特許第6007898号(P6007898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007898
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】繊維構造体
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/00 20060101AFI20161006BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20161006BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20161006BHJP
   D03D 27/00 20060101ALI20161006BHJP
   D03D 25/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   D04B21/00 A
   D04B1/00 A
   D03D1/00 Z
   D03D27/00 Z
   D03D25/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-510153(P2013-510153)
(86)(22)【出願日】2013年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2013054834
(87)【国際公開番号】WO2013129347
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-40816(P2012-40816)
(32)【優先日】2012年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】白井 孝宗
(72)【発明者】
【氏名】成田 周作
(72)【発明者】
【氏名】藤山 友道
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 留美
(72)【発明者】
【氏名】梶山 宏史
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−180308(JP,A)
【文献】 特開2003−278050(JP,A)
【文献】 特開2002−212880(JP,A)
【文献】 米国特許第5855125(US,A)
【文献】 国際公開第97/043472(WO,A1)
【文献】 特開昭63−145457(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第1300268(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00 − 1/28、21/00−21/20
D03D 1/00 −27/18
D06M 13/00 −15/715
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の繊維に吸湿性ポリマーが固着している繊維構造体であって、繊維構造体断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層の繊維密度が異なっている繊維構造体において、
繊維構造体を製織又は製編方向に対して垂直方向に切断して、断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層にそれぞれ含まれる繊維断面本数を算出したとき、裏層の繊維断面本数を表層の繊維断面本数で除した数値(繊維断面本数比)が2〜10の範囲であることを特徴とする繊維構造体。
【請求項2】
布帛が織物または編物の形態を有し、布帛の地組織が裏層側にあることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造体。
【請求項3】
吸湿性ポリマーがアクリル酸アミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、イソプレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムから選ばれる1種以上のモノマーの重合体又はこれら1種以上のモノマーおよび前記以外のモノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造体。
【請求項4】
吸湿性ポリマーの布帛への固着率が4〜20質量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の繊維構造体。
【請求項5】
布帛の組織が以下のa〜c群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の繊維構造体。
a群:2枚以上の筬を有する編み機から製造された経編物であって、裏層となる組織が2針振り又は3針振り組織であるもの
b群:両面編機で編成された緯編物であって表層となる組織が柄組織であるもの
c群:地組織を有するパイル織物
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の繊維構造体を有する車両内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿によって温度が変化する繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、布帛に対し吸湿性ポリマーを固着させることにより、吸湿することによって発熱し、保温性と発熱性を有する布帛が提案されてきた。
例えば特許文献1では、肌面とは反対側の層よりも単繊維繊度が大きい合成繊維マルチフィラメントを肌面側に用い、布帛が水を多く吸着する機能を有する編地が使用されている。
【0003】
また、特許文献2では、吸湿性の高い微粒子が固着したシート状構造体であって、吸湿による温度上昇が3℃以上である内装材が提案されている。
一方、布帛が水蒸気を放出することによる温度降下やより水蒸気を放出しやすい織物の構造および編物の構造については検討されていなかった。
【0004】
