特許第5995991号(P5995991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995991
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】圧縮可能導体を有するインターポーザ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/32 20060101AFI20160908BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20160908BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20160908BHJP
   H01R 12/57 20110101ALI20160908BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H01L23/32 D
   H01L25/04 Z
   H01R12/57
   H01R43/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-551700(P2014-551700)
(86)(22)【出願日】2013年1月4日
(65)【公表番号】特表2015-510684(P2015-510684A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】IB2013050082
(87)【国際公開番号】WO2013108144
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】13/351,731
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】シン、プラブジット
(72)【発明者】
【氏名】ロペルゴロ、エマニュエル、フランク
(72)【発明者】
【氏名】フローレンス、ジュニア、ロバート
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 実用新案登録第3094311(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0196616(US,A1)
【文献】 特開2000−311733(JP,A)
【文献】 特開平10−125428(JP,A)
【文献】 特開2005−222924(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0020638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/32
H01L 25/00−25/18
H01R 12/57
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性圧縮可能導体を備えた電気的相互接続部であって、
前記導電性圧縮可能導体は、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を備え、前記第1の導体末端部分と前記第2の導体末端部分とが、前記導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触し、その結果、前記導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該導電性圧縮可能導体の回転を少なくとも部分的に抑制
前記導電性圧縮可能導体は、C型部分を有する部分的にC型の構造体を備え、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分が前記C型部分の異なる端部から延びており、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分は、それぞれ、前記部分的にC型の構造体の前記C型部分の内向き表面に摺動可能な関係で物理的に接触する、
電気的相互接続部。
【請求項2】
前記第1の導体末端部分は少なくとも1つの第1の脚部を備え、前記第2の導体末端部分は少なくとも2つの第2の脚部を備え、前記第1の導体末端部分の前記少なくとも1つの第1の脚部と、前記第2の導体末端部分の前記少なくとも2つの第2の脚部とが交互嵌合する、請求項1に記載の電気的相互接続部。
【請求項3】
前記導電性圧縮可能導体が2つの導電性コンタクトの間に動作可能に配置されると、前記導電性圧縮可能導体は、その中を通る、前記2つの導電性コンタクト間の複数の電流路を含み、前記2つの導電性コンタクト間の前記複数の電流路のうちの少なくとも1つの電流路は、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分のうちの少なくとも1つの中を通る、請求項1又は請求項2に記載の電気的相互接続部。
