(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレンとポリプロピレン系エラストマーを含んだ樹脂組成物層Aを一方の片面層(粘着層)に設け、ポリプロピレン樹脂層Bをコア層とした、層A/層B/層Bの2種3層または層A/層Bの2種2層構成である二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
樹脂組成物層Aにおける前記ポリプロピレン系エラストマーの配合量が60質量%以上であり、
前記層AおよびBを構成するポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーであり、アイソタクチックメソペンタッド分率が92%以上であって、かつ、灰分が100ppm以下であり、
前記層A(粘着層)の厚さが、フィルムの厚さ全体の7%以上35%以下である
ことを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、電子基板、電子部品類や、偏光板や位相差フィルム、ディスプレイマザーガラスなど、液晶表示構成部材の素材などの光学材料が、製造工程中や、運搬あるいは貯蔵期間中に、傷付きや異物が付着するのを防ぐため、その表面に保護フィルムなどが貼り付けられる。
【0003】
この保護フィルムには、被着体に容易に密着させることができ、被着体の加工時、運搬時あるいは貯蔵期間中には簡単には剥離しないが、剥がす必要があるときには、容易に剥離させることができるという特性が望まれている。
このような保護フィルムとしては、無延伸ポリエチレンフィルムや、ポリエステル(PET)フィルム等の基材フィルムの片面にアクリル系やゴム系の粘着剤を塗布したものが一般に広く用いられている。
【0004】
しかし、無延伸ポリエチレンフィルムを用いた保護フィルムは、剥離の際、フィルム自体が伸びやすく、剥がしにくいという欠点を有している。また、ポリエステルフィルムを用いた保護フィルムは、柔軟性に劣るため貼り付きにくい上、ポリエステルフィルム自身に十分な粘着力がないため、粘着付与剤を添加したり、粘着剤を塗布したりする必要がある。しかしながら、塗布型粘着層は、いわゆる糊残りによって被着体を汚染する可能性が高いため、電子部材や光学部材の保護用途には、あまり好適とは言えない。さらに、電子部材によっては、表面へのシリコーン剥離剤の転移が好ましくない場合があり、剥離基材がシリコーン処理されていないことが求められる。
【0005】
一方、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、軽量性、熱的安定性、機械特性に優れているので、包装用をはじめ工業用材料フィルムとして広く用いられている。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材とした自己粘着性表面保護フィルムに関する技術としては、例えば、特開2009−166305号公報(特許文献1)では、一軸(縦)延伸したポリプロピレンシート上にポリエチレン系等の粘着性樹脂をラミネートし、横延伸することによって、平滑かつ緻密な表面を有した二軸延伸ポリプロピレン(基層)上に、一軸延伸された自己粘着層を形成する技術が開示されている。基層の表面が制御されているので、ロール巻きの際の粘着層との剥離性が改善されている一方、粘着性の効果については、開示も示唆もない。
【0006】
他方、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一面上に、カレンダー成形により粘着性プロピレン−オレフィン共重合体樹脂層を形成して、自己粘着性ポリプロピレンフィルムを得る技術が開示されている(特許文献2)。糊残りが少ない自己粘着フィルムが得られたものの、粘着性に関しては、必ずしも市場が満足するレベルには達していない。
【0007】
また、粘着層/中間層/非粘着層の3層からなり、粘着層が水添スチレン系エラストマーを含む樹脂組成物から構成されている二軸延伸フィルムが開示されている(特許文献3)。この技術では、前記3層の積層シートに二軸延伸を施すことによって得られるものであり、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの機械特性を維持しながら、粘着性能を付与できるに至った。しかしながら、この技術では、中間層と非粘着層の樹脂を変える必要があり、必ずしも安価に製造できない上、粘着層ともう一方の面とのブロッキングも必ずしも満足できるレベルとはいえない。
【0008】
したがって、二軸延伸ポリプロピレンが有する優れた機械特性を失うことなく、粘着性を有し、必要な時には剥がし易く、糊残りやシリコーン剥離剤の転移の心配が無い、市場が満足し得る保護フィルムを開発することが要望されていた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の自己粘着性二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン系エラストマーを含んだ樹脂組成物層Aを一方の片面層(粘着層)に設け、ポリプロピレン樹脂層Bをコア層とした、層A/層B/層Bの2種3層(ないしは層A/層Bの2種2層)の層構成である。
ポリプロピレンとポリプロピレン系エラストマーからなる組成物層Aを、フィルムの粘着層(一方の片面層)に位置しておくことにより、前記組成物層Aの優れた粘着特性を効率よく発揮することができる。
