特許第6003268号(P6003268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6003268-スタビライザ装置および無段変速機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003268
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】スタビライザ装置および無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   F16H7/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-134367(P2012-134367)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-257015(P2013-257015A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐哉
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−304115(JP,A)
【文献】 特開2011−208796(JP,A)
【文献】 特開2011−052819(JP,A)
【文献】 特表2009−519410(JP,A)
【文献】 国際公開第99/60288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機において動力を伝える巻き掛け伝動部材を覆うガイドレールと、前記ガイドレールを揺動可能に支持するストッパとを備えるスタビライザ装置において、
前記ガイドレールは、前記巻き掛け伝動部材に径方向の両側から対向する径方向対向壁を有し、
前記ガイドレールの前記径方向対向壁の壁内面間距離について、前記巻き掛け伝動部材の進行方向の両端部分の少なくとも一方における壁内面間距離が中央部分における壁内面間距離に比べて小さく、前記中央部分における壁内面間距離よりも壁内面間距離が小さい前記両端部分の少なくとも一方は、開口に向かって小さくなっているスタビライザ装置。
【請求項2】
プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとに巻き掛けられた巻き掛け伝動部材と、スタビライザ装置とを、備える無段変速機において、
前記スタビライザ装置が請求項1に記載のスタビライザ装置とされている無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタビライザ装置およびこれを備えた無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の無段変速機として、固定シーブおよび可動シーブを有するプライマリプーリと、固定シーブおよび可動シーブを有するセカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとに巻き掛けられた巻き掛け伝動部材とを備えているものがある。
【0003】
この種の無段変速機では、巻き掛け伝動部材のうちプライマリプーリとセカンダリプーリとの間にある部分(弦部)は、プーリで規制されていないことから振動(弦振動)しやすく、これにより、騒音特性が悪化するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、弦振動を低減するために、スタビライザ装置を使用することが提案されている。スタビライザ装置は、無段変速機において動力を伝える巻き掛け伝動部材を覆うガイドレールと、ガイドレールを揺動可能に支持するストッパとを備えている。
【0005】
ガイドレールは、巻き掛け伝動部材に幅方向の両側から対向する幅方向対向壁および巻き掛け伝動部材に径方向の両側から対向する径方向対向壁を有している。これらの対向壁によって巻き掛け伝動部材を巻き掛け伝動部材の進行方向に直交する両側(幅方向側および径方向側)から挟むことによって、巻き掛け伝動部材の弦振動が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−52819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものでは、対向壁(幅方向対向壁および/または径方向対向壁)と巻き掛け伝動部材との間の隙間を小さくすることで、振動の抑制効果は大きくなるが、隙間を小さくし過ぎると、対向壁と巻き掛け伝動部材との接触面積が大きくなって、摩擦損失が増加するという問題がある。
【0008】
この発明の目的は、摩擦損失の増加を抑えて、振動の抑制効果を大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、無段変速機において動力を伝える巻き掛け伝動部材を覆うガイドレールと、前記ガイドレールを揺動可能に支持するストッパとを備えるスタビライザ装置において、前記ガイドレールは、前記巻き掛け伝動部材に径方向の両側から対向する径方向対向壁を有し、前記ガイドレールの前記径方向対向壁の壁内面間距離は、両端部分の少なくとも一方が中央部分に比べて小さくなされているものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のスタビライザ装置によると、ガイドレールの両端部分の少なくとも一方すなわち巻き掛け伝動部材が出入りする入口部分および出口部分の少なくとも一方における振動が効果的に抑制されるとともに、接触面積の増加が小さく抑えられる。これにより、摩擦損失の増加を抑えて、振動の抑制効果を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明によるスタビライザ装置および無段変速機の1実施形態を示す正面図である。
図2図2は、図1の要部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1および図2は、この発明によるスタビライザ装置および無段変速機の1実施形態を示している。
【0014】
無段変速機(1)は、図1に示すように、プライマリプーリ(2)と、セカンダリプーリ(3)と、プライマリプーリ(2)とセカンダリプーリ(3)とに巻き掛けられた巻き掛け伝動部材(4)と、スタビライザ装置(6)とを備えている。
【0015】
