特許第6043283号(P6043283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043283セルライト等の皮膚状態を治療するためのN−アシルアミノ酸誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043283
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】セルライト等の皮膚状態を治療するためのN−アシルアミノ酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/16 20060101AFI20161206BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161206BHJP
   A61Q 19/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A61K31/16
   A61K31/198
   A61P3/04
   A61P17/00
   A61K9/12
   A61K9/10
   A61K9/08
   A61K9/06
   A61K9/14
   A61K31/205
   A61K31/05
   A61K31/137
   A61K31/522
   A61K8/42
   A61K8/44
   A61K8/06
   A61K8/02
   A61K8/49
   A61K8/41
   A61K8/34
   A61Q19/06
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-518561(P2013-518561)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-530233(P2013-530233A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】US2011042123
(87)【国際公開番号】WO2012003176
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/361,179
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513000148
【氏名又は名称】ヘリックス バイオメディックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HELIX BIOMEDIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】ファラ,ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リージュワン
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/069240(WO,A1)
【文献】 特開平02−268145(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/082978(WO,A1)
【文献】 特開平08−337515(JP,A)
【文献】 特開2005−194252(JP,A)
【文献】 特開2007−153845(JP,A)
【文献】 特開2007−314464(JP,A)
【文献】 Database Registry on STN,2003年,RN:546098-90-2
【文献】 Bioorg. Med. Chem. Lett.,2008年,Vol.18,pp.3272-3277
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/16
A61K 8/02
A61K 8/06
A61K 8/34
A61K 8/41
A61K 8/42
A61K 8/44
A61K 8/49
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/12
A61K 9/14
A61K 31/05
A61K 31/137
A61K 31/198
A61K 31/205
A61K 31/522
A61P 3/04
A61P 17/00
A61Q 19/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下脂肪の蓄積を低減又は防止するために、哺乳動物の皮膚の治療用に用いられる組成物の製造における、次式
【化10】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
