特許第6021630号(P6021630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021630
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04186 20160101AFI20161027BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161027BHJP
【FI】
   H01M8/04 L
   !H01M8/10
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-276936(P2012-276936)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-120437(P2014-120437A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀信
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−531890(JP,A)
【文献】 特開2002−203587(JP,A)
【文献】 特開2005−32610(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/025321(WO,A1)
【文献】 特開2009−224219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668,8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜/電極接合体を備える燃料電池と、
前記燃料電池に供給される液体燃料を含む液体が循環する燃料循環路と、
前記燃料電池から排出されるエアが流通するエア排出路と、
前記エア排出路を流通するエアとそのエアに含まれる液体とを分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された液体を前記燃料循環路に還流させる還流手段と、
前記還流手段によって還流される液体の液量を取得する液量取得手段と、
前記還流手段によって還流される液体中の液体燃料の濃度を取得する濃度取得手段と、
前記燃料循環路に液体燃料を補給する液体燃料補給手段と、
前記液量取得手段によって取得された液量および前記濃度取得手段によって取得された濃度に基づいて、前記還流手段によって還流される液体中の液体燃料の濃度を目標濃度に上昇させるのに必要な液体燃料の量である還流調整量を算出する還流調整量算出手段と、
前記還流手段による液体の還流の開始のタイミングに応じて、前記液体燃料補給手段を制御して、前記還流調整量算出手段によって算出された還流調整量の液体燃料を前記燃料循環路に補給させる制御手段とを含む、燃料電池システム。
【請求項2】
前記還流手段は、前記気液分離器から前記燃料循環路に還流される液体が流通する還流管と、前記還流管を開閉する電磁弁とを備え、
前記制御手段は、前記電磁弁の開度および/または開成のタイミングに応じた可変タイミングで、前記液体燃料補給手段による液体燃料の補給を開始させる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、ヒドラジンなどの液体燃料を燃料電池に供給するものが知られている。
【0003】
燃料電池は、たとえば、固体高分子膜の両側にアノード(燃料極)およびカソード(酸素極)を貼り合わせて一体化した膜/電極接合体を備えている。アノードには、燃料循環路が接続されている。すなわち、燃料循環路の一端がアノードの燃料供給口に接続され、その他端がアノードの燃料排出口に接続されている。アノードには、燃料循環路から液体燃料および電解液を含む液体が供給され、アノードを通過した液体は、燃料循環路に排出される。一方、カソードには、エアが供給される。
【0004】
液体燃料がヒドラジンである場合、アノードでは、窒素ガス(N)、水(HO)および電子(e)が生成される。電子は、外部回路を介して、カソードに移動する。窒素ガスおよび水は、未反応の液体燃料とともに、燃料循環路に排出される。一方、カソードでは、アニオン(OH)が生成される。アニオンは、固体高分子膜を透過して、アノードに移動する。その結果、アノードとカソードとの間に、発電反応による起電力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−216341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような燃料電池システムでは、液体がアノードから固体高分子膜を透過してカソードに移動する、いわゆるクロスリーク(クロスオーバ)が発生する。