特許第6024757号(P6024757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6024757天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
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  • 特許6024757-天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 図000036
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024757
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20161107BHJP
   C08F 253/00 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C08L51/04
   C08F253/00
   C08L25/08
   C08L101/00
   C08L67/02
   C08L63/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】83
(21)【出願番号】特願2014-538463(P2014-538463)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2013075456
(87)【国際公開番号】WO2014050734
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210531(P2012-210531)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-32086(P2013-32086)
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-38538(P2013-38538)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-53350(P2013-53350)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-112654(P2013-112654)
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-115264(P2013-115264)
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-117785(P2013-117785)
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大脇 隆正
(72)【発明者】
【氏名】白川 信明
(72)【発明者】
【氏名】内藤 祉康
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】高崎 忠勝
(72)【発明者】
【氏名】城谷 幸助
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】森戸 昭等
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225792(JP,A)
【文献】 特開平01−163243(JP,A)
【文献】 特開平04−100809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08F 253/00
C08L 25/08
C08L 63/00
C08L 67/02
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある天然ゴム10〜70質量%及び重量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にある合成ゴム30〜90質量%からなるゴム状重合体(R)に、少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であって、
天然ゴム粒子が、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子を5質量%以上含み、かつ、ゴム状重合体(R)粒子における粒子径1.0μm以上の粒子における内部グラフト率が20%以上である天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記グラフト共重合体(A)がゴム状重合体(R)5〜65質量部にビニル系単量体混合物(a)35〜95質量部をグラフト重合してなり、ビニル系単量体混合物(a)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%からなる、請求項1に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記グラフト共重合体(A)が、ゴム状重合体(R)40〜60質量部に、ビニル系単量体混合物(a)40〜60質量部をグラフト重合してなり、
ビニル系単量体混合物(a)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10質量%からなる請求項1記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記グラフト共重合体(A)、および少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(b)を共重合してなるビニル系共重合体(B)を混合してなるスチレン系樹脂(I)を含む請求項1〜3いずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニル系単量体混合物(b)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10質量%からなる、請求項4に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)合計100質量%中、ゴム状重合体(R)を5〜50質量%含む、請求項4または5に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂(I)および他の熱可塑性樹脂(II)を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1記載のグラフト共重合体(A)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含む樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)ならびにポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の合計100質量部に対して、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を0.01〜1質量部含むものである天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の重量平均分子量[Mw]が2,000〜20,000である、請求項8に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)のエポキシ価が0.5〜4.0(meq/g)である、請求項8または9に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項12】
天然ゴムを含むゴム状重合体(R)にビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合する際に、ビニル系単量体混合物(a)のうち10質量%以上をゴム状重合体(R)に30分以上接触させる工程、その後ゴム状重合体(R)にビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合する工程を有する、請求項1〜3いずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車材料、家電製品、一般雑貨などの用途分野で使用される熱可塑性樹脂組成物には、耐衝撃性、剛性といった機械的強度と成形加工性とのバランスが求められる。このため、これら用途分野においては、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂に代表される、ゴム状重合体を含有するゴム強化熱可塑性樹脂組成物が幅広く利用されている。
【0003】
一方、カーボンニュートラルの観点から、ポリ乳酸に代表される天然由来原料を使用した樹脂組成物のニーズが高まっている。ゴム状重合体を含む熱可塑性樹脂組成物への天然由来原料の適用の一例として、ゴム状重合体として用いられるポリブタジエン等の合成ゴムを天然ゴムに代替する技術がある。
【0004】
特許文献1には、窒素含有率0.1質量%以下の脱蛋白質化天然ゴムと、合成ゴムとを含有するゴム状重合体を含むABS樹脂が記載されている。しかし、特許文献1では、天然ゴム中に存在する不純物、特に蛋白質が、グラフト重合反応を阻害するため、公知の脱蛋白化方法による天然ゴムラテックスの脱蛋白化が必要と説明している。さらにこの文献では脱蛋白化処理を施さない天然ゴムラテックスでは、高い耐衝撃性改善効果は得られなかったと説明している。なお、天然ゴムの脱蛋白化方法としては、具体的には、天然ゴムラテックスに蛋白質分解酵素を添加して蛋白質を分解する方法(特許文献2)、天然ゴムを界面活性剤で洗浄する方法(特許文献3)、天然ゴムラテックスに尿素系蛋白質変性剤を添加して蛋白質を分解する方法(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/132795号
【特許文献2】日本国特開平6−56902号公報
【特許文献3】日本国特開2004−99696号公報
【特許文献4】日本国特開2009−84333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天然ゴムの脱蛋白化は煩雑な工程であり、脱蛋白化した天然ゴムをHIPSやABS樹脂に例示されるようなゴム強化熱可塑性樹脂組成物のゴム状重合体(R)として適用することは、工業レベルでの実用化において困難であった。そこで本発明は、天然ゴムラテックスを使用し、煩雑な天然ゴムの脱蛋白化処理を必要とすることなく、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れた物性を有する天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することを見いだした。
【0008】
まず、第一の発明で開示するのは、グラフト共重合体(A)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(5)の発明で構成される。
(1)重量平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある天然ゴム10〜70質量%及び重量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にある合成ゴム30〜90質量%からなるゴム状重合体(R)に、
少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a)を、グラフト重合してなるグラフト共重合体(A)
を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であって、
天然ゴム粒子が、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子を5質量%以上含み、かつ、
ゴム状重合体(R)粒子における粒子径1.0μm以上の粒子における内部グラフト率が20%以上である
天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記グラフト共重合体(A)が、ゴム状重合体(R)5〜65質量部にビニル系単量体混合物(a)35〜95質量部をグラフト重合してなり、ビニル系単量体混合物(a)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなる、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記グラフト共重合体(A)が、ゴム状重合体(R)40〜60質量部にビニル系単量体混合物(a)40〜60質量部をグラフト重合してなり、
ビニル系単量体混合物(a)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなる、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(4)天然ゴムを含むゴム状重合体(R)にビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合する際に、ビニル系単量体混合物(a)のうち10質量%以上をゴム状重合体(R)に30分以上接触させる工程、その後ゴム状重合体(R)にビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合する工程を有する、(1)〜(3)いずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【0009】
そして第二の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)および下記ビニル系共重合体(B−1)を混合してなるスチレン系樹脂(I)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(5)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)、および少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(b−1)を共重合してなるビニル系共重合体(B−1)を混合してなるスチレン系樹脂(I)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)ビニル系単量体混合物(b−1)が、芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなる、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)合計100質量%中、ゴム状重合体(R)を5〜50質量%含む、(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(4)グラフト共重合体(A)10〜50質量部及びビニル系共重合体(B−1)90〜50質量部を含む、(1)〜(3)いずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【0010】
第三の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)に、さらにエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(5)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)100質量部に対してエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)を0.5〜6.0質量部含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、ゴム状重合体(R)が5〜50質量部である、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)さらにスチレン系樹脂(I)が、上記ビニル系共重合体(B−1)を含み、グラフト共重合体(A)10〜50質量部に対しビニル系共重合体(B−1)が90〜50質量部である、(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(4)スチレン系樹脂(I)がグラフト共重合体(A)、並びに芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなるビニル系単量体混合物(b−1)を共重合してなるビニル系共重合体(B−1)を含む、(3)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【0011】
第四の発明で開示するのは、第一の発明の前記グラフト共重合体(A)を含む組成物、または第二の発明の前記ビニル系共重合体(B−1)も含むスチレン系樹脂(I)を含み、さらにリン酸エステル系難燃剤(J)および芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(11)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)100質量部に対して、リン酸エステル系難燃剤(J)6〜15質量部および粘度平均分子量[Mv]が1,000〜10,000である芳香族カーボネートオリゴマー(K)0.1〜3質量部を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)リン酸エステル系難燃剤(J)が下記一般式(1)で表される、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
(一般式(1)中、R〜Rはフェニル基またはハロゲンを含有しない有機基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R〜R12は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CHまたはCHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。)
(3)芳香族カーボネートオリゴマー(K)が下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を有する、(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
(一般式(2)中、Zは炭素数2〜5の置換もしくは非置換のアルキリデン基、置換もしくは非置換のシクロヘキシリデン基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基を表す。R13〜R16は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
(4)前記スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)5〜50質量部を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(5)さらにスチレン系樹脂(I)が、上記ビニル系共重合体(B−1)を含み、グラフト共重合体(A)10〜50質量部に対し、ビニル系共重合体(B−1)90〜50質量部を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(6)スチレン系樹脂(I)がグラフト共重合体(A)、並びに芳香族ビニル系単量体60〜80質量%、シアン化ビニル系単量体20〜40質量%及びこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなるビニル系単量体混合物(b−1)を共重合してなるビニル系共重合体(B−1)を含む、(5)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(7)リン酸エステル系難燃剤(J)がレゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)および/またはレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)である、(1)〜(6)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(8)さらに含リン有機化合物系酸化防止剤(M)0.1〜1質量部を含む、(1)〜(7)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(9)さらにシリコーン化合物(N)0.1〜1質量部を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
(11)難燃性がUL94 V−2基準を満たす、(10)に記載の成形品。
【0016】
第五の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)にさらにポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(7)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の和100質量部に対してエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を0.01〜1質量部含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の重量平均分子量[Mw]が2,000〜20,000である、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)のエポキシ価が0.5〜4.0(meq/g)である、(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(4)スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の和100質量部において、スチレン系樹脂(I)50〜99質量部およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)50〜1質量部を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(5)前記スチレン系樹脂(I)において、グラフト共重合体(A)10〜50質量部およびビニル系共重合体(B−2)(但し、ビニル系共重合体(B−2)の定義において前記エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)成分は含まれない)90〜50質量部を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(6)ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の全部または一部がポリエチレンテレフタレート樹脂(D)成形品のリサイクル材である(1)〜(5)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
【0017】
第六の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)にさらにポリアミドエラストマー(E)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)〜(5)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)の和100質量部に対して、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基の少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系共重合体(T)を0.01〜20質量部含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)ポリアミドエラストマー(E)が数平均分子量[Mn]200〜6,000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールをポリマーの骨格の構成成分とする、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)スチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)の和100質量部において、スチレン系樹脂(I)50〜97質量部およびポリアミドエラストマー50〜3質量部を含む(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(4)前記スチレン系樹脂(I)において、グラフト共重合体(A)10〜50質量部およびビニル系共重合体(B−3)(但し、ビニル系共重合体(B−3)の定義において、前記変性ビニル系共重合体(T)成分は含まれない)90〜50質量部を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
【0018】
第七の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)にさらにポリ乳酸系樹脂(F)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに(2)の発明で構成される。
(1)ビニル系共重合体(B−4)10〜80質量部、前記グラフト共重合体(A)5〜70質量部及びポリ乳酸系樹脂(F)1〜85質量部からなる樹脂組成物100質量部に対して、リン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)を0.01〜5質量部を含有する天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
【0019】
第八の発明で開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)にさらにポリカーボネート樹脂(G)を含む天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物であり、下記(1)の発明、さらに下記の(2)〜(3)の発明で構成される。
(1)前記グラフト共重合体(A)5〜25質量部、ビニル系共重合体(B−5)10〜55質量部およびポリカーボネート樹脂(G)40〜85質量部を含有する、天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(2)ビニル系共重合体(B−5)が、芳香族ビニル系単量体60〜85質量%、シアン化ビニル系単量体15〜40質量%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%からなるビニル系単量体混合物(b−5)を共重合してなる、(1)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物。