皮下脂肪の蓄積を低減又は防止するために、哺乳動物の皮膚の治療用に用いられる組成物の製造における、次式
【化11】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項3】
前記組成物は、エアロゾル、乳剤、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、粉末又はフォームの態様である請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
前記組成物は、カルニチン、レスベラトロル、イソプロテレノール、アミノフィリン、テオフィリン又はカフェインをさらに含む請求項1乃至3の何れかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
前記組成物は、(i)正常な皮下組織に比べて異常な脂肪が分配されている皮下層又は(ii)正常な皮下組織に比べて異常な脂肪の分配を起こし易い皮下層、に対して直接投与されるか又は該皮下層の上の皮膚に投与される請求項1乃至4の何れかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
前記組成物は、局部的過剰体重、脂肪組織肥大、脂肪性浮腫、脂肪腫又は他の脂肪増殖を治療又は防止するために投与される請求項1乃至5の何れかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
前脂肪細胞又は脂肪細胞による脂肪生成を減少させるのに有用である請求項1乃至6の何れかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
脂肪細胞の脂質代謝を刺激するのに有用である請求項1乃至7の何れかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
皮下脂肪の蓄積を低減又は防止するために、哺乳動物の皮膚へ適用するのに用いられる化粧用調製物であって、
哺乳動物の皮膚又は粘膜面への使用に適したキャリアと、
次式
【化10】
で示される化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は、
次式
【化11】
で示される化合物若しくはその薬学的に許容される塩とを含む、化粧用調製物。
【請求項10】
カルニチン、レスベラトロル、イソプロテレノール、アミノフィリン、テオフィリン又はカフェインをさらに含む請求項9の調製物。
【請求項11】
前記調製物は、セルライトが含まれる皮膚又はセルライトが生成され易い皮膚に投与される請求項9又は10の調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年7月2日に出願された米国仮特許出願第61/361,179号の優先権を主張し、該出願は引用を以ってその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、生物学的活性及び治療活性を有する小分子に関する。特に、本発明は、脂肪分解活性及び抗脂肪生成活性を有する小分子に関する。このような分子の2つの例として、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドがある。本発明は、さらに、脂肪分解活性及び抗脂肪生成活性を有する小分子を用いて、セルライト等の皮膚状態を予防又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
セルライト(cellulite)は、劣化した脂肪組織が皮膚に蓄積することによって生じる。この疾患の原因となる1又は複数の要因に、動脈又は静脈の循環欠陥、ホルモン障害及びリンパ排液障害等がある。セルライト生成を招く1つの状態として、皮膚の脂肪細胞における脂肪蓄積過剰がある。脂肪が過多になると(トリグリセリドの形態の脂質)、脂肪細胞が増加して、異常肥大することもある。肥大により生じる脂肪塊によって血管及びリンパ管が圧迫されると、流体の排出能力が低下して、皮膚に毒素が停滞する。これら状態は結合組織の浮腫及び変性をもたらし、不規則な小さな斑点が生じ、これがセルライトとして特徴づけられる。
【0004】
