特許第6040665号(P6040665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
<>
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000002
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000003
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000004
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000005
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000006
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000007
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000008
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000009
  • 特許6040665-びびり振動抑制方法および工作機械 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040665
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】びびり振動抑制方法および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/12 20060101AFI20161128BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20161128BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B23Q15/12 A
   B23Q17/09 A
   G05B19/404 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-207732(P2012-207732)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61568(P2014-61568A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 良太
(72)【発明者】
【氏名】松永 茂
(72)【発明者】
【氏名】新野 康生
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−105160(JP,A)
【文献】 特開2012−56051(JP,A)
【文献】 特開2008−290186(JP,A)
【文献】 特開2010−247316(JP,A)
【文献】 特開2012−206230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00−15/28
B23Q 17/00−17/24
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する主軸に保持された工具と被加工物を相対的に移動して前記被加工物を加工する工作機械を用いて、前記被加工物を加工する時に、
加工負荷を検出する負荷検出工程と、
前記加工負荷の値が所定周期で振動する時に、前記所定周期を備えたびびり振動が発生したと判定するびびり判定工程と、
前記びびり振動が発生したと判定された時に前記主軸の回転速度を変化させる主軸変速工程を実施し、
前記びびり判定工程が、前記加工負荷からびびり振動が発生していない時の加工負荷である基準加工負荷を差引いた判定加工負荷を用いて判定し、前記振動の振幅が時間と共に増大するとき再生型びびり振動と判定し、それ以外のとき強制びびり振動と判定するびびり振動抑制方法。
【請求項2】
前記主軸変速工程において、前記主軸の回転速度を、
再生型びびり振動の場合は、前記再生型びびり振動の振動数を工具刃数と所定の整数の積の値で除した値に変化させ、
強制びびり振動の場合は、前記振幅に比例した変化量で変化させる請求項に記載のびびり振動抑制方法。
【請求項3】
回転する工具と被加工物を相対的に移動して前記被加工物を加工する工作機械において、
前記工具を回転する主軸と、
加工により前記主軸に作用する加工負荷を検出する負荷検出手段と、
前記主軸と前記負荷検出手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段が、
前記負荷検出手段で検出された、びびり振動が発生していない時の加工負荷である基準負荷を記録し、
前記加工負荷から前記基準負荷を差引いた負荷である判定負荷の値が所定周期で振動し、
前記振動の振幅が時間経過と共に増大する時に、前記所定周期を備えた再生型びびり振動が発生したと判定し、前記主軸の回転速度を前記再生型びびり振動の振動数を工具刃数と所定の整数の積の値で除した値に変化させ、
前記振動の振幅が一定のときは強制びびり振動が発生したと判定し、前記主軸の回転速度を前記振幅に比例した変化量で変化させる工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する工具を用いた加工におけるびびり振動抑制方法および工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工具を回転させて工作物を加工する場合に、びびり振動が発生すると、加工面精度が低下したり、工具に過大な負荷が作用することがある。これを防止するために、びびり振動が検出された場合に、加工条件を変更してびびり振動を抑制している。びびり振動の検出は、工作機械もしくは被加工物の振動加速度、振動変位等を測定し、所定の閾値を越えた振動が検出されたときにびびり振動が発生したと判定している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動検出センサを用いたびびり振動判定方法では、振動振幅が成長せずびびり振動とならない振動を除外するために、振動振幅が所定の閾値を越えた場合のみ、演算処理によりびびり振動判定を行う。このため、閾値の値を、要求される加工精度に合わせて加工毎に設定する必要があり、閾値の設定が過大であるとびびり振動を見逃し、過小であると無用な加工条件変更を繰り返す恐れがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、振動振幅に関わらず有害なびびり振動のみを検出でき、びびり振動が発生しない工具の回転速度の決定が可能なびびり振動抑制方法および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明の特徴は、回転する主軸に保持された工具と被加工物を相対的に移動して前記被加工物を加工する工作機械を用いて、前記被加工物を加工する時に、