一方、自動車の分野では、電気自動車やハイブリット車の普及から、使用時の消費電力を少しでも抑えて走行距離や燃費を伸ばしたいという要望がある。そのような省電力の目的を達成するため夏場のエアコン設定温度を上げることが考えられる。そこで、エアコン設定温度を上げることによる不快感をぬぐうために、自動車内装材には、温度降下させる機能をもたせたいという希望があった。しかしながら従来の吸湿性材料を用いた繊維構造体では温度降下効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−327316号公報
【特許文献2】特開2003−96672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸湿または放湿によって布帛の表面温度をさらに大きく変化させることができる繊維構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用する。
前記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1]布帛の繊維に吸湿性ポリマーが固着している繊維構造体であって、繊維構造体断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層の繊維密度が異なっていることを特徴とする繊維構造体。
[2]布帛が織物または編物の形態を有し、布帛の地組織が裏層側にあることを特徴とする前記[1]に記載の繊維構造体。
[3]吸湿性ポリマーがアクリル酸アミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、イソプレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムから選ばれる1種以上のモノマーの重合体又はこれら1種以上のモノマーおよび前記以外のモノマーとの共重合体であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の繊維構造体。
[4]吸湿性ポリマーの布帛への固着率が4〜20質量%であることを特徴とする前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の繊維構造体。
[5]前記[1]ないし[4]のいずれかに記載の繊維構造体であって、繊維構造体を製織又は製編方向に対して垂直方向に切断して、断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層にそれぞれ含まれる繊維断面本数を算出したとき、裏層の繊維断面本数を表層の繊維断面本数で除した数値(繊維断面本数比)が2〜10の範囲であることを特徴とする繊維構造体。
[6]布帛の組織が以下のa〜c群から選ばれるものであることを特徴とする前記[1]ないし[5]のいずれかに記載の繊維構造体。
a群:2枚以上の筬を有する編み機から製造された経編物であって、裏層となる組織が2針振り又は3針振り組織であるもの
b群:両面編機で編成された緯編物であって表層となる組織が柄組織であるもの
c群:地組織を有するパイル織物
[7]前記[1]ないし[6]のいずれかに記載の繊維構造体を有する車両内装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布帛が吸湿または放湿により大きく温度変化する織物または編物の形態を有する繊維構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施例1の繊維構造体の断面写真である。
図2図2は実施例2の繊維構造体の断面写真である。
図3図3は実施例3の繊維構造体の断面写真である。
図4図4は比較例1の繊維構造体の断面写真である。
図5図5は比較例2の繊維構造体の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の布帛について説明する。本発明の布帛としては、不織布、織物、編物いずれの形態でも好ましいが、織物および編物の形態であることが好ましい。
布帛の引張強力、引裂強力などの物性に影響を与える地組織が裏層にあることが好ましい。そうなると表層は一般的に布帛の心地よい風合い、手触り、外観などを与えるものとなる。
【0011】
本発明の繊維構造体は、繊維構造体断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層の繊維密度が異なっている。
【0012】
地組織とは、織物や編物におけるパイルや柄組織とは異なり、布帛の引張強力、引裂強力などの物性を大きく支配する組織である。2枚以上の筬によって製造される経編物であれば、2針振り又は3針振りの組織である。緯編物であれば両面編機で編成された組織である。織物であれば、モケットパイル織物のようなパイルを有する織物におけるパイルを固定する組織である。本発明では、地組織を肌面側である裏層として使用して、そして繊維密度が高い部分を布帛の裏層とする。その結果、吸湿性ポリマーを布帛に固着させるとき、吸湿性ポリマーまたは吸湿性ポリマー原料を含む液体が毛細管現象により繊維間に含浸するときに、吸湿性ポリマーを表層の繊維よりも裏層の繊維に多く固着させることができる。
【0013】
裏層を構成する繊維は、総繊度が30〜500dtexの範囲であることが好ましい。総繊度が30dtexより小さい場合、地組織の力学的強度が低下し、車両用内装材、例えばシート用生地として実際に使用したとき糸切れなどが起こる場合がある。一方、総繊度が500dtexより大きいと、裏層側の単位体積あたりの繊維の量が多くなり過ぎるため、吸湿性ポリマーを布帛に固着した際、布帛全体の風合いが硬くなる傾向がある。又、単繊維繊度は0.8〜5dtexが好ましい。
【0014】
この裏層に使用する繊維の強度としては、好ましくは2.0cN/dtex以上、より好ましくは2.5cN/dtex以上である。吸湿性ポリマーを適当量固着させるために単繊維繊度は0.5〜5.0dtex、より好ましくは0.8dtex以上、さらに5.0dtex以下である。これらの繊維の形態としては、マルチフィラメント、紡績糸が好適である。
【0015】
本発明の態様のひとつとして、繊維構造体を製織又は製編方向に対して垂直方向に切断したとき、断面の中心線を境界として表面側(非肌面側)である表層と裏面側(肌面側)である裏層にそれぞれ含まれる繊維断面本数を算出したとき、裏層の繊維断面本数を表層の繊維断面本数で除した数値(繊維断面本数比)が2〜10の範囲であることが好ましい。繊維断面本数比のより好ましい範囲としては、2.5以上、さらに3.0以上であり、一方、9.5以下、さらに9.0以下の範囲である。
【0016】
繊維断面本数比の算出方法について、図1〜5を用いて説明する。
