、
図7に示すようにフィルタ部3からトラップタンク41、42を介して大気雰囲気の排液路に至る経路が開放される。それによってフィルタ部3内の圧力が大気圧となるように上昇し、
図19に示すようにポート312、313に引き出されている気泡40に作用する圧力が上昇して、結果として、当該気泡40は
図20に示すようにレジスト中に溶解する。この気泡40の溶解に並行して、トラップタンク41、42に捕集されていたレジストが排液路へと排出される。
【0037】
然る後、バルブV41、V42、V44、V45が閉鎖され、フィルタ部3からトラップタンク41、42を介して排液路に至る経路が閉鎖される。そして、バルブV12、V14、V15、V16が開放され、ボトル21からリキッドエンドタンク23、フィルタ部3、トラップタンク24を介して排液路に至る経路が開放される。さらにバルブV11が開放されてN2ガスによりボトル21が加圧され、レジスト通流処理が開始される。
図8に示すようにレジスト供給源2からレジストが前記経路に供給され、フィルタ部3内で前記気泡40が溶解されたレジストが、フィルタ部3の外部へと押し流され、トラップタンク24を介して排液路に除去される。これによって、溶解された気泡40が再度発泡してパーティクルとなることが防がれる。
【0038】
レジスト通流処理開始から所定の時間経過後、バルブV16が閉鎖され、フィルタ部3からトラップタンク24を介して排液路に至る経路が閉鎖される。この経路の閉鎖に並行してバルブV17、V18、V23が開放され、
図9に示すようにフィルタ部3からトラップタンク24、ポンプ25及びトラップタンク26を介してノズル14に至る経路が開放され、前記ノズル14からレジストが排出されるようにレジスト通流処理が続けられる。これによって、フィルタ部3の上流側のパーティクルがフィルタ部3により捕集され、フィルタ部3の下流側のパーティクルはレジストと共に排出され、配管系から除去される。なお、このようにレジストを通流中に適切なタイミングでバルブV19、バルブV23が開閉され、トラップタンク26にレジストが貯留される。
【0039】
通流処理の開始から所定時間経過すると、バルブV11が閉鎖され、ボトル21内へのN2ガスの供給が停止すると共にバルブV18、V23が閉じられ、ポンプ25からノズル14に至る経路が遮断されて、レジストの通流処理が終了する。以降、レジスト塗布処理が行われる。先ず、図示しない搬送機構によりスピンチャック11にウエハWが保持されて、鉛直軸回りに回転されると共に、
図10に示すようにポンプ25の吸引動作が行われ、フィルタ部3の2次側が減圧される。それによって、ボトル21からレジストがフィルタ部3の2次側へと流れ込み、ポンプ25にレジストが貯留される。この吸引動作により、当該フィルタ部3内及び前記配管内の圧力は−1kPa〜−50kPa、例えば−1kPa(−1000Pa)とされる。
【0040】
前記負圧脱気処理時には、気泡40を濾過部材35から除くことを目的とするため、フィルタ部3内を比較的大きな負圧雰囲気とする。しかし、負圧雰囲気が大きすぎると、レジスト中の溶媒に溶解していた成分が析出し、レジストの性質が変化してしまうおそれがある。レジスト塗布処理時には、このように変質したレジストがウエハWに供給されることを防ぐ目的と、前記析出した成分がパーティクルとなることを防ぐ目的とから、フィルタ部3を含む配管系内の圧力が上記のように負圧脱気処理時のフィルタ部3内の圧力よりも高い圧力雰囲気になるように、ポンプ25の吸引量が制御されている。なお、前記負圧脱気処理時にフィルタ部3でレジストの成分が析出しても、その後、フィルタ部3のレジストを除去するにあたり濾過部材35により捕集されたり、気泡が溶解されたレジストと共に配管系から排出されるため、レジスト塗布処理に影響は無い。
【0041】
バルブV17が閉じられ、ポンプ25による吸引動作が終了すると、バルブV18が開放されると共にポンプ25にエアが供給され、既述のダイアフラムの形状を制御するための空間の圧力が調整された後、バルブV23が開かれてポンプ25からノズル14へのレジストの吐出動作が行われる。そして、