(3)(1)または(2)に記載の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、煩雑な天然ゴムの脱蛋白化処理を必要とすることなく、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れた物性を有した、天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
さらに第三の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに優れた耐薬品性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
そして、第四の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに優れた難燃性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
そして、第五の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに優れた外観および耐薬品性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
そして、第六の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに優れた表面固有抵抗値および静電気拡散性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
そして、第七の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに環境低負荷であり、耐熱性および熱安定性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
そして、第八の発明によれば、耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに優れた耐熱性を併せ持つ天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例における耐薬品性評価方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある。)は、以下に記述する八つの発明から構成される。
【0029】
第一の発明の熱可塑性樹脂組成物は、そのグラフト共重合体(A)が有する、天然ゴムの粒子径、合成ゴムの粒子径、およびこれらを合わせたゴム状重合体(R)粒子における内部グラフト率に特徴がある。その特徴は第二の発明から第八の発明にも共通する。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、重量平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある天然ゴム10〜70質量%および重量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にある合成ゴム30〜90質量%からなるゴム状重合体(R)に少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)を含み、天然ゴム粒子が、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子を全天然ゴム粒子中5質量%以上含み、かつ粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率が20%以上であることを特徴とする。
【0031】
グラフト共重合体(A)に使用される天然ゴムとは、通常は、ゴムノキの樹液に含まれる、シス−ポリ1,4−イソプレンを主な繰り返し構造単位とする物質である。樹液には、生体内での付加重合で生成した天然ゴムの他、微量のタンパク質や脂肪酸などの不純物が含まれている。本発明では、樹液(天然ゴム濃度は30質量%程度)を任意の精製・固液分離の手法により精製し、天然ゴム濃度を60質量%以上にした天然ゴムラテックスに含まれる天然ゴムを用いることが好ましい。また、本発明に用いられる天然ゴムは、あらかじめ脱蛋白処理を施されたものである必要はないが、脱蛋白処理を施した天然ゴムラテックスを使用してもよいし、熱可塑性樹脂組成物を製造する工程で天然ゴムが脱蛋白化されてもかまわない。
【0032】
グラフト共重合体(A)に使用される天然ゴムは、粒子径1.0μm以上のものが天然ゴム粒子全体の5質量%以上であり、かつ、重量平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にあることを特徴とする。
【0033】
天然ゴム粒子の粒子径は、グラフト共重合体(A)やこれを含む樹脂組成物の衝撃吸収性に影響する。そこで、本発明においては、より衝撃吸収性に優れる粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子に着目した。粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子が天然ゴム粒子全体の5質量%未満である場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。
【0034】
粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子の含有量は、天然ゴム粒子全体の20質量%以上が好ましい。一方、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子の含有量の上限については特に制限はない。ただし、耐衝撃性をより向上させる観点から、その量は天然ゴム粒子全体の50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
【0035】
また、重量平均粒子径が0.3μm未満の天然ゴムは採取が難しく、また二次加工に手間がかかることに加え、天然ゴムの重量平均粒子径が0.3μm未満である場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下するおそれがある。さらに天然ゴムの重量平均粒子径は、0.6μm以上が好ましい。一方、天然ゴムの重量平均粒子径が1.2μmを超える場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、色調および表面光沢性が低下することがある。さらに天然ゴムの重量平均粒子径は、1.0μm以下が好ましい。
【0036】
なお、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子の含有量および天然ゴムの重量平均粒子径は、次の方法により求めることができる。まず、天然ゴム(または天然ゴムラテックス)を水を媒体として希釈し、天然ゴムを分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置により粒子径分布を測定する。レーザ散乱回折法粒度分布測定装置としては、“LS 13 320”(ベックマン・コールター株式会社)などを用いることができる。得られた粒子径分布から、粒子径1.0μm以上の天然ゴム粒子の含有量を算出し、さらに下記の数式1によりゴム粒子の重量平均粒子径を算出する。
【0037】
【数1】
【0038】
(数式1中のnはdの粒子径を有する粒子の個数、dはi番目の粒子の粒子径をそれぞれ表す。)
グラフト共重合体(A)に使用される合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)(SBR)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)(NBR)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)又はポリ(エチレン−アクリル酸メチル)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、耐衝撃性をより向上させる観点から、ポリブタジエン、SBR、NBR又はエチレン−プロピレンラバーが好ましい。
【0039】
グラフト共重合体(A)に使用される合成ゴムは、付加重合により生成した合成ゴムラテックスに含まれる合成ゴムを用いることが好ましい。
【0040】
本発明では、合成ゴムの重量平均粒子径は、0.2〜0.4μmの範囲にあることを特徴とする。合成ゴムの重量平均粒子径が0.2μm未満である場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。一方、合成ゴムの重量平均粒子径が0.4μmを越える場合にも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。合成ゴムの重量平均粒子径は0.3μm以下が好ましい。
【0041】
なお、合成ゴムの重量平均粒子径は、次の方法により求めることができる。まず、合成ゴム(または合成ゴムラテックス)を水媒体で希釈し、合成ゴムを分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置により粒子径分布を測定する。レーザ散乱回折法粒度分布測定装置としては、“LS 13 320”(ベックマン・コールター株式会社)などを用いることができる。得られた粒子径分布から、前記数式1により合成ゴムの重量平均粒子径を算出する。
【0042】
グラフト共重合体(A)に使用されるゴム状重合体(R)は、天然ゴム10〜70質量%、合成ゴム30〜90質量%からなることを特徴とする。天然ゴムが10質量%未満でかつ合成ゴムが90質量%を越える場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。天然ゴムが20質量%以上、合成ゴムが80質量%以下であることが好ましく、天然ゴムが25質量%以上、合成ゴムが75質量%以下であることがより好ましい。一方、天然ゴムが70質量%を越えかつ合成ゴムが30質量%未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、色調および表面光沢性が著しく低下する。天然ゴムが50質量%以下、合成ゴムが50質量%以上であることが好ましく、天然ゴムが40質量%以下、合成ゴムが60質量%以上であることがより好ましい。
【0043】
グラフト共重合体(A)は、上記ゴム状重合体(R)に少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合することにより得られるものである。グラフト共重合体(A)にはゴム状重合体(R)にビニル系共重合体がグラフトしたものと、グラフトしていないビニル系共重合体が含まれる。グラフト重合の際のゴム状重合体(R)とビニル系単量体混合物(a)の質量比率は、これらの合計100質量部に対して、好ましくはゴム状重合体(R)が5〜65質量部、ビニル系単量体混合物(a)が35〜95質量部である。ゴム状重合体(R)を5質量部以上、ビニル系単量体混合物(a)を95質量部以下とすることにより、グラフト共重合体(A)の生産性を向上させることができる。ゴム状重合体(R)40質量部以上、ビニル系単量体混合物(a)60質量部以下がより好ましく、ゴム状重合体(R)45質量部以上、ビニル系単量体混合物(a)55質量部以下がより好ましい。一方、ゴム状重合体(R)を65質量部以下、ビニル系単量体混合物(a)を35質量部以上とすることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させることができる。ゴム状重合体(R)60質量部以下、ビニル系単量体混合物(a)40質量部以上がより好ましく、ゴム状重合体(R)55質量部以下、ビニル系単量体混合物45質量部以上がより好ましい。
【0044】
ビニル系単量体混合物(a)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体を含み、さらに他のビニル系単量体を含んでもよい。ビニル系単量体混合物(a)はシアン化ビニル系単量体を含むことが好ましい。さらにビニル系単量体混合物(a)はこれらと共重合可能なビニル系単量体を含むことが好ましい。
【0045】
ビニル系単量体混合物(a)に含まれうる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、スチレンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。ビニル系単量体混合物(a)中の芳香族ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(a)中の芳香族ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0046】
また、ビニル系単量体混合物(a)に含まれうるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、アクリロニトリルが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。ビニル系単量体混合物(a)中のシアン化ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(a)中のシアン化ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の色調をより向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
また、ビニル系単量体混合物(a)中に含まれうるこれらと共重合可能な他の単量体は、前述の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。具体的には、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体などが挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0048】
ビニル系単量体混合物(a)中に含まれうる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、特に制限はないが、炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが好ましい。炭素数1〜6のアルコールは、さらに水酸基やハロゲン基などの置換基を有してもよい。
【0049】
具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。
【0050】
不飽和脂肪酸としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0051】
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0052】
マレイミド系単量体としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0053】
ビニル系単量体混合物(a)中の、これらと共重合可能なビニル系単量体の含有量は、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%である。ビニル系単量体混合物(a)中の共重合可能なビニル系単量体の含有量を10質量%以下とすることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、色調をより高いレベルで両立することができる。
【0054】
第一の発明のグラフト共重合体(A)の製造方法には特に限定はなく、天然ゴム及び合成ゴムを混合した後、ビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合させてもよく、天然ゴム、合成ゴムを各々ビニル系単量体混合物(a)とグラフト重合した後、各々のグラフト共重合体を混合してもよい。
【0055】
ゴム状重合体(R)とビニル系単量体混合物(a)のグラフト重合方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法及び溶液連続重合法等の任意の方法を用いることができ、好ましくは乳化重合法又は塊状重合法が用いられる。なかでも、ゴム状重合体(R)の粒子径を制御しやすく、重合時の除熱による重合安定性制御のしやすさから乳化重合法が最も好まれる。
【0056】
グラフト共重合体(A)を製造する際に、グラフト重合方法として乳化重合法を用いる場合には、乳化剤として各種界面活性剤を添加してもよい。
【0057】
グラフト重合法に用いる各種界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型及びスルホン酸塩型などのアニオン系界面活性剤が特に好ましく使用される。
【0058】
カルボン酸塩型の乳化剤の具体例としては、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリル酸塩、ミスチリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0059】
硫酸エステル塩型の乳化剤の具体例としては、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
【0060】
スルホン酸塩型の乳化剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物などが挙げられる。
【0061】
ここで言う塩とは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などが挙げられる。これらの乳化剤は、1種又は2種以上を併用して使用される。
【0062】
グラフト重合に使用される開始剤としては、過酸化物、アゾ系化合物、水溶性の過硫酸カリウムなどが用いられる。これらの開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0064】
アゾ系化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。
【0065】
なかでも、過硫酸カリウム、クメンハイドロパーオキサイド等が好ましく用いられる。また、開始剤はレドックス系でも用いることができる。
【0066】
グラフト共重合体(A)の重合度及びグラフト率調整を目的として、メルカプタン、テルペン等の連鎖移動剤を使用することも可能であり、その具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、及びテルピノレンなどが挙げられる。これら連鎖移動剤が使用される場合は、1種又は2種以上を併用して使用される。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0067】
乳化重合法により製造されたグラフト共重合体ラテックスに凝固剤を添加して、グラフト共重合体(A)を回収することが一般的である。凝固剤としては、酸又は水溶性塩が好ましく用いられる。
【0068】
酸の例としては、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。水溶性塩としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。これらの凝固剤を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、色調のより優れた樹脂を得るためには、樹脂中に乳化剤を残存させない方が好ましく、乳化剤にはアルカリ脂肪酸塩を用い、酸凝固することが好ましい。
【0069】
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、ゴム状重合体(R)とビニル系単量体混合物(a)の仕込み方法は、特に限定されない。例えば、これら全てを初期一括仕込みしてもよい。また、共重合体組成の分布を制御するために、ビニル系単量体混合物(a)の一部を連続的に仕込むか、もしくはビニル系単量体混合物(a)の一部又は全てを分割して仕込んでもよい。ここで、ビニル系単量体混合物(a)の一部を連続的に仕込むとは、ビニル系単量体混合物の一部を初期に仕込み、残りを経時的に連続して仕込むことを意味する。また、ビニル系単量体混合物(a)の一部又は全てを分割して仕込むとは、ビニル系単量体混合物(a)の一部または全てを、初期仕込みより後の時点で仕込むことを意味する。本発明においては、後述する、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率を20%以上にするため、重合開始前に全ビニル系単量体混合物(a)のうちの10%質量以上を仕込むことが好ましい。重合開始前に全ビニル系単量体混合物(a)のうちの10質量%以上を仕込むことによって、天然ゴムとビニル系単量体混合物(a)が接触する環境下において、ビニル系単量体混合物(a)が蛋白質に被覆された天然ゴム粒子の内部にまで滲入しやすい。このため、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率が20%以上であるグラフト共重合体(A)を容易に製造することができる。なお、ここでいう重合開始とは開始剤を添加しはじめた時点をいう。
【0070】
重合開始前に、天然ゴムとビニル系単量体混合物(a)を接触させる時間については、特に制限はないが、天然ゴムへビニル系単量体混合物(a)を十分含浸させるため、30分間以上が好ましい。長すぎても効果は飽和となる傾向があるから90分間以下が好ましい。例えば、重合開始の30〜90分以上前に、ビニル系単量体混合物(a)の仕込みを開始することが好ましい。また重合前にビニル系単量体混合物(a)のすべてを天然ゴムと接触させる必要はない。反応させる予定の量の10質量%以上であればいい。
【0071】
重合開始前にビニル系単量体混合物(a)を仕込む際の温度は、特に制限はないが、40〜70℃が好ましい。仕込み温度を40℃以上とすることにより、ビニル系単量体混合物(a)を天然ゴム内部へ十分含浸させることができる。一方、仕込み温度を70℃以下とすることにより、ラテックスの乳化安定性を維持することができる。
【0072】
乳化重合の際のpHは特に制限はないが、10〜12の範囲であることが好ましい。pHを10〜12の範囲にすることにより、グラフト共重合体(A)の乳化状態を安定化することができる。また、一部の蛋白質の加水分解が促進され、グラフト重合が進行しやすくなる。pHを10〜12の範囲にするためには、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が用いられるが、なかでも乳化安定性に優れる水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0073】
グラフト共重合体(A)のグラフト率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。グラフト率が30%以上であると、熱可塑性樹脂組成物に存在するゴム状重合体(R)と、後述するビニル系共重合体(B)の相溶性をより向上させることができる。一方、グラフト率の上限は耐衝撃性をより向上させる観点から、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0074】
本発明では熱可塑性樹脂組成物に含まれる粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率が20%以上であることを特徴とする。前述のとおり、天然ゴム粒子の粒子径は、グラフト共重合体(A)やこれを含む樹脂組成物の衝撃吸収性に影響するが、本発明においては、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率を20%以上とすることにより、熱可塑性樹脂組成物中にゴム状重合体(R)を分散させて導入することができる。内部グラフト率とは、ゴム状重合体(R)及びその内部に存在するビニル系共重合体(Y)の総量[(R)+(Y)]に対する、ゴム状重合体(R)内部に存在するビニル系共重合体の含量(Y)の割合を示す。具体的には、オスミック酸染色法により調整した試料を電子顕微鏡(TEM)観察で2万倍に拡大して撮影した写真より、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)を無作為に5つ選択し、ゴム状重合体(R)の断面積と該断面積の内部に存在するビニル系共重合体(Y)の面積の比率として換算し平均値として算出したものである。なお、ここで内部グラフト率を算出するゴム状重合体(R)は、天然ゴムと合成ゴムとを区別せずに観測する。粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率が20%未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物に存在するゴム状重合体(R)と、グラフトしていないビニル系共重合体との相溶性が低下するため、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にある。粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)粒子の内部グラフト率は30%以上が好ましい。一方、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)の内部グラフト率の上限については特に制限はないが、50%以下であることが好ましい。なお、かかる内部グラフト率を20%以上にする手段としては、前述のように例えば、ビニル系単量体混合物(a)のうち10質量%以上を仕込んだ後、乳化重合を開始し、残りの単量体混合物(a)を追加していく方法などが挙げられる。
【0075】
グラフト共重合体(A)は溶剤に溶解する成分を含んでもよい。アセトン可溶分の重量平均分子量[Mw]には、特に制限はないが、ゴム状重合体(R)と後述するビニル系共重合体(B)との相溶性を向上させる観点から、30,000〜150,000の範囲であることが好ましく、40,000〜10,000の範囲であることがさらに好ましい。なお、ここで、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量[Mw]とは、テトラヒドロフラン溶媒を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いて算出された値を言う。
【0076】
