特許第6015447号(P6015447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6015447-芯鞘複合繊維およびその製造方法 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015447
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】芯鞘複合繊維およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   D01F8/14 C
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2012-540187(P2012-540187)
(86)(22)【出願日】2012年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2012071603
(87)【国際公開番号】WO2013047051
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-217025(P2011-217025)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】溝田 順一
(72)【発明者】
【氏名】井田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】高永 秀敏
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭63−008207(JP,B2)
【文献】 特開昭61−063768(JP,A)
【文献】 特開平07−310235(JP,A)
【文献】 特開2008−156769(JP,A)
【文献】 韓国特許第1992−0003139(KR,B1)
【文献】 特開平03−019918(JP,A)
【文献】 特開2006−322079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/12
D01F 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを芯成分、ポリアミドを鞘成分とし、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率が0.0005〜0.0025%・mmであることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
【請求項2】
繊維断面形状が前記アルカリ易溶出性ポリエステルによってポリアミドからなる鞘部が3個以上に分割され、少なくともアルカリ易溶出性ポリエステルが繊維表面に一部露出していることを特徴する請求項1記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項3】
アルカリ易溶出性ポリエステルが、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有することを特徴する請求項1または2記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項4】
アルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比が、5:95〜40:60の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項5】
主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有し、カルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを芯成分、アミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであるポリアミドを鞘成分として、ポリアミド、アルカリ易溶出ポリエステルの融点の低い方のポリマーの融点から+70℃以内の紡糸温度で溶融紡糸することを特徴とする芯鞘型複合繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか記載の芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に使用してなる織編物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか記載の芯鞘型複合繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成されることを特徴とする極細ポリアミド繊維。
【請求項8】
請求項に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する織編物。
【請求項9】
請求項に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルおよびポリアミドからなる芯鞘複合繊維に関するものである。更に詳しくは、極細ポリアミド繊維を得るために良好な芯鞘複合繊維、織編物、繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカプロアミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。
【0003】
繊維にソフト性を付与することを目的とした極細繊維を溶融紡糸するに際し、単糸直径がミクロンサイズの繊維については、単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができるが、単独ポリマーで溶融紡糸では得られない極細の繊維については、溶解性の異なるポリマーとの複合紡糸をして複合断面繊維を得て、分割割繊処理もしくは、溶解性の高いポリマーを溶解除去して得るのが主流である。
【0004】
例えば、特許文献1、2には、ポリアミド成分とポリエステル成分の分割型複合繊維について例示されている。この繊維の主眼は、膨潤剤で化学割繊処理を施し、ポリエステル成分とポリアミド成分を均一に分割させることにある。また、この分割型複合繊維はポリエステル成分とポリアミド成分の分割を意図するものであり、ポリエステル成分は溶解させることに主眼が置かれていないので、ポリエステル成分を溶解除去して極細ポリアミド繊維を得ようとする場合、ポリエステル成分を全量溶解除去するには、アルカリ処理にかなりの時間を要し、コストアップの要因となる。アルカリ処理時間を短縮するためには、アルカリ溶液を高濃度で使用することが可能ではあるが、現実にはアルカリ溶液処理は、薬剤の安全上の問題で作業環境汚染や環境汚染に対する対策を十分に講じなくてはならず、また、アルカリ溶液処理の作業コストは高いものであり、高濃度化は、作業安全、環境安全、コストアップの面から工業生産する上で好ましい方法とは言えない。また、ポリエステル成分は、アルカリ溶出性に乏しいために全量溶解せず溶け残り易い問題が生じてしまうものでもあった。
【0005】
また、特許文献3には、ポリアミド成分とポリエステル成分の分割型複合繊維において、アルカリ易溶出ポリエステル成分として、ジカルボン酸成分にスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分と平均分子量1000〜10000のポリアルキレングリコールを共重合したポリエステルが例示されている。しかしながら、かかる繊維はアルカリ溶出性はあるものの、ポリアミドとの相溶性が乏しいために、芯鞘複合繊維を製糸する際、複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する問題が生じてしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2003−336128号公報
【特許文献2】日本国特開2006−322131号公報
【特許文献3】日本国特開2005−194681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述したような従来の問題を解決し、ポリエステルおよびポリアミド芯鞘複合繊維を製糸する際、複合界面の剥離を抑制して、毛羽、糸切れを大幅に改善することができ、ポリエステルのアルカリ溶出性を大幅に向上させる芯鞘型複合繊維、織編物、及び芯鞘型複合繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維、織編物、繊維製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを芯成分、ポリアミドを鞘成分とし、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率が0.0005〜0.0025%・mmであることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
(2)繊維断面形状が前記アルカリ易溶出性ポリエステルによってポリアミドからなる鞘部が3個以上に分割され、少なくともアルカリ易溶出性ポリエステルが繊維表面に一部露出していることを特徴する(1)に記載の芯鞘型複合繊維。
(3)アルカリ易溶出性ポリエステルが、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有することを特徴する(1)または(2)に記載の芯鞘型複合繊維。
(4)アルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比が、5:95〜40:60の範囲にあることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の芯鞘型複合繊維。