加工負荷を検出する負荷検出工程と、
前記加工負荷の値が所定周期で振動する時に、前記所定周期を備えたびびり振動が発生したと判定するびびり判定工程と、
前記びびり振動が発生したと判定された時に前記主軸の回転速度を変化させる主軸変速工程を実施することである。
【0006】
請求項に係る発明の特徴は、さらに、前記びびり判定工程が、前記加工負荷からびびり振動が発生していない時の加工負荷である基準加工負荷を差引いた判定加工負荷を用いて判定し、前記振動の振幅が時間と共に増大するとき再生型びびり振動と判定し、それ以外のとき強制びびり振動と判定することである。
【0007】
請求項に係る発明の特徴は、請求項に係る発明において、前記主軸変速工程において、前記主軸の回転速度を、
再生型びびり振動の場合は、前記再生型びびり振動の振動数を工具刃数と所定の整数の積の値で除した値に変化させ、
強制びびり振動の場合は、前記振幅に比例した変化量で変化させることである。
【0008】
請求項に係る発明の特徴は、回転する工具と被加工物を相対的に移動して前記被加工物を加工する工作機械において、
前記工具を回転する主軸と、
加工により前記主軸に作用する加工負荷を検出する負荷検出手段と、
前記主軸と前記負荷検出手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段が、
前記負荷検出手段で検出された、びびり振動が発生していない時の加工負荷である基準負荷を記録し、
前記加工負荷トルクから前記基準負荷を差引いた負荷である判定負荷の値が所定周期で振動し、
前記振動の振幅が時間経過と共に増大する時に、前記所定周期を備えた再生型びびり振動が発生したと判定し、前記主軸の回転速度を前記再生型びびり振動の振動数を工具刃数と所定の整数の積の値で除した値に変化させ、
前記振動の振幅が一定のときは強制びびり振動が発生したと判定し、前記主軸の回転速度を前記振幅に比例した変化量で変化させることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、加工負荷が振動する時にびびり振動が発生したと判定し、主軸の回転速度を変えることでびびり振動を抑制できる。振動振幅に無関係に加工負荷の振動からびびり振動を検出するので、精度の良いびびり振動検出ができ、びびり振動が大きく成長する前に主軸の回転速度を変動してびびり振動を抑制できる。
【0010】
さらに、振幅の時間的変化の有無で再生型びびり振動か強制びびり振動かを短時間に判定できる。判定時間が短いのでびびり振動抑制操作を早期に開始できる。
【0011】
請求項に係る発明によれば、びびり振動の種類に応じて、びびり振動を抑制できる主軸の回転速度に短時間で変化できる。びびり振動による悪影響が許容値に達する前に主軸の回転速度が変化して、びびり振動を抑制できる。
【0012】
請求項に係る発明によれば、びびり振動が発生した場合に、びびり振動の種類に応じた最適な主軸の回転速度にすばやく変更できる。びびり振動による悪影響が許容値に達する前に主軸の回転速度が変化するので、びびり振動による悪影響が起きない工作機械を実現できる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の工作機械を示す全体図である。
図2】複数の切れ刃を備えた工具による加工を示す図である。
図3図2に示す加工における、加工負荷の変動の概念を示すグラフである。
図4】再生型びびり振動が発生した場合の加工の模式図である。
図5】再生型びびり振動が発生した場合の加工負荷の変動の概念を示すグラフである。
図6】振動数が工具回転速度と刃数の積の値の整数倍の時の加工の模式図である。
図7】振動数が工具回転速度と刃数の積の値の整数倍の時の加工負荷の変動の概念を示すグラフである。
図8】びびり振動抑制方法の工程を示すフローチャートである。
図9】判定負荷の時間変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を基に説明する。
図1に示すように、工作機械1はベッド2上に、X軸方向に移動可能に支持されたテーブル3を備え、テーブル上には工作物Wが保持される。さらに、ベッド2上に、X軸に直交するZ軸方向に移動可能に支持されたコラム4を備えている。コラム4にはX軸、Z軸方向に直交するY軸方向に移動可能に主軸本体5が保持されている。主軸本体5は主軸6を回転自在に支持し、主軸6は先端に工具7を把持しており図示しないモータにより回転駆動される。
【0015】
制御装置30は、内部に各種のデータを記録する記録部31、テーブル3の送りを制御するX軸制御部32、主軸本体5の送りを制御するY軸制御部33、コラム4の送りを制御するZ軸制御部34、回転速度制御部351とトルク検出部352を内蔵し主軸6の回転を制御する主軸制御部35、および各種の演算を実行する演算部36を備えている。
入力されるNCデータに基づき、X軸、Y軸、Z軸、主軸を制御することで工具7により工作物Wを加工する。
【0016】
本実施例は加工中に発生する主軸に作用する加工負荷の変動からびびり振動を検出するものであり、工作機械1を用いた切削加工とびびり振動検出方法について説明する。
