特許第6003557号(P6003557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
特許6003557減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置
<>
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000002
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000003
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000004
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000005
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000006
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000007
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000008
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000009
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000010
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000011
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000012
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000013
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000014
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000015
  • 特許6003557-減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003557
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20160923BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
   H02K7/116
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-250087(P2012-250087)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2013-213575(P2013-213575A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-49239(P2012-49239)
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】宅野 博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小林 恒
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】田上 将治
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−32038(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0082000(US,A1)
【文献】 特開2007−218407(JP,A)
【文献】 特開平10−51999(JP,A)
【文献】 特開2009−52630(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0133541(US,A1)
【文献】 特開2011−240772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸線の回りに回転し、前記第1の軸線から偏心する第2の軸線を中心軸線とする偏心部を有する回転軸と、
前記回転軸の外周囲に配置され、第3の軸線を中心軸線とする中心孔、及び前記第3の軸線の回りに等間隔をもって並列する複数の貫通孔を有するとともに、前記中心孔の内周面と前記偏心部の外周面との間に軸受を介在させ、かつ前記第3の軸線を中心軸線とするピッチ円をもつ外歯歯車機構からなる入力部材と、
前記入力部材にその径方向に嵌合して配置され、前記外歯歯車機構の歯数よりも大きい歯数をもって前記入力部材に噛合するとともに、第4の軸線を中心軸線とするピッチ円をもつ内歯歯車機構からなる自転力付与部材を有する円筒状のハウジングと、
前記ハウジングの前記自転力付与部材によって前記入力部材に付与された自転力を受けて出力し、前記複数の貫通孔を挿通する出力部材とを備え、
前記軸受が外輪及び内輪を有するとともに、前記外輪が前記中心孔に、また前記内輪が前記偏心部にそれぞれ前記回転軸の径方向に隙間をもって嵌合する場合に、前記第2の軸線と前記第3の軸線との間の寸法は、前記第2の軸線及び前記第4の軸線に直交する線上で前記入力部材が移動して前記ハウジングに当接する状態において、前記軸受の外径と前記中心孔の内径との間の直径差、前記軸受の内径と前記偏心部の外径との間の直径差、及び前記軸受のラジアル内部すきまの運転すきまを加算した寸法の半分以下の寸法に設定されている
減速機構。
【請求項2】
前記入力部材は、前記第3の軸線を中心軸線とする円環状の第1の凸部を有し、
前記ハウジングは、前記第1の凸部に嵌合し、かつ前記第4の軸線を中心軸線とする円環状の第2の凸部を有する請求項1に記載の減速機構。
【請求項3】
前記入力部材は、前記第1の凸部の嵌合面が外周面で形成され、
前記ハウジングは、前記第2の凸部の嵌合面が内周面で形成されている請求項2に記載の減速機構。
【請求項4】
前記入力部材は、前記第1の凸部の嵌合面が内周面で形成され、
前記ハウジングは、前記第2の凸部の嵌合面が外周面で形成されている請求項2に記載の減速機構。
【請求項5】
前記入力部材は、前記第3の軸線方向に突出して前記第1の凸部が形成され、
前記ハウジングは、前記第4の軸線方向に突出して前記第2の凸部が形成されている請求項3又は4に記載の減速機構。
【請求項6】
前記入力部材は、前記第3の軸線と直交する方向に突出して前記第1の凸部が形成され、
前記ハウジングは、前記第4の軸線と直交する方向に突出して前記第2の凸部が形成されている請求項3に記載の減速機構。
【請求項7】
モータ回転力を発生させる電動モータと、
前記電動モータの前記モータ回転力を減速して駆動力を駆動力伝達対象に伝達する減速伝達機構とを備えたモータ回転力伝達装置において、
前記減速伝達機構は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の減速機構である
モータ回転力伝達装置。
【請求項8】
前記減速伝達機構は、前記駆動力伝達対象としての差動機構に前記駆動力を伝達する請求項7に記載のモータ回転力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駆動源として電動モータを有する電気自動車に用いて好適な減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ回転力伝達装置には、モータ回転力を発生させる電動モータ、及びこの電動モータのモータ回転力を減速して駆動力を差動機構に伝達する減速伝達機構を備え、自動車に搭載されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種のモータ回転力伝達装置の減速伝達機構は、電動モータの偏心部付きモータ軸の回転によって公転運動を行う外歯歯車機構の一例である外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する円板状の曲線板からなる一対の公転部材、これら公転部材に自転力を付与する内歯歯車機構の一例である複数の外ピン、及びこれら外ピンの内側で公転部材の自転力を差動機構に回転力として出力する複数の内ピンを有している。
【0004】
一対の公転部材は、偏心部付きモータ軸の偏心部の軸線と異なる軸線を中心軸線とする中心孔、及びこの中心孔の中心軸線の回りに等間隔をもって並列する複数のピン挿通孔を有し、偏心部付きモータ軸の偏心部に軸受(カム側の軸受)を介して回転可能に支持されている。
【0005】
複数の外ピンは、偏心部付きモータ軸の軸線回りに等間隔をもって配置され、かつ減速伝達機構のハウジングに取り付けられている。
【0006】
