(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
本発明の基板洗浄装置を現像装置に組み合わせた実施の形態について説明する。
図1において、2は基板例えばウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平姿勢に保持するための基板保持部であるスピンチャックである。スピンチャック2は回転軸21を介して回転機構を含む駆動機構22と接続されており、ウエハWを保持した状態で回転及び昇降可能なように構成されている。なお、本例では、スピンチャック2の回転軸21上にウエハWの中心が位置するように設定されている。
【0031】
スピンチャック2上のウエハWを囲むようにして上方側が開口するカップ3体が設けられている。このカップ体3は、上部側が四角状であり下部側が円筒状の外カップ31と、上部側が内側に傾斜した筒状の内カップ32とからなり、外カップ31の下端部に接続された昇降部33により外カップ31が昇降し、更に内カップ32は外カップ31の下端側内周面に形成された段部に押し上げられて昇降可能なように構成されている。
【0032】
またスピンチャック2の下方側には円形板34が設けられており、この円形板34の外側には断面が凹部状に形成された液受け部35が全周に亘って設けられている。液受け部35の底面にはドレイン排出口36が形成されており、ウエハWからこぼれ落ちるか、あるいは振り切られて液受け部35に貯留された現像液や洗浄液はこのドレイン排出口36を介して装置の外部に排出される。また円形板34の外側には断面山形のリング部材37が設けられている。なお、図示は省略するが、円形板34を貫通する例えば3本の基板支持ピンである昇降ピンが設けられており、この昇降ピンと図示しない基板搬送手段との協働作用によりウエハWはスピンチャック2に受け渡しされるように構成されている。
【0033】
更に本例の現像装置(基板洗浄装置を兼用)は、現像液ノズル23、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を備えている。現像液ノズル23は、スピンチャック2に保持されたウエハWの直径方向に伸びる帯状の吐出口例えばスリット状の吐出口23a(
図2参照)を備えている。このノズル23は現像液供給路24例えば配管を介して現像液供給系25に接続されている。この現像液供給系25は、現像液供給源、供給制御機器などを含むものである。
【0034】
前記現像液ノズル23は支持部材であるノズルアーム26の一端側に支持されており、このノズルアーム26の他端側は図示しない昇降機構を備えた移動基体27と接続されており、更に移動基体27は例えばユニットの外装体底面にてX方向に伸びるガイド部材28に沿って、昇降機構と共に移動機構をなす図示しない駆動源により横方向に移動可能なように構成されている。また図中29は現像液ノズル23の待機部であり、このノズル待機部29でノズル先端部の洗浄などが行われる。
【0035】
洗浄液ノズル4は吐出口40(
図4参照)を有し、洗浄液供給路42例えば配管を介して洗浄液供給系43に接続されている。この洗浄液供給系43は、洗浄液供給源、供給制御機器などを含むものであり、供給制御機器は、吐出流量可能なポンプ及びバルブなどを備えている。更に洗浄液ノズル4は
図3に示すようにノズル保持部41を介してノズルアーム44に固定されており、このノズルアーム44は昇降機構を備えた移動基体45と接続されている。この移動基体45は昇降機構と共に移動機構をなす図示しない駆動源により例えば前記ガイド部材28に沿って現像液ノズル23と干渉しないで横方向に移動可能なように構成されている。また図中46は洗浄液ノズル4の待機部である。
【0036】
ガスノズル5は、配管を介してガス供給系に接続されており、この例ではガス供給系は不活性ガスであるN2(窒素)ガス供給源、供給制御機器などを含む。またガスノズル5は、例えばノズル保持部41に固定されており、ノズルアーム44により洗浄液ノズル4と一緒に移動するように構成されている。
【0037】
続いて洗浄液ノズル4とガスノズル5との離間位置について、洗浄液R及びN2ガスが吐出された状態を示した
図4を用いて説明する。図中4A、5Aは洗浄液ノズル4の吐出口40、ガスノズル5の吐出口50からウエハWに夫々吐出された洗浄液吐出(供給)位置、ガス吐出(供給)位置を示している。また、この洗浄液吐出位置4Aは吐出口40の洗浄液の吐出方向に向かったウエハWへの投影領域であり、ガス吐出位置5Aは、吐出口50のガスの吐出方向に向かったウエハWへの投影領域である。洗浄液吐出位置4Aのガス吐出位置5A側界面と、ガスの吐出位置4Aの洗浄液吐出位置側5A側界面との距離dは9mm〜15mmであり、後述するように上述の距離dは12.35mmであるときに最も好ましく、本実施形態ではこの大きさに各吐出口が設定されているものとする。また、この例においては洗浄液ノズル4の吐出口40の口径は4.3mmであり、ガスノズル5の吐出口50の口径は1.0mmである。また、洗浄液の供給位置の中心とガスの供給位置の中心との距離d1は15mmである。
【0038】
更に図中5はコンピュータからなる制御部であり、この制御部7は、この現像装置が行う後述の動作における各ステップを実行するためのプログラムを備えていて、現像液供給系25、現像液ノズル23を移動させるための移動機構、洗浄液供給系43、洗浄液ノズル4を移動させるための移動機構、スピンチャック2を駆動する駆動機構22及びカップ32の昇降部33などを制御するための制御信号を、前記プログラムに基づいて出力するように構成されている。またこのプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、これら記憶媒体からコンピュータにインストールされて使用される。
【0039】