(5)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有し、カルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを芯成分、アミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであるポリアミドを鞘成分として、ポリアミド、アルカリ易溶出ポリエステルの融点の低い方のポリマーの融点から+70℃以内の紡糸温度で溶融紡糸することを特徴とする芯鞘型複合繊維の製造方法。
)(1)〜()のいずれか記載の芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に使用してなる織編物。
)(1)〜()のいずれか記載の芯鞘型複合繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成されることを特徴とする極細ポリアミド繊維。
)()に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する織編物。
)()に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯鞘型複合繊維中に含まれるポリエステルは金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を共重合し、さらにアジピン酸成分を共重合させることにより、製糸時の複合界面の剥離を抑制して毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができ、さらにアルカリ溶出性が向上するため、アルカリ溶出速度が速く、溶出処理時間を短縮でき工業的にも有利な芯鞘型複合繊維が得られるようになった。
【0010】
さらには、本発明の芯鞘型複合繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して極細ポリアミド繊維とすることにより、従来のポリアミド繊維にはない優れた特性を得ることができる。特にソフト感に極めて優れた肌触りの良い織編物や繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)〜(c)は、本発明の芯鞘型複合繊維の繊維断面形状を模式的に例示する繊維断面図であり、(a)〜(c)はそれぞれ好適な例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の芯鞘型複合繊維は、アルカリ易溶出性ポリエステルが芯成分、ポリアミドが鞘成分の芯鞘型複合繊維である。
【0014】
本発明の芯鞘型複合繊維を構成するポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリアミドとしては、染色性、機械特性に優れており、アルカリ易溶出性ポリエステルとの複合溶融紡糸に好適な、主としてポリカプロアミド(ナイロン6)からなる。ここで言う「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位として全モノマー単位中80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。
【0015】
また、本発明の目的を損なわない範囲の量、種類であれば、耐熱性などの生産性向上のための添加剤が配合されていてもよいし、艶消し、吸湿、抗菌、紫外線遮蔽、保温等の機能を持たせる添加剤が配合されてもよい。しかしながら、製糸性や耐久性を低下してしまうため、1μmを超える無機粒子の添加は好ましくなく、白色顔料も含めて無機粒子の添加は限定されるものではないが、ポリアミドに対して、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%未満であることがより好ましい。
【0016】
また、ポリアミドの重合度は、芯鞘型複合繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維、あるいはそれらの織編物、繊維製品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは25℃での98%硫酸相対粘度で2.0〜3.6の範囲であり、さらに好ましくは2.4〜3.3の範囲である。
【0017】
本発明の芯鞘型複合繊維を構成するポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体をエステル化または、エステル交換反応させた後に得られるポリエチレンテレフタレートを基本骨格とする。
【0018】
そのポリエチレンテレフタレートは、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含むアルカリ易溶出性ポリエステルである。
【0019】
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%共重合していることがアルカリ溶出性、ポリアミドとの親和性を有するために必須である。全酸成分に対するアジピン酸成分はさらに好ましくは3.5〜5.5モル%、最も好ましくは4.0〜5.5モル%である。3.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、複合界面での剥離が生じ、アルカリに対する溶出性も低下する。6.0モル%より多いと得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
【0020】
アルカリ易溶出性ポリエステルにおけるアジピン酸成分を構成する単量体には、アジピン酸もしくはアジピン酸のエステル形成誘導体が用いられる。例えば、アジピン酸形成誘導体としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、エチレングリコールエステル等のアジピン酸形成誘導体を用いることが出来る。このアジピン酸成分は、原料調達が容易という点から、アジピン酸やアジピン酸ジメチルが好ましい。
【0021】
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対して金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%含むことが、良好なアルカリ溶出性を有するために必須である。この金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分はさらに好ましくは2.0モル%から4.0モル%、最も好ましくは2.0モル%〜3.0モル%である。2.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、アルカリに対する溶出性が低下する。5.5モル%より多いと、得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
【0022】
アルカリ易溶出性ポリエステルの金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を生成する単量体には、公知の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を使用することが出来るが、好ましくは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルである。
【0023】
アルカリ易溶出性ポリエステルは、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは4〜8ppmである。チタン元素換算で3ppmより少ないと、重合反応活性が不足し反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。チタン元素換算で10ppmより多いと、重合反応の活性は良好であるが、高活性のため得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。
【0024】
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物としては、チタン錯体であることが好ましく、錯体を形成するキレート剤としては、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸などが好ましく挙げられ、これらは1種以上で用いることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性の観点から好ましい。
【0025】
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物のキレート剤の具体例は、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、マンニトール等が挙げられ、多価カルボン酸として、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても、併用して用いても良い。なお繊維等で一般的に使用される酸化チタンは、ポリエステルに可溶ではないため本発明でいうチタン化合物からは除外される。
【0026】
アルカリ易溶出性ポリエステルは、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは9〜35ppmである。リン元素換算で5ppmより少ないと、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が共重合されているためポリエステルの分解反応が促進されやすく、得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。リン元素換算で40ppmより多いと、重合反応触媒が失活するため重合反応活性が低下し、重合反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。
【0027】
リン化合物としては、下記一般式(式1)〜(式5)にて表されるリン化合物を用いることが出来る。この(式1)または(式2)で示されるホスホナイト化合物ならびに(式3)で示されるホスフェイト化合物を用いると、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が共重合されているにもかかわらず、アルカリ易溶出性ポリエステルは溶融紡糸時の色調のさらなる改善や耐熱性に優れる点で好ましい。
