(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010438
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】量子ビーム生成装置、量子ビーム生成方法、及び、レーザ核融合装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/04 20060101AFI20161006BHJP
G21B 1/03 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
G21K5/04 E
G21B1/00 V
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-258815(P2012-258815)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-106093(P2014-106093A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】関根 尊史
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 利幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仲弘
(72)【発明者】
【氏名】北川 米喜
(72)【発明者】
【氏名】森 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】花山 良平
(72)【発明者】
【氏名】米田 修
(72)【発明者】
【氏名】西村 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】掛布 光孝
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−017789(JP,A)
【文献】
特開2007−088267(JP,A)
【文献】
特開2007−288190(JP,A)
【文献】
S. Sudo, et al.,"Tracer-encapsulated solid pellet injection system",Review of Scientific Instruments,AIP pulishing,2012年 2月,Volume 83, No. 2,Page 023503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/04
G21B 1/03
H01L 21/027
B01J 19/08 −19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビーム生成装置であって、
ターゲットが量子ビーム生成反応を起こすチャンバと、
前記ターゲットを前記チャンバに供給するターゲット供給装置と、
前記チャンバの内側にある前記ターゲットを監視するターゲット監視装置と、
前記チャンバの内側にある前記ターゲットにレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、
前記ターゲット監視装置による監視結果に基づいて、前記ターゲット供給装置と前記レーザ光照射装置とを制御する制御装置と、
を備え、
前記ターゲット供給装置は、前記ターゲットを出射する出射口を備え、前記制御装置によって制御される出射タイミングで、前記ターゲットを、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、前記出射口から出射し、
前記ターゲット監視装置は、位置検出器と時間検出器とを備え、
前記位置検出器は、監視領域における前記ターゲットの通過位置を検出し、前記通過位置を示す位置情報を、前記制御装置に送信し、
前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、
前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、
前記時間検出器は、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記入射時間を示す入射時間情報と前記出射時間を示す出射時間情報とを、前記制御装置に送信し、
前記レーザ光照射装置は、レーザ光出力器と集光光学装置とを備え、
前記レーザ光出力器は、前記制御装置による制御のもとで、レーザ光を出力し、
前記集光光学装置は、前記レーザ光出力器から出力されるレーザ光を、前記制御装置による制御に基づいて、集光し、
前記制御装置は、前記位置情報を用いて、レーザ光の照射点を算出し、前記照射点に基づく集光制御情報を、前記集光光学装置に送信し、前記監視領域の幅と、前記入射時間情報と、前記出射時間情報と、前記監視領域から照射点までの距離と、を用いて、前記照射点へのターゲットの到達タイミングを算出し、前記到達タイミングに基づくレーザ制御情報を、前記レーザ光出力器に送信し、
前記集光制御情報は、前記レーザ光出力器からのレーザ光を前記照射点に集光するよう前記集光光学装置を制御するための情報であり、
前記レーザ制御情報は、前記到達タイミングでレーザ光を出力するよう前記レーザ光出力器を制御するための情報であり、
前記ターゲット供給装置は、支持台と円板とタンクと駆動装置とを備え、
前記支持台は、主面と裏面と出射孔とを備え、
前記出射孔は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記出射口を備え、前記主面から前記裏面に貫通し、
前記円板は、当該円板の縁に沿って、予め設定された間隔に、複数の貫通孔を備え、
前記円板の中心は、前記貫通孔が前記出射孔と重なるように、前記主面に対し回転可能に保持され、