続いて、上記現像装置を用いて基板であるウエハWを現像し、その後洗浄する一連の工程について説明する。先ず、外カップ31、内カップ32が下降位置にあり、現像液ノズル23、洗浄液ノズル4及びガスノズル5が所定の待機位置にて夫々待機している状態において、その表面にレジストが塗布され、更に液浸露光された後のウエハWが図示しない基板搬送手段により搬入されると、この基板搬送手段と図示しない昇降ピンとの協働作用によりウエハWはスピンチャック2に受け渡される。この例では、レジストとして高い撥水性の材質が用いられ、このためウエハWの表面の水の静的接触角は例えば90度である。
【0040】
次いで、外カップ31及び内カップ32が上昇位置に設定されると共に、現像液ノズル23からウエハW上に現像液が供給され、公知の手法により現像液の供給が行われる。この例では例えば現像液ノズル23の吐出口23aをウエハWの表面から数mm高い位置に設定し、しかる後、ウエハWを例えば1000〜1200rpmの回転速度で回転させると共に、吐出口23aから現像液Dを帯状に吐出しながら現像液ノズル23をウエハWの回転半径方向、つまりウエハWの外側から中央側に向かって移動させる。吐出口23aから帯状に吐出された現像液Dは、例えば
図5に模式的に示すように、ウエハWの外側から内側に向かって互いに隙間のないように並べられていき、これによりウエハWの表面全体に螺旋状に現像液Dが供給される。そして回転しているウエハWの遠心力の作用によりウエハWの表面に沿って現像液Dは外側に広がり、結果としてウエハWの表面には薄膜状の液膜が形成される。そして現像液Dにレジストの溶解性の部位が溶解して、その後にパターンを形成する不溶解性の部位が残ることとなる。
【0041】
次いでこの現像液ノズル23と入れ替わるようにして洗浄液ノズル4がウエハWの中央部上方に配置され、そして現像液ノズル23が現像液の供給を停止した直後に速やかに洗浄液ノズル4から洗浄液Rを吐出してウエハWの表面の洗浄を行う。以下にこの洗浄工程について
図6及び
図7を参照しながら詳述すると、この洗浄工程は以下のステップにより行われる。
【0042】
ステップ1:
図6(a)に示すように、洗浄液ノズル4をウエハWの中心部Cに対向しかつウエハWの表面から例えば15mmの高さの位置に設定し、スピンチャック2を例えば1000rpmの回転数で回転させながら、洗浄液ノズル4からウエハWの中心部Cに洗浄液R例えば純水を例えば250ml/分の流量で例えば5秒間吐出する。これにより洗浄液Rが遠心力によりウエハWの中心部Cから周縁に向かって広がり、現像液が洗浄液Rにより洗い流される。なおウエハWの中心部Cとは、ウエハWの中心点及びその近傍を意味する。
【0043】
ステップ2: 次いでスピンチャック2を1500rpm以上例えば2000rpmの回転数で回転させながらノズルアーム44(
図2参照)を移動させることにより
図6(b)に示すように洗浄液ノズル4をウエハWの中心部Cから少し外側に移動させ、これによりガスノズル5をウエハWの中心部Cと対向するように位置させる。このとき洗浄液ノズル4は、洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で吐出しながら例えば150mm/秒の速度で移動する。そしてノズルアーム44は一旦停止し、ガスノズル5はウエハWの中心部Cと対向した直後に当該中心部Cにガス例えば不活性ガスであるN2ガスGを吹き付ける。
【0044】
洗浄液ノズル4をウエハWの中心部Cから外側に移動させることにより当該中心部Cには洗浄液Rが供給されないが、当該中心部Cは遠心力が小さいので洗浄液Rの液膜が引き裂かれずに薄い状態がしばらく維持される。しかし、
図8にも示すようにガスノズル5からN2ガスGが吹付けられることにより液膜が破れ、ウエハWの表面が剥き出しになった乾燥領域6が遠心力により広がっていく。このときウエハWの表面は、水の接触角が90度と撥水性が高いため、乾燥領域6は洗浄液Rが吐出されている位置まで瞬時に広がる。
図6(b)の点線は乾燥領域6の周縁を示しており、その中は乾燥領域6であることを示している。また、洗浄液吐出位置4Aのガス吐出位置5A側界面と、ガスの吐出位置4Aの洗浄液吐出位置側5A側界面との距離dが既述のように12.35mmであり、両ノズル4、5が一体的に移動することから、この時点における乾燥領域6はおよそ直径25mmの円形状である。
【0045】
ステップ1において洗浄液RはウエハWの中心部Cに吐出され、外に広がることから、当該直径30mmの領域では単位面積あたりの洗浄液Rの量が多く、また遠心力も作用してはいるが、吐出された洗浄液Rが前記中心部Cに衝突しその衝撃により外に広がる作用が大きいことから、洗浄効果が大きい。このため乾燥領域6が瞬時に広がっても既述の
図27(b)に示した現象は、後述の評価試験から推察すると皆無といってよく、パターンの凹部内の洗浄液Rは確実に排出されている。
【0046】
ステップ3: 乾燥領域6形成後にガス吐出を終了させ、続いて
図6(c)に示すように、ノズルアーム44により洗浄液ノズル4、ガスノズル5が一体的にウエハWの周縁に向けて移動する。乾燥領域6を形成するためのガスの供給開始から停止までの時間は例えば0.5秒である。
【0047】
このステップ3においては、ウエハWが回転している状態で、洗浄液ノズル4から洗浄液Rを吐出している。洗浄液ノズル4の移動速度は、乾燥領域6が外側に広がる速度よりも遅い速度、例えば5mm/秒に設定されている。洗浄液ノズル4によりウエハWの中心部Cに洗浄液を吐出し、その後洗浄液を吐出せずにN2ガスGの吹付けだけを行うと、乾燥領域6が外側に広がっていくが、上記の「乾燥領域6が外側に広がる速度」とはこの場合の速度である。ウエハWの表面の撥水性が高いことから既述のように乾燥領域6の広がる速度が大きく、このため洗浄液ノズル4の移動速度を乾燥領域6の広がる速度よりも大きくすると、