図11に示すようにノズル14からウエハWの中心部にレジストが供給される。当該レジストは遠心力により、ウエハWの周縁部へと広がり、ウエハWの表面全体に塗布される。吐出後、バルブV18、V23が閉じられ、レジスト塗布処理が終了する。なお、実際にはレジスト塗布処理時におけるポンプ25の加圧は段階的に行われるが、ここでは詳細な記載を省略している。
【0042】
連続して複数枚のウエハWがレジスト塗布装置1に搬送され、上記のポンプ25の吸引、吐出動作が繰り返されて、各ウエハWにレジストが塗布される。なお、この繰り返しの塗布処理中に適切なタイミングで、ポンプ25からフィルタ部3のベント用ポート、トラップタンク41、排液路に至る経路が開放されると共にポンプ25の吐出動作が行われることでフィルタ部3のベント(ガス抜き)が行われる。各タンク23、24、26に接続される排液管のバルブも同様に適切なタイミングで開いた状態となり、ボトル21あるいはポンプ25から圧送されるレジストによりベントが行われる。
【0043】
このレジスト塗布装置1によれば、フィルタ部3のカプセル32内にレジストを供給し、濾過部材35をレジストに浸した後、減圧部4によりカプセル32内を吸引し、塗布処理時における負圧雰囲気よりも低い圧力の負圧雰囲気にして濾過部材35の孔321に含まれる気泡を引き出す。然る後、フィルタ部3を大気圧雰囲気に戻して、前記気泡をレジストに溶解させている。このように処理を行うことで、濾過部材35から速やかに気泡を除去することができ、またフィルタ部3に残留する気泡を低減することができる。従って、装置1を新たに立ち上げる場合及びフィルタ部3を交換する場合のいずれにおいても、フィルタ部3を装置1に装着し、フィルタ部3をレジスト液に浸漬してから、ウエハWに処理を行うまでに要する装置1の立ち上がり時間の短縮を図ることができる。また、この装置1の立ち上がりまでにフィルタ部3に通液させるレジストの量も抑えることができる。これらの結果として、装置1による処理効率の向上を図ることができるし、この立ち上げに要するコストも抑えることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について
図21を参照しながら、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。この第2の実施形態においては、減圧部4の構成が第1の実施形態と異なっている。
図21ではこの減圧部4及びその周辺の構成を示しており、バルブV14の上流側、バルブV15の下流側は夫々第1の実施形態と同様に構成されているため、記載を省略している。この第2の実施形態にはトラップタンク41、42の代わりにポンプ51、52が夫々設けられている。これらポンプ51、52は排気管132、134を介して真空タンク53に接続されている。真空タンク53は、液面計45が設けられていないことを除いて第1の実施形態の真空トラップタンク43と同様に構成されており、バルブV47を介して排気路136に接続されている。
【0045】
前記ポンプ51、52は例えば、ポンプ25と同様のダイアフラムポンプにより構成されている。また、ポンプ51、52には夫々エア供給管501、502が夫々接続されている。エア供給管501、502からのエア供給と、排気管132、134からの排気とにより、ポンプ51、52は夫々駆動する。図中、V51、V52は、夫々エア供給管501、502に介設されるバルブである。
【0046】
前記負圧脱気処理を行うときにはバルブV47が開かれ、ポンプ51、52から真空タンク53を介して排気路136に至る経路が開放された状態となる。このとき、
図21に示すようにバルブV14、V15、V42、V45、V51、V52が閉鎖され、フィルタ部3とその上流側、フィルタ部3とその下流側のトラップタンク24に至る経路、ポンプ51、52から排液路に至る経路が夫々遮断された状態となっている。また、バルブV41、V44が開かれ、フィルタ部3のベント用ポート313、外部供給ポート312からポンプ51、52に至る経路が開放された状態となる。このように各バルブの開閉が制御され、ポンプ51、52が吸引動作を行うことにより、外部供給ポート312、ベント用ポート313を介してフィルタ部3内が吸引され、フィルタ部3内には第1の実施形態と同様の負圧雰囲気が形成される。
【0047】