前記貫通孔は、前記主面の上において前記ターゲットを収容可能であり、
前記タンクは、本体と供給管とを備え、前記円板の上に配置され、
前記本体は、複数の前記ターゲットを格納可能であり、
前記供給管は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記本体に接続され、複数の前記貫通孔の全ての中心を通る円周の上に配置され、
前記駆動装置は、回転軸とモータとを備え、
前記回転軸は、前記円板の中心において、前記円板に固定され、前記円板と共に回転可能であり、
前記モータは、前記回転軸に接続され、前記制御装置による制御のもとで、前記回転軸を回転する、
ことを特徴とする量子ビーム生成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、複数の前記ターゲットを、順次、周期的に、前記出射口から出射するように、前記ターゲット供給装置を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の量子ビーム生成装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、センサを備え、
前記センサは、前記回転軸の回転数と前記回転軸の軸位置とを検出し、前記回転数と前記軸位置とを示す回転情報を、前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記回転情報に基づいて、前記円板の回転運動を制御し、
前記軸位置は、前記回転軸の回転方向における位置である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の量子ビーム生成装置。
【請求項4】
前記ターゲット供給装置は、出射補助器を備え、
前記出射補助器は、前記出射孔の上に配置され、前記制御装置による制御のもとで、前記出射孔にある前記ターゲットに対し前記出射方向に向けて加圧することが可能であり、
前記制御装置は、前記回転情報に基づいて、前記円板の回転に伴って前記円板の前記貫通孔が前記出射孔に重なる加圧タイミングを算出し、前記加圧タイミングに基づく加圧制御情報を、前記出射補助器に送信し、
前記加圧制御情報は、前記加圧タイミングで加圧するように前記出射補助器を制御するための情報である、
ことを特徴とする請求項3に記載の量子ビーム生成装置。
【請求項5】
量子ビーム生成方法であって、
量子ビーム生成を生じさせるターゲットをチャンバの内側に出射する出射工程と、
前記チャンバの内側におけるレーザ光の照射点を予測する予測工程と、
レーザ光の照射を準備する準備工程と、
レーザ光を出力する出力工程と、
を備え、
前記出射工程では、前記ターゲットを、制御可能な出射タイミングで、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、ターゲット供給装置が出射し、
前記予測工程では、監視領域におけるターゲットの通過位置を検出し、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記通過位置を用いて、前記照射点を算出し、前記監視領域の幅と、前記入射時間と、前記出射時間と、前記監視領域から前記照射点までの距離と、を用いて、前記照射点への前記ターゲットの到達タイミングを算出し、
前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、
前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、
前記準備工程では、前記照射点にレーザ光を集光できるようにし、
前記出力工程では、前記到達タイミングにレーザ光を出力し、
前記ターゲット供給装置は、前記ターゲットを出射する出射口を備え、支持台と円板とタンクと駆動装置とを備え、
前記支持台は、主面と裏面と出射孔とを備え、
前記出射孔は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記出射口を備え、前記主面から前記裏面に貫通し、
前記円板は、当該円板の縁に沿って、予め設定された間隔に、複数の貫通孔を備え、
前記円板の中心は、前記貫通孔が前記出射孔と重なるように、前記主面に対し回転可能に保持され、
前記貫通孔は、前記主面の上において前記ターゲットを収容可能であり、
前記タンクは、本体と供給管とを備え、前記円板の上に配置され、
前記本体は、複数の前記ターゲットを格納可能であり、
前記供給管は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記本体に接続され、複数の前記貫通孔の全ての中心を通る円周の上に配置され、
前記駆動装置は、回転軸とモータとを備え、
前記回転軸は、前記円板の中心において、前記円板に固定され、前記円板と共に回転可能であり、
前記モータは、前記回転軸に接続され、前記回転軸を回転する、
ことを特徴とする量子ビーム生成方法。
【請求項6】
前記出射工程では、複数の前記ターゲットを、順次、周期的に、出射する、ことを特徴とする請求項5に記載の量子ビーム生成方法。
【請求項7】
レーザ核融合装置であって、
ターゲットが核融合反応を起こすチャンバと、
前記ターゲットを前記チャンバに供給するターゲット供給装置と、
前記チャンバの内側にある前記ターゲットを監視するターゲット監視装置と、
前記チャンバの内側にある前記ターゲットにレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、
前記ターゲット監視装置による監視結果に基づいて、前記ターゲット供給装置と前記レーザ光照射装置とを制御する制御装置と、
を備え、