はじめに、図2に基づき4枚の工具刃数を備えたエンドミルを用いた平面の加工について、説明する。ここでは、工作物Wに対し工具7をDの深さ切込み、工具7を右回転しながら工作物WをX方向へ送るダウンカットで加工する。この時、刃7aで切削された工作物Wの加工面はWaで次の刃7bにより切削される加工面はWbであり、刃7bにより除去される切屑はWaとWbに囲まれた領域となる。この場合、刃7bに作用する切削抵抗は切屑の厚みtに比例することが知られており、主軸に作用する加工負荷もこの切削抵抗に比例する。そのため、図3に示すように、加工負荷は刃の切込み初めに急峻に増大した後に漸減するグラフになる。
【0017】
次に、工具7に振動が発生した場合には、振動の振動数と、工具7の回転速度と刃数の積、の比が整数の場合とそうでない場合に異なる挙動を示す。
比が整数でない場合(すなわち再生びびり振動の場合)には、図4に示すように、刃7aで切削された加工面Waと刃7bで切削された加工面Wbの振動の位相が異なるため、切屑の厚みtは増減しながら減少するので、加工負荷は図5に示すように、振動しながら漸減する曲線となる。
【0018】
比が整数の場合には、図6に示すように、刃7aで切削された加工面Waと刃7bで切削された加工面Wbの振動の位相が同じである。このため、加工面Waと加工面Wbの振動の振幅が同じ(振動振幅が成長しないのでびびり振動とならない)場合は切屑の厚みは漸減しながら減少するので、加工負荷は図7の(a)図に示すようになる。
一方、加工面Waの振幅より加工面Wbの振幅が大きい場合(振動の振幅が刃が作用する毎に増大する、すなわち強制びびり振動の場合)は、切屑の厚みは両者の振幅の差の振幅で振動しながら漸減する曲線となり、加工負荷は図7の(b)図に示すようになる。
【0019】
すなわち、振幅が増大して悪影響を及ぼすびびり振動が発生している場合は、びびり振動の周期の振動成分を含む加工負荷となり、振動がない場合や振幅が増大しない振動が発生している場合には、振動成分を含まない加工負荷となる。このため、加工負荷が振動するか否かを判定することで、びびり振動の発生の有無を判定することができる。
従来の振動検出センサを用いたびびり振動判定方法では、振動振幅が成長せずびびり振動とならない振動を除外するために、振動振幅が所定の閾値を越えた場合に演算処理によりびびり振動判定を行う。このため、閾値の値を要求される加工精度に合わせて加工毎に設定する必要があるが、本発明によれば、閾値を設定することなくびびり振動判定が可能である。
【0020】
以下、図8のフローチャートに基づき、加工負荷として主軸の加工トルクを検出する場合の事例でびびり振動抑制方法について説明する。
予め記録部31に入力されている加工条件から切屑厚さtを演算し、それに基づき理論的な加工トルクを演算部36で演算し基準加工トルク(基準加工負荷)Mkとして記録部31に記録する(S1)。加工を開始し、負荷検出工程を実施する。トルク検出部により加工中の主軸の負荷トルクMsを測定し、記録部31に記録する(S2)。
以下ステップS3からステップS5までびびり判定工程を実施する。演算部36において、負荷トルクMsから基準加工トルクMkを差引いた判定トルク(判定加工負荷)Mhを演算し、記録部31に記録する。判定トルクは図9の(a)図、(b)図、(c)図の3種類に分かれる(S3)。演算部36において、判定トルクMhの極値の有無を判定する。図9の(a)図に該当し極値がない場合は、びびり振動は発生していないと判定し終了し、そうでなければS5へ移動する(S4)。極大値の値が時間と共に増大するか否かを判定する。図9の(b)図に該当し増大している場合は、再生型びびり振動と判定しS6へ移動し、図9の(c)図のように一定であるならば強制びびり振動と判定しS8へ移動する(S5)。
【0021】
以下ステップS6からステップS12まで主軸変速工程を実施する。演算部36において、図9の(b)図に示す判定トルクMhの極大値(または極小値)の周期Tを演算した後に、びびり振動の振動数nを式n=1/Tにより演算する。(S6)。演算部36において、推奨主軸回転速度Nsを式Ns=n/(4×K)により演算し記録部31に記録する。ここで、Kは整数であり、Nsの値が初期に設定されていた主軸回転速度Nに近い値となるように選定する(S7)。演算部36において、図9の(c)図に示す振幅Aを演算する(S8)。振幅Aが閾値Aより大きいか否かを判定し、大きければS10へ移動し、そうでなければS11へ移動する。これは、強制びびり振動の場合振動数と、工具7の回転速度と刃数の積、の比が整数の場合に振幅が急速に成長し、整数から少しずれている場合は成長が遅く、比の小数部が0.3から0.7の間であれば通常は強制びびり振動は発生しない。このため、振幅の増加量が大きい時は主軸回転速度を大きく変化させ、小さい時は小さく変化させることでより早く適正な主軸回転速度に設定できるからである(S9)。振幅Aが閾値Aより大きく主軸回転速度を大きく変化させる必要があるので、推奨主軸回転速度NsをNs=N×0.8で演算し記録部31に記録する。(S10)。振幅Aが閾値Aより小さく主軸回転速度を小さく変化させる必要があるので、推奨主軸回転速度NsをNs=N×0.9で演算し記録部31に記録する。(S11)。記録部31から推奨主軸回転速度Nsを呼び出し、主軸回転速度をNsに変更する(S12)。
【0022】
従来のびびり振動検出方法では、悪影響を及ぼすびびり振動以外の振動もびびり振動と判定する恐れがあるが、本実施例のびびり振動抑制方法によれば、負荷トルク振動の中から悪影響を及ぼすびびり振動のみを検出して、さらに、再生型びびり振動か強制びびり振動かを判定し、それぞれに適したびびり振動を抑制できる主軸回転速度を設定することができる。
【0023】
上記の実施形態では、加工負荷として主軸のトルクを用いたが、主軸の半径方向の撓み量を用いてもよい。また、工作物に作用する加工負荷を用いてもよい。
理論計算により基準加工負荷を求めたが、びびり振動の発生しない低速回転における実切削による負荷を基準加工負荷として用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:工作機械 2:ベッド 3:テーブル 4:コラム 5:主軸本体 6:主軸 7:工具 30:制御装置 31:記憶部 35:主軸制御部 36:演算部 351:回転速度制御部 352:トルク検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9