スキンケア産業の目標の1つは、皮膚のセルライト及びその他異常状態における脂肪沈着の分解を刺激できるように、皮膚への浸透可能な小分子(500 MW未満)を開発することである。遊離脂肪酸であるオクタン酸(オクタン酸塩とも称される)又はカプリル酸は、脂肪細胞において、脂質代謝の体内自然調節に関係することが報告されており[2000, Guo et al., Biochem. J. 349:463- 471 ; 2002, Han et al., /. Nutr. 132:904-910; 2004, Lei et al., Obesity Res. 12:599-610; 2006, Guo et al., Nutr. Metab. (Lond.) 3:30; U.S. Pat. Appl. Publ. No. 2005/0019372)]、セルライトを治療する候補薬物である。オクタン酸は、ミルクや植物油(ココナツ、ヤシ等)の一部に存在し、栄養補助食品として、抗真菌活性を含む広範囲の目的に広く使用されている。オクタン酸は、その脂肪分解活性の他にも、脂肪細胞によって取り込まれるため、グリセロール及びその他の脂肪酸と共にトリグリセリドの合成(図1参照)にも用いられている。
【0005】
脂肪細胞の脂質代謝を調節する化合物として、オクタン酸の他に、心臓及び呼吸器の様々な状態の改善薬として開発された全身性薬物(systemic drugs)が主に用いられている。これらの薬物として、イソプロテレノール(ベータアドレナリン作動薬)、アミノフィリン(ホスホジエステラーゼ阻害剤)及びテオフィリン(カフェインに構造が類似したホスホジエステラーゼ阻害剤)がある。これらの分子は、メソセラピー(mesotherapy regimen)の一部として注入されるか、又は、セルライト等の状態における脂肪減少効果を得るために、局所的に用いられる。これらの分子をスキンケア製品用の製剤として適用可能にするには、(i)処方箋なしでも購入可能なこと、(ii)原料がより天然であること、(iii)皮膚浸透性が良好であること、(iv)現在使用されている分子よりも脂肪分解活性にすぐれること、が要求される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様は、哺乳動物の皮膚を治療する方法に関するもので、哺乳動物の皮膚に組成物を投与することを含んでいる。組成物は、薬学的に許容され得るキャリアと、薬学的に有効な量の化合物又はその薬学的に許容され得る塩とを含むことができる。前記化合物は、式R-C(O)-NH-Rを有しており、Rは、5〜35個の炭素原子鎖を含み、式のR-C(O)部分は、脂肪酸アシル基(fatty acyl group)であり、Rは、有機基である。
【0007】
本発明の幾つかの態様において、式R-C(O)-NH-RのNH-R部分は、アミノ酸を含むことができる。この場合、R基はアミノ酸のアルファ炭素、カルボキシル基及び側基を含んでおり、NH基はアミノ酸のアルファ炭素に連結される。本発明の他の態様において、式R-C(O)-NH-RのNH-R部分は、アミノ酸のアナログを含むことができ、その場合、アナログがアミノ酸と異なるのは、アミノ酸アルファ炭素に結合されたカルボキシル基が欠落することによる。この場合、R基は、アミノ酸のアルファ炭素と側基を含み、NH基は、アミノ酸アナログのアルファ炭素に結合される。アミノ酸又はアミノ酸アナログの側基は疎水性であってよい。これらの態様(全アミノ酸又は上記アナログ)におけるアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン又はアラニンであってよい。
【0008】
上記方法の幾つかの態様は、次の式を含む化合物又は次の式からなる化合物を含んでいる。
【化1】
上記方法の幾つかの態様は、次の式を含む化合物又は次の式からなる化合物を含んでいる。
【化2】
4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸)の態様において、R基はロイシンであり、一方、N-イソペンチルオクタンアミドの態様において、R基はカルボキシル基を欠いたロイシンである。幾つかの態様において、本発明化合物の薬学的に許容され得る塩を含んでいる。
【0009】
本発明の幾つかの態様において、式R-C(O)-NH-RのNH-R基の鎖は、7〜21個の炭素原子を含むことができる。これらの態様及び他の態様において、R鎖の炭素原子長さが7の場合、脂肪酸アシル基R-C(O)-は、オクタノイル基である。本発明のこれらの態様及び他の態様では、2〜15個の炭素原子であるR基を含むことができる。このようなR基は、選択的に、炭素原子と水素原子から構成される。本発明のさらなる他の態様において、Rは、5〜9個の炭素原子を含むことができ、R基は、5〜13個の炭素原子を含むことができる。本発明の1又は複数の態様において、脂肪酸アシル基は飽和又は不飽和である。
【0010】