前記ターゲット供給装置は、前記ターゲットを出射する出射口を備え、前記制御装置によって制御される出射タイミングで、前記ターゲットを、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、前記出射口から出射し、
前記ターゲット監視装置は、位置検出器と時間検出器とを備え、
前記位置検出器は、監視領域における前記ターゲットの通過位置を検出し、前記通過位置を示す位置情報を、前記制御装置に送信し、
前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、
前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、
前記時間検出器は、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記入射時間を示す入射時間情報と前記出射時間を示す出射時間情報とを、前記制御装置に送信し、
前記レーザ光照射装置は、レーザ光出力器と集光光学装置とを備え、
前記レーザ光出力器は、前記制御装置による制御のもとで、レーザ光を出力し、
前記集光光学装置は、前記レーザ光出力器から出力されるレーザ光を、前記制御装置による制御に基づいて、集光し、
前記制御装置は、前記位置情報を用いて、レーザ光の照射点を算出し、前記照射点に基づく集光制御情報を、前記集光光学装置に送信し、前記監視領域の幅と、前記入射時間情報と、前記出射時間情報と、前記監視領域から照射点までの距離と、を用いて、前記照射点へのターゲットの到達タイミングを算出し、前記到達タイミングに基づくレーザ制御情報を、前記レーザ光出力器に送信し、
前記集光制御情報は、前記レーザ光出力器からのレーザ光を前記照射点に集光するよう前記集光光学装置を制御するための情報であり、
前記レーザ制御情報は、前記到達タイミングでレーザ光を出力するよう前記レーザ光出力器を制御するための情報であり、
前記ターゲットの材料は、水素同位体を含む材料であり、
前記ターゲット供給装置は、支持台と円板とタンクと駆動装置とを備え、
前記支持台は、主面と裏面と出射孔とを備え、
前記出射孔は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記出射口を備え、前記主面から前記裏面に貫通し、
前記円板は、当該円板の縁に沿って、予め設定された間隔に、複数の貫通孔を備え、
前記円板の中心は、前記貫通孔が前記出射孔と重なるように、前記主面に対し回転可能に保持され、
前記貫通孔は、前記主面の上において前記ターゲットを収容可能であり、
前記タンクは、本体と供給管とを備え、前記円板の上に配置され、
前記本体は、複数の前記ターゲットを格納可能であり、
前記供給管は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記本体に接続され、複数の前記貫通孔の全ての中心を通る円周の上に配置され、
前記駆動装置は、回転軸とモータとを備え、
前記回転軸は、前記円板の中心において、前記円板に固定され、前記円板と共に回転可能であり、
前記モータは、前記回転軸に接続され、前記制御装置による制御のもとで、前記回転軸を回転する、
ことを特徴とするレーザ核融合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ビーム生成装置と量子ビーム生成方法とレーザ核融合装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、制御された核融合反応からエネルギを取り出すためのシステムを開示する。このシステムは、核融合ターゲット材料を受け入れるためのターゲット室を含む。制御された核融合反応を生じさせるべくターゲット室内のターゲット材料にエネルギを供給し、核融合プラズマ及び熱の形態でエネルギを放出するため、複数のエネルギ・ドライバがターゲット室の周囲に配置されている。核融合反応からエネルギを取り出すための複数の構造が設けられている。これらの構造は、核融合プラズマから高圧電流電力を取り出すための装置と、ターゲット室から熱エネルギを取り出すための手段とを備える。エネルギ・ドライバに対する電力は、核融合反応から取り出される高圧直流電力から供給することができる。このエネルギ・ドライバは、流体力学的不安定性を回避すべく、核融合反応を生じさせるための駆動エネルギの波面に所望形状を与えるためのアポダイジング・フィルタを使用する。
【0003】
特許文献2は、ターゲットにレーザ光を照射してプラズマ化し、その際に発生するEUV光を出力として取り出すレーザプラズマEUV光源を開示する。このレーザプラズマEUV光源は、ターゲットとして、レーザ光の集光径とほぼ等しい寸法の板状ターゲットを使用している。スリット状の開口を有するノズルから円板の方向を揃えてターゲットを噴出する。ターゲットはガス流に乗せて搬送される。この例ではHeガスを用いている。ノズルの外部は高真空に保たれているので、ノズルから放出されたターゲットは、そのままの姿勢で、レーザ光の照射位置に達する。ターゲットの供給と同期させてNd:YAGレーザ光源からパルスレーザー光をレンズで集光してターゲットへ照射する。レーザのスポット径はターゲットの直径と同じ1mmとされ、その厚さは1000nm以下である。よって、ターゲットのほぼ全てがプラズマ化され、debrisの発生が抑えられる共に、変換効率が高くなる。
【0004】
非特許文献1は、リニアサボー式及びエアガン式の長尺のターゲット加速機構を用いた技術を開示する。非特許文献2は、サボー式のターゲット加速機構の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−539117号公報
【特許文献2】再表2006/075535号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“4.ターゲット製造・インジェクション系設計”、乗松孝好、遠藤琢磨、吉田弘樹、岩本晃史、J.Plasma Fusion Res. Vol82, No12(2006)829-835。
