特許第6007914号(P6007914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6007914真空成形用プリプレグ、繊維強化複合材料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007914
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】真空成形用プリプレグ、繊維強化複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20161006BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20161006BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161006BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08J5/24CFC
   C08G59/50
   C08L63/00 Z
   B32B27/38
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-537913(P2013-537913)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2013-543035(P2013-543035A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】US2011059610
(87)【国際公開番号】WO2012064662
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/530,173
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/411,231
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒井 信之
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・ピー・ハロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・シー・ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】夏目 憲光
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−292976(JP,A)
【文献】 特開2000−017090(JP,A)
【文献】 特開2006−028274(JP,A)
【文献】 国際公開第00/053654(WO,A1)
【文献】 特開2011−016985(JP,A)
【文献】 特開2010−053278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08G 59/00−59/72
C08K 3/00−13/08
C08J 5/24
B32B 1/00−33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、(B)、(C)および(D)を含むエポキシ樹脂組成物および強化繊維を含む真空成形用プリプレグであって、エポキシ樹脂組成物は、1×104×10Pa・sの40℃における粘度、90〜110℃の硬化開始温度、および硬化開始温度で2〜20Pa・sの最低粘度を有し、成分(A)、(B)、(C)および(D)は:
(A)100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して60重量部以上のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミ
(C)ジアミノジフェニルスルホン、および
(D)2,4−トルエンビスジメチル尿素を含む尿素化合物
を含む、真空成形用プリプレグ
【請求項2】
成分(A)中のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂の量が100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して60〜95重量部であり;成分(A)が、5〜40重量部のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂をさらに含む、請求項1に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項3】
テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアニリン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種類のエポキシ樹脂である、請求項2に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項4】
成分(C)の量が100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して5〜30重量部である、請求項1に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項5】
成分(D)の量が100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して3〜8重量部である、請求項1に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項6】
エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化させることにより得られる硬化樹脂の25℃における曲げ弾性率Eが3.5〜4.5GPaである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項7】
エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化させることにより得られる硬化樹脂を沸騰水中に24時間浸漬させた後のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ
【請求項8】
プリプレグの一方の面だけがエポキシ樹脂組成物によって被覆されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ。
【請求項9】
プリプレグにおけるエポキシ樹脂組成物の含浸率が30%〜95%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ。
【請求項10】
未硬化プリプレグを硬化させることによって作製された熱硬化プリプレグを含む繊維強化複合材料であって、未硬化プリプレグが請求項1〜9のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグを含むものである繊維強化複合材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグを積層すること;20℃〜50℃の温度および0.09MPa以上の真空度で脱気すること;ならびに真空度を0.09MPa以上に維持しながら温度を最終硬化温度まで昇温させることを含む繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項12】
プリプレグのエポキシ樹脂組成物を60℃〜120℃の温度に維持し、エポキシ樹脂組成物がゲル化した後、最終硬化温度まで上げるステップキュアを行なう、請求項11に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項13】
強化繊維が複数の一方向に配列された繊維を構成している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ。
【請求項14】