第二の発明の発明として開示するのは、第一の発明に記載のグラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B−1)とを混合して成るスチレン系樹脂(I)を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0077】
第二の発明のスチレン系樹脂(I)は、第一の発明の好ましい態様であり、グラフト共重合体(A)に、ビニル系共重合体(B−1)をさらに混合したものである。
【0078】
第二の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−1)は少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(b−1)を共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0079】
芳香族ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(b−1)を共重合してなるビニル系共重合体(B−1)の具体例としては、ポリスチレン、HIPS(例えばブタジエンゴムにスチレンをグラフト重合させたグラフト重合体を含有するスチレン樹脂)、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエン−スチレン(AES)樹脂、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン(MAS)樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン(MS)樹脂等が挙げられる。また、ビニル系共重合体(B−1)は1種又は2種以上用いることができる。ビニル系単量体混合物(b−1)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体を含み、他のビニル系単量体を含んでもよい。他のビニル系単量体はシアン化ビニル系単量体を含むことが好ましく、さらにこれらと共重合可能な単量体を含んでもよい。
【0080】
ビニル系単量体混合物(b−1)に含まれうる芳香族ビニル系単量体としては、ビニル系単量体混合物(a)に含まれうる芳香族ビニル系単量体として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0081】
ビニル系単量体混合物(b−1)中の芳香族ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(b−1)中の芳香族ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0082】
ビニル系単量体混合物(b−1)に含まれうるシアン化ビニル系単量体としては、ビニル系単量体混合物(a)に含まれうるシアン化ビニル系単量体として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0083】
ビニル系単量体混合物(b−1)中のシアン化ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(b−1)中のシアン化ビニル系単量体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の色調をより向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0084】
ビニル系単量体混合物(b−1)中に含まれうるこれらと共重合可能な他の単量体は、前述の芳香族ビニル系単量体やシアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体である。ビニル系単量体混合物(a)に含まれうる共重合可能な他の単量体として例示したものが挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。ビニル系単量体混合物(b−1)中の、これらと共重合可能なビニル系単量体の含有量は、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%である。ビニル系単量体混合物(b−1)中の共重合可能なビニル系単量体の含有量を10質量%以下とすることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、色調をより高いレベルで両立することができる。
【0085】
第二の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−1)の製造方法には懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法等の任意の方法を用いることができる。重合制御の容易さ、後処理の容易さ、および生産性を考慮すると塊状重合、懸濁重合が好ましい。
【0086】
第二の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−1)の製造方法として懸濁重合法を用いる場合、懸濁重合に用いられる懸濁安定剤としては、粘土、硫酸バリウム及び水酸化マグネシウムなどの無機系懸濁安定剤や、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミド及びメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体などの有機系懸濁安定剤などが挙げられ、なかでも色調安定性の面で有機系懸濁安定剤が好ましく使用される。これらの懸濁安定剤は、1種又は2種以上用いることができる。
【0087】
懸濁重合に使用される開始剤としては、グラフト共重合体(A)の乳化重合と同様の開始剤を用いることができる。また、ビニル系共重合体(B−1)の重合度の調整を目的として、グラフト共重合体(A)の重合と同様に、メルカプタン、テルペン等の連鎖移動剤を使用することも可能である。懸濁重合ではビニル系共重合体(B−1)のスラリーが得られ、次いで脱水、乾燥を経て、ビーズ状のビニル系共重合体(B−1)が得られる。
【0088】
懸濁重合における単量体の仕込方法も特に制限はなく、初期に一括して仕込む方法、単量体の一部または全てを連続して仕込む方法、または単量体の一部または全てを分割して仕込む方法のいずれを用いてもよい。
【0089】
ビニル系共重合体(B−1)の重量平均分子量[Mw]には特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、ビニル系共重合体(B−1)の重量平均分子量[Mw]は400,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましい。なお、ここで、ビニル系共重合体(B−1)の重量平均分子量[Mw]とは、テトラヒドロフラン溶媒を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いて算出された値を言う。
【0090】
第二の発明におけるスチレン系樹脂(I)は、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)の合計100質量%中、ゴム状重合体(R)を5〜50質量%含むことが好ましい。ゴム状重合体(R)の含有量が5質量%以上であれば、耐衝撃性がより向上する。ゴム状重合体(R)の含有量は10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。一方、ゴム状重合体(R)の含有量が50質量%以下であれば、流動性が向上する。ゴム状重合体(R)の含有量は40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0091】
第二の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B−1)の含有量に特に制限はない。
【0092】
スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B−1)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0093】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(I)に加えて、他の熱可塑性樹脂(II)を含有することができる。他の熱可塑性樹脂(II)としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸系樹脂などのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6,10、ナイロン4,6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン11等のポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアセタール樹脂、結晶性スチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂および各種エラストマー類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)、ポリ乳酸系樹脂(F)、ポリカーボネート樹脂(G)、アクリル系樹脂(V)、ポリアミドエラストマー(E)、およびエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)から選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。
【0094】
第三の発明として開示するのは、第二の発明に記載のスチレン系樹脂(I)、およびエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0095】
第三の発明に記載の、スチレン系樹脂(I)およびエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性および色調のバランスが優れ、耐薬品性を併せ持つという効果がある。
【0096】
第三の発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するスチレン系樹脂(I)は、前記グラフト共重合体(A)および任意に配合される前記ビニル系共重合体(B−1)で構成される。
【0097】
第三の発明においても、ビニル系共重合体(B−1)は混合しなくてもよいが、第二の発明と同様の理由により、これを混合することが好ましい。これを混合する場合、第二の発明と同様の理由により、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0098】
また、第三の発明では、第二の発明と同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。ゴム状重合体(R)は10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。一方、ゴム状重合体(R)は40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0099】
第三の発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)における(メタ)アクリル酸エステルは直鎖状、分岐状であってもよい。そのエステル基の炭素数は1〜18が好ましく、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、イソブチルエステル、ヘキシルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、ドデシルエステル、ウンデシルエステル、ステアリルエステル等が例示され、炭素数2〜8のものがより好ましい。また、エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)の好ましい組成比は、エチレンが10〜85質量%、より好ましくは40〜80質量%、一酸化炭素が5〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%、(メタ)アクリル酸エステルが10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%であり、必要に応じて、その他の共重合可能な単量体と共重合させることもできる。
【0100】
第三の発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)の配合量は、耐薬品性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、0.9質量部以上がさらに好ましい。一方、成形品表面における層状剥離を抑制し、成形品の表面外観をより向上させる観点から、6.0質量部以下が好ましく、5.1質量部以下がより好ましく、5.0質量部以下がさらに好ましい。
【0101】
第四の発明として開示するのは、第一の発明のグラフト共重合体(A)、または第二の発明に記載した、ビニル系共重合体(B−1)も含むスチレン系樹脂(I)を含み、さらにリン酸エステル系難燃剤(J)および芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0102】
第四の発明に記載のリン酸エステル系難燃剤(J)および芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性および色調のバランスが優れ、難燃性を併せ持つという効果がある。
【0103】
第四の発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するスチレン系樹脂(I)は、前記グラフト共重合体(A)および任意に配合される前記ビニル系共重合体(B−1)で構成される。
【0104】
第四の発明でも、ビニル系共重合体(B−1)の混合は任意であり、混合する場合も混合量は任意である。第二の発明と同様の理由により、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−1)の合計100質量%中グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−1)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0105】
また、第四の発明では、第二の発明と同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。ゴム状重合体(R)は10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。一方、ゴム状重合体(R)は40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0106】
第四の発明で用いられるリン酸エステル系難燃剤(J)としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類が好ましく、非ハロゲン系のリン酸エステル類がより好ましい。
【0107】
また、リン酸エステル系難燃剤(J)としては、下記一般式(1)で示されるものが、難燃化の効率の点からより好ましい。
【0108】
【化3】
【0109】
(一般式(1)中、R〜Rはフェニル基またはハロゲンを含有しない有機基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R〜R12は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CHまたはCHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。)
で示されるものが、難燃化の効率の点からより好ましい。
【0110】
上記の一般式(1)で示されるリン酸エステル系難燃剤(J)において、R〜Rはフェニル基またはハロゲンを含有しない有機基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基およびアントリル基などが挙げられる。フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基およびナフチル基が好ましく、フェニル基、トリル基およびキシリル基がより好ましい。
【0111】
また、上記一般式(1)において、R〜R12は水素または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。ここで、炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル基、3−イソプロピル基およびネオイソプロピル基などが挙げられる。水素、メチル基およびエチル基がより好ましく、水素がさらに好ましい。
【0112】
また、Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CH、CHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。中でも、C(CHが好ましい。
【0113】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤の具体例として、ビスフェノールAビスホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)、レゾルシノールビスホスフェート、レゾルシノール(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)およびこれらの置換体、縮合体などを例示できる。レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などが剛性と難燃性とのバランスに優れており、好ましく用いられる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
第四の発明におけるリン酸エステル系難燃剤(J)の配合量は、難燃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、6質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましい。一方、機械的強度および耐熱性をより向上させ、成形時のガス発生を抑制する観点から、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましい。
【0115】
第四の発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記難燃剤に加えて芳香族カーボネートオリゴマー(K)を配合することが好ましい。
【0116】
第四の発明に用いられる芳香族カーボネートオリゴマー(K)の粘度平均分子量[Mv]は、1,000〜10,000が好ましい。なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、更にSchnellの粘度式、すなわち、[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83から算出される値を意味する。ここで極限粘度[η]とは各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
η=limηsp/c(c→0) 。
【0117】
芳香族カーボネートオリゴマー(K)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンで代表的に例示される芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンで代表的に例示されるカーボネート前駆体との反応によって得られる。
【0118】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと記載することがある。)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等で例示されるカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0119】
これらの中で好ましいのは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましいのは、ビスフェノールAである。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。中でもホスゲンが好ましく用いられることが多い。これらカーボネート前駆体もまた1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
本発明で用いられる芳香族カーボネートオリゴマー(K)の製造法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている方法を用いることができる。具体的には、界面重合法(ホスゲン法)、溶融エステル交換法、溶液重合法(ピリジン法)、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。
【0122】
界面重合法の場合、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物、ならびに必要に応じて分子量調節剤(末端停止剤)および芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を得る。分子量調節剤の添加はホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されない。なお、反応温度は例えば、0〜40℃で、反応時間は例えば数分間(例えば10分間)〜数時間(例えば6時間)である。
【0123】
界面重合法に用いられる有機溶媒としては、界面重合反応に不活性であり、水と混ざり合わなければいかなるものでも使用できる。例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。またアルカリ水溶液に用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
【0124】
界面重合法に用いられる分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物やフェニルクロロフォルメートが挙げられる。一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。分子量調節剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは1モル以上である。
【0125】
界面重合法に用いられる重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0126】
溶融エステル交換法による反応は、例えば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。芳香族ジヒドロキシ化合物は前述したと同様のものが例示でき、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ビスフェノールAが好ましい。
【0127】
炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートおよびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が例示される。炭酸ジエステルは、好ましくはジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、より好ましくはジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0128】
一般的に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の分子量および末端ヒドロキシル基量を有する芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)が得られる。より積極的な方法として、反応時に別途、末端停止剤を添加する調整方法も周知である。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。末端ヒドロキシル基量は、製品ポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。用途にもよるが、実用的な物性を持たせるためには、末端ヒドロキシル基量は好ましくは1,000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。
【0129】
また、エステル交換法で芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を製造する場合、末端ヒドロキシル基量が100ppm以上であることが好ましい。このような末端ヒドロキシル基量とすることにより、分子量の低下を抑制でき、色調もより良好なものとすることができる。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、1.01〜1.30モルの量で用いることがより好ましく、1.02〜1.2のモル比で用いられることが特に好ましい。
【0130】
エステル交換法で芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)を製造する場合、通常はエステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に制限はないが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物またはアミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。上記原料を用いたエステル交換反応としては、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には絶対圧2.6×10Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が例示される。
【0131】
溶融重縮合は、バッチ式または連続的に行うことができるが、芳香族カーボネートオリゴマー(K)成分の安定性等を考慮すると、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)中の触媒の失活剤としては、触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが好ましい。このような触媒を中和する化合物は、触媒が含有するアルカリ金属に対して、好ましくは0.5〜10当量、より好ましくは1〜5当量の範囲で添加する。さらに加えて、このような触媒を中和する化合物は、芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)に対して、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