複数の内ピンは、公転部材における複数のピン挿通孔を挿通して配置され、かつデフケースに取り付けられている。複数の内ピンには、一対の公転部材における複数のピン挿通孔の内周面との間の接触抵抗を低減するための軸受(ピン側の軸受)が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−218407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示すモータ回転力伝達装置においては、複数の外ピンを用意する必要があるばかりか、公転部材の外周部を複雑な形状にする必要があり、不経済である。
【0009】
そこで、公転部材を外歯歯車機構の一例である歯車である外歯歯車とするとともに、公転部材に自転力を付与するための自転力付与部材を内歯歯車機構の一例である歯車である内歯歯車とし、この内歯歯車の歯数を外歯歯車の歯数よりも大きい歯数として上記した不経済を解消することが考えられる。
【0010】
しかし、特許文献1に示す外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する円板状の曲線板と複数の外ピンとによる減速伝達機構や、歯車である外歯歯車と歯車である内歯歯車とによる減速伝達機構などの外歯歯車機構と内歯歯車機構とによる減速伝達機構を自動車のモータ回転力伝達装置に用いると、公転部材である外歯歯車機構の公転速度が比較的高くなるため、出力時に公転部材からカム側の軸受に遠心力による荷重が加わる。この結果、カム側の軸受として耐久性の高い軸受を用いる必要が生じ、コストが嵩んでしまう。また、カム側の軸受に遠心力による荷重が加わることは、カム側の軸受の寿命が低下するという問題も生じてしまう。
【0011】
従って、本発明の目的は、軸受の高寿命化を図ることができる減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)〜(8)の減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を提供する。
【0013】
(1)第1の軸線の回りに回転し、前記第1の軸線から偏心する第2の軸線を中心軸線とする偏心部を有する回転軸と、前記回転軸の外周囲に配置され、第3の軸線を中心軸線とする中心孔、及び前記第3の軸線の回りに等間隔をもって並列する複数の貫通孔を有するとともに、前記中心孔の内周面と前記偏心部の外周面との間に軸受を介在させ、かつ前記第3の軸線を中心軸線とするピッチ円をもつ外歯歯車機構からなる入力部材と、前記入力部材にその径方向に嵌合して配置され、前記外歯歯車機構の歯数よりも大きい歯数をもって前記入力部材に噛合するとともに、第4の軸線を中心軸線とするピッチ円をもつ内歯歯車機構からなる自転力付与部材を有する円筒状のハウジングと、前記ハウジングの前記自転力付与部材によって前記入力部材に付与された自転力を受けて出力し、前記複数の貫通孔を挿通する出力部材とを備え、前記軸受が外輪及び内輪を有するとともに、前記外輪が前記中心孔に、また前記内輪が前記偏心部にそれぞれ前記回転軸の径方向に隙間をもって嵌合する場合に、前記第2の軸線と前記第3の軸線との間の寸法は、前記第2の軸線及び前記第4の軸線に直交する線上で前記入力部材が移動して前記ハウジングに当接する状態において、前記軸受の外径と前記中心孔の内径との間の直径差、前記軸受の内径と前記偏心部の外径との間の直径差、及び前記軸受のラジアル内部すきまの運転すきまを加算した寸法の半分以下の寸法に設定されている減速機構。
【0014】
(2)上記(1)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記第3の軸線を中心軸線とする円環状の第1の凸部を有し、前記ハウジングは、前記第1の凸部に嵌合し、かつ前記第4の軸線を中心軸線とする円環状の第2の凸部を有する。
【0015】
(3)上記(2)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記第1の凸部の嵌合面が外周面で形成され、前記ハウジングは、前記第2の凸部の嵌合面が内周面で形成されている。
【0016】
(4)上記(2)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記第1の凸部の嵌合面が内周面で形成され、前記ハウジングは、前記第2の凸部の嵌合面が外周面で形成されている。
【0017】
(5)上記(3)又は(4)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記第3の軸線方向に突出して前記第1の凸部が形成され、前記ハウジングは、前記第4の軸線方向に突出して前記第2の凸部が形成されている。
【0018】
(6)上記(3)に記載の減速機構において、前記入力部材は、前記第3の軸線と直交する方向に突出して前記第1の凸部が形成され、前記ハウジングは、前記第4の軸線と直交する方向に突出して前記第2の凸部が形成されている。
【0019】
(7)モータ回転力を発生させる電動モータと、前記電動モータの前記モータ回転力を減速して駆動力を駆動力伝達対象に伝達する減速伝達機構とを備えたモータ回転力伝達装置において、前記減速伝達機構は、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の減速機構であるモータ回転力伝達装置。
【0020】
(8)上記(7)に記載のモータ回転力伝達装置において、前記減速伝達機構は、前記駆動力伝達対象としての差動機構に前記駆動力を伝達する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、コストの低廉化及び軸受の高寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置が搭載された車両の概略を説明するために示す平面図。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置を説明するために示す断面図。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置の減速伝達機構を説明するために模式化して示す断面図。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速伝達機構の要部を模式化して示す断面図。
図5】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速伝達機構の自転力付与部材に対する入力部材の当接状態を示す正面図と断面図。(a)は正面図を、また(b)は断面図をそれぞれ示す。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化して示す断面図。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の要部を模式化してその変形例(1)を示す断面図。
図8】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の要部を模式化してその変形例(2)を示す断面図。
図9】本発明の第2の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化して示す断面図。
図10】本発明の第3の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化して示す断面図。
図11】本発明の第4の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化して示す断面図。
図12】本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化してその変形例(3)を示す断面図。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化してその変形例(4)を示す断面図。
図14】本発明の第3の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化してその変形例(5)を示す断面図。
図15】本発明の第4の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構の入力部材の支持状態を簡略化してその変形例(6)を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は四輪駆動車の概略を示す。図1に示すように、四輪駆動車101は、駆動源をエンジンとする前輪側の動力系、及び駆動源を電動モータとする後輪側の動力系が用いられ、モータ回転力伝達装置1,エンジン102,トランスアクスル103,一対の前輪104及び一対の後輪105を備えている。
【0025】
モータ回転力伝達装置1は、四輪駆動車101における後輪側の動力系に配置され、かつ四輪駆動車101の車体(図示せず)に支持されている。
【0026】
そして、モータ回転力伝達装置1は、電動モータ4(図2に示す)のモータ回転力に基づく駆動力を一対の後輪105に伝達する。これにより、電動モータ4のモータ回転力が減速伝達機構5及びリヤディファレンシャル3(共に図2に示す)を介してリヤアクスルシャフト106に出力され、一対の後輪105が駆動される。モータ回転力伝達装置1等の詳細については後述する。