図1〜5は、繊維構造体を製織又は製編方向に対して垂直方向に切断した断面写真である。繊維構造体断面の中心線1に対して表面2側と裏面3側に2分割し、中心線1から表面2に至るまでの範囲である表層と中心線1から裏面3に至るまでの範囲である裏層にそれぞれ含まれる繊維本数を数えて、その繊維本数を繊維断面本数とするものである。
【0017】
繊維断面本数比が2〜10の範囲であることにより、環境の相対湿度が低下して、繊維構造体の温度が環境温度より大きく低下する。この理由について本発明者は以下のように考える。
【0018】
布帛へ吸湿性ポリマーを固着させるとき、単位体積に存在する繊維の本数が多いほど繊維間に吸湿性ポリマーが多く固着する。従って、裏層の繊維断面本数が表層の繊維断面本数より多ければ、吸湿性ポリマーは表層より裏層に多く存在する。裏層の方が吸湿性ポリマーを多く含むため、裏層の方から水蒸気が多く放出される。裏層の吸湿性ポリマーから放出される水蒸気は、裏層のひょう面からも放出されるが、布帛の繊維の間も通過していく。表層のほうが裏層に比べて、繊維本数が少なく空間が多いので、水蒸気が通過しやすく、表層のひょう面から大気に水蒸気が放出されやすい。裏層から表層に達した水蒸気は表層のひょう面から大気に放出される。その結果、布帛中の湿度が下がるため、さらに大気に放出される水蒸気の気化熱によって布帛の温度が下がるのである。
【0019】
繊維断面本数比が1に近い場合、布帛に固着している表層のポリマーと裏層のポリマーは、同じ程度となる。そのため、裏層と表層の水蒸気放出量の差が小さくなり、裏層と表層における水蒸気通路である空間容積の差も小さくなるので、裏層から放出される水蒸気は、表層のひょう面から気化されにくくなる。さらに裏層から供給された水蒸気は、表層にあるポリマーに吸湿されるので、布帛の温度は低下しにくくなる。
【0020】
一方、繊維断面本数比が大きくなりすぎると、表層を通って大気に放出される気化熱が少なくなり、布帛の温度が下がりにくいという不都合がある。以上述べた理由により、繊維断面本数比(裏層の繊維断面本数/表層の繊維断面本数)は2〜10であるのが好ましい。繊維断面本数比のより好ましい範囲としては、2.5以上、さらに3.0以上であり、一方、9.5以下、さらに9.0以下の範囲である。
【0021】
本発明の繊維構造体の態様としては、組織が以下のa〜c群から一つ選ばれることを特徴とする。この繊維構造体も繊維構造体断面の中心線を境界として表面側である表層と裏面側である裏層の繊維密度が異なっている。
a群:2枚以上の筬を有する編み機から製造された経編物であって、裏層となる組織が2針振り又は3針振り組織であるもの。
b群:両面編機で編成された緯編物であって表層となる組織が柄組織であるもの。
c群:地組織を有するパイル織物。
【0022】
この繊維構造体も繊維断面本数比が2〜10であるのが好ましく、繊維断面本数比のより好ましい範囲としては、2.5以上、さらに3.0以上であり、一方、9.5以下、さらに9.0以下の範囲である。この繊維構造体も、環境の相対湿度低下により、環境温度より大きく温度が低下する。この理由は上に述べたのと同様である。
【0023】
a群は、2枚以上の筬を有する編み機から製造された経編物であり、地組織となる裏層が2針振り又は3針振り組織であることが好ましい。地組織は、2針振り組織としては、1−0/2−3、2−3/1−0、0−1/3−2、3−2/0−1などが例示される。3針振り組織としては、1−0/3−4、3−4/1−0、0−1/4−3、0−1/3−4などが例示される。地組織はこれら組織を少なくとも1つ以上含んでいれば、その他組織との組み合わせであってもよい。また、a群を構成する表層は、1針〜3針振り組織やアトラス組織、その他変化組織であってよく、全ての針に糸通ししない糸抜き組織なども好ましい。
【0024】
b群は、両面編機で編成された緯編物であって表層となる組織が柄組織である。裏層を構成する地組織としては、平編やゴム編組織などの密な組織であり、表層として、やや疎な組織である柄組織を有する緯編物が好ましい。
【0025】
c群は、地組織を有するパイル織物として、レーヨン繊維を地組織に用いたモケットパイル織物や2重織物のベルベット織物が好ましい。
【0026】
本発明の繊維構造体は、夏場の車内を想定した40℃で相対湿度80%の雰囲気においてエアコンの使用を開始し、その雰囲気条件から10分以内に35℃で相対湿度70%の雰囲気に温湿度条件を変化させたときの布帛の表面温度降下が1.5℃〜4℃であることが好ましい。40℃で相対湿度80%の雰囲気から35℃で相対湿度70%の雰囲気に10分以内に温湿度条件を変化させたとき、本発明の吸湿性ポリマーが固着している繊維構造体は、吸湿性ポリマーを固着させていない繊維構造体と比較した場合、表面温度が1.5℃〜4.0℃低いことが好ましく、下限としては1.7℃以上、1.9℃以上の順に好ましい。
【0027】
本発明の布帛の繊維に固着している吸湿性ポリマーは、吸湿性の観点から、20℃で相対湿度65%の雰囲気条件から30℃で相対湿度90%の雰囲気条件へ変化させたときに、吸湿によって質量が増加する程度(以下、吸湿率という。)が10〜75%であることが好ましく、より好ましくは15%以上、さらには20%以上である。一方、好ましくは70%以下、さらには65%以下である。かような吸湿性を満たす吸湿性ポリマーとしては、官能基としてスルホ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、あるいはそれらのアルカリ金属塩(望ましくはナトリウム塩)を有するビニル基を有するモノマーから選ばれるものの重合体、又はそのモノマーを少なくとも1種以上を含む共重合体であることが好ましい。例えば、スルホ基を有するポリマーとして、ポリ(アクリル酸アミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリイソプレンスルホン酸ナトリウム、ポリアリルスルホン酸ナトリウム、ポリメタリルスルホン酸ナトリウムなどが好ましい。カルボキシル基を有するポリマーをしては、ポリアクリル酸ナトリウムなどが好ましい。水酸基を有するポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどが好ましい。アミド基を有するポリマーとしてはポリーN−メチロールアクリルアミド、ポリアクリルアミドなどが好ましい。かかる吸湿性モノマーのうち、高吸湿性の点から、2−アクリルアミドー2−メチルスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0028】