【化1】
(上記(式1)中、R1〜R2は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
【化2】
(上記(式2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
【化3】
(上記(式3)中、R1〜R3は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
【0028】
ポリエステルの色調や耐熱性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜P.198)に明示されているように、ポリエステル重合反応の副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このビニル末端基によりポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されるため、耐熱性が劣ったポリエステルとなる。特に、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分をポリエステル骨格に有している場合、金属触媒によるカルボニル酸素への配位が容易に起こりやすく、β水素が引き抜かれやすくなり、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生しやすい。このビニル末端基により、ポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されやすくなるため、耐熱性や色調が劣ったポリエステルとなる。
【0029】
またチタン化合物を重合触媒として用いると、熱による副反応の活性化が強いために、ビニル末端基成分やアルデヒド成分が多く発生し、黄味に着色した耐熱性が劣ったポリエステルとなる。リン化合物は、重合触媒と適度に相互作用することにより、重合触媒の活性を調節する役割を果たすばかりか、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分のカルボニル酸素へのチタン化合物の配位を起こりにくくする。
【0030】
アルカリ易溶出性ポリエステルの(式1)または(式2)のホスホナイト化合物および(式3)のホスフェイト化合物を用いると、チタン化合物の重合活性を充分に保持したまま、ポリエステルの耐熱性や色調を飛躍的に向上させることができるため好ましい。
【0031】
中でも下記の一般式(式4)で表されるリン化合物を用いると、ポリエステルの色調や耐熱性に優れる。
【化4】
(上記(式4)中、R5〜R7は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。また、a,b,cは整数で、a+b+c=0〜5を満たす。)
【0032】
上記(式4)にて表されるリン化合物としては、例えばaが2、bが0、cが0、R5がtert−ブチル基、R5が2,4位の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトがあり、この化合物はIRGAFOS P−EPQ(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)または、Sandostab P−EPQ(クラリアント・ジャパン社製)として入手可能である。
【0033】
中でも、下記一般式(式5)で表されるリン化合物であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が特に良好となるため好ましい。
【化5】
(上記(式5)中、R8〜R10は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。)
【0034】
上記(式5)にて表されるリン化合物としては、R8がtert−ブチル基、R9がtert−ブチル基、R10がメチル基の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−イルビスホスホナイトがあり、この化合物はGSY−P101(大崎工業社製)として入手可能である。
【0035】
さらには、前記(式3)にて表されるリン化合物として、R1〜R3が全てメチル基であるトリメチルホスフェイトであることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が良好となるため好ましい。この化合物はTMP(大八化学社製)として入手可能である。
【0036】
アルカリ易溶出性ポリエステルは、真比重5以上の元素を実質的に含まないことが好ましい。真比重5以上の元素とは、例えば、重合触媒として一般的に使用されているアンチモン元素や、エステル交換触媒として一般的に使用されるコバルト元素やマンガン元素である。
【0037】
上記の実質的に含まないとは、含有量が10ppm以下であることを表し、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは0〜3ppmである。
【0038】
その他、本発明の目的を損なわない範囲で公知の添加物を含有することが出来る。例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム(以下、EAH)や酢酸リチウム(以下、LAH)などのジエチレングリコール(以下、DEG)の副生抑制剤、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩に代表されるエステル交換反応触媒や、IR1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)])などに代表されるラジカル捕捉剤、酸化チタンに代表される艶消し剤などである。特に、EAHの含有量は窒素換算で125ppm以下が好ましく、さらに好ましくは40ppm以下である。LAHの含有量は、リチウム元素として15〜70ppmが好ましく、25〜55ppmがより好ましい。これらDEGの副生抑制剤は併用も出来る。
【0039】
エステル交換反応触媒として使用される酢酸マグネシウムは、マグネシウム元素の真比重が5以下であり、好ましい。その含有量はマグネシウム元素として、40ppm〜100ppmが好ましく、さらに好ましくは50ppm〜90ppmである。
【0040】
なお、艶消し剤として使用される酸化チタンを含有しても良く、得られるアルカリ易溶出性ポリエステルの紡糸を安定的に実施するために、酸化チタン濃度として2.5質量%まで含有することが出来る。
【0041】
本発明の芯鞘型複合繊維に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比は、芯鞘型複合繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維、あるいはその織編物、繊維製品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくはアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比で5:95〜40:60の範囲であり、さらに好ましくは直接紡糸で得られる繊度領域との差別化の観点から10:90〜40:60の範囲である。また、エステル・アミド交換反応を特に好ましい状態に制御するには10:90〜30:70が最も好ましい。ポリアミドの質量比が95を超える場合は、アルカリ易溶出ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維の繊度が直接紡糸で得られる繊度領域に入るものもあり、単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができるためメリットがない。また、ポリアミドの質量比が60未満の場合、アルカリ易溶出性ポリエステルの溶解除去に必要な溶剤が多くなる等、安全性や自然環境保護の観点、また、経済的観点からも好ましくない。また、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維自体が溶解除去前の芯鞘型複合繊維と比べて細くなりすぎることから、織編物等にした時、布帛密度が荒くなりすぎて、繊維製品の布帛設計が困難となったり、製品バリエーションが少なくなったりする可能性がある。
【0042】
本発明の芯鞘型複合繊維は、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)が0.0005〜0.0025%・mmである。ここで言うエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)とは、エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率(T)を芯鞘型複合繊維単位体積当たりの複合界面の表面積(S)で除した値である。単位反応率(A)が0.0005%・mm未満の場合、複合界面が剥離しやすく毛羽が散発しやすくなる。また、単位反応率(A)が0.0025%・mmを超える場合、複合界面でのテレフタル酸と反応し、この反応過程においてゲルが生成されやすく、製糸性が悪くなりやすい。さらに好ましくは、0.0009〜0.0020%・mmである。
【0043】
エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)は、1H−NMRスペクトルを測定し、エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)と、全テレフタル酸のシグナル定量値(A2)から、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率について、T=(A1/A2)×100で算出される値である。また、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)は、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)と、芯鞘型複合断面繊維1mm3当たりの複合界面の表面積(S;mm2/mm3)から、A(%・mm)=T/Sで算出される値である。また、エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)、全テレフタル酸のシグナル定量値(A2)、複合界面の表面積(S)は、後述のとおりである。