【請求項4】
ランド・グリッド・アレイ型インターポーザをさらに備え、前記導電性圧縮可能導体は、前記ランド・グリッド・アレイ型インターポーザ内のそれぞれの開口部内に存在する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電気的相互接続部。
【請求項5】
前記ランド・グリッド・アレイ型インターポーザは、前記それぞれの開口部を少なくとも部分的に定める内側壁を備え、前記内側壁は側壁突起を備え、前記側壁突起は、前記導電性圧縮可能導体の前記第1の導体末端部分と前記第2の導体末端部分との間に少なくとも部分的に延びており、前記導電性圧縮可能導体を前記それぞれの開口部内の所定位置に維持することを容易にするようになっている、請求項に記載の電気的相互接続部。
【請求項6】
インターポーザであって、
前記インターポーザ内に配置された複数の導電性圧縮可能導体を備え、前記複数の導電性圧縮可能導体は各々、
第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を含み、前記第1の導体末端部分と前記第2の導体末端部分とが、前記導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触し、その結果、前記導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該導電性圧縮可能導体の回転を少なくとも部分的に抑制
C型部分を有する部分的にC型の構造体を備え、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分が前記C型部分の異なる端部から延びており、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分は、それぞれ、前記部分的にC型の構造体の前記C型部分の内向き表面に摺動可能な関係で物理的に接触する、
インターポーザ。
【請求項7】
前記第1の導体末端部分は少なくとも1つの第1の脚部を備え、前記第2の導体末端部分は少なくとも2つの第2の脚部を備え、前記第1の導体末端部分の前記少なくとも1つの第1の脚部と、前記第2の導体末端部分の前記少なくとも2つの第2の脚部とが交互嵌合する、請求項に記載のインターポーザ。
【請求項8】
前記導電性圧縮可能導体が2つの導電性コンタクトの間に動作可能に配置されると、前記導電性圧縮可能導体の1つは、その中を通る、前記2つの導電性コンタクト間の複数の電流路を含み、前記2つの導電性コンタクト間の前記複数の電流路のうちの少なくとも1つの電流路は、前記導電性圧縮可能導体の前記第1の導体末端部分又は前記第2の導体末端部分のうちの少なくとも1つの中を通る、請求項6又は請求項に記載のインターポーザ。
【請求項9】
前記導電性圧縮可能導体の1つは、前記インターポーザ内の開口部の中に存在し、前記インターポーザは、前記開口部を少なくとも部分的に定める内側壁を備え、前記内側壁は側壁突起を備え、前記側壁突起は、前記導電性圧縮可能導体の前記第1の導体末端部分と前記第2の導体末端部分との間に少なくとも部分的に延びており、前記導電性圧縮可能導体を前記それぞれの開口部内の所定位置に維持することを容易にするようになっている、請求項から請求項までのいずれか1項に記載のインターポーザ。
【請求項10】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載のインターポーザと、
パッケージ基板を備えた第1のパッケージ構造体であって、前記パッケージ基板の第1の表面上に取付けられた1つ又は複数の電子機器と、前記第1の表面の反対側の前記パッケージ基板の第2の表面上に形成されたピッチP1の第1のコンタクトアレイとを有する、第1のパッケージ構造体と、
その第1の表面上に配置されたピッチP1の第2のコンタクトアレイを有する配線基板を備えた、第2のパッケージ構造体と、
を備えた電子装置であって、
前記インターポーザは、前記第1のパッケージ構造体と前記第2のパッケージ構造体との間に配置されたランド・グリッド・アレイ型インターポーザを備えて、前記第1のコンタクトアレイと前記第2のコンタクトアレイとの間に前記複数の導電性圧縮可能導体を介した電気的相互接続部をもたらす、
電子装置。
【請求項11】
インターポーザを準備することと、
導電性圧縮可能導体を準備することであって、前記導電性圧縮可能導体は、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を備え、前記第1の導体末端部分と前記第2の導体末端部分とが、前記導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触して、前記導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該導電性圧縮可能導体の回転を少なくとも部分的に抑制することを容易にし、前記導電性圧縮可能導体は、C型部分を有する部分的にC型の構造体を備え、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分は、前記C型部分の異なる端部から延びており、前記第1の導体末端部分及び前記第2の導体末端部分は、それぞれ、前記部分的にC型の構造体の前記C型部分の内向き表面に摺動可能な関係で物理的に接触する、、導電性圧縮可能導体を準備することと、