【非特許文献2】GENERAL ATOMICS社のカタログ“IFT Catalog”、“11.INTERIAL FUSION ENERGY”、URL:http://www.ga.com/media/GA/energy/IFT_Catalog.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の量子ビーム生成装置は、量子ビームを自動的に連続的に生成できるものにはなっていない。そこで、本発明の目的は、上記の事項を鑑みてなされたものであり、自動的に連続して量子ビーム生成が行える量子ビーム生成装置と量子ビーム生成方法とレーザ核融合装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る量子ビーム生成装置は、ターゲットが量子ビーム生成反応を起こすチャンバと、前記ターゲットを前記チャンバに供給するターゲット供給装置と、前記チャンバの内側にある前記ターゲットを監視するターゲット監視装置と、前記チャンバの内側にある前記ターゲットにレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、前記ターゲット監視装置による監視結果に基づいて、前記ターゲット供給装置と前記レーザ光照射装置とを制御する制御装置と、を備え、前記ターゲット供給装置は、前記ターゲットを出射する出射口を備え、前記制御装置によって制御される出射タイミングで、前記ターゲットを、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、前記出射口から出射し、前記ターゲット監視装置は、位置検出器と時間検出器とを備え、前記位置検出器は、監視領域における前記ターゲットの通過位置を検出し、前記通過位置を示す位置情報を、前記制御装置に送信し、前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、前記時間検出器は、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記入射時間を示す入射時間情報と前記出射時間を示す出射時間情報とを、前記制御装置に送信し、前記レーザ光照射装置は、レーザ光出力器と集光光学装置とを備え、前記レーザ光出力器は、前記制御装置による制御のもとで、レーザ光を出力し、前記集光光学装置は、前記レーザ光出力器から出力されるレーザ光を、前記制御装置による制御に基づいて、集光し、前記制御装置は、前記位置情報を用いて、レーザ光の照射点を算出し、前記照射点に基づく集光制御情報を、前記集光光学装置に送信し、前記監視領域の幅と、前記入射時間情報と、前記出射時間情報と、前記監視領域から照射点までの距離と、を用いて、前記照射点へのターゲットの到達タイミングを算出し、前記到達タイミングに基づくレーザ制御情報を、前記レーザ光出力器に送信し、前記集光制御情報は、前記レーザ光出力器からのレーザ光を前記照射点に集光するよう前記集光光学装置を制御するための情報であり、前記レーザ制御情報は、前記到達タイミングでレーザ光を出力するよう前記レーザ光出力器を制御するための情報である。このように、制御装置によって制御される出射タイミングで、量子ビーム生成反応を起こすターゲットが、ターゲット供給装置によってチャンバの内側に供給され、チャンバの内側におけるターゲットの運動は、ターゲット監視装置によって監視され、制御装置は、この監視結果に基づいて、ターゲットにレーザ光を照射する。従って、ターゲットの供給と、ターゲットへのレーザ光の照射とが、制御装置によって、自動的に行われるので、制御装置による制御によって、連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0009】
本発明に係る量子ビーム生成装置において、前記制御装置は、複数の前記ターゲットを、順次、周期的に、前記出射口から出射するように、前記ターゲット供給装置を制御する。従って、制御装置による制御によって、周期的で連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0010】
本発明に係る量子ビーム生成装置において、前記ターゲット供給装置は、支持台と円板とタンクと駆動装置とを備え、前記支持台は、主面と裏面と出射孔とを備え、前記出射孔は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記出射口を備え、前記主面から前記裏面に貫通し、前記円板は、当該円板の縁に沿って、予め設定された間隔に、複数の貫通孔を備え、前記円板の中心は、前記貫通孔が前記出射孔と重なるように、前記主面に対し回転可能に保持され、前記貫通孔は、前記主面の上において前記ターゲットを収容可能であり、前記タンクは、本体と供給管とを備え、前記円板の上に配置され、前記本体は、複数の前記ターゲットを格納可能であり、前記供給管は、前記ターゲットの通過が可能な径を備え、前記本体に接続され、複数の前記貫通孔の全ての中心を通る円周の上に配置され、前記駆動装置は、回転軸とモータとを備え、前記回転軸は、前記円板の中心において、前記円板に固定され、前記円板と共に回転可能であり、前記モータは、前記回転軸に接続され、前記制御装置による制御のもとで、前記回転軸を回転する。従って、ターゲットが等間隔に配置された円板を回転することによって、ターゲットを順次チャンバに供給できる。従って、ターゲットが等間隔に配置された円板を用いることによって、周期的及び連続的な量子ビーム生成が、実現できる。
【0011】