上記方法の幾つかの態様に用いられる組成物は、エアロゾル、乳剤、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、粉末又はフォームであってよい。組成物は、式R-C(O)-NH-Rを有する化合物に加えて、カルニチン、レスベラトロル、イソプロテレノール、アミノフィリン、テオフィリン、カフェイン又はその他のあらゆる脂質分解誘導剤又は脂質生成阻害剤をさらに含むことができる。
【0011】
上記方法の幾つかの態様において、化合物は、正常な皮下組織に比べて異常な脂肪が分配されている皮膚の皮下層に投与されることができる。他の態様において、化合物は、正常な皮下組織に比べて異常な脂肪の分配を起こし易い皮膚の皮下層に投与されることができる。本発明の幾つかの態様は、化合物を、セルライトが含まれる皮膚又はセルライトが生成され易い皮膚に投与することを含んでいる。
【0012】
本発明はまた、細胞によりグリセロール生成を増加させる方法の態様に関するもので、前記細胞を、式R-C(O)-NH-R(但し、Rは5〜35個の炭素原子の鎖、式のR-C(O)部分は脂肪酸アシル基、及びRは有機基を含む)を含む化合物と接触させることを含んでいる。本発明の幾つかの態様において、本発明の方法が標的とする細胞は、脂肪細胞又は皮下脂肪組織に含まれる脂肪細胞である。幾つかの態様において、化合物は、細胞を代謝させて、細胞に貯蔵されたトリグリセライド分子をグリセロール及び脂肪酸に変化させる。
【0013】
本発明はまた、脂肪生成を減少させる方法の態様に関するもので、前記細胞を、式R-C(O)-NH-R(但し、Rは5〜35個の炭素原子の鎖、式のR-C(O)部分は脂肪酸アシル基、及びRは有機基を含む)を含む化合物と接触させることを含んでいる。本発明の幾つかの態様において、本発明の方法が標的とする細胞は、脂肪細胞又は前脂肪細胞、又は皮下脂肪組織に含まれる脂肪細胞若しくは前脂肪細胞である。幾つかの態様において、化合物は、細胞(例えば、脂肪細胞又は前脂肪細胞)の脂肪蓄積を減少させる。蓄積された脂肪の減少により、細胞性脂質は減少されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、脂質生成と脂質分解の代謝プロセスを示している。図示された脂肪酸はヘキサン酸分子である。
【0015】
図2図2は、(A) 4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸と(B) N-イソペンチルオクタンアミドの化学式を示している。各化合物について、構造、基本分子式及び分子量(MW)をさらに示している。
【0016】
図3図3は、脂肪細胞の(A) 脂質生成及び(B) 脂質分解における幾つかのシグナル経路を示しており、LDLは低密度リポ蛋白質、VLDLは非常に低密度のリポ蛋白質、TGはトリグリセリド、FFAは遊離脂肪酸、HSLはホルモン感受性リパーゼ、AQP7はアクアポリン-7である。
【0017】
図4図4は、100 mg/mlのカルニチン、レスベラトロル、イソプロテレノール、アミノフィリン、テオフィリン、カフェイン、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸(HB2031)又はN-イソペンチルオクタンアミド(HB2032)の中に一晩中曝露された脂肪細胞3T3-L1における相対的遊離脂肪酸生成(relative free fatty acids production)を示している。対照サンプルには、リン酸緩衝塩(PBS)が用いられた。
【0018】
図5図5は、100 mg/mlのイソプロテレノール, 4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸 (HB2031)又はN-イソペンチルオクタンアミド (HB2032)の中に一晩中曝露された脂肪細胞3T3-L1における相対的遊離脂肪酸生成を示している。対照サンプルには、PBSが用いられた。
【0019】
図6図6は、N-イソペンチルオクタンアミド(HB2032)の抗脂肪生成活性を示している。A) は、脂肪生成誘導剤を加えない完全培地の中で増殖した前脂肪細胞3T3-L1である。B)は、前脂肪細胞3T3-L1を脂肪生成誘導剤による誘導9日後の完全分化した脂肪細胞である。C) は、100 mg/mlのHB2032を脂肪生成誘導剤の存在下で9日間処理された細胞である。D)は、150 mg/mlのHB2032を脂肪生成誘導剤の存在下で9日間処理された細胞である。E)は、200 mg/mlのHB2032を脂肪生成誘導剤の存在下で9日間処理された細胞である。細胞の脂質成分は、オイルレッドO染料で染色されている。図示の像は、解剖顕微鏡によるものである。
【0020】