クロスリークした液体には、液体燃料が含まれるので、その液体を燃料循環路に戻すことにより、液体燃料の浪費を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、クロスリークした液体燃料は、カソード側の触媒との接触による副反応やエアに晒されることによって分解され、クロスリークした液体中の液体燃料の濃度は、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度よりも低い。そのため、クロスリークした液体が燃料循環路に戻されると、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が低下する。液体燃料の濃度が適切でないと、たとえば、アノードからカソードにクロスリーク(クロスオーバ)する液体の液量の増大、副反応量の増大、発電性能の低下および燃料電池の劣化の促進などの不具合が発生する。
【0008】
本発明の目的は、クロスリークした液体が燃料循環路に還流されたときに、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が低下することを防止できる、燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、膜/電極接合体を備える燃料電池と、前記燃料電池に供給される液体燃料を含む液体が循環する燃料循環路と、前記燃料電池から排出されるエアが流通するエア排出路と、前記エア排出路を流通するエアとそのエアに含まれる液体とを分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された液体を前記燃料循環路に還流させる還流手段と、前記還流手段によって還流される液体の液量を取得する液量取得手段と、前記還流手段によって還流される液体中の液体燃料の濃度を取得する濃度取得手段と、前記燃料循環路に液体燃料を補給する液体燃料補給手段と、前記液量取得手段によって取得された液量および前記濃度取得手段によって取得された濃度に基づいて、前記還流手段によって還流される液体中の液体燃料の濃度を目標濃度に上昇させるのに必要な液体燃料の量である還流調整量を算出する還流調整量算出手段と、前記還流手段による液体の還流の開始のタイミングに応じて、前記液体燃料補給手段を制御して、前記還流調整量算出手段によって算出された還流調整量の液体燃料を前記燃料循環路に補給させる制御手段とを含む。
【0010】
この構成によれば、燃料電池からエア排出路に排出されるエアには、クロスリークした液体が含まれる。この液体は、気液分離器でエアから分離され、還流手段により、気液分離器から燃料循環路に還流される。
【0011】
還流手段による液体の還流が実行されるときには、その還流される液体の液量および濃度が取得される。そして、還流手段によって還流される液体中の液体燃料の濃度を適切な目標濃度に上昇させるのに必要な液体燃料の量である還流調整量が算出される。その後、還流手段による液体の還流の開始のタイミングに応じて、液体燃料補給手段により、還流調整量の液体燃料が燃料循環路に補給される。
【0012】
これにより、気液分離器から燃料循環路に液体が還流されたときに、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が低下することを抑制できる。そのため、液体燃料の濃度の低下に起因する種々の不都合の発生、たとえば、発電性能の低下や燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0013】
還流手段は、気液分離器から燃料循環路に還流される液体が流通する還流管と、還流管を開閉する電磁弁とを備え、制御手段は、電磁弁の開度および/または開成のタイミングに応じた可変タイミングで、液体燃料補給手段による液体燃料の補給を開始させることが好ましい。
【0014】
電磁弁の開度および/または開成のタイミングに応じて、燃料循環路への液体燃料の補給の開始のタイミングが調整されることにより、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が一時的であっても低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気液分離器から燃料循環路に液体が還流されたときに、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が低下することを抑制できる。そのため、液体燃料の濃度の低下に起因する種々の不都合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
図2図2は、燃料電池システムの電気的構成の要部を示すブロック図である。
図3A図3Aは、還流調整制御の流れを示すフローチャート(その1)である。
図3B図3Bは、還流調整制御の流れを示すフローチャート(その1)である。
図4図4は、エア背圧調整弁を通過するエアの流量と圧力との関係(特性)を示すグラフである。
図5図5は、回収管を流通する液体の流量と回収管の両端が接続された気液分離器間の圧力差との関係(特性)を示すグラフである。