【0044】
エステル・アミド交換反応は、アルカリ易溶出ポリエステルとポリアミドとの複合界面でもっぱら生じる反応と考えられる。本発明においては、エステル・アミド交換反応を制御することにより、より一層の製糸性向上の効果を発揮することができる。また、エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率(T)は、芯鞘型複合断面繊維全体の反応率である。しかしながら、前述したように反応が生じている部分は、複合界面で起きており、複合界面は、単糸繊度、複合比率、層数など芯鞘型複合断面繊維設計により反応が生じうる面積は異なってくる。例えば、単位反応率(A)で算出される値は、交換反応率(T)が同値でも、反応が生じている複合界面の面積が大きい場合、単位反応率(A)は小さくなり界面でのエステル・アミド反応を抑制しており、反応が生じている複合界面の面積が小さい場合、単位反応率(A)は大きくなりエステル・アミド反応が進行していることを言う。従って、本発明では、芯鞘型複合繊維単位体積当たりの複合界面の表面積を想定し、交換反応率(T)をその面積で除することにより、エステル・アミド交換反応の状態を評価することにしている。
【0045】
本発明の芯鞘型複合繊維の鞘成分を構成するポリアミドのアミノ末端基量は、5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることが好ましく、さらに好ましくは5.1×10-5〜5.3×10-5mol/gである。ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5mol/g未満の場合、得られる芯鞘型複合繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶出除去して得られる極細ポリアミド繊維の染色性が悪化し、これにより得られる繊維製品を染色した際、発色性が劣位となるのに加え、ポリエステルとポリアミドの複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する傾向にある。またポリアミド成分のアミノ末端基量が5.5×10-5mol/gを越える場合、複合界面において、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物の発生が増加する結果、糸切れが増大する傾向にある。なお、ポリアミドのアミノ末端基量は、公知の方法により調整することができる。
【0046】
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量については35〜55eq/t(eqは当量、tはトンを表す。)であることが好ましく、さらに好ましくは40〜50eq/tである。ポリエステルのカルボキシル末端基量が35eq/t未満の場合、ポリエステルとポリアミドの複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する問題が生じる。またポリエステルのカルボキシル末端基量が55eq/tを越える場合、複合界面において、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物の発生が増加する結果、糸切れが増大する傾向がある。なお、上記本発明の芯鞘型複合断面繊維の芯成分を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量の調節は、通常のポリエステルのカルボキシ末端基量制御手段を応用でき、例えば最終重合温度を変更することで調節することが可能である。
【0047】
本発明の芯鞘型複合繊維のアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.1〜0.5dtexの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜0.3dtexの範囲、特に好ましくは0.2〜0.3dtexの範囲である。この極細ポリアミド繊維の単糸繊度は、芯鞘複合繊維から算出する場合は、芯鞘複合繊維の総繊度、フィラメント数、ポリアミド層の数、ポリアミドの複合比率により算出できる。例えば、総繊度が54デシテックス、18フィラメント、ポリアミドがアルカリ易溶出性ポリエステルによって8層に配置されている複合形態、ポリアミドの複合比率が80質量%の場合、54×0.8÷18÷8=0.3デシテックスと算出する。織編物、繊維製品から求める場合は、織編物、繊維製品から、極細ポリアミド繊維糸条を取り出し、初荷重を掛け、サンプリングし、糸長、質量、フィラメント数を測定し、見掛けの総繊度、単糸繊度を算出する。極細ポリアミド繊維の単糸繊度が0.1dtex未満では、光の乱反射により発色性に劣り、染色堅牢度が悪くなるなど、布帛、繊維製品の品質面において劣位となりやすい。0.5dtexを越えるものは、単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができるためメリットがない。
【0048】
本発明の芯鞘型複合繊維を構成する繊維断面形状は、アルカリ易溶出性ポリエステルによってポリアミドからなる鞘部が3層以上に分割されて、少なくともアルカリ易溶出性ポリエステルが繊維表面に一部露出していることが好ましい。例えば、図1(a)〜(c)の繊維断面形状の場合、芯部2は、連続して存在しているアルカリ易溶出性ポリエステルにより構成され、繊維中心部から放射線方向に成すよう配置すればよい。好ましい形状としては、繊維外周部にかけて放射線方向にのびる部分が細くなるよう配置する。さらに好ましくは、繊維外周部にかけて星状に配置する。鞘部1は、放射線方向に層を成したアルカリ易溶出性ポリエステルからなる芯部の放射線方向に伸びた各突起間に形成される独立の空間部にポリアミドからなる鞘部を配置すればよい。好ましい形状としては、独立したポリアミド層を3〜12個、さらに好ましくは4〜10個配置すればよい。図1(a)はポリアミドからなる鞘部1が8個の例、図1(b)はポリアミドからなる鞘部1が6個の例、図1(c)はポリアミドからなる鞘部1が5個の例である。また、具体的なポリアミドからなる鞘部の分割個数は、得られる織編物に要求されるソフトな風合いなどの官能特性等を勘案して決定すればよい。
【0049】
また、少なくともアルカリ易溶出性ポリエステルが繊維表面に一部露出しているとは、図1(a)〜(c)に示すように、芯部2が繊維中心部から放射線方向に成すよう配置され、その先端部の一部が繊維表面に露出していることである。ポリエステルを溶解除去する場合、ポリエステルが繊維表面に露出しアルカリ溶液に直接浸かることにより溶解しやすくなり、ポリエステルが露出していない(ポリアミドがポリエステルを覆う)と、相対的に溶解しにくい構造になるからである。従って、ポリエステルを構成する先端部がポリアミドで覆われてしまうと、溶解不良を発生しやすくなる。好ましくは、繊維表面に露出しているポリエステル先端部の数が、先端部の総数Nに対してN−2個以上が好ましい。
【0050】
なお、繊維表面に露出しているポリエステル先端部の数は、繊維横断方向に必要に応じて繊維を蝋で固める等して厚さ約6ミクロンの薄切片を切り出し、光学顕微鏡(Nikon(株)社製80iTP−DPH−S)で繊維横断面を観察して求める。
【0051】
また、ポリエステルとポリアミドは、異種のポリマーの組み合わせであり、界面剥離しやすいため、繊維表面への露出割合は少ない方が好ましい。したがって、ポリエステルの露出部分の総長の繊維断面周長に対する割合、すなわち露出度は1〜10%であることが好ましい。10%を越えると、製糸工程時に界面剥離しやすくなり、毛羽発生の問題が懸念される。ポリエステルの露出が多いと、製糸工程での糸切れや、高次加工( 糸加工、製織、製編など)での糸切れも多くなり生産性が低下する。
【0052】
なお、ポリエステルの露出度は、繊維横断方向に、必要に応じて繊維を蝋で固める等して厚さ約6ミクロンの薄切片を切り出して、光学顕微鏡で繊維断面を撮影した後、写真により繊維直径、露出部分の長さは自由形定規で計測し、繊維断面周長(2π×繊維直径)に対するポリエステルの露出部分の総長の割合を算出する。
【0053】
本発明の織編物の製造方法について説明する。
【0054】
本発明の織物は、常法によって製織することにより織物とすることができる。まず経糸用の繊維をクリールに並べて整経をおこないビームに巻き、つづいてビームに巻いた繊維を糊付け・乾燥して経糸の準備をおこなう。つづいて経糸を織機のオサに通し、緯糸を打ち込んで織物を仕立てる。織機はシャトル織機、エアジェットルーム織機、ウオータージェットルーム織機、レピア織機、グリッパシャトル織機などの種類があるがいずれの織機で製造しても良い。好ましくは、生産性が高いエアジェットルーム織機、ウオータージェットルーム織機である。
【0055】
また緯糸の打ち込み方により、平組織、斜文組織(ツイル)、朱子組織(サテン)などのいくつかの織組織があるが目的に応じていずれをも選ぶことができる。さらに、織物に使用される経糸および緯糸については、芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に有することが必要である。その他の繊維は天然繊維、化学繊維等特に限定しない。
【0056】
本発明の編物は、常法によって製編することにより編物とすることができる。編機は横編機、丸編機、経編機などの種類があるがいずれの編機で製造しても良い。
【0057】