前記導電性圧縮可能導体を前記インターポーザ内に配置することと、
を含み、
前記導電性圧縮可能導体は、非圧縮状態において、前記インターポーザの対向する主表面である前記インターポーザの第1の表面及び第2の表面を越えて延びる、
電気的相互接続部を作成する方法。
【請求項12】
前記第1の導体末端部分は少なくとも1つの第1の脚部を備え、前記第2の導体末端部分は少なくとも2つの第2の脚部を備え、前記第1の導体末端部分の前記少なくとも1つの第1の脚部と、前記第2の導体末端部分の前記少なくとも2つの第2の脚部とが交互嵌合する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的相互接続構造体に関する。より具体的には、本発明は、導電性圧縮可能導体を備えた電気的相互接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
ランド・グリッド・アレイ(LGA)型インターポーザは、例えば、プリント配線基板(PWB)と、電気又は電子機器の種類の中でも特にマルチチップ・モジュール(MCM)などのチップ・モジュールとの間の相互接続部のアレイを提供する。LGAインターポーザは、可逆的な、例えばボール・グリッド・アレイ又はカラム・グリッド・アレイの場合のようなハンダ付けを必要としない方式で、接続部を形成することを可能にする。ボール・グリッド・アレイは、生じる横方向の熱膨張係数駆動応力がボール・グリッド・アレイの強度を超えることがあるので、大面積においては多少信頼度が低いと思われる。カラム・グリッド・アレイは応力にかかわらずに結合状態を保つが、それでもハンダ方式であるので現場交換可能ではなく、現場交換可能性は、LGAが典型的に使用されるハイエンド・コンピュータの保守及びアップグレードに掛かる顧客費用を潜在的に節約することができることになるので重要であり得る。
【0003】
種々の型式のLGAインターポーザ構造体が開発されているが、一般には、例えば、バネ構造体、金属−エラストマー複合体、詰めたワイヤ(wadded wire)などによって形成された電気コンタクトのアレイを有する、例えば、剛性、半剛性、又は可撓性の基板構造体を含む。最新のLGA技術は、高性能CPUモジュール設計用に望ましいI/O相互接続密度/数及び電気的/機械的特性を有するMCM−ボード相互接続部を可能にする。さらに、LGAは、MCMチップ・モジュールを配線又は回路基板から容易に取り外すことを可能にする電気的及び機械的相互接続部を提供し、これは、製造中に繰返しの再加工を必要とすることがある又は現場でのアップグレードが可能であるように設計されるCPUパッケージなどのハイエンド・モジュールにとって有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ランド・グリッド・アレイ(LGA)型インターポーザ内で使用するための、電気的相互接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本明細書で提供されるのは、導電性圧縮可能導体を含む電気的相互接続部である。導電性圧縮可能導体は第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を含む。第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分は、導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触し、導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該導電性圧縮可能導体の回転の抑制を少なくとも部分的に容易にする。
【0006】
別の態様において、インターポーザ内に配置された複数の導電性圧縮可能導体を含むインターポーザが提供される。複数の導電性圧縮可能導体のうちの少なくとも1つの導電性圧縮可能導体は、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を備え、ここで第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分は、少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触し、少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の回転の抑制を少なくとも部分的に容易にする。