強化繊維が多軸織物、不織材料、マット、ニットまたは組み紐を構成している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の真空成形用プリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプおよびオーブンのみを使用して低コストプロセスにて短時間で成形することができ、耐熱性、耐環境性の低下が起こらず、航空機の構造材料における使用に適した優れた機械的特性を有し、オートクレーブでのものと同等の優れたパネル品質を有する繊維強化複合材料を提供するために使用され得る、繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物に関する。また、本発明は、このエポキシ樹脂が使用されたプリプレグおよび繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料は、軽量であるが強度、靭性、耐久性および剛性などの優れた機械的特性を有し、したがって、航空機構造、宇宙船構造、自動車構造、鉄道車両構造、海洋船舶構造、スポーツ用品、およびコンピュータ、例えば、ラップトップコンピュータのハウジングにおいて広く展開されている。したがって、これらの分野において、年々、需要が増えてきている。航空機構造および宇宙船構造では、特に、優れた機械的特性および耐熱性が必要とされ、したがって、炭素繊維が強化繊維として最も一般的に使用されている。ここで、宇宙船構造とは、例えば、人工衛星、ロケットおよびスペースシャトルなどに使用される構造をいう。
【0003】
さらに、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂の最も一般的な使用は、優れた耐熱性、弾性率および耐薬品性を有し、硬化収縮が最小限である、エポキシ樹脂とポリアミンとの組合せである。このような炭素繊維強化複合材料の製造方法は、主として、オートクレーブなどを使用し、加熱および加圧成形することを伴うものであるが、高い成形コスト、大型の成形設備、および設備による成形サイズの制限などの問題がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前述の問題に鑑み、オートクレーブなどの高価な成形設備を使用せずに、真空ポンプおよびオーブンのみを使用して成形を行なうことができる低コストの成形方法が提案されている。従来、プリプレグを積層して硬化させることにより複合材料を成形する場合、エポキシ樹脂組成物に由来する水蒸気、およびプリプレグ層内または層間に閉じ込められた空気によってボイドが形成され、したがって、このようなボイドが成長することを防止するため、多くの場合、成形時にはオートクレーブなどを使用して高圧が適用される。しかしながら、最近、マトリックス樹脂を強化繊維に部分的に含浸させた部分含浸プリプレグを使用し、強化繊維の未含浸の部分を通気路として利用することにより、成形時の水蒸気と閉じ込められた空気とを成形パネルの外部に除去するプロセスにおいて低ボイドパネルが作製できることが報告されていた。しかしながら、水蒸気および閉じ込められた空気を真空ポンプによって除去する場合、一般的に、水蒸気および閉じ込められた空気は、プリプレグを比較的低い温度で真空下に長期間維持してマトリックス樹脂の通気路および流動性を保持し、これにより、水蒸気および閉じ込められた空気を効果的に除去することによって、成形パネルの外部に除去されなければならず、成形時間がオートクレーブ成形よりも格段に長くなるという問題がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
他方において、繊維強化複合材料を航空機構造材料に使用する場合、機械的特性、特に圧縮強度の向上が重要であると同時に、耐熱性および耐環境性などの特性の向上も重要である。テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂および硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンを含むマトリックス樹脂が使用されたプリプレグにより、強化繊維およびマトリックス樹脂に高い接着性が与えられ、得られる繊維強化複合材料は高い機械的特性を有する。また、航空機構造用の高品質の硬化パーツを得るため、従来より、このようなプリプレグにはオートクレーブが使用されている。しかしながら、このようなプリプレグをおよそ180℃の温度およびおよそ0.7MPaの圧力で硬化させて成形パーツを形成する場合、加熱および加圧に必要とされるエネルギーは高い。オートクレーブ処理における加熱および加圧には大量のエネルギーが必要とされる。そのため、エネルギーの節約によって低コストプロセスで成形することができ、航空機用の構造材料の使用に適した高い機械的特性を有すると同時に高い耐熱性および耐環境性を有する繊維強化複合材料を提供することができるプリプレグに対する強い要望が存在している。
【0006】
過去において、真空ポンプおよびオーブンのみを使用して低温硬化によって、低コストにて短時間で硬化させることができるかかるプリプレグシステムを形成し、航空機用の構造材料に適した優れた機械的特性、耐熱性および耐環境性を得ることは、繊維強化複合材料の分野では非常に困難であった。
【0007】
前述のことに鑑み、減圧プロセス中の樹脂の流動性を考慮して加熱および成形後の樹脂粘度を制御する部分含浸プリプレグが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら室温での樹脂粘度が高すぎ、そのため、プリプレグの取り扱いが困難である。また、ジアミノジフェニルスルホンがエポキシ樹脂組成物に含まれておらず、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂の添加量が少なく、そのため、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性、および耐環境性、例えば吸湿後の高温での圧縮強度が不良となり、したがって、航空機の構造材料における使用に適さない。
【0008】
他方において、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂および硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンを含むマトリックス樹脂が使用されたプリプレグの低温硬化によるエネルギー消費を大きく低減させるため、ジシアンジアミドおよび尿素化合物を含むエポキシ樹脂組成物ならびにそのプリプレグが提案されている(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。しかしながら、US2006−035088A1には、圧縮成形法が使用され、一般的な産業用に特殊化されたエポキシ樹脂組成物およびプリプレグが紹介されている。このエポキシ樹脂組成物はテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂をほとんど含有しておらず、強化繊維とマトリックス樹脂との間に強固な接着性を与えることができず、また、航空機用の構造材料に適した機械的特性および耐環境性を与えることができない。また、成形法は、高温、高圧および高価な設備を使用する圧縮成形であり、そのため、コスト削減の問題がある。また、該成形法は高圧を使用するものであるが、低ボイドを達成するために必要な、積層時に閉じ込められる空気を低減するための方法の記載も示唆もなく、エポキシ樹脂組成物による水蒸気の生成を制限するための方法の記載も示唆もなく、このエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグを真空圧およびオーブンのみを使用して硬化させることによって得られる繊維強化複合材料が低ボイドを達成するのは困難である。JP2000−17090には、低温でのオートクレーブ成形に特殊化されたプリプレグが開示されている。しかしながら、真空ポンプおよびオーブンで硬化させることにより低ボイドを達成するためには、積層時に閉じ込められる空気を低減させなければならないとともに、プリプレグの取り扱いを深刻に検討しなければならず、さらに、特定の室温粘度範囲が必要である。だが、このようなことは何も記載も議論もされていない。また、エポキシ樹脂組成物由来の水蒸気によりボイドの形成が引き起こされ、水蒸気の形成を抑制する必要性、およびマトリックス樹脂が特定の温度範囲で硬化を開始することの必要性が存在しているが、これについて記載も示唆もなく、低ボイドを達成するための方法についても何らの記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−050574号公報
【特許文献2】米国特許第6391436号
【特許文献3】特開2008−088276号公報
【特許文献4】米国公開特許第2006−0035088号