【0132】
第四の発明で用いる芳香族カーボネートオリゴマー(K)の分子量は、極限粘度[η]から換算した粘度平均分子量[Mv]で1,000〜10,000の範囲が好ましい。粘度平均分子量[Mv]を1,000以上とすることにより、成形品からのブリードアウトが抑制され、耐衝撃性をより向上させることができる。粘度平均分子量[Mv]は1,500以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。一方、粘度平均分子量[Mv]を10,000以下とすることにより、得られる成形品の難燃性をより向上させ、安定してUL94 V−2の難燃性を発現させやすくなる。粘度平均分子量[Mv]は9,000以下がより好ましく、8,000以下がさらに好ましい。なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族カーボネートオリゴマー(K)を混合することにより、上記粘度平均分子量[Mv]のものを得てもよい。この場合、粘度平均分子量[Mv]が上記好適な範囲に含まれていない芳香族カーボネートオリゴマー(K)を混合に使用することもできる。
【0133】
第四の発明で用いる芳香族カーボネートオリゴマー(K)は、上述の方法により得られるものであれば特に制限はないが、一般式(2)で表される繰り返し構造単位を有するものが好適に用いられる。
【0134】
【化4】
【0135】
(一般式(2)中、Zは炭素数2〜5の置換もしくは非置換のアルキリデン基、または置換もしくは非置換のシクロヘキシリデン基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基を表す。R13〜R16は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。
【0136】
第四の発明で用いる芳香族カーボネートオリゴマー(K)の含有量は、難燃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。一方、機械的強度および耐熱性をより向上させ、成形時のガス発生を抑制する観点から、芳香族カーボネートオリゴマー(K)の含有量は3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。
【0137】
第四の発明の熱可塑性樹脂組成物においては、溶融時の熱可塑性樹脂の劣化防止の観点から酸化防止剤を配合することが好ましく、難燃性に悪影響を及ぼさないことから、含リン有機化合物系酸化防止剤(M)が好ましい。含リン有機化合物系酸化防止剤(M)としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)-4,4,−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトなどが用いられ、中でもジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトが好適に用いられる。
【0138】
第四の発明における含リン有機化合物系酸化防止剤(M)の配合量は、溶融時の劣化防止の観点から、スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。一方、成形時のガス発生を抑制する観点から、含リン有機化合物系酸化防止剤(M)の配合量は1.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。
【0139】
第四の発明の熱可塑性樹脂組成物においては、難燃性向上の観点からシリコーン化合物(N)を配合することが好ましい。シリコーン化合物(N)としては、シリコーン粉末、シリコーンゴム、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、および相溶性や反応性を改良したこれらの誘導体が挙げられる。また、シリコーン化合物(N)にはシリカ充填剤が含まれていてもよく、その配合方法としては公知の方法を適用することができる。
【0140】
第四の発明におけるシリコーン化合物(N)の配合量は、難燃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性および機械物性を維持する観点から、シリコーン化合物(N)の配合量は、1.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。
【0141】
第五の発明として開示するのは、前記グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0142】
スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性および色調のバランスにより優れ、優れた外観および耐薬品性を併せ持つ。
【0143】
第五の発明のスチレン系樹脂(I)は、前記グラフト共重合体(A)および任意に添加される後述のビニル系共重合体(B−2)から構成される。
【0144】
第五の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)は第一の発明のところで記載したグラフト共重合体(A)と同様である。
【0145】
第五の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−2)は第二の発明のビニル系共重合体(B−1)のうち後述するエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含まない共重合体をいう。「エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含まない」と定義したのは、「ビニル系共重合体(B−1)」および「エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)」のいずれの範疇にもあるポリマーがあり、本願発明の定義を明確化させるためである。ビニル系共重合体(B−2)が、ビニル系共重合体(B−1)から後述するエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含まない共重合体であること以外は第二の発明のビニル系共重合体(B−1)に対する説明と同様である。
【0146】
第五の発明でも、ビニル系共重合体(B−2)の混合は任意であるが、第二の発明と同様の理由により、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−2)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−2)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−2)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−2)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−2)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−1)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0147】
また、第五の発明では、第二の発明と同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。
【0148】
第五の発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂(D)とは、テレフタル酸を酸成分に、エチレングリコールをグリコール成分に用いた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステル樹脂である。テレフタル酸以外の酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸などを全酸成分中20モル%以下用いることもできる。また、エチレングリコール以外のグリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、または分子量400〜6,000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを全グリコール成分中20モル%以下用いることもできる。
【0149】
また、本発明でポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含有する場合、成形加工等の熱履歴を受けていないポリエステル、すなわちバージン材であってもよく、また、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)成形品のリサイクル材(以下、リサイクル材、と略す。)であってもよい。資源保護の観点から、リサイクル材を全部または一部として含むことが好ましい。リサイクル材の具体例としては、少なくとも1度ペットボトルなどに成形された成形品を回収して得られる廃材や、シート形状物の成形の際のトリミング工程で発生する端材が挙げられる。リサイクル材の形状の具体例としては、フレーク状や粉末状、または異物除去のためにリペレット化したものが具体例として挙げられる。また、リサイクル材はガラス繊維などの強化材が混入していないものが好ましい。
【0150】
第五の発明の熱可塑性樹脂組成物がポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含有する場合、その含有量に特に制限はない。ただし、得られる熱可塑性樹脂の耐衝撃性をより向上させるために、グラフト共重合体(A)を含むスチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の和100質量部において、スチレン系樹脂(I)を50質量部以上、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を50質量部以下含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を55質量部以上、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を45質量部以下含有することがより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)を99質量部以下、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を1質量部以上含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を90質量部以下、ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を10質量部以上含有することがより好ましい。
【0151】
第五の発明の熱可塑性樹脂組成物が前記スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を含有する場合、さらに前記、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含有することが好ましい。エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含有することにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させることができる。ここでいうエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)とは、エポキシ基を含み、ビニル系共重合体(B−2)以外の共重合体である。
【0152】
第五の発明におけるエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の製造方法には特に制限はなく、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリルエステル単量体、(メタ)アクリル酸等のエポキシ基を有さない(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステル単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる方法や、(メタ)アクリル酸等のエポキシ基を有さない(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル系単量体とを共重合させた後に、該共重合体中の(メタ)アクリル酸単位のカルボキシル基にエポキシ基を有するアルコール類を縮合反応により付加させる方法などが挙げられる。
【0153】
エポキシ基を有する(メタ)アクリルエステル単量体としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられ、グリシジルメタクリレートが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0154】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく用いられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0155】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、スチレンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0156】
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の重量平均分子量[Mw]は、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。一方、ブリードアウトの抑制の点から、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の重量平均分子量[Mw]は、20,000以下が好ましく、15,000以下がより好ましい。なお、重量平均分子量[Mw]とは、テトラヒドロフラン溶媒を用いて、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いて算出された値を言う。
【0157】
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)のエポキシ価は、耐衝撃性をより向上させる観点から、0.5(meq/g)以上が好ましく、1.5(meq/g)以上がより好ましい。一方、外観表面光沢性をより向上させる観点から、4.0(meq/g)以下が好ましく、3.5(meq/g)がより好ましい。なお、ここでいうエポキシ価は、塩酸−ジオキサン法で測定した値である。
【0158】
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)の重合方法は特に限定されるものではなく、塊状重合法、溶液重合法、縣濁重合法、乳化重合法など任意の重合方法を用いることができる。150℃以上の高温で、かつ加圧条件(好ましくは1MPa以上)で、短時間(好ましくは5分間〜30分間)で連続塊状重合する方法が、重合率が高い点、不純物や硫黄含有の原因となる重合開始剤や連鎖移動剤および溶媒を使用しない点からより好ましい。
【0159】
第五の発明の熱可塑性樹脂組成物がエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(D)の和100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の外観表面光沢性を向上させる観点から、1質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
【0160】
次に第六の発明として開示するのは、スチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0161】
スチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)を含む熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性、流動性および色調のバランスに優れ、さらに表面固有抵抗値および静電気拡散性能に優れる。
【0162】
第六の発明のスチレン系樹脂(I)は、前記グラフト共重合体(A)および任意に添加されるビニル系共重合体(B−3)から構成される。
【0163】
第六の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)は第一の発明で記載されたグラフト共重合体(A)と同様である。
【0164】
第六の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−3)は第二の発明のビニル系共重合体(B−1)のうち後述する変性ビニル系共重合体(T)を含まない共重合体をいう。「変性ビニル系共重合体(T)を含まない」と定義したのは、ビニル系共重合体および変性ビニル系共重合体(T)のいずれの範疇にもあるポリマーがあり、本発明の定義を明確化させるためである。ビニル系共重合体(B−3)が、ビニル系共重合体(B−1)から後述する変性ビニル系共重合体(T)を含まない共重合体であること以外は第二の発明のビニル系共重合体(B−1)と同様である。
【0165】
第六の発明でも、ビニル系共重合体(B−3)の混合量は任意である。第二の発明と同様の理由により、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−3)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−3)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−3)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−3)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−3)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−3)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0166】
また、第六の発明では、第二の発明で説明したことと同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。
【0167】
第六の発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリアミドエラストマー(E)としては、任意のものを挙げることができる。ポリアミドエラストマー(E)としては、ポリアミドとポリアルキレンオキシドとのブロック共重合体、グラフト共重合体が例示される。ポリアミドを構成する成分としては、アミノカルボン酸およびラクタムが例示される。アミノカルボン酸およびラクタムはそれぞれ炭素原子数が6以上のものが好ましい。他に、ポリアミドを構成する成分としては、ジアミンとジカルボン酸との組み合わせが例示される。ジアミンおよびジカルボン酸はそれぞれ炭素原子数6以上であることが好ましい。ジアミンおよびジカルボン酸は前もって混合して塩を形成させておくことができる。ポリアルキレンオキシドを構成する成分としてはポリ(アルキレンオキシド)グリコールが例示され、好ましくはポリエチレンオキシドグリコールである。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量[Mn]は200〜6,000が好ましい。ポリアミドとポリアルキレンオキシドとのブロック共重合体の場合、ポリアミドとポリアルキレンオキシドとはアミド結合またはエステル結合で連結されることが通常である。
【0168】
ここで、炭素数が6以上のアミノカルボン酸およびラクタム、ならびに炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩としては、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、およびカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタムなどのラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのナイロン塩等が挙げられる。
【0169】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの例としては、例えば、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体などが用いられる。また、ビスフェノールAや脂肪酸のアルキレンオキシド付加物などが共重合されていてもよい。そのポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量[Mn]は好ましくは200〜6,000の範囲であり、特に好ましくは300〜4,000の範囲である。また、必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端がアミノ化またはカルボキシル化されていてもよい。
【0170】
また、上述したもの以外のジカルボン酸やジアミンなどの成分を用いることも可能である。この場合のジカルボン酸成分としては、重合性、色調および物性から、炭素数4〜20のジカルボン酸が好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、および1,10−デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0171】
一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族および脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
【0172】
第六の発明で使用されるポリアミドエラストマー(E)の製造方法については、特に限定されず、任意の製造方法を利用することができる。例えば、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミンおよびジカルボン酸の塩(O)とジカルボン酸(P)とを反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、これにポリ(アルキレンオキシド)グリコール(Q)を真空下で反応させる方法が挙げられる。他の方法としては、上記の(O)、(P)および(Q)の化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または不存在下に、高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマー(E)を生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進めて得る方法も挙げられる。また、上記の(O)、(P)および(Q)の化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、さらに高真空下で重合度をあげていく方法も用いられる。
【0173】
第六の発明の熱可塑性樹脂組成物が、ポリアミドエラストマー(E)を含有する場合、その含有量に特に制限はない。熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)の和100質量部において、スチレン系樹脂(I)を50質量部以上、ポリアミドエラストマー(E)を50質量部以下含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を70質量部以上、ポリアミドエラストマー(E)を30質量部以下含有することがより好ましい。一方、表面固有抵抗値、静電気拡散性能の観点から、スチレン系樹脂(I)を97質量部以下、ポリアミドエラストマー(E)を3質量部以上含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を95質量部以下、ポリアミドエラストマー(E)を5質量部以上含有することがより好ましい。
【0174】
第六の発明の熱可塑性樹脂組成物がスチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)を含有する場合、さらに変性ビニル系共重合体(T)を含有することが好ましい。変性ビニル系共重合体(T)を含有することにより、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、成形加工性および耐衝撃性をより向上させることができる。ここでいう変性ビニル系共重合体(T)とは、ビニル系共重合体(B−3)で定義されるもの以外の重合体である。
【0175】
第六の発明における変性ビニル系共重合体(T)は、第二の発明におけるビニル系共重合体(B−1)で単量体として用いられる芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な単量体を、重合または共重合して得られる構造を有する。さらにその共重合体の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する重合体が例示される。これらの官能基を含有する単量体の含有量に関しては制限されないが、特に変性ビニル系重合体(T)を構成する単量体当たり0.01〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0176】
カルボキシル基を有する変性ビニル系重合体(T)を製造する方法としては、以下の方法が例示される。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合開始剤を使用し、この重合開始剤の残余物をポリマーの末端または側鎖に結合させる方法、チオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する連鎖移動剤を用いて、連鎖移動剤の残余物をポリマーの末端または側鎖に結合させる方法、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化し、カルボキシル基を生じさせる方法などが挙げられる。