【0027】
エンジン102は、四輪駆動車101における前輪側の動力系に配置されている。これにより、エンジン102の駆動力がトランスアクスル103を介してフロントアクスルシャフト107に出力され、一対の前輪104が駆動される。
【0028】
(モータ回転力伝達装置1の全体構成)
図2はモータ回転力伝達装置の全体を示す。図2に示すように、モータ回転力伝達装置1は、リヤアクスルシャフト106(図1に示す)の軸線(第1の軸線としての回転軸線O)を中心軸線とするハウジング2と、一対の後輪105(図1に示す)に駆動力を配分する駆動力伝達対象としてのリヤディファレンシャル3と、リヤディファレンシャル3を作動させるためのモータ回転力を発生させる電動モータ4と、電動モータ4のモータ回転力を減速して駆動力をリヤディファレンシャル3に伝達する減速伝達機構5とから大略構成されている。
【0029】
(ハウジング2の構成)
ハウジング2は、後述する自転力付与部材52の他、リヤディファレンシャル3を収容する第1のハウジングエレメント20、電動モータ4を収容する第2のハウジングエレメント21、及び第2のハウジングエレメント21の片側開口部(第1のハウジングエレメント20側の開口部とは反対側の開口部)を閉塞する第3のハウジングエレメント22を有し、車体に配置されている。
【0030】
第1のハウジングエレメント20は、ハウジング2の一方側(図2の左側)に配置され、全体が第2のハウジングエレメント21側に開口する段状の有底円筒部材によって形成されている。第1のハウジングエレメント20の底部には、リヤアクスルシャフト106(図1に示す)を挿通させるシャフト挿通孔20aが設けられている。第1のハウジングエレメント20の開口端面には、第4の軸線(本実施の形態では回転軸線O)方向に沿って第2のハウジングエレメント21側に突出する円環状の凸部(第2の凸部)23が一体に設けられている。凸部23の内周面(一方の入力部材50に対する嵌合面)23aは、第1のハウジングエレメント20の最大内径よりも大きい内径をもち、回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。凸部23の外周面23bは、第1のハウジングエレメント20の最大外径よりも小さい外径をもち、回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。第1のハウジングエレメント20の内周面は、リヤアクスルシャフト106の外周面との間にシャフト挿通孔20aを封止するシール部材24が介在して配置されている。
【0031】
第2のハウジングエレメント21は、ハウジング2の軸線方向中間部に配置され、全体が第4の軸線(回転軸線O)の両方向に開口する無底円筒部材によって形成されている。第2のハウジングエレメント21の片側開口部(第1のハウジングエレメント20側の開口部)には、電動モータ4と減速伝達機構5との間に介在する段状の内フランジ21aが一体に設けられている。内フランジ21aの内周面には、レース取付用の円環部材25が取り付けられている。第2のハウジングエレメント21の片側開口端面(第1のハウジングエレメント20側の開口端面)には、回転軸線O方向に沿って第1のハウジングエレメント20側に突出する円環状の凸部(第2の凸部)27が一体に設けられている。凸部27の内周面(他方の入力部材51に対する嵌合面)27aは、第2のハウジングエレメント21の最大内径と略同一の内径をもち、回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。凸部27の外周面27bは、第2のハウジングエレメント21の外径よりも小さく、かつ凸部23の外径と略同一の外径をもち、回転軸線Oを中心軸線とする円周面で形成されている。
【0032】
第3のハウジングエレメント22は、ハウジング2の他方側(図2の右側)に配置され、全体が第2のハウジングエレメント21側に開口する段状の有底円筒部材によって形成されている。第3のハウジングエレメント22の底部には、リヤアクスルシャフト106を挿通させるシャフト挿通孔22aが設けられている。シャフト挿通孔22aの内側開口周縁には、電動モータ4側に突出するステータ取付用の円筒部22bが一体に設けられている。第3のハウジングエレメント22の内周面は、リヤアクスルシャフト106の外周面との間にシャフト挿通孔22aを封止するシール部材24が介在して配置されている。
【0033】
(リヤディファレンシャル3の構成)
リヤディファレンシャル3は、デフケース30,ピニオンギヤシャフト31,一対のピニオンギヤ32及び一対のサイドギヤ33を有するベベルギヤ式の差動機構からなり、モータ回転力伝達装置1の一方側に配置されている。
【0034】
これにより、デフケース30の回転力がピニオンギヤシャフト31からピニオンギヤ32を介してサイドギヤ33に配分され、さらにサイドギヤ33からリヤアクスルシャフト106(図1に示す)を介して左右の後輪105(図1に示す)に伝達される。
【0035】
一方、左右の後輪105間に駆動抵抗差が発生すると、デフケース30の回転力がピニオンギヤ32の自転によって左右の後輪105に差動配分される。
【0036】
デフケース30は、回転軸線Oと異なる軸線上に配置され、かつ第1のハウジングエレメント20に玉軸受34を介して、また電動モータ4のモータ軸(回転軸)42に玉軸受35を介して回転可能に支持されている。そして、デフケース30は、電動モータ4のモータ回転力に基づく駆動力を減速伝達機構5から受けて回転する。
【0037】
デフケース30には、差動機構部(ピニオンギヤシャフト31,ピニオンギヤ32及びサイドギヤ33)を収容する収容空間30a、及び収容空間30aに連通して左右のリヤアクスルシャフト106をそれぞれ挿通させる一対のシャフト挿通孔30bが設けられている。
【0038】
また、デフケース30には、減速伝達機構5に対向する円環状のフランジ30cが一体に設けられている。フランジ30cには、デフケース30の軸線回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン取付孔300cが設けられている。
【0039】
ピニオンギヤシャフト31は、デフケース30の収容空間30aでその軸線に直交する軸線L上に配置され、かつ軸線L回りの回転及び軸線L方向の移動がピン36によって規制されている。
【0040】
一対のピニオンギヤ32は、ピニオンギヤシャフト31に回転可能に支持され、かつデフケース30の収容空間30aに収容されている。
【0041】
一対のサイドギヤ33は、左右のリヤアクスルシャフト106(図1に示す)をスプライン嵌合によってそれぞれ連結するシャフト連結孔33aを有し、デフケース30の収容空間30aに収容されている。そして、一対のサイドギヤ33は、そのギヤ軸を一対のピニオンギヤ32のギヤ軸に直交させ、一対のピニオンギヤ32に噛合する。
【0042】
(電動モータ4の構成)
電動モータ4は、ステータ40,ロータ41及びモータ軸42を有し、回転軸線O上でリヤディファレンシャル3に減速伝達機構5を介して連結され、かつステータ40がECU(Electronic Control Unit:図示せず)に接続されている。そして、電動モータ4は、ステータ40がECUから制御信号を入力してリヤディファレンシャル3を作動させるためのモータ回転力をロータ41との間で発生させ、ロータ41をモータ軸42と共に回転させる。
【0043】
ステータ40は、電動モータ4の外周側に配置され、かつ第2のハウジングエレメント21における内フランジ21aに取付ボルト43によって取り付けられている。
【0044】
ロータ41は、電動モータ4の内周側に配置され、かつモータ軸42の外周面に取り付けられている。
【0045】
モータ軸42は、回転軸線O上に配置され、かつ一方側端部が円環部材25の内周面に玉軸受44及びスリーブ45を介して、また他方側端部が第3のハウジングエレメント22の内周面に玉軸受46を介してそれぞれ回転可能に支持され、全体がリヤアクスルシャフト106(図1に示す)を挿通させる円筒状の軸部材によって形成されている。
【0046】
モータ軸42の一方側端部には、その回転軸線(第1の軸線)Oから偏心量δをもって偏心する軸線(第2の軸線)Oを中心軸線とする平面円形状の偏心部42a、及び回転軸線Oから偏心量δ(δ=δ=δ)をもって偏心する軸線(第2の軸線)Oを中心軸線とする平面円形状の偏心部42bが一体に設けられている。そして、一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとは、回転軸線Oの回りに等間隔(180°)をもって並列する位置に配置されている。すなわち、一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとは、軸線Oから回転軸線Oまでの距離と軸線Oから回転軸線Oまでの距離とを等しく、かつ軸線Oと軸線Oとの間の回転軸線O回りの距離を等しくするようにモータ軸42の外周囲に配置されている。また、偏心部42aと偏心部42bとは、回転軸線Oの方向に沿って並列する位置に配置されている。