【特許文献5】特開2000−017090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のすべての問題を解決するため、繊維強化複合材料におけるボイド形成メカニズムを鋭意研究した結果、本発明者らは、プリプレグ取り扱いの容易性および積層時に閉じ込められる空気の低減の両方が与えられ得る特定の室温粘度範囲を有するエポキシ樹脂組成物を見出し、エポキシ樹脂組成物によって形成される水蒸気の量は最小限であるが、できるだけ多くの水蒸気および閉じ込められた空気を成形パネルの外部に除去するための樹脂流動性が確保され、硬化中にできるだけ多くの未含浸強化繊維が充分に含浸される、特定の硬化温度における特定の粘度範囲を見出した。その驚くべき成果は、航空機用の構造材料としての使用に適した優れた機械的特性および耐熱性が与えられ、耐環境性が損なわれず、真空ポンプおよびオーブンのみを使用して低コストプロセスにて短時間で成形することができ、オートクレーブによって作製される部材と同等のパネル品質を有する繊維強化複合材料が作製され得る、繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物および繊維強化複合材料を作製することが可能であるそのプリプレグに想到したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の真空成形用プリプレグは、成分(A)、(B)、(C)および(D)を含むエポキシ樹脂組成物および強化繊維を含む真空成形用プリプレグであり、該エポキシ樹脂組成物は、1×104×10Pa・sの40℃における粘度、90〜110℃の硬化開始温度、および硬化開始温度で2〜20Pa・sの最低粘度を有し、該成分(A)、(B)、(C)および(D)は:
(A)100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して60重量部以上のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミ
(C)ジアミノジフェニルスルホン、および
(D)2,4−トルエンビスジメチル尿素を含む尿素化合物
を含む真空成形用プリプレグである
【0013】
さらに、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、前述の真空成形用プリプレグを積層すること;20℃〜50℃の温度および0.09MPa以上の真空度で脱気すること;ならびに真空度を0.09MPa以上に維持しながら温度を最終硬化温度まで昇温させることを含む繊維強化複合材料の製造方法である。
【0014】
さらに、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、前述のプリプレグのエポキシ樹脂組成物を60℃〜120℃の温度に維持し、該エポキシ樹脂組成物がゲル化した後、最終硬化温度まで上げるステップキュアを行なう繊維強化複合材料の製造方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の真空成形用プリプレグは、成分(A)、(B)、(C)および(D)を含むエポキシ樹脂組成物および強化繊維を含む真空成形用プリプレグであり、該エポキシ樹脂組成物は、1×104×10Pa・sの40℃における粘度、90〜110℃の硬化開始温度、および硬化開始温度で2〜20Pa・sの最低粘度を有し、該成分(A)、(B)、(C)および(D)は:
(A)100重量部のエポキシ樹脂配合物に対して60重量部以上のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミ
(C)ジアミノジフェニルスルホン、および
(D)2,4−トルエンビスジメチル尿素を含む尿素化合物
を含む真空成形用プリプレグである
【0016】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂などのグリシジル型エポキシ樹脂のうち、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、強化繊維と、特に、単一のモノマー分子に相当する繰り返し単位(本明細書において繰り返し単位と称する)内に2つのグリシジルアミノ基を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂との接着性が向上するという観点から、本発明の成分(A)の主成分として効果的である、または換言すると、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂がより効果的である。各繰り返し単位に1つのグリシジルアミノ基を有する化合物は、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性が劣る傾向があり、各繰り返し単位に3つ以上のグリシジルアミノ基を有する化合物はマトリックス樹脂の靭性が劣り、したがって、高い耐衝撃性を有する繊維強化複合材料は得られない。テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂の例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジルアミノフェニルジイソプロピルベンゼンならびにその混合物が挙げられるが、これらのうち、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性の向上、ならびに得られる複合材の機械的特性、耐熱性および耐環境性の向上において著しく効果的であるため、好ましく使用される。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品の例としては、ELM434(住友化学製)、Araldite(登録商標)MY720、Araldite(登録商標)MY721、Araldite(登録商標)MY725、Araldite(登録商標)MY722、Araldite(登録商標)MY9555、Araldite(登録商標)MY9512、Araldite(登録商標)MY9612、Araldite(登録商標)MY9634、Araldite(登録商標)MY9663(Huntsman Advanced Materials製)、エポトートYH−434(東都化成製)、およびエピコート604(ジャパンエポキシレジン製)などが挙げられる。このような樹脂の配合量は、エポキシ樹脂配合物100重量部あたり60重量部以上、好ましくは70重量部以上でなければならない。配合量が60重量部未満の場合、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性は充分でなく、得られる繊維強化複合材料は、航空機の構造材料における使用に適した機械的特性を与えることができない。さらに、水中に浸漬させた場合、強化繊維とマトリックス樹脂との間に充分な接着性が得られず、そのため、水分が強化繊維とマトリックス樹脂との間の界面領域内に浸透し、界面領域内での接着力が維持され得ず、複合材料の耐環境性が損なわれる。さらに、プリプレグの取り扱い性および積層時に閉じ込められる空気の低減の両方が与えられ得る本発明のエポキシ樹脂組成物の特定の室温粘度範囲が得られず、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される。さらに、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を後述するような成分(A)中に含める場合、成分(A)中のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂の配合量は95重量部以下であるのがよい。
【0017】
さらに、テトラグリシジルアミン型エポキシ以外の以下のエポキシ樹脂が、必要に応じて成分(A)に、前述のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂とともに添加される。
【0018】
例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールS型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアニリン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、およびイソシアネート変性エポキシ樹脂など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