負圧脱気処理を終了するときには、バルブV47、V41、V44が閉じられて、フィルタ部3からポンプ51、52に至る経路、及び真空タンク53から排気路136に至る経路が遮断され、ポンプ51、52の吸引動作が終了する。そして、バルブV42、V45が開かれ、フィルタ部3からポンプ51、52を介して排液路に至る経路が開放され、既述の大気開放処理が行われる。然る後、
図22に示すようにバルブV41、V44が閉じられ、フィルタ部3からポンプ51、52に至る経路が遮断されると共に、バルブV51、V52が開かれ、ポンプ51、52が吐出動作を行う。これによりポンプ51、52に残留しているレジストが排液路に排出される。第2の実施形態において、この負圧脱気処理及び大気開放処理以外の各処理は、第1の実施形態と同様に行われるため、詳細な説明を省略する。この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
(第3の実施形態)
図23に示す第3の実施形態は、第2の実施形態と減圧部4の構成について差異がある。第2の実施形態と同様にポンプ51、52が設けられる。これらポンプ51、52は排気路136に接続されておらず、配管501、502からのエア供給の有無によって、吐出動作、吸引動作が切り替えられる。そのような動作が行えるようにポンプ51、52は、例えばシリンジや空圧シリンダを備えたポンプとして構成される。各バルブの開閉は第2の実施形態と同様に行われ、負圧脱気処理とその後のフィルタ部3内の大気開放処理とが行われる。また、この例では真空計47が、フィルタ部3とポンプ51とを接続する配管131の真空度を計測するように構成されている。
また、ポンプ51、52を、空圧による動作するポンプとする代わりに例えば電動ポンプにより構成してもよい。これら第3の実施形態においても第1の実施形態と同様に、レジスト塗布装置1の立ち上げ時間の迅速化を図ることができる。
【0049】
(第4の実施形態)
減圧部4を設けずに、ポンプ25を用いて負圧脱気処理を行ってもよい。
図24は、そのような第4の実施形態であるレジスト塗布装置5を示している。第1の実施形態との差異点を説明すると、前記減圧部4が設けられていないことの他には、フィルタ部3のベント用ポートに接続される配管131がバルブV41を介して排液路に接続されていることが挙げられる。また、この実施形態ではフィルタ部3の二次側バルブは、トラップタンク24の排液管112に設けられるバルブV16に相当する。
【0050】
図24〜
図27を用いてレジスト塗布装置5の動作を説明する。フィルタ部3を装置5の各配管に取り付け後、第1の実施形態と同様にレジスト供給源2からフィルタ部3のベント用ポート313を介して排液路に至るようにレジストを供給し、さらに
図24に示すように外部供給ポート312、トラップタンク24、バルブV16をこの順に介して排液路に至るようにレジストを供給し、フィルタ部3の浸漬処理を行う。
【0051】
その後、ボトル21からリキッドエンドタンク23に至る経路、リキッドエンドタンク23からフィルタ部3に至る経路を夫々閉鎖し、ボトル21から下流側へのレジストの供給を停止すると共に、ボトル21へのN2ガスの供給を停止する。さらに、バルブV16を閉鎖し、トラップタンク24から排液路に至る経路を閉鎖すると共にバルブV17を開放し、フィルタ部3からトラップタンク24を介してポンプ25に至る経路を開放する。そして、
図25に示すようにポンプ25の吸引動作を行い、負圧脱気処理を行う。この負圧脱気処理においては、ポンプ25の吸引量を制御することで、フィルタ部3内を−51kPa〜−80kPa、例えば−80kPa(−80000Pa)に維持する。それによって、
図28に示すようにフィルタ部3の外部供給ポート312に向けて、気泡40が濾過部材35から引き出される。
【0052】
その後、
図26に示すようにバルブV41、V16が開放され、フィルタ部3のベント用ポート313が排液路に開放されると共に、フィルタ部3の外部供給ポート312がトラップタンク24を介して排液路に開放されて、フィルタ部3内が大気圧雰囲気となる。これによって第1の実施形態と同様にレジストへの気泡40の溶解が行われる。また、ポンプ25の吸引状態が解除され、吐出状態となる。
【0053】
