特許第6003085号(P6003085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003085
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20160923BHJP
   H01F 1/055 20060101ALI20160923BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20160923BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20160923BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20160923BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20160923BHJP
   B22F 3/06 20060101ALI20160923BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20160923BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20160923BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20160923BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F1/04 A
   H01F1/08 A
   C22C33/02 K
   B22F3/00 F
   B22F3/02 P
   B22F3/06
   B22F3/10 A
   B22F3/10 D
   B22F3/10 J
   B22F7/00 Z
   C22C33/02 G
   !C22C38/00 303A
   !C22C38/00 303D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-40137(P2012-40137)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-175651(P2013-175651A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紀行
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−076755(JP,A)
【文献】 特公昭47−034193(JP,B1)
【文献】 特開2007−235017(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057742(WO,A1)
【文献】 特開2008−283141(JP,A)
【文献】 特開2002−134342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
B22F 3/00
B22F 3/02
B22F 3/06
B22F 3/10
B22F 7/00
C22C 33/02
H01F 1/055
H01F 1/08
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽希土類元素をRとして含有するR-Fe-N系化合物の素材粉末またはFe-N系化合物の素材粉末からなる硬磁性材料を用いる磁石の製造方法であって、
マイクロ波を成形体の表面に対して照射した場合に該成形体の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱による接合進行速度が速くなるように、前記硬磁性材料の密度を該成形体の表面側と内部側とにおいて異なるように配置して前記成形体を成形する成形工程と、
前記成形体の表面に対してマイクロ波を照射してマイクロ波加熱を生じさせ、前記硬磁性材料に生成された酸化膜により前記硬磁性材料同士を接合するマイクロ波加熱工程と、
を備え
前記成形工程は、
大きさの異なる複数種の前記硬磁性材料を用いて、
遠心分離器を用いて、前記成形体の内部側に大きさの小さな前記硬磁性材料を配置し、前記成形体の表面側に大きさの大きな前記硬磁性材料を配置して、