【0047】
モータ軸42の他方側端部には、その外周面と円筒部22bの内周面との間に介在する回転角度検出器としてのレゾルバ47が配置されている。レゾルバ47は、ステータ470及びロータ471を有し、第3のハウジングエレメント22内に収容されている。ステータ470は円筒部22bの内周面に、ロータ471はモータ軸42の外周面にそれぞれ取り付けられている。
【0048】
(減速伝達機構5の構成)
図3は減速伝達機構を示す。図4は入力部材と第1の軸受との間の空隙を示す。図5(a)及び(b)はハウジングに対する入力部材の当接状態を示す。図6は入力部材の支持状態を示す。図3及び4に示すように、減速伝達機構5は、一対の入力部材50・51,自転力付与部材52及び出力部材53を有し、リヤディファレンシャル3と電動モータ4(共に図2に示す)との間に介在して配置されている。そして、減速伝達機構5は、前述したように、電動モータ4のモータ回転力を減速して駆動力をリヤディファレンシャル3に伝達する。
【0049】
一方の入力部材50は、図4及び図6に示すように、軸線(第3の軸線)O´を中心軸線とする中心孔50aを有する歯車である外歯歯車からなり、他方の入力部材51のリヤディファレンシャル3側に配置され、かつ中心孔50aの内周面と偏心部42aとの間に第1の軸受としての玉軸受54を介在させてモータ軸42に回転可能に支持されている。歯車である外歯歯車は、外歯歯車機構の一例である。そして、一方の入力部材50は、電動モータ4からモータ回転力を受けて偏心量δをもつ矢印m,m図3に示す)方向の円運動(回転軸線O回りの公転運動)を行う。玉軸受54は、その内外に配置された2つのレースとしての内輪540,外輪541、及び内輪540と外輪541との間で転動する転動体542を有する。内輪540は偏心部42aに、また外輪541は中心孔50aにそれぞれモータ軸42の径方向に空隙(隙間)をもって取り付けられている。すなわち、内輪540は偏心部42aの外周面に、また外輪541は中心孔50aの内周面にそれぞれすきまばめによって取り付けられている。なお、図4及び図6においては、一方の入力部材50,内輪540,外輪541及び転動体542に遠心力Pが作用した状態を示す。
【0050】
一方の入力部材50には、軸線O´回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン挿通孔(貫通孔)50bが設けられている。ピン挿通孔50bの孔径は、出力部材53の外径に第2の軸受としての針状ころ軸受55の外径を加えた寸法よりも大きい寸法に設定されている。針状ころ軸受55の外径は、玉軸受54の外径よりも小さい寸法に設定されている。一方の入力部材50の外周面には、インボリュート歯形をもつ外歯50cが設けられている。
【0051】
外歯50cは、その両歯面(外歯50cの円周方向両側のトルク授受面)のうち円周方向一方側のトルク授受面が内歯(自転力付与部材52において互いに隣り合う2つの内歯のうち一方の内歯)52cのトルク授受面に対する公転力付与面及び自転力受面として、また円周方向他方側のトルク授受面が内歯(自転力付与部材52において互いに隣り合う2つの内歯のうち他方の内歯)52cのトルク授受面に対する公転力付与面及び自転力受面として機能する。外歯50cの歯数Zは例えばZ=195に設定されている。
【0052】
一方の入力部材50の片側端面(リヤディファレンシャル3側端面)には、第3の軸線O´方向に沿ってリヤディファレンシャル3側に突出する円環状の凸部(第1の凸部)50dが一体に設けられている。
【0053】
凸部50dは、一方の入力部材50において剛性の高い部位(例えば外歯50cの内周側)に配置されている。凸部50dの外周面(第1のハウジングエレメント20に対する嵌合面)500dは、第1のハウジングエレメント20の凸部23の内周面23aに対向し、かつ軸線O´を中心軸線とする円周面で形成されている。
【0054】
ここで、図4図6に示すように、軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で一方の入力部材50の移動によって凸部50dの外周面500dが第1のハウジングエレメント20の凸部23の内周面23aに当接する状態において、外輪541が中心孔50aに、また内輪540が偏心部42aにそれぞれモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受54の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差d−D、玉軸受54の内径Dと偏心部42aの外径dとの間の直径差D−d、及び玉軸受54のラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(d−D)+(D−d)+G}の半分以下の寸法{(d−D)+(D−d)+G}/2≧Lに設定されている。
【0055】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受54の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差(d−D)、玉軸受54の内径Dと偏心部42aの外径dとの間の直径差(D−d)、及び玉軸受54におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を一方の入力部材50がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接する寸法に設定されている。
【0056】
このため、一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接し、この当接位置で一方の入力部材50から第1のハウジングエレメント20が径方向の荷重を受ける。これにより、一方の入力部材50からの遠心力Pによる荷重を第1のハウジングエレメント20における凸部23の内周面23aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受54(外輪541と転動体542と及び転動体542と内輪540と)に作用することが抑制される。
【0057】
他方の入力部材51は、図4及び図6に示すように、軸線(第3の軸線)O´を中心軸線とする中心孔51aを有する歯車である外歯歯車からなり、一方の入力部材50の電動モータ4側に配置され、かつ中心孔51aの内周面と偏心部42bとの間に第1の軸受としての玉軸受56を介在させてモータ軸42に回転可能に支持されている。歯車である外歯歯車は、外歯歯車機構の一例である。そして、他方の入力部材51は、電動モータ4からモータ回転力を受けて偏心量δをもつ矢印m,m図3に示す)方向の円運動(回転軸線O回りの公転運動)を行う。玉軸受56は、その内外に配置された2つのレースとしての内輪560,外輪561、及び内輪560と外輪561との間で転動する転動体562を有する。内輪560は偏心部42bに、また外輪561は中心孔51aにそれぞれモータ軸42の径方向に空隙(隙間)をもって取り付けられている。すなわち、内輪560は偏心部42bの外周面に、また外輪561は中心孔51aの内周面にそれぞれすきまばめによって取り付けられている。なお、図4及び図6においては、他方の入力部材51,内輪560,外輪561及び転動体562に遠心力Pが作用した状態を示す。
【0058】
他方の入力部材51には、軸線O´回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)のピン挿通孔(貫通孔)51bが設けられている。ピン挿通孔51bの孔径は、出力部材53の外径に第2の軸受としての針状ころ軸受57の外径を加えた寸法よりも大きい寸法に設定されている。針状ころ軸受57の外径は、玉軸受56の外径よりも小さい寸法に設定されている。他方の入力部材51の外周面には、インボリュート歯形をもつ外歯51cが設けられている。
【0059】
外歯51cは、その両歯面(外歯51cの円周方向両側のトルク授受面)のうち円周方向一方側のトルク授受面が内歯(自転力付与部材52において互いに隣り合う2つの内歯のうち一方の内歯)52cのトルク授受面に対する公転力付与面及び自転力受面として、また円周方向他方側のトルク授受面が内歯(自転力付与部材52において互いに隣り合う2つの内歯のうち他方の内歯)52cのトルク授受面に対する公転力付与面及び自転力受面としてそれぞれ機能する。外歯51cの歯数Zは例えばZ=195に設定されている。
【0060】
他方の入力部材51の片側端面(電動モータ4側端面)には、第3の軸線O´方向に沿って電動モータ4側に突出する円環状の凸部(第1の凸部)51dが一体に設けられている。
【0061】
凸部51dは、他方の入力部材51において剛性の高い部位(例えば外歯50cの内周側)に配置されている。凸部51dの外周面(第2のハウジングエレメント21に対する嵌合面)510dは、第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに対向し、かつ軸線O´とする中心軸線とする円周面で形成されている。