さらに上記ポリマーに他のモノマーユニットが入った共重合体も使用できる。
また、本発明においては、吸湿性ポリマーの繊維への固着性を向上させるために、架橋剤を使用して吸湿性ポリマーに架橋構造をとらせるのが好ましい。架橋剤としては、多官能のエポキシ化合物、多官能のイソシアネート化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物が例示される。
【0029】
重合性二重結合を有する化合物としては、ポリエチレングリコール(例えば、数平均繰り返し度数250)の末端の水酸基に(メタ)アクリル酸をエステル化した化合物が挙げられる。例えば、エチレンオキサイドの平均繰り返し度数が9〜23であり、メタクリル酸2個がエステル化したものが使用できる。
【0030】
さらに、布帛を構成する繊維の上で重合させて吸湿性ポリマーを得ることができる。吸湿性ポリマーとなるモノマーと必要に応じて重合開始剤を布帛を構成する繊維に含浸させることができる。必要があれば架橋剤も含むことができる。重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などの無機系の重合開始剤や、2,2’−アゾビス(2−アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(N、N−ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2−(カルバモイラゾ)イソブチロニトリルなどの有機系重合開始剤が好ましく用いられる。
【0031】
吸湿性ポリマーを繊維に固着させる方法については、モノマー、(必要であれば)架橋剤、(必要であれば)重合開始剤および溶媒または分散媒を含有する処理液をパディング法で繊維に付与した後、熱を与え乾燥させる。続いてスチーム付与など高温の状態におくことによりモノマーなどを重合させ、得られる吸湿性ポリマーを繊維表面に固着させる。また、ポリアクリル酸アミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、イソプレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムなどのポリマー溶液に布帛を含浸させ、乾燥させる方法も吸湿性ポリマーを繊維に固着させる方法として例示される。
【0032】
上記パディング法における処理液の濃度は、重合反応による場合、吸湿性ポリマーとなるモノマーの濃度が20〜150g/Lであることが好ましい。重合にあたって架橋剤を使用する場合、その濃度は20〜150g/Lが好ましい。また、重合開始剤を使用する場合、その濃度は、1〜10g/Lが好ましく、より好ましくは、3g/L以上、さらに好ましくは、5g/L以上である。
【0033】
吸湿性ポリマーの溶液で処理する場合には、20〜150g/Lの濃度が好ましい。重合させる場合であっても、ポリマーの溶液を用いる場合であっても、上記濃度が低いと、吸湿性ポリマーの固着量が低くなり、冷却性能が低下する。上記濃度が高いと吸湿性ポリマーの固着量が高すぎるため、繊維構造体の風合いが硬くなる。
【0034】
熱処理については、重合開始剤の活性を保持するために、常圧スチーマー、または高圧スチーマーの設備を用いることが好ましく、スチーム処理の温度は、80℃〜170℃が好ましい。
【0035】
熱処理時間は任意であるが、5分間〜15分間処理することが好ましい。より好ましくは6〜15分間、さらに好ましくは7〜15分間である。スチーム圧は任意であるが、重合を促進するために0.09〜0.50MPaの範囲であることが好ましい。
【0036】
吸湿性ポリマーを布帛の繊維に固着させる加工方法として、パディング法やスプレー法やロールコート法などで固着させることが好ましく、布帛内部まで薬剤を浸漬させることができる、パディング法で加工することが特に好ましい。
【0037】
布帛の繊維に固着した吸湿性ポリマーの固着率は、布帛に対して、4〜20質量%の範囲であることが好ましい。4質量%より少ないと十分な吸湿性能が得られず、その結果大きな温度変化が得られない。一方、20質量%より多いと、風合いが硬いという印象を与える。吸湿性ポリマーの布帛繊維への固着率は、より好ましくは5〜18質量%の範囲である。
【0038】
本発明の布帛を構成する繊維は、例えば、ポリエステル繊維やポリアミド繊維のような合成繊維や綿などの天然繊維やレーヨンなどを、単独で又は2種以上を混合したものが用いることができる。さらに、石油資源使用量低減の観点から、植物由来の原料を使用したポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、その他ポリ乳酸繊維などのバイオマス繊維が好適に使用される。特に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維はヤング率が低いため、風合い、手触り、座り心地が良く、好適に使用される。また、ポリ乳酸繊維は、原料を100%植物から生成することができ、石油資源の使用低減に最も貢献できる繊維であり好ましい。
【0039】
上記繊維の形態は、マルチフィラメントや紡績糸などが使用されるが、布帛強度や耐摩耗性が要求される場合には、マルチフィラメントが好適である。バイオマス繊維の好ましい総繊度および単繊維繊度は上記段落[0013]に記載のとおりである。
【0040】
また、上記繊維には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化チタン粉末のようなダル化剤、染料、顔料、難燃剤、吸湿剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤および消臭剤などを含んでいてもよい。
【0041】
本発明の繊維構造体の耐光堅牢度は、4級以上であることが好ましい。フェードメーターで83℃、200時間照射した後、変退色用グレースケールの判定で4級より低いレベルであるとカーシート用途として使用時に色褪せなどの問題が生じる。
【0042】
本発明の繊維構造体は、肌着、スポーツ衣料、ワイシャツなどの衣料用途や椅子張りなどのインテリア用品に使用する他、車両内装材用途として使用されることが好ましい。特に好ましい用途としては、車両内装材用途であり、特に車両の用途としては、シートであり、シートに使用する場合、メイン材、カマチ部、背裏部、ヘッドレスト、シートカバー、ヘッドレストカバーなどに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変更や修正が可能である。なお、以下の実施例および比較例における各評価は、次の方法で求めた。