プライマリプーリ(2)、セカンダリプーリ(3)、巻き掛け伝動部材(4)およびスタビライザ装置(6)は、ケーシング(5)に収容されている。
【0016】
スタビライザ装置(6)は、プライマリプーリ(2)とセカンダリプーリ(3)との間にある巻き掛け伝動部材(4)の弦部(プーリ(2)(3)で規制されていない部分)の移動(振動)を規制する。スタビライザ装置(6)は、図1の下側(プライマリプーリ(2)からセカンダリプーリ(3)に向かう部分)に設けられている。
【0017】
無段変速機(1)では、低速走行時に対応する変速比(セカンダリプーリ(3)の回転速度/プライマリプーリ(2)の回転速度)が最小のアンダードライブと、高速走行時に対応する変速比が最大のオーバードライブとの間で変速比が変化する。アンダードライブ状態(図1に二点鎖線で示す)では、プライマリプーリ(2)側の巻き掛け径が最小で、セカンダリプーリ(3)側の巻き掛け径が最大となっている。オーバードライブ状態(図1に実線および破線で示す)では、プライマリプーリ(2)側の巻き掛け径が最大で、セカンダリプーリ(3)側の巻き掛け径が最小となっている。
【0018】
巻き掛け伝動部材(4)は、ベルトであっても、チェーンであってもよく、チェーンの場合には、例えば、複数のリンクと、複数のリンクを屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび第2ピンとを備えているものとされる。
【0019】
なお、巻き掛け伝動部材(4)の進行方向に直交する方向のうち、プライマリプーリ(2)およびセカンダリプーリ(3)の軸線方向を巻き掛け伝動部材(4)の幅方向といい、巻き掛け伝動部材(4)の幅方向に直交する方向を巻き掛け伝動部材(4)の径方向というものとする。
【0020】
スタビライザ装置(6)は、巻き掛け伝動部材(4)の弦部が相対移動可能に挿通されるガイドレール(7)と、ガイドレール(7)を揺動可能に支持するストッパ(8)とを備えている。
【0021】
ストッパ(8)は、円柱状とされて、巻き掛け伝動部材(4)の幅方向にのびている。ストッパ(8)は、変速比が最大のときの巻き掛け伝動部材(4)と変速比が最小のときの巻き掛け伝動部材(4)との交点近傍に配置されている。このストッパ(8)がガイドレール(7)を揺動可能に支持する。
【0022】
ガイドレール(7)は、合成樹脂製とされており、筒状の本体(11)を有している。本体(11)の断面は、巻き掛け伝動部材(4)が若干の遊びを有して挿通可能な大きさの方形に形成されている。これにより、巻き掛け伝動部材(4)の弦部がガイドレール(7)に相対移動可能に挿通されており、巻き掛け伝動部材(4)の弦部の巻き掛け伝動部材(4)の進行方向と直交する方向の動きがガイドレール(7)によって規制されている。
【0023】
ガイドレール(7)は、巻き掛け伝動部材(4)の幅方向の中央で2つに分割された形状とされ、両プーリ(2)(3)間に巻き掛けられた後、巻き掛け伝動部材(4)の弦部を巻き掛け伝動部材(4)の幅方向の両側から挟むようにして取り付けられている。
【0024】
ガイドレール(7)の本体(11)は、図2に示すように、巻き掛け伝動部材(4)に幅方向の両側から対向する1対の幅方向対向壁(21)と、巻き掛け伝動部材(4)に径方向の内外両側から対向する1対の径方向対向壁(22)(23)とからなる。径方向対向壁(22)(23)の長さ(巻き掛け伝動部材(4)の進行方向の長さ)は、プーリ(2)(3)と干渉しない程度に長くなされている。幅方向対向壁(21)の長さは、径方向対向壁(22)(23)に比べて短くなされている。
【0025】
1対の径方向対向壁(22)(23)は、巻き掛け伝動部材(4)に径方向の内側から対向する内側対向壁(22)と、巻き掛け伝動部材(4)に径方向の外側から対向する外側対向壁(23)とからなる。各径方向対向壁(22)(23)の巻き掛け伝動部材(4)の進行方向の両端部(入口側端部および出口側端部)には、内側対向壁(22)と外側対向壁(23)との壁内面間距離を開口に向かって小さくする円弧部(22a)(23a)が形成されている。
【0026】
ガイドレール(7)の本体(11)の巻き掛け伝動部材(4)の進行方向の中央部に、ストッパ(8)を支持するための略U字状の支持部(12)が一体に設けられている。ガイドレール(7)の支持部(12)の内面は、ガイドレール(7)を保護する略U字状の金属製補強材(13)によって形成されている。
【0027】
図2に示すように、ガイドレール(7)の径方向対向壁(22)(23)の壁内面間距離は、Bで示す両端部分がAで示す中央部分に比べて小さくなされている。これにより、ガイドレール(7)の両端部分すなわち巻き掛け伝動部材(4)が出入りする入口部分および出口部分における振動がより効果的に抑制される。一方、接触面積の増加については、両端部分以外では増加しないので、小さく抑えられ、全体として、摩擦損失の増加を抑えて、振動の抑制効果を大きくすることができる。こうして、互いに相反する特性である摩擦損失の増加の抑制と振動の抑制とを高いレベルでバランスさせることができる。なお、Bで示す両端部分のいずれか一方だけをAで示す中央部分に比べて小さくするようにしてもよい。
【0028】
ガイドレール(7)の径方向対向壁(22)(23)の両端部分の壁内面間距離Bは、中央部分の壁内面間距離Aを基準にして、B≦0.8Aとすることが好ましく、この条件を満たすように、AおよびBが実験的に決められることがより好ましい。
【0029】
上記において、スタビライザ装置(6)は、図1では、下側に1つだけ示されているが、上下に設けてもよく、上側だけに設けるようにしてもよい。また、図1において、ストッパ(8)とガイドレール(7)の支持部(12)との間には、隙間があってもよく(ガイドレール(7)が巻き掛け伝動部材(4)の進行方向に移動可能)、ストッパ(8)とガイドレール(7)の支持部(12)との間の隙間がゼロ(ガイドレール(7)は、ストッパ(8)を中心として回転可能であるが、巻き掛け伝動部材(4)の進行方向への移動は不可能)であってもよい。また、ストッパ(8)は、巻き掛け伝動部材(4)の径方向外側に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
(1):無段変速機、(2):プライマリプーリ、(3):セカンダリプーリ、(4):巻き掛け伝動部材、(5):ケーシング、(6):スタビライザ装置、(7):ガイドレール、(8):ストッパ、(21):幅方向対向壁、(22)(23):径方向対向壁
図1
図2