図7図7は、100 mg/mlの4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸 (HB2031) とN-イソペンチルオクタンアミド (HB2032)を2時間、5時間及び18時間培養した後の皮膚活力に対する効果を、スキンモデルEpiDerm(登録商標, MatTek, MA)と改変MTTアッセイを用いて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、脂肪細胞を、脂肪分解プロセス等によって調節するための化合物、特に脂肪酸アミドを提供する。これら化合物の例として、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸 (図2A) 及びN-イソペンチルオクタンアミド (図2B)があり、これらは、各々が300MW未満であり、脂肪細胞中のトリグリセリドの分解誘導性は、現在用いられている分子(イソプロテレノール, アミノフィリン、テオフィリン等)よりも遙かに大きい。また、これら化合物は、皮膚細胞に対する毒性はない。また、これら化合物は、脂質化されて皮膚に浸透することができるので、皮膚における脂肪の異常蓄積(例えば、セルライト及び皮膚線条)による悪影響を防止又は治療するのに特に有用である。このように、本発明は、皮膚に対して有益な効果を有しており、これは、皮膚内のグリセロールレベルの上昇に関係し、皮膚状態が高められる。
【0022】
本発明の化合物の例として、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸がある。この化合物は、例えば、4-メチル-2-(カプリロイルアミノ) ペンタン酸, 4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) バレリアン酸又は4-メチル-2-(カプリロイルアミノ)バレリアン酸とも称される。この分子の命名法は、ペンタン酸の炭素位置2(炭素位置1はカルボン酸基)がオクタノイルアミノ基又はペンタン酸の炭素位置4がメチル基であることに基づいている。4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸を含む化合物又は4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸を含む化合物からなる化合物は、本発明で用いられることができる。
【0023】
本発明の化合物の他の実施例は、N-イソペンチルオクタンアミドである。この化合物は、例えば、N-イソアミルオクタンアミド、N-イソペンチルカプリルアミド又は又はN-イソアミルカプリルアミドとも称される。N-イソペンチルオクタンアミドを含む化合物又はN-イソペンチルオクタンアミドからなる化合物は、本発明で用いられることができる。
【0024】
本発明に用いられることができる化合物の例として、化学式R-CO-NH-Rを含む化合物又は化学式R-CO-NH-Rからなる化合物がある。化合物4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドは、この式に従うものである。
【0025】
化学式R-CO-NH-RのR-CO-部分は、例えば、脂肪酸から得られることができることは広く理解されている。R-CO-は脂肪酸(FA)に由来することから、Rは、炭化水素鎖(例えば、アルカン、アルケン、アルキン又は本願明細書に記載されたFA鎖の変形体)を含むことができ、-CO-は、NH-R部分と縮合したカルボン酸基に由来することができる。この場合、R-CO-部分は、脂肪酸アシル基を含んでいるか又は脂肪酸アシル基からなる。Rは、全体が炭素及び水素からなる脂肪族基であってよく、例えば酸素及び窒素等の他の原子をさらに含むことができる。本発明化合物のR-CO-部分に用いられることができる飽和脂肪酸(すなわち、Rがアルカン)は、一般式CH(CH)COOHを有しており、次の表1に示される。
【表1】
【0026】
脂肪酸基又は脂肪酸アシル基(すなわち、R-CO-) (なお、カルボキシル基の炭素原子は、鎖の中で1炭素とみなされる)の炭化水素鎖は、炭素原子長さが4以上である。本発明に有用な脂肪酸基又は脂肪酸アシル基の炭素長さの例として、4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39又は40個の炭素原子長さを挙げることができる。それゆえ、Rの鎖長さは、3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38又は39個の炭素長さであってよい。幾つかの実施例において、脂肪酸アシル基の鎖長さは、6〜36, 8〜16, 8〜18, 8〜20, 8〜22又は8〜24である。それゆえ、これら実施例におけるRの鎖の炭素個数は、夫々、5〜35, 7〜15、7〜17、7〜19、7〜21又は7〜23である。本発明に有用な他の脂肪酸基又は脂肪酸アシル基は、鎖長さの炭素数は偶数又は奇数である。本発明の実施例の調製に、短鎖、中鎖又は長鎖の脂肪酸基又は脂肪酸アシル基を用いることができる。中鎖脂肪酸は、典型的には、8(又は6)〜10(又は12)個の炭素原子を有している。また、長鎖脂肪酸は、典型的には、14(又は12)個以上の炭素原子を有している。必須脂肪酸及び非必須脂肪酸並びに天然由来脂肪酸及び合成脂肪酸も本発明の一部である。