【0177】
ヒドロキシル基を有する変性ビニル系重合体(T)を製造する方法としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテンおよび4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を他のビニル系単量体と共重合する方法が挙げられる。
【0178】
エポキシ基を有する変性ビニル系重合体(T)を製造する方法としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を他のビニル系単量体と共重合する方法が挙げられる。
【0179】
アミノ基を有する変性ビニル系重合体(T)を製造する方法としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基またはその誘導体を有するビニル系単量体を、他のビニル系単量体と共重合する方法が挙げられる。
【0180】
オキサゾリン基を有する変性ビニル系重合体(T)を製造する方法としては、例えば、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を他のビニル系単量体と共重合する方法が挙げられる。
【0181】
第六の発明における変性ビニル系重合体(T)は、メチルエチルケトンを溶媒として30℃で測定した極限粘度[η]が、0.20〜0.65dl/gの範囲のものが好ましく、0.35〜0.60dl/gの範囲のものがより好ましい。また、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として30℃で測定した極限粘度[η]が、0.30〜0.90dl/gの範囲のものが好ましく、0.40〜0.75dl/gの範囲のものがより好ましい。変性ビニル系重合体(T)の極限粘度[η]を上記範囲にすることにより、優れた難燃性、耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られる。
【0182】
本発明における変性ビニル系共重合体(T)の配合量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)およびポリアミドエラストマー(E)の和100質量部に対して0.01質量部以上が好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の外観表面光沢性を向上させる観点から20質量部以下が好ましい。
【0183】
第七の発明として開示するのは、スチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸樹脂(F)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0184】
第七の発明のスチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調および外観表面光沢性のバランスがより向上し、環境配慮型の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0185】
第七の発明のスチレン系樹脂(I)はグラフト共重合体(A)および任意に添加される後述のビニル系共重合体(B−4)から構成される。
【0186】
第七の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)は、下記に記述する特徴を有する。
【0187】
第七の発明のグラフト共重合体(A)に使用されるゴム状重合体(R)は、第一の発明に記載の天然ゴムおよび合成ゴムを組み合わせて用いる。
【0188】
第七の発明のグラフト共重合体(A)は、第一の発明に記載の重量平均粒子径を有するゴム状重合体(R)に少なくとも芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(a)をグラフト重合することにより得られるものであり、ゴム状重合体(R)にビニル系共重合体がグラフトしたものと、グラフトしていないビニル系共重合体が含まれる。グラフト重合の際のゴム状重合体(R)とビニル系共重合体混合物(a)の質量比率は、好ましくは、ゴム状重合体(R)が40〜60質量部、ビニル系単量体混合物(a)が40〜60質量部である。ゴム状重合体(R)が40質量部未満の場合には生産性が低下し、60質量部を越える場合には、グラフト共重合体(A)中のゴム状重合体(R)の分散性が低下し、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがある。
【0189】
ビニル系単量体混合物(a)は、好ましくは、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、及びこれらと共重合可能なビニル系単量体からなる。
【0190】
ビニル系単量体混合物(a)に含まれる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、スチレンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0191】
ビニル系単量体混合物(a)に含まれうるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、アクリロニトリルが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0192】
ビニル系単量体混合物(a)に含まれうる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体については特に制限はないが、炭素数1〜6のアルコールと(メタ)アクリル産とのエステルが好ましい。炭素数1〜6のアルコールは、さらに水酸基やハロンゲン基などの置換基そ有してもよい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種又は2種以上を用いることができる。
【0193】
ビニル系単量体混合物(a)中に含まれうる他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体と共重合可能であれば特に制限はなく、具体例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸及びイタコン酸などのカルボキシル基又は無水カルボキシル基を有するビニル系単量体、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル及びp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基またはその誘導体を有するビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン及び2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0194】
前記ビニル系単量体混合物(a)の配合比は、好ましくは、芳香族ビニル系単量体1〜100質量%、シアン化ビニル系単量体0〜50質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜99質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜99質量%である。より好ましくは芳香族ビニル系単量体10〜90質量%、シアン化ビニル系単量体3〜40質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜90質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50質量%である。さらに好ましくは芳香族ビニル系単量体15〜80質量%、シアン化ビニル系単量体4〜30質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜80質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜30質量%である。シアン化ビニル系単量体は、ビニル系単量体混合物(a)に配合することで、該熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、その量が50質量%以下であれば、樹脂の黄色みを抑制し、流動性を維持することができる。また、不飽和カルボン酸アルキルエステルの配合により、該熱可塑性樹脂組成物を調色した際に、良好な発色を示す。
【0195】
その他、第七の発明のグラフト共重合体(A)は、それを構成するビニル系単量体混合物(a)における単量体の好ましい混合比以外は、第一の発明で記載のグラフト共重合体(A)と同様であり、同様の方法で製造することができる。
【0196】
第七の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−4)は以下に記述する特徴を有する。
【0197】
第七の発明のビニル系共重合体(B−4)は、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体を塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合および乳化重合などの重合により得られるものである。好ましくは、少なくとも芳香族ビニル系単量体を含み、その他必要に応じてシアン化ビニル系単量体、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体が含まれたビニル系単量体混合物(b−4)を共重合して得られる共重合体である。なお、ビニル系共重合体(B−4)の定義には、ゴム状重合体(R)に単量体成分をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)は含まれない。
【0198】
ビニル系共重合体(B−4)を構成する芳香族ビニル系単量体は、第一の発明のビニル系単量体混合物(a)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0199】
ビニル系共重合体(B−4)を構成するシアン化ビニル系単量体は、第一の発明のビニル系単量体混合物(a)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0200】
ビニル系共重合体(B−4)を構成するこれらと共重合可能な他のビニル系単量体は、第一の発明の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体であって、ビニル系単量体混合物(a)中に含まれうるこれらと共重合可能な他の単量体の例示として例示したものが挙げられる。
【0201】
ビニル系共重合体(B−4)を構成する単量体混合物(b−4)の混合比は、好ましくは、芳香族ビニル系単量体1〜100質量%、シアン化ビニル系単量体0〜50質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜99質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜99質量%であり、より好ましくは芳香族ビニル系単量体10〜90質量%、シアン化ビニル系単量体3〜40質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜90質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50質量%であり、さらに好ましくは芳香族ビニル系単量体15〜80質量%、シアン化ビニル系単量体4〜30質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体0〜80質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜30質量%である。これらの配合比にすることで、前記グラフト共重合体(A)を良好に分散させることができ、十分な機械的強度を発現させることができるほか、耐薬品性、表面光沢性、成形性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0202】
その他、第七の発明のビニル系共重合体(B−4)は、それを構成する単量体混合物における単量体の混合比以外は、第二の発明で記載のビニル系共重合体(B−1)と同様である。またこれは第二の発明で説明したことと同様の方法で製造することができる。
【0203】
第七の発明では、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−4)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B−4)の含有量に特に制限はない。しかし熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−4)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−4)を80質量%以下含有することがより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−4)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−4)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−4)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0204】
また、第七の発明では、第二の発明と同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。
【0205】
第七の発明におけるポリ乳酸系樹脂(F)とは、乳酸を主たる構成成分とする重合体、すなわちポリ乳酸であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられる。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0206】
ポリ乳酸(F)は、得られる樹脂組成物の耐熱性の観点から乳酸成分の光学純度が高い方が好ましく、総乳酸成分の内、L体またはD体が80モル%以上含まれることが好ましく、さらには90モル%以上含まれることが好ましく、95モル%以上含まれることが特に好ましい。
【0207】
また、耐熱性、成形加工性の点で、ポリ乳酸系樹脂(F)として、ポリ乳酸のステレオコンプレックスを用いることも好ましい態様の一つである。ポリ乳酸のステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−L−乳酸と、D体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−D−乳酸とを、溶融混練や溶液混練などにより混合する方法が挙げられる。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法も挙げることができる。ポリ乳酸のステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とをブロック共重合体とする方法が好ましい。
【0208】
ポリ乳酸系樹脂(F)の製造方法としては、任意の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
【0209】
ポリ乳酸系樹脂(F)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量[Mw]1万以上であることが好ましく、4万以上であることがより好ましく、8万以上であることがさらに好ましい。ここでいう重量平均分子量[Mw]とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量[Mw]である。
【0210】
ポリ乳酸系樹脂(F)の融点は、特に限定されるものではないが、90℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
【0211】
なお、本発明においては、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られるという点で、ビニル系共重合体(B−4)とポリ乳酸系樹脂(F)との溶融粘度の比(ビニル系共重合体(B−4)の溶融粘度/ポリ乳酸系(F)の溶融粘度)が、0.1〜10の範囲にあることが好ましい。溶融粘度は、キャピラリーグラフ測定装置(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1C型、オリフィス長さ20mm、オリフィス径1mm)を用いて、220℃、剪断速度1000s−1における測定値を用いる。
【0212】
第七の発明の熱可塑性樹脂組成物がポリ乳酸系樹脂(F)を含有する場合、その含有量は特に制限はないが、スチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)の和100質量部において、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)を15質量部以上、ポリ乳酸系樹脂(F)を85質量部以下含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を30質量部以上、ポリ乳酸系樹脂(F)を70質量部以下含有することがより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性を向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)を99質量部以下、ポリ乳酸系樹脂(F)を1質量部以上含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を95質量部以下、ポリ乳酸系樹脂(F)を5質量部以上含有することがより好ましい。
【0213】
第七の発明の熱可塑性樹脂組成物がスチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)を含有する場合、さらにアクリル系樹脂(V)を配合することが好ましい。アクリル系樹脂(V)を含有することにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させることができる。
【0214】
第七の発明で使用するアクリル系樹脂(V)とは、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体の重合体又は共重合体であり、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B−4)の範疇に含まれない重合体である。
【0215】
(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0216】
また、ラクトン環、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体を用いることもできる。
【0217】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(V)としては、メタクリル酸メチル成分単位を主成分とするポリメタクリル酸メチル系樹脂が好ましく、メタクリル酸メチル成分単位を70質量%以上含むポリメタクリル酸メチル系樹脂がより好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂がさらに好ましい。
【0218】
また、アクリル系樹脂(V)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、成形加工性の観点から、重量平均分子量[Mw]は1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、30,000以上がさらに好ましい。一方、重量平均分子量[Mw]は450,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、150,000以下がさらに好ましい。ここでいう重量平均分子量[Mw]とは、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量[Mw]である。
【0219】
また、耐熱性の点で、アクリル系樹脂(V)のガラス転移温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が特に好ましく、100℃以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で、150℃以下が好ましい。ここでいうガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)測定により求めたガラス転移温度の値であり、ガラス転移温度領域における比熱容量変化が半分の値となる温度である。
【0220】
アクリル系樹脂(V)としてポリメタクリル酸メチル系樹脂を用いる場合には、メタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーは、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で、90%以下が好ましい。また、耐熱性の点で、ヘテロタクチシチーが50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。また、耐熱性の点で、アイソタクチシチーが20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを溶媒として用いたH−NMR測定による直鎖分岐のメチル基の積分強度比から算出した値である。
【0221】
アクリル系樹脂(V)の製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の任意の重合方法を用いることができる。
【0222】
第七の発明でアクリル系樹脂(V)を併用して用いる場合、アクリル系樹脂(V)の配合量は、スチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して、耐衝撃性の観点から1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。一方、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。アクリル系樹脂(V)の配合は30質量部で十分であり、大量に配合しても耐衝撃性改善に大きな効果がない。
【0223】
また、第七の発明の熱可塑性樹脂組成物がスチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)を含有する場合、さらにリン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)を含有することが好ましい。
【0224】
グラフト共重合体(A)がその製造過程によってアルカリ性を示す。その結果ポリ乳酸(F)の分解を生じる。上述のリン化合物を含有することにより、ポリ乳酸系樹脂(F)の分解を抑制し、熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を向上させることができる。そして、このリン化合物は、樹脂組成物の原料配合や溶融コンパウンド、ならびに得られた樹脂組成物の成形時に発生する刺激臭による人体への安全・衛生面、樹脂組成物の熱安定性などの観点において、既に公知となっている有機酸など含めた他の中和剤よりも優れる。
【0225】
特に、食品用器具や玩具など人体への安全・衛生がより厳しく求められる用途へ展開させる場合には、リン酸1ナトリウム(U)の使用が好ましい。リン酸1ナトリウム(U)自体は、医療分野や食品添加物に広く使用されており、摂取した場合の安全性が既に確認されているほか、食品用器具などに起因する衛生上の危害を未然に防止するための業界自主規制団体であるポリオレフィン等衛生協議会でも樹脂添加剤として適切であることが認められている。
【0226】
第七の発明の熱可塑性樹脂組成物がリン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)を含有する場合、その含有量は、ポリ乳酸系樹脂(F)のアルカリ分解を抑制し、熱可塑性樹脂組成物の初期耐衝撃性および熱滞留後の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)の和100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。一方、リン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)の含有量は、成形品の熱滞留時の発泡を抑制し、成形品の表面外観を向上させる観点から、5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
【0227】
その他、グラフト共重合体(A)のアルカリ性の中和ができる酸性の物質を、本発明におけるリン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)の特性を損なわない範囲で、また製造面での安全・衛生の観点で影響が発生しない範囲で使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フェノール、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸などの有機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、クエン酸、オルトフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の酸無水物が挙げられる。これらの酸性の物質を2種以上併用することもできる。
【0228】
第七の発明の熱可塑性樹脂組成物においては、耐熱性が向上する観点から、さらに結晶核剤を含有することが好ましい。結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤及び有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。結晶核剤は、単独ないし2種以上用いることができる。
【0229】