【0007】
さらに別の態様において、上記の態様のインターポーザを含む電気装置が提供される。これは、パッケージ基板の第1の表面上に取付けられた1つ又は複数の電子機器と、パッケージ基板の第1の表面の反対側の第2の表面上に形成されたピッチP1の第1のコンタクトアレイとを有するパッケージ基板を備えた、第1のパッケージ構造体も含む。さらに、その第1の表面上に配置されたピッチP1の第2のコンタクトアレイを有する配線基板を備えた第2のパッケージ構造体が含まれる。インターポーザは、第1のパッケージ構造体と第2のパッケージ構造体との間に配置されたランド・グリッド・アレイ型インターポーザを備えて、第1のコンタクトアレイと第2のコンタクトアレイとの間に複数の導電性圧縮可能導体を介した電気的相互接続部をもたらす。
【0008】
さらに別の態様において、電気的相互接続部を作成する方法が提供され、この方法は、インターポーザを準備することと、導電性圧縮可能導体を準備することと、導電性圧縮可能導体をインターポーザ内に配置することとを含み、ここで、導電性圧縮可能導体は、非圧縮状態において、インターポーザの対向する主表面であるインターポーザの第1の表面及び第2の表面を越えて延びている。導電性圧縮可能導体は、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を含み、ここで、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分は、少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触し、少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該少なくとも1つの導電性圧縮可能導体の回転の抑制を容易にする。
【0009】
付加的な特徴及び利点が、本発明の技術を通じて実現される。本発明の他の実施形態及び態様は、本明細書において詳細に説明され、特許請求される本発明の一部分と見なされる。
【0010】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら例示のみを目的として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基板と配線基板との間に配置されてこれらを電気接続するように描かれた従来技術のインターポーザ構造体の一実施形態の部分断面立面図を示す。
図2】基板と配線基板の間に配置されてこれらを電気接続するように描かれた従来技術のインターポーザ構造体の別の実施形態の部分断面立面図を示す。
図3】本発明の1つ又は複数の態様による、電気的相互接続部の一実施形態を含む電子装置の部分的分解図である。
図4】本発明の1つ又は複数の態様による、図3の電気的相互接続部の拡大図である。
図5】本発明の1つ又は複数の態様による、図4の線3B−3Bに沿って描かれた、図3及び図4の電気的相互接続部のさらに拡大された図である。
図6】本発明の1つ又は複数の態様による、図3図4及び図5の電気的相互接続部の1つの導電性圧縮可能導体を非圧縮状態で示した図である。
図7】本発明の1つ又は複数の態様による、図4図6の電気的相互接続部を用いた図3の組立てられた電子装置の平面図である、
図8】本発明の1つ又は複数の態様による、図7の組立てられた電子装置の線4B−4Bに沿って描かれた断面立面図である。
図9】本発明の1つ又は複数の態様による、図8の組立てられた電子装置の線4Cの内側の部分拡大図であり、圧縮状態(又は荷重状態)にあってモジュール基板と配線基板との間に電気接続を形成した導電性圧縮可能導体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面(本発明の理解を容易にするために一定の尺度では描かれていない)を参照するが、図中、同じ参照番号が異なる図面を通して同じ又は類似の構成要素を示すために用いられる。
【0013】
広く市販されている1つのLGAには、銀粒子で充填されたシロキサン・ゴムを各々が含むボタンコンタクトが使用されている。この構造は、導電性を有するという条件でゴム状弾性を有するコンタクトを提供するように意図されたものである。シロキサンは、それ自体ではこの種の用途に非常に望ましい性質を有するが、低弾性率及び高弾性の両方を組み入れることで、粒子充填シロキサン・ゴム系は、導電性のために必要とされる荷重の下ではこれらの望ましい性質の相当な部分を失うことになる。弾性率は高まるとはいえ、全体としては低いままであり、良好な電気的信頼度を保証するためには1コンタクト当たり約30−80グラムしか必要としない。しかし、弾性の損失は、一定の荷重下ではクリープ変形をもたらし、一定の歪みの下では応力緩和をもたらすことになる。これらの傾向により、導電性エラストマーLGAは、長期間にわたって並外れた安定性を必要とするハイエンド製品にとっては信頼度が低いものとなる。実際、最近のハイエンド・サーバのCPUは、個々の信号コンタクトに対する全システムの依存性のゆえに、コンタクト(contract)当たりの基準でppbレベルのLGA故障率を要求する。