これらのうち、強化繊維に対する接着性を高レベルに維持したままマトリックス樹脂の靭性を改善するためには、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましくは使用される。市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂の例としては、jER(登録商標)825、jER(登録商標)826、jER(登録商標)827、jER(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)850(DIC Corp.製)、エポトート(登録商標)YD−128(東都化成(株)製)、DER331、DER−332(Dow Chemical製)、Bakelite(登録商標)EPR154、Bakelite(登録商標)EPR162、Bakelite(登録商標)EPR172、Bakelite(登録商標)EPR173、Bakelite(登録商標)EPR174(Bakelite AG製)、およびAraldite(登録商標)LY1556などが挙げられる。市販のビスフェノールF型エポキシ樹脂の例としては、jER(登録商標)806、jER(登録商標)807、jER(登録商標)1750、(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)830(DIC Corp.製)、エポトート(登録商標)YD−170、エポトート(登録商標)YD−175(東都化成(株)製)、Bakelite(登録商標)EPR169(Bakelite AG製)、ならびにGY281、GY282およびGY285(Huntsman Advanced Materials製)などが挙げられる。
【0020】
さらに、ノボラック型エポキシ樹脂は、得られる樹脂強化複合材料の耐熱性および耐環境性を維持したまま室温でのプリプレグのタックを調整する効果のために好ましく使用される。市販のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の例としては、jER(登録商標)152、jER(登録商標)154、(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)740(DIC Corp.製)、Araldite(登録商標)EPN1179、およびAraldite(登録商標)EPN1180(Huntsman Advanced Materials製)などが挙げられる。
【0021】
得られる繊維強化複合材料の耐熱性を維持したまま強化繊維に対する接着性をさらに向上させ、機械的特性、例えば圧縮強度を向上させるためには、アミノフェノール型エポキシ樹脂が好ましく使用される。市販のアミノフェノール型エポキシ樹脂の例としては、Araldite(登録商標)MY0500、Araldite(登録商標)MY0510、Araldite(登録商標)MY0600、およびAraldite(登録商標)MY0610(Huntsman Advanced Materials製)などが挙げられる。
【0022】
さらに、得られる繊維強化複合材料の耐熱性および耐環境性を維持したまま強化繊維に対する接着性をさらに向上させ、機械的特性、例えば圧縮強度を向上させるためには、グリシジルアニリン型エポキシ樹脂が好ましく使用される。市販のグリシジルアニリンの例としては、GAN、GOT(日本化薬(株)製)およびBakelite(登録商標)EPR493(Bakelite AG製)などが挙げられる。
【0023】
成分(A)に添加されるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂組成物100部あたり5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部、より好ましくは20〜30重量部である。
【0024】
テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の量が少なすぎると、繊維強化複合材料の耐衝撃性が不充分となり得るが、該量が多すぎると、繊維強化複合材料の機械的特性、例えば圧縮強度が低減され得る。
【0025】
本発明の化合物(B)はジシアンジアミドである。本発明において、ジシアンジアミド(本明細書においてDICYと略記する)は、アミン型硬化剤に属する微細な固形粒子化合物であり、低温では、バルクに相当するエポキシ樹脂組成物中に溶解しにくいが、高温では溶解し、エポキシ樹脂と反応し始める。したがって、DICYが硬化剤として使用されたエポキシ樹脂組成物およびプリプレグは、特に好都合な保存安定性を有する。さらに、100重量部のエポキシ樹脂組成物に添加されるDICYの量は2〜10重量部であり得、より好ましくは3〜8重量部である。該配合量が少なすぎると、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性が低減され、繊維強化複合材料の機械的特性が低減され得るが、該配合量が多すぎると、得られる繊維強化複合材料の吸湿ならびに耐熱性および耐環境性が低減され得る。
【0026】
DICYの平均粒径は好ましくは1〜15μm、より好ましくは3〜13μm、さらにより好ましくは5〜10μmである。DICYの平均粒径が小さすぎると、エポキシ樹脂組成物中へのDICYの溶解が過度に促進され、室温に近い温度であっても硬化反応が進行し、したがって、エポキシ樹脂組成物およびプリプレグの保存安定性が損なわれる。さらに、DICYの平均粒径が大きすぎると、硬化温度であっても硬化反応が充分に進行せず、エポキシ樹脂組成物に不適切な硬化が起こり得る。
【0027】
本発明の成分(C)はジアミノジフェニルスルホンである。本発明では、ジアミノジフェニルスルホン(本明細書においてDDSと略記する)は、芳香族アミン硬化剤に属する微粒子化合物であり、芳香族環上のアミノ基の置換位置のため構造異性体が存在する。本発明では、任意の異性体が使用され得るが、異性体の型を変更することによりマトリックス樹脂および繊維強化複合材料の物性が制御され得る。例えば、4,4’−DDSでは、特に、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性および耐熱性が優れているが、3,3’−DDSでは、特に、得られる繊維強化複合材料の剛性が優れている。さらに、100重量部のエポキシ樹脂組成物に添加されるDDSの量は5〜50重量部であり得、より好ましくは5〜30重量部である。該配合量が少なすぎると、強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性が低減される、繊維強化複合材料の機械的特性が低減される、マトリックス樹脂の吸湿後の剛性、耐熱性および耐熱性が不充分である、ならびに得られる繊維強化複合材料の機械的特性、耐熱性および耐環境性が低減される可能性がある。該配合量が多すぎると、マトリックス樹脂の反応性が低減され、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが含まれる可能性がある。DDSの平均粒径は、DICYと同じ理由で、好ましくは1〜15μm、より好ましくは3〜13μm、さらにより好ましくは5〜13μmである。
【0028】
DDSをDICYと一緒に硬化剤として使用することにより、強化繊維とマトリックス樹脂とがより強固に接着し、特に、得られる繊維強化複合材料の耐熱性、機械的特性、例えば圧縮強度、および耐環境性が顕著に向上する。
【0029】
エポキシ樹脂組成物100重量部あたり3〜8重量部のDICYおよび5〜30重量部のDDSを有するエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグにより、強化繊維に対する接着効果が顕著に発現されるため、より優れた耐熱性、耐環境性、および機械的特性、例えば圧縮強度を有する繊維強化複合材料が提供され得る。
【0030】
本発明の化合物(D)は尿素化合物である。尿素化合物を促進剤として使用すると、保存安定性および強化繊維に対する接着性の両方が与えられ得る優れたエポキシ樹脂組成物が提供され得る。促進剤として尿素化合物の代わりに第3級アミン化合物を使用した場合、エポキシ樹脂組成物およびプリプレグの保存安定性が不良となり、イミダゾール化合物を使用した場合は、マトリックス樹脂中の強化繊維との間の接着性が不良となる傾向がある。尿素化合物の例としては、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3−クロロフェニル)−1,1,−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−トルエンビスジメチル尿素、および2,6−トルエンビスジメチル尿素など、ならびにその混合物が挙げられる。これらのうち、2,4−トルエンビスジメチル尿素では、マトリックス樹脂に対する優れた保存安定性、マトリックス樹脂に対する促進、および強化繊維に対する接着性が与えられ得るだけでなく、驚くべきことに、オートクレーブのものと匹敵する低ボイドの優れた繊維強化複合材料も提供され得る。
【0031】
さらに、100重量部のエポキシ樹脂組成物中の尿素化合物の配合量は、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜9重量部、さらにより好ましくは3〜8重量部である。尿素化合物の配合量が少なすぎると、マトリックス樹脂中の強化繊維との間の接着性が低減され、促進効果が不充分となり、得られる繊維強化複合材料の機械的特性、例えば圧縮強度が低減され、得られる繊維強化複合材料中に水分による多くのボイドが形成される可能性がある。尿素化合物の配合量が多すぎると、促進効果が過度になり、エポキシ樹脂組成物およびプリプレグの保存安定性が損なわれ、マトリックス樹脂の流動性が低くなりすぎ、そのため、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される可能性がある。