前記成形体の内部側における前記硬磁性材料の密度が前記成形体の表面側の該密度よりも高くなるように前記硬磁性材料を配置して前記成形体を成形する、磁石の製造方法。
【請求項2】
軽希土類元素をRとして含有するR-Fe-N系化合物の素材粉末またはFe-N系化合物の素材粉末からなる硬磁性材料を用いる磁石の製造方法であって、
マイクロ波を成形体の表面に対して照射した場合に該成形体の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱による接合進行速度が速くなるように、前記硬磁性材料の密度を該成形体の表面側と内部側とにおいて異なるように配置して前記成形体を成形する成形工程と、
前記成形体の表面に対してマイクロ波を照射してマイクロ波加熱を生じさせ、前記硬磁性材料に生成された酸化膜により前記硬磁性材料同士を接合するマイクロ波加熱工程と、
を備え
前記成形工程は、
前記硬磁性材料と前記硬磁性材料に対して比誘電率の異なる絶縁材料とを用い、
遠心分離器を用い、前記硬磁性材料と前記絶縁材料のうち比誘電率の高く且つ質量が小さな方を前記成形体の内部側に配置し、
比誘電率の低く且つ質量が大きな方を前記成形体の表面側に配置して前記成形体を成形する、磁石の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁材料は、軟磁性材料である、請求項2に記載の磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、高性能な磁石としてネオジム磁石(Nd-Fe-B系磁石)が用いられてきた。しかし、ネオジム磁石の高性能化には、高価で希少なジスプロシウム(Dy)を用いるため、近年、ジスプロシウムを用いない磁石の開発が進められている。ジスプロシウムを用いない磁石として、Sm-Fe-N系磁石が知られている。Sm-Fe-N系化合物は、分解温度が低いため、高温焼結を適用することは困難である。分解温度以上で焼結すると、化合物が分解して、磁石としての性能を発揮できないおそれがある。そのため、ボンドにより接合している。しかし、ボンドを用いることは、素材粉末の密度を低下させることになり、残留磁束密度を低下させる原因となる。
【0003】
また、特開2009−76755号公報(特許文献1)には、希土類元素−遷移金属系の合金粉末に対して、真空又は不活性ガス中において、マイクロ波を照射することにより、合金粉末を焼結することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−76755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Sm-Fe-N系化合物粉末による成形体に対して、マイクロ波を照射することにより、当該磁石を製造することは容易ではない。マイクロ波を成形体に照射すると、照射された成形体の表面側にてマイクロ波加熱が生じて当該表面側の粉末同士が接合しようとする。しかし、成形体の表面側にて粉末同士が接合してしまうと、成形体の内部側へマイクロ波が照射されず内部側の粉末同士が接合されない状態になる。これでは、磁石の抗折強度が低い。また、成形体の表面側に対してマイクロ波の照射を継続し続けると、成形体の表面側が高温になり、分解温度を超えて、磁石性能が低下する原因となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ジスプロシウムを用いない硬磁性材料を用い且つマイクロ波を照射することにより加熱する場合に、高い抗折強度を得ることができる磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)本発明に係る第一の磁石の製造方法は、軽希土類元素をRとして含有するR-Fe-N系化合物の素材粉末またはFe-N系化合物の素材粉末からなる硬磁性材料を用いる磁石の製造方法であって、マイクロ波を成形体の表面に対して照射した場合に該成形体の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱による接合進行速度が速くなるように、前記硬磁性材料の密度を該成形体の表面側と内部側とにおいて異なるように配置して前記成形体を成形する成形工程と、前記成形体の表面に対してマイクロ波を照射してマイクロ波加熱を生じさせ、前記硬磁性材料に生成された酸化膜により前記硬磁性材料同士を接合するマイクロ波加熱工程とを備える。
【0008】