【0027】
当業者であれば、あらゆる脂肪酸に対応する脂肪酸アシル基は認識されているであろう。例えば、脂肪酸CH(CH)COOH(オクタン酸)の脂肪酸アシル基は、CH(CH)CO-(オクタノイル基)(R=7)である。それゆえ、本明細書での脂肪酸に関する記載は、対応する脂肪酸アシル基に等しく関係する。脂肪酸アシル基の例として、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、エイコサノイル、ドコサノイル、テトラコサノイル、ヘキサコサノイル、ヘプタコサノイル、オクタコサノイル及びトリアコンタノイルがある。
【0028】
本発明の実施に有用な脂肪酸は、飽和脂肪酸(すなわち、鎖の炭素間に二重結合がなく、最大数の水素原子を有するアルカン鎖)と不飽和脂肪酸(鎖の炭素間に少なくとも1つの二重結合及び/又は三重結合を有するアルケン鎖又はアルキン鎖)を含むことができる。不飽和脂肪酸の例として、鎖に存在する二重結合が唯一つの場合は一価不飽和脂肪酸(MUFA)であり、鎖が2以上の二重結合(例えば、メチレン中断型、ポリメチレン中断型、共役ジエン、アレン酸、クムレン酸)を有する場合はポリエン酸(又は多価不飽和脂肪酸;PUFA)であり、鎖が三重結合を有する場合はアセチレン脂肪酸である。不飽和脂肪酸の他の例として、オメガ-3(n-3)、オメガ-6(n-6)、及びオメガ-9(n- 9)脂肪酸がある。本発明化合物のR-CO-部分をもたらすのに用いられることができる不飽和脂肪酸(すなわち、Rがアルケン又はアルキン) の例は、表2に示されている。
【表2】
【0029】
あまり一般的でない他の種類の脂肪酸を本発明化合物の調製に用いられることができる。そのような脂肪酸として、炭化水素鎖にメチル以外の他の種類の基を有するものを挙げることができる。鎖の中にあってよい非メチル基の例として、エーテル基、カルボキシル基、ケトン基、エステル基及びアルデヒド基がある。あまり一般的でない脂肪酸の他の例として、水素とは別に分枝基を有する鎖を有する脂肪酸がある。本発明に用いられることができる代替脂肪酸の例として、ヒドロキシ脂肪酸、ジカルボン酸、脂肪酸炭酸塩、ジビニルエーテル脂肪酸、硫黄含有脂肪酸、脂肪酸アミド、メトキシ及びアセトキシ脂肪酸、ケト脂肪酸、アルデヒド脂肪酸、ハロゲン化脂肪酸(例えば、F, Cl, Br)、ニトロ化脂肪酸、分枝鎖脂肪酸、単一又は複数の分枝鎖脂肪酸、分枝メトキシ脂肪酸、分枝ヒドロキシ脂肪酸 (例えば、ミュール酸)、環含有脂肪酸、シクロプロパン酸、シクロブタン酸(例えば、ラダラン)、シクロペンチル酸、フラノイド酸、シクロヘキシル及びヘキセニル酸、フェニル及びベンゾイックアルカン酸、エポキシ酸、環状脂肪過酸化物、及びリポ酸がある。
【0030】
本発明の化合物は、本明細書に記載した脂肪酸を用いて調製されることができるが、当業者であれば、他の構成の脂肪酸を用いて化合物を調製できることは明らかであろう。それゆえ、本明細書において、脂肪酸及び該脂肪酸からの生成について、化学式R-CO-NH-RのR-CO-部分について記載するときは、化合物を、脂肪酸自体から合成されなければならないものに限定するものではない。本発明の化合物の作製に他の合成方法を用いるときも、脂肪酸又は脂肪酸アシル基の特性に関して、R-CO-部分を特徴づけるのに有用であると理解され得る。
【0031】
化学式R-CO-NH-RのR-CO-NH部分は、例えば、脂肪族アミド(脂肪酸アミド又はアルキルアミドとしても知られている)に由来するものであるか又は脂肪族アミンとして記載され得ることは広く理解されている。脂肪族アミドは、脂肪酸(例えば、本明細書に記載したもの)とアミン(例えば、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン)との縮合反応によって生成されることができる。それゆえ、化学式R-CO-NH-RのR-CO-NH部分をもたらすのに用いられることができる脂肪族アミドの例は、脂肪酸について開示された例を参照することで容易に認識され得るであろう。脂肪族アミドの限定されない例として、ペンタンアミド(バレルアミド)、ヘキサンアミド(カプロアミド)、オクタンアミド(カプリルアミド)、ノナアミド(ペラルゴンアミド)、デカンアミド(カプロアミド)、ドデカンアミド(ラウルアミド)、テトラデカンアミド(ミリストアミド)、パルミトアミド、アラキドアミド、ベヘンアミド、ステアルアミド、オレアミド、エルクアミド、レシノルアミドがある。