その後、第1の実施形態と同様にレジスト供給源2からフィルタ部3、ポンプ25、トラップタンク26、ノズル14を順に流通してレジストが排出されるように通流処理を行う。なお、トラップタンク26へのレジストの充填も第1の実施形態と同様に行われる。前記レジストの排出が所定時間続けられた後、レジスト塗布処理が開始され、
図27に示すように、ポンプ25による吸引が行われる。ここでの吸引は、第1の実施形態のレジスト塗布処理時と同様にフィルタ部3が負圧脱気処理時の圧力よりも高い圧力になるように制御される。然る後ポンプ25の吐出動作が行われ、吸引したレジストをノズル14からウエハWに供給する。
【0054】
このようなレジスト塗布装置5においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。この実施形態においては、ポンプ25が減圧部4の役割を有するため、装置構成を簡素にできる利点がある。ただし、フィルタ部3を上記のように比較的大きな負圧雰囲気に維持することは、ポンプ25に大きな負荷をかけて劣化させる場合があるため、そのように劣化を防ぐ観点からは第1の実施形態のように負圧脱気処理を行うための専用の減圧部4を設けることが有効である。
【0055】
(第5の実施形態)
図29に示す第5の実施形態に係るレジスト塗布装置50は、第4の実施形態の変形例であり、第4の実施形態と同様にポンプ25により負圧脱気処理が行われる。第4の実施形態との差異点を述べると、配管503、504が設けられること、これら配管に介設されるバルブV53、V54が設けられることが挙げられる。配管503はトラップタンク24と、配管103のバルブV14の上流側とを接続する。配管504は、ポンプ25とトラップタンク24とを互いに接続する。なお、図示の便宜上、ポンプ25からのレジストの吐出経路が、当該配管504と配管107との2つ伸びているように示しているが、実際には配管504、配管107は、ポンプ25から伸びる配管の先端側が分岐して構成されている。
【0056】
この実施形態の通流処理には、レジストの使用量を抑えるために配管503、504を用いて次のようにレジストを通流させる工程が含まれる。バルブV11、V12、V14、V17を開放して、ボトル21の加圧を行うと共にボトル21からフィルタ部3、トラップタンク24を介してポンプ25に至る経路を開放する。そして、ポンプ25の吸引動作を行った後、バルブV12を閉じてボトル21とリキッドエンドタンク23との接続を遮断すると共に、バルブV54、V53、V13を開放して、ポンプ25からトラップタンク24を介してリキッドエンドタンク23に至る経路を開放する。ポンプ25からの吐出動作を行い、レジストをリキッドエンドタンク23側に戻す。フィルタ部3の浸漬処理、負圧脱気処理、大気開放処理及びレジスト塗布処理は第4の実施形態と同様に行われるため、ここでは記載を省略する。
【0057】
(第6の実施形態)
本発明をレジスト塗布装置に適用するケースについて説明してきたが、処理液としてレジストを用いることには限られない。
図30は現像液の供給系60及び純水の供給系61について概略的に示している。現像液供給系60及び純水供給系は、ウエハWに現像液を供給し、さらにウエハW上の当該現像液を、ウエハWに純水を供給することにより除去する現像装置を構成する。現像装置においては、そのように現像液及び純水をウエハWに供給するために、レジスト塗布装置1と同様にカップ13及びスピンチャック11が設けられる。また、各バルブの開閉などの動作を制御する制御部10が設けられるが、これらカップ13、スピンチャック11、制御部10の図示は省略している。
【0058】
図中62は現像液の供給部、63は供給部から供給された現像液を貯留するタンクであり、これらは共に現像液の供給源を構成する。タンク63は、N2ガス供給源64からのN2ガスの供給により、下流側に現像液を加圧した状態で送液する役割も有する。図中V61、V62は、タンク63への現像液供給、N2ガス供給を夫々制御するためのバルブである。図中65は、タンク63からの流路を分岐させるための分岐路形成部である。図の例では3つに分岐路を形成している。
【0059】