本発明に係る量子ビーム生成装置において、前記駆動装置は、センサを備え、前記センサは、前記回転軸の回転数と前記回転軸の軸位置とを検出し、前記回転数と前記軸位置とを示す回転情報を、前記制御装置に送信し、前記制御装置は、前記回転情報に基づいて、前記円板の回転運動を制御し、前記軸位置は、前記回転軸の回転方向における位置である。このように、センサを用いて、円板の回転状態を認識できるので、制御装置は、任意に設定する周期で円板を回転させることができる。従って、任意に設定する周期で、連続的に量子ビーム生成が可能となる。
【0012】
本発明に係る量子ビーム生成装置において、前記ターゲット供給装置は、出射補助器を備え、前記出射補助器は、前記出射孔の上に配置され、前記制御装置による制御のもとで、前記出射孔にある前記ターゲットに対し前記出射方向に向けて加圧することが可能であり、前記制御装置は、前記回転情報に基づいて、前記円板の回転に伴って前記円板の前記貫通孔が前記出射孔に重なる加圧タイミングを算出し、前記加圧タイミングに基づく加圧制御情報を、前記出射補助器に送信し、前記加圧制御情報は、前記加圧タイミングで加圧するように前記出射補助器を制御するための情報である。出射補助器によって、ターゲットが強制的に出射されるので、出射タイミングであるにもかかわらず、出射が行われない、という事態が、回避できる。更に、高速度でターゲットを出射できるため、低温に冷却されたターゲットを使用した場合においても、温度を維持したまま短時間の内に照射点まで供給することが可能となる。
【0013】
本発明に係る量子ビーム生成方法は、量子ビーム生成を生じさせるターゲットをチャンバの内側に出射する出射工程と、前記チャンバの内側におけるレーザ光の照射点を予測する予測工程と、レーザ光の照射を準備する準備工程と、レーザ光を出力する出力工程と、を備え、前記出射工程では、前記ターゲットを、制御可能な出射タイミングで、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、出射し、前記予測工程では、監視領域におけるターゲットの通過位置を検出し、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記通過位置を用いて、前記照射点を算出し、前記監視領域の幅と、前記入射時間と、前記出射時間と、前記監視領域から前記照射点までの距離と、を用いて、前記照射点への前記ターゲットの到達タイミングを算出し、前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、前記準備工程では、前記照射点にレーザ光を集光できるようにし、前記出力工程では、前記到達タイミングにレーザ光を出力する。このように、制御可能な出射タイミングで、量子ビーム生成反応を起こすターゲットが、チャンバの内側に供給され、チャンバの内側におけるターゲットの運動は監視され、この監視結果に基づいて、ターゲットにレーザ光が照射される。従って、ターゲットの供給と、ターゲットへのレーザ光の照射とが、自動的に行われるので、連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0014】
本発明に係る量子ビーム生成方法において、前記出射工程では、複数の前記ターゲットを、順次、周期的に、出射する。従って、周期的で連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0015】
本発明に係るレーザ核融合装置は、ターゲットが核融合反応を起こすチャンバと、前記ターゲットを前記チャンバに供給するターゲット供給装置と、前記チャンバの内側にある前記ターゲットを監視するターゲット監視装置と、前記チャンバの内側にある前記ターゲットにレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、前記ターゲット監視装置による監視結果に基づいて、前記ターゲット供給装置と前記レーザ光照射装置とを制御する制御装置と、を備え、前記ターゲット供給装置は、前記ターゲットを出射する出射口を備え、前記制御装置によって制御される出射タイミングで、前記ターゲットを、前記チャンバの内側における予め設定された出射方向に、前記出射口から出射し、前記ターゲット監視装置は、位置検出器と時間検出器とを備え、前記位置検出器は、監視領域における前記ターゲットの通過位置を検出し、前記通過位置を示す位置情報を、前記制御装置に送信し、前記監視領域は、前記チャンバの内側において前記出射方向に交差する位置に、予め設定され、前記通過位置は、前記出射方向に垂直な面内における位置を示し、前記時間検出器は、前記ターゲットが前記監視領域に入射する入射時間と前記ターゲットが前記監視領域を出射する出射時間とを測定し、前記入射時間を示す入射時間情報と前記出射時間を示す出射時間情報とを、前記制御装置に送信し、前記レーザ光照射装置は、レーザ光出力器と集光光学装置とを備え、前記レーザ光出力器は、前記制御装置による制御のもとで、レーザ光を出力し、前記集光光学装置は、前記レーザ光出力器から出力されるレーザ光を、前記制御装置による制御に基づいて、集光し、前記制御装置は、前記位置情報を用いて、レーザ光の照射点を算出し、前記照射点に基づく集光制御情報を、前記集光光学装置に送信し、前記監視領域の幅と、前記入射時間情報と、前記出射時間情報と、前記監視領域から照射点までの距離と、を用いて、前記照射点へのターゲットの到達タイミングを算出し、前記到達タイミングに基づくレーザ制御情報を、前記レーザ光出力器に送信し、前記集光制御情報は、前記レーザ光出力器からのレーザ光を前記照射点に集光するよう前記集光光学装置を制御するための情報であり、前記レーザ制御情報は、前記到達タイミングでレーザ光を出力するよう前記レーザ光出力器を制御するための情報であり、前記ターゲットの材料は、水素同位体を含む材料である。