図27(b)に示すように洗浄液Rが残留してしまう。またこのステップ3では、
図9に示す如く洗浄液Rの各吐出位置においてウエハWの回転による遠心力が計算上一定となるようにウエハWの回転数が制御される。ステップ3の開始時の回転数f1は例えば2000rpmである。
【0048】
このように回転数を制御する理由は、ウエハW上の単位面積当たりに供給する洗浄液Rの量をウエハWの面内で揃え、これによりウエハWの中心部Cから外れた領域においても高い洗浄効果を得ようとするためである。なおこのような効果が得られるのであれば、洗浄液Rの各吐出位置においてウエハWの回転による遠心力が一定でなくとも、洗浄液Rの供給位置がウエハWの中心に近いほどウエハWの回転数が高くなるように、言い換えれば洗浄液Rの供給位置がウエハWの周縁に近いほどウエハWの回転数が低くなるようにウエハWの回転数を制御してもよい。
【0049】
ステップ3の開始時の回転数f1は例えば2000rpm〜3000rpmであることが好ましく、3000rpmよりも高いとミストなどの問題が発生し、また2000rpmよりも低いと、乾燥領域6の広がるスピードが遅くなり、処理時間が長くなる。またステップ3におけるノズルの移動速度については、処理時間の短縮化を図るためにはできるだけ速い方が好ましいが、あまり速すぎると洗浄効果が低くなることから、10mm/秒を越えないことが好ましい。
【0050】
そして洗浄液ノズル4の中心がウエハWの周縁から少し中心寄りの位置、例えばウエハWの周縁から中心側に2〜10mm離れた位置に達すると(
図7(a))、洗浄液ノズル4からの洗浄液Rの吐出を停止し、ウエハWを回転させたままにしておく(
図7(b))。なお洗浄液ノズル4からの洗浄液Rの吐出をウエハWの周縁に至るまで行うと、ウエハWの表面に吐出された洗浄液Rが外側に跳ねてミストとなってウエハW表面に舞戻ってくるため、周縁に至る少し手前で洗浄液Rの吐出を停止することが好ましい。なお、洗浄液ノズル4を移動させる工程で、洗浄液と共にガスを吐出させてもよい。この場合、ガスノズル5からのN2ガスGの吐出停止のタイミングについては、洗浄液Rの吐出停止と同じタイミングでもよいが、洗浄液Rの吐出停止前あるいは吐出停止後であってもよい。
【0051】
ステップ4: 洗浄液ノズル4の洗浄液Rの吐出を停止した後は、そのままの回転数(この例では2000rpmの回転数)でウエハWを回転させる。これにより乾燥領域6が外側に向かって広がり、乾燥領域6がウエハWの周縁まで広がった後、この例ではウエハWの回転数を2000rpmに設定したままウエハW上の液滴を遠心力により振り切って乾燥を行う。洗浄液ノズル4及びガスノズル5は待機位置に戻される。
【0052】
なお現像後のウエハWにはパターンである凹部が形成され、この凹部内は親水性になり、ウエハWの表面の接触角が低下する部分がある。本発明の対象は、水の接触角が85度以上である疎水性表面を備えた基板であり、この例では現像処理前の水の静的接触角が85度以上である疎水性表面を備えた基板の洗浄工程を示している。基板に現像液を供給する現像処理後に洗浄を行う場合、基板における水の静的接触角が85度以上とは、現像処理前の基板における水の静的接触角が85度以上であることを示す。現像液によってレジストの表面の状態が変わるなどの原因から、現像処理前に水の静的接触角が85度以上であった基板表面については、洗浄時にそのレジストの静的接触角が85度よりも多少低くなっていることがあるが、この場合における洗浄処理は現像処理を行った直後に行う必要があるため、現像処理後洗浄処理前の静的接触角を正確に測定することが難しいので、このように静的接触角を定義している。
【0053】
以上の一連のステップ1〜4は、制御部7のメモリ内に格納されているプログラムをCPUが読み出し、その読み出した命令に基づいて既述の各機構を動作するための制御信号を出力することにより実行される。
【0054】
上述の実施の形態によれば、表面における水の接触角が85度以上である高い撥水性を持つレジスト表面を備えたウエハWに対して現像した後、スピン洗浄するにあたり、ウエハWの中心部Cに洗浄液Rを供給した後、洗浄液Rの供給位置を前記中心部から偏心位置へ移動させると共に前記ウエハWの中心部Cにガスノズル5からガスを、ウエハWにおける洗浄液の吐出位置のガス吐出位置側界面と、ウエハWにおけるガスの吐出位置の洗浄液吐出位置側界面との距離が9mm〜15mmである状態で供給して洗浄液Rの乾燥領域6を発生させ、その後、ウエハWを回転させたまま洗浄液Rの供給位置を、前記乾燥領域6が外に広がる速度よりも遅い速度でウエハWの周縁に向けて移動させるようにしている。このため高い洗浄効果を得ることができ、後述の評価試験からも明らかなように現像欠陥を皆無に近い状態まで低減することができ、歩留まりの向上に大きく寄与し、しかも洗浄を短時間で行うことができる。また洗浄液Rの供給位置がウエハWの周縁に近いほどウエハWの回転数が高くなるようにウエハWの回転数を制御し、これによりウエハW上の単位面積当たりに供給する洗浄液Rの量をウエハWの面内で揃えるようにすれば、ウエハWの中心部から外れた領域においても高い洗浄効果が得られる。従ってこのような手法は、保護膜を使用しないで撥水性の高いレジストを用いて液浸露光に対応していく技術に対して極めて有効な手法である。
【0055】
ここで本発明では、ステップ2においてつまり乾燥領域6を形成するときに「ウエハWにおける洗浄液の吐出位置のガス吐出位置側界面と、ウエハWにおけるガスの吐出位置の洗浄液吐出位置側界面との距離dを9mm〜15mmに設定した状態でウエハWの中心部にガスを吐出する」ことが要件であり、本発明は、後述の実験からこの距離dの適切な値を見出したところに意義がある。
【0056】
[第2の実施の形態]