分岐路形成部65の下流には各々バルブV63を介してフィルタ部3が設けられ、フィルタ部3の下流にはバルブV64が設けられている。フィルタ部3のベント用ポート313と、フィルタ部3の下流側且つバルブV64の上流側とには、第1の実施形態で説明した減圧部4が接続されている。バルブV64の下流側の構成について、図では3つのバリエーションを示している。1つは流量計67の下流側で分岐路形成部68により分岐し、各分岐端にバルブV65を介してノズル66が接続される例である。1つはフィルタ部3の下流側で分岐し、各分岐端が流量計67、バルブV65をこの順に介してノズル66に接続される例である。1つは分岐せずに流量計67、バルブV65をこの順に介してノズル66に接続される例である。このようにフィルタ部3を装着する配管系の構成は任意である。
【0060】
現像液供給系60では第1の実施形態と同様にフィルタウエッティング処理が行われる。ただし、処理液としてはレジストの代わりに供給部62からタンク63を介して下流側に供給される現像液が用いられる。フィルタウエッティング処理後、ノズル66から現像液をウエハWに供給するにあたっては、タンク63から加圧された現像液が下流側に供給される。つまり、この例では現像液供給時にフィルタ部3内を含むタンク63からノズル66に至る経路は正圧雰囲気となる。つまり、上記の各実施形態のようにウエハWへ処理液を供給する際に、フィルタ部3の下流側に負圧雰囲気を形成することには限られない。ところで、この現像液供給系60において処理液として現像液の代わりにシンナーを用いることにより、シンナー供給系を構成してもよい。このシンナー供給系は、例えば上記のレジスト塗布装置1に適用され、レジスト塗布前にウエハWにシンナーを供給して、レジストのウエハWへの濡れ性を高める。
【0061】
純水供給系61は、純水供給源69からバルブV61、バルブV63、フィルタ部3、流量計67、バルブV65を介してノズル66に至る配管系を備えている。そして、現像液供給系60と同様に、この配管系には減圧部4に接続され、第1の実施形態と同様にフィルタウエッティング処理が行われる。このウエッティングにはレジストの代わりに供給源69から供給される純水が用いられる。純水供給源69は、例えば工場の用力により当該純水が流れている流路により構成され、この純水供給源69から前記配管系に流れ込んだ当該純水の水圧により、ノズル66側へ純水が流通するように当該配管系が構成されている。つまり、この純水供給系61においてもウエハWに純水を供給するにあたり、純水供給源69からノズル66に至る配管内は正圧雰囲気となる。
【0062】
上記の各実施形態において、負圧脱気処理とフィルタ部3の大気開放処理とは繰り返し行ってもよい。また、上記の例ではフィルタ部3において、外部供給ポート312または、外部供給ポート312及びベント用ポート313から吸引を行っているが、どのポートから吸引を行うかはこれらの例には限られない。例えば、レジスト導入ポート311から吸引を行うように減圧部4を構成してもよい。
【0063】
続いて、例えば上記のレジスト塗布装置1が適用される塗布、現像装置7を説明する。
図31、
図32、
図33は、夫々塗布、現像装置7の平面図、斜視図、概略縦断側面図である。この塗布、現像装置7は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックD3にはさらに露光装置D4が接続されている。以降の説明ではブロックD1〜D3の配列方向を前後方向とする。キャリアブロックD1は、基板であるウエハWを複数枚含むキャリアCを装置内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台71と、開閉部72と、開閉部72を介してキャリアCからウエハWを搬送するための移載機構73とを備えている。
【0064】
処理ブロックD2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第6の単位ブロックB1〜B6が下から順に積層されて構成されている。説明の便宜上ウエハWに下層側の反射防止膜を形成する処理を「BCT」、ウエハWにレジスト膜を形成する処理を「COT」、露光後のウエハWにレジストパターンを形成するための処理を「DEV」と夫々表現する場合がある。また、これ以降の説明で、単位ブロックを「層」と表現して記載の繁雑化を避ける場合がある。
【0065】
この例では、下からBCT層、COT層、DEV層が2層ずつ積み上げられており、COT層(B3、B4)を代表して