また編成により、丸編み、横編の場合は、平編、リブ編、パール編、インターロック(両面編)、経編の場合は、アトラス組織、デンビー組織、コード組織などのいくつかの編組織があるが目的に応じていずれをも選ぶことができる。さらに、編物に使用される糸については、芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に有することが必要である。その他の繊維は天然繊維、化学繊維等特に限定しない。
【0058】
本発明の芯鞘型複合繊維は、そのまま織編物、繊維製品として得ることもできるが、芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に有する織編物とし、分割割繊処理、溶解除去、割繊・収縮処理などアルカリ処理することにより、様々な織編物、繊維製品を得ることが可能になる。
【0059】
本発明の極細ポリアミド繊維、極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する織編物、繊維製品は、かかる芯鞘型複合繊維のアルカリ易溶出性ポリエステルをアルカリ処理にて溶解除去して得られる。溶解除去するとは、芯鞘型複合繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルをアルカリ処理にて97〜100%溶解除去することを言う。この溶解除去に用いるアルカリの種類は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどアルカリ金属の水酸化物等の強アルカリが挙げられるが、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。溶解除去におけるアルカリ濃度、温度は、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解させて極細ポリアミド繊維のみとするよう任意に設定することができる。例えば、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を用いる場合、濃度は、5〜80g/lの水溶液とすることが好ましい。80g/lを越えると、生産作業者にとっての取り扱いに危険を伴う。5g/l未満の場合、溶解除去時間を要するため生産性が低下する。さらには、10〜50g/lの水溶液とすることが好ましい。また、その水溶液の温度は、60〜120℃であることが好ましい。120℃を越えると、ポリアミド(特にナイロン6の場合)は、繊維強度が低下し、織編物の引裂強力、破裂強力など物性が低下する。60℃未満の場合、加水分解速度が遅くなり溶解除去時間を要するため生産性が低下する。
【0060】
本発明の織編物は、必要に応じて仕上げ及び処理加工を施してもよい。また、仕上げ加工として機械的に加圧・加熱したりもみほぐしたりすることで繊維構造を物理的に変化させて仕上げを行う物理的加工(カレンダー加工等)や樹脂などを含む化学剤の処理により新たな機能(撥水・撥油、透湿・防水、防炎・難燃、防かび、防ダニ、防臭・消臭、防汚、防しわ、帯電防止)を付与させる化学的加工を施しても良い。
【0061】
本発明の繊維製品は、キャミソール、ショーツ等のインナーウエア、ストッキング、ソックス等のレッグニット、シャツやブルゾン等のスポーツ・カジュアルウェア、パンツ、コート、紳士・婦人衣料等の衣料用途のみならず、ブラカップやパッド等の衣料資材用途、カーテンやカーペット、マット、家具等のインテリア用途、吸水フェルト、研磨布といった工業資材用途、さらにはフィルター等の産業資材用途、車両内装用途にも好適に用いることができる。
【0062】
本発明の芯鞘型複合繊維の製造方法について説明する。
【0063】
本発明の芯鞘型複合繊維は、複合形成性、生産性、コストの観点から、溶融紡糸による製造が最も優れている。また、溶融紡糸による製造方法について、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは紡糸速度を3000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等、いずれの方法においても製造可能である。また、必要に応じて仮撚りや空気交絡等の糸加工を施しても良い。
【0064】
以下に直接紡糸延伸法での製造について例示する。
【0065】
まず溶融部について説明する。ポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられるが、両者とも特に限定されるものではない。溶融温度(いわゆるポリマー配管や紡糸パックまわりの保温温度)としては、可能な限り低温度で溶融紡糸する方が溶融紡糸時でのエステル・アミド交換反応が制御でき製糸性が向上するため好ましい。特に、ポリアミドとアルカリ易溶出性ポリエステルの接合時の紡糸口金内の温度をコントロールすることにより、製糸性が良好となりやすい。そのため、紡糸口金内の温度を直接測定できることが好ましいが、口金吐出面の紡糸温度測定値で代用する。
【0066】
紡糸温度としては、可能な限り低温度で溶融紡糸する方が溶融紡糸時でのエステル・アミド交換反応が抑制できるため紡糸性が向上する。具体的には、ポリアミド、アルカリ易溶出ポリエステルの融点の低い方のポリマーの融点から+70℃以内、好ましくは+60℃以内である。
【0067】
紡糸パックへ流入したポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルは、公知の紡糸口金により合流、分割複合断面に形成されて、紡糸口金より吐出される。
【0068】
紡糸口金から吐出された芯鞘型複合繊維は、冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。引き取り速度は1000〜5000m/minの範囲が好ましく、延伸糸の伸度が30〜50%の範囲となるように適宜延伸倍率を設定し、そして1ゴデッドロールを80〜100℃、2ゴデッドロールを150〜180℃の範囲に熱セット温度を設定し、延伸、熱処理を施し、速度として3000〜5000m/minの範囲で巻き取るのが好ましい。また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることも可能である。さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明の芯鞘型複合繊維、極細ポリアミド繊維の物性の測定方法は以下の通りである。
【0070】
A.ポリエステルの固有粘度IV
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0071】
B.ポリエステルの色調
色差計(スガ試験機製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(b値)として測定した。バッチ重合においては、吐出工程の質量換算で半分にあたる時間でサンプリングしたポリエステルの色調を用いる。
【0072】
C.Δ固有粘度280(耐熱性を表す指標)
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間加熱溶融させた後、上記Aの方法にて固有粘度を測定し、加熱溶融前後の差をΔ固有粘度280として算出した。
【0073】
D.ポリエステル中のDEG含有量
ポリエステルをモノメタノールアミンで加熱分解後、1,6ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積からDEG含有量を求めた。
【0074】
E.ポリエステル中のチタン元素、リン元素等の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用いて、リン元素、マグネシウム元素等の含有金属の元素分析を行った。
【0075】
なお、ポリエステルに可溶なチタン元素の定量については、ポリエステルに不溶なチタン化合物を次の前処理を行い除去し、蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリエステル5g)し、このポリエステル溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリエステルを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリエステルについてチタン元素の分析を行った。
【0076】
F.ポリアミドの98%硫酸相対粘度(ηr)
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。ポリカプロアミドを1g/100mlとなるように溶解した98%濃硫酸(T1)、98%濃硫酸(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2。
【0077】
G.カルボキシル末端基量(eq/t)
ポリエステルチップ約1.5gを精秤し、オルトクレゾール40mlを加えて90℃で溶解し、0.04N水酸化カリウムエタノール溶液を用いて滴定した。
【0078】
H.アミノ末端基量(×10-5mol/g)
ナイロン6チップ約1.0gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5、体積比)25mlに溶解後、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定した。なお表1および3に記載したアミノ末端基量の単位は10-5mol/gである。
【0079】
I.融点(℃)
SIIナノテクノロジー社製ロボットDSCRDC220を用い、試料を約5mg採取し、窒素雰囲気下、次の条件で測定した。融点+35℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降温したときに観測される発熱ピーク(降温結晶化温度:Tc)を求めた。これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+35℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点:Tm)を求めた。なお、吸熱ピークが2つ以上観測される場合には、最もピーク強度の大きい点を融点とした。