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム及びフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きい観点から、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト及び合成マイカが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0230】
無機系結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(F)100質量部に対して、0.01〜100質量部が好ましく、0.05〜50質量部がより好ましく、0.1〜30質量部がさらに好ましい。
【0231】
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸1ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸1ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩又はカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩及び2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられる。耐熱性を向上させる観点から、有機カルボン酸金属塩及びカルボン酸アミドが好ましい。これらは単独ないし2種以上用いることができる。
【0232】
有機系結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(F)100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部がさらに好ましい。
【0233】
本発明においては、耐熱性を向上させる観点から、さらに可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができ、単独ないし2種以上用いることができる。
【0234】
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0235】
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
【0236】
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
【0237】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコール、ならびにその末端がエポキシ変性された化合物、その末端がエステルで変性された化合物、及びその末端がエーテルで変性化合物など、末端が封鎖された化合物などを挙げることができる。
【0238】
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどが例示されるが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も可塑剤として使用することができる。
【0239】
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル及びパラフィン類などを挙げることができる。
【0240】
なお、本発明で好ましく使用される可塑剤としては、前記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤及びポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。
【0241】
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(F)100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲が好ましく、0.1〜20質量部の範囲がより好ましく、0.5〜10質量部の範囲がさらに好ましい。
【0242】
第七の発明においては、結晶核剤と可塑剤を各々単独で用いてもよいが、これらを併用して用いることが好ましい。
【0243】
第七の発明においては、ポリ乳酸系樹脂(F)の加水分解を抑制して耐熱性、耐久性をより向上させる観点から、さらにカルボキシル基反応性末端封鎖剤を含有することが好ましい。カルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端基の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。本発明においてかかるカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、ポリ乳酸系樹脂(F)の末端を封鎖するのみではなく、天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、前記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。
【0244】
このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物及び/又はカルボジイミド化合物が好ましい。
【0245】
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(F)100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.05〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0246】
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の添加時期は、特に限定されないが、耐熱性を向上するだけでなく、機械特性や熱安定性を向上できるという点で、ポリ乳酸系樹脂(F)と予め溶融混練した後、その他のものと混練することが好ましい。
【0247】
第八の発明として開示するのは、スチレン系樹脂(I)およびポリカーボネート樹脂(G)を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0248】
第八の発明のスチレン系樹脂(I)およびポリカーボネート樹脂(G)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調および外観表面光沢性に加え、耐熱性、機械強度のバランスに優れる。
【0249】
第八の発明のスチレン系樹脂(I)は、前記グラフト共重合体(A)および任意に添加される後述のビニル系共重合体(B−5)から構成される。
【0250】
第八の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)は第一の発明で記載したグラフト共重合体(A)と同様である。
【0251】
第八の発明のスチレン系樹脂(I)を構成するビニル系共重合体(B−5)は、第二の発明のビニル系共重合体(B−1)の範疇に含まれるが、芳香族ビニル系単量体60〜85質量%、シアン化ビニル系単量体15〜40質量%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%を共重合して得られたものが好ましい。芳香族ビニル系単量体を60質量%以上共重合することにより、耐衝撃性をより向上させることができる。一方、芳香族ビニル系単量体を85質量%以下共重合することにより、グラフト共重合体(A)との相溶性を向上させ、耐衝撃性や耐薬品性をより向上させることができる。好ましくは、芳香族ビニル系単量体65〜83質量%、シアン化ビニル系単量体17〜35質量%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは、芳香族ビニル系単量体65〜77質量%、シアン化ビニル系単量体23〜35質量%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%である。
【0252】
ビニル系共重合体(B−5)において、その他は、第二の発明のビニル系共重合体(B−1)と同様であり、同様な方法で製造することが可能である。
【0253】
第八の発明でも、ビニル系共重合体(B−5)の混合は任意であり、混合しなくてもいい。しかしながら、第二の発明と同様の理由により、スチレン系樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B−5)の合計100質量%中、グラフト共重合体(A)を10質量%以上、ビニル系共重合体(B−5)を90質量%以下含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を20質量%以上、ビニル系共重合体(B−5)を80質量%以下含有することがより好ましい。
【0254】
一方、グラフト共重合体(A)を80質量%以下、ビニル系共重合体(B−5)を20質量%以上含有することが好ましく、グラフト共重合体(A)を50質量%以下、ビニル系共重合体(B−5)を50質量%以上含有することがより好ましく、グラフト共重合体(A)を40質量%以下、ビニル系共重合体(B−5)を60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0255】
また、第八の発明では、第二の発明と同様に、スチレン系樹脂(I)100質量部においてゴム状重合体(R)が5〜50質量部であることが好ましい。
【0256】
第八の発明のポリカーボネート樹脂(G)とは、一般式(3)で表される繰り返し構造単位を有する樹脂である。
【0257】
【化5】
【0258】
(一般式(3)中、Zは炭素数2〜5の置換または非置換のアルキリデン基、シクロヘキシリデン基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基を表す。R17、R18、R19、R20は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。
【0259】
ポリカーボネート樹脂(G)は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表的に例示される芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンに代表的に例示されるカーボネート前駆体との反応によって得られる。
【0260】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、第四の発明において芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)の原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として例示したものが挙げられる。これらの中で好ましいのは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましいのは、ビスフェノールAである。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類でも2種類以上を組み合わせ、共重合されたものを用いてもよい。
【0261】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、第四の発明において芳香族ポリカーボネートオリゴマー(K)の原料のカーボネート前駆体として例示したものが挙げられる。中でもホスゲンが好ましく用いられることが多い。これらカーボネート前駆体もまた1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0262】
第八の発明で用いられるポリカーボネート樹脂(G)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によって製造することができる。製造方法としては、界面重合法(ホスゲン法)、溶融エステル交換法、溶液重合法(ピリジン法)、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。
【0263】
代表的な製造方法として界面重合法による製造方法を例示する。反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物、ならびに必要に応じて分子量調節剤(末端停止剤)及び芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂(G)を得る。分子量調節剤の添加はホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されない。なお反応温度は例えば、0〜40℃で、反応時間は例えば2〜5時間である。
【0264】
ここで、界面重合に適用できる有機溶媒としては、界面重合反応に不活性であり、水と混ざり合わず、ポリカーボネート樹脂(G)を溶解することができればいかなるものも使用できる。例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。またアルカリ水溶液に用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
【0265】
分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物やフェニルクロロフォルメートが挙げられる。一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。分子量調節剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、好ましくは0.1〜1モルである。
【0266】
重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0267】
第八の発明の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂(G)を含有する場合は、その含有量は特に制限はない。ただし流動性の観点から、スチレン系樹脂(I)およびポリカーボネート樹脂(G)の和100質量部において、スチレン系樹脂(I)を15質量部以上、ポリカーボネート樹脂(G)を85質量部以下含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を20質量部以上、ポリカーボネート樹脂(G)を80質量部以下含有することがより好ましく、スチレン系樹脂(I)を30質量部以上、ポリカーボネート樹脂(G)を70質量部以下含有することがさらに好ましい。一方、耐衝撃性、耐熱性の観点から、スチレン系樹脂(I)を60質量部以下、ポリカーボネート樹脂(G)を40質量部以上含有することが好ましく、スチレン系樹脂(I)を50質量部以下、ポリカーボネート樹脂(G)を50質量部以上含有することがより好ましく、スチレン系樹脂(I)を45量部以下、ポリカーボネート樹脂(G)を55質量部以上含有することがさらに好ましい。
【0268】
第八の発明で用いられるポリカーボネート樹脂(G)のメルトボリュームレートは、特に限定されることなく、いかなるものでも使用することができる。ただし、ISO 1133に準拠した300℃×荷重1.2kgfのメルトボリュームレートが8〜13cm/10分の範囲にあることが好ましい。前記メルトボリュームレートが8cm/10分以上のものを使用することにより、射出成形時の流動性をより向上させることができる。一方、前記メルトボリュームレートが13cm/10分以下のものを使用することにより、耐衝撃性と耐熱性をより向上させることができる。メルトボリュームレートは12cm/10分以下がより好ましく、11cm/10分以下がさらに好ましい。
以下、第一の発明から第八の発明に共通して、好ましい態様を説明する。
【0269】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、アルミナ、アルミナ繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ステンレス繊維、ウィスカ、チタン酸カリ繊維、ワラステナイト、アスベスト、ハードクレー、焼成クレー、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウムおよび鉱物などの無機充填材;ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系又は含リン有機化合物系などの酸化防止剤;フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリシレート系などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤;高級脂肪酸、酸エステル、酸アミド系、および高級アルコールなどの滑剤および可塑剤;モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤;各種難燃剤;難燃助剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤;リン酸、リン酸1ナトリウム、無水マレイン酸、無水コハク酸などの中和剤;核剤;アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤;カーボンブラック、顔料、染料などの着色剤などを配合することができる。
【0270】
これらの配合方法については特に制限はなく、種々の方法を用いることができる。
【0271】
さらに本発明に共通して、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族及び脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)又は熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などの少なくとも1種をさらに含有することができる。
【0272】
第三〜八の発明の熱可塑性樹脂組成物は、別の発明の記載に特徴づけられる他の熱可塑性樹脂(II)を組み合わせて用いることができる。
【0273】
これらの樹脂を配合することで、優れた特性を有する成形品を得ることができる。
【0274】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されうる前記の種々の添加剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、樹脂成分を配合する際に同時に配合する方法や、予め少なくとも2成分の樹脂を溶融混練した後に配合する方法が挙げられる。
【0275】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を、例えばV型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローターおよびヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて混合した組成物であってもよいが、通常、前記混合物を均一に溶融混合した混合物である場合が多い。このような混合物は、前記混合物に混練手段を用い、例えば、好ましくは210〜320℃、より好ましくは230〜300℃程度の温度で溶融混練し、ペレット化することにより得ることができる。特に、第二、第三、第四、第七の発明の熱可塑性樹脂組成物は210〜260℃で、第五の発明の熱可塑性樹脂組成物は250〜285℃で、第六の発明の熱可塑性樹脂組成物は220〜240℃で、第八の発明の熱可塑性樹脂組成物は280〜300℃程度で、それぞれ溶融混練することがさらに好ましい。
【0276】
具体的な溶融混練、ペレット化の手段としては、種々の溶融混合機、例えば、ニーダー、一軸および二軸押出機などを用いて樹脂組成物を溶融して押出し、ペレタイザによりペレット化する方法が挙げられる。
【0277】
また、第七の発明のスチレン系樹脂(I)およびポリ乳酸系樹脂(F)を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、樹脂成分及びリン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)、ならびに必要に応じて結晶核剤、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を予め混合した後、樹脂成分の融点以上において一軸又は二軸押出機で均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが挙げられる。なお、前記成分を混合して熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、混合する成分によってはポリ乳酸系樹脂(F)がアルカリ分解することがあるため、ポリ乳酸系樹脂(F)のアルカリ分解を抑制するためには、あらかじめ、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B−4)、リン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)を混練したペレットを作製しておくことが好ましい。
【0278】
また、熱可塑性樹脂組成物をシートなどの押出成形品として成形する目的で製造する場合、ポリ乳酸系樹脂(F)以外の成分を溶融混練後にポリ乳酸系樹脂(F)を添加してさらに溶融混練することによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することが好ましい。
【0279】
この製造方法について具体的な態様を挙げて説明すると、二軸押出機のトップ供給口(主原料供給側)よりポリ乳酸系樹脂(F)以外の樹脂成分とリン酸(又はリン酸1ナトリウム)(U)、ならびに前記結晶核剤、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を供給する。二軸押出機のバレル全長の中央付近に存在するサイド供給口(副原料供給側)よりポリ乳酸系樹脂(F)を供給してさらに溶融混練させて熱可塑性樹脂組成物を得る方法である。シートなどの成形品では表面外観が重要となる場合があるが、本方法によって、表面外観を損なう原因となるブツの発生を低減することができる。
【0280】
上記によって得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、ガスアシスト成形などの任意の方法によって成形することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは、射出成形により成形される。
【0281】
また、射出成形は好ましくは210〜320℃の通常成形する温度範囲で実施することができる。特に、第二、第三、第四、第六、第七の発明の熱可塑性樹脂組成物は210〜260℃で、第五の発明の熱可塑性樹脂組成物は240〜270℃で、第八の発明の熱可塑性樹脂組成物は240〜300℃で射出成形することがより好ましい。
【0282】
また、射出成形時の金型温度は、好ましくは30〜80℃の通常成形に使用される温度範囲である。
【0283】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの任意の方法で成形することができ、あらゆる形状の成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、又は他の材料との複合体などであり、自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨の用途として有用である。
【実施例】
【0284】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0285】
(1)天然ゴム及び合成ゴムの重量平均粒子径測定
天然ゴムラテックス及び合成ゴムラテックスを水媒体で希釈、分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置“LS 13 320”(ベックマン・コールター株式会社)により粒子径分布を測定した。その粒子径分布より、天然ゴム及び合成ゴムの重量平均粒子径を算出した。また、天然ゴムについては、粒子径分布より、天然ゴム粒子全体に対する1.0μm以上の粒子径を有するものの割合について算出した。
【0286】
(2)グラフト率測定
グラフト共重合体(A)サンプル約1g(m:サンプル質量)にアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8000r.p.m(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。得られたアセトン不溶分を80℃で5時間減圧乾燥させ、その質量(n)を測定し、下記数式2よりグラフト率を算出した。ここで、Xはグラフト共重合体(A)のゴム状重合体含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×X]/[(m)×X]}×100 (数式2)。
【0287】
なお、アセトン可溶分についてはアセトンを除去し、(5)に記載の重量平均分子量測定に用いた。
【0288】
(3)内部グラフト率算出
ゴム状重合体(R)内部に存在するビニル系共重合体の含量(内部グラフト量)(Y)の、ゴム状重合体(R)及び内部に存在するビニル系共重合体(Y)の総量[(Y)+(R)]に対する割合を内部グラフト率として算出した。具体的には、オスミック酸染色法により調整した試料を電子顕微鏡(TEM)観察で2万倍に拡大して撮影した写真より、粒子径1.0μm以上のゴム状重合体(R)を無作為に5つ選択し、ゴム状重合体(R)の断面積と該断面積の内部に存在するビニル系共重合体(Y)の面積の比率として換算し、平均値として算出した。面積比の算出には、TEM画像を三谷商事株式会社製画像解析ソフト“WinROOF”の自動2色化により白黒判別し、粒子の断面の8割の面積が白と判別される「しきい値」の1.4倍を境界値とし、白側の割合を内部グラフト量(Y)、黒側をゴム状重合体量(R)として下記数式3により算出した。
内部グラフト率(%)=(Y)/[(Y)+(R)]×100 (数式3)。
【0289】
(4)グラフト重合様態
グラフト共重合体(A)のグラフト重合時のラテックスの様態については、目視で観察し、以下の規準にて評価した。
良好:ラテックス中に凝集物が見られない。
不良:ラテックス中に凝集物の発生が多量に見られる。
【0290】
(5)重量平均分子量[Mw]
グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分、ビニル系共重合体(B)及び第五の発明のエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)それぞれの重量平均分子量[Mw]は、Water社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いた。検出器は示差屈折計Water2414を使用した。カラムは、ポリマーラボラトリーズ社製MIXED−B(2本)を使用し、流出液としては、テトラヒドロフランを使用した。流速1ml/min、カラム温度40℃の条件とした。測定された結果から、ポリスチレン換算の重量平均分子量[Mw]を算出した。第七の発明のアクリル系樹脂(V)の重量平均分子量[Mw]は、ポリメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量[Mw]とした。それ以外は、上述のビニル系共重合体(B)と同じ装置・条件で測定した。また、第七の発明のポリ乳酸系樹脂(F)の重量平均分子量[Mw]は、留出液としてヘキサフルオロイソプロパノールを使用し、またポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量[Mw]とした以外は、上述のビニル系共重合体(B)と同じ装置・条件で測定した。
【0291】
(6)シャルピー衝撃強度
第二〜八の発明として後述する樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、表1に示す条件で成形し、ダンベル状の試験用成形品を得た。得られた成形品に関し、ISO179に従って、シャルピー衝撃強度を測定した。
【0292】
【表1】
【0293】
(7)メルトフローレート(MFR)
80℃の熱風乾燥機中で乾燥した樹脂組成物のペレットを、ISO1133(1997年)に準拠した方法で測定した。なお、実施例501〜513、比較例501〜508は260℃、加重49N、実施例801〜807、比較例801〜807は240℃、加重98N、その他の実施例、比較例は220℃、98Nで測定した。
【0294】
(8)色調(YI値)
第二〜八の発明として後述する樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、表1に示す条件で成形し、プレート試験片(長さ50mm、幅30mm、厚さ3mm)成形品を得た。得られた成形品をJISK7105(1981制定)、6.3に記載された黄色度の測定方法に従って評価した。
【0295】
(9)表面光沢性および外観
第二の発明の樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、表1に示す条件で成形し、プレート試験片(長さ50mm、幅30mm、厚さ3mm)成形品を得た。得られた成形品をJISZ8741(1997制定)に準拠した方法で測定した。
【0296】
第三〜八の発明の樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、表1に示す条件で成形し、プレート試験片(長さ50mm、幅30mm、厚さ3mm)成形品を得た。得られたプレート試験片(長さ50mm、幅30mm、厚さ3mm)の表面を目視観察し、ゲル化物、層状剥離やシルバーストリークなどの不良がないものを良好、良好以外のものを不良と判定した。
【0297】
(10)耐薬品性
第三および第五の発明の熱可塑性樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、表1に示す条件で成形し、プレート試験片(長さ126mm、幅12.6mm、厚さ1.5mm)を作製した。図1に示すようにこのプレート試験片クラック発生装置である1/4楕円治具に沿わせて固定後、プレート試験片lの表面全体に薬液を塗布し、室温23℃湿度50%にて72時間放置した。プレート試験片でのクラック発生の有無を観察し、クラック発生位置101からの距離Xを求め、数式4から臨界歪み(ε)を算出し、0.5%以上のものを合格と判定した。なお薬液は花王株式会社製の風呂場用洗剤“バスマジックリン”(「マジックリン」:登録商標)の原液を使用した。
ε(%)=bt/2a{1−X(a−b)/a−3/2×100 (数式4)
a:治具の長軸(=127mm)
b:治具の短軸(=38mm)
t:試験片の厚み(=1.5mm)
X:クラック発生からの距離(mm) 。
【0298】
(11)難燃性[V−2]
第四の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、日精樹脂工業(株)精PS60E成形機で、射出成形により0.75mm厚および3mm厚の難燃性評価用試験片を得た。その試験片について、UL94で定められている評価基準に従い難燃性を評価した。燃焼試験片を垂直に保持し、燃焼試験片の下端中央に長さ20mmの青色炎を10秒間接炎後、炎を離して燃焼時間を測定した。その後、一回目の炎が消火して再び10秒間接炎後の燃焼時間とグロー消火時間を測定した。判定基準は次のとおりとした。
【0299】
[V−2]:
1回目と2回目の接炎後30秒以上燃えず、2回目の接炎後のグロー消火時間は60秒以内である。30cm下方に置かれたガーゼは着火してもよい。なお、測定はn=5で実施する。更に、5本の燃焼試験片の有炎燃焼時間の合計が、250秒以内である。
【0300】
[V−2NG]:
1回目と2回目の接炎後30秒より燃焼もしくは、2回目の接炎後のグロー消火時間は60秒以上である。なお、測定はn=5で実施する。また、5本の燃焼試験片の有炎燃焼時間の合計が、250秒より大きくなる場合もNGとなる。
【0301】
(12)表面固有抵抗値
第六の発明の熱可塑性樹脂組成物を表1の条件で乾燥させ、日精樹脂工業(株)精PS60E成形機で、射出成形により40×50×3mm厚みの角板成形品を得た。この成形品を温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D257に準拠して測定した。印加電圧500V、印加1分後の値を読みとった。
【0302】
(13)静電気消散性能(帯電圧および帯電圧減衰半減期)
上記(12)で得られた角板成形品を、スタティックオネストメーター(シシド静電気(株))によって測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。
【0303】
(14)熱滞留シャルピー衝撃強度
第七の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物を乾燥し、住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機で、シリンダー温度220℃でシリンダー内に10分間滞留後、射出成形し試験片を得た。その後の評価はISO179に準じて行った。
【0304】
(15)熱滞留MFR測定
第七の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物について、前記(7)のMFR測定の条件に加え、シリンダー内に10分さらに滞留させたものについて測定した。
【0305】
(16)熱安定性評価
第七の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物について、シャルピー衝撃強度およびMFRにつき、初期値及び熱滞留後の値をそれぞれ(I)、(H)として下記式より算出される変化率で熱滞留による耐久性を評価した。すなわち、変化率が小さいほど熱安定性に優れる。
シャルピー衝撃強度の変化率(%)=((I)−(H))/(I)×100
MFRの変化率(%)=((H)−(I))/(I)×100 。
【0306】
(17)臭気
第七の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物について、溶融コンパウンド時および得られたペレットの射出成形時の刺激臭の有無を確認した。
【0307】
(18)バイオマス度の算出
第七の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物について、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B−4)、ポリ乳酸系樹脂(F)の合計を100質量%とした際の、天然ゴム成分とポリ乳酸成分の含有量を質量%として算出した。
【0308】
(19)熱変形温度
第八の発明として後述する熱可塑性樹脂組成物について、ISO75の規定に準拠し、荷重1.8MPaで評価を行った。
【0309】
グラフト共重合体(A)の製造に使用したゴム状重合体(R)の重量平均粒子径、比率を表2に示す。
【0310】
【表2】
【0311】
以下の参考例に示すグラフト共重合体は第1の発明の熱可塑性樹脂組成物に関係するものである。
(参考例1)グラフト共重合体[A−(1)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス50質量部(固形分換算)[R−(1)]の存在下、純水130質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部及びピロリン酸ナトリウム0.1質量部を反応容器に仕込み、反応容器内の空気を窒素で置換した。反応容器内を60℃に調整し、攪拌しながら、まずスチレン6.7質量部、アクリロニトリル2.5質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.046質量部の単量混合物(この単量体混合物の量は全ての単量体混合物の18.4質量%に相当する。)を0.5時間かけて添加した。次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.32質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.5質量部及び純水25質量部からなる開始剤混合物の添加を開始し、重合を開始させた。開始剤混合物は合計5時間かけて連続的に滴下した。開始剤混合物の滴下開始と同時にスチレン29.8質量部、アクリロニトリル11質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.15質量部の混合液の滴下を開始し、3時間かけて連続滴下した。単量体混合物滴下後、2時間、開始剤混合物のみを連続滴下し、その後重合を終了させた。重合を終了したラテックスを1.5質量%希硫酸で凝固し、ついで水酸化ナトリウムで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体[A−(1)]を得た。グラフト率は40%、内部グラフト率は42%、アセトン可溶分の重量平均分子量[Mw]は83,000であった。
【0312】
(参考例2)グラフト共重合体[A−(2)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)及び1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(2)]存在下、純水130質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部及びピロリン酸ナトリウム0.1質量部を反応容器に仕込み、反応容器内の空気を窒素で置換した。その後反応容器内を60℃に温調し、攪拌しながら、まず、スチレン5.84質量部、アクリロニトリル2.16質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.03質量部の単量体混合液(この単量体混合物の量は全ての単量体混合物の16質量%に相当する。)を0.5時間かけて添加した。次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.25質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.5質量部及び純水25質量部からなる開始剤混合物の添加を開始し、重合を開始させた。開始剤混合物は6時間かけて連続滴下した。開始剤混合物の滴下開始と同時にスチレン30.66質量部、アクリロニトリル11.34質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.16質量部の混合液の滴下を開始し、4時間かけて単量体混合物を連続滴下した。単量体混合物滴下後、2時間、開始剤混合物のみを連続滴下し、その後重合を終了させた。重合を終了したラテックスを1.5質量部硫酸で凝固し、ついで水酸化ナトリウムで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体[A−(2)]を得た。グラフト率は39%、内部グラフト率は25%、アセトン可溶分の重量平均分子量[Mw]は、83,000であった。
【0313】
(参考例3)グラフト共重合体[A−(3)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(2)]を用いたこと、初期添加の単量体混合液をスチレン18.25質量部、アクリロニトリル6.75質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.1質量部(この単量体混合液の量は全ての単量体混合物の50質量%に相当する。)としたこと、ならびに連続添加した単量体混合液をスチレン18.25質量部、アクリロニトリル6.75質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.1質量部とした以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(3)]を得た。グラフト率は45%、内部グラフト率は33%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0314】
(参考例4)グラフト共重合体[A−(4)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス25質量部(固形分換算)用いたこと、ならびに1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス25質量部(固形分換算)[R−(3)]としたこと以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(4)]を得た。グラフト率は35%、内部グラフト率は24%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0315】
(参考例5)グラフト共重合体[A−(5)]
重量平均粒子径が0.2μmの合成ゴムであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、及び1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(4)]を用いたこと以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(5)]を得た。グラフト率は42%、内部グラフト率は23%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は、83,000であった。
【0316】
(参考例6)グラフト共重合体[A−(6)]
重量平均粒子径が0.2μmの合成ゴムであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、及び1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(4)]を用いたこと以外は参考例3と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(6)]を得た。グラフト率は46%、内部グラフト率は32%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は、83,000であった。
【0317】
(参考例7)グラフト共重合体[A−(7)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス10質量部(固形分換算)用いたこと、および1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス40質量部(固形分換算)[R−(5)]を用いたこと以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(7)]を得た。グラフト率は38%、内部グラフト率は23%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0318】
(参考例8)グラフト共重合体[A−(8)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、および1.0μm以上の粒子の割合が40.5質量%であり、重量平均粒子径が0.9μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(6)]を用いたこと以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(8)]を得た。グラフト率は36%、内部グラフト率は21%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0319】
(参考例9)グラフト共重合体[A−(9)]
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、1.0μm以上の粒子の割合が53質量%であり、重量平均粒子径が1.5μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)[R−(7)]を用いたこと以外は参考例2と同様な方法で、パウダー状のグラフト共重合体[A−(9)]を得た。グラフト率は34%、内部グラフト率は16%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0320】
(参考例10)グラフト共重合体(A−10)
重量平均粒子径が0.08μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)を用いたこと、1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)(R−8)を用いたこと以外は参考例2と同じ方法で、パウダー状のグラフト共重合体(A−10)を得た。グラフト率は37%、内部グラフト率は24%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0321】
(参考例11)グラフト共重合体(A−11)
重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス37.5質量部(固形分換算)、1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス12.5質量部(固形分換算)(R−2)、純水130質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部及びピロリン酸ナトリウム0.1質量部を反応容器に仕込み、反応容器の空気を窒素に置換した。そして反応容器内を60℃に温調し、クメンハイドロパーオキサイド0.25質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.5質量部及び純水25質量部の開始剤混合物の投入を開始し、重合を開始させた。開始剤混合物は6時間かけて連続滴下した。開始剤混合物の滴下開始と同時にスチレン36.5質量部、アクリロニトリル13.5質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.2質量部の混合液の滴下を開始し、4時間かけて単量体混合物を連続滴下した。単量体混合物滴下後、2時間、開始剤混合物のみを連続滴下し、その後重合を終了させた。重合を終了したラテックスを1.5質量%硫酸で凝固し、ついで水酸化ナトリウムで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−11)を得た。グラフト率は38%、内部グラフト率は10%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は、83,000であった。
【0322】
(参考例12)グラフト共重合体(A−12)
1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス50質量部(固形分換算)[R−(9)]存在下、純水130質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.1質量部及び水酸化カリウム0.25質量部を反応容器に仕込み、反応容器内の空気を窒素に置換した。反応容器内を60℃に調整し、攪拌しながらスチレン18.25質量部、アクリロニトリル6.75質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.1質量部の単量体混合液(この単量体混合物の量は全ての単量体混合物の50質量部に相当する。)を1時間かけて初期添加した。次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.25質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.5質量部及び純水25質量部からなる開始剤混合物の投入を開始し、重合を開始させた。開始剤混合物は6時間かけて連続滴下した。開始剤混合物の滴下と同時にスチレン18.25質量部、アクリロニトリル6.75質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.1質量部の混合液の滴下を開始し、4時間かけて単量体混合物を連続滴下した。単量体混合物の滴下後、2時間、開始剤混合物のみを連続滴下し、その後重合を終了させた。重合を終了したラテックスを1.5質量部硫酸で凝固し、ついで水酸化ナトリウムで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体[A−(12)]を得た。グラフト率は43%、内部グラフト率は27%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は、83,000であった。
【0323】
(参考例13)グラフト共重合体[A−(13)]
スチレン45質量部、アクリロニトリル15質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.25質量部を混合してビニル系単量体を調製した。また、純水10質量部に、ピロリン酸ナトリウム0.25質量部、デキストロース0.35質量部と硫酸第一鉄0.005質量部を溶解した溶液(以下、「RED水溶液−1」と略記する)を調製した。さらに、純水10質量部に不均化ロジン酸カリウム1質量部とジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.3質量部を溶解した水溶液(以下、「OXI水溶液−1」と略記する)を調製した。ついで、反応容器に純水220質量部、1.0μm以上の粒子の割合が24質量%であり、重量平均粒子径が0.6μmである天然ゴムラテックス10質量部(固形分換算)及び重量平均粒子径が0.3μmであるポリブタジエンラテックス30質量部(固形分換算)[R−(2)]を仕込んだ。さらに不均化ロジン酸カリウム0.25質量部及びβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.75質量部を反応容器に仕込んだ。反応容器内の空気を窒素で置換し、窒素を流し続けた。攪拌しながら反応容器を40℃まで昇温した。40℃に達した時点でRED水溶液−1のうち85質量%相当量を反応容器に添加した。その直後にビニル系単量体及びOXI水溶液−1の85質量%相当分を、いずれも5時間にわたって連続添加し反応を進めた。重合開始から内温を60℃まで昇温し、その後、この温度で保持した。重合を開始して重合を開始して5時間後、RED水溶液−1の残り15質量%相当分及びOXI水溶液−1の残り15質量%相当分を反応器内に添加し、1時間の間、同じ温度で保持した後に、反応容器を冷却し重合を終了させた。重合を終了した反応生成物を0.5質量部硫酸マグネシウム水溶液で凝固し、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体[A−(13)]を得た。グラフト率は35%、内部グラフト率は8%、アセトン可溶分の分子量[Mw]は83,000であった。
【0324】
参考例1〜13に記載したグラフト共重合体(A)の原料および特性を表3に示す。
【0325】
【表3】
【0326】
(参考例14)
ビニル系(共)重合体[B−(1)]
まず懸濁重合用の媒体としてメタクリル酸メチル−アクリルアミド共重合体を製造した。具体的製造方法は以下のとおりである。
【0327】
アクリルアミド80質量部、メタアクリル酸メチル20質量部、過硫酸カリウム0.3質量部、イオン交換水1800質量部を反応器中に仕込み反応器中の気相を窒素ガスで置換しよくかき混ぜながら70℃に保った。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続けて、アクリルアミドとメタアクリル酸メチル二元共重合体の水溶液として得た。得られた反応液はやや白濁した粘性を有する水溶液であった。これに水酸化ナトリウムを35質量部とイオン交換水を加え0.6%のアクリルアミドとメタアクリル酸メチルとの二元共重合体水溶液としてアルカリ性に保ち、70℃で2時間攪拌した後、室温にまで冷却することで透明な懸濁重合用の媒体の水溶液を得た。
【0328】
20Lのオートクレーブに前記メタクリル酸メチル−アクリルアミド二元共重合体水溶液6質量部を入れて400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。70℃まで昇温後、アクリロニトリル28.9質量部、スチレン11.1質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.32質量部及びt−ドデシルメルカプタン0.32質量部の単量体混合物を反応系を攪拌しながら30分かけて添加し、重合反応を開始した。単量体混合物を添加後、1時間経過したところで、スチレンを供給ポンプを使用して15質量部添加した。その後、30分間隔でスチレンを1回あたり15質量部として3回を反応容器に添加した。全ての単量体の添加後60分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃に維持した後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状のビニル系(共)重合体[B−(1)]を得た。重量平均分子量[Mw]は、12,000であった。
【0329】
(参考例15)ビニル系(共)重合体[B−(2)]