【0032】
エポキシ樹脂組成物は、改善された効果、例えば、マトリックス樹脂の靭性および剛性の向上、タックの制御、ならびに強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性の向上をもたらすために、前述の成分に加えて熱可塑性樹脂を混合、溶解させることにより好ましく使用される。このような熱可塑性樹脂は、一般的に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、およびカルボニル結合から選択される結合を有する熱可塑性樹脂であるが、一部架橋構造を有することも許容され得る。さらに、熱可塑性樹脂は結晶性または非晶質である。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、およびポリベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂が使用される。このような熱可塑性樹脂は、市販のポリマーであってもよく、市販のポリマーよりも小さい分子量を有するいわゆるオリゴマーであってもよい。オリゴマーは、好ましくは末端または分子鎖内のいずれかで熱硬化性樹脂と反応し得る官能基を有するオリゴマーである。
【0033】
さらに、このような熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ樹脂組成物100重量部あたり、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは8〜25重量部、さらにより好ましくは10〜25重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が少なすぎると、マトリックス樹脂の剛性および靭性の向上、タック制御、ならびに強化繊維とマトリックス樹脂との間の接着性の向上などの改善効果が得られない可能性があるが、熱可塑性樹脂の配合量が多すぎると、マトリックス樹脂の耐熱性および剛性が損なわれる可能性がある。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物の40℃における粘度は、プリプレグの取り扱い性および積層時に閉じ込められる空気の低減の両方を達成するためには、1×10〜1×10Pa・s、好ましくは2×10〜6×10Pa・s、より好ましくは2×104×10Pa・sでなければならない。40℃における粘度が低すぎると、プリプレグの作製に必要とされる樹脂フィルムが作製され得ず、プリプレグの取り扱い性が不良となり、プリプレグを積層する際にタックが高すぎるため、作業性が問題となる。さらに、ガス発生時、積層時に閉じ込められた空気が放出されず、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される。40℃における粘度が高すぎると、タックが低減されて金型内で積層され得ず作業性が問題となる。また、プリプレグの作製に必要とされる樹脂フィルムが作製される際、樹脂粘度が高すぎ、そのため、フィルム作製に高温が必要とされ、樹脂フィルムを作製することができず、得られるプリプレグの保存安定性が損なわれるという点で問題となる。
【0035】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化開始温度は、90〜110℃、好ましくは93〜110℃、より好ましくは95〜108℃でなければならない。硬化開始温度が低すぎると、得られるプリプレグの保存安定性が損なわれる。硬化開始温度が高すぎると、マトリックス樹脂による水蒸気の形成が単に真空時の圧力では抑制され得ず、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される。ここで、硬化開始温度は以下の方法によって測定される。すなわち、測定は、パラレルプレートを使用した動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用し、単純に温度を2℃/分の速度で昇温させながら、歪み100%、周波数0.5Hz、およびプレート間隔1mmで、40℃から130℃までで行なわれ、硬化開始温度は、最低粘度に達したときの温度と定義する。
【0036】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化開始時の最低粘度は、2〜20Pa・s、好ましくは3〜15Pa・s、より好ましくは4〜10Pa・sでなければならない。最低粘度が低すぎると、マトリックス樹脂の流動性が高くなりすぎ、得られる繊維強化複合材料において所望の樹脂含有率が達成されない。最低粘度が高すぎると、マトリックス樹脂によって引き起こされる最大量の水蒸気および積層時に閉じ込められた空気を硬化中に成形パネルの外部に逸出させることを可能にする樹脂粘度を確保することが可能でなくなり、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される。ここで、40℃における粘度および最低粘度は以下の方法によって測定される。すなわち、測定は、パラレルプレートを使用した動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用し、単純に温度を2℃/分の速度で昇温させながら、歪み100%、周波数0.5Hz、およびプレート間隔1mmで、40℃から130℃までで行なわれる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、130℃で2時間硬化させることにより得られる硬化樹脂が、好ましくは3.5〜4.5GPa、より好ましくは3.8〜4.3GPa、さらにより好ましくは4.0〜4.3GPaの25℃における曲げ弾性率を有するものである。曲げ弾性率が小さすぎると、このエポキシ樹脂組成物を使用して得られる繊維強化複合材料の機械的特性、例えば圧縮強度が不良となり得るが、曲げ弾性率が大きすぎると、得られる繊維強化複合材料の靭性が不良となり得る。本明細書でいう曲げ弾性率は、JISK 7171−1994に準拠した3点曲げ試験によって測定され得る。
【0038】
硬化樹脂の耐熱性は繊維強化複合材料の耐熱性に対して正の相関を有し、したがって、高い耐熱性を有する繊維強化複合材料を得るためには、高い耐熱性を有する硬化樹脂を使用することが重要である。周囲の空気の温度がガラス転移温度を超えると硬化樹脂および繊維強化複合材料の機械的特性が大きく低減されるため、ガラス転移温度は耐熱性の指標として一般的に使用されている。さらに、吸湿後の硬化樹脂のガラス転移温度は、吸湿後の高温環境下または室温での繊維強化複合材料の機械的特性、または換言すると、いわゆる耐環境性の指標として一般的に使用されている。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、130℃で2時間硬化させることにより得られる硬化樹脂が好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上のガラス転移温度を有するものである。耐熱性が低すぎると、このエポキシ樹脂組成物から得られる硬化樹脂の吸水後のガラス転移温度が大きく低減される可能性がある。さらに、エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化させることにより得られた硬化樹脂を沸騰水中に24時間浸漬させた後のガラス転移温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。耐熱性が低すぎると、このエポキシ樹脂組成物を使用して得られた繊維強化複合材料の吸水後の高温での機械的特性、例えば圧縮強度が大きく低減される可能性がある。本明細書でいう硬化樹脂のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用してSACMA SRM 18R−94に従って測定される。しかしながら、測定は、矩形ねじりモードで行なうのがよく、測定振動数は1Hzであるのがよく、昇温速度は5℃/分であるのがよい。ガラス転移温度は、温度−貯蔵弾性率曲線のガラス領域の接線とガラス領域からゴム領域までの転移領域の接線との交点を見出すことにより求められ、該交点における温度をガラス転移温度とみなす。
【0040】