【0044】
[測定方法]
(1)引張強度(cN/dtex)と伸度(%)
JIS L 1013(8.5.1)(2010)に示される定速伸長条件に準じ、オリエンテック(株)社製TENSILON(登録商標)UCT−100を用いて、糸の引張強度(cN/dtex)および伸度(%)を測定した。このとき、試料長200mm、引張速度200m/分として、引張強度は応力−歪み曲線における最大強力を示した点の強力を総繊度で除することにより求め、伸度は応力−歪み曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0045】
(2)目付(g/m
JIS L 1096(8.4.2)(2010)に規定された方法により、布帛の単位面積当たりの質量(g/m)を求めた。
【0046】
(3)吸湿性ポリマーの固着率
吸湿性ポリマーが固着していない布帛から30cm×30cmの正方形状の試片を切り取り、温度が24℃で、相対湿度が60%に設定された恒温恒湿室に24時間放置し、加工前(吸湿性ポリマー固着前)の布帛重量(g)を測定した。その後、吸湿性ポリマーを固着させた加工後の布帛重量(g)も加工前布帛と同じ恒温恒湿条件で測定し、下式の通り吸湿性ポリマーの固着率を算出した。
吸湿性ポリマーの固着率(%)=[加工後の布帛重量(g)−加工前の布帛重量(g)]/加工前の布帛重量(g)×100
【0047】
(4)布帛の吸湿率(%)
加工前(吸湿性ポリマー固着前)の布帛から約1.0gの試料を採取して、を熱風乾燥機中で105℃、24時間乾燥して重量を測定した(W1)。次に、該試料を20℃で相対湿度65%に調整した恒温恒湿器に24時間入れた後の試料重量を測定した。(W2)。さらに、30℃で×相対湿度90%調整した恒温恒湿器に24時間入れた後の試料重量を測定した(W3)。以上の測定結果から、次式によって布帛の吸湿率を算出した。
布帛の吸湿率(%)=[(W3−W1)/W1−(W2−W1)/W1]×100
【0048】
(5)吸湿性ポリマーの吸湿率
加工後(吸湿性ポリマー固着後)の布帛についても段落[0047]に記載した条件と同様に、W1とW2とW3から加工後の布帛の吸湿率を算出した。その加工後の布帛の吸湿率と、段落[0047]で算出した加工前の布帛の吸湿率と、段落[0046]で算出した吸湿性ポリマーの固着率とに基づいて、次式によって吸湿性ポリマーの吸湿率を算出した。
吸湿性ポリマーの吸湿率(%)=(加工後の布帛吸湿率−加工前の布帛吸湿率)×100/吸湿性ポリマーの固着率
【0049】
(6)繊維断面本数比
布帛の製織又は製編方向に対して垂直方向に切断した。切断した測定試料に対して日立製の金属蒸着装置(商品名E1010)を用いて金属蒸着した後、その試料を日立製の走査型電子顕微鏡(商品名S−3500)に装着し、30倍〜100倍の倍率で写真撮影した。その顕微鏡写真を図1から図5に示したように、中心線1に対して表面2側と裏面3側に2分割し、中心線1から表面2に至るまでの範囲である表層と中心線1から裏面3に至るまでの範囲である裏層にそれぞれ含まれる繊維本数を数えて、その繊維本数を繊維断面本数とした。繊維断面本数比の算出式を下式に示す。
繊維断面本数比=(裏層の繊維断面本数)/(表層の繊維断面本数)
【0050】
(7)布帛の表面温度降下
吸湿性ポリマーを固着させた布帛(A)と、吸湿性ポリマーを固着させる前の布帛(B)から25cm×25cmの正方形状の試片を角切り取り、温度が40℃で相対湿度80%に設定された恒温恒湿室内に吊り下げ、3時間静置した。その後、35℃で相対湿度70%に恒温恒湿室の温湿度設定条件を変更し、恒温恒湿室の温湿度表示が35℃で相対湿度70%に達したところで恒温恒湿室に固定したサーモグラフィーカメラ(NEC AVIO赤外線テクノロジー(株)製、型番:TH7102MX)にて布帛(A)と、布帛(B)それぞれの表面温度を測定した。布帛の表面温度降下量は下式で算出した。
布帛の表面温度降下量=(B)の表面温度−(A)の表面温度
【0051】
(8)着座時の涼しさ
表面に人が接するようにカーシートに本発明の布帛を張り合わせ、そのカーシートを夏場の車内を想定した40℃で相対湿度80%に設定した恒温恒湿室内に設置し、被験者がそのカーシートに5分間着座した後、25℃で相対湿度40%に温湿度設定条件を変更し、さらに3分間着座後のシート表面の涼しさを官能評価した。10人の被験者に評価してもらい、涼しいと感じた人が、8人以上を「非常に良好」、4〜7人を「可」、3人以下を「劣る」でそれぞれ表示した。
【0052】
(9)風合い
本発明の布帛を用い、10人のパネラーにより布帛の触感を評価した。そして、各人の評価の合計点により、総合評価した。
<評価基準>
3点:ソフトタッチで、表面の平滑性も高い。
2点:標準的な柔らかさであり、表面の平滑性も標準である。
1点:粗硬感があり、表面にざらつきがある。
<総合評価>
非常に良好 :25〜30点
可 :17〜24点
劣る :10〜16点。
【0053】
(10)耐光堅牢度
紫外線オートフェードメーター(スガ試験機(株)製、型式:U48AUHB)を用い、ブラックパネル温度が83℃の条件で200時間照射した後、JIS L 0804(2010)に準じ、変退色用グレースケールにより変退色を1級〜5級で判定した。
【0054】
[参考例1]
(芯鞘複合延伸糸)
芯部がポリエチレンテレフタレート(PET)で鞘部がポリトリメチレンテレフタレート(PTT)であり、それぞれの質量比が3対7である84T48Fの芯鞘複合延伸糸を製造した。具体的には以下のとおりである。
上記の分率で溶融紡糸機に供給し、口金内で単芯の芯鞘構造に複合させ、紡糸温度280℃で紡糸し、第1ロール回転速度2700m/分、ロール温度40℃で紡出糸を予熱し、第2ロール回転速度4050m/分、ロール温度150℃で熱処理延伸し、巻取速度3700m/分で巻取を行い、84dtex−48f(フィラメント)の芯鞘複合延伸糸を得た。この芯鞘複合延伸糸の引張強度は3.3cN/dtexであり、伸度は45%であった。
【0055】
[参考例2]
(ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸)