初期に添加する単量体混合物をアクリロニトリル24質量部、スチレン76質量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3質量部として、単量体混合物を追添加しないこと以外は参考例14と同様な方法でビーズ状のビニル系(共)重合体[B−(2)]を得た。重量平均分子量[Mw]は、12,000であった。
参考例14および参考例15に記載したビニル系(共)重合体(B)の単量体比率を表4に示す。
【0330】
【表4】
【0331】
(実施例201〜207、比較例201〜207)
ここで紹介するのは第二の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14で調製したビニル系重合体(B)とをそれぞれ、表5〜8に示した配合比で配合し、さらに添加剤としてt−ブチルヒドロキシトルエン0.3質量部及びトリ(ノニルフェニル)ホスファイト0.3質量部を加え、ヘンシェルミキサーで23℃で混合した後、得られた混合物を40mmφ押出機により、押出温度230℃でガット状に押出し、ペレット化した。次いで得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これら試験片について各物性を測定した。実施例の結果を表5および表6に、比較例の結果を表7および表8に示す。
【0332】
【表5】
【0333】
【表6】
【0334】
【表7】
【0335】
【表8】
【0336】
実施例201〜207の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、表面光沢性において、均衡に優れるものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御したことにより耐衝撃性に優れたものであった。
【0337】
一方、比較例201で得られた樹脂組成物は天然由来の原料である天然ゴムを含有せず、また耐衝撃性に劣るものであった。比較例202〜204で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調、表面光沢性に劣るものであった。比較例205で得られた樹脂組成物は耐衝撃性に劣るものであった。比較例206で得られた樹脂組成物は、耐衝撃性、色調、表面光沢性に劣るものであった。比較例207で得られた樹脂組成物は、耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例207に使用されるグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
【0338】
(参考例16)エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)
三井・デュポンポリケミカル株式会社製“エルバロイ”(登録商標)HP−4051を準備した。
【0339】
(実施例301〜312、比較例301〜307)
ここで紹介するのは第三の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系重合体(B)と参考例16に示したエチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)をそれぞれ、表9〜12に示した配合比で配合し、さらに添加剤としてt−ブチルヒドロキシトルエン0.3質量部及びトリ(ノニルフェニル)ホスファイト0.3質量部を加え、ヘンシェルミキサーで23℃で混合した後、得られた混合物を40mmφ押出機により、押出温度230℃でガット状に押出し、ペレット化した。次いで得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これら試験片について各物性を測定した。実施例の結果を表9および表10に、比較例の結果を表11および表12に示す。
【0340】
【表9】
【0341】
【表10】
【0342】
【表11】
【0343】
【表12】
【0344】
実施例301〜311の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、外観、耐薬品性において、均衡に優れるものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御したことにより耐衝撃性に優れたものであった。また、実施例312において、エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(C)の配合割合が増加すると層状剥離による外観不良が発生したが、耐衝撃性、流動性、色調、耐薬品性に優れるものであった。
【0345】
一方、比較例301で得られた樹脂組成物は天然由来の原料である天然ゴムを含有しないものであり、また耐衝撃性に劣るものであった。比較例302〜304で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例305で得られた樹脂組成物は耐衝撃性に劣るものであった。比較例306〜307で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例307に使用されるグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
【0346】
(参考例17)リン酸エステル系難燃剤(J)
リン酸エステル系難燃剤[J−(1)]
レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)(商品名:PX200、大八化学工業製、リン含有量:9.0%)を準備した。
【0347】
リン酸エステル系難燃剤[J−(2)]
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(商品名:CR733S、大八化学工業製、リン含有量:10.5%)を準備した。
【0348】
(参考例18)芳香族カーボネートオリゴマー(K)
8質量%の水酸化ナトリウム水溶液42.1Lに、ビスフェノールA5.472kg(24mol)、ハイドロサルファイド6.0g、p−tert−ブチルフェノール1.028kgを溶解し、溶液Aを調製した。また、ジクロロメタン24.0Lを攪拌しつつ、15℃に保ちながらホスゲン3.0kgを50分かけて吹き込み、溶液Bを調製した。次に、溶液Aを攪拌しながら、溶液Aに溶液Bを加え反応させた。反応後、12.0mLのトリエチルアミンを加え、20〜25℃にて約1時間攪拌し重合させた。重合終了後、反応液を水相と有機相とに分離し、有機相をリン酸で中和し、有機層の洗液(水)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去して白色粉末状の沈殿物を得た。この沈殿物を濾過し、110℃で24時間乾燥し、芳香族カーボネートオリゴマー(K)を得た。
【0349】
20℃に於ける極限粘度[η]は0.19dl/gであった。極限粘度[η]と粘度平均分子量[Mv]との間にはSchnellの粘度式:[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83の関係があることが知られている。極限粘度[η]の値より換算した結果、[Mv]は6,950であることを算出した。また、赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm−1付近にカルボニル基による吸収、1240cm−1付近にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有する芳香族カーボネートオリゴマー(K)であることを確認した。
【0350】
(参考例19)芳香族ポリカーボネート(L)
“タフロン”(登録商標)A1900(出光石油化学株式会社製ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量[Mv]:19,000、末端p−tert−ブチルフェノキシ基変性)を準備した。
【0351】
(参考例20)含リン有機化合物系酸化防止剤(M)
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:“アデカスタブ”(登録商標)PEP−8、株式会社ADEKA製)を準備した。
【0352】
(参考例21)シリコーン化合物(N)
シリコーン粉末(商品名:DC4−7081、東レ・ダウコーニング株式会社製)を準備した。
【0353】
(実施例401〜415、比較例401〜407)
ここで紹介するのは第四の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系(共)重合体(B)、参考例17に示したリン酸エステル系難燃剤(J)、参考例18で調製した芳香族カーボネートオリゴマー(K)、参考例20に示した含リン有機化合物系酸化防止剤(M)、参考例21に示したシリコーン化合物(N)を表13〜15に示した配合比で配合し、ヘンシェルミキサーで、23℃で混合した後、得られた混合物を40mmφ押出機により、押出温度230℃でガット状に押出し、ペレット化した。次いで得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これら試験片について各物性を測定した。実施例の結果を表13および表14に、比較例の結果を表15に示す。
【0354】
【表13】
【0355】
【表14】
【0356】
【表15】
【0357】
実施例401〜412の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、外観に優れるものであり、かつ優れた難燃性を併せ持つものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御したことにより耐衝撃性に優れたものであった。
【0358】
実施例413の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族カーボネートオリゴマー(K)を配合せず、難燃性に劣っていたが、耐衝撃性、流動性、色調、外観に優れるものであった。 実施例414の熱可塑性樹脂組成物は、リン酸エステル系難燃剤[J−(1)]の配合量が少なく、難燃性に劣っていたが、耐衝撃性、流動性、色調、外観に優れるものであった。実施例415の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族カーボネートオリゴマー(K)の代わりに芳香族ポリカーボネート(L)を配合したため、難燃性に劣っていたが、耐衝撃性、流動性、色調、外観に優れるものであった。
【0359】
一方、比較例401で得られた樹脂組成物は天然由来の原料である天然ゴムを含有しないものであり、また耐衝撃性に劣るものであった。比較例402〜404で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例405で得られた樹脂組成物は耐衝撃性に劣るものであった。比較例406〜407で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例407に使用されるグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
【0360】
(参考例22)ポリエチレンテレフタレート樹脂(D)
ポリエチレンテレフタレート樹脂[D−(1)]
ポリエチレンテレフタレート樹脂のリサイクルペレット(協栄産業株式会社製)を準備した。
【0361】
ポリエチレンテレフタレート樹脂[D−(2)]
ポリエチレンテレフタレート樹脂のバージンペレットとして、o−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.90であるTSB900(東レ株式会社製)を準備した。
【0362】
(参考例23)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体[S−(1)]
モノマー単位としてグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸メチルおよびスチレンを含有する、重量平均分子量が11,000、エポキシ価が1.8meq/gのエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(商品名:“ARUFON”(登録商標) UG−4035、東亞合成株式会社製)[(S)−1]を準備した。
【0363】
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体[S−(2)]
スチレン73質量部、アクリロニトリル23質量部、グリシジルメタクリレート1質量部の単量体混合物を懸濁重合して得られるエポキシ基を含有するアクリル・スチレン共重合体[S−(2)]を製造するにあたり、初期添加する単量体混合物を、スチレン13質量部、アクリロニトリル23質量部、グリシジルメタクリレート1質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.32質量部、t−ドデシルメルカプタン0.32質量部とする以外は、残りのスチレン60質量部の添加法を含め、参考例14と同様な方法で製造し、重量平均分子量が120,000、エポキシ価が0.007meq/gのビーズ状のエポキシ基を含有するアクリル・スチレン共重合体[S−(2)]を得た。
【0364】
(実施例501〜513、比較例501〜508)
ここで紹介するのは第五の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系(共)重合体(B)、参考例22で示したポリエチレンテレフタレート樹脂(D)、参考例23で示したエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を表16〜18に示した配合比で混合し、ベント付30mm二軸押出機を用いシリンダー設定温度260℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物を105℃熱風乾燥機中で5時間予備乾燥し、住友重機械工業社製電動射出成形機SE50を用いシリンダー温度260℃、金型温度60℃でISO 3167(2002年)で規定された多目的試験片A形(全長150mm、試験部の幅10mm、厚さ4mm)について成形し、シャルピー衝撃強度を測定した。また、角板成形品(厚さ3mm)についても成形し、色調測定および外観評価に用いた。これら試験片について各特性を測定した。実施例の結果を表16および表17に、比較例の結果を表18に示す。
【0365】
【表16】
【0366】
【表17】
【0367】
【表18】
【0368】
実施例501〜511の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、外観および耐薬品性において、均衡に優れるものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御し、さらにエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(S)を配合することで、さらに耐衝撃性に優れたものであった。
【0369】
実施例512の熱可塑性樹脂組成物は、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体[S−(1)]の含有量が多いためゲル化合物による外観が劣る傾向がみられたが、耐衝撃性、流動性、色調および耐薬品性において、優れるものであった。
【0370】
実施例513の熱可塑性樹脂組成物は、エポキシ基含有アクリル・スチレン系共重合体[S−(1)]の代わりに、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン共重合体[S−(1)]を使用した場合においても、ゲル化物による外観不良の傾向がみられたが、耐衝撃性、流動性、色調および耐薬品性において、均衡に優れるものであった。
【0371】
一方、比較例501で得られた樹脂組成物は、天然由来の原料である天然ゴムを含有しないものであり、また耐衝撃性に劣るものであった。比較例502〜505で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例506で得られた樹脂組成物は耐衝撃性に劣るものであった。比較例507〜508で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例508に使用されたグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
【0372】
(参考例24)ポリアミドエラストマー(E)
ε−カプロラクタム45質量部、数平均分子量[Mn]1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45質量部、数平均分子量[Mn]が1,800のポリエチレングリコール5質量部、テレフタル酸5.2質量部、および“イルガノックス”(登録商標)1098(酸化防止剤)0.2質量部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明で均質な溶液とした後、0.07kPa以下の圧力までに減圧した。これに、テトラブチルチタネート0.1質量部を加えて、圧力を0.07kPa以下とし、260℃の温度条件で2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマー(E)を調製した。
【0373】
(参考例25)カルボキシル基を含有する変性ビニル系共重合体(T)の調製
スチレン70質量部、アクリロニトリル25質量部、メタクリル酸質量5質量部からなる単量体混合物を通常の開始剤および連鎖移動剤を用いて、65℃〜95℃の温度で5時間懸濁重合を行い、ビーズ状の変性ビニル系重合体(T)を調製した。このときの極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)は0.60dl/gであった。
【0374】
(実施例601〜610、比較例601〜608)
ここで紹介するのは第六の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系(共)重合体(B)、参考例24で調整したポリアミドエラストマー(E)、参考例25で調整したカルボキシル基を含有する変性ビニル系共重合体(T)を表19〜22に示した配合比で混合し、ベント付30mm二軸押出機を用いシリンダー設定温度230℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0375】
得られた熱可塑性樹脂組成物を90℃熱風乾燥機中で5時間予備乾燥し、住友重機械工業社製電動射出成形機SE50を用いシリンダー温度230℃、金型温度60℃でISO 3167(2002年)で規定された多目的試験片A形(全長150mm、試験部の幅10mm、厚さ4mm)について成形し、シャルピー衝撃強度を測定した。また、角板成形品(厚さ3mm)についても成形し、表面固有抵抗値および静電気拡散性能(帯電圧および帯電圧減衰半減期)の評価に用いた。これら試験片について各特性を測定した。実施例の結果を表19および表20に、比較例の結果を表21および表22に示す。
【0376】
【表19】
【0377】
【表20】
【0378】
【表21】
【0379】
【表22】
【0380】
実施例601〜607および610の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、外観、表面固有抵抗値および静電気拡散性能において均衡に優れるものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御し、変性ビニル系共重合体(T)を適量配合することで、さらに耐衝撃性に優れたものであった。
【0381】
実施例608および実施例609の熱可塑性樹脂組成物は、変性ビニル系共重合体(T)の含有量が多いため、ゲル化合物による外観が劣る傾向があったが、耐衝撃性、流動性、色調、表面固有抵抗値および静電気拡散性能において、均衡に優れるものであった。
【0382】
一方、比較例601で得られた樹脂組成物は、天然ゴムを含有しないものであり耐衝撃性に劣るものであった。比較例602〜605で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例606で得られた樹脂組成物は耐衝撃性に劣るものであった。比較例607で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例608で得られる樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例608に使用されたグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
(参考例26)ポリ乳酸樹脂(F)
NatureWorks社製のポリ乳酸樹脂(重量平均分子量200,000、D−乳酸単位1モル%を含む融点175℃のポリ−L−乳酸樹脂)を準備した。
【0383】
(参考例27)リン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)
リン酸(0.5mol/L水溶液)(関東化学株式会社製)[U−(1)]を準備した。
リン酸1ナトリウム無水物(太洋化学工業株式会社製)[U−(2)]を準備した。
【0384】
(参考例28)アクリル系樹脂(V)
ポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学株式会社製“スミペックス”(登録商標)MH)を準備した。
【0385】
(実施例701〜709、比較例701〜708)
ここで紹介するのは第七の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系(共)重合体(B)、参考例26で示したポリ乳酸(F)、参考例27で示したリン酸及び/又はリン酸1ナトリウム(U)および参考例28で示したアクリル系樹脂(V)からなる原料を表23〜26に示す配合比でドライブレンドした後、押出温度220℃に設定した2軸スクリュー押出機(株式会社日本製鋼所製“TEX−30”)を使用して溶融混練、ペレタイズを行い、得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製“IS55EPN射出成形機”)を用いて、成形温度220℃、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得られた試験片について、各種特性評価を行った。これら試験片について各特性を測定した。実施例の結果を表23および表24に、比較例の結果を表25および表26に示す。
【0386】
【表23】
【0387】
【表24】
【0388】
【表25】
【0389】
【表26】
【0390】
実施例701〜709の結果から明らかなように、特定粒子径を有する天然ゴムと合成ゴムを所定範囲にブレンドして使用し、更に特定の内部グラフト率となるようゴム含有グラフト共重合体(A)を製造することで、煩雑な脱蛋白化処理を導入せず、かつこれまでのポリ乳酸系樹脂(F)のみを配合した樹脂組成物と比較して、衝撃性が高く、良流動、かつ色調に優れた特性バランスを有し、より環境に配慮した樹脂組成物が提供された。さらに、リン酸[U−(1)]及び/又はリン酸1ナトリウム[U−(2)]を配合することで、さらに耐衝撃性および熱安定性が向上している。
【0391】
一方、比較例701で得られた樹脂組成物は、天然由来の原料である天然ゴムを使用しておらず、また耐衝撃性が低いものであった。比較例702で得られた樹脂組成物は、天然ゴムを使用せず、また熱変形温度が低いポリ乳酸系樹脂(F)を使用しており、実施例706と比較してバイオマス度が同じにも関わらず、熱変形温度が大幅に低下する結果となった。比較例703〜708で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。
(参考例29)ポリカーボネート樹脂(G)
三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製“ユーピロン”(登録商標)S2000を準備した。(ISO 1133に準拠した300℃×荷重1.2kgfのメルトボリュームレートが10cm/10分)
(実施例801〜807、比較例801〜807)
ここで紹介するのは第八の発明の熱可塑性樹脂組成物についてである。参考例1〜13で調製したグラフト共重合体(A)と参考例14および15で調製したビニル系(共)重合体(B)、参考例29に示したポリカーボネート樹脂(G)を表27、表28に示した比で配合後、ブレンダーにて1分間攪拌し、該混合物をスクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(池貝鉄工株式会社製“PCM−30”、温度範囲:240〜250℃)で溶融混練を行い、ダイスノズルから吐出した溶融樹脂は水槽を介してカッターに引き取ってカッティングし、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを各物性評価に適するように、成形機(住友重機工業社製SE50DU射出成形機、成形温度250℃、金型温度60℃)にて試験片を作成して評価を行った。実施例について表27に、比較例について表28に評価結果を示す。
【0392】
【表27】
【0393】
【表28】
【0394】
実施例801〜807の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調、外観において、均衡に優れるものであった。また、特にゴム状重合体(R)の粒子径を制御したことにより耐衝撃性に優れたものであった。
【0395】
一方、比較例801で得られた樹脂組成物は天然由来の原料である天然ゴムを含有しないものであり、また耐衝撃性に劣るものであった。比較例802〜805で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。比較例806〜807で得られた樹脂組成物は耐衝撃性、色調に劣るものであった。また、比較例807に使用されたグラフト共重合体[A−(13)]は、グラフト重合の際のラテックスに多くの凝集物が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0396】
本発明の天然ゴム含有熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、色調および外観のバランスの取れた物性を有し、成形加工性及び条件によってはコストパフォーマンスなどにも優れることから、家電製品、通信関連機器及び一般雑貨などの用途分野で幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0397】
l:プレート試験片
a:治具の長軸
b:治具の短軸
X:クラック発生位置からの距離
101:クラック発生位置
図1