図6図6は、気液分離器液量算出処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、還流制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<システム構成>
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る循環液量算出装置が適用される燃料電池システムの構成図である。
【0020】
燃料電池システム1は、液体燃料を用いる燃料電池システム(FCシステム)であり、たとえば、自動車に搭載される。燃料電池システム1は、燃料電池2、燃料循環機構3、給排気機構4および冷却機構5を備えている。
【0021】
<燃料電池>
【0022】
燃料電池2は、所定数(たとえば、100〜200)のセルが一方向に積層された、いわゆるセルスタックを有している。各セルは、膜/電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)、膜/電極接合体の両側に配置されたセパレータ、および膜/電極接合体と各セパレータとの間に介在されたガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)を備えている。
【0023】
膜/電極接合体は、固体高分子膜11の両側にアノード(燃料極)12およびカソード(酸素極)13を貼り合わせて一体化したものである。固体高分子膜11は、たとえば、アニオン(OH)を透過させる性質を有する。
【0024】
セパレータの両面には、たとえば、葛折り状に屈曲した凹溝(図示せず)が形成されている。アノード12に対向する凹溝は、燃料流路として形成されている。燃料流路の一端および他端は、それぞれ燃料入口14および燃料出口15に接続されている。膜/電極接合体のカソード13に対向する凹溝は、エア流路として形成されている。エア流路の一端および他端は、それぞれエア入口16およびエア出口17に接続されている。また、各セル間では、一方のセルのセパレータに形成された凹溝と他方のセルのセパレータに形成された凹溝とが重なり合い、それらの凹溝が冷却水流路を形成している。冷却水流路の一端および他端は、それぞれ冷却水入口18および冷却水出口19に接続されている。
【0025】
<燃料循環機構>
【0026】
燃料循環機構3には、液体燃料タンク21、電解液タンク22、循環液体タンク23および気液分離器24が含まれる。
【0027】
液体燃料タンク21には、液体燃料として、たとえば、常温のヒドラジン(N)が貯留されている。液体燃料タンク21には、燃料補給管25の一端が接続されている。燃料補給管25の他端は、循環液体タンク23に接続されている。燃料補給管25の途中部には、燃料供給ポンプ26が介装されている。
【0028】
電解液タンク22には、電解液として、たとえば、常温の水酸化カリウム水溶液(KOH)が貯留されている。電解液タンク22には、電解液補給管27の一端が接続されている。電解液補給管27の他端は、循環液体タンク23に接続されている。電解液補給管27の途中部には、電解液供給ポンプ28が介装されている。
【0029】
循環液体タンク23には、電解液に混合された液体燃料、たとえば、水酸化カリウム水溶液に混合されたヒドラジンが貯留されている。循環液体タンク23には、燃料供給管29の一端が接続されている。燃料供給管29の他端は、燃料電池2の燃料入口14に接続されている。燃料供給管29の途中部には、燃料循環ポンプ30が介装されている。
【0030】
燃料電池2の燃料出口15には、燃料排出管31の一端が接続されている。燃料排出管31の他端は、気液分離器24に接続されている。
【0031】
気液分離器24の底部には、燃料帰還管32の一端が接続されている。燃料帰還管32の他端は、循環液体タンク23に接続されている。また、気液分離器24の上部には、パージ管33の一端が接続されている。パージ管33の途中部には、パージ電磁弁34が介装されている。
【0032】
<給排気機構>
【0033】
給排気機構4には、エアコンプレッサ41、気液分離器42および排ガス処理器43が含まれる。
【0034】
エアコンプレッサ41の吸込口には、吸気管44の一端が接続されている。
【0035】
エアコンプレッサ41の吐出口には、エア供給管45の一端が接続されている。エア供給管45の他端は、燃料電池2のエア入口16に接続されている。
【0036】
燃料電池2のエア出口17には、エア排出管46の一端が接続されている。エア排出管46の他端は、気液分離器42に接続されている。
【0037】
気液分離器42の底部には、還流管47の一端が接続されている。還流管47の他端は、気液分離器24に接続されている。還流管47の途中部には、還流電磁弁48が介装されている。気液分離器42の上部には、パージ管49の一端が接続されている。パージ管49の途中部には、エア背圧調整弁50が介装されている。
【0038】
<冷却機構>
【0039】