さらに、前記成形工程は、大きさの異なる複数種の前記硬磁性材料を用いて、遠心分離器を用いて、前記成形体の内部側に大きさの小さな前記硬磁性材料を配置し、前記成形体の表面側に大きさの大きな前記硬磁性材料を配置して、前記成形体の内部側における前記硬磁性材料の密度が前記成形体の表面側の該密度よりも高くなるように前記硬磁性材料を配置して前記成形体を成形する。
【0009】
請求項2)また、本発明に係る第二の磁石の製造方法は、軽希土類元素をRとして含有するR-Fe-N系化合物の素材粉末またはFe-N系化合物の素材粉末からなる硬磁性材料を用いる磁石の製造方法であって、マイクロ波を成形体の表面に対して照射した場合に該成形体の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱による接合進行速度が速くなるように、前記硬磁性材料の密度を該成形体の表面側と内部側とにおいて異なるように配置して前記成形体を成形する成形工程と、前記成形体の表面に対してマイクロ波を照射してマイクロ波加熱を生じさせ、前記硬磁性材料に生成された酸化膜により前記硬磁性材料同士を接合するマイクロ波加熱工程とを備える。
前記成形工程は、前記硬磁性材料と前記硬磁性材料に対して比誘電率の異なる絶縁材料とを用い、遠心分離器を用い、前記硬磁性材料と前記絶縁材料のうち比誘電率が高く且つ質量が小さな方を前記成形体の内部側に配置し、比誘電率が低く且つ質量が大きな方を前記成形体の表面側に配置して、前記硬磁性材料と前記絶縁材料のうち比誘電率の高い方を前記成形体の内部側に配置し、比誘電率の低い方を前記成形体の表面側に配置して前記成形体を成形する。
請求項3)また、前記絶縁材料は、軟磁性材料とするとよい。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)硬磁性材料の密度を成形体の内部側と表面側とにおいて変化させることで、成形体の内部側からマイクロ波加熱による接合進行速度を変化させることができる。そして、内部側の当該接合進行速度が速くなるようにすることで、確実に成形体の内部側に存在する粉末同士を接合させることができる。成形体の表面側は、マイクロ波を表面側に対して照射するため、当然にマイクロ波加熱により粉末同士を接合させることができる。従って、成形体全体に亘って接合するため、高い接合力を得ることができる。これにより、高い抗折強度を得ることができる。
【0012】
そして、大きさの異なる複数種の硬磁性材料を用いることで、成形体の内部側における硬磁性材料の密度を高くでき、表面側の当該密度を低くすることが容易にできる。そして、硬磁性材料の密度が高い成形体の内部側では、マイクロ波加熱による分極を生じやすい状態にできる。これにより、確実に、成形体の内部側からマイクロ波加熱による接合進行速度を速くすることができる。結果として、成形体全体に亘って接合するため、高い接合力を得ることができる。
【0013】
さらに、同種の硬磁性材料を用いた場合に大きさを異ならせると、大きさの大きい方の硬磁性材料の質量が大きくなる。そこで、遠心分離器を用いることで、質量の大きな硬磁性材料を径方向外方、すなわち成形体の表面側に配置することができる。一方、質量の小さな硬磁性材料を径方向内方、すなわち成形体の内部側に配置することができる。このように、遠心分離器を用いることで、成形体の内部側における硬磁性材料の密度を高くでき、成形体の表面側における硬磁性材料の密度を低くできる。従って、確実に、成形体の内部側からマイクロ波加熱による接合進行速度を速くすることができる。
【0014】
請求項2)比誘電率の高い方を成形体の内部側に配置し、比誘電率の低い方を成形体の表面側に配置することで、成形体の内部側では、表面側に比べて、マイクロ波加熱による分極を生じやすい状態にできる。これにより、確実に、成形体の内部側からマイクロ波加熱による接合進行速度を速くすることができる。結果として、成形体全体に亘って接合するため、高い接合力を得ることができる。ここで、絶縁材料が硬磁性材料より比誘電率が低い場合には、絶縁材料が成形体の表面側に配置され、逆に、絶縁材料が硬磁性材料より比誘電率が高い場合には、硬磁性材料が成形体の表面側に配置される。
【0015】