84T36Fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、167T48Fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の製造方法について説明する。紡糸口金の大きさと形状はそれぞれの仮撚加工糸に適したものを採用し、紡糸温度284℃、紡糸速度3000m/分で溶融紡糸を行い、未延伸糸を巻き取った。次いで、第1ヒーター(非接触タイプ)温度230℃、オーバーフィード率0.9、第2ヒーター(非接触タイプ)温度200℃、延伸倍率1.69倍、加工速度600m/分で仮撚加工を行い、84dtex−36f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸と、167dtex−48f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を得た。84T36Fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の引張強度は3.6cN/dtex、伸度は23%であり、167T48Fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の引張強度は4.0cN/dtex、伸度は22%あった。
【0056】
[参考例3]
(ポリエチレンテレフタレート延伸糸)
84T48F(84dtex−48f(フィラメント))のポリエチレンテレフタレート延伸糸の製造方法について説明する。紡糸温度290℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸を行い、未延伸糸を巻き取った。次いで、延伸加工装置を用い、予熱ローラー温度90℃、熱処理ローラー温度150℃、延伸倍率3.01倍、加工速度970m/分で延伸を行い、84dtex−48fのポリエチレンテレフタレート延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は4.0cN/dtex、伸度は35%であった。
【0057】
[実施例1]
28ゲージのトリコット編機を用いた。4枚の筬を用いてL1(地組織となる)に参考例1の84dtex−48f(フィラメント)の芯鞘複合延伸糸をフルセットの糸配列で供給し、L2(地組織となる)に参考例2の84dtex−36f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸をフルセットの糸配列で供給し、L3、L4に参考例1の84dtex−48f(フィラメント)の芯鞘複合延伸糸を糸入糸抜1本交互の糸配列で供給し、機上コースが42C/2.54cmとなる密度で下記組織1の形態で生機を製編した。
【0058】
(組織1)(a群の組織)
L1:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、1−2/1−0(糸通し:フルセット)
L2:84dtex−36f(PET仮撚加工糸)、3−4/1−0(糸通し:フルセット)
L3:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、2−3/2−1 1−0/1−2(糸通し:糸入糸抜1本交互)
L4:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、1−0/1−2 2−3/2−1(糸通し:糸入糸抜1本交互)
【0059】
得られた経編地を液流染色機を用いて、染料として“Dianix”(登録商標、以下同じ) KIS−U 0.24%owf、“Dianix” AM−2R 0.11%owf、“Dianix” GL−FS 0.24%owf、耐光剤としてCiba社製の商品名fast−P 1%owfを用い、室温から130℃の染色温度まで昇温速度1℃で昇温し、染色温度130℃で25分間染色した。
その後、上記のように染色した経編地を下記の処方1の処理液に浸漬して吸湿性ポリマーを含浸後、ピックアップ率が90%になるように布帛をマングルで絞り、乾燥機中で120℃、2分間の条件で乾燥させた。
【0060】
(処方1)
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(商品名:グラセットT505、メーカー:北広ケミカル(株)):120g/L
・架橋剤として「数平均重合度23のポリエチレングリコール」のジメタクリレート(商品名:グラセットT303 メーカー: 北広ケミカル(株)):120g/L)
・重合開始剤として過硫酸アンモニウム(メーカー:ナカライテスク(株)):5g/L
・水
【0061】
上記のように染色した経編地に吸湿性ポリマーを含浸して乾燥後、105℃に加熱した常圧スチーマーで10分間処理し、湯で洗った後に乾燥した。次いで、その乾燥後のものをさらに乾燥機で160℃で1分間乾燥して、目付310g/m、吸湿性ポリマーの固着率が7.3%、布帛の吸湿率が2.4%、吸湿性ポリマーの吸湿率が32.8%である実施例1の繊維構造体を得た。
【0062】
この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。図1はその電子顕微鏡写真(50倍)である。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は235本、裏層の繊維断面本数は850本であり、繊維断面本数比は3.62であった。さらに、編物の繊維に吸湿性ポリマーが固着していることが観察できた。
【0063】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が2.1℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「非常に良好」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が非常に優れていた。
【0064】
[実施例2]
28ゲージのトリコット編機を用い、4枚の筬を用いてL1(地組織)に参考例2の167dtex−48f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸をフルセットの糸配列で供給し、またL2、L3に参考例1の84dtex−48f(フィラメント)の芯鞘複合延伸糸を糸入糸抜1本交互の糸配列で供給し、機上コースが50C/2.54cmの密度で、下記組織2の形態の編物を製造した。
【0065】
(組織2)(a群の組織)