前記組成物層Aにおけるポリプロピレン系エラストマーの配合量は60質量%以上であることが必要である。好ましくは65質量%以上100質量%未満であり、より好ましくは70〜95質量%である。配合量が60質量%未満であると、当該用途での粘着性が発揮されず、効果がないため好ましくない。また、配合量が100質量%であると、粘着性には問題がないが、使用用途によっては、剥離力が強すぎ剥離が容易でなくなるおそれがある。
【0017】
一方、ポリプロピレン樹脂層Bは、アイソタクチックポリプロピレン樹脂単体で構成されるコア層であり、非粘着層(もう一方の片面層)も兼ねている。層Bに使用されるポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンが本来有する高い熱安定性、優れた機械特性、比較的低い表面張力を維持するために、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーであることが好ましい。
このポリプロピレン樹脂層B(コアおよび非粘着層)の表面に、粘着性を付与するポリプロピレン系エラストマーの含有層A(粘着層)を設けた本発明の層構成は、優れた離型性能を安価に達成できるメリットがある上、コア層(および非粘着層)をアイソタクチックポリプロピレン単独樹脂とすることにより、ポリプロピレンの優れた機械特性を維持できる。
【0018】
また、層構成は、層A/層B(2種2層)ないしは、層A/層B/層B(2種3層)のどちらでも構わないが、層A/層B/層Bの構成の場合、フィルムの熱カール等の問題が無く、平面性に優れたフィルムとなるので好ましい。
また、層A(粘着層)の厚さは、厚さ全体の7%以上35%以下であることが好ましく、より好ましくは10%〜30%である。層A(粘着層)の厚さが、厚さ全体の7%より低いと、十分な粘着性が発現せず、効果が得られないため好ましくない。一方、層Aの厚さが厚さ全体の35%より厚いと、粘着力が十分高くなり効果が飽和状態となるため、製造コストの観点から好ましくない。
【0019】
本発明における組成物層Aおよびポリプロピレン樹脂層Bに使用されるポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーであり、アイソタクチックメソペンタッド分率が92%以上であって、かつ、灰分が100ppm以下であることが好ましい。
アイソタクチックメソペンタッド分率(〔mmmm〕)は、高温核磁気共鳴(以後、高温NMRと略記する)測定によって求められる立体規則性度である。アイソタクチックメソペンタッド分率〔mmmm〕=92%以上であると、高い立体規則性成分により、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械特性が奏される。アイソタクチックメソペンタッド分率〔mmmm〕=92%未満であると、熱安定性、機械的耐熱性が劣る傾向にある。
【0020】
前記アイソタクチックメソペンタッド分率(〔mmmm〕)を測定するために高温NMR装置には、特に制限はなく、ポリオレフィン類の立体規則性度が可能な一般に市販されている高温NMR装置、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500が利用可能である。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、溶媒には、オルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)が用いられる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により行うことができる。
【0021】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとされる。
立体規則性度を表すアイソタクチックペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載が参照される。
【0022】
本発明に係るアイソタクチックポリプロピレンホモポリマーの230℃におけるメルトフローレートは、1.5〜10g/10minである。
前記組成物層Aに用いられる好ましいポリプロピレン系エラストマーの230℃におけるメルトフローレートの範囲は、3〜30g/10minである。また、このようなポリプロピレン系エラストマーの具体例としては、“三井化学(株):タフマー(登録商標)PN3560”、“三井化学(株):タフマー(登録商標)PN2070”、“三井化学(株):タフマー(登録商標)PN2060”、“三井化学(株):タフマー(登録商標)PN0040”、“住友化学(株):タフセレン(登録商標)T3712”、“住友化学(株):タフセレン(登録商標)T3722”、“住友化学(株):タフセレン(登録商標)T3522”、などが例示できる。
【0023】
本発明における組成物層Aおよびポリプロピレン樹脂層Bに使用されるポリプロピレン樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する灰分は、微小異物(フィッシュアイ)を低減するため、可能な限り少ないことが好ましく、100ppm以下、好ましくは、50ppm以下である。100ppm以下とすることにより、微小異物が顕著に低減され、電子部品用途に用いた際の汚染を低減できるため好ましい。
【0024】