このように、制御装置によって制御される出射タイミングで、核融合反応を起こすターゲットが、ターゲット供給装置によってチャンバの内側に供給され、チャンバの内側におけるターゲットの運動は、ターゲット監視装置によって監視され、制御装置は、この監視結果に基づいて、ターゲットにレーザ光を照射する。従って、ターゲットの供給と、ターゲットへのレーザ光の照射とが、制御装置によって、自動的に行われるので、制御装置による制御によって、連続的な核融合反応が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動的に連続して量子ビーム生成が行える量子ビーム生成装置と量子ビーム生成方法と、レーザ核融合装置とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る量子ビーム生成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る量子ビーム生成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態に係る量子ビーム生成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る量子ビーム生成装置の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る量子ビーム生成装置1aの構成を説明する。
図1及び
図2は、いずれも、量子ビーム生成装置1aの構成を模式的に示す図である。
【0019】
量子ビーム生成装置1aは、チャンバ3aと、ターゲット供給装置4aと、ターゲット監視装置5aと、レーザ光照射装置6aと、制御装置7aとを備える。チャンバ3aは、ターゲット2aが量子ビーム生成反応を起こす空間を画定する。ターゲット供給装置4aは、ターゲット2aをチャンバ3aに供給する。ターゲット監視装置5aは、チャンバ3aの内側にあるターゲット2aを監視する。レーザ光照射装置6aは、チャンバ3aの内側にあるターゲット2aにレーザ光8aを照射する。制御装置7aは、ターゲット監視装置5aによる監視結果に基づいて、ターゲット供給装置4aとレーザ光照射装置6aとを制御する。
【0020】
ターゲット供給装置4aは、ターゲット2aを出射する出射口9bを備える。ターゲット供給装置4aは、制御装置7aによって制御される出射タイミングで、ターゲット2aを、チャンバ3aの内側における予め設定された出射方向3dに、出射口9bから出射する。
【0021】
ターゲット供給装置4aは、支持台9aと円板10aとタンク1bと駆動装置2bとを備える。支持台9aは、主面4bと裏面5bと出射孔8bとを備える。出射孔8bは、ターゲット2aの通過が可能な径を備える。出射孔8bは、出射口9bを備える。出射孔8bは、主面4bから裏面5bに貫通する。出射口9bは、裏面5bの側の開口である。
【0022】
円板10aは、円板10aの縁7bに沿って、予め設定された間隔(例えば、等間隔)に、複数の貫通孔6bを備える。円板10aの中心10bは、貫通孔6bが出射孔8bと重なるように、主面4bに対し回転可能に保持される。貫通孔6bは、主面4bの上においてターゲット2aを収容可能である。
【0023】
タンク1bは、本体1cと供給管2cとを備える。タンク1bは、円板10aの上に配置される。本体1cは、複数のターゲット2aを格納可能である。供給管2cは、ターゲット2aの通過が可能な径を備える。供給管2cは、本体1cに接続される。供給管2cは、複数の貫通孔6bの全ての中心を通る円周10b1の上に配置される。
【0024】
駆動装置2bは、回転軸4cとモータ3cとを備える。回転軸4cは、円板10aの中心10bにおいて、円板10aに固定され、円板10aと共に回転可能である。モータ3cは、回転軸4cに接続される。モータ3cは、制御装置7aによる制御のもとで、回転軸4cを回転する。
【0025】
駆動装置2bは、センサ5cを備える。センサ5cは、回転軸4cの回転数と回転軸4cの軸位置とを検出する。センサ5cは、回転軸4cの回転数と回転軸4cの軸位置とを示す回転情報1eを、制御装置7aに送信する。回転軸4cの軸位置は、回転軸4cの回転方向における位置である。本実施形態において、情報とは、制御装置7aのCPUが読み取り可能な電子データを意味する。
【0026】
ターゲット供給装置4aは、出射補助器3bを備える。出射補助器3bは、出射孔8bの上に配置される。出射補助器3bは、制御装置7aによる制御のもとで、出射孔8bの上にあるターゲット2aに対し、出射方向3dに向けて加圧することが可能である。出射補助器3bは、例えば、ガスを出射方向3dに向けて噴射することによって、ターゲット2aを加圧する。
【0027】
ターゲット監視装置5aは、位置検出器7cと時間検出器6cとを備える。位置検出器7cは、例えば、一又は複数の撮像装置(カメラ)である。位置検出器7cは、監視領域2dにおけるターゲット2aの通過位置を検出し、この通過位置を示す位置情報6eを、制御装置7aに送信する。位置検出器7cは、例えば、入射時間情報4eに基づき、ターゲット2aが監視領域2dに入射したタイミングで、ターゲット2aの通過位置を検出する。監視領域2dは、チャンバ3aの内側において出射方向3dに交差する位置に、予め設定される。位置検出器7cによって検出される通過位置は、出射方向3dに垂直な面内(
図2に示す基準面3fに平行な面)における位置を示す。時間検出器6cは、ターゲット2aが監視領域2dに入射する入射時間とターゲット2aが2Dを出射する出射時間とを測定する。
【0028】