そして、硬磁性材料と絶縁材料を用いる場合において、比誘電率の高い方が質量の大きな方となるように材料の選定を行う。このようにすることで、遠心分離器を用いることで、質量の大きな方を径方向外方、すなわち成形体の表面側に配置することができる。一方、質量の小さな方を径方向内方、すなわち成形体の内部側に配置することができる。つまり、遠心分離器を用いて、比誘電率の高い方を成形体の内部側に配置し、比誘電率の低い方を成形体の表面側に配置することができる。従って、確実に、成形体の内部側からマイクロ波加熱による接合進行速度を速くすることができる。
【0016】
請求項3)全てを硬磁性材料とするのではなく、硬磁性材料と絶縁材料を用いたとしても、絶縁材料を軟磁性材料とすることで、磁石として十分に高い性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態における磁石の製造方法を示すフローチャートである。
図2図1のステップS2における遠心分離器により成形された仮成形体の模式断面図である。
図3図1のステップS3における絞り出し成形器により成形された本成形体の模式断面図である。
図4図1のステップS4における加熱処理の途中の本成形体の模式断面図である。
図5図1のステップS4における加熱処理の完了時の本成形体の模式断面図である。
図6図1のステップS4における加熱処理工程図である。
図7】第二実施形態における加熱処理後の本成形体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
本実施形態の磁石の製造方法について、図1図6を参照して説明する。以下に詳細に説明する。まず、素材粉末10を非加熱状態において所定形状に圧縮成形する。本実施形態においては、遠心分離器を用いて行う。つまり、素材粉末10を遠心分離器100の中に投入する(ステップS1)。
【0020】
本実施形態において、投入する素材粉末として、硬磁性材料の粉末11,12のみを用いる。投入される材料には、ボンドなどは含まれない。硬磁性材料の粉末11,12は、軽希土類元素をRとして含有するR-Fe-N系化合物、または、Fe-N系化合物を用いる。軽希土類元素Rとしては、Smが好適である。つまり、硬磁性材料の粉末には、Sm2Fe17N3、または、Fe16N2が好適に用いられる。ただし、硬磁性材料の粉末11,12は、大きさの異なる複数種用いる。例えば、平均粒径の大きな硬磁性材料の粉末11と、平均粒径の小さな硬磁性材料の粉末12とを用いる。従って、大きな硬磁性材料の粉末11は、小さな硬磁性材料の粉末12より質量が大きい。なお、硬磁性材料の粉末11,12の化合物の種類は、同一である。
【0021】
次に、遠心分離器100を駆動して、酸化性雰囲気にて、仮成形体20を成形する(ステップS2)。仮成形体20は、円盤状または円筒状に形成されており、形状を保持できる程度に硬磁性材料の粉末11,12が一体化されている。この仮成形体20の軸方向断面図は、図2に示すとおりである。図2に示すように、遠心分離器100を駆動することによって、大きな遠心力が作用する質量の大きな粉末の大部分が径方向外方に移動するのに対して、質量の小さな粉末の大部分が径方向内方に位置する。また、遠心分離器100を用いる関係上、仮成形体20の中心には貫通孔が形成されている。
【0022】
ここで、素材粉末10同士は部分的に接触しているが、素材粉末10同士の間には、隙間が形成されている。そして、酸化性雰囲気にて、仮成形体20を成形している。そのため、素材粉末10の同士の隙間には酸化性雰囲気が入り込む。また、平均粒径の大きな硬磁性材料の粉末11同士が隣り合う場合に、これらの間の隙間は、比較的大きくなる。一方、平均粒径の小さな硬磁性材料の粉末12同士が隣り合う場合に、これらの間の隙間は、比較的小さくなる。従って、仮成形体20の径方向内方における硬磁性材料の密度は、径方向外方における硬磁性材料の密度よりも高くなる。
【0023】
続いて、絞り出し成形器200により、仮成形体20の外形を縮径すると共に、仮成形体20の中心の貫通孔を埋めることで、円盤状または円柱状の本成形体30を成形する(ステップS3)。具体的には、仮成形体20を絞り出し成形器200の大径側に配置し、軸方向に加圧して縮径テーパ形状部210を通過させることにより、本成形体30を成形する。図3に示すように、この本成形体30の径方向外方、すなわち表面側には、主として平均粒径の大きな硬磁性材料の粉末11が配置され、本成形体30の径方向内方、すなわち内部側には、主として平均粒径の小さな硬磁性材料の粉末12が配置されている。従って、本成形体30は仮成形体20と同様に、本成形体30の内部側における硬磁性材料の密度は、表面側における硬磁性材料の密度よりも高くなる。