冷却機構5は、燃料電池2の冷却水入口18から冷却水流路に冷却水を供給する。冷却水は、冷却水流路を流通した後、冷却水出口19から排出されて、冷却機構5に戻される。冷却水が冷却水流路を流通することにより、燃料電池2が冷却される。
【0040】
<発電動作>
【0041】
燃料電池2による発電のために、燃料循環ポンプ30が駆動される。燃料循環ポンプ30が駆動されると、循環液体タンク23に貯留されている液体燃料を含む液体が燃料供給管29に吸い出される。そして、燃料供給管29を液体が流通し、その液体が燃料電池2の燃料入口14から燃料電池2の燃料流路に供給される。
【0042】
また、燃料電池2による発電のために、エアコンプレッサ41が駆動される。エアコンプレッサ41が駆動されると、エア(大気)が吸気管44に取り込まれる。吸気管44に取り込まれたエアは、エアコンプレッサ41で圧縮されて、エアコンプレッサ41からエア供給管45に送り出される。そして、エア供給管45を流通するエアが燃料電池2のエア入口16から燃料電池2のエア流路に供給される。
【0043】
燃料電池2の燃料流路を液体燃料を含む液体が流通し、エア流路をエアが流通すると、燃料電池2において、発電反応(電気化学反応)が生じ、その電気化学反応による起電力が発生する。
【0044】
具体的には、アノード12において、反応式(1)で示される反応が生じ、窒素ガス(N)、水(HO)および電子(e)が生成される。電子は、外部回路(図示せず)を介して、カソード13に移動する。窒素ガスおよび水は、未反応の液体燃料とともに、燃料流路から燃料出口15を通して燃料排出管31に流出する。一方、カソード13では、反応式(2)で示される反応が生じ、アニオン(OH)が生成される。アニオンは、固体高分子膜11を透過して、アノード12に移動する。
【0045】
+4OH→N+4HO+4e ・・・(1)
【0046】
+2HO+4e→4OH ・・・(2)
【0047】
この結果、アノード12とカソード13との間に、発電反応(電気化学反応)による起電力が発生する。
【0048】
燃料電池2の燃料流路を流通した液体は、燃料出口15から燃料排出管31に排出される。燃料排出管31に排出される液体には、ヒドラジン、窒素ガスおよび水が含まれる。燃料排出管31に排出される液体は、燃料排出管31を通して、気液分離器24に流入する。気液分離器24では、燃料排出管31から流入する液体からその液体に含まれる気体が分離される。
【0049】
脱気された液体は、気液分離器24内の下部(底部)に集まり、気液分離器24から燃料帰還管32を通して循環液体タンク23に戻る。
【0050】
こうして、液体燃料を含む液体は、循環液体タンク23、燃料供給管29、燃料電池2の燃料流路、燃料排出管31、気液分離器24および燃料帰還管32を含む燃料循環路を循環する。
【0051】
気液分離器24内で液体から分離された気体は、気液分離器24からパージ管33に流出し、パージ管33を排ガス処理器43に向けて流通する。そして、パージ管33を流通する気体は、排ガス処理器43を経由して、大気に放出される。気体が排ガス処理器43を経由することにより、気体から有害物質などが除去される。
【0052】
燃料電池2のエア流路を流通したエアは、エア出口17からエア排出管46に排出される。
【0053】
燃料電池2内では、水および液体燃料が膜/電極接合体のアノード12から固体高分子膜11を透過してカソード13に移動する、いわゆるクロスリークが発生する。そのため、エア排出管46に流出するエアには、そのクロスリークした液体燃料(ヒドラジン)および水の蒸気が含まれる。
【0054】
エア排出管46に流出した気体は、エア排出管46を流通して、気液分離器42に流入する。気液分離器42では、エア排出管46から流入する気体とそのエアに含まれる液体燃料などの液体とが分離される。
【0055】
液体が除去された気体は、気液分離器42からパージ管49に流出し、パージ管49を排ガス処理器43に向けて流通する。そして、パージ管49を流通する気体は、排ガス処理器43を経由して、大気に放出される。気体が排ガス処理器43を経由することにより、気体から有害物質などが除去される。
【0056】
一方、脱気された液体は、気液分離器42内の下部(底部)に集まる。還流電磁弁48が閉じられている間、その液体は、気液分離器42内の下部に溜められる。気液分離器42内に溜められた液体は、還流制御が実行されることにより、気液分離器42から循環液体タンク23に液体を還流される。具体的には、還流制御では、エア背圧調整弁50の開度が小さくされて、気液分離器42内の圧力が通常よりも高められた状態で、還流電磁弁48が開かれる。気液分離器42内の液体は、気液分離器42内の圧力により、還流管47を通して、気液分離器24に送られる。気液分離器24に流入した液体は、気液分離器24内の下部(底部)に集まり、燃料帰還管32を流通して、燃料帰還管32から循環液体タンク23に戻る。
【0057】
<燃料補給動作>
【0058】