時間検出器6cは、入射時間を示す入射時間情報4eと出射時間を示す出射時間情報5eとを、制御装置7aに送信する。時間検出器6cは、例えば、フォトセンサである。時間検出器6cは、発光素子8cと発光素子9cと受光素子10cと受光素子1dとを備える。受光素子10cは、発光素子8cが発光する光を受光する。受光素子1dは、発光素子9cが発光する光を受光する。受光素子10cは、受光した光信号を電気信号に変換し、この電気信号を、入射時間情報4eとして、制御装置7aに送信する。受光素子1dは、受光した光信号を電気信号に変換し、この電気信号を、出射時間情報5eとして、制御装置7aに送信する。監視領域2dは、発光素子8cが発光する光の進路と、発光素子9cが発光する光の進路とによって、画定される。ターゲット2aが監視領域2dに入射した場合、受光素子10cが出力する電気信号(入射時間情報4e)は、監視領域2dへのターゲット2aの入射を示す値をとる。ターゲット2aが監視領域2dから出射した場合、受光素子1dが出力する電気信号(出射時間情報5e)は、監視領域2dからのターゲット2aの出射を示す値をとる。発光素子8cと発光素子9cとは、例えば、いずれも、発光ダイオードである。受光素子10cと受光素子1dとは、例えば、いずれも、フォトダイオードである。ここで、時間検出複器6cは、複数の撮像装置もしくは高速度撮影が可能な撮像装置であってよい。
【0029】
レーザ光照射装置6aは、レーザ光出力器5dと集光光学装置6dとを備える。レーザ光出力器5dは、制御装置7aによる制御のもとで、レーザ光8aを出力する。レーザ光出力器5dは、レーザ光源9dとシャッター10dとを備える。レーザ光源9dは、レーザ制御情報9eによらずに、数10MHzの繰り返し率でレーザ光を発光する。レーザ光出力器5dは、数10MHzの繰り返し率で発光しているレーザパルス列の中から、レーザ制御情報9eに基づいて、レーザパルスを選択し、シャッター10dを駆動する。レーザ光出力器5dは、レーザ制御情報9eに基づいて、発光の指示の場合には、シャッター10dを開け、発光を行わない指示の場合には、シャッター10dを閉じる。
【0030】
集光光学装置6dは、レーザ光出力器5dから出力されるレーザ光8aを、制御装置7aによる制御に基づいて、集光する。集光光学装置6dは、複数のミラー、例えばミラー7dとミラー8dとを、備える。集光光学装置6dは、集光制御情報8eに基づいて、例えばミラー7dとミラー8dとの配置を移動する。
【0031】
制御装置7aは、回転情報1eに基づいて、円板10aの回転時に円板10aの貫通孔6bが出射孔8bに重なるタイミング(加圧タイミング)を、算出する。制御装置7aは、加圧タイミングに基づく加圧制御情報3eを、出射補助器3bに送信する。加圧制御情報3eは、制御装置7aによって算出された加圧タイミングで加圧するように出射補助器3bを制御するための情報である。
【0032】
制御装置7aは、複数のターゲット2aを、順次、周期的に、出射口9bから出射するように、ターゲット供給装置4aを制御する。制御装置7aは、回転情報1eに基づいて、円板10aの回転運動を制御する。
【0033】
制御装置7aは、位置情報6eを用いて、レーザ光8aの照射点4dを算出する。照射点4dは、基準面3fに含まれる点である。基準面3fは、支持台9aの主面4bからの距離が一定(距離10eと幅1fと距離2fとの和)であり、出射方向3dに直交する平面である。制御装置7aは、照射点4dに基づく集光制御情報8eを、集光光学装置6dに送信する。制御装置7aは、監視領域2dの幅1fと、入射時間情報4eと、出射時間情報5eと、監視領域2dから照射点4dまでの距離2fと、を用いて、照射点4dへのターゲット2aの到達タイミングを算出する。制御装置7aは、到達タイミングに基づくレーザ制御情報9eを、レーザ光出力器5dに送信する。集光制御情報8eは、レーザ光出力器5dからのレーザ光8aを照射点4dに集光するよう集光光学装置6dを制御するための情報である。レーザ制御情報9eは、制御装置7aによって算出された到達タイミングでレーザ光8aを出力するようレーザ光出力器5dを制御するための情報である。距離10eを示す情報と幅1fを示す情報と距離2fを示す情報とは、いずれも、制御装置7aのメモリに電子データとして予め格納されている。
【0034】
出射孔8bの径は、例えば、ターゲット2aの直径の101%以上120%以下である。供給管2cの径は、例えば、ターゲット2aの直径の101%以上120%以下である。制御装置7aは、例えば、10Hz以上100Hz以下の範囲で、ターゲット2aの出射を行う。出射補助器3bは、出射口9bからの出射時におけるターゲット2aの初速を、例えば、数m/s以上、数百m/s以下とすることができる。出射補助器3bは、ガスを出射方向3dに向けて、例えば、数ms以上、数百ms以下の間だけ噴射することによって、ターゲット2aを加圧する。距離10eは、例えば、80mm程度であり、幅1fは、例えば、40mm程度であり、距離2fは、例えば、60mm程度である。
【0035】
図3を参照して、実施形態に係る量子ビーム生成方法を説明する。まず、ステップS1(出射工程)において、制御装置7aは、ターゲット供給装置4aを制御して、ターゲット2aをチャンバ3aの内側に出射する。ステップS1において、制御装置7aは、ターゲット供給装置4aを制御して、ターゲット2aを、制御装置7aの制御可能な出射タイミングで、チャンバ3aの内側における予め設定された出射方向3dに、出射する。
【0036】
ステップS1の後、ステップS2(予測工程)において、制御装置7aは、チャンバ3aの内側におけるレーザ光8aの照射点4dを予測する。ステップS2は、ステップS2aとステップS2bとを備える。
【0037】
ステップS2aにおいて、位置検出器7cは、監視領域2dにおけるターゲット2aの通過位置を検出する。ステップS2aにおいて、時間検出器6cは、ターゲット2aが監視領域2dに入射する入射時間と、ターゲット2aが監視領域2dを出射する出射時間とを測定する。
【0038】