【0014】
この(充填型導電性エラストマーLGAにより実証された)クリープ変形及び応力緩和の程度の不都合さゆえに、業界では、ランダム・コイル・バネから製作されるLGAアレイ、例えば、米国ワシントン州シアトル所在のSynapse Companyによって製造されるCinch Connectorと呼ばれる製品の使用が好まれている。これらのバネは、導電性エラストマー型コネクタより遥かに大きいバネ定数を有するが、アレイ全域で高信頼度の電気接続を保証するためには、典型的にはコンタクト当たりより大きい圧力を必要とする。
【0015】
モジュールとプリント配線基板(PWB)との間で剛直な直接ハンダ付着の代りにLGAを使用することに対する、強い技術的動機付け要因が存在する。セラミック・モジュールと有機PWBとの間の熱膨張係数(TCE)の不一致によって生じる横方向の応力は大きいので、直接的なボール・グリッド・アレイ型接続は、多くの場合、故障しがちである。従って、何らかの組み込まれた横方向のコンプライアンスを有するシステムが有利である。前述のように、この問題に対処するための1つの直接付着法はいわゆる「カラム・グリッド・アレイ」すなわちCGAである。CGAは、加えられた横方向応力に適応するように故障せずに変形する、恒久的なハンダ型相互接続である。
【0016】
直接付着法に代えてLGAインターポーザを使用することに対する、強い経済的動機付け要因も存在する。これは、直接付着法では、チップセットの修理及びアップグレードを現場で行うことができないためである。圧力取付け型LGAは現場で置換えることができ、従って、分解、発送及び再加工の停止時間における顧客のかなりの経費を節約する。
【0017】
従って、圧力式LGAインターポーザ法には技術的利点及び経済的利点の両方が存在する。図1及び図2は、2つの従来技術の加圧型LGAインターポーザの構成を示す。
【0018】
図1では、従来技術のバネ型インターポーザ構造体の一実施形態が、基板100と配線基板110との間に配置されてそれらを電気接続するように示されている。例として、基板100は、基板の第1の表面(図示せず)に取付けられた1つ又は複数の集積回路チップ(図示せず)と、基板の第1の表面の反対側の第2の表面102上に形成された第1のコンタクトアレイ101とを有するモジュール基板を含むことができる。配線基板110は、その第1の表面112上に形成された第2のコンタクトアレイ111を有する回路基板を含むことができる。一例として、第1のコンタクトアレイ101及び第2のコンタクトアレイ111は、それぞれピッチP1のものとすることができる。図1の電子アセンブリで示されるように、インターポーザ構造体120は、複数のバネ型コネクタ125を備える。図示された実施形態において、バネ型コネクタ125は、それぞれ基板及び配線基板の対向するコンタクト101、111を電気的に相互接続する(荷重下にあるときに)ように設計されたC型導体である。図1に示すように第1のコンタクトアレイ101と第2のコンタクトアレイ111の位置合わせが僅かにずれたとすると、1つ又は複数のコネクタ125が、例えば第1のコンタクトアレイ又は第2のコンタクトアレイのうちの1つ又は複数のコンタクトに近接しているせいで、短絡が起る可能性がある。図1においては、第1及び第2のコンタクトアレイの位置合せがずれているので、中央に示されたバネ型コネクタ125は、配線基板110上に配置された第2のコンタクトアレイ111のうちの隣接するコンタクトと近接する(115)湾曲部を有することになり、中央のコネクタ125を介して2つの隣接するコンタクト111を互いに短絡させる可能性がある。図示していないが、同様の位置合せのずれにより、付加的に又は代替的に、モジュール基板100上に配置された1つ又は複数の隣接するコンタクト101が互いに短絡する可能性がある。
【0019】
図2は、ここでもまたモジュール基板100と配線基板110との間に配置されてそれらを電気接続するように示された、従来技術のインターポーザ構造体の代替的な実施形態を示す。この実施形態において、インターポーザ構造体130は、各々がインターポーザ材料132内のそれぞれの開口部131内に配置された複数のバネ型コネクタ135を含み、そのうちの1つが図示されている。
【0020】
図1の従来技術では、バネ型コネクタはカンチレバー型バネに似ており、圧縮されると回転し易いことに留意されたい。このことは(順次)、インターポーザ構造体の上方及び下方にあるコンタクトに加わる垂直力を低下させることにつながる(ことがある)。さらに、図1及び図2に示すコネクタは、インターポーザ材料内に引っかかることがあり、曲がることがあり、及び/又は、該コネクタを収容するインターポーザ構造体内のそれぞれの開口部を通って落下することがあることに留意されたい。また、電気コネクタに関する図1及び図2に示す従来技術の構成は各々、それぞれの位置合せされた上部コンタクトと下部コンタクトとの間を信号が流れるための電気経路を1つしか有しておらず、そのことにより、どの2つのコンタクト間の接続抵抗もいくぶん高くなる。