燃料電池システム1の稼働中に、循環液体タンク23に液体燃料を補給する必要が生じると、燃料供給ポンプ26が駆動される。燃料供給ポンプ26が駆動されると、液体燃料タンク21から燃料補給管25に液体燃料(ヒドラジン)が汲み出される。そして、その液体燃料が燃料補給管25を通して循環液体タンク23に供給される。
【0059】
また、循環液体タンク23に電解液を補給する必要が生じた場合には、電解液供給ポンプ28が駆動される。電解液供給ポンプ28が駆動されると、電解液タンク22から電解液補給管27に電解液(水酸化カリウム水溶液)が汲み出される。そして、その電解液が電解液補給管27を通して循環液体タンク23に供給される。
【0060】
<電気的構成>
【0061】
図2は、燃料電池システムの電気的構成の要部を示すブロック図である。
【0062】
燃料電池システム1は、CPUおよびメモリを含む構成のFC−ECU(電子制御ユニット)61を備えている。
【0063】
FC−ECU61には、燃料電池システム1に設けられた各種センサが接続されている。各種センサには、濃度センサ62、圧力センサ63および背圧センサ64が含まれる。濃度センサ62は、燃料供給管29を流通する液体中の液体燃料の濃度を検出する。圧力センサ63は、気液分離器24内の圧力を検出する。背圧センサ64は、気液分離器42内の圧力(背圧)を検出する。
【0064】
FC−ECU61は、各種センサから入力される信号に基づいて、燃料供給ポンプ26、電解液供給ポンプ28、燃料循環ポンプ30およびコンプレッサ41の駆動を制御し、パージ電磁弁34、還流電磁弁48およびエア背圧調整弁50の開閉を制御する。
【0065】
<還流調整制御>
【0066】
図3A,3Bは、還流調整制御の流れを示すフローチャートである。
【0067】
燃料電池システム1の発電中、FC−ECU61により、還流調整制御が繰り返し実行される。
【0068】
還流調整制御では、まず、所定の還流制御開始条件が成立しているか否かが判断される(ステップS1)。還流制御開始条件は、たとえば、前回の還流制御(ステップS7)の実行から一定時間が経過しているという条件である。
【0069】
還流制御開始条件が成立していない場合には(ステップS1のNO)、還流調整制御が直ちにリターンされる。
【0070】
還流制御開始条件が成立している場合には(ステップS1のYES)、次に、気液分離器42に溜まっている液体の液量Vrを算出する気液分離器液量算出処理が実行される(ステップS2)。気液分離器液量算出処理については、後述する。
【0071】
また、気液分離器42内の液体、つまり還流制御によって気液分離器42から循環液体タンク23に還流されるべき液体中の液体燃料の濃度Cr(%)が推定される(ステップS3)。この液体燃料の濃度は、たとえば、前回の還流制御の実行から現時点までに気液分離器42を通過したエアの流量の積算値および燃料電池2の温度の平均値と気液分離器42内の液体中の液体燃料の濃度との関係を定めたマップから読み出される。このマップは、予め作成されて、FC−ECU61のメモリに格納されている。また、気液分離器42に濃度センサが設けられて、この濃度センサにより、気液分離器42内の液体中の液体燃料の濃度が検出されてもよい。
【0072】
その後、気液分離器42から循環液体タンク23に還流されるべき液体中の液体燃料の濃度を目標濃度に上昇させるのに必要な液体燃料の量である還流調整量Vsが算出される(ステップS4)。具体的には、液体燃料タンク21に貯留されている液体燃料の濃度をCs(%)とし、目標濃度をC(%)とすると、還流調整量Vsは、下記式(3)に従って算出される。
【0073】
Vs=(Cs/100)×Vr×(C/100−Cr/100)
/(Cs/100−C/100) ・・・(3)
【0074】
還流調整量Vsが算出されると、燃料供給ポンプ26が駆動されて、液体燃料タンク21から循環液体タンク23への液体燃料の補給が開始される(ステップS5)。
【0075】
その後、循環液体タンク23に補給された液体燃料の液量(補給量)が所定の閾値を超えたか否かが判定される(ステップS6)。この判定は、補給量が閾値を超えるまで繰り返される。
【0076】
補給量が閾値を超えると(ステップS6のYES)、還流制御が実行される(ステップS7)。還流制御が実行されることにより、気液分離器42から循環液体タンク23に液体が還流される。還流制御の詳細については、後述する。
【0077】
その後、補給量が還流調整量Vsに達したか否かが判定される(ステップS8)。
【0078】
液体燃料タンク21から循環液体タンク23への液体燃料の補給を開始するタイミングは、還流制御に要する時間(還流制御で算出される開放時間)を考慮して、還流制御が終了するタイミングで液体燃料タンク21から循環液体タンク23への液体燃料の補給が完了するように調整されている。そのため、還流制御の終了とほぼ同時に、補給量が還流調整量Vsに達する。
【0079】
補給量が還流調整量Vsに達すると(ステップS8のYES)、燃料供給ポンプ26の駆動が停止されて、液体燃料タンク21から循環液体タンク23への液体燃料の補給が終了される(ステップS9)。