図31を参照しながら説明する。キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かう搬送領域Rの左右の一方側には棚ユニットUが配置されている。他方側には液処理モジュールとして、上記のレジスト塗布装置1と、保護膜形成モジュール74とが前後に並べて設けられている。塗布、現像装置7ではウエハWが載置される場所をモジュールと呼ぶため、それに合わせて、ここではレジスト塗布装置1をレジスト塗布モジュール1と表記する。
【0066】
前記搬送領域Rには、ウエハWを搬送するための基板搬送機構である搬送アームA3が設けられている。この搬送アームA3は、進退自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在、且つ搬送領域Rの長さ方向に移動自在に構成されており、単位ブロックB3の各モジュール間でウエハWの受け渡しを行うことができる。また、前記棚ユニットUは、ウエハWの加熱処理を行う加熱モジュール76と、周縁露光モジュール77とにより構成される。周縁露光モジュール77は、レジスト塗布後のウエハWの周縁部を露光する。
【0067】
他の単位ブロックB1、B2、B5及びB6は、液処理モジュールにおいて、ウエハWに供給する薬液が異なることを除き、単位ブロックB3、B4と同様に構成される。単位ブロックB1、B2は、レジスト塗布モジュール1、保護膜形成モジュール74の代わりに液処理モジュールとして反射防止膜形成モジュールを備え、単位ブロックB5、B6は、液処理モジュールとして現像モジュールを備える。
【0068】
処理ブロックD2におけるキャリアブロックD1側には、前記タワーT1が設けられ、このタワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である受け渡しアーム75が設けられている。タワーT1は、前記受け渡しモジュールの他、複数枚のウエハWを一時的に保管するバッファモジュールと、ウエハWの表面を疎水化する疎水化処理モジュールなどが設けられているが、説明を簡素化するためにこれらモジュールは受け渡しアーム75と各単位ブロックB1〜B6の搬送アームA1〜A6との間でウエハWを受け渡すための受け渡しモジュールTRSとする。また、タワーT1には、ウエハWの表面のパーティクルを検出する検査モジュール70が設けられている
【0069】
インターフェイスブロックD3は単位ブロックB1〜B6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えており、タワーT2とタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構であるインターフェイスアーム78と、タワーT2とタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構であるインターフェイスアーム79と、タワーT2と露光装置D4の間でウエハWの受け渡しを行うためのインターフェイスアーム80が設けられている。
図33に示すようにタワーT2は、受け渡しモジュールTRSが互いに積層されて構成されている。尚タワーT3、T4については説明を省略する。
【0070】
この塗布、現像装置7及び露光装置D4からなるシステムのウエハWの搬送経路の概略について簡単に説明する。ウエハWは、キャリアC→移載機構73→タワーT1の受け渡しモジュールTRS→受け渡しアーム75→タワーT1の受け渡しモジュールTRS→単位ブロックB1(B2)→単位ブロックB3(B4)→インターフェイスブロックD3→露光装置D4→インターフェイスブロックD3→タワーT1の受け渡しモジュールTRS→移載機構73→キャリアCの順で流れていく。
【0071】
処理ブロックD2内のウエハWの流れについてより詳しく述べると、反射防止膜を形成する単位ブロックB1、B2、レジスト膜を形成する単位ブロックB3、B4及び現像を行う単位ブロックB5、B6は二重化されており、これら二重化された単位ブロックに対して、同じロット内の複数のウエハWが振り分けられて、つまり交互に単位ブロックに搬送される。例えばウエハWを単位ブロックB1に受け渡す場合には、タワーT1のうちの受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックB1に対応する受け渡しモジュールTRS1(搬送アームA1によりウエハWの受け渡しが可能な受け渡しモジュール)に対して、受け渡しアーム75によりウエハWが受け渡されることになる。タワーT1における受け渡しアーム75の受け取り元のモジュールは、移載機構73により搬入される受け渡しモジュールTRS0である。