L1:167dtex−48f(PET仮撚加工糸)、1−0/3−4(糸通し:フルセット)
L2:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、2−3/2−1 1−0/1−2(糸通し:糸入糸抜1本交互)
L3:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、1−0/1−2 2−3/2−1(糸通し:糸入糸抜1本交互)
【0066】
その後、上記編物を実施例1と同様の方法で染色したのち吸湿性ポリマーを固着させ、目付275g/m、吸湿性ポリマーの固着率が12.3%、布帛の吸湿率が3.0%、吸湿性ポリマーの吸湿率が24.3%である実施例2の繊維構造体を得た。
【0067】
この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。図2はその電子顕微鏡写真(100倍)である。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は121本、裏層の繊維断面本数は485本であり、繊維断面本数比は4.01であった。さらに、編物の地組織に吸湿性ポリマーが多く固着していることが観察できた。
【0068】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が1.9℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「非常に良好」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が非常に優れていた。
【0069】
[実施例3]
28ゲージのトリコット編機を用い、3枚の筬を用いてL1(地組織)、L2(地組織)に参考例1の84dtex−48f(フィラメント)の芯鞘複合延伸糸をフルセットの糸配列で供給し、L3に参考例2の84dtex−36f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸をフルセットの糸配列で供給し、機上コースが64C/2.54cmの密度で下記組織3の形態で生機を製編した。
【0070】
(組織3)(a群の組織)
L1:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、2−3/1−0(糸通し:フルセット)
L2:84dtex−48f(PET/PTT芯鞘複合延伸糸)、1−0/1−2(糸通し:フルセット)
L3:84dtex−36f(PET仮撚加工糸)、1−0/3−4(糸通し:フルセット)
【0071】
次いで、上記編物を実施例1と同様の方法で染色し、その後、起毛機にて起毛加工を実施した布帛に実施例1と同様の方法で吸湿性ポリマーを固着させ、目付330g/m、吸湿性ポリマーの固着率が12.5%、布帛の吸湿率が3.0%、吸湿性ポリマーの吸湿率が24.0%である実施例3の繊維構造体を得た。
【0072】
この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。図3はその電子顕微鏡写真(50倍)である。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は220本、裏層の繊維断面本数は1380本であり、繊維断面本数比は6.27であった。さらに、編物の地組織に吸湿性ポリマーが固着していることが観察できた。
【0073】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が2.3℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「非常に良好」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が非常に優れていた。
【0074】
[実施例4]
28ゲージのトリコット編機を用い、4枚の筬を用いてL1(地組織)、L3、L4に、参考例3の84dtex−48f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート延伸糸を用いた以外は実施例1と同様の条件で下記組織4の形態で生機を製編した。
【0075】
(組織4) (a群の組織)
L1:84dtex−48f(PET延伸糸)、1−2/1−0(糸通し:フルセット)
L2:84dtex−36f(PET仮撚加工糸)、3−4/1−0(糸通し:フルセット)
L3:84dtex−48f(PET延伸糸)、2−3/2−1 1−0/1−2(糸通し:糸入糸抜1本交互)
L4:84dtex−48f(PET延伸糸)、1−0/1−2 2−3/2−1(糸通し:糸入糸抜1本交互)
【0076】
次いで、上記編物を実施例1と同様の方法で染色したのち吸湿性ポリマーを固着させ、目付318g/m、吸湿性ポリマーの固着率が7.0%、布帛の吸湿率が2.3%、吸湿性ポリマーの吸湿率が32.8%である実施例4の繊維構造体を得た。この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は245本、裏層の繊維断面本数は854本であり、繊維断面本数比は3.49であった。
【0077】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が2.0℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「可」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が優れていた。
【0078】
[実施例5]
28ゲージのトリコット編機を用い、3枚の筬を用いてL1(地組織)、L2(地組織)に参考例3の84dtex−48f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート延伸糸を用いた以外は実施例3と同様の条件で下記組織5の形態で生機を製編した。
【0079】
(組織5) a群
L1:84dtex−48f(PET延伸糸)、2−3/1−0(糸通し:フルセット)
L2:84dtex−48f(PET延伸糸)、1−0/1−2(糸通し:フルセット)
L3:84dtex−36f(PET仮撚加工糸)、1−0/3−4(糸通し:フルセット)
【0080】
