特許第6007900号(P6007900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007900
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】シート状物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20161006BHJP
   D06N 7/06 20060101ALI20161006BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20161006BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   D06M13/402
   D06N7/06
   D06M15/643
   D06M15/564
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-510814(P2013-510814)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2012077767
(87)【国際公開番号】WO2013065608
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-238499(P2011-238499)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-109183(P2012-109183)
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】小出 現
(72)【発明者】
【氏名】中井 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】松崎 行博
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/114956(WO,A1)
【文献】 特開2011−069019(JP,A)
【文献】 特開2007−119749(JP,A)
【文献】 特開2011−190560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/402
D06M 15/564
D06M 15/643
D06N 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維直径0.3〜7μmの極細繊維を含んでなる繊維質基材の内部に水分散型ポリウレタンを含有しており、
上記の水分散型ポリウレタンの一部は上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有しており、
この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリウレタンは、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンを含有していることを特徴とする、シート状物。
【請求項2】
上記のアミド結合を有する物質は、分子量が100〜500であることを特徴とする、請求項1記載のシート状物。
【請求項3】
上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンが、ポリカーボネート系ポリウレタン、またはエーテル系ポリウレタンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシート状物。
【請求項4】
上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンおよび/または上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンが、シリコーンを含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のシート状物。
【請求項5】
上記のシリコーンが造膜性シリコーンであることを特徴とする、請求項4記載のシート状物。
【請求項6】
極細繊維発現型繊維を含んでなる繊維質基材に、発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液を付与し、次いで極細繊維発現型繊維から平均単繊維直径0.3〜7μmの極細繊維を発現させた後に、水分散型のポリカーボネート系ポリウレタン液を付与することを特徴とする、シート状物の製造方法。
【請求項7】
上記の発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液がポリカーボネート系ポリウレタン、またはエーテル系ポリウレタン液であることを特徴とする、請求項6記載のシート状物の製造方法。
【請求項8】
上記の発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液が無機粒子を含有することを特徴とする、請求項6または7に記載のシート状物の製造方法。
【請求項9】
上記の無機粒子が多孔質シリカであることを特徴とする、請求項8記載のシート状物の製造方法。
【請求項10】
上記の発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液および/または極細繊維を発現させた後に付与する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液が、シリコーン水分散液を含有することを特徴とする、請求項6から9のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
【請求項11】
上記のシリコーン水分散液が造膜性シリコーン水分散液であることを特徴とする、請求項10記載のシート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物、特に製造工程に有機溶剤を使用しない環境に配慮した皮革様シート状物において、柔軟な風合いとシワにならない良好なシワ回復性を両立させ、かつ高い耐久性を有するシート状物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として繊維質基材とポリウレタンからなる皮革様シート状物は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。とりわけ、ポリエステル系繊維質基材を用いた皮革様シート状物は、耐光性に優れているため、衣料をはじめ、椅子張りや自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。
【0003】
かかる皮革様シート状物の製造には、繊維質基材にポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめる工程と、この工程で得られた繊維質基材をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤水溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程との組み合わせが、一般的に採用されている。かかるポリウレタンの溶媒である有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶剤が用いられている。しかしながら、一般的に有機溶剤の使用は、人体や環境への影響を配慮する必要があることから、シート状物の製造に際しては有機溶剤を使用しない手法が強く求められている。
【0004】
その具体的な解決手段として、例えば、この有機溶剤タイプのポリウレタンに代えて、水中にポリウレタンを分散させる水分散型ポリウレタンを用いる方法が検討されている。しかしながら、繊維質基材に水分散型ポリウレタンを含浸し付与したシート状物は、有機溶剤タイプのポリウレタンを含浸し付与したシート状物に比べて、風合いの硬さにおいて課題がある。
【0005】
即ち、従来の有機溶剤タイプのポリウレタンを用いる場合は、繊維質基材に含浸させた後、一般的には水中に浸漬する湿式凝固方式により凝固させるため、ポリウレタンは有機溶剤と水との置換によって多孔構造となる。これにより、ポリウレタンは繊維質基材の繊維の交絡部分を強く把持することがなく、シート状物の風合いは柔軟になる。ところが、水分散型ポリウレタンを用いる場合は、繊維質基材に含浸後の凝固は一般的には加熱乾燥する乾熱凝固方式となるため、ポリウレタンは無孔構造となる。この結果、ポリウレタンは繊維質基材の繊維の交絡部分を強く把持するので、シート状物の風合いは硬くなる。
【0006】
そこで、水分散型ポリウレタンを用いる方法においては、柔軟な水分散型ポリウレタンを適用して、ポリウレタンの繊維交絡点の把持力を弱め、風合いを柔軟化する方法が種々検討されている。
【0007】
例えば、繊維質基材に付与する水分散型ポリウレタンとして、感熱ゲル化性があり、かつ温度50℃で乾燥して得られる厚さ100μmのフィルムの90℃の温度における弾性率が2.0×10〜5.0×10dyn/cm、160℃における弾性率が1.0×10dyn/cm以上、α分散の温度(Tα)が−30℃以下であるポリウレタンを用いることが提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案の方法により柔軟な風合いを有するシート状物が得られるものの、この提案のように柔軟なポリウレタンを用いるとシート状物の耐摩耗性は悪化し、さらに研削して起毛処理する際に使用するサンドペーパー等が容易に目詰まりすることから、良好な立毛品位を得ることは困難であり、生産性も劣ることになるという課題がある。
【0008】
また、ポリウレタンにシリコーンを添加して、繊維とポリウレタンの滑り性を上げる方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案の場合はシート状物の風合いは柔軟になるが、引張り後の残留伸度が大きくなり、元の形状に戻りにくくなるという課題がある。
【0009】
さらに、柔軟な水分散型ポリウレタンを繊維質基材に付与し、その後、繊維質基材の繊維を極細化する工程の後に、再度ポリウレタンを付与する方法が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案の方法は、繊維質基材の繊維交絡点を柔軟なポリウレタンが把持することで、柔軟性を発現し、後から付与するポリウレタンでシート状物の耐久性を発現するものであるが、繊維質基材内部にポリウレタンが高密度で付与されるため、シート状物は重くなる。また、水分散型ポリウレタンを繊維質基材に付与し、その後、繊維質基材の繊維を極細化する工程を行うため、繊維の極細化処理の効率が低く、シート厚みが厚いものや、ポリウレタンを多量に含有する場合は繊維を極細化しにくくなるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4074377号公報
【特許文献2】特開2008−174868号公報
【特許文献3】特許第4216111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、従来技術において、有機溶剤を使用しない工程で製造されるシート状物に関して、柔軟な風合いと高い耐久性を有するシート状物とその製造方法はこれまで得られていない。
そこで本発明の目的は、シート状物、特に皮革様シート状物において、柔軟な風合いと高い耐久性を有し、さらに、良好なシワ回復性を発現できる、シート状物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のシート状物を製造する方法において、製造工程に有機溶剤を使用しない、環境に配慮したシート状物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を達成せんとするものであって、本発明のシート状物は、平均単繊維直径0.3〜7μmの極細繊維を含んでなる繊維質基材の内部に水分散型ポリウレタンを含有しており、上記の水分散型ポリウレタンの一部は上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有しており、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリウレタンは、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンを含有していることを特徴とする。