【0080】
その後は、還流制御の終了から所定時間が経過したか否かが調べられる(ステップS9)。
【0081】
還流制御の終了直後は、燃料循環路を循環する液体と液体燃料タンク21から補給される液体燃料および気液分離器42から還流される液体との混合が不十分であるために、濃度センサ62によって検出される濃度が変動するおそれがある。そのため、還流制御の終了から所定時間が経過するまでは、濃度センサ62による濃度の検出が禁止される(ステップS11)。
【0082】
そして、還流制御の終了後から所定時間が経過すると(ステップS10のYES)、この還流調整制御が終了される。
【0083】
<エア背圧調整弁のエア流量−エア圧力特性>
【0084】
図4は、エア背圧調整弁を通過するエアの流量と圧力との関係(特性)を示すグラフである。
【0085】
エア背圧調整弁50の位置が第1位置に保持された状態で、エアコンプレッサ41が制御されて、エア背圧調整弁50を通過するエアの流量(エア流量)が変更される。その一方で、背圧センサ64によって検出される気液分離器42内の圧力(エア圧力)が取得される。そして、エア背圧調整弁50を通過するエアの流量と気液分離器42内の圧力との関係が求められて、その関係(特性)がFC−ECU61のメモリに記憶されている。
【0086】
また、エア背圧調整弁50の位置が第1位置から一定量だけ閉じられた第2位置に保持された状態で、エアコンプレッサ41が制御されて、エア背圧調整弁50を通過するエアの流量が変更される。その一方で、背圧センサ64によって検出される気液分離器42内の圧力が取得される。そして、エア背圧調整弁50を通過するエアの流量と気液分離器42内の圧力との関係が求められて、その関係(特性)がFC−ECU61のメモリに記憶されている。
【0087】
エア背圧調整弁50を通過するエアの流量が大きくなるにつれて、エア背圧調整弁50を通過するエアの圧力(気液分離器42内の圧力)が単調に増加する。そして、エア背圧調整弁50の位置が第2位置に保持された状態では、エア背圧調整弁50の位置が第1位置に保持された状態と比較して、エア背圧調整弁50の開度が小さいので、エア背圧調整弁50を通過するエアの流量の増加に対して、エア背圧調整弁50を通過するエアの圧力が急峻に増加する。
【0088】
<回収管の流量−圧力差特性>
【0089】
図5は、還流管を流通する液体の流量と還流管の両端が接続された気液分離器間の圧力差との関係(特性)を示すグラフである。
【0090】
還流管47の一端が接続された気液分離器42内の圧力と還流管47の他端が接続された気液分離器24内の圧力との圧力差PC−Aが大きくなるにつれて、還流管47を流通する液体の流量QRが単調に増加する。この流量QRと圧力差PC−Aとの関係が予め求められて、その関係がFC−ECU61のメモリに記憶されている。
【0091】
<気液分離器液量算出処理>
【0092】
図6は、気液分離器液量算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0093】
気液分離器液量算出処理では、まず、エアコンプレッサ41の回転数が一定の回転数に保持される(ステップS21)。燃料電池2の通常の発電時には、エア背圧調整弁50の位置が第1位置に保持されている。このとき、エアコンプレッサ41が一定の回転数で駆動されると、エアが一定のエア流量Qでエア背圧調整弁50を通過する。
【0094】
次に、エア背圧調整弁50が第1位置から第2位置に閉じられ、エア背圧調整弁50の開度が一定量だけ小さくされる(ステップS22)。これにより、図4に示されるように、エア背圧調整弁50を通過するエアの圧力(気液分離器42内の圧力)がエア圧力P1に保たれたまま、そのエアの流量がエア流量Q1からエア流量Q1’に低下する。
【0095】
その後、背圧センサ64によって検出される気液分離器42内の圧力(エア圧力)P2’が取得される(ステップS23)。
【0096】
また、図4に示される関係が参照されて、エア圧力P2’に対応するエア流量Q2’が取得される(ステップS24)。
【0097】
エア圧力P2’およびエア流量(エア背圧調整弁50を通過するエアの流量)Q2’は、時間の経過とともに、それぞれエア圧力P1およびエア流量Q1’から増加する。
【0098】
その後、背圧センサ64によって検出されるエア圧力P2’が安定したか否かが判断される(ステップS25)。具体的には、前回取得したエア圧力P2’と今回取得したエア圧力P2’との差が予め定められた閾値よりも小さいか否かが調べられ、その差が閾値よりも小さければ、エア圧力P2’が安定したと判断される。または、FC−ECU61のメモリの記憶内容が参照されて、エア背圧調整弁50の位置が第2位置であるときのエアの流量と圧力との関係に基づいて、エア流量Q1に対応する圧力P2が取得され、その圧力P2とエア圧力P2’との差の絶対値が予め定められた閾値よりも小さいか否かが調べられ、その差が閾値よりも小さければ、エア圧力P2’が安定したと判断される。