【0072】
また単位ブロックB2に対応する受け渡しモジュールをTRS2とすれば、受け渡しモジュールTRS0のウエハWは受け渡しアーム75により受け渡しモジュールTRS2に受け渡される。従って同じロット内のウエハWは、受け渡しアーム75により受け渡しモジュールをTRS1、TRS2に対して交互に振り分けられることになる。
【0073】
これら受け渡しモジュールTRS1、TRS2のウエハWを搬送アームA1、A2が受け取り、反射防止膜形成モジュール、加熱モジュールに順に搬送して、反射防止膜を形成する。当該反射防止膜の形成を終えたウエハWは、例えば受け渡しモジュールTRS1あるいはTRS2を介して、受け渡しアーム75により単位ブロックB3に対応する受け渡しモジュールTRS3と単位ブロックB4に対応する受け渡しモジュールTRS4との間で振り分けられて搬送される。これら受け渡しモジュールTRS3、TRS4のウエハWを搬送アームA3、A4が受け取り、レジスト塗布モジュール1、加熱モジュール76、周縁露光モジュール77に順に搬送して、レジスト膜の形成、周縁露光が行われる。その後、ウエハWは、上記のようにタワーT2に搬送され、露光装置D4にて露光される。
【0074】
更にまた露光を終えたウエハWは、インターフェイスブロックD3のインターフェイスアーム78、79、80により、タワーT2の受け渡しモジュールTRSを介して単位ブロックB5、B6に対して交互に搬入されることになる。単位ブロックB5、B6にて、ウエハWは搬送アームA5、A6により加熱モジュール→現像モジュール→加熱モジュールの順で搬送された後、タワーT1を介してキャリアCに戻される。例えば既述の制御部10により、塗布、現像装置7の各部に制御信号が送信され、それによってウエハWの搬送及びモジュールの動作が制御され、このような処理が行われる。また、制御部10により、後述の検査処理における各部の動作が制御される。
【0075】
続いて、前記検査モジュール70を用いた検査処理について説明する。第3の単位ブロックB3のレジスト塗布モジュール1において、第1の実施形態で説明したように負圧脱気処理、大気開放処理、レジスト通流処理を順に行った後、塗布、現像装置1に複数枚のテスト用のウエハW1が格納されたキャリアC1を図示しない搬送機構により搬送する。キャリアC1から移載機構73→受け渡しモジュールTRS3→搬送アームA3→レジスト塗布モジュール1の順でテスト用ウエハW1が搬送され、当該テスト用ウエハW1にレジスト塗布処理が行われる。その後、テスト用ウエハW1は、搬送アームA3→受け渡しモジュールTRS3→受け渡しアーム75→検査モジュール70の順で搬送され、当該検査モジュール70にて検査を受け、移載機構73よりキャリアC1に戻される。
【0076】
検査モジュール70の検査結果が制御部10に送信され、レジスト膜中のパーティクルの数がカウントされる。カウントされたパーティクル数が基準値以下であれば、制御部10は塗布、現像装置1を使用可能にする。つまり、キャリアCが前記載置台71に搬送されたときに、当該キャリアCから既述のようにウエハWを搬送して処理を行うことができる。カウントされたパーティクル数が基準値を超えていれば、制御部10は、例えば再度の負圧脱気処理、大気開放処理及びレジスト通液処理を行うようにレジスト塗布モジュール1の動作を制御する。その後キャリアC1から新規なテスト用ウエハを前記レジスト塗布モジュール1に搬送する。例えばパーティクル数が基準値以下になるまで、上記の負圧脱気処理、レジスト通液処理、テスト用ウエハへのレジスト塗布処理が繰り返される。
【0077】