【0013】
ここで上記の「極細繊維束の外周部」とは、極細繊維束の太さ方向での断面において、外周に沿って存在する極細単繊維の中心同士を直線で結んでできる形状を指す。また「極細繊維束の外周部に偏在して付着する」とは、上記の外周部で囲まれた面積に対し、この外周部よりも極細繊維束内側に入り込んで付着している水分散型ポリウレタンの面積の割合が20%以下である状態をいう。
【0014】
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記のアミド結合を有する物質は、分子量が100〜500である。
【0015】
また、本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンは、ポリカーボネート系ポリウレタン、またはエーテル系ポリウレタンである。
【0016】
また、本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンおよび/または前記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは、シリコーンを含有しており、より好ましくは、そのシリコーンは造膜性シリコーンである。
【0017】
また、本発明のシート状物の製造方法は、極細繊維発現型繊維を含んでなる繊維質基材に、発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液を付与し、次いで極細繊維発現型繊維から平均単繊維直径0.3〜7μmの極細繊維を発現させた後に、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与することを特徴とする。
【0018】
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の極細繊維を発現させる前に付与する発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液は、ポリカーボネート系ポリウレタン、またはエーテル系ポリウレタン液であり、より好ましくは無機粒子を含有し、さらに好ましくはその無機粒子は多孔質シリカである。
【0019】
また、本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液および/または前記の極細繊維を発現させた後に付与する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液は、シリコーン水分散液を含有し、より好ましくは、そのシリコーン水分散液は造膜性シリコーン水分散液である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造工程に有機溶剤を使用しない、環境に配慮した製造方法により得られるシート状物において、柔軟な風合いと、折り畳み後、拡げた際にシワにならない良好なシワ回復性とを備えており、しかも、自動車用途等の高い耐久性を必要とする用途にも適用可能な耐久性を有するシート状物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシート状物は、平均単繊維直径0.3〜7μmの極細繊維を含んでなる繊維質基材の内部に水分散型ポリウレタンを含有しており、この水分散型ポリウレタンの一部は上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有しており、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリウレタンは、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンを含有してなる、シート状物である。
【0022】
本発明で用いられる繊維質基材を構成する繊維としては、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、特定のものに限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート或いはポリ乳酸などのポリエステル、6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド、ポリアクリル、ポリエチレンやポリプロピレン、および熱可塑性セルロースなどを挙げることができる。中でも、強度、寸法安定性および耐光性の観点から、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、繊維質基材は、互いに異なる素材の繊維が混合して構成されていてもよい。
【0023】
上記の繊維質基材を構成する繊維の横断面形状は、丸断面でよいが、楕円、扁平および三角などの多角形や、扇形および十字型などの異形断面のものを採用してもよい。この繊維は極細繊維からなり、その平均単繊維直径は、0.3〜7μmである。この極細繊維の平均単繊維直径を7μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは5μm以下とすることにより、優れた柔軟性や立毛品位のシート状物を得ることができる。一方、この極細繊維の平均単繊維直径を0.3μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることにより、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など立毛処理時の束状繊維の分散性とさばけ易さに優れる。
【0024】
上記の極細繊維からなる繊維質基材の形態としては、織物、編物および不織布等を採用することができる。中でも、表面起毛処理した際のシート状物の表面品位が良好であることから、不織布が好ましく用いられる。この不織布は、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位の点では短繊維不織布が好ましく用いられる。
【0025】
上記の短繊維不織布に用いられる短繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましく、30〜80mmであるとより好ましい。この短繊維の繊維長を25mm以上とすることにより、絡合により耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。また、この短繊維の繊維長を90mm以下とすることにより、より風合いや品位に優れたシート状物を得ることができる。
【0026】
上記の繊維質基材が不織布の場合、その不織布は極細繊維からなる束(極細繊維束)が絡合してなる構造を有するものであることが好ましい態様である。極細繊維が束の状態で絡合していることによって、シート状物の強度が向上する。かかる態様の不織布は、後述するように、極細繊維発現型繊維同士をあらかじめ絡合した後に極細繊維を発現させることによって得ることができる。
【0027】
上記の極細繊維あるいはその極細繊維束が不織布を構成する場合、強度を向上させるなどの目的で、その不織布の内部に織物や編物を挿入してもよい。かかる織物や編物を構成する繊維の平均単繊維直径としては、0.3〜10μm程度が好ましい。
【0028】
上記の繊維質基材の目付は、低すぎるとシート状物の引張強力や引裂強力等の物理特性が弱くなり、高すぎるとシート状物の風合いは硬くなることから、50〜2000g/mであることが好ましい。
また、この繊維質基材の厚みは、薄すぎるとシート状物の引張強力や引裂強力等の物理特性が弱くなり、厚すぎるとシート状物の風合いは硬くなることから、0.1〜5mmであることが好ましい。
【0029】
本発明で用いられるポリウレタンは、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられ、エーテル系ポリウレタンとは、ポリウレタンを構成するポリマージオールの70質量%以上がエーテル系であることを意味し、ポリカーボネート系ポリウレタンとは、ポリウレタンを構成するポリマージオールの70質量%以上がポリカーボネート系であることを意味する。エーテル系ポリウレタンは、一般的には柔軟で、耐加水分解性は良好であるが、耐光性と耐熱性は劣るポリウレタンであり、ポリカーボネート系ポリウレタンは、一般的にはエーテル系ポリウレタンより硬く、耐加水分解性、耐光性および耐熱性のような耐久性は良好なポリウレタンであるが、それぞれの良好な特徴に影響を与えない範囲で、異なる系統のポリマージオールを共重合していてもよい。
【0030】
エーテル系ポリマージオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
ポリカーボネート系ポリマージオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいは、ホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
【0031】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール或いは1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール或いは2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれでも良い。
【0032】
ポリマージオールの数平均分子量は、500〜4000であることが好ましい。数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、風合いが硬くなるのを防ぐことができる。また、数平均分子量を4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタンとしての強度を維持することができる。
【0033】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0034】
鎖伸長剤としては、エチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、或いはエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、鎖伸長剤として、ポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることもできる。
【0035】
ポリウレタンには、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性等を向上させる目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、ポリウレタンに対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、或いはシラノール基などを有する化合物を好適に用いることができる。
【0036】
本発明で用いられるポリウレタンは、分子構造内に親水性基を有していることが好ましい。分子構造内に親水性基を有することにより、水分散型のポリウレタンとしての分散・安定性を向上させることができる。
【0037】
上記の親水性基としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の親水性基の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の親水性基の組み合わせの、いずれの親水性基も採用することができる。なかでも、光による黄変や中和剤による弊害の懸念のないノニオン系の親水性基が特に好ましく用いられる。
【0038】