【0099】
エア圧力P2’が安定するまでの間は(ステップS25のNO)、エア圧力P2’およびエア流量Q2’が繰り返し取得される(ステップS23,S24)。
【0100】
エア圧力P2’が安定すると(ステップS25のYES)、一定のエア流量Q1からそれまでに取得された各エア流量Q2’が差し引かれて、各流量差Q1−Q2’が累積して加算されることにより、エア圧力P1からエア圧力P2’への上昇に使用されたエア量Σ(Q1−Q2’)が算出される。エア供給管85、燃料電池2のエア流路およびパージ管49におけるエア背圧調整弁50よりも上流側の部分の容積の合計値V1が既知であるから、気液分離器42内の空隙部分の容積をV2として、下記式(4)に基づいて、その容積V2が算出される。そして、気液分離器42の容積から容積V2を差し引くことにより、気液分離器42内に溜められた液体の液量Vrが算出される(ステップS26)。
【0101】
(P2’−P1)×(V1+V2)=Σ(Q1−Q2’)×R×T ・・・(4)
ただし、R:気体定数
T:エアの温度
【0102】
<還流制御>
【0103】
図7は、還流制御の流れを示すフローチャートである。
【0104】
還流制御では、まず、圧力センサ63によって検出される気液分離器24内の圧力が取得される。次に、エア圧力P2’と気液分離器24内の圧力との圧力差PC−Aが算出され、図5に示される関係に基づいて、その圧力差PC−Aに対応する流量QRが取得される。そして、気液分離器42内の液量Vrがその取得された流量QRで除されることにより、還流電磁弁48を開放すべき時間である開放時間が算出される(ステップS31)。
【0105】
開放時間が算出されると、還流電磁弁48が開放される(ステップS32)。このとき、エア背圧調整弁50の位置は、気液分離器液量算出処理時の第2位置から変更されておらず、気液分離器42内の圧力が通常の発電時よりも高められている。そのため、還流電磁弁48が開放されると、気液分離器42内に溜められた液体は、還流管47内を通して、気液分離器24に送られる。
【0106】
その後、還流電磁弁48が開放されてからの経過時間が開放時間に達すると(ステップS33のYES)、還流電磁弁48が閉じられて(ステップS34)、この還流制御がリターンされる。
【0107】
<作用効果>
【0108】
以上のように、燃料電池2からエア排出管46に排出されるエアには、クロスリークした液体が含まれる。この液体は、気液分離器42でエアから分離され、還流制御により、還流管47、気液分離器24および燃料帰還管32を通して、気液分離器42から燃料循環路(循環燃料タンク23)に還流される。
【0109】
還流制御が実行されるときには、その還流される液体の液量Vrおよび濃度Crが取得される。そして、還流制御によって還流される液体中の液体燃料の濃度Crを適切な目標濃度Cに上昇させるのに必要な液体燃料の量である還流調整量Vsが算出される。その後、還流制御のタイミングに応じて、還流調整量Vsの液体燃料が液体燃料タンク21から燃料循環路に補給される。
【0110】
これにより、気液分離器42から燃料循環路に液体が還流されたときに、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が低下することを抑制できる。そのため、液体燃料の濃度の低下に起因する種々の不都合の発生、たとえば、発電性能の低下や燃料電池2の劣化を抑制することができる。
【0111】
また、還流制御の開始のタイミングに応じて、液体燃料タンク21から燃料循環路への液体燃料の補給の開始のタイミングが調整される。これにより、燃料循環路を循環する液体中の液体燃料の濃度が一時的であっても低下することを抑制できる。
【0112】
<変形例>
【0113】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0114】
たとえば、前述の実施形態では、燃料電池システム1が車両に搭載された場合を例にとった。しかしながら、燃料電池システム1は、車両以外の装置に搭載されてもよいし、それ単独で電源として構成されてもよい。
【0115】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
21 液体燃料タンク(液体燃料補給手段)
25 燃料補給管(液体燃料補給手段)
26 燃料供給ポンプ(液体燃料補給手段)
23 循環液体タンク(燃料循環路)
24 気液分離器(燃料循環路)
29 燃料供給管(燃料循環路)
31 燃料排出管(燃料循環路)
32 燃料帰還管(燃料循環路)
42 気液分離器
46 エア排出管(エア排出路)
47 還流管
48 還流電磁弁(電磁弁)
50 エア背圧調整弁
61 FC−ECU(液量取得手段、濃度取得手段、還流調整量算出手段、制御手段)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7