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物が強化繊維中に完全に含浸されたプリプレグであってもよく、強化繊維の一部が含浸されておらず、強化繊維エポキシの残りの部分がいくらかの本発明の組成物を有する部分含浸プリプレグであってもよい。部分含浸プリプレグの場合では、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率は、好ましくは30〜95%、より好ましくは30〜85%、さらにより好ましくは50〜80%である。この含浸率が低すぎると、強化繊維とエポキシ樹脂組成物との間に剥離が起こり、プリプレグのタックが高くなりすぎ、そのため、作業性が不良となる可能性がある。該含浸率が高すぎると、強化繊維層中の通気路が不充分となり得、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成され得る。なお、ここでいうプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率%は、プリプレグ中の樹脂を流動させることなく硬化させ、硬化後の断面を顕微鏡を使用して観察し、全強化繊維の断面積とエポキシ樹脂組成物が含浸された強化繊維の断面積との比率を求めることにより計算され得る。
【0041】
さらに、本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙上に、リバースロールコーターまたはナイフコーターなどを使用して塗布してフィルムを作製し、次いで、エポキシ樹脂組成物フィルムを強化繊維の両面に重ねて、加熱および加圧によって含浸させることにより製造され得る。さらに、一方の面のみがマトリックス樹脂で完全に被覆されたプリプレグを、エポキシ樹脂組成物フィルムを強化繊維の一方の面のみに重ねて、次いで、加熱および加圧して含浸させることにより製造してもよい。このプリプレグは、一方の面がマトリックス樹脂で含浸されていない強化繊維を含むものであり、したがって、この面が通気路としての機能を果たすことができ、そのため、得られる繊維強化複合材料中のボイドを低減させる効果がある。ここで、部分含浸プリプレグは、含浸中、条件、例えば温度、圧力および時間を下方に調整することによって製造され得、それにより、強化繊維の一部がエポキシ樹脂組成物で含浸されないようにする。あるいはまた、部分含浸プリプレグは、離型紙上に塗布されたエポキシ樹脂組成物が離型紙を完全に被覆しない形状、例えばストライプパターンを有するフィルムを用いて製造することもできる。
【0042】
本発明のプリプレグに使用される強化繊維は、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、またはホウ素繊維などであり得る。これらのうち、炭素繊維が比強度および比弾性率の観点から好ましい。
【0043】
本発明のプリプレグにおいて、単位面積あたりの強化繊維の量は好ましくは100〜300g/mである。強化繊維の量が少ないと、所望の厚さを得るために必要とされる積層数を増やす必要があり、作業が複雑になり得るが、強化繊維の量が多すぎると、プリプレグのドレープ性が不良となり得る。
【0044】
本発明のプリプレグは、好ましくは30〜80%、より好ましくは35〜70%、さらにより好ましくは40〜65%の繊維重量含有率を有するものである。繊維重量含有率が低すぎると、マトリックス樹脂の量が多くなりすぎ、優れた比強度および比弾性率を有する繊維強化複合材料の利点が得られないが、繊維重量含有率が高すぎると、不充分な樹脂のため不適切な含浸が起こり、得られる繊維強化複合材料中に多数のボイドが形成される可能性がある。
【0045】
本発明の強化繊維の形状および配向の例としては、単方向としても知られている一方向に配列された長繊維、多軸織物、不織材料、マット、ニット、および組み紐などが挙げられ、これらは、適用用途および使用領域に応じて自由に選択され得る。
【0046】
多軸織物は、平織、綾織および朱子織の織物を構成したものである。このような織物は、透過性を増大させ、ガス発生時間を低減させるための0〜10%のウィンドウ領域を有する。
【0047】
本発明の繊維強化複合材料は、前述のプリプレグを積層し、熱硬化させることにより製造され得る。当然ながら、繊維強化複合材料を、単一の層のプリプレグを担持させることによって得てもよい。加熱は、例えば、オーブン、オートクレーブまたはプレスなどの装置によって行なう。低コストの観点から、オーブンが好ましく使用される。本発明のプリプレグをオーブン内で加熱して硬化させる場合、単一の層のプリプレグまたは複数の層を積層することにより作製した積層体を形成し、得られた積層体をバギングし、20〜50℃の温度で脱気する成形方法が使用され、ここで、バッグの内部の真空度は0.09MPa以上であり、真空度を0.09MPa以上に維持したまま温度を硬化温度まで昇温させる。真空度が0.09MPaより小さいと、バック内の真空が充分に確保され得ず、得られる繊維強化複合材料中に多数のボイドが形成され得る。ここで、硬化温度は、好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜140℃である。硬化温度が低すぎると、硬化時間が長くなり、これにより高コストとなり得るが、硬化温度が高すぎると、硬化温度から室温までの冷却時の熱収縮を無視することができず、得られる繊維強化複合材料の機械的特性が不良となる可能性がある。
【0048】
室温から硬化温度まで温度を昇温させる場合、温度を一定速度で硬化温度まで昇温させてもよく、温度を中間温度に一定期間維持し、次いで硬化温度まで昇温させてもよい。上記のように、温度を中間温度に一定期間保持するステップキュアの場合、温度を60〜120℃に一定期間維持し、本発明のエポキシ樹脂組成物がゲル化した後、温度を最終硬化温度まで昇温させる方法が好ましく使用される。このようにして、ゲル化の後に温度を最終硬化温度まで昇温させると、温度の昇温時にエポキシ樹脂組成物による新たな水蒸気が形成された場合であっても、周囲のエポキシ樹脂組成物がゲル化し、そのため、水蒸気が大きなボイドになることが防止され得、したがって、これは好ましい。
【0049】
さらに、一定期間維持する温度は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜100℃、さらにより好ましくは85〜95℃である。一定期間維持する温度が低すぎると、本発明のエポキシ樹脂組成物のゲル化までに必要とされる時間が格段に長くなり、これにより高い成形コストがもたらされ得、積層時に閉じ込められた最大量の空気の放出を可能にする樹脂流動性が得られず、得られる繊維強化複合材料中に多数のボイドが形成される可能性があるが、逆に、該温度が高すぎると、エポキシ樹脂組成物が充分に硬化され得るので、その結果、温度を一定期間維持する効果が最低限となり得る。
【実施例】
【0050】
本発明を、実施例を用いて以下にさらに詳細に説明する。以下の材料を用いて各実施例のプリプレグを得た。なお、実施例6、8、16は参考実施例である。
【0051】
(炭素繊維)
・トレカ(登録商標)T700G−12K−31E(繊維数12,000、引張強度4.9GPa、引張弾性率240GPa、および引張伸び2.0%を有する東レ(株)製の炭素繊維)
・トレカ(登録商標)T700S−12K−50C(繊維数12,000、引張強度4.9GPa、引張弾性率230GPa、および引張伸び2.1%を有する東レ(株)製の炭素繊維)。
【0052】
(エポキシ樹脂)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂、Araldite(登録商標)LY1556(Huntsman Advanced Materials製)
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、Araldite(登録商標)MY9655(Huntsman Advanced Materials製)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂、Araldite(登録商標)EPN1180(Huntsman Advanced Materials製)
・ジグリシジルアニリン、GAN(日本化薬(株)製)。
【0053】
(熱可塑性樹脂)
・末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン、スミカエクセル(登録商標)PES5003P(住友化学(株)製)。
【0054】
(硬化剤)
・ジシアンジアミド、Dyhard(登録商標)100S(Alz Chem Trostberg GmbH製)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、Aradur(登録商標)9664−1(Huntsman Advanced Materials製)。
【0055】
(促進剤)
・2,4−トルエンビスジメチル尿素、OMICURE(登録商標)U−24(CVC Thermoset Specialties製)