【0062】
ここで、図4図6に示すように、軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で他方の入力部材51の移動によって凸部51dの外周面510dが第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに当接する状態において、外輪561が中心孔51aに、また内輪560が偏心部42bにそれぞれモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受56の外径Dと中心孔51aの内径dとの間の直径差d−D、玉軸受56の内径Dと偏心部42bの外径dとの間の直径差D−d、及び玉軸受56のラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(d−D)+(D−d)+G}の半分以下の寸法{(d−D)+(D−d)+G}/2≧Lに設定されている。
【0063】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受56の外径Dと中心孔51aの内径dとの間の直径差(d−D)、玉軸受56の内径Dと偏心部42bの外径dとの間の直径差(D−d)、及び玉軸受56におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を他方の入力部材51がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接する寸法に設定されている。
【0064】
このため、他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接し、この当接位置で他方の入力部材51から第2のハウジングエレメント21が径方向の荷重を受ける。これにより、他方の入力部材51からの遠心力Pによる荷重を第2のハウジングエレメント21における凸部27の内周面27aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受56(外輪561と転動体562と及び転動体562と内輪560と)に作用することが抑制される。
【0065】
自転力付与部材52は、図4に示すように、第4の軸線(本実施の形態では第4の軸線が回転軸線Oに一致する)を中心軸線とする歯車である内歯歯車からなり、第1のハウジングエレメント20と第2のハウジングエレメント21との間に介在して配置され、全体が回転軸線Oの両方向に開口してハウジング2の一部を構成する無底円筒部材によって形成されている。歯車である内歯歯車は、内歯歯車機構の一例である。そして、自転力付与部材52は、一対の入力部材50,51に噛合し、電動モータ4のモータ回転力を受けて公転する一方の入力部材50に矢印n,n方向の自転力を、また他方の入力部材51に矢印l,l方向の自転力をそれぞれ付与する。
【0066】
自転力付与部材52の内周面には、凸部23の外周面23bに嵌合する第1の嵌合部52a、及び凸部27の外周面27bに嵌合する第2の嵌合部52bが回転軸線Oの方向に所定の間隔をもって設けられている。また、自転力付与部材52の内周面には、第1の嵌合部52aと第2の嵌合部52bとの間に介在して一方の入力部材50の外歯50c及び他方の入力部材51の外歯51cに噛合するインボリュート歯形の内歯52cが設けられている。
【0067】
内歯52cは、その両歯面(内歯52cの円周方向両側のトルク授受面)のうち円周方向一方側のトルク授受面が外歯(入力部材50において互いに隣り合う2つの外歯のうち一方の外歯)50cのトルク授受面及び外歯(入力部材51において互いに隣り合う2つの外歯のうち一方の外歯)51cのトルク授受面に対する自転力付与面及び公転力受面として、また円周方向他方側のトルク授受面が外歯(入力部材50において互いに隣り合う2つの外歯のうち他方の外歯)50cのトルク授受面及び外歯(入力部材51において互いに隣り合う2つの外歯のうち他方の外歯)51cのトルク授受面に対する自転力付与面及び公転力付与面として機能する。内歯52cの歯数Zは例えばZ=208に設定されている。これにより、減速伝達機構5の減速比αがα=Z/(Z−Z)から算出される。
【0068】
出力部材53は、図4に示すように、一方側端部にねじ部53aを有するとともに、他方側端部に頭部53bを有する複数(本実施の形態では6個)のボルトからなり、一方の入力部材50のピン挿通孔50b及び他方の入力部材51のピン挿通孔51bを挿通してデフケース30のピン取付孔300cにねじ部53aが取り付けられている。また、出力部材53は、頭部53bと他方の入力部材51との間に介在する円環状のスペーサ58を挿通して配置されている。そして、出力部材53は、自転力付与部材52によって付与された自転力を一対の入力部材50,51から受けてデフケース30にその回転力として出力する。
【0069】
出力部材53の外周面であって、ねじ部53aと頭部53bとの間に介在する部位には、一方の入力部材50におけるピン挿通孔50bの内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受55が、また他方の入力部材51におけるピン挿通孔51bの内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受57がそれぞれ取り付けられている。
【0070】
針状ころ軸受55は、一方の入力部材50における複数のピン挿通孔50bの内周面に接触可能なレース550、及びこのレース550と出力部材53の外周面との間で転動する針状ころ551を有する。針状ころ軸受57は、他方の入力部材51における複数のピン挿通孔51bの内周面に接触可能なレース570、及びこのレース570と出力部材53の外周面との間で転動する針状ころ571を有する。
【0071】
(モータ回転力伝達装置1の動作)
次に、本実施の形態に示すモータ回転力伝達装置の動作につき、図1図6を用いて説明する。
【0072】
図2において、モータ回転力伝達装置1の電動モータ4に電力を供給して電動モータ4を駆動すると、このモータ回転力がモータ軸42を介して減速伝達機構5に付与され、減速伝達機構5が作動する。
【0073】
このため、減速伝達機構5において、入力部材50,51が例えば図3に示す矢印m方向に偏心量δをもって円運動を行う。
【0074】
これに伴い、入力部材50が外歯50cを自転力付与部材52の内歯52cに噛合させながら軸線Oの回り(図3に示す矢印n方向)に、また入力部材51が外歯51cを自転力付与部材52の内歯52cに噛合させながら軸線Oの回り(図3に示す矢印l方向)にそれぞれ自転する。この場合、入力部材50,51の自転によってピン挿通孔50bの内周面が針状ころ軸受55のレース550に、またピン挿通孔51bの内周面が針状ころ軸受57のレース570にそれぞれ当接する。
【0075】
このため、出力部材53には入力部材50,51の公転運動が伝達されず、入力部材50,51の自転運動のみが伝達され、入力部材50,51の自転力が出力部材53からデフケース30にその回転力として出力される。
【0076】
これにより、リヤディファレンシャル3が作動し、電動モータ4のモータ回転力に基づく駆動力が図1におけるリヤアクスルシャフト106に配分され、左右の後輪105に伝達される。
【0077】
ここで、モータ回転力伝達装置1においては、動作に伴い入力部材50にその円運動に基づいて遠心力Pが、また入力部材51にその円運動に基づいて遠心力Pがそれぞれ作用する。
【0078】
これに伴い、入力部材50が遠心力Pの作用方向(例えば図6の下方)に、また入力部材51が遠心力Pの作用方向(例えば図6の上方)にそれぞれ移動する。
【0079】
この場合、図4図6に示すように、一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、玉軸受54の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差(d−D)、玉軸受54の内径Dと偏心部42aの外径dとの間の直径差(D−d)、及び玉軸受54におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接する。
【0080】
このため、一方の入力部材50からの遠心力Pによる荷重を凸部23の内周面23aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受54に作用することが抑制される。
【0081】
同様に、他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、玉軸受56の外径Dと中心孔51aの内径dとの間の直径差(d−D)、玉軸受56の内径Dと偏心部42bの外径dとの間の直径差(D−d)、玉軸受56におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接する。
【0082】