【0021】
概略的に言えば、本明細書で開示されるのは、例えばランド・グリッド・アレイ型インターポーザ構造体などの、新規な電気的相互接続部である。この電気的相互接続部は、一例においてC型部分から延びた第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分を含む導電性圧縮可能導体を備える。第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分は、導電性圧縮可能導体の圧縮により互いに摺動可能な関係で物理的に接触して、導電性圧縮可能導体の圧縮に伴う該導電性圧縮可能導体の回転の抑制を少なくとも部分的に容易にする。一実施形態において、第1の導体末端部分は少なくとも1つの第1の脚部を含み、第2の導体末端部分は少なくとも2つの第2の脚部を含み、少なくとも1つの第1の脚部と少なくとも2つの第2の脚部とが交互嵌合する。さらに、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分は、それぞれ、導電性圧縮可能導体の内向き表面、例えば、導電性圧縮可能導体のC型部分の内向き表面に、摺動可能な関係で物理的に接触する。
【0022】
導電性圧縮可能導体は、2つの導電性コンタクトの間に圧縮(又は荷重)状態で動作可能に配置されると、その中を通る複数の電流路を含むことが有利である。これらの電流路のうちの少なくとも1つは、第1の導体末端部分又は第2の導体末端部分のうちの少なくとも1つの中を通る。一実施形態において、第1の導体末端部分及び第2の導体末端部分の両方が、導電性圧縮可能導体を通る別々の電流路のそれぞれの部分を形成する。1つの特徴付けとして、導電性圧縮可能導体は部分的にC型の構造であり、導体の第1及び第2の導体末端部分によって内部「8」の字形が定められる。より具体的には、以下でさらに説明するように、本明細書で開示される導電性圧縮可能導体は、導体(又はボタン)の圧縮に伴う該導体の回転を抑制することにより、接触力の損失を防ぐ;インターポーザ内部での導体の良好な保持を提供することにより、インターポーザから導体が抜け落ちる確率を小さくする;電流が流れる3つの冗長経路を提供することにより、接触抵抗を減らす;及び、小フットプリントの導体を提供することにより導体間のクロストークを低くして、例えばモジュール基板と配線基板との間の高性能の接続を可能にする、ように設計されることが有利である。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態による、モジュール基板200と配線基板210との間に配置された電気的相互接続部を含む電子装置を示す。この実施形態において、電気的相互接続部は、ランド・グリッド・アレイ型インターポーザ構造体220であり、これはインターポーザ構造体の内部に配列された複数の導電性圧縮可能導体225を含む。モジュール基板200は、図示した実施形態において、その第1の表面201上の1つ又は複数の集積回路チップ205と、モジュール基板の第2の表面202上に形成されたピッチP1の第1のコンタクトアレイ(図示せず)とを支持しており、第1の表面201及び第2の表面202は、モジュール基板200の反対向きの表面である。図示したように、配線基板210は、その第1の表面212上に配置された、例えばピッチP1の、第2のコンタクトアレイ211を含む。
【0024】
ランド・グリッド・アレイ型インターポーザ構造体220、特にその内部に配列された複数の導電性圧縮可能導体225は、このインターポーザ構造体が基板モジュール200と配線基板210との間に動作可能に配置されると、第1のコンタクトアレイと第2のコンタクトアレイとの間の電気的相互接続部をもたらす。圧縮荷重は、任意の従来の手段、例えば、モジュール基板と配線基板とを圧着させることにより複数の導電性圧縮可能導体225を圧縮する1つ又は複数の調節可能な固定機構(図示せず)により、圧縮可能導体に加えることができる。この導体の圧縮(又は荷重)により、導体とそれぞれ第1及び第2のコンタクトとの間に垂直力が生成され、それらの間の良好な電気接続が確保される。
【0025】
図4及び図5は、図3のインターポーザ構造体220の一実施形態をより詳細に示す。これらの図をまとめて参照すると、インターポーザ構造体220は、図示した実施形態において、上部筐体部分310及び下部筐体部分311を含み、これらがインターポーザ構造体の2つの嵌合する半部分を形成する。インターポーザ構造体を2つ又はそれ以上の嵌合する部分に分割することにより、複数の導電性圧縮可能導体225をインターポーザ構造体220のそれぞれの開口部315内に組み付けることが容易になる。