また、本発明のフィルムの剥離速度300mm/minにおける対アクリル板粘着力は100mN/50mm以上であることが重要であり、好ましくは150〜2500mN/50mmである。剥離速度300mm/minにおける対アクリル板粘着力が100mN/50mmより小さいと、当該用途での粘着性に劣り好ましくない。剥離速度300mm/minにおける対アクリル板粘着力は、使用するポリプロピレン系エラストマーの量でコントロールできる。ポリプロピレン系エラストマーの配合量を増やすと粘着力が上がり、減らすと粘着力が下がるため、剥離速度300mm/minにおける対アクリル板粘着力を前記載範囲にするためには、ポリプロピレン系エラストマーの配合量を前述の範囲にすればよい。
【0025】
また、本発明のフィルムの厚みは10μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜60μmである。フィルムの厚みが10μm未満であると本発明の用途での機械特性に適さず好ましくない。また、フィルムの厚みが100μmを超えると、均一に延伸することができず、自己粘着性や剥離容易性に難点を生じ、実用に耐えないフィルムとなるおそれがある。
【0026】
また、本発明のフィルムには、ポリプロピレン樹脂およびポリプロピレン樹脂組成物の化学的な安定性を付与する上で、熱安定剤、酸化防止剤を添加することが好ましい。具体的には、フェノール系、ヒンダードアミン系、フォスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系等の熱安定剤や酸化防止剤が例示される。さらに具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株): “Irganox(登録商標)1010”)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゼン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株): “Irganox(登録商標)1330”)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株): “Irgafos(登録商標)168”)等が挙げられる。これらの中で、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、あるいはフェノール系とフォスファイト系との組み合わせ、及び、フェノール系とラクトン系、フェノール系とフォスファイト系とラクトン系の組み合わせが、ポリプロピレン樹脂の化学的な安定性を付与する観点から好ましい。
【0027】
なお、本発明フィルムには本発明の目的に反しない範囲で、有機および/または無機のすべり剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤を含有せしめることができる。すべり剤としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等脂肪族アミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、脂肪族モノグリセライド、脂肪族ジグリセライド、シリカ、アルミナ、シリコーン架橋ポリマー等が例示される。塩素捕獲剤としては、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト等が例示される。また、帯電防止剤としては、アルキルメチルジベタイン、アルキルアミンジエタノール及び/又はアルキルアミンエタノールエステル及び/又はアルキルアミンジエタノールジエステル等が例示される。
【0028】
本発明において使用されるポリプロピレン樹脂は公知の方法で得ることができる。製造方法としては、例えばチタン、アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒系を用い、炭化水素溶媒中プロピレンを重合する方法、液状プロピレン中で重合する方法(バルク重合)、気相で重合する方法が挙げられる。
【0029】
また、ポリプロピレン系エラストマーは、例えば、特開2007−182589号公報等に開示の公知の方法で得ることができる。製造方法としては、例えばエチレンとプロピレンを、特定の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、および、有機アルミニウム化合物とからなるオレフィン重合触媒によって共重合する方法等が例示される。
【0030】
ポリプロピレンとポリプロピレン系エラストマーからなる該組成物層Aを得るための樹脂を混合する方法としては、特に制限はないが、重合粉あるいはペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン系エラストマーの重合粉あるいはペレットを混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法などがあるが、いずれでも構わない。
ミキサーや混練機にも特に制限は無く、また、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでも良い。さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
【0031】
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練さえ得られれば、混練温度にも特に制限はないが、一般的には、200℃から300℃の範囲であり、230℃から270℃が好ましい。300℃を超える高い混練温度は、樹脂の劣化を招くので好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。
【0032】
溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによって、混合ポリプロピレン樹脂組成物を得ることができる。
二軸延伸フィルムは、厚み斑・平面性が良好であるテンター法が好ましい。テンター法でも更に同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法とがあるが、どちらの方法をとってもよい。以下、逐次二軸延伸法により本発明フィルムを得る方法を説明するが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記のように準備された樹脂および樹脂組成物を230〜270℃で押出機にて溶融して、Tダイよりシート状に溶融押出しする。
層A/層B/層Bの2種3層または層A/層Bの2種2層のフィルムを得るためには、層A、層Bのそれぞれの樹脂を押出機内にて溶融混練して、ポリマーフィルターにより粗大異物を除去した後に樹脂の合流装置を用いて層Aと層Bとからなる3層または2層の樹脂層を構成する。該合流装置としては、樹脂を口金前のポリマー管内で合流する方法、口金の樹脂導入部に設けられた積層ユニットで合流するフィードブロック法、口金内で拡幅後に両樹脂を積層するマニホールド積層法等が例示されるが特に限定されるものではない。マニホールド法が積層厚み精度の点では優れているが経済性も考慮の上で適宜選択することができる。
【0034】
以上のようにして得られた層A/層B/層Bないしは層A/層Bからなる積層シートは、20〜60℃にコントロールした少なくとも1個以上の金属ドラム上にエアナイフにより密着させシート状に成形させ、キャスト原反シートとなる。
【0035】
延伸は、縦及び横に二軸に配向せしめる二軸延伸が良い。逐次二軸延伸方法としては、まずキャスト原反シートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4〜5倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上の温度で幅方向に8〜10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取る。
【0036】
巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁することができる。
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れた延伸フィルムとなる。
こうして得られたフィルムは自己粘着性に非常に優れており、かつ、剥離も容易であるので、保護フィルムとして好適である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0038】
〔特性値の測定方法ならびに効果の評価方法〕
実施例における特性値の測定方法及び効果の評価方法は次の通りである。
【0039】
(1)ポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレート(以後、MFRと略記する)
JIS K−7210(1999)により、ポリプロピレン樹脂の230℃におけるMFRを求めた。
【0040】
(2)アイソタクチックメソペンタッド分率(〔mmmm〕)測定
ポリプロピレン樹脂を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、アイソタクチックメソペンタッド分率(〔mmmm〕)を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:
13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH
3(mmmm)=21.7ppm
【0041】
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考とした。
【0042】
(3)灰分
ポリプロピレン樹脂の灰分は、ISO3451−1に準拠して、樹脂 1Kgをるつぼに入れ、マッフル炉にて750℃で1時間溶融加熱した前後の質量より算出した。
【0043】
(4)フィルム厚の評価
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2151に準拠して測定した。
【0044】
(5)対アクリル板粘着力
自己粘着性二軸延伸ポリプロピレンフィルム(長さ200mm(流れ方向:MD)×幅70mm)を市販のアクリル板(厚さ:2mm、長さ125mm、幅50mm)に、ゴムローラーを使用し、空気が入らないよう貼付し、それを50mm幅にカットしてサンプルを作製した。そのサンプルを、2g/cm
2の荷重を負荷した状態で、40℃、24時間エージングし、23℃、50%RHの室温にて2時間静置後、引っ張り試験機を用いて300mm/minの速度で180度剥離し、粘着力を計測した。測定数は3とし、その平均値を採用した。
対アクリル板粘着力は、150mN/50mm以上が、実用上好ましい。
【0045】
(6)耐ブロッキング性
自己粘着性二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、粘着層ともう一方の面と面を交互に10枚重ね合わせローラーで貼付した後、50g/cm
2の荷重下、70℃の温度条件で、60分エージングする。それを50mm幅にカットしてサンプルを作製した。得られたサンプルの両層のブロッキングの状態を観察し評価した。評価基準は、下記のとおりである。
○:両層面は密着していなかった