すなわち、上記の親水性基がアニオン系の場合は中和剤が必要となるが、例えば、中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン或いはジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜・乾燥時の熱によってアミンが発生・揮発し、系外へ放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために、揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。また上記のアミンが、加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留している場合は、製品の焼却時等にこのアミンが環境へ排出されることも考えられる。
これに対し、上記の親水性基がノニオン系の場合は、中和剤を使用しないためアミン回収装置を導入する必要はなく、シート状物中へのアミンの残留の心配もない。
【0039】
また、上記の中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなり、加水分解による劣化のおそれがあるが、ノニオン系の親水性基の場合は中和剤を使用しないため、ポリウレタンの加水分解による劣化を心配する必要もない。
【0040】
本発明では、繊維質基材の内部に水分散型ポリウレタンを含有しており、この水分散型ポリウレタンの一部は上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有しており、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリウレタンは水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する。
【0041】
上記のアミド結合を有する物質とは、後述するシート状物の製造方法における有機系発泡剤の分解物であり、例えば、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](例えば、和光純薬工業社製“VA−086”)や、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)―2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(例えば、和光純薬工業社製“VA−080”)等の水溶性発泡剤の分解物等が挙げられる。
発泡剤の分解物であるアミド結合を有する物質を水分散型ポリウレタンが含有するということは、水分散型ポリウレタンは発泡剤が分解して生成したガスによって発泡したことを示すものである。
【0042】
上記のアミド結合を有する物質の分子量は、低すぎると発泡の際の加熱によって気化するため、工程での異臭や作業者の安全、さらには環境流出等の課題があり、分子量が高すぎると、水分散型ポリウレタンへの添加質量に対するガスの発生量の割合が少なく、発泡効果が低くなることから、この物質の分子量は好ましくは100〜500であり、より好ましくは150〜450である。
【0043】
上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンに含有される、アミド結合を有する物質の含有量は、ポリウレタン固形分対比で0.5〜20質量%であることが好ましい。アミド結合を有する物質は発泡剤の分解物であるので、その含有量を0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上とすることにより、発泡によるシート状物の風合いは柔軟化の効果を効果的に得ることができる。一方、アミド結合を有する物質の含有量を20質量%以下、より好ましくは15質量%以下とすることにより、過度の発泡によるシート状物の耐摩耗性の低下を抑えることができる。
【0044】
上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着し、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの種類としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、またはエーテル系ポリウレタンであることが好ましい。
【0045】
上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着し、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの種類が、水分散型エーテル系ポリウレタンの場合は、繊維交絡点の拘束力が弱まるので、シート状物の風合いを柔軟化できる。ただし、繊維質基材の内部に水分散型エーテル系ポリウレタンのみ含有する場合は、良好なシワ回復性が発現できず、耐光性や耐熱性のような耐久性は発現しにくい。
本発明では、上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの種類が、水分散型エーテル系ポリウレタンの場合は、この水分散型エーテル系ポリウレタンで繊維質基材の繊維交絡点を把持してシート状物の風合いを柔軟化し、さらにこの極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリウレタンが水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンを含有することにより、良好なシワ回復性と、耐光性および耐熱性のような耐久性を発現するものである。
【0046】
一方、上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着し、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの種類が、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの場合は、シワ回復性や、耐光性および耐熱性のような耐久性を発現でき、さらに後述する通り、このアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは極細繊維束の外周部に偏在して付着することで、シート状物の風合いを柔軟化でき、良好なシワ回復性を発現できる。
【0047】
もし、上記の繊維質基材の内部にアミド結合を有する物質を含有しない水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンのみ含有する場合は、シワ回復性や、耐光性および耐熱性のような耐久性は発現できるが、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは極細繊維束を直接把持するように付着するため、シート状物の風合いは硬くなって、実用に耐えない。
本発明では、上記の極細繊維からなる束の外周部に偏在して付着し、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの種類が、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの場合は、このアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンによって繊維質基材の繊維交絡点を直接把持しない付着構造としてシート状物の風合いを柔軟化し、さらに付与された、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンと合わせて良好なシワ回復性を発現するとともに、耐光性および耐熱性のような良好な耐久性を発現するものである。
【0048】
本発明で繊維質基材の内部に含有される、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンと、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは、特定の含有量に限定されないが、繊維質基材を形成する極細繊維の質量に対し、また、繊維質基材が極細繊維あるいはその極細繊維束からなる不織布に補強用の織物や編物が挿入されたものである場合はそれらの合計質量に対し、10〜50質量%を含有することが好ましく、15〜40質量%を含有するとより好ましい。ポリウレタンの含有量は、少な過ぎるとシート状物の引張強力、引裂強力および耐摩耗性等が低下し、多すぎるとシート状物の風合いが硬くなり、さらに目付が重くなるからである。
【0049】
また、繊維質基材の内部に含有される、水分散型ポリウレタン全体の質量(U)や、極細繊維束の外周部に偏在して付着し、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの質量(U1)と、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの質量(U2)は、特定の値に限定されないが、繊維質基材に対し、ポリウレタン全体が10〜50質量%であり、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンが1〜35質量%であり、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンが1〜40質量%であると好ましい。
また、水分散型ポリウレタン全体の質量(U)に対する、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンの質量(U1)と、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの質量(U2)のそれぞれの比率は、(U1)/(U)が1〜90%であり、(U2)/(U)が1〜99%であると好ましい。
また、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンの質量(U1)とこの極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの質量(U2)との比率は、特定の値に限定されないが、好ましくは(U1)/(U2)=1/0.1〜1/10であり、より好ましくは(U1)/(U2)=1/0.5〜1/5である。
上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着したアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの質量(U1)の比率が高く、上記のポリカーボネート系ポリウレタンの質量(U2)の比率が低すぎると、シートのシワ回復性や耐久性は低下し、極細繊維束の外周部に偏在して付着したアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンの質量(U1)の質量比率が低く、上記のポリカーボネート系ポリウレタンの質量(U2)の比率が高すぎると、シートの柔軟性は低下するからである。
【0050】
なお、本発明における上記の「繊維質基材の内部」とは、一方の表面から他方の表面までの範囲のことをいうが、繊維質基材が立毛層を有する場合はその立毛層を含む範囲をいう。例えば、一方の表面が立毛層を有する場合は、繊維質基材を断面から見た際の、その立毛層から他方の表面までの範囲のことをいい、両表面がともに立毛層を有する場合は、繊維質基材を断面から見た際の、上面立毛層から下面立毛層までの範囲のことを言う。
【0051】
本発明で用いられる、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンは、発泡剤により発泡構造化したものを採用する。発泡剤とは、加熱すると分解して窒素ガスや炭酸ガス等を発生する添加剤のことをいう。発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液を用いることにより、繊維質基材に付与された水分散型ポリウレタン液は加熱された際に発泡し、得られた水分散型ポリウレタンはこの発泡に由来する多孔構造となる。水分散型ポリウレタンを多孔構造とすることにより、このポリウレタンを含有するシート状物の風合いは柔軟となる。これは、このシート状物内の繊維とポリウレタンとの接着面積が少なくなることにより、繊維の拘束力が弱くなるためである。また、上記の水分散型ポリウレタンは、発泡剤が発泡した後に残る残差として、アミド結合を有する物質を含有することとなる。