このため、他方の入力部材51からの遠心力Pによる荷重を凸部27の内周面27aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受56に作用することが抑制される。
【0083】
従って、本実施の形態においては、玉軸受54,56に耐久性の高い軸受を用いることが不要になる。
【0084】
なお、上記実施の形態においては、入力部材50,51を矢印m方向に円運動させてモータ回転力伝達装置1を作動させる場合について説明したが、入力部材50,51を図3に示すように矢印m方向に円運動させてもモータ回転力伝達装置1を上記実施の形態と同様に作動させることができる。この場合、入力部材50の自転運動は矢印n方向に、また入力部材51の自転運動は矢印l方向にそれぞれ行われる。
【0085】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0086】
(1)入力部材50からの遠心力Pによる荷重が玉軸受54に、また入力部材51からの遠心力Pによる荷重が玉軸受56にそれぞれ作用することが抑制されるため、玉軸受54,56に耐久性の高い軸受を用いることが不要になり、コストの低廉化を図ることができる。
【0087】
(2)玉軸受54に対する遠心力Pによる荷重の作用、及び玉軸受56に対する遠心力Pによる荷重の作用が抑制されることは、玉軸受54,56の高寿命化を図ることもできる。
【0088】
なお、本実施の形態においては、一方の入力部材50に軸線O´方向に沿ってリヤディファレンシャル3側に突出する円環状の凸部50dが、また他方の入力部材51に軸線O´方向に沿って電動モータ4側に突出する円環状の凸部51dがそれぞれ一体に設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図7(変形例1)に示すような構造としてもよい。
【0089】
(変形例1)
図7において、一方の入力部材50のリヤディファレンシャル3側端部には軸線O´と直交する方向に突出する円環状の凸部(第1の凸部)50eが、また他方の入力部材51の電動モータ4側端部には軸線O´と直交する方向に突出する円環状の凸部(第1の凸部)51eがそれぞれ設けられている。
【0090】
自転力付与部材52の一方側(図7では左側)端部には、回転軸線Oと直交する方向に突出し、かつ一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けた状態において凸部(第2の凸部)50eの外周面500eに当接する内周面520dを有する円環状の凸部52dが設けられている。自転力付与部材52の他方側(図7では右側)端部には、回転軸線Oと直交する方向に突出し、かつ他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けた状態において凸部51eの外周面510eに当接する内周面520eを有する円環状の凸部(第2の凸部)52eが設けられている。
【0091】
本実施の形態においては、第1のハウジングエレメント20凸部23の内周面23aに嵌合する外周面500dを有する円環状の凸部50dが一方の入力部材50に、また第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに嵌合する外周面510dを有する円環状の凸部51dを他方の入力部材51にそれぞれ設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図8(変形例2)に示すような構造としてもよい。
【0092】
(変形例2)
図8において、第1のハウジングエレメント20の電動モータ4側端部には回転軸線O方向に沿って電動モータ4側に突出する円環状の凸部(第2の凸部)28が、また第2のハウジングエレメント21のリヤディファレンシャル3側端部には回転軸線O方向に沿ってリヤディファレンシャル3側に突出する円環状の凸部(第2の凸部)29がそれぞれ一体に設けられている。
【0093】
一方の入力部材50のリヤディファレンシャル3側端部には第1のハウジングエレメント20の凸部28の外周面28aに嵌合する内周面500fを有する凸部(第1の凸部)50fが、また他方の入力部材51の電動モータ4側端部には第2のハウジングエレメント21の凸部29の外周面29aに嵌合する内周面510fを有する凸部(第1の凸部)51fがそれぞれ一体に設けられている。
【0094】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構につき、図4図5(a)・(b)及び図9を用いて説明する。図9は入力部材の支持状態を示す。図9において、図6と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
図4及び図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る減速伝達機構100(一部を示す)は、玉軸受54,56の内輪540,560が偏心部42a,42bの外周面にしまりばめによって、また外輪541,561が中心孔50a,51aの内周面にすきまばめによってそれぞれ取り付けられている点に特徴がある。
【0096】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で一方の入力部材50の移動によって凸部50dの外周面500dが第1のハウジングエレメント20の凸部23の内周面23aに当接する状態において、外輪541が中心孔50aにモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受54の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差d−D、及び玉軸受54のラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(d−D)+G}の半分以下の寸法{(d−D)+G}/2≧Lに設定されている。
【0097】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受54の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差(d−D)、及び玉軸受54におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法半分以下の寸法を一方の入力部材50がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接する寸法に設定されている。
【0098】
このため、一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接し、この当接位置で一方の入力部材50から第1のハウジングエレメント20が径方向の荷重を受ける。これにより、一方の入力部材50からの遠心力Pによる荷重を第1のハウジングエレメント20における凸部23の内周面23aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受54(外輪541と転動体542と及び転動体542と内輪540と)に作用することが抑制される。
【0099】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で他方の入力部材51の移動によって凸部51dの外周面510dが第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに当接する状態において、外輪561が中心孔51aにモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受56の外径Dと中心孔50aの内径dとの間の直径差d−D、及び玉軸受54の内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(d−D)+G}の半分以下の寸法{(d−D)+G}/2≧Lに設定されている。
【0100】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受56の外径Dと中心孔51aの内径dとの間の直径差(d−D)、及び玉軸受56におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法半分以下の寸法を他方の入力部材51がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接する寸法に設定されている。
【0101】
このため、他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接し、この当接位置で他方の入力部材51から第2のハウジングエレメント21が径方向の荷重を受ける。これにより、他方の入力部材51からの遠心力Pによる荷重を第2のハウジングエレメント21における凸部27の内周面27aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受56(外輪561と転動体562と及び転動体562と内輪560と)に作用することが抑制される。