・3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、Dyhard(登録商標)UR200(Alz Chem Trostberg GmbH製)。
【0056】
以下の測定方法を使用し、各実施例のエポキシ樹脂組成物およびプリプレグを測定した。
【0057】
(1)エポキシ樹脂組成物の粘度の測定
エポキシ樹脂組成物を、パラレルプレートを使用した動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用し、単純に温度を2℃/分の速度で昇温させながら、歪み100%、周波数0.5Hz、およびプレート間隔1mmで、40℃から130℃までで測定した。最低粘度に達したときの温度を硬化開始温度として使用する。
【0058】
(2)硬化エポキシ樹脂の弾性率
エポキシ樹脂組成物の温度を1.5℃/分の速度で130℃まで昇温させ、120分間硬化させて、2mmの厚さを有する樹脂板を作製した。次に、この樹脂板を長さ60mmおよび幅10mmに切断し、次いで、JIS K7171−2008に準拠した3点曲げ試験を用いて測定した。
【0059】
(3)硬化エポキシ樹脂のガラス転移温度および吸湿後のガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物の温度を1.5℃/分の速度で130℃まで昇温させ、120分間硬化させて、2mmの厚さを有する樹脂板を作製した。次に、この樹脂板を長さ60mmおよび幅10mmに切断した。樹脂板のガラス転移温度を、動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用してSACMA SRM 18R−94に従って測定した。吸湿後のガラス転移温度を測定する際は、長さ60mmおよび幅10mmの樹脂板を沸騰水中に24時間浸漬させた。測定は、動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instruments製)を使用してSACMA SRM 18R−94に従って行なった。しかしながら、測定は矩形ねじりモードで行ない、測定振動数は1Hzとし、昇温速度は5℃/分とした。ガラス転移温度は、温度−貯蔵弾性率曲線のガラス領域の接線とガラス領域からゴム領域までの転移領域の接線との交点を見出すことにより求め、該交点における温度をガラス転移温度とみなした。
【0060】
(4)繊維強化複合材料の圧縮強度の測定
8層の一方向プリプレグを[0°]構成に積層し、25℃および真空度0.095MPaで脱気し、次いで、真空度を0.095MPaに維持する一方で温度を1.5℃の速度で130℃の温度まで昇温させ、120分間維持してプリプレグを硬化させ、長さ300mmおよび幅300mmの積層体を作製した。この積層体での繊維強化複合材料の圧縮強度を、SACMA SRM 1R−94に従って測定した。
【0061】
(5)繊維強化複合材料のボイド率の測定
16層の一方向プリプレグを[0°]構成に積層し、25℃および真空度0.095MPaで脱気し、次いで、真空度を0.095MPaに維持する一方で、温度を1.5℃の速度で130℃の温度まで昇温させ、120分間維持してプリプレグを硬化させ、長さ300mmおよび幅150mmの積層体を作製した。この積層体から長さ10mm×幅10mmの試験片を切り出し、断面を研磨し、次いで、50倍以上の拡大で光学顕微鏡を使用して、積層体の上部表面および底部表面が視野内に収まるように写真を撮影した。断面積に対するボイドの表面積比を計算し、ボイド率として使用した。
【0062】
(6)プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率の測定
プリプレグを平滑なポリ四フッ素化エチレン樹脂板の2つの表面間に挟んで付着させ、40〜130℃で10日間かけて徐々に硬化させて板状の硬化樹脂を作製した。硬化後、接着表面に対して直行する方向から切断片を切り出し、50倍以上の拡大で光学顕微鏡を使用して、プリプレグの上部表面および底部表面が視野内に収まるように断面の写真を撮影した。断面積に対する樹脂含浸部の表面積比を計算し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率として使用した。
【0063】
(実施例1)
混練機内の90重量部のAraldite(登録商標)MY9655および10重量部のAraldite(登録商標)LY1556に添加して溶解させた10重量部のPES5003P、次いで、硬化剤として3重量部のDyhard(登録商標)100S、10重量部のAradur(登録商標)9664−1を混練し、次いで、促進剤として5重量部のOMICURE(登録商標)U−24を混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0064】
作製されたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、2枚の40.4g/mの樹脂フィルムシートを作製した。次に、作製した前述の2枚の樹脂フィルムシートを、シートの形態で一方向に配列された炭素繊維(T700G−12K−31E)の両面に重ね、120℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を用いて樹脂を含浸させ、150g/mの炭素繊維目付および35%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。
【0065】
作製した一方向プリプレグを使用し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率、繊維強化複合材料の圧縮強度、およびボイド率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2〜8および12〜17ならびに比較例1〜4および6〜9)
炭素繊維、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤および促進剤の種類および量を1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様の様式でプリプレグを作製した。
【0067】
比較例8では、エポキシ樹脂組成物の粘度が高すぎ、そのため、プリプレグを作製することができなかった。
【0068】
作製した一方向プリプレグを使用し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率、繊維強化複合材料の圧縮強度、およびボイド率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
(実施例9)
混練機内の70重量部のAraldite(登録商標)MY9655および30重量部のAraldite(登録商標)LY1556に添加して溶解させた10重量部のPES5003P、次いで、硬化剤として3重量部のDyhard(登録商標)100S、10重量部のAradur(登録商標)9664−1を混練し、次いで、促進剤として5重量部のOMICURE(登録商標)U−24を混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0070】
作製されたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、2枚の40.4g/mの樹脂フィルムシートを作製した。次に、作製した前述の2枚の樹脂フィルムシートを、シートの形態で一方向に配列された炭素繊維(T700G−12K−31E)の両面に重ね、90℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を使用して樹脂を含浸させ、150g/mの炭素繊維目付および35%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。作製した一方向プリプレグを使用し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率、繊維強化複合材料の圧縮強度、およびボイド率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
(実施例10および11)
ローラー温度が実施例10では70℃であり、実施例11のローラー温度は100℃であったこと以外は、実施例9と同様にしてプリプレグを作製した。作製した一方向プリプレグを使用し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率、繊維強化複合材料の圧縮強度、およびボイド率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