【0052】
上記の水分散型ポリウレタン液に添加する発泡剤としては、例えば、アゾイソブチルニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)A”)、アゾジカルボンアミド(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)CAP”)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)S”)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(例えば、永和化成工業社製“セルラーGX”)、或いは2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](例えば、和光純薬工業社製“VA−086”)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)―2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(例えば、和光純薬工業社製“VA−080”)等の有機系発泡剤や、炭酸水素ナトリウム(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)266”)等の無機系発泡剤を用いることができるが、中でもアミド結合を有する発泡剤は水溶性であり、水分散型ポリウレタン液に均一に溶解することができるため、好ましい。
【0053】
本発明で用いられる、上記の水分散型ポリウレタンの一部は、極細繊維束の外周部に偏在して付着するとともに、アミド結合を有する物質を含有している。アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンが、極細繊維束の外周部に偏在して付着し、極細繊維束の外周部よりも内側に付着しないことにより、繊維の拘束力が弱まってシート状物の風合いは柔軟になる。
【0054】
上記のアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンは柔軟であるため、この水分散型ポリウレタンを付与して、海島繊維の海成分を脱海したのち、染色等の工程を施すと、この工程での物理的な圧縮・揉みにより、極細繊維束の外周部よりも内側に上記の水分散型ポリウレタンの一部が付着することがある。しかし本発明では前述のとおり、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着させる水分散型ポリウレタンを発泡剤により多孔構造化しているので、このアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンと極細繊維束との間の空隙を広く確保でき、明確に、この水分散型ポリウレタンが極細繊維束の外周部に偏在して付着しているものである。
【0055】
本発明において上記の「極細繊維束の外周部」とは、極細繊維束の太さ方向での断面において、外周に沿って存在する極細単繊維の中心同士を直線で結んでできる形状を指す。ただし、極細繊維あるいはその極細繊維束からなる不織布の他に補強用の織物や編物が挿入されているような場合には、当該補強用の織編物の繊維は対象からは除外される。また「極細繊維束の外周部に水分散型ポリウレタンが偏在して付着している」とは、上記の外周部で囲まれた面積に対し、この外周部よりも極細繊維束内側に上記の水分散型ポリウレタンが入り込んでいる面積の割合が20%以下である状態をいう。
【0056】
本発明で用いられる、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは、繊維質基材内部で多孔構造を形成しているアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンに付着している。この水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンのみに着目すると、上記のアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンと同様の多孔構造を繊維質基材内部で形成することとなるので、ポリウレタンとしては硬い水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンであっても、シート状物としては柔軟な風合いを発現できるものである。上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着した、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンと、この極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンとは、互いに混合せずに存在するものである。
【0057】
なお、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは、シート状物の風合いを柔軟にするためアミド結合を有する物質を含有したものであってもよいが、アミド結合を有する物質を含有しないものであると、シート状物の耐久性を良好にできて、より好ましい。
【0058】
本発明で用いられる上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンおよび/または上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外のポリカーボネート系ポリウレタンは、シリコーンを含有することが好ましい。ポリウレタンがシリコーンを含有することにより、ポリウレタンと繊維質基材の繊維との間の摩擦力を低下させ、シート状物の風合いをより柔軟にすることができる。また、起毛工程においてサンドペーパー等による研削を容易に行えることから、立毛長を長くすることができ、またサンドペーパーへの研削粉の目詰まりも発生しにくくなって操業性も良好となる。
【0059】
上記のポリウレタンに対するシリコーン含有量は、特定の値に限定されないが、ポリウレタン質量対比0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%である。このシリコーン含有量が少なすぎるとシート状物の柔軟化効果は不十分となり、多すぎるとシート状物において、ポリウレタンが繊維を把持する力が弱まることになり、耐摩耗性が低下するからである。
【0060】
上記のシリコーンとしては、ポリジメチルシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、或いはポリエーテル変性シリコーン等を用いることができ、中でも造膜性シリコーンが好ましく用いられる。造膜性シリコーンとは、加熱によって3次元架橋構造となって皮膜化し、水へ再分散ができなくなるシリコーンのことであり、造膜性があることによって造膜性シリコーン付与後にシートを洗浄や染色、洗濯等の水中での取り扱いや摩擦等の外的要因があったとしても、シートからのシリコーンの脱落が防止され、シートの柔軟性を保持することができる。
【0061】
また、造膜性シリコーン水分散液を含有する水分散型ポリウレタン液を繊維質基材に含浸した後、そのシートを、熱水および/またはアルカリ水溶液で処理して繊維を極細化する場合においては、シリコーンに造膜性があることによってシートの柔軟性を保持することができる。本発明において、「造膜性シリコーンが繊維の極細化処理後もシートに残存している」とは、極細化処理後のシートの重量実測値と理論計算値を比較し、その差が30%以内であることをいう。
【0062】
本発明で用いられる、上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する水分散型ポリウレタンと上記の極細繊維束の外周部に偏在して付着する部分以外の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンは、各種の添加剤、例えばカーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系、無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、セルロース粒子等の充填剤、或いはシリカや酸化チタン等の無機粒子などを、単独で或いは任意の組み合わせで含有していてもよい。
【0063】
本発明で得られるシート状物の厚みは、薄すぎるとシート状物の引張強力や引裂強力等の物理特性が弱くなり、厚すぎるとシート状物の風合いは硬くなることから、0.1〜5mmであることが好ましい。
【0064】
次に、本発明のシート状物の製造方法について述べる。本発明のシート状物の製造方法では、繊維質基材に特定の水分散型ポリウレタン液を付与し、次いで繊維質基材から極細繊維を発現させた後に、特定の水分散型ポリウレタン液を付与する。
【0065】
上記の極細繊維からなる繊維質基材の形態としては、織物、編物および不織布等を採用することができる。中でも、表面起毛処理した際のシート状物の表面品位が良好であることから、不織布が好ましく用いられる。不織布は、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位の点では短繊維不織布が好ましく用いられる。
【0066】
繊維質基材として用いられる不織布において、繊維あるいは繊維束を絡合させる方法としては、特定の方法に限定されず、例えばニードルパンチやウォータージェットパンチを採用することができる。
【0067】
繊維質基材の極細繊維を形成させる手段としては、極細繊維発現型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発現型繊維を用いることにより、極細繊維束が絡合した形態を安定して得ることができる。
【0068】
極細繊維発現型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって残存した島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、シート状物の柔軟性や風合いの観点からも好ましく用いられる。
【0069】
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがある。均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物の強度にも資する点からは、海島型複合繊維が好ましく用いられる。
【0070】
海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸、およびポリビニルアルコールなどを用いることができる。中でも、有機溶剤を使用せずに分解可能なアルカリ分解性の、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルやポリ乳酸や、熱水で海成分除去が可能なポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0071】
海島型繊維の海成分を溶出・除去する脱海処理は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、窄液することによって行うことができる。海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンの場合には、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることができる。また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができ、海成分がポリビニルアルコールの場合は熱水を用いることができる。
【0072】