この実施の形態では、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を別々のノズルアームにより独立して移動できるように構成している。そして洗浄液ノズル4によりウエハWの中心部Cに洗浄液を吐出し、続いて洗浄液ノズル4をウエハWの中心部Cから少し外側に移動させると共にガスノズル5をウエハWの中心部Cと対向するように位置させ、このガスノズル5から当該中心部CにN2ガスを供給して乾燥領域6を形成する。その後、洗浄液ノズル4を、洗浄液を吐出した状態でウエハWの周縁部近傍まで移動させ(
図10(a)、(b))、続いて洗浄液の吐出を停止し、ウエハWの乾燥を行う(
図10(c))。一方、ガスノズル5は、中心部CにN2ガスを供給して乾燥領域6を形成した後は、N2ガスの吐出を停止する。
【0057】
図6(b)の時点における洗浄液ノズル4及びガスノズル5の離間距離については第1の実施の形態と同様である。ガスノズル5はウエハWの中心部CにN2ガスを吐出して乾燥領域6を形成した後は、
図10では前記中心部Cの上方に位置しているが、待機位置に戻すようにしてもよい。この実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
また第2の実施の形態において、
図6(a)、(b)の動作を行った後、洗浄液ノズル4が移動するときに、ガスノズル5から前記ウエハWの中心部CにN2ガスを吐出し続けてもよい。
【0058】
[第3の実施の形態]
ところで、現像液や洗浄液が供給されるためカップ31内の雰囲気は湿度が高くなっており、特に洗浄液が供給された直後において、その洗浄液ノズルが供給された周囲の雰囲気は湿度が高くなる。従って、第1の実施形態のステップ3において、洗浄液ノズル4に追従してガスノズル5がウエハの中心部Cから周縁部に向かって移動するにあたり、周囲の雰囲気の水分がガスノズル5表面に付着して液滴が形成され、その液滴がガスノズル5から乾燥領域6に落下し、そこに形成されている凹部内に入り込んで、現像欠陥が発生してしまうおそれがある。そこで、このような落下する液滴による現像欠陥を抑えることができる実施形態について説明する。
【0059】
図11は、
図1の現像装置と同様に構成された現像装置70を示しており、
図1の現像装置と同様に構成された箇所については
図1と同じ符号を付して、説明を省略し、現像装置70における
図1の現像装置との差異点を中心に説明する。現像装置70に設けられる第1の洗浄液ノズル71は、洗浄液ノズル4に対応し、この洗浄液ノズル4と同様に構成されている。また、この現像装置70には第1の洗浄液ノズル71とは独立してウエハWに洗浄液を供給する第2の洗浄液ノズル72が設けられている。第2の洗浄液ノズル72は洗浄液ノズル71と同様に洗浄液供給路73を介して洗浄液供給系43と同様に構成された洗浄液供給系74に接続されている。
【0060】
図12(a)に示すように、各洗浄液ノズル71、72及びガスノズル5は、ノズル保持部41を介してノズルアーム44に固定されており、第1の実施形態と同様にウエハWの径方向に沿って、互いに一体的に移動するように構成されている。図中71a、72aは洗浄液ノズル71、72の夫々の洗浄液吐出口であり、
図12(b)に示すように鉛直下方に夫々洗浄液Rを吐出できるように構成されている。
【0061】
洗浄液ノズル71からウエハWに吐出される洗浄液吐出位置のガス吐出位置側界面と、ガスノズル5からウエハWに吐出されるガス吐出位置の洗浄液吐出位置側界面との距離dは、第1の実施形態と同じ9mm〜15mmに設定されている。また、各ノズル71、72及び5の移動方向におけるガスノズル5の吐出口50の中心P1と第2の洗浄液ノズル72の吐出口72aの中心P2との距離d2は、例えば17.9mmに設定され、ノズルの移動方向と直交する方向における前記中心P1と前記中心P2との距離d3は例えば15mmである。洗浄液ノズル71a、ガスノズル5はウエハWの中心部に夫々洗浄液R、N2ガスGを吐出できるように各ノズルの移動方向と並行に配列されており、このノズルの移動方向と、ガスノズル5及び第2の洗浄液ノズル72の配列方向とのなす角θは例えば40°である。各ノズルのレイアウトはこの例に限られないが、後述するように第2の洗浄液ノズル72から乾燥領域6の外縁位置に洗浄液を供給するにあたり、第2の洗浄液ノズル72からの洗浄液の供給位置とウエハWの中心部との距離が、ウエハWの中心部とガスノズル5との距離よりも近い状態になるように各ノズルが配置される。「ウエハW(基板)の中心部と第2の洗浄液ノズル72からの洗浄液Rの吐出位置との距離がウエハWの中心部とウエハW上におけるガスノズル5の投影位置との距離よりも近い」とは、これらの距離が同じであることも含む。つまり、第2の洗浄液ノズル72及びガスノズル5の位置は、第2の洗浄液ノズル72からの洗浄液Rによりガスノズルから落下した液滴が除去される位置である。
【0062】
続いて、この現像装置70を用いて洗浄が行われる各ステップの様子を
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は各洗浄液ノズル71、72及びガスノズル5の動きと、乾燥領域6の変動とを示しており、
図14は各ノズルから洗浄液及びガスが吐出される様子を示している。
図13中の鎖線はウエハWの直径を、
図14中の鎖線はウエハWの回転中心軸を夫々示している。
【0063】
ステップS1:第1の実施形態と同様に現像液を供給した後、
図13(a)に示すように、第1の洗浄液ノズル71をウエハWの中心部Cに対向しかつウエハWの表面から例えば15mmの高さの位置に設定し、スピンチャック2を例えば1000rpmの回転数で回転させながら、洗浄液ノズル71からウエハWの中心部Cに洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で、例えば5秒間吐出する(