【0080】
J.エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)
下記のエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の反応率T(%)と、芯鞘型複合断面繊維1mm3当たりの繊維軸部分の芯の表面積S(mm2/mm3)を用いて、下記式にて算出した。
A(%・mm)=T/S
ここで、T:エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の反応率(%)
S:芯鞘型複合断面繊維1mm3当たりの繊維軸部分の芯の表面積(mm2/mm3
【0081】
K.核磁気共鳴分光分析(NMR)によるエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)
繊維(試料40mg)の1H−NMRスペクトルを測定し、7.89〜8.00ppmのピーク面積値(a)と 8.25〜8.34ppmのピーク面積値(b)からエステル・アミド結合しているテレフタル酸の比率を算出した。
エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率:T(%)
T(%)=(A1/A2)×100
エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値:A1
A1=(a−b)/2
全テレフタル酸のシグナル定量値:A2
A2=100b/0.55
【0082】
本発明で用いるアルカリ易溶性共重合ポリエステルのテレフタル酸の1H−NMRスペクトルは通常12Cに結合するメインピークと13Cに結合するサテライトピーク(メインピークの両側(7.89〜8.00ppm付近と8.25〜8.34ppm付近)に等価に二分裂したピーク)が観測される。
【0083】
そしてエステル・アミド交換が生じたポリエステルは、エステル・アミド結合しているテレフタル酸に由来するシグナルが、前記7.89〜8.00ppm付近に観測される。
なお、7.89〜8.00ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピークと等価なピークである8.25〜8.34ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピークはエステル・アミド交換反応前後で実質的な差はない。
【0084】
よって、エステル・アミド結合しているテレフタル酸量は、7.89〜8.00ppm付近のピーク面積値から8.25〜8.34ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピーク面積値を差し引き、さらにエステル・アミド結合しているテレフタル酸のカルボキシ基のオルト位のプロトンが2つあるため、2で割ることで得られる。
【0085】
具体的には(a−b)/2としてエステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)を計算した。
【0086】
13Cに結合するサテライトピークは等価に二分裂したピークとして観測され、13Cの天然存在比率が1.1%であるため100b/0.55として全テレフタル酸、のシグナル定量値(A2)を計算した。
1H−NMR測定条件詳細を下記する。
装置:DRX−500(JEOL社製)
観測周波数:499.8MHz
観測核:1
観測幅:6kHz
溶媒:HFIP−d2
濃度:40mg/1g
化学シフト基準:溶媒の残余プロトン4.4ppm
積算回数:64
温度:25℃
繰り返し時間:10.0sec
スピン:no spin。
【0087】
L.透過型電子顕微鏡(TEM)による繊維横断面観察
TEMで繊維横断面を観察した。繊維糸条全体を観察するときは1000倍、単糸を観察するときは3000倍と必要に応じて観察倍率を変更して繊維横断面を観察した。
【0088】
M.芯鞘型複合断面繊維1mm3当たりの繊維軸部分の芯の表面積(S)
上記L.記載のTEMで繊維断面を撮影した後、写真により繊維直径、芯部の周長を計測し、下式により芯鞘型複合断面繊維1mm3当たりの繊維軸部分の芯の表面積(S)を算出した。
S(mm2/mm3)=X(mm)×Y(mm/mm3)×補正係数
【0089】
(a)芯部の周長(mm):X
【0090】
(b)単位体積(1mm3)分の繊維長(mm):Y(mm/mm3
Y(mm/mm3)=1÷繊維断面積(算出値)
繊維断面積(mm2)=[繊維直径(算出値)/2]2×π
繊維直径(算出値)(mm)=12.54×√(単糸繊度/芯鞘複合繊維の比重)×10-3
芯鞘型複合繊維の比重(g/cm3)=芯ポリマーの比重×芯比率+鞘ポリマーの比重×鞘比率
本実施例に関しては、ナイロン6の比重を1.14g/cm3、アルカリ易溶出性ポリエステルの比重を1.38g/cm3とした。
【0091】
(c)補正係数=繊維直径(算出値)/繊維直径(実測値)
【0092】
N.光学顕微鏡による繊維横断面観察
繊維横断方向に必要に応じて繊維を蝋で固める等して約6ミクロンの薄切片を切り出し、光学顕微鏡(Nikon(株)社製80iTP−DPH−S)で繊維横断面を観察した。繊維糸条全体を観察するときは1000倍、単糸を観察するときは3000倍と必要に応じて観察倍率を変更して繊維横断面を観察した。
【0093】
O.複合繊維のポリエステル部の露出度
上記N.記載の光学顕微鏡で繊維断面を撮影した後、写真により繊維直径、ポリエステル部の露出部分の長さを自由形定規で計測し、下式により算出した。
露出度(%)=(露出している部分の長さの総和)/(2π×繊維直径)×100
【0094】
P.製糸性
芯鞘型複合繊維糸条を製糸するときの1t当たりの糸切れについて、次の基準をもって示した。
a:糸切れ2回未満、
b:糸切れ2以上4回未満、
c:糸切れ4以上6回未満、
d:糸切れ6以上8回未満、
e:糸切れ8回以上。
【0095】
Q.繊度
繊度は、JIS L1013(2010)の8.3.1項 A法に準じた。
公定水分率(%)=鞘ポリマーの公定水分率×鞘比率+芯ポリマーの公定水分率×芯比率
本実施例に関しては、ナイロン6の公定水分率を4.5%、アルカリ易溶出性ポリエステルの公定水分率を0.4%とした。
【0096】
R.伸度
伸度は、JIS L1013(2010)の8.5.1項に準じた。なお、測定条件としては、定速緊張形試験機(オリエンテック(株)社製テンシロン)を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minとした。
【0097】
S.毛羽数
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製MFC−120)を用いて、無作為に選択した繊維パッケージ(1個)から繊維を600m/分で解舒し、20分間測定、装置に表示される毛羽数をカウントした。なお、測定点の手前に整経オサ(ステンレス製、オサ間隔1mm)を設けて、そこに繊維を通した。
【0098】
T.アルカリ溶出性
製織後の布帛小片(20cm×20cm)を4枚準備し、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)処理し、30分、60分、90分、120分ごとに取り出したときのポリエステル成分の減量率を測定する。減量率が90%以上に到達するまでに要する時間について、次の基準に基づき5段階判定した。
◎:30分で取り出した場合に減量率が90%以上である
○:60分で取り出した場合に減量率が90%以上である
△:90分で取り出した場合に減量率が90%以上である
×:120分で取り出した場合に減量率が90%以上である
××:120分で取り出した場合に減量率が90%未満である
【0099】
U.ソフト性
繊維から織密度がウェール140本/2.54cm、コース105本/2.54cmの平織地を作成し、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で60分浸透し、ポリエステル成分を溶解除去後、流水で1時間水洗し、1日間風乾した。得られた平織地について、検査者(30人)の触感によって筒編地のソフト性について、次の基準に基づき4段階判定した。
◎:ソフト性が非常に良い
○:ソフト性がやや良い
△:ソフト性があまりない
×:ソフト性がない
【0100】
下記実施例中で用いたチタン化合物の合成方法を示す。
【0101】
(Ti−乳酸触媒)
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lに乳酸(和光純薬社製)を536.4gを添加し、80℃に加熱する。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達社製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−乳酸触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
【0102】
(Ti−マンニトール触媒)
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lにマンニトール(東京化成社製)を456.8gを添加し、80℃に加熱して溶解させる。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達社製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−マンニトール触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
【0103】
〔実施例1〕
(重合方法)