キャリアCが載置台71に搬送されても、前記パーティクルが基準値以下となるまで、当該キャリアCから製品製造用のウエハWの払い出しは保留される。このようにウエハWの搬送制御及びレジスト塗布モジュール1の動作制御を行うことで、製品製造用のウエハWにパーティクルが混入することを、より確実に抑えることができる。再度の負圧脱気処理、大気開放処理及びレジスト通液処理を行うか否かは、制御部10が決定する代わりに、検査モジュール70で検出されたパーティクル数に基づいて装置のオペレータが決定するようにしてもよい。
ところで上記の各例では、大気開放処理により気泡をレジストに溶解させた後、通流処理を行い、この気泡が溶解したレジストを排液しているが、このように通流処理による排液を行わず気泡が溶解した状態のレジストをウエハWに塗布してもよい。ただし、既述のように再発泡を避けるために、前記通流処理を行うことが好ましい。
【0078】
また、特許請求の範囲でいう目標圧力雰囲気は、負圧脱気処理後に気泡を溶解させるためにフィルタ部3内の圧力を上昇させて気泡を溶解させるにあたっての目標とする所定の圧力雰囲気であり、上記の各実施形態においては大気圧雰囲気に相当する。ただし、この目標圧力雰囲気は大気圧雰囲気であることに限られず、任意の圧力雰囲気である。例えば第1の実施形態でフィルタ部3の浸漬処理を行い、その後ノズル14からボトル21に至る経路にレジストを流通させておく。然る後、負圧脱気処理を行い、フィルタ部3内を大気雰囲気に開放する。このときフィルタ部3内の圧力が上昇し、大気圧に達する前に開放されていたバルブを閉鎖して、フィルタ部3内を負圧雰囲気に維持する。その後、ポンプ25の吸引動作、吐出動作を行い、ウエハWにレジストを供給する。つまり、この場合は前記負圧雰囲気が目標圧力雰囲気である。
【0079】
(評価試験1)
既存の3種類のフィルタ部3を用意し、その内部の圧力を変化させた。そして、そのように圧力を変化させたときに内部の圧力が大気圧であるときの容積に対する当該容積の変化量について測定した。この試験では、大気圧以上になるように当該圧力を変化させている。前記3つのフィルタ部3を3A、3B、3Cとする。
図34のグラフは、フィルタ部3A、3B、3Cについての実験結果を実線、一点鎖線、二点鎖線で夫々示している。グラフの横軸が大気圧と、設定した圧力との差分(単位MPa)であり、縦軸が容積変化量(単位mL)である。
【0080】
グラフより各フィルタ部3は、内部の圧力が高くなるに従って容積が大きくなっていることが分かる。この試験結果から、圧力を大気圧以下にした場合、点線のグラフで示すように各フィルタ部3A〜3Cの容積が変化すると考えられる。つまり、上記のように負圧脱気処理時にフィルタ部3内を負圧にするにしたときに、フィルタ部3内の容積が変化し、それによって濾過部材35の周囲に処理液の流動が起きると考えられる。つまり、フィルタ部3の外部から処理液を供給しなくてもフィルタ部3内で処理液を流動させることができると考えられる。この処理液の流動により、第1の実施形態で説明したように毛細管現象が促進され、濾過部材35への処理液の浸透及び濾過部材35からの気泡の除去が促進されることが推定される。
【0081】
(評価試験2)
続いて、上記の第1の実施形態に従って負圧脱気処理、フィルタ部3の大気開放処理、通流処理、ウエハWへの塗布処理を行った。ただし、この評価試験2では処理液としてレジストの代わりにシンナーを用いて実験を行った。前記通流処理において下流側へ供給するシンナーの流量は変更して、複数枚のウエハWにシンナーを供給した。そして、各ウエハWについて32nm以上の大きさのパーティクルを測定した。これを評価試験2−1とする。また、評価試験2−2として、負圧脱気処理及びその後の大気開放を行わない他は評価試験2−1と同様の試験を行った。
【0082】
図35はこれら評価試験2−1、2−2の結果を示すグラフである。グラフの横軸は前記シンナーの通流処理において使用したシンナーの流量を示し、縦軸はパーティクルの個数を示している。このグラフに示すように評価試験2−1においては500mL程度以上のシンナーを使用することでパーティクルの数を10個以下に抑えることができる。しかし、評価試験2−2ではシンナーの流量を500mL程度以上としても100個以上のパーティクルが検出された。この評価試験2の結果より、本発明の手法を用いることで濾過部材35から速やかに気泡を除去し、その後の処理液の通流工程に要する時間を抑え、装置の立ち上げに要する時間の短縮化を図ることができることが示された。