【0102】
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す効果と同様の効果が得られる。
【0103】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構につき、図4図5(a)・(b)及び図10を用いて説明する。図10は入力部材の支持状態を示す。図10において、図6と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0104】
図4及び図10に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る減速伝達機構200(一部を示す)は、玉軸受54,56の内輪540,560が偏心部42a,42bの外周面にすきまばめによって、また外輪541,561が中心孔50a,51aの内周面にしまりばめによってそれぞれ取り付けられている点に特徴がある。
【0105】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で一方の入力部材50の移動によって凸部50dの外周面500dが第1のハウジングエレメント20の凸部23の内周面23aに当接する状態において、内輪540が偏心部42aにモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受54の内径Dと偏心部42aの外径dとの間の直径差D−d、及び玉軸受54のラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(D−d)+G}の半分以下の寸法{(D−d)+G}/2≧Lに設定されている。
【0106】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受54の内径Dと偏心部42aの外径dとの間の直径差(D−d)、及び玉軸受54におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を一方の入力部材50がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接する寸法に設定されている。
【0107】
このため、一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接し、この当接位置で一方の入力部材50から第1のハウジングエレメント20が径方向の荷重を受ける。これにより、一方の入力部材50からの遠心力Pによる荷重を第1のハウジングエレメント20における凸部23の内周面23aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受54(外輪541と転動体542と及び転動体542と内輪540と)に作用することが抑制される。
【0108】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で他方の入力部材51の移動によって凸部51dの外周面510dが第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに当接する状態において、内輪560が偏心部42bにモータ軸42の径方向に隙間をもって嵌合されているため、玉軸受56の内径Dと偏心部42bの外径dとの間の直径差D−d、及び玉軸受56のラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法{(D−d)+G}の半分以下の寸法{(D−d)+G}/2≧Lに設定されている。
【0109】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受56の内径Dと偏心部42bの外径dとの間の直径差(D−d)、及び玉軸受56におけるラジアル内部すきまの運転すきまGを加算した寸法の半分以下の寸法を他方の入力部材51がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接する寸法に設定されている。
【0110】
このため、他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接し、この当接位置で他方の入力部材51から第2のハウジングエレメント21が径方向の荷重を受ける。これにより、他方の入力部材51からの遠心力Pによる荷重を第2のハウジングエレメント21における凸部27の内周面27aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受56(外輪561と転動体562と及び転動体562と内輪560と)に作用することが抑制される。
【0111】
[第3の実施の形態の効果]
以上説明した第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す効果と同様の効果が得られる。
【0112】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係るモータ回転力伝達装置における減速機構につき、図4図5(a)・(b)及び図11を用いて説明する。図11は入力部材の支持状態を示す。図11において、図6と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0113】
図4及び図11に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る減速伝達機構300(一部を示す)は、玉軸受54,56の内輪540,560が偏心部42a,42bの外周面に、また外輪541,561が中心孔50a,51aの内周面にそれぞれしまりばめによって取り付けられている点に特徴がある。
【0114】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で一方の入力部材50の移動によって凸部50dの外周面500dが第1のハウジングエレメント20の凸部23の内周面23aに当接する状態において、玉軸受54の内部すきまの運転すきまGの半分以下の寸法G/2≧Lに設定されている。
【0115】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受54におけるラジアル内部すきまの運転すきまGの半分以下の寸法を一方の入力部材50がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接する寸法に設定されている。
【0116】
このため、一方の入力部材50がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部50dの外周面500dが凸部23の内周面23aに当接し、この当接位置で一方の入力部材50から第1のハウジングエレメント20が径方向の荷重を受ける。これにより、一方の入力部材50からの遠心力Pによる荷重を第1のハウジングエレメント20における凸部23の内周面23aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受54(外輪541と転動体542と及び転動体542と内輪540と)に作用することが抑制される。
【0117】
軸線Oと軸線O´との間の寸法Lは、回転軸線O及び軸線Oに直交する線上で他方の入力部材51の移動によって凸部51dの外周面510dが第2のハウジングエレメント21の凸部27の内周面27aに当接する状態において、玉軸受56の内部すきまの運転すきまGの半分以下の寸法G/2≧Lに設定されている。
【0118】
すなわち、寸法Lとしては、玉軸受56におけるラジアル内部すきまの運転すきまGの半分以下の寸法を他方の入力部材51がその初期状態から移動する前に、図5(a)及び(b)に示すように凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接する寸法に設定されている。
【0119】
このため、他方の入力部材51がその円運動に基づいて生じる遠心力Pによる荷重を受けてその方向に移動すると、凸部51dの外周面510dが凸部27の内周面27aに当接し、この当接位置で他方の入力部材51から第2のハウジングエレメント21が径方向の荷重を受ける。これにより、他方の入力部材51からの遠心力Pによる荷重を第2のハウジングエレメント21における凸部27の内周面27aが集中して受けることになり、この遠心力Pによる荷重が玉軸受56(外輪561と転動体562と及び転動体562と内輪560と)に作用することが抑制される。
【0120】
[第4の実施の形態の効果]
以上説明した第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す効果と同様の効果が得られる。
【0121】
以上、本発明の減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0122】