ステップS2aの後、ステップS2bにおいて、位置検出器7cは、位置検出器7cによって検出された通過位置を用いて、照射点4dを算出する。ステップS2bにおいて、位置検出器7cは、監視領域2dの幅1fと、入射時間を示す入射時間情報4eと、出射時間を示す出射時間情報5eと、監視領域2dから照射点4dまでの距離2fと、を用いて、照射点4dへのターゲット2aの到達タイミングを算出する。
【0039】
ステップS2の後、ステップS3(準備工程)において、制御装置7aは、集光光学装置6dを制御して、照射点4dにレーザ光8aを集光できるように、レーザ光8aの照射位置を移動させて照射を準備する。ステップS3の後、ステップS4(出力工程)において、制御装置7aは、レーザ光出力器5dを制御して、ステップS2bにおいて算出した到達タイミングにレーザ光8aを出力する。
【0040】
図4は、実施形態に係る量子ビーム生成装置の効果を説明するための図である。
図4の(A)部の横軸と
図4の(B)部の横軸とは、いずれも、時間ジッタ(ms)を表す。
図4に示す時間ジッタは、レーザ光8aの照射時刻から、ターゲット2aの照射点4dの通過時刻を差し引いた値である。
図4の(A)部の縦軸と
図4の(B)部の縦軸とは、いずれも、頻度(イベント数)を表す。
図4の(A)部は、量子ビーム生成装置1aにおいて、特にレーザ制御情報9eを用いない場合の測定結果である。
図4の(B)部は、量子ビーム生成装置1aの測定結果(特に、レーザ制御情報9eを用いて得られた測定結果)である。
図4に示す結果から、レーザ制御情報9eを用いる量子ビーム生成装置1aのほうが、レーザ制御情報9eを用いない量子ビーム生成装置1aに比較して、レーザ光8aの照射時刻と、ターゲット2aの照射点4dの通過時刻とが略一致(時間ジッタがゼロ)する場合が多いことがわかる。時間ジッタがゼロの場合に、レーザ光8aはターゲット2aに照射される。ターゲット2aとしてはLiやBeを含有したシェルもしくはビーズを用いることができる。ターゲットとしてLiやBeを含有したシェルもしくはビーズを用いた場合には、中性子、陽子(プロトン)、イオン等の量子ビームの生成が可能である。
【0041】
このように、制御装置7aによって制御される出射タイミングで、量子ビーム生成反応を起こすターゲット2aが、ターゲット供給装置4aによってチャンバ3aの内側に供給され、チャンバ3aの内側におけるターゲット2aの運動は、ターゲット監視装置5aによって監視され、制御装置7aは、この監視結果に基づいて、ターゲット2aにレーザ光8aを照射する。よって、ターゲット2aの供給と、ターゲット2aへのレーザ光8aの照射とが、制御装置7aによって、自動的に行われるので、制御装置7aによる制御によって、連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0042】
制御装置7aによる制御によって、周期的で連続的な量子ビーム生成が可能となる。
【0043】
ターゲット2aが等間隔に配置された円板10aを回転することによって、ターゲット2aを順次、チャンバ3aに供給できる。よって、ターゲット2aが等間隔に配置された円板10aを用いることによって、周期的及び連続的な量子ビーム生成が、実現できる。
【0044】
制御装置7aは、センサ5cを用いて、円板10aの回転状態を認識できるので、任意に設定する周期で、円板10aを回転させることができる。よって、任意に設定する周期で、連続的に量子ビーム生成が可能となる。
【0045】
出射補助器3bによって、ターゲット2aが強制的に出射されるので、出射タイミングであるにもかかわらず出射が行われない、という事態が、回避できる。更に、高速度でターゲットを出射できるため、低温に冷却されたターゲットを使用した場合においても、温度を維持したまま短時間の内に照射点まで供給することが可能となる。
【0046】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。例えば、ターゲット供給装置4a、時間検出器6c、レーザ光照射装置6aの何れか又は全てが、チャンバ3aの外側に配置されることができる。
【0047】
レーザ光出力器5dを複数配置して、同時にまたは時間差を設けてターゲットに照射しても良い。ターゲットの材料として極低温に冷却された固体の水素同位体(重水素や三重水素)や気体の水素同位体を充填したペレット、水素を水素同位体に置換したプラスチックビーズやプラスチックシェルを用いることで、本実施形態の量子ビーム生成装置をレーザ核融合装置とすることもできる。レーザ核融合装置とする場合にはチャンバ3aと断熱させた状態で、ターゲット供給装置4aを極低温槽に配置することで、低温に冷却されたターゲットを供給することもできる。このように、本実施形態によって自動的に連続して核融合反応が行えるレーザ核融合装置と核融合生成方法とを提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1a…量子ビーム生成装置、2a…ターゲット、3a…チャンバ、4a…ターゲット供給装置、5a…ターゲット監視装置、6a…レーザ光照射装置、7a…制御装置、8a…レーザ光、9a…支持台、10a…円板、1b…タンク、2b…駆動装置、3b…出射補助器、4b…主面、5b…裏面、6b…貫通孔、7b…縁、8b…出射孔、9b…出射口、10b…中心、1c…本体、2c…供給管、3c…モータ、4c…回転軸、5c…センサ、6c…時間検出器、7c…位置検出器、8c…発光素子、9c…発光素子、10c…受光素子、1d…受光素子、2d…監視領域、3d…出射方向、4d…照射点、5d…レーザ光出力器、6d…集光光学装置、7d…ミラー、8d…ミラー、9d…レーザ光源、10d…シャッター、1e…回転情報、2e…回転制御情報、3e…加圧制御情報、4e…入射時間情報、5e…出射時間情報、6e…位置情報、7e…撮像制御情報、8e…集光制御情報、9e…レーザ制御情報、10e…距離、1f…幅、2f…距離、3f…基準面。