図14(a))。そして、洗浄液Rが遠心力によりウエハWの中心部Cから周縁に向かって広がり、現像液が洗浄液Rにより洗い流される。
【0064】
ステップS2:次いでスピンチャック2を1500rpm以上例えば2000rpmの回転数で回転させながら、
図13(b)に示すように洗浄液ノズル71をウエハWの中心部Cから少し外側に移動させると共に洗浄液ノズル72をウエハWの中心部よりに移動させ、これによりガスノズル5をウエハWの中心部Cと対向するように位置させる。このとき第1の洗浄液ノズル71は、洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で吐出しながら例えば150mm/秒の速度で移動する。そしてガスノズル5が、ウエハWの中心部Cと対向した直後に当該中心部Cにガス例えば不活性ガスであるN2ガスGを吹き付け、第1の実施形態と同様に乾燥領域6が形成される。乾燥領域6は第1の洗浄液ノズル71により洗浄液Rが吐出されている位置まで広がる(
図13(b))。
【0065】
ステップS3:ガス吐出開始から例えば0.5秒後にガス吐出を終了させ、またそれと略同時に第1の洗浄ノズル71からの洗浄液Rの吐出を停止し、続いて
図13(c)に示すように、第1の洗浄液ノズル71及びガスノズル5をウエハWの周縁よりに移動させると共に、第2の洗浄液ノズル72をウエハWの直径上へ移動させる(14(c))。このときの移動速度は、第2の洗浄液ノズル72のウエハWへの洗浄液Rの吐出位置がウエハWの直径上に位置したときに、ウエハWの中心部を広がる乾燥領域6の外縁位置に当該第2の洗浄液ノズル72から洗浄液を供給することができる速度とし、例えば150mm/秒である。
【0066】
ステップS4:各ノズルが移動を続け、上記のように第2の洗浄液ノズル72からウエハWへ供給される洗浄液Rの吐出位置がウエハWの直径上に位置すると、当該洗浄液ノズル72からウエハWに洗浄液Rが乾燥領域6の外縁位置に例えば250mL/秒で吐出される(
図13(d)、
図14(d))。この場合の「乾燥領域の外縁位置」とは、洗浄効果に支障のない範囲で外縁位置から数ミリ例えば2ミリ程度内側あるいは外側の位置に洗浄液の吐出を開始した場合においても含まれる。このような例としては、例えばノズルの駆動機構の動作タイミングと乾燥領域の広がりのタイミングとに基づいて、洗浄液の吐出位置が乾燥領域の外縁位置からわずかにずれる場合などが挙げられる。
【0067】
ステップS5:
図13(e)及び
図14(e)に示すように、引き続き洗浄液ノズル71、72及びガスノズル5がウエハWの周縁に向けて、乾燥領域6が外側に広がる速度よりも遅い速度、例えば5mm/秒で移動する。このように各ノズルの移動中において、
図15に示すように洗浄液ノズル71及びガスノズル5に液滴Lが形成され、その液滴LがウエハWに落下しても、これらの洗浄液ノズル71及びガスノズル5は乾燥領域6の外側領域を移動しているため、落下した液滴Lは洗浄液ノズル72から供給される洗浄液Rにより洗い流される。従ってこの液滴Lが、ウエハW表面に形成された凹部内に入り込み、そのまま残留して、現像欠陥となることが抑えられる。
【0068】
ステップS6:そして第2の洗浄液ノズル72からの洗浄液の吐出位置がウエハWの周縁から少し中心寄りの位置、例えばウエハWの周縁から中心側に2〜10mm離れた位置に達すると(
図13(f))、第2の洗浄液ノズル72からの洗浄液Rの吐出を停止する(
図14(f))。そして、ウエハWを引き続き、そのままの回転数(この例では2000rpmの回転数)で回転させて乾燥領域6を外側に向かって広げ、乾燥領域6がウエハWの周縁まで広がった後、この例ではウエハWの回転数を2000rpmに設定したままウエハW上の液滴を遠心力により振り切って乾燥を行う。
【0069】
この第3の実施形態においてもウエハWの中心部Cに洗浄液Rを供給した後、洗浄液Rの供給位置を前記中心部Cから偏心位置へ移動させると共に前記ウエハWの中心部CにウエハWにおけるガス吐出位置の洗浄液吐出位置側界面と洗浄液吐出位置のガス吐出位置側界面との距離が9mm〜15mmである状態で供給して、洗浄液Rの乾燥領域6を発生させ、その後、ウエハWを回転させたまま洗浄液Rの供給位置を、前記乾燥領域6が外に広がる速度よりも遅い速度でウエハWの周縁に向けて移動させるようにしている。このため第1の実施形態と同様に高い洗浄効果を得ることができる。さらに、乾燥領域6が形成され、第2の洗浄ノズル72から洗浄液を供給した後、第1の洗浄ノズル71及びガスノズル5は乾燥領域6の外縁よりも外側領域を移動するので、これらのノズルから垂れた液滴により現像欠陥が発生することが抑えられる。
【0070】
[第4の実施の形態]
この第4の実施の形態の洗浄方法は、第1の実施の形態で用いられた装置と同じ装置を用いて行われ、洗浄液ノズル4及びガスノズル5は一体的に移動する。洗浄液ノズル4及びガスノズル5の動きを示した
図16を用いて説明するが、便宜上各ノズルの移動方向である図中の左右方向をX方向と呼び、洗浄液ノズル4が配置されている側(
図16中右側)、ガスノズル5が配置されている側(
図16中左側)を夫々+X側、−X側とする。
【0071】
先ず、第1の実施形態と同様に現像液を供給した後、洗浄液ノズル4からウエハWの中心部Cに洗浄液Rを吐出し(
図16(a))、洗浄液Rを吐出した状態で洗浄液ノズル4及びガスノズル5を+X方向に移動させ、ガスノズル5をウエハWの中心部Cと対向するように位置させる。そして、このガスノズル5から当該中心部CにN2ガスGを供給して乾燥領域6を形成する(
図16(b))。ガス供給開始から所定の時間経過後、N2ガスGの供給及び洗浄液Rの供給を停止して、乾燥領域6がウエハWを広がる速度よりも早く、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を−X方向に移動させる(