次いで、上記編物を実施例1と同様の方法で染色し、その後、起毛機にて起毛加工を実施した布帛に実施例1と同様の方法で吸湿性ポリマーを固着させ、目付340g/m、吸湿性ポリマーの固着率が12.6%、布帛の吸湿率が2.9%、吸湿性ポリマーの吸湿率が23.0%である実施例5の繊維構造体を得た。この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は231本、裏層の繊維断面本数は1417本であり、繊維断面本数比は6.13であった。
【0081】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が2.4℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「可」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が優れていた。
【0082】
〔実施例6〕
28ゲージの両面丸編機を使用した。裏地(地組織)は84dtex−72f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を供給し、表地は参考例2の84dtex−36f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を供給し、表地を柄組織、裏地は平編組織とし、機上コースが38コース/2.54cmの生機を製編した。この編物の構造はb群に属する。
【0083】
次いで、上記編物を実施例1と同様の方法で染色したのち吸湿性ポリマーを固着させ、目付232g/m、吸湿性ポリマーの固着率が8.6%、布帛の吸湿率が2.0%、吸湿性ポリマーの吸湿率が23.2%である実施例6の繊維構造体を得た。この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は161本、裏層の繊維断面本数は322本であり、繊維断面本数比は2.00であった。
【0084】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が2.6℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「可」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が優れていた。
【0085】
〔実施例7〕
167dtex−72f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート延伸糸を経糸と緯糸に用い、織密度が地組織及びパイルともに経糸は250cm/cm、緯糸は220本/cmの二重織物を製織した。
得られた織物を実施例1と同条件で染色した後、剪毛機にてパイル長さを1.8mmとしたベルベット織物を作成した。その後、上記織物に実施例1と同様の方法で吸湿性ポリマーを固着させ、吸湿性ポリマーの固着率が10.5%、布帛の吸湿率が3.5%、吸湿性ポリマーの吸湿率が33.3%である実施例7の繊維構造体を得た。この織物の構造はc群に属する。
【0086】
この繊維構造体を製織方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は230本、裏層の繊維断面本数は980本であり、繊維断面本数比は4.26であった。
【0087】
性能評価の結果を表1に示す。編物表面温度降下が2.3℃、着座時の涼しさが「非常に良好」、風合いが「非常に良好」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が優れていた。
【0088】
[比較例1]
実施例6において表地と裏地の組織を変え、28ゲージの両面丸編機にて表地は84dtex−72f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を供給し、裏地(地組織)は参考例2の84dtex−36f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を供給し、表地は平編組織、裏地は柄組織とし、機上コースが38コース/2.54cmの生機を製編した。
【0089】
次いで、上記編物を実施例1と同様の方法で染色したのち吸湿性ポリマーを固着させ、目付232g/m、吸湿性ポリマーの固着率が8.6%、布帛の吸湿率が2.0%、吸湿性ポリマーの吸湿率が23.2%である比較例1の繊維構造体を得た。
【0090】
この繊維構造体を製編方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。図4はその電子顕微鏡写真(50倍)である。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は319本、裏層の繊維断面本数は162本であり、裏層の繊維断面本数/表層の繊維断面本数(繊維断面本数比)は0.51であった。さらに、編物の地組織に吸湿性ポリマーが固着していることが観察できた。
【0091】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が0.5℃、着座時の涼しさが「劣る」、風合いが「可」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が劣っていた。
【0092】
[比較例2]
ウォータージェットルーム織機を用い、タテ糸とヨコ糸に、参考例2の167dtex−48f(フィラメント)のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を供給し、織上密度がタテ128本/2.54cm、ヨコ81本/2.54cmであるツイル組織で製織した。
【0093】
次いで、上記織物を実施例1と同様の方法で染色したのち吸湿性ポリマーを固着させ、目付197g/m、吸湿性ポリマーの固着率が8.3%、布帛の吸湿率が1.9%、吸湿性ポリマーの吸湿率が22.8%である比較例2の繊維構造体を得た。
【0094】
この繊維構造体を製織方向に対して垂直方向に切断し、電子顕微鏡で観察した。図5はその電子顕微鏡写真(150倍)である。その観察結果によると、表層の繊維断面本数は107本、裏層の繊維断面本数は133本であり、繊維断面本数比は1.24であった。また織物の地組織に吸湿性ポリマーが固着していた。
【0095】
性能評価の結果を表1に示す。布帛の表面温度降下が1.3℃、着座時の涼しさが「劣る」、風合いが「可」、耐光堅牢度が4級であり、人が着座した時の快適性が劣っていた。
【0096】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5