精留塔を備えたエステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチルを927質量部とエチレングリコールを595質量部、アジピン酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対する濃度が5.1モル%となるように仕込み、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対し2.4モル%となるように仕込んだ。その後、Ti−乳酸触媒をチタン元素換算で5ppm、リン化合物Aとしてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業化学株式会社製GSY−P101)をリン元素換算で10ppmとなるよう添加し、酢酸マグネシウム・四水和物を600ppm添加し、その後にEAH20(テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド 20質量%、水 67質量%、メタノール 13質量%の混合物、三洋化成社製)を1200ppm(窒素換算で29.3ppm)添加した。その後、エステル交換反応槽の温度を徐々に昇温し、エステル交換反応時に発生するメタノールを反応系外に留去させながら反応を進行させ、低重合体を得た。その後、エステル交換反応槽から重合反応槽にその低重合体を移液した。移液終了後、ポリエステル中の濃度が0.07質量%になるよう酸化チタンのエチレングリコールスラリーを添加した。さらに5分後に、反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、エチレングリコールを留去しながら、圧力を50Paまで下げた。所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌機トルク到達までの時間はおよそ2時間15分だった。得られたポリエステルは固有粘度0.62、DEG2.0質量%、b値17.9、Δ固有粘度280が0.020であり、色調および耐熱性に優れたポリエステルであった。得られたポリエステルの性状を表1に記載する。
【0104】
(紡糸方法)
このポリエステルチップを水分率0.01質量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.6のナイロン6チップを水分率0.05質量%以下となるよう常法にて乾燥した。
【0105】
得られたポリエステルチップを270℃、ナイロン6チップを270℃の溶融温度で、前記ポリエステルチップを20質量%、ナイロン6チップを80質量%の割合で各個別々のプレッシャーメルターで溶融し、紡糸パック、口金に合流、芯鞘複合形成させて紡糸口金より吐出させた。紡糸口金は、単糸(ホール)あたり鞘成分が8分割となり、ホール数が36のものを使用した。また、紡糸温度は270℃とした。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、第1ゴデッドロール温度90℃、第2ゴデッドロール温度150℃、2.20倍に延伸して巻取速度4000m/分で巻き取りを行い、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0106】
(評価方法)
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表3に示す。
【0107】
〔実施例2〜5〕
ポリエステル・ポリアミド質量比、繊維断面形状を、表1、3に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が5、6、8個に分割された星状構造(図1(a)〜(c))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0108】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表3に示す。
【0109】
実施例1〜5について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。
【0110】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、良好であった。単糸繊度の細い実施例1〜2、4、5はソフト性に極めて優れるものであった。
【0111】
〔実施例6〜10〕
チタン化合物の種類、リン酸化合物の種類および量を、表1、3に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。尚、得られたポリエステルチップの特性(b値、Δ固有粘度280)について、表1に記載した。
【0112】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表3に示す。
【0113】
実施例6〜10について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。
【0114】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて優れるものであった。
【0115】
〔実施例11〜15〕
チタン化合物の種類および量、リン酸化合物の種類および量を、表2、4に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。尚、得られたポリエステルチップの特性(b値、Δ固有粘度280)について、表2に記載した。
【0116】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表4に示す。
【0117】
実施例11〜15について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に優れるものであった。
【0118】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて良好であった。
【0119】
〔比較例1〜6〕
アジピン酸成分の量、イソフタル酸成分の量を表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。尚、得られたポリエステルチップの特性(b値、Δ固有粘度280)について、表5に記載した。
【0120】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表6に示す。
【0121】
比較例1、3、5は、製糸性良好で毛羽発生が少ないものであったが、アルカリ溶出性に劣るものであった。
【0122】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は90%未満で、ポリエステルが溶け残っている状態であり、平織地の風合い(ソフト性)は、劣るものあった。
【0123】
比較例2、4、6は、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に優れるものであったが、ポリエステルの耐熱性の低さに起因する糸切れが多発し、製糸性に劣るものであった。
【0124】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、良好であった。
【0125】
〔比較例7〕
ポリエステルチップを、共重合されていないポリエチレンテレフタレートチップ(固有粘度0.62、DEG1.0質量%、b値7.8、Δ固有粘度280 0.026)とした以外は、実施例1と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0126】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性(a)、露出度(7%)、繊度(54.0dtex)、伸度(45.8%)、毛羽数(5個/12000m)、アルカリ溶出性(××)、ソフト性(×)であった。
【0127】
比較例7は、製糸性良好であったが、毛羽発生が多く、アルカリ溶出性に劣るものであった。
【0128】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は90%未満で、ポリエステルが多く溶け残っている状態であり、平織地の風合い(ソフト性)は、劣るものあった。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
表2、4の結果から明らかなように、本発明の芯鞘型複合繊維は、従来の芯鞘型複合繊維と比較して、芯鞘複合繊維を製糸する際、ポリエステルとポリアミド複合界面の剥離を抑制し、毛羽が大幅に改善されており、紡糸操業性が良好で、アルカリに対しても優れた溶解性を示す、極めて顕著な効果を奏するものであると言える。
【0136】
〔実施例16〕
(重合方法)
精留塔を備えたエステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチルを927質量部とエチレングリコールを595質量部、アジピン酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対する濃度が5.1モル%となるように仕込み、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対し2.4モル%となるように仕込んだ。その後、Ti−乳酸触媒をチタン元素換算で5ppm、リン化合物Aとしてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業化学株式会社製GSY−P101)をリン元素換算で10ppmとなるよう添加し、酢酸マグネシウム・四水和物を600ppm添加し、その後にEAH20(テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド 20質量%、水 67質量%、メタノール 13質量%の混合物、三洋化成社製)を1200ppm(窒素換算で29.3ppm)添加した。その後、エステル交換反応槽の温度を徐々に昇温し、エステル交換反応時に発生するメタノールを反応系外に留去させながら反応を進行させ、低重合体を得た。その後、エステル交換反応槽から重合反応槽にその低重合体を移液した。移液終了後、ポリエステル中の濃度が0.07質量%になるよう酸化チタンのエチレングリコールスラリーを添加した。さらに5分後に、反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、エチレングリコールを留去しながら、圧力を50Paまで下げた。所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌機トルク到達までの時間はおよそ2時間15分だった。得られたポリエステルは固有粘度0.62、DEG2.0質量%、b値17.9、Δ固有粘度280が0.020、カルボキシル末端基量47.4eq/t、融点235℃であり、色調および耐熱性に優れたポリエステルであった。得られたポリエステルの性状を表7に記載する。