(実施例18)
混練機内の70重量部のAraldite(登録商標)MY9655および30重量部のAraldite(登録商標)LY1556に添加して溶解させた10重量部のPES5003P、次いで、硬化剤として3重量部のDyhard(登録商標)100S、10重量部のAradur(登録商標)9664−1を混練し、次いで、促進剤として5重量部のOMICURE(登録商標)U−24を混練し、エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0073】
作製されたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、2枚の68.8g/mの樹脂フィルムシートを作製した。次に、作製した前述の2枚の樹脂フィルムシートをT700S−12K−50C製の平織物の両面に重ね、100℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を用いて樹脂を含浸させ、190g/mの炭素繊維の繊維目付および42%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。作製した平織物プリプレグを使用してプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率を測定し、その結果は75%であった。圧縮強度の測定値および繊維強化複合材料のボイド率を測定し、結果は、それぞれ、924MPaおよび0.7%であった。
【0074】
(実施例19)
実施例18で作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、1枚の137.6g/mの樹脂フィルムを作製した。次に、作製した前述の樹脂フィルムシートをT700S−12K−50C製の平織物の一方の面に重ね、100℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を用いて樹脂を含浸させ、190g/mの炭素繊維の繊維目付および42%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。作製した平織物プリプレグを使用してプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率を測定し、その結果は77%であった。圧縮強度の測定値および繊維強化複合材料のボイド率を測定し、結果は、それぞれ、953MPaおよび0.3%であった。
【0075】
(実施例20)
実施例1と同じ方法によって一方向プリプレグを作製した。作製した一方向プリプレグを使用して繊維強化複合材料の圧縮強度およびボイド率を測定する際には、実施例1〜18ならびに比較例1〜8とは異なる以下の硬化方法を用いて繊維強化複合材料を作製した。この測定方法では、評価において、前述の(4)および(5)の測定方法を使用した。
【0076】
圧縮強度の測定に使用した積層板は、8層の一方向プリプレグを[0°]構成に積層し、25℃および真空度0.095MPaで脱気し、次いで、真空度を0.095MPaに維持する一方で、温度を1.5℃の速度で90℃の温度まで昇温させ、90分間維持し、次いで、1.5℃の速度で130℃の温度まで昇温させ、120分間維持してプリプレグを硬化させ、長さ300mmおよび幅300mm幅の積層体を作製することにより作製した。
【0077】
ボイドの測定に使用した積層板は、16層の一方向プリプレグを[0°]構成に積層し、25℃および真空度0.095MPaで脱気し、次いで、真空度を0.095MPaに維持する一方で、温度を1.5℃の速度で90℃の温度まで昇温させ、90分間維持し、次いで、1.5℃の速度で130℃の温度まで昇温させ、120分間維持してプリプレグを硬化させ、長さ300mmおよび幅300mm幅の積層体を作製することにより作製した。圧縮強度の測定値および繊維強化複合材料のボイド率を測定し、結果は、それぞれ、1497MPaおよび0.3%であった。
【0078】
(実施例21)
実施例18で作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、2枚の68.8g/mの樹脂フィルムを作製した。次に、作製した前述の樹脂フィルムシートをT300B−3K製の平織物の一方の面に重ね、100℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を使用して樹脂を含浸させ、190g/mの炭素繊維の繊維目付および42%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。作製した平織物プリプレグを使用してプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率を測定し、その結果は77%であった。圧縮強度の測定値および繊維強化複合材料のボイド率を測定し、結果は、それぞれ、706.0MPaおよび0.3%であった。
【0079】
(実施例22)
実施例18で作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、2枚の68.8g/mの樹脂フィルムを作製した。次に、作製した前述の樹脂フィルムシートをT300JB−3K−40B製の平織物の2つの面に重ね、100℃のローラー温度および0.07MPaのローラー圧力を使用して樹脂を含浸させ、190g/mの炭素繊維の繊維目付および42%のマトリックス樹脂重量含有率を有する一方向プリプレグを作製した。作製した平織物プリプレグを使用してプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率を測定し、その結果は77%であった。圧縮強度の測定値および繊維強化複合材料のボイド率を測定し、結果は、それぞれ、761.2MPaおよび0.3%であった。
【0080】
(実施例23)
透過性を増大させ、プリプレグのガス発生時間を低減させるため0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%のウィンドウ領域を有する織物を実施例18、19および21〜22で使用した。
【0081】
(比較例5)
炭素繊維、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤および促進剤の種類および量を1に示したように変更したこと以外は、実施例9と同様の様式でプリプレグを作製した。作製した一方向プリプレグを使用し、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率、繊維強化複合材料の圧縮強度、およびボイド率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例1〜18ならびに比較例1〜9を比較することにより、硬化開始時点で特定の室温粘度範囲、特定の硬化開始温度および特定の粘度範囲を有する実施例1〜18のエポキシ樹脂組成物は、航空機用の構造材料における使用に適した優れた機械的特性、耐熱性および耐環境性を与えることができ、オートクレーブでのものと同等の高いパネル品質を与えることができることがわかる。
【0084】
実施例2および実施例9〜11を比較することにより、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含浸率を低減させることによって強化繊維の未含浸部分が通気路として利用されることにより、繊維強化複合材料のボイド率が低減されることがわかる。
【0085】
実施例1〜18ならびに比較例2、4および6〜7を比較することにより、特定の陪審員開始温度を有しないエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂組成物によって引き起こされる水蒸気の形成が抑制され得ず、したがって、得られる繊維強化複合材料中に多数のボイドが形成されることがわかる。
【0086】
実施例1〜3および比較例1を比較することにより、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂の配合量が60重量部以上である場合、プリプレグの積層時に閉じ込められた空気が低減されること、および驚くべきことに、得られる繊維強化複合材料中のボイドが、マトリックス樹脂の樹脂流動性を最適化することによって低減され得ることがわかる。
【0087】
実施例2および4〜5を比較例6および7ならびに実施例6と比較することにより、マトリックス樹脂に対する優れた保存安定性、マトリックス樹脂に対する促進、および強化繊維に対する接着性が与えられ得るだけでなく、驚くべきことに、尿素化合物、特に2,4−トルエンビスジメチル尿素を添加することによりオートクレーブでのものと同等の低ボイドを有する優れた繊維強化複合材料が提供され得る。