×:両層面が密着し貼り付いていた
【0046】
(7)総合評価
ブロッキングせず、自己粘着化が実現できているかを総合的に判断した。
:効果があった
×:従来と変わらないか、劣っていた
【0047】
〔実施例1〕
ポリプロピレン樹脂として、プライムポリマー社製 RF1342B(MFR=3g/10min、〔mmmm〕=94%、総灰分=25ppm)ペレットを、また、ポリプロピレン系エラストマーとして、三井化学社製 タフマー(登録商標)PN3560(MFR=6g/10min)を準備した。
【0048】
ポリプロピレン樹脂ペレットに、ポリプロピレン系エラストマーペレットを、樹脂全体に対し70質量%の配合にてドライブレンドした。
【0049】
次いで、上記混合ペレットを、粘着層Aとして、直径30mmの池貝製作所社製 単軸押出機FS30(サテライト押出機)にホッパーから投入し、一方、コアおよび裏面層Bとして、ポリプロピレン樹脂のみを他の直径30mmの池貝製作所社製 単軸押出機FS30(メイン押出機)に投入し溶融させた。230℃にて、積層ユニットであるフィードブロックにて各層を合流させ、単層ダイ(幅300mm)から2種3層(層A/層B/層Bの構成)シートとして押出したのち、45℃に制御した冷却ドラム上でエアナイフを用い空気圧で押しつけながら、冷却固化させて約700μm厚のキャスト原反シートを得た。
【0050】
得られたキャスト原反シートは、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機 KARO IVを用いて逐次二軸延伸を行った。延伸条件は、予熱温度165℃、予熱時間1分、延伸温度165℃、延伸速度100%/sec、熱セット条件は、165℃、30secにて、キャスト原反シートを、流れ方向(MD)に4.6倍、幅方向の延伸倍率を9.3倍延伸して、フィルム厚さ約16μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0051】
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムのフィルム厚さ、対アクリル板粘着力、耐ブロッキング性を評価した。フィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0052】
〔実施例2〕
ポリプロピレン系エラストマーの配合量を75質量%とし、サテライト押出機の押出回転数を、粘着層の厚さが薄くなるように下げた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0053】
〔実施例3〕
ポリプロピレン系エラストマーの配合量を80質量%とした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0054】
〔実施例4〕
ポリプロピレン系エラストマーの配合量を100質量%とした以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0055】
〔実施例5〕
ポリプロピレン系エラストマーとして、三井化学社製 タフマー(登録商標)PN2050(MFR=6g/10min)用いた以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0056】
〔比較例1〕
ポリプロピレン系エラストマーの配合量を50質量%とした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0057】
〔比較例2〕
サテライト押出機の押出回転数を、粘着層の厚さがさらに薄くなるように下げた以外は、実施例2と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0058】
〔比較例3〕
サテライト押出機の押出回転数を、粘着層の厚さが厚くなるように上げた以外は、実施例2と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0059】
〔比較例4〕
ポリプロピレン系エラストマーの代わりに、メタロセン系低融点ポリプロピレン樹脂、出光興産社製 L−MODU(登録商標) S−400(MFR=測定不能)を、80質量%配合した以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムと評価結果の内容を表1にまとめる。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1〜5で明らかな通り、本発明の自己粘着性二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、対アクリル板粘着性に優れている上、粘着層ともう一方の面とのブロッキングも見られなかった。また、添加剤等を含むことなく、極めて単純な樹脂及び層構成であり、従来のように、中間層と非粘着層の樹脂を変える必要がないので、安価に製造できかつ、糊残りやシリコーン剥離剤の移転の心配の必要が無い。したがって、電子・電気・光学部品等の保護フィルムとして、極めて好適なものであった。
【0062】
しかしながら、ポリプロピレン系エラストマーの含有量が本発明に係る範囲より少ない場合には、粘着性に極めて劣り実用に耐え得ないものであった(比較例1)。
また、粘着層の厚さが、本発明に係る範囲より薄い場合には、粘着力の効果が十分得られず(比較例2)、本発明に係る範囲より厚い場合には、粘着力が一層高くならないにも拘らず、ブロッキングの発現がやや見られ、コスト的にも性能的にも好ましいものとはならなかった(比較例3)。