(1)上記実施の形態では、軸線Oから回転軸線Oまでの距離と軸線Oから回転軸線Oまでの距離とを等しく、かつ軸線Oと軸線Oとの間の回転軸線O回りの距離を等しくするように一方の偏心部42aと他方の偏心部42bとがモータ軸42の外周面に設けられているとともに、電動モータ4のモータ軸42にその軸線(回転軸線O)回りに互いに等間隔(180°)をもって離間する部位で一対の入力部材50,51が配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、入力部材の個数は適宜変更することができる。
【0123】
すなわち、入力部材がn(n≧3)個の場合には、電動モータ(モータ軸)の軸線に直交する仮想面において、第1の偏心部の軸線,第2の偏心部の軸線,…,第nの偏心部の軸線がモータ軸の軸線回りの一方向に順次配置されているものとすると、各偏心部の軸線からモータ軸の軸線までの距離を等しく、かつ第1の偏心部,第2の偏心部,…,第nの偏心部のうち互いに隣り合う2つの偏心部の軸線とモータ軸の軸線とを結ぶ線分でつくる挟角を360°/nとするように各偏心部がモータ軸の外周囲に配置されるとともに、n個の入力部材がモータ軸にその軸線回りに360°/nの間隔をもって離間する部位で配置される。
【0124】
例えば、入力部材が3個の場合には、モータ軸の軸線に直交する仮想面において、第1の偏心部の軸線,第2の偏心部の軸線,第3の偏心部の軸線がモータ軸の軸線回りの一方向に順次配置されているものとすると、各偏心部の軸線からモータ軸の軸線までの距離を等しく、かつ第1の偏心部,第2の偏心部,第3の偏心部のうち互いに隣り合う2つの偏心部の軸線とモータ軸の軸線とを結ぶ線分でつくる挟角を120°とするように各偏心部がモータ軸の外周囲に配置されるとともに、3個の入力部材がモータ軸にその軸線回りに120°の間隔をもって離間する部位で配置される。
【0125】
(2)上記実施の形態では、駆動源としてエンジン102及び電動モータ4を併用した四輪駆動車101に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、電動モータのみを駆動源とした四輪駆動車又は二輪駆動車である電気自動車にも適用することができる。また、本発明は、エンジン,電動モータによる第1の駆動軸と電動モータによる第2の駆動軸とを有する四輪駆動車にも上記実施の形態と同様に適用可能である。
【0126】
(3)上記実施の形態では、入力部材50,51の中心孔50a,51aの内周面と偏心部42a,42bの外周面との間にそれぞれ深溝玉軸受である玉軸受54,56を第1の軸受として用い、偏心部42a,42bに対して入力部材50,51が回転可能に支持されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、深溝玉軸受に代えて深溝玉軸受以外の玉軸受やころ軸受を第1の軸受として用いてもよい。このような玉軸受やころ軸受は、例えばアンギュラ玉軸受,針状ころ軸受,棒状ころ軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,自動調心ころ軸受などが挙げられる。また、本発明の第1の軸受としては、転がり軸受に代えて滑り軸受を用いてもよい。
【0127】
例えば、図12図15に示すように、第1の軸受として円筒ころ軸受500(内輪501,外輪502,転動体503)及び円筒ころ軸受600(内輪601,外輪602,転動体603)を用いた場合、一方の入力部材50が偏心部42aに円筒ころ軸受500を介して、また他方の入力部材51が偏心部42bに円筒ころ軸受600を介してそれぞれ回転可能に支持される。この場合、図12図6に、図13図9に、図14図10に、また図15図11にそれぞれ対応する。図12図15においては、上記実施の形態に示す玉軸受54に代えて円筒ころ軸受500が一方の入力部材50の中心孔50aの内周面と偏心部42aの外周面との間に、また上記実施の形態に示す玉軸受56に代えて円筒ころ軸受600が他方の入力部材51の中心孔51aの内周面と偏心部42bの外周面との間にそれぞれ介在して配置される。
【0128】
(4)上記実施の形態では、出力部材53の外周面であって、ねじ部53aと頭部53bとの間に介在する部位に、入力部材50のピン挿通孔50bの内周面に接触可能な第2の軸受としての針状ころ軸受55が、また入力部材51のピン挿通孔51bの内周面に接触可能な第2の軸受としての針状ころ軸受57がそれぞれ取り付けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、針状ころ軸受に代えて針状ころ軸受以外のころ軸受や玉軸受を用いてもよい。このような玉軸受やころ軸受は、例えば深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸受,棒状ころ軸受,円すいころ軸受,自動調心ころ軸受などが挙げられる。また、本発明の第2の軸受としては、転がり軸受に代えて滑り軸受を用いてもよい。
【0129】
(5)上記実施の形態では、一対の入力部材50,51がモータ軸42の外周囲にその回転軸線Oの回りに等間隔をもって配置されている場合、すなわちモータ軸42の回転軸線(第1の軸線)Oと自転力付与部材52の軸線(第4の軸線)とが一致する場合に第2の軸線Oと第3の軸線O´との間の寸法を、また第2の軸線Oと第3の軸線O´との間の寸法をそれぞれ所定の寸法に設定して実施される例について説明したが、本発明はこれに限定されず、単一の入力部材がモータ軸の外周囲に配置されている場合、又は複数の入力部材がモータ軸の外周囲にその回転軸線の回りに不等間隔をもって配置されている場合、すなわち第1の軸線と第4の軸線とが一致しない場合でも、第2の軸線と第3の軸線との間の寸法を所定の寸法(軸受の外径と中心孔の内径との間の直径差、軸受の内径と偏心部の外径との間の直径差、及び軸受のラジアル内部すきまの運転すきまを加算した寸法の半分以下の寸法)に設定して上記実施の形態と同様に実施することが可能である。
【0130】
(6)上記実施の形態では、外歯歯車機構として歯車である外歯歯車を用い、内歯歯車機構として歯車である内歯歯車を用いた減速機構及びこれを備えたモータ回転力伝達装置についての実施例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、外歯歯車機構として外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する円板状の曲線板を用い、内歯歯車機構として複数の外ピンを用いてもよい。この場合、外歯歯車機構の歯数とは曲線板の波形の数であり、内歯歯車機構の歯数とは外ピンの数であることは言うまでもない。このような曲線板を用い、外ピンを用いた減速機構としてはサイクロイド減速機が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0131】
1…モータ回転力伝達装置、2…ハウジング、20…第1のハウジングエレメント、20a…シャフト挿通孔、21…第2のハウジングエレメント、21a…内フランジ、22…第3のハウジングエレメント、22a…シャフト挿通孔、22b…円筒部、23…凸部、23a…内周面、23b…外周面、24…シール部材、25…円環部材、27…凸部、27a…内周面、27b…外周面、28…凸部、28a…外周面、29…凸部、29a…外周面、3…リヤディファレンシャル、30…デフケース、30a…収容空間、30b…シャフト挿通孔、30c…フランジ、300c…ピン取付孔、31…ピニオンギヤシャフト、32…ピニオンギヤ、33…サイドギヤ、33a…シャフト連結孔、34,35…玉軸受、36…ピン、4…電動モータ、40…ステータ、41…ロータ、42…モータ軸、42a,42b…偏心部、43…ボルト、44…玉軸受、45…スリーブ、46…玉軸受、47…レゾルバ、470…ステータ、471…ロータ、5…減速伝達機構、50,51…入力部材、50a,51a…中心孔、50b,51b…ピン挿通孔、50c,51c…外歯、50d…凸部、500d…外周面、51d…凸部、510d…外周面、50e,51e…凸部、500e,510e…外周面、50f,51f…凸部、500f,510f…内周面、52…自転力付与部材、52a…第1の嵌合部、52b…第2の嵌合部、52c…内歯、52d,52e…凸部、520d,520e…内周面、53…出力部材、53a…ねじ部、53b…頭部、54…玉軸受、540…内輪、541…外輪、542…転動体、55…針状ころ軸受、550…レース、551…針状ころ、56…玉軸受、560…内輪、561…外輪、562…転動体、57…針状ころ軸受、570…レース、571…針状ころ、58…スペーサ、100…減速伝達機構、101…四輪駆動車、102…エンジン、103…トランスアクスル、104…前輪、105…後輪、106…リヤアクスルシャフト、107…フロントアクスルシャフト、200,300…減速伝達機構、500…円筒ころ軸受、501…内輪、502…外輪、503…転動体、600…円筒ころ軸受、601…内輪、602…外輪、603…転動体、O…回転軸線、L,O,O´,O,O´…軸線、δ,δ,δ…偏心量、G,G…運転すきま、P,P…遠心力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15