【0026】
図5に示すように、それぞれの開口部315の各々は、それぞれの導電性圧縮可能導体の異なる部分の間に少なくとも部分的に延びる側壁突起317を有する、内側壁316を備える。一実施形態において、それぞれの部分は、圧縮可能導体の第1の導体末端部分330及び第2の導体末端部分340である。側壁突起317は、この実施形態においては、各々がインターポーザ構造体の上部及び下部筐体部分の一方の中に形成されて嵌合されると側壁突起317を定める、2つの突起半分によって形成されることに留意されたい。突起は、圧縮可能導体の異なる部分の間に延びて、圧縮可能導体をそれぞれの開口部内の所定位置に維持することを容易にし、かつ、例えば理想からずれた荷重によって圧縮されたときに圧縮可能導体の回転を抑制するようなサイズにされる。さらに、図4及び図5に関して、上部筐体部分310及び下部筐体部分311内に並行に延びるチャネル318が設けられており、一実施形態において、それぞれの導電性圧縮可能導体225が例えばモジュール基板と配線基板との間に動作可能に配置されたときに、その圧縮に容易に順応するようになっていることに留意されたい。
【0027】
圧縮可能導体225は、任意の圧縮可能導電性材料で形成することができる。例えば、導体は、高降伏強度及び良好な導電率を有するベリリウム銅を含むことができる。インターポーザ材料(インターポーザ層が形成される)は、例えば、熱硬化性プラスチックを含むことができ、これは、図5に示すように圧縮可能導体の高さより小さい全高を有する。単なる具体例として、インターポーザ構造体は、およそ10cm×10cmの面積を有するインターポーザ構造体の中に圧縮可能導体の100×100アレイを含むことができ、圧縮可能導体は、例えば、高さ1mm未満(例えば、0.5−0.75mm)及び幅0.5mm又はそれ以下とすることができる。これにより、本明細書で説明するように従来のバネ型コネクタよりも優れた多くの利点を有する小型の圧縮可能導体(又はコンタクトボタン)設計がもたらされる。
【0028】
一実施形態において、本明細書で開示する圧縮可能導体225は、連続した細長い導体、例えば、本明細書で説明される例えばランド・グリッド・アレイ型インターポーザ構造体のための電気的相互接続機能を助長するのに必要な圧縮率を与える所望の降伏強度を有する金属導体の、打抜き加工及び曲げ加工によって形成することができる。圧縮可能導体(又はコンタクトボタン)の一実施形態を一例として図6に詳細に示し、ここで圧縮可能導体225は、C型部分320と、第1の導体末端部分330と、第2の導体末端部分340とを含むように示されている。この実施形態において図示されるように、第1及び第2の導体末端部分330、340は、それぞれ、C型部分320の異なる端部から連続的に延びており、圧縮可能導体の荷重又は荷重除去に適応するように互いに摺動可能に接触する。図に示すように、第1の導体末端部分330は少なくとも1つの第1の脚部332を含み、第2の導体末端部分340は少なくとも2つの第2の脚部342を含み、これら第2の脚部342は、2本の第2の脚部342の間に延びるように示された1本の第1の脚部332と交互嵌合する。さらに、第1の導体末端部分330及び第2の導体末端部分340、より具体的にはそれらの少なくとも1つの第1の脚部332及び少なくとも2つの第2の脚部342は、導電性圧縮可能導体225のC型部分320の内向き表面321と摺動可能に物理的に接触することに留意されたい。第1及び第2の末端部分とC型部分の内向き表面とのこの摺動可能な接触は、荷重及び荷重除去の際に圧縮可能導体を安定化することを助長し、重要なことに、図7図9の組立てられた電子装置に関連して以下でさらに説明するように、圧縮可能導体を通る複数の電流路をもたらす。また、少なくとも1つの第1の脚部332及び少なくとも2つの第2の脚部342の内側に湾曲した端部にも留意されたい。これらの湾曲した(又はより小さい半径の)端部は、脚部がC型部分320の内向き表面321に食い込むことを防止する。
【0029】
前述のように、図7は、インターポーザ構造体220がモジュール基板200と配線基板210との間に配置された、図3図6に示す実施形態の組立てられた電子装置の平面図を示す。図示した実施形態においては、1つ又は複数の集積回路チップ205がモジュール基板200上に配置されている。図8及び図9の断面立面図において、導電性圧縮可能導体225は、荷重下で、モジュール基板200及び配線基板210の互いに面した表面上に対向するように配置された第1及び第2のコンタクトアレイ203、211の間に電気接続を形成するように示されている。この点に関して、圧縮可能導体225は、導体が圧縮されるにつれてコンタクト203、211に摺動しながら接触し、又はこするように接触し、このことにより圧縮可能導体とコンタクトとの間の良好な電気接続が確保されることに留意されたい。
【0030】