【0024】
続いて、本成形体30に対して酸化雰囲気にてマイクロ波による加熱処理を行う(ステップS4)。この加熱処理は、図6に示すとおりである。マイクロ波による加熱温度Te1は、硬磁性材料の粉末11,12の分解温度Te2未満に設定される。例えば、Sm2Fe17N3、またはFe16N2の硬磁性材料の粉末11,12を用いる場合には、分解温度Te2が500℃程度であるため、加熱温度Te1を500℃未満に設定する。例えば、200℃程度とする。
【0025】
また、酸化性雰囲気の酸素含有量は、大気中の酸素含有量程度であれば十分である。つまり、大気雰囲気で加熱するとよい。そして、加熱温度Te1を200℃程度にすることで、Sm2Fe17N3またはFe16N2のいずれの場合にも、酸化膜を形成することができる。この酸化膜が、硬磁性材料の粉末11,12同士を接合することにより、高い抗折強度の磁石を得ることができる。
【0026】
以下に、本成形体30に対する加熱処理の詳細について説明する。誘電体である硬磁性材料の粉末11,12に対して、マイクロ波を照射すると、照射された硬磁性材料の粉末11,12内において分極が生じて、マイクロ波加熱(マイクロ波による誘電加熱)が生じる。このマイクロ波加熱によって、硬磁性材料の粉末11,12が加熱され、硬磁性材料の粉末11,12の表面に酸化膜が形成される。つまり、マイクロ波加熱により生じる酸化膜によって、隣り合う硬磁性材料の粉末11,12同士が接合する。
【0027】
ここで、比誘電率が大きいほど分極が生じやすい。つまり、比誘電率の大きな材料ほど、マイクロ波加熱の進行が速いことが知られている。さらに、誘電体の密度が高いほどマイクロ波加熱の進行が速いことが知られている。
【0028】
本成形体30を構成する硬磁性材料の粉末11,12は、同じ性質を有する材料を用いているため、比誘電率は同一である。一方、本成形体30の内部側の硬磁性材料の密度は、本成形体30の表面側の硬磁性材料の密度より高い。従って、マイクロ波を本成形体30の表面側から照射したとしても、本成形体30の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱の進行速度が速い。そうすると、本成形体30の内部側が表面側よりもマイクロ波加熱による接合進行速度、すなわち酸化膜形成速度が速くなる。
【0029】
図4に加熱処理の途中の状態における本成形体30を示し、図5に加熱処理の完了時における本成形体30を示す。図4に示すように、加熱処理における途中において、本成形体30の内部側に位置する硬磁性材料の粉末12の表面には酸化膜16が形成されている。従って、内部側に位置する硬磁性材料の粉末12同士は接合している。このとき、本成形体30の表面側においては、マイクロ波加熱の進行が遅いために、酸化膜16が形成されていない。
【0030】
さらに、マイクロ波を照射し続けることで、図5に示すように、本成形体30の内部側の硬磁性材料の粉末12の表面のみならず、本成形体30の表面側の硬磁性材料の粉末11の表面にも、酸化膜16が形成される。従って、表面側に位置する硬磁性材料の粉末11同士も接合する。このように、加熱後の本成形体30の全体に亘って、素材粉末10同士を接合することができるため、高い接合力を得ることができ、結果として高い抗折強度を得ることができる。
【0031】
ここで、仮に、表面側の硬磁性材料の粉末11の加熱が内部側よりも先に進行して、表面側にて先に酸化膜16が形成されるとする。そうすると、マイクロ波が本成形体30の内部側に侵入しにくくなる。場合によっては、硬磁性材料の粉末11,12同士の部分接触によって導電化すると、マイクロ波に対するシールド機能を発揮し、このことによっても内部側にマイクロ波が侵入しにくくなることがある。このように、本成形体30の表面側からマイクロ波加熱が進行してしまうと、本成形体30の内部側に酸化膜16が形成されにくく、結果として本成形体30の内部側における接合力が低下するおそれがある。
【0032】
しかしながら、上記のとおり、本成形体30の内部側のマイクロ波加熱による接合進行速度が速いため、確実に、内部側の硬磁性材料の粉末12同士を接合することができる。また、本成形体30の表面側は、マイクロ波を本成形体30の表面側に対して照射するため、当然にマイクロ波加熱により硬磁性材料の粉末11同士を接合させることができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、本成形体30の表面側に大きさの大きな硬磁性材料の粉末11を配置し、内部側に大きさの小さな硬磁性材料の粉末12を配置するために、遠心分離器100を用いた。遠心分離器100を用いることで、容易に上記のように配置することができるが、これに限られず、各粉末11,12を所望の位置に直接配置することができれば、他の方法でもよい。