図16(c))。このときのノズル4、5の移動速度は例えば150mm/秒である。
【0072】
そして、洗浄液ノズル4がウエハWの中心部C上を通過し、続いて乾燥領域6における上述した外縁位置に洗浄液Rが供給されるように、洗浄液Rの吐出を再開する(
図16(d))。その後、洗浄液ノズル4から洗浄液Rを吐出した状態で、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を乾燥領域6が外側に広がる速度よりも遅い速度、例えば5mm/秒で−X方向へと移動させ、洗浄液ノズル4の移動に応じて乾燥領域6が外側に向けて広がる(
図16(e))。然る後、洗浄液ノズル4がウエハWの周縁部近傍まで移動したら、洗浄液Rの吐出を停止し、第1の実施形態のステップ4と同様にウエハWの乾燥を行う。
【0073】
この第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様のノズル配置であるため、第1の実施形態と同様の効果を有する。更に、この第4の実施形態においてはN2ガス吐出後、乾燥領域6の外側領域にガスノズル5を配置し、洗浄液ノズル4が洗浄液を吐出しながらウエハW周縁に向かうときにはガスノズル5は乾燥領域6の外側を移動するため、ウエハWにガスノズル5から液滴が落下しても、乾燥領域6内に落下することが抑えられる。従って現像欠陥が発生することがより確実に抑えられる。なお、この第4の実施形態においては乾燥領域6形成後、ノズル4、5が乾燥領域6上を通過するので、移動中に各ノズルに液滴が付着し、その液滴が乾燥領域6に落下するおそれがあるが、このようにノズルが移動する際に乾燥領域6の形成は、遠心力の小さいウエハW中心部に留まっており、乾燥領域6上を移動する各ノズル4、5の移動距離は抑えられるため、第1の実施形態に比べて乾燥領域6への液滴の落下は抑えられる。ただし、第3の実施形態の方が、より確実にこの液滴による現像欠陥を抑えることができるため好ましい。
【0074】
この実施形態において、ノズル移動中の液の落下を抑えるためにノズルの待機領域を
図17(a)(b)のように構成してもよい。この例では、待機領域46は、上側が開放された容器4A内の空間として構成されており、容器4A内にはノズル4の待機中に乾燥ガスを吹き付けて当該ノズル4を乾燥させるための乾燥ノズル47と、待機領域46内に供給された乾燥ガスを排気するための排気管48とが設けられている。このように待機領域46を構成し、1枚のウエハWを洗浄、乾燥後、洗浄液ノズル4が待機領域46で待機している間に、このノズル4を乾燥させることで、次のウエハの処理中に乾燥領域6に洗浄液ノズル4から液滴が落下することを抑えることができる。図中4Bは待機領域46に隣接するように設けられたガスノズル5の待機領域であり、待機領域46と同様に構成され、ガスノズル5の待機中にこのガスノズル5を乾燥させる。他の実施形態においてもこのように待機領域46、4Bを構成してもよい。また、待機領域46、4Bにおいては、乾燥ノズル47を設ける代わりにヒータを設けて、そのヒータの熱により洗浄液ノズル4及びガスノズル5を乾燥させてもよい。
【0075】
[第5の実施形態]
続いて第4の実施形態の変形例である第5の実施形態について説明する。この実施形態で行う洗浄工程は、第1の実施形態の現像装置と略同様に構成されるが、
図18(a)(b)で示すように洗浄ノズル4はX方向軸を回転中心として、X方向と水平に直交するY方向に傾けることができるように構成されている。
【0076】
続いて、第5の実施形態の洗浄方法について、
図19を参照しながら説明する。先ず、第4の実施形態と同様に現像液を供給した後のウエハWの中心部Cに、洗浄液の吐出方向が鉛直下方に向けられた洗浄液ノズル4から洗浄液Rを吐出する。続いて洗浄液Rを吐出した状態で洗浄液ノズル4及びガスノズル5を+X方向に移動させ、ガスノズル5をウエハWの中心部Cと対向するように位置させ、N2ガスGを供給してウエハWの中心部Cに乾燥領域6を形成する(
図19(a))。
【0077】
その後、N2ガスGの供給及び洗浄液Rの供給を停止し、
図18(b)に示すように、洗浄液ノズル4の吐出口40のウエハWへの投影領域49が乾燥領域6内に位置しないように洗浄液ノズル4をY方向に傾け、その後、第4の実施形態と同様に乾燥領域6がウエハWを広がる速度よりも早く、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を−X方向に移動させる(
図19(b))。
【0078】
そして、洗浄液ノズル4がウエハWの中心部C上を通過し、例えば乾燥領域6の外縁よりも若干外側に位置した後、鉛直下方に洗浄液を供給するために洗浄液ノズル4の傾きが変化し、然る後乾燥領域6の外縁位置に洗浄液Rが供給されるように、洗浄液の吐出を再開する(
図19(c))。その後、第4の実施形態と同様に洗浄液ノズル4から洗浄液Rを吐出した状態で、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を乾燥領域6が外側に広がる速度よりも遅い速度、例えば5mm/秒で−X方向へと移動させ、乾燥領域6を外側に向けて広げた後、洗浄液ノズル4がウエハWの周縁部近傍まで移動したら、第1の実施形態のステップ4と同様にウエハWの乾燥を行う。
【0079】
この第5の実施の形態においては、第4の実施の形態と同様の効果を有し、更に乾燥領域6形成後、ガスノズル5を乾燥領域6よりも外側に配置するにあたり、吐出口40の投影領域が乾燥領域6の外側に向かうように洗浄液ノズル4を傾けることで液滴Lが洗浄液ノズル4から乾燥領域6内に落下することを抑えることができる。また、ガスノズル5も乾燥領域6上を移動させるにあたり、洗浄液ノズル4と同様にその傾きを変更して、乾燥領域6内への液滴Lの落下を防いでもよい。