海島型繊維を用いた場合の脱海処理は、繊維質基材への発泡剤を含有する水分散型ポリウレタンの付与後に行う。このポリウレタン付与前に脱海処理を行うと、極細繊維に直接ポリウレタンが密着する構造となって極細繊維を強く把持することから、シート状物の風合いは硬くなる。これに対し、発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン付与後に脱海処理を行うと、アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンと極細繊維間に、脱海された海成分に起因する空隙が生成し、水分散型ポリウレタンが極細繊維束の外周部に偏在して付着した構造となる。これにより、極細繊維を直接アミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンが把持しない構造となることから、シート状物の風合いは柔軟となる。さらに、水分散型ポリウレタンは、後述するが、発泡剤を含有していることにより、繊維質基材内部で多孔構造を形成している。海島繊維と水分散型ポリウレタンとの間に発泡剤の発泡による空隙が生成することで、脱海工程での海成分抽出溶媒の浸透性が向上して脱海効率が高くなり、目付の高い繊維質基材や、ポリウレタン付量の多いシートであっても、容易に十分な脱海が可能となる。
【0073】
また、本発明では、繊維質基材に発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液を付与し、次いで繊維質基材から極細繊維を発現させた後に、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与する。発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液がエーテル系ポリウレタン液である場合、発泡剤を含有する水分散型エーテル系ポリウレタン液を付与し、次いで極細繊維を発現させた後に水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与することにより、エーテル系ポリウレタンのみでは発現が困難な耐光性や耐熱性等の耐久性を発現することができ、良好な耐摩耗性をシート状物に付与することができる。
【0074】
また、発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液がポリカーボネート系ポリウレタン液である場合、発泡剤を含有する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与し、次いで極細繊維を発現させた後に水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与することにより、発泡剤を含有する水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンで発現する柔軟な風合いと耐光性や耐熱性等の耐久性を発現し、かつ極細繊維を発現後の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンによって緻密な表面外観と良好な耐摩耗性をシート状物に付与することができる。
【0075】
また、極細繊維を発現させる前に付与しているアミド結合を有する物質を含有する水分散型ポリウレタンは、後述するが、発泡剤を含有していることにより、繊維質基材内部に多孔構造を形成しており、そこに、極細繊維を発現させたのち水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液を付与することにより、このポリカーボネート系ポリウレタンは、アミド結合を有する物質を含有するポリウレタンの多孔構造に付着する。すなわち、極細繊維を発現させたのち付与されたポリカーボネート系ポリウレタンのみに着目すると、極細繊維を発現させる前に付与されたアミド結合を有する物質を含有するポリウレタンと同様の多孔構造を繊維質基材内部で形成することとなり、それによってポリウレタンとしては硬いポリカーボネート系ポリウレタンであってもシート状物としては柔軟な風合いを発現できる。
【0076】
本発明で用いられる、極細繊維を発現させる前に付与される発泡剤を含有するポリウレタン液と、極細繊維を発現させたのち付与されるポリカーボネート系ポリウレタン液は、水中に分散・安定化された水分散型のポリウレタン液を用いる。この水分散型ポリウレタンは、界面活性剤を用いて強制的に分散・安定化させる強制乳化型ポリウレタンと、ポリウレタン分子構造中に親水性構造を有し、界面活性剤が存在しなくても水中に分散・安定化する自己乳化型ポリウレタンとに分類されるが、本発明ではいずれを用いてもよい。
【0077】
上記の水分散型ポリウレタンの濃度(水分散型ポリウレタン液に対するポリウレタンの含有量)は、水分散型ポリウレタン液の貯蔵安定性の観点から、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。
【0078】
また、上記の水分散型ポリウレタン液は、貯蔵安定性や製膜性向上のために、水溶性有機溶剤を水分散型ポリウレタン液に対して40質量%以下含有していてもよいが、製膜環境の保全等の点から、その有機溶剤の含有量は1質量%以下とすることが好ましい。
【0079】
また、本発明で用いられる水分散型ポリウレタン液は、感熱凝固性を有するものが好ましい。感熱凝固性を有する水分散型ポリウレタン液を用いることにより、繊維質基材の厚み方向に均一にポリウレタンを付与することができる。感熱凝固性とは、水分散型ポリウレタン液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達すると水分散型ポリウレタン液の流動性が減少し、凝固する性質のことを言う。本発明のポリウレタン付きシート状物の製造においては、水分散型ポリウレタン液を繊維質基材に付与後、それを乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固、あるいはこれらの組み合わせにより凝固させ、乾燥することにより繊維質基材にポリウレタンを付与することができる。
【0080】
感熱凝固性を示さない水分散型ポリウレタン液を凝固させる方法としては、乾熱凝固が工業的な生産において現実的であるが、その場合、繊維質基材の表層にポリウレタンが集中するマイグレーション現象が発生し、ポリウレタン付きシート状物の風合いは硬化する傾向にある。
【0081】
水分散型ポリウレタン液の感熱凝固温度は、特定の温度に限定されないが、40〜90℃であることが好ましい。感熱凝固温度を40℃以上とすることにより、ポリウレタン液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへのポリウレタンの付着等を抑制することができる。また、感熱凝固温度を90℃以下とすることにより、繊維質基材中でのポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。感熱凝固温度は、より好ましくは50℃〜80℃である。
【0082】
感熱凝固温度を前記のとおりとするために、適宜感熱凝固剤を添加してもよい。感熱凝固剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム等の無機塩や過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、および過酸化ベンゾイル等のラジカル反応開始剤が挙げられる。
【0083】
本発明で用いられる水分散型ポリウレタン液は、発泡剤を含有することが好ましい。発泡剤とは、加熱すると分解して窒素ガスや炭酸ガス等を発生する添加剤のことをいう。発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液を用いることにより、繊維質基材に付与したポリウレタン液が加熱した際に発泡し、得られたポリウレタンはこの発泡に由来する多孔構造となる。水分散型ポリウレタンを多孔構造とすることにより、ポリウレタン付きシート状物の風合いは柔軟となる。これは、ポリウレタン付きシート状物内の繊維とポリウレタンとの接着面積が少なくなることで、繊維の拘束力が弱くなるためである。
【0084】
水分散型ポリウレタン液に添加する発泡剤としては、例えばアゾイソブチルニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)A”)、アゾジカルボンアミド(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)CAP”)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)S”)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(例えば、永和化成工業社製“セルラーGX”)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](例えば、和光純薬工業社製“VA−086”)、或いは2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(例えば、和光純薬工業社製“VA−080”)等の有機系発泡剤や、炭酸水素ナトリウム(例えば、三協化成社製“セルマイク(登録商標)266”)等の無機系発泡剤を用いることができるが、中でもアミド結合を有する発泡剤は水溶性であり、水分散型ポリウレタン液に均一に溶解することができるので好ましい。
【0085】
上記の水分散型ポリウレタン液への発泡剤の添加量は、ポリウレタン固形分対比で0.5〜20質量%であることが好ましい。発泡剤の添加量を0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上とすることにより、発泡によるシート状物の風合いは柔軟化の効果を効果的に得ることができる。一方、発泡剤の添加量を20質量%以下、より好ましくは15質量%以下とすることにより、過度の発泡によるシート状物の耐摩耗性の低下を抑えることができる。
【0086】
上記の水分散型ポリウレタン液の好ましい態様として、前述のように感熱凝固性を示す場合、上記の発泡剤が熱分解してガスを発生する発泡温度は、ポリウレタンの感熱凝固温度よりも高いことが好ましい。そのようにすることで、発泡によるガスがポリウレタンから逃げず、多孔構造を安定して形成させることができる。
【0087】
上記の発泡剤の発泡温度は、特定の温度に限定されないが、50〜200℃であることが好ましい。発泡温度を50℃以上、より好ましくは60℃以上とすることにより、ポリウレタンの凝固の開始後に発泡させるなど、発泡のタイミングを調整しやすく、効果的に多孔構造を形成させることができる。一方、発泡温度を200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、発泡させるための加熱によりポリウレタンが熱分解するのを防ぐことができる。
【0088】
また、上記の発泡によるガスをポリウレタンから逃がさず、多孔構造を安定して形成させるために、水分散型ポリウレタン液に無機粒子を添加することが好ましい。発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液が無機粒子を含有することにより、発泡したガスが水分散型ポリウレタン液から逃げる前に、無機粒子によって微細な状態で保持されるため、発泡剤の発泡温度とポリウレタンの感熱凝固温度の差が少なくても、ポリウレタンの多孔構造を良好に形成させることができる。この無機粒子としては、例えば、多孔質シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、或いは酸化亜鉛等の酸化物等を用いることができるが、多孔質であると発泡したガスの保持がしやすいことから、多孔質シリカが特に好ましく用いられる。
【0089】
上記の無機粒子の平均粒子径は、特定の値に限定されないが、大きすぎると水分散性が悪化し、小さすぎると発泡したガスを保持できないことから、好ましくは1〜10000nmであり、より好ましくは10〜1000nmである。
【0090】