【0034】
<第二実施形態>
上記実施形態においては、素材粉末10として、同一の化合物の種類であって大きさの異なる複数種の硬磁性材料の粉末11,12を用いて磁石を製造した。この他に、素材粉末40として、硬磁性材料の粉末41と、例えば軟磁性材料からなる絶縁材料の粉末42とを用いるようにしてもよい。硬磁性材料の粉末41には、上記実施形態と同様である。ここで、絶縁材料の粉末42には、上記硬磁性材料に対して比誘電率が低く、且つ、粉末1つ当たりの質量が上記硬磁性材料の粉末41の1つ当たりの質量より大きいものとする。もしくは、絶縁材料の粉末42には、上記硬磁性材料に対して比誘電率が高く、且つ、粉末1つ当たりの質量が上記硬磁性材料の粉末41の1つ当たりの質量より小さいものとする。
【0035】
本実施形態においては、絶縁材料の粉末42には、例えばソフトフェライトを用いる。ソフトフェライトは、Sm2Fe17N3またはFe16N2より比誘電率が低い。さらに、ソフトフェライトの粉末1つ当たりの質量は、硬磁性材料の粉末41の1つ当たりの質量より大きくなるように、ソフトフェライトの平均粒径を決定する。
【0036】
そして、上記実施形態と同様に、遠心分離器100を用いて仮成形体を成形した後に、絞り出し成形器200を用いて本成形体50(図7に示す)を成形する。本成形体50の内部側には、1つ当たりの質量の小さな硬磁性材料の粉末41が配置され、本成形体50の表面側には、1つ当たりの質量の大きな絶縁材料の粉末42が配置される。つまり、本成形体50の内部側には、比誘電率の高い材料が配置され、本成形体50の表面側には、比誘電率の低い材料が配置されている。
【0037】
ここで、マイクロ波を照射した場合に、比誘電率の高い材料の方が、マイクロ波加熱による分極が生じやすく、比誘電率の低い材料は、当該分極が生じにくい。つまり、本成形体50の表面側からマイクロ波を照射した場合にであっても、本成形体50の内部側からマイクロ波による接合進行速度を速くすることができる。従って、本成形体50の内部側において、確実に酸化膜46が形成される。その後にさらにマイクロ波を照射することで、本成形体50の表面側においても酸化膜46が形成される。従って、本成形体50全体に亘って、素材粉末40同士を接合することができるため、高い接合力を得ることができ、結果として高い抗折強度を得ることができる。
【0038】
また、硬磁性材料の粉末41と絶縁材料の粉末42の1つ当たりの質量の関係を上記のようにすることで、遠心分離器100を用いて容易に、本成形体50の内部側と表面側とに所望の配置とすることができる。また、絶縁材料の粉末42として、軟磁性材料を用いることで、磁石として十分に高い性能を発揮することができる。
【0039】
なお、上記実施形態において、絶縁材料の粉末42に、上記硬磁性材料に対して比誘電率が高く、且つ、粉末1つ当たりの質量が上記硬磁性材料の粉末41の1つ当たりの質量より小さいものとすることができる。この場合には、遠心分離器100を用いることで、本成形体50の内部側に絶縁材料の粉末42が配置され、表面側に硬磁性材料の粉末41が配置される。この場合でも、本成形体50の内部側に配置される絶縁材料の比誘電率が高いため、本成形体50の内部側から確実にマイクロ波加熱により分極が進行し、本成形体50全体に亘って接合する。
【0040】
また、遠心分離器100を用いずに、各粉末41,42を所望の位置に直接配置する場合には、各粉末41,42の質量の関係は、上記に制限されない。つまり、質量とは無関係に、比誘電率の高い材料を本成形体50の内部側に直接配置し、比誘電率の低い材料を本成形体50の表面側に直接配置することで足りる。
【符号の説明】
【0041】
10,40:素材粉末、 11,12:硬磁性材料の粉末、 16:酸化膜、 20:仮成形体、 30:本成形体、 40:素材粉末、 41:硬磁性材料の粉末、 42:絶縁材料の粉末、 46:酸化膜、 50:本成形体、 100:遠心分離器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7