【0080】
[第6の実施の形態]
続いて第4の実施形態の他の変形例である第6の実施形態について説明する。この第6の実施形態で用いる現像装置も第1の実施形態の装置と略同様に構成されているが、洗浄液ノズル4は
図20(a)、(b)に示すように斜めにノズル保持部41に設けられている。ただし、その洗浄液RのウエハWへの供給位置は、他の実施形態と同様に洗浄液ノズル4の移動によってウエハWの直径上を移動できるようになっている。また、
図20(c)に示す、ウエハWにおける洗浄液の吐出位置のガス吐出位置側界面と、ウエハWにおけるガスの吐出位置の洗浄液吐出位置側界面との距離dは、既述の各実施形態と同じ大きさに設定される。
【0081】
このように洗浄液ノズル4を斜めに設けるのは、第4の実施形態と同様の手順で、洗浄処理を行い、乾燥領域6の形成後、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を−X方向に移動させるときに、ウエハWの表面に対する洗浄液ノズル4の投影領域4aが乾燥領域6の外側領域を移動するようにして、
図20(a)に示すように洗浄液ノズル4から液滴Lが落下した場合に、その液滴Lを乾燥領域6の外側に落下させることを目的としている。従って、洗浄液ノズル4の水平軸に対する角度や洗浄液ノズル4とガスノズル5とのY軸方向の距離は、この乾燥領域6の広がる速度や−X方向への各ノズル4、5の移動速度に応じて適宜設計される。
【0082】
第6の実施形態の洗浄工程については、第4の実施形態の洗浄工程と同様に実施される。ガスノズル5からN2ガスGを供給してウエハWの中心部Cに乾燥領域6を形成した後は(
図21(a))、N2ガスGの供給及び洗浄液Rの供給を停止して、乾燥領域6がウエハWを広がる速度よりも早く、洗浄液ノズル4及びガスノズル5を−X方向に移動させ(
図21(b))、その後は第4の実施形態と同様にウエハWにおいて洗浄液ノズル4から供給される洗浄液の供給位置がウエハWの中心部C上を通過し、例えば乾燥領域6よりも若干外側に位置したら洗浄液ノズル4からそのウエハWに向けて洗浄液Rを吐出する(
図21(c))。然る後、洗浄液ノズル4をウエハWの周縁へと移動させる。
【0083】
このように洗浄を行えば、乾燥領域6形成後、洗浄液Rを供給するまでの乾燥領域6上にて各ノズル4、5を−X方向に移動させる間に、洗浄液ノズル4から乾燥領域6内に液滴Lが落下することが抑えられるし、洗浄液吐出再開後ガスノズル5は乾燥領域6の外側を移動するので、ガスノズル5から乾燥領域6内に液滴Lが落下することを抑えることができる。
【0084】
また、これら第2〜第6の実施形態においても、第1の実施形態と同様に洗浄液の供給位置に応じてウエハWの回転速度を制御してもよい。また、各実施形態の現像装置の各部の動作は制御部7から送信される制御信号に基づいて制御され、上述の洗浄工程が夫々実施される。
【0085】
本発明の基板洗浄装置は、液浸露光を行うパターン形成システムにおいて、撥水性の高いレジストを用いた基板であって、現像が行われた後の基板の洗浄に公的に用いることができるが、液浸露光前の基板、あるいは液浸露光後でかつ現像前の基板を洗浄する場合にも好適である。具体的には、基板のレジスト上に撥水性の高い保護膜を形成した当該基板あるいは保護膜を形成せずに撥水性の高いレジストを塗布した基板について、液浸露光前に行う場合が挙げられ、また液浸露光後に保護膜を薬液で除去し、当該薬液を洗浄する場合や保護膜を形成せずに撥水性の高いレジストを塗布した基板について液浸露光後に液滴を除去する場合などが挙げられる。
【0086】
以下に液浸露光を行うパターン形成システムに本発明の洗浄装置を適用した例について
図22、
図23を参照しながら簡単に説明しておく。このシステムは、塗布・現像装置に露光装置を接続したものであり、図中B1はウエハW例えばウエハWが例えば13枚密閉収納されたキャリアC1を搬入出するための載置部120aを備えたキャリアステーション120と、このキャリアステーション120から見て前方の壁面に設けられる開閉部121と、開閉部121を介してキャリア2からウエハWを取り出すための受け渡し手段A1とが設けられている。
【0087】
キャリア載置部B1の奥側には筐体122にて周囲を囲まれる処理部B2が接続されており、この処理部B2には手前側から順に加熱・冷却系のユニットを多段化した棚ユニットU1,U2,U3及び液処理ユニットU4,U5の各ユニット間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3とが交互に配列して設けられている。また主搬送手段A2,A3は、キャリア載置部B1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側に一面部と、後述する例えば右側の液処理ユニットU4,U5側の一面側と、左側の一面側をなす背面部とで構成される区画壁123により囲まれる空間内に置かれている。また図中124,125は各ユニットで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節ユニットである。
【0088】
液処理ユニットU4,U5は、例えば
図23に示すようにレジスト液や現像液などの薬液収納部126の上に、塗布ユニット(COT)27、現像ユニット(DEV)128及び反射処理防止膜形成ユニットBARC等を複数段例えば5段に積層して構成されている。現像ユニット(DEV)128は第1の実施の形態の洗浄装置を兼用している。また既述の棚ユニットU1,U2,U3は、液処理ユニットU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種ユニットを複数段例えば10段に積層した構成とされており、その組み合わせはウエハWを加熱(ベーク)する加熱ユニット、ウエハWを冷却する冷却ユニット等が含まれる。