本発明で用いられる、極細繊維を発現させる前に付与される発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液および/または極細繊維を発現させたのち付与される水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液は、シリコーン水分散液を含有すると好ましい。このシリコーン水分散液を含有することにより、ポリウレタンと繊維質基材の繊維との間の摩擦力を低下させ、シート状物の風合いをより柔軟にすることができる。また、サンドペーパー等による起毛工程において、研削性が良好となって均一な立毛長を得ることができ、さらにサンドペーパーの目詰まりを抑制することができる。
【0091】
上記の水分散型ポリウレタン液のシリコーン水分散液含有量は、水分散型ポリウレタンの質量に対するシリコーンの固形分の質量として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%である。シリコーン含有量は、少なすぎるとシートの柔軟化効果は不十分となり、多すぎるとシート状物において、ポリウレタンが繊維を把持する力が弱まり耐摩耗性が低下するからである。
【0092】
上記のシリコーンとしては、ポリジメチルシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、或いはポリエーテル変性シリコーン等を用いることができ、中でも造膜性シリコーンが好ましく用いられる。
【0093】
上記の造膜性シリコーンとは、加熱によって3次元架橋構造となって皮膜化し、水へ再分散ができなくなるシリコーンのことである。造膜性があることによって、造膜性シリコーン付与後にシートを洗浄や染色、洗濯等の水中での取り扱いや摩擦等の外的要因があったとしても、シートからのシリコーンの脱落が防止され、シートの柔軟性を保持することができる。また、造膜性シリコーン水分散液を含有する水分散型ポリウレタン液をシートに含浸した後、シートを熱水および/またはアルカリ水溶液で処理して繊維を極細化する場合においては、シリコーンに造膜性があることによってシートの柔軟性を保持することができる。また、造膜性シリコーンが繊維の極細化処理後もシートに残存しているとは、極細化処理後のシートの重量実測値と理論計算値を比較し、その差が30%以内であることをいう。
【0094】
本発明に用いられる、極細繊維を発現させる前に付与される発泡剤を含有する水分散型ポリウレタン液と、極細繊維を発現させたのち付与される水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液は、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系、無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、発泡剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、セルロース粒子等の充填剤、或いはシリカや酸化チタン等の無機粒子などを、単独で或いは任意の組み合わせで含有していてもよい。
【0095】
上記の水分散型ポリウレタン液は、繊維質基材に含浸、塗布等したのち、乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固、あるいはこれらの組み合わせにより凝固させることができる。
【0096】
上記の湿熱凝固の場合、その凝固温度は、水分散型ポリウレタンの感熱凝固温度以上とし、40〜200℃であることが好ましい。湿熱凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタンの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。一方、湿熱凝固の温度を200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、ポリウレタンの熱劣化を防ぐことができる。
【0097】
上記の湿式凝固の場合、その凝固温度は、水分散型ポリウレタンの感熱凝固温度以上とし、40〜100℃であることが好ましい。熱水中での湿式凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタンの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。
【0098】
上記の乾熱凝固の場合の凝固温度および乾燥温度は、80〜180℃であることが好ましい。乾熱凝固温度および乾燥温度を80℃以上、より好ましくは90℃以上とすることにより、生産性に優れる。一方、乾熱凝固温度および乾燥温度を180℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、ポリウレタンの熱劣化を防ぐことができる。
【0099】
上記のシート状物の表面に立毛を形成するために、起毛処理を行ってもよい。この起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて研削する方法などにより施すことができる。この起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくする上で好ましい態様である。
【0100】
上記のシート状物は、染色してもよい。染色方法としては、シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。
【0101】
上記の染色の際の温度は、繊維の種類にもよるが、80〜150℃であることが好ましい。染色温度を80℃以上、より好ましくは110℃以上とすることにより、繊維への染着を効率良く行わせることができる。一方、染色温度を150℃以下、より好ましくは130℃以下とすることにより、ポリウレタンの劣化を防ぐことができる。
【0102】
上記の染色に用いる染料は、繊維質基材を構成する繊維の種類にあわせて選択すればよく、例えば、ポリエステル系繊維であれば分散染料を用い、ポリアミド系繊維であれば酸性染料や含金染料を用い、更にそれらの組み合わせを用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
【0103】
また、染色時に染色助剤を使用することも好ましい態様である。染色助剤を用いることにより、染色の均一性や再現性を向上させることができる。また、染色と同浴または染色後に、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤および抗菌剤等を用いた仕上げ剤処理を施すことができる。
【実施例】
【0104】
次に、本発明のシート状物およびその製造方法について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0105】
[評価方法]
(1)平均単繊維直径
平均単繊維直径は、繊維質基材またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、繊維をランダムに100本選び、単繊維直径を測定して平均値を計算することで算出した。このとき、繊維質基材またはシート状物を構成する極細繊維が異形断面の場合は、異形断面の外接円の直径を単繊維直径として算出した。また、円形断面と異形断面が混合している場合や、単繊維直径が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれの存在本数比率に応じたサンプリング数を計100本となるように選び算出した。ただし、極細繊維あるいはその繊維束からなる不織布の他に補強用の織物や編物が挿入されているような場合には、当該補強用の織編物の繊維は、極細繊維の平均単繊維直径の測定においてサンプリング対象からは除外した。
【0106】
(2)水分散型ポリウレタン液の感熱凝固温度
ポリウレタン固形分濃度を10質量%に調製した水分散型ポリウレタン液20gを内径12mmの試験管に入れ、温度計を先端が液面よりも下になるように差し込んだ後、試験管を封止し、95℃の温度の温水浴にポリウレタン液の液面が温水浴の液面よりも下になるように浸漬した。温度計により試験管内の温度の上昇を確認しつつ、適宜1回あたり5秒以内の時間、試験管を引き上げて水分散型ポリウレタン液の液面の流動性の有無を確認できる程度に揺すり、水分散型ポリウレタン液の液面が流動性を失った温度を感熱凝固温度とした。この測定をポリウレタン液1種につき3回ずつ行い、平均値を算出した。
【0107】
(3)シート状物内部の構造
シート状物内部の構造は、シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率500倍で撮影して観察した。
【0108】
(4)シート状物の風合い
JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の8.21「剛軟度」の、8.21.1に記載のA法(45°カンチレバー法)に基づき、タテ方向とヨコ方向へそれぞれ20mm×150mmの試験片を5枚作成し、45℃の温度の斜面を有する水平台へ置き、試験片を滑らせて試験片の一端の中央点が斜面と接したときのスケールを読み、5枚の平均値を求めた。
【0109】
(5)シート状物のシワ回復性
JIS L 1059−1:2009「繊維製品の防しわ性試験方法−第1部:水平折りたたみじわの回復性の測定(モンサント法)」の記載に基づき、10Nの荷重装置を用い、試験片5枚でのシワ回復角を測定して、10「しわ回復角及び防しわ率の計算」に記載の防しわ率の式によってシワ回復性を算出し、5枚の平均値を求めた。
【0110】
(6)シート状物の耐摩耗性評価
ナイロン6からなる直径0.4mmのナイロン繊維を繊維の長手方向に垂直に長さ11mmに切ったものを100本そろえて束とし、この束を直径110mmの円内に6重の同心円状に97個(中心に1個、直径17mmの円に6個、直径37mmの円に13個、直径55mmの円に19個、直径74mmの円に26個、直径90mmの円に32個)配置した円形ブラシ(ナイロン糸9700本)を用い、荷重8ポンド(約3629g)、回転速度65rpm、回転回数50回の条件で、シート状物の円形サンプル(直径45mm)の表面を摩耗せしめ、その前後のサンプルの質量変化を測定し、5サンプルの平均値を摩耗減量とした。
【0111】
(7)耐加水分解性評価
エスペック社製の恒温恒湿槽を用いて、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中に5週間放置する強制劣化処理を施した後、前述の耐摩耗性評価行った。
【0112】
(8)耐光性評価
スガ試験機器社製のキセノンウェザーメーターを用いて、JIS L 0843:2006「キセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法」に記載の、4「試験の種類」のB法に基づき、波長300〜400nmの光を放射照度150W/m、ブラックパネル温度73±3℃、槽内温度38℃、相対湿度50±5%で、照射3.8時間と消灯1時間を38回繰り返し、照射時間合計144時間行うことで、強制劣化処理を施した後、前述の耐摩耗性評価行った。
【0113】
(9)シート状物の外観品位
シート状物の外観品位は、健康状態の良好な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視と官能評価によって、下記のように5段階評価し、最も多かった評価を外観品位とした。外観品位は、3級〜5級を良好とした。
5級:均一な繊維の立毛があり、繊維の分散状態は良好で、外観は良好である。
4級:5級と3級の間の評価である。
3級:繊維の分散状態はやや良くない部分があるが、繊維の立毛はあり、外観はまずまず良好である。
2級:3級と1級の間の評価である。
1級:繊維の立毛は少なく、また、全体的に繊維の分散状態は非常に悪く、外観は不良である。
【0114】
(繊維質基材用不織布)
次に、実施例と比較例で用いる3種類の繊維質基材用不織布について、それぞれ参考例1〜3としてそれらの作成手順を説明する。
【0115】
[参考例1]不織布Aの作成