第1及び第2のコンタクトアレイのうちの2つの導電性コンタクトの間に圧縮下で動作可能に配置されると、圧縮可能導体を通る複数の電流路が存在することが有利であることに留意されたい。これらの電流路は(図示した構成において)、圧縮可能導体のC型部分を通る第1の電流路400と、圧縮可能導体の第1の導体末端部分330を少なくとも部分的に通って延びる第2の電流路401と、圧縮可能導体の第2の導体末端部分340を少なくとも部分的に通って延びる第3の電流路402とを含む。動作時に、圧縮可能導体を通る複数の電流路は、導体の抵抗を有利に減らすことに留意されたい。
【0031】
当業者であれば、本明細書に与えられた説明から、実施形態の圧縮可能導体(又はコンタクトボタン)は、不良品であることが見いだされた場合にはインターポーザ構造体内で容易に選択的に置き換えることができることに気付くであろう。さらに、開示された圧縮可能導体は、インターポーザ材料内に引っかかり易い、又は取扱いに起因して曲がり易いいかなる構造部も有しない。さらに、本明細書で開示された圧縮可能導体は、該圧縮可能導体を通る複数の電気経路を有するので、電気接続抵抗は、他のコネクタ(例えば前述の図1及び図2の従来技術のバネ型コネクタ)より小さく、例えば半分又はそれ以下である。さらに、本明細書で説明した本発明の実施形態の圧縮可能導体では、前記のそれぞれの開口部内の側壁突起に関連して、それぞれの圧縮可能導体に対する荷重が不十分なことに起因するコンタクトの回転が排除される。コンタクトの回転は、圧縮可能導体とそれぞれのコンタクトとの間の垂直力を減らすことになり、その結果、筐体内での導体の保持が不十分になるので望ましくない。本明細書で説明した実施形態の圧縮可能導体はまた、小さいフットプリントを提供することが有利であり、これにより隣接するコンタクト間のクロストークが減ることにより、より高速の性能が得られる。
【0032】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が別段に明示しない限り、複数形も同様に含むことを意図したものである。さらに、用語「備える・含む(cmprise)」(並びに「comprises」及び「comprising」など、compriseのあらゆる活用形)、「有する(have)」(並びに「has」及び「having」など、haveのあらゆる活用形)、「含む(include)」(並びに「includes」及び「including」など、includeのあらゆる活用形)、並びに、「含有する(contain)」(並びに「contains」及び「containning」など、containのあらゆる活用形)はオープンエンド型式の連結動詞であることを理解されたい。その結果、1つ又は複数のステップ又は要素を「備える」、「有する」、「含む」、又は「含有する」方法又は装置は、それらの1つ又は複数のステップ又は要素を持つが、それらの1つ又は複数のステップ又は要素だけを持つことに限定されない。同様に、1つ又は複数の特徴を「備える」、「有する」、「含む」、又は「含有する」方法のステップ又は装置の要素は、それらの1つ又は複数の特徴を持つが、それらの1つ又は複数の特徴だけを持つことに限定されない。さらに、特定の方式で構成された装置又は構造体は、少なくともその方式で構成されるが、記載された方式ではない方式で構成されてもよい。
【0033】
添付の特許請求の範囲における全ての「手段又はステップと機能との組合せ(ミーンズ又はステップ・プラス・ファンクション)」要素の対応する構造、材料、動作、及び均等物は、存在する場合には、明確に特許請求されている他の特許請求された要素との組み合せでその機能を実行するためのあらゆる構造、材料、又は動作を含むことを意図したものである。本発明の説明は、例証及び説明のために提示されたものであり、網羅的であることを意図するものでもなく、本発明を開示された形態に限定することを意図したものでもない。当業者には、本発明の範囲から逸脱しない多くの修正及び変形が明白となるであろう。
【符号の説明】
【0034】
100、200:モジュール基板
101:第1のコンタクトアレイ
102、202:モジュール基板の第2の表面
110、210:配線基板
111、211:第2のコンタクトアレイ
112、212:配線基板の第1の表面
120、130、220:インターポーザ構造体
125、135:バネ型コネクタ
131、315:開口部
132:インターポーザ材料
201:モジュール基板の第1の表面
203:第1のコンタクトアレイ
205:集積回路チップ
225:導電性圧縮可能導体
310:上部筐体部分
311:下部筐体部分
316:内側壁
317:側壁突起
318:チャネル
320:C型部分
321:内向き表面
330:第1の導体末端部分
332:第1の脚部
340:第2の導体末端部分
342:第2の脚部
400:第1の電流路
401:第2の電流路
403:第3の電流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9