【0089】
処理部B2における棚ユニットU3の奥側には、インターフェイス部B3を介して露光部B4が接続されている。このインターフェイス部B3は、詳しくは
図22に示すように、処理部B2と露光部B4との間に前後に設けられる第1の搬送室130A、第2の搬送室130Bにて構成されており、夫々に第1の基板搬送部131A及び第2の基板搬送部131Bが設けられている。第1の搬送室130Aには、棚ユニットU6、バッファカセットCO及び本発明の基板洗浄装置140が設けられている。棚ユニットU6には、露光をしたウエハWをPEB処理する加熱ユニット(PEB)及び冷却プレートを有する高精度温調ユニットなどを上下に積層した構成とされる。
【0090】
上記のシステムにおけるウエハWの流れについて簡単に説明する。先ず外部からウエハWの収納されたキャリアC1が載置台120aに載置されると、開閉部121と共にキャリアC1の蓋体が外されて受け渡し手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニットを介して主搬送手段A2へと受け渡され、棚ユニットU1〜U3内の一の棚にて、反射防止膜の形成や冷却ユニットによる基板の温度調整などが行われる。
【0091】
しかる後、主搬送手段A2によりウエハWは塗布ユニット(COT)27内に搬入され、ウエハWの表面にレジスト膜が成膜される。しかる後、ウエハWは主搬送手段A2により外部に搬出され、加熱ユニットに搬入されて所定の温度でベーク処理がなされる。
【0092】
ベーク処理を終えたウエハWは、次いで冷却ユニットにて冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由してインターフェイス部B3へと搬入され、このインターフェイス部B3を介して露光部B4内に搬入される。なお液浸露光用の保護膜をレジスト膜の上に塗布する場合には、前記冷却ユニットにて冷却された後、処理部B2における図示しないユニットにて保護膜用の薬液の塗布が行われる。その後、ウエハWは露光部B4に搬入されて液浸露光が行われるが、液浸露光の前にインターフェイス部B3に設けられた図示しない本発明の洗浄装置にて洗浄するようにしてもよい。
【0093】
しかる後、液浸露光を終えたウエハWは第2の基板搬送部131Bにより露光部B4から取り出され、本発明の基板洗浄装置140により基板の表面の水滴の除去が行われ、その後棚ユニットU6の一段をなす加熱ユニット(PEB)に搬入される。
【0094】
しかる後、ウエハWは基板搬送部131Aによって加熱ユニット138から搬出され、主搬送手段A2に受け渡される。そしてこの主搬送手段A2により現像ユニット128内に搬入される。当該現像ユニット128では、現像液により基板の現像が行われ、更に洗浄が行われる。しかる後、ウエハWは加熱ユニットにて加熱された後、載置台120a上の元のキャリアC1へと戻される。
【0095】
[評価試験]
(実験に用いたウエハ及び装置)
撥水性の高いレジストをウエハ上に塗布し、次いで液浸露光を行い、更に現像装置にて現像を行い、凹部の線幅が150nmであるレジストパターンを形成した。ウエハ全面に前記レジストを形成した後の当該レジスト表面の水の接触角は92度であった。現像装置に組み込まれている洗浄装置としては、洗浄液ノズル4及びガスノズル5が夫々独立して移動制御できる構成を備えている点を除いては第1の実施の形態と同様である。なお、接触角はウエハWの各部によって微妙に変化するので、ここでいう接触角とはウエハW表面の各部の接触角の平均値のことである。
【0096】
(評価試験2)
第1の実施の形態におけるステップ1において、ウエハの中心部への洗浄液の吐出流量を250ml/秒、ウエハの回転数を500rpmとした。またステップ2(
図6(b)及び
図8)において、洗浄液の吐出位置におけるガス吐出位置側界面と、ガスの吐出位置における洗浄液吐出位置側界面との距離dを12.35mmとした。更にステップ2において、洗浄液ノズル4をウエハの周縁に向かって移動し始めた時点のウエハの回転数f1(
図9参照)を3000rpmとし、洗浄液ノズル4の移動速度を6.5mm/秒とした。その他のパラメータは第1の実施の形態に記載した値とした。
このようにしてウエハを洗浄し、その後乾燥させ、現像欠陥を測定したところ、欠陥箇所はウエハの中心で1個、全面においては3個存在しただけであった。
【0097】
(評価試験3)
洗浄液の吐出位置におけるガス吐出位置側界面と、ガスの吐出位置における洗浄液吐出位置側界面との距離dをウエハ毎に変更して設定し、その他の条件は評価試験1と同様にして実験を行い、洗浄処理後の各ウエハWの欠陥数(パーティクルの数)を測定した。
図24はその結果を示したグラフであり前記界面間の距離dが7.35mm、9.85mm、12.35mm、14.85mm、17.35mm、19.85mm、22.35mmのときに欠陥数は夫々810個、430個、25個、422個、891個、1728個、2162個である。距離dが小さすぎると乾燥領域6が形成されなかったり、乾燥が遅れたりなどの不具合が起こり、また距離dが大きすぎると瞬時に広いエリアで乾燥が起こり、欠陥数が多くなった。欠陥数は実用的には500個以下であることが好ましいので、この実験の結果及び装置の組み立てや加工の誤差を考えると、欠陥数を抑えるために有効な前記距離dの範囲は9mm〜15mmであると言える。
【0098】
(評価試験3)
ガスノズル5からN2ガスを吐出して乾燥領域6を形成した後、洗浄液ノズル4を10mm/秒の等速でウエハの周縁に向けて移動した他は評価試験1と同様にして洗浄を行った。欠陥箇所は303であり、洗浄液ノズル4の移動速度が6.5mm/秒である評価試験1に比べて欠陥箇所が多かった。このことからノズルの移動速度が欠陥数に影響することが示された。