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用いて、海成分45質量%、島成分55質量%の複合比率で、島数36島/1フィラメント、平均単繊維直径17μmの海島型複合繊維を得た。島成分であるポリエチレンテレフタレートの平均単繊維直径は、2μmであった。得られた海島型複合繊維を、繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により不織布とした。この不織布を97℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、140℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布A(目付:300g/m、厚み:1mm)とした。
【0116】
[参考例2]不織布Bの作成
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用いて、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率で、島数16島/1フィラメント、平均単繊維直径30μmの海島型複合繊維を得た。島成分であるポリエチレンテレフタレートの平均単繊維直径は、4μmであった。得られた海島型複合繊維を、繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により不織布とした。この不織布を97℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、140℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布B(目付:350g/m、厚み:1.1mm)とした。
【0117】
[参考例3]不織布Cの作成
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、6−ナイロンを用いて、海成分30質量%、島成分70質量%の複合比率で、島数200島/1フィラメント、平均単繊維直径27μmの海島型複合繊維を得た。島成分である6−ナイロンの平均単繊維直径は、1.5μmであった。得られた海島型複合繊維を、繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により不織布とした。この不織布を97℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、140℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布C(目付:430g/m、厚み:1.2mm)とした。
【0118】
(水分散型ポリウレタン液)
次に、実施例と比較例で用いる11種類の水分散型ポリウレタン液について、それぞれ参考例4〜14としてそれらの作成手順を説明する。
【0119】
[参考例4]水分散型エーテル系ポリウレタン液aの作成
ポリオールにポリテトラメチレングリコールを適用し、イソシアネートにイソフォロンジイソシアネートを適用したエーテル系強制乳化型ポリウレタン液に、このポリウレタン液の固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として硫酸マグネシウム2質量部を、発泡剤としてアゾイソブチルニトリル(AIBN)(発泡温度120℃)3質量部を、造膜性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製“IE−7170”3質量部を、それぞれ加え、水によって全体を固形分10質量%に調製して、水分散型エーテル系ポリウレタン液aを得た。感熱凝固温度は56℃であった。
【0120】
[参考例5]水分散型エーテル系ポリウレタン液bの作成
参考例4の水分散型エーテル系ポリウレタン液aにおいて、発泡剤としてAIBNに代えて炭酸水素ナトリウム(三協化成社製“セルマイク(登録商標)266”、発泡温度140℃)5質量部を加え、造膜性シリコーンの代わりにジメチルシリコーンエマルジョンである東レ・ダウコーニング社製“SM7036EX”3質量部加えた以外は、参考例4と同様にして、水分散型エーテル系ポリウレタン液bを得た。感熱凝固温度は61℃であった。
【0121】
[参考例6]水分散型エーテル系ポリウレタン液cの作成
参考例4の水分散型エーテル系ポリウレタン液aにおいて、造膜性シリコーンを加えなかった以外は、参考例4と同様にして、水分散型エーテル系ポリウレタン液cを得た。感熱凝固温度は55℃であった。
【0122】
[参考例7]水分散型エーテル系ポリウレタン液dの作成
参考例4の水分散型エーテル系ポリウレタン液aにおいて、発泡剤と造膜性シリコーンを加えなかったこと以外は、参考例4と同様にして、水分散型エーテル系ポリウレタン液dを得た。感熱凝固温度は55℃であった。
【0123】
[参考例8]水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eの作成
ポリオールにポリヘキサメチレンカーボネートを適用し、イソシアネートにジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを適用したポリオキシエチレン鎖含有ポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタン液に、このポリウレタン液の固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として過硫酸アンモニウム(APS)2質量部を、造膜性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製“IE−7170”5質量部を、それぞれ加え、水によって全体を固形分20質量%に調製して、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを得た。感熱凝固温度は74℃であった。
【0124】
[参考例9]水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液fの作成
参考例8の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eにおいて、造膜性シリコーンの代わりにジメチルシリコーンエマルジョンである東レ・ダウコーニング社製“SM7036EX”3質量部加えたこと以外は、参考例8と同様にして、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液fを得た。感熱凝固温度は75℃であった。
【0125】
[参考例10]水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液gの作成
参考例8の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eにおいて、造膜性シリコーンを加えなかったこと以外は、参考例8と同様にして、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液gを得た。感熱凝固温度は73℃であった。
【0126】
[参考例11]水分散型エーテル系ポリウレタン液hの作成
参考例4の水分散型エーテル系ポリウレタン液aにおいて、発泡剤としてAIBNに代えて和光純薬工業社製“VA−080”(2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)―2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}。分解後のアミド結合を有する物質の分子量380)3質量部と、無機粒子として松本油脂製薬社製“ブリアン(登録商標)SL−100N”(多孔質シリカ。平均粒子径100nm)3質量部を加え、造膜性シリコーンの添加量を5質量部としたこと以外は、参考例4と同様にして、水分散型エーテル系ポリウレタン液hを得た。感熱凝固温度は54℃であった。
【0127】
[参考例12]水分散型エーテル系ポリウレタン液iの作成
参考例11の水分散型エーテル系ポリウレタン液hにおいて、無機粒子として多孔質シリカに代えてTECNAN社製“TECNADIS−TI−120−1KG”(酸化チタン。平均粒子径15nm)5質量部を加えたこと以外は、参考例11と同様にして、水分散型エーテル系ポリウレタン液iを得た。感熱凝固温度は58℃であった。
【0128】
[参考例13]水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液jの作成
参考例8の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eにおいて、造膜性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製“IE−7170”に代えて日華化学社製“ドライポン(登録商標)600E”5質量部を用い、発泡剤として和光純薬工業社製“VA−086”(2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]。分解後のアミド結合を有する物質の分子量260)3質量部と、無機粒子として松本油脂製薬社製“ブリアン(登録商標)SL−100N”(多孔質シリカ。平均粒子径100nm)3質量部を加えたこと以外は、参考例8と同様にして、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液jを得た。感熱凝固温度は72℃であった。
【0129】
[参考例14]水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液kの作成
参考例13の水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液jにおいて、無機粒子として多孔質シリカに代えてTECNAN社製“TECNADIS−AL−120−1KG”(酸化アルミニウム。平均粒子径25nm)5質量部を加えたこと以外は、参考例13と同様にして、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液kを得た。感熱凝固温度は76℃であった。
【0130】
[実施例1]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
上記の参考例1で作成した繊維質基材用不織布Aに、上記の参考例4で作成した水分散型エーテル系ポリウレタン液aを含浸し、100℃の温度の湿熱雰囲気下で5分間処理した後、乾燥温度120℃の温度で5分間熱風乾燥させることにより、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が15質量%となるようにエーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートを、95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間脱海処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに、上記の参考例8で作成した水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸し、100℃の温度の湿熱雰囲気下で5分間処理した後、乾燥温度120℃の温度で5分間熱風乾燥させた。これにより、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートの表面を、180メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機を用いて分散染料により染色し還元洗浄を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0131】
[実施例2]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、上記の参考例5で作成した水分散型エーテル系ポリウレタン液bを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が10質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、エーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに含浸させるポリウレタン液として、上記の参考例9で作成した水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液fを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0132】