【0137】
(紡糸方法)
このポリエステルチップを水分率0.01質量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.6、アミノ末端基量5.20×10-5mol/g、融点215℃のナイロン6チップを水分率0.05質量%以下となるよう常法にて乾燥した。このポリアミド成分の性状を表7に記載する。
【0138】
得られたポリエステルチップを270℃、ナイロン6チップを270℃の溶融温度で、前記ポリエステルチップを20質量%、ナイロン6チップを80質量%の割合で各個別々のプレッシャーメルターで溶融し、紡糸パック、口金に合流、芯鞘複合形成させて紡糸口金より吐出させた。紡糸口金は、単糸(ホール)あたり鞘成分が8分割となり、ホール数が36のものを使用した。また、紡糸温度は270℃とした。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、第1ゴデッドロール温度90℃、第2ゴデッドロール温度150℃、2.20倍に延伸して巻取速度4000m/分で巻き取りを行い、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0139】
(評価方法)
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表8に示す。
【0140】
〔実施例17〜20〕
ポリエステル・ポリアミド質量比、繊維断面形状を、表7,8に記載の条件とする以外は、実施例16と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が5、6、8個に分割された星状構造(図1(a)〜(c))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0141】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表8に示す。
【0142】
実施例16〜20について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。
【0143】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、良好であった。単糸繊度の細い実施例16、17、19、20はソフト性に極めて優れるものであった。
【0144】
〔実施例21〜25〕
チタン化合物の種類、リン酸化合物の種類および量を、表7に記載の条件とする以外は、実施例16と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。尚、得られたポリエステルチップの特性について、表7に記載した。
【0145】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表8に示す。
【0146】
実施例21〜25について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。
【0147】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて優れるものであった。
【0148】
〔実施例26〜30〕
チタン化合物の種類および量、リン酸化合物の種類および量を、表9に記載の条件とする以外は、実施例16と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0149】
尚、得られたポリエステルチップの特性について、表9に記載した。
【0150】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表10に示す。
【0151】
実施例26〜30について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に優れるものであった。
【0152】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて良好であった。
【0153】
〔実施例31〜32〕
アミノ末端基量を、表9に記載の条件とする以外は、実施例16と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0154】
参考例1
アミノ末端基量を5.40×10−5mol/g、ポリエステルチップの溶融温度、ナイロン6チップの溶融温度、紡糸温度をそれぞれ290℃とする以外は、実施例16と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0155】
〔実施例34〕
アミノ末端基量を5.40×10-5mol/g、ポリエステルチップの溶融温度、ナイロン6チップの溶融温度、紡糸温度をそれぞれ260℃とする以外は、実施例16と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0156】
参考例2
アミノ末端基量を4.50×10-5mol/g、カルボキシル末端基量を32.0eq/t、Δ固有粘度280が0.035、ポリエステルチップの溶融温度、ナイロン6チップの溶融温度、紡糸温度をそれぞれ260℃とする以外は、実施例16と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0157】
実施例31,32,34、参考例1,2で得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表10に示す。
【0158】
実施例31,32,34について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に優れるものであった。
【0159】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて良好であった。
【0160】
〔比較例8〜13〕
アジピン酸成分の量、イソフタル酸成分の量を表11に記載の条件とする以外は、実施例16と同様に重合、紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。尚、得られたポリエステルチップの特性(b値、Δ固有粘度280、カルボキシル末端基量、融点)について、表11に記載した。
【0161】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表12に示す。
【0162】
比較例8、10、12は、製糸性良好で毛羽発生が少ないものであったが、アルカリ溶出性に劣るものであった。また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は90%未満で、ポリエステルが溶け残っている状態であり、平織地の風合い(ソフト性)は、劣るものあった。
【0163】
比較例9、11、13は、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に優れるものであったが、ポリエステルの耐熱性の低さに起因する糸切れが多発し、製糸性に劣るものであった。
【0164】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、良好であった。
【0165】
〔比較例14〕
共重合されていないポリエチレンテレフタレートチップ(固有粘度0.62、DEG1.0質量%、b値7.8、Δ固有粘度280が0.026、カルボキシル末端基量32.8eq/t、融点255℃)を水分率0.01質量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミドとして、チップを硫酸相対粘度(ηr)が2.6、アミノ末端基量4.90×10-5mol/g、融点215℃のナイロン6チップを水分率0.05質量%以下となるように常法にて乾燥した。
【0166】
得られたポリエステルチップを280℃、ナイロン6チップを280℃の溶融温度、紡糸温度を280℃とした以外は、実施例16と同様に紡糸し、54dtex−18フィラメントのナイロン6からなる鞘部が8個に分割された星状構造(図1(a))の芯鞘型複合繊維を得た。
【0167】
得られた芯鞘型複合繊維について、製糸性、露出度、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、ソフト性について評価した。その結果を表12に示す。
【0168】
比較例14は、製糸性良好であったが、毛羽発生が多く、アルカリ溶出性に劣るものであった。
【0169】
また、得られた芯鞘複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は90%未満で、ポリエステルが溶け残っている状態であり、平織地の風合い(ソフト性)は、劣るものあった。
【0170】
【表7】
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
【表11】
【0175】
【表12】
【0176】
表7〜10の結果から明らかなように、本発明の芯鞘型複合繊維は、従来の芯鞘型複合繊維と比較して、芯鞘複合繊維を製糸する際、ポリエステルとポリアミド複合界面の剥離を抑制し、毛羽が大幅に改善されており、紡糸操業性が良好で、アルカリに対しても優れた溶解性を示す、極めて顕著な効果を奏するものであると言える。
【符号の説明】
【0177】
1 鞘部
2 芯部
図1