[実施例3]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が20質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布Aに水分散型エーテル系ポリウレタン液aを含浸させ、エーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに含浸させるポリウレタン液として、上記の参考例10で作成した水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液gを用い、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が20質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0133】
[実施例4]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、上記の参考例6で作成した水分散型エーテル系ポリウレタン液cを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が15質量%となるようにエーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに含浸させるポリウレタン液として、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液gを用い、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が30質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0134】
[実施例5]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
繊維質基材として上記の参考例2で作成した繊維質基材用不織布Bを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が20質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、上記の繊維質基材に水分散型エーテル系ポリウレタン液aを含浸させ、エーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
実施例1と同様にして、上記の脱海シートに、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0135】
[実施例6]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
繊維質基材として上記の参考例3で作成した繊維質基材用不織布Cを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が10質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、上記の繊維質基材に水分散型エーテル系ポリウレタン液aを含浸させ、エーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が20質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、上記の脱海シートに水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0136】
[実施例7]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
上記の参考例1で作成した繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、水分散型エーテル系ポリウレタン液hを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が15質量%となるようにエーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
実施例1と同様にして、上記の脱海シートに、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0137】
[実施例8]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
上記の参考例1で作成した繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、水分散型エーテル系ポリウレタン液iを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が15質量%となるようにエーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
実施例1と同様にして、上記の脱海シートに、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型エーテル系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0138】
[実施例9]
(脱海前:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の参考例1で作成した繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液jを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が25質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が5質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、上記の脱海シートに水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0139】
[実施例10]
(脱海前:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の参考例1で作成した繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液kを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が25質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が5質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、上記の脱海シートに水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液eを含浸させ、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られたシート状物の断面観察では、極細繊維束と水分散型ポリカーボネート系ポリウレタンの間に明確に空隙が見られた。また、外観品位と耐摩耗性は良好であり、柔軟な風合いと良好なシワ回復性を有していた。さらに、耐加水分解性と耐光性も良好であった。
【0140】
[比較例1]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が20質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布Aに、水分散型エーテル系ポリウレタン液aを含浸させ、エーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記の脱海シートに対して、ポリカーボネート系ポリウレタンの付与を省略した以外は実施例1と同様にして、起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られた比較例1のシート状物は、脱海シートにポリカーボネート系ポリウレタンを付与しなかったことにより、風合いは柔軟であったが、耐光性は低いものとなった。
【0141】
[比較例2]
(脱海)
繊維質基材用不織布Aに対して、ポリウレタンの付与を省略した以外は実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに含浸させるポリウレタン液として、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン液gを用い、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が30質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られた比較例2のシート状物は、繊維質基材用不織布に、エーテル系ポリウレタンを付与しなかったことにより、シワ回復性と耐久性は良好であったが、風合いは硬くなり、表面外観も不良であった。
【0142】
[比較例3]
(脱海前:エーテル系ポリウレタンの付与)
繊維質基材用不織布Aに含浸させるポリウレタン液として、上記の参考例7で作成した発泡剤が添加されていない水分散型エーテル系ポリウレタン液dを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対するポリウレタン質量が15質量%となるようにエーテル系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(脱海)
上記のエーテル系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして脱海処理を行い、脱海シートを得た。
(脱海後:ポリカーボネート系ポリウレタンの付与)
上記の脱海シートに含浸させるポリウレタン液として、水分散型ポリウレタン液gを用いた以外は、実施例1と同様にして、不織布の島成分質量に対する脱海後に付与されたポリウレタン質量が15質量%となるようにポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートを得た。
(起毛・染色・還元洗浄)
上記のポリカーボネート系ポリウレタンを付与したシートに対して、実施例1と同様にして起毛・染色・還元洗浄処理を行い、シート状物を得た。
(得られたシート状物)
得られた比較例3のシート状物は、エーテル系ポリウレタンに発泡剤を添加しなかったことにより、このシート状物の断面観察では、極細繊維束とエーテル系ポリウレタンの間に明確な空隙は見られず、部分的には極細繊維束内部へのエーテル系ポリウレタンの付着が見られた。またこのシート状物は、エーテル系ポリウレタンに発泡剤を添加しなかったことにより、シワ回復性は低く、風合いは硬くなった。
【0143】
上記の各参考例で示したポリウレタン液の組成を、表1に示す。また、各実施例と各比較例で得られたシート状物の評価結果を、表2に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明により得られるシート状物は、家具、椅子および壁材や、自動車、電車および航空機などの車輛室内における座席、天井および内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴および婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、およびそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布、およびCDカーテン等の工業用資材として好適に用いることができる。特に、本発明の効果である柔軟な風合いとシワにならない良好なシワ回復性および耐久性は、これらの機能が強く要求される内装材用途に好適に用いることができる。