【0032】
アミノ酸及びその誘導体は、本発明化合物の化学式R-CO-NH-Rの-NH-R部分を調製するのに用いられることができる。用いられることができるアミノ酸の例として、L型及びD型のアミノ酸で、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヘスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンがある。アミノ酸の他の例として、ノルロイシン、ノルバリン、アルファ−アミノオクタノアト、ベータ−メチルフェニルアラニン、アルファ−アミノフェニルアセテート、オルニチン、タウリン、カルニチン、γ−アミノブチル酸(GABA)、L- DOPA(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)、ヒドロキシプロリン、セレノメチオニン、セレノシステインがある。アミノ酸の中心炭素(アルファ炭素、Cα)は、アミン基、カルボン酸基及び側基(R)に結合されている。遊離アミノ酸の一般構造は次の通りである。
【化3】
【0033】
当業者であれば、化学式R-CO-NH-R(Rは、アミノ酸のアルファ炭素、側基及びカルボキシル基から構成されるか又はこれらを含む)の-NH部分を得るのに、アミノ酸のアルファ炭素に結合されたアミン基を用いられることができることは認識し得るであろう。-NH-R部分がアミノ酸に由来する化学式R-CO-NH-Rを有する化合物の例として、4-メチル-2- (オクタノイルアミノ) ペンタン酸がある。
【化4】
【0034】
この例において、-NH-R部分は、ロイシンから得られることができる。また、当業者であれば、化学式R-CO-NH-R(Rは、アミノ酸のアルファ炭素、カルボキシル基、アミノ基及び側基の残部から構成されるか又はこれらを含む)の-NH部分を得るのに、幾つかのアミノ酸側基(例えば、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒスチジン、プロリン、トリプトファン)に存在するアミン基を用いられることができることも認識し得るであろう。
【0035】
アミノ酸誘導体には、塩誘導体及びアミン基又はアルファ炭素に結合されたカルボキシル基がない誘導体が含まれる。その他の例として、それらの側基が、エステル化又はアミド化等によって改質されたアミノ酸がある。-NH-R部分がアミノ酸アナログに由来する化学式R-CO-NH-Rを有する化合物の例として、N-イソペンチルオクタンアミドがある。
【化5】
この例において、-NH-R部分は、カルボキシル(COOH)基がないか、アルファ炭素に結合されたロイシンから得られることができる。
【0036】
アミノ酸又はアミノ酸誘導体(化学式R-CO-NH-Rの-NH-R部分が由来するか又は類似している)の側基は、正電荷、負電荷、極性、極性非荷電、無極性、疎水性、酸性、塩基性、脂肪族又は中性であってよい。
【0037】
本発明の化合物がどのように製造されるかは当該分野において広く理解されている。例えば、合成法では、脂肪酸(例えば、本明細書に記載したもの)とアミノ酸又はアミノ酸関連化合物との縮合又はリンケージが挙げられる。米国特許出願公報第2008/0200704号は、この種の有機合成の例を開示しており、該公報は引用を以て本願に組み入れられる。また、当業者であれば、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ) ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドの合成に関する以下の手法(実施例)が、どのようにして、発明を実施するための他の化合物の調製に適用されるかを認識し得るであろう。
【0038】
本願明細書でアミノ酸又は他のあらゆる構成部分又は基に由来する化学式の部分(segments)について記載するとき、その説明は、前記のアミノ酸、基又は構成部分を用いて実際に作られる生成物と、他の成分から作られる生成物の両方を言うものとする。後者の例では、アミノ酸のような幾つかの化学基との類似性又は同一性に基づいて、最終生成物の中に含まれる基に関して言及するのに有用である。
【0039】
化学式R-CO-NH-Rの-NH-R部分は、R-CO-脂肪酸アシル基に対するキャップ、キャッピング基又はブロッキング基と考えられ得る。この意味で、前記-NH-R部分は、脂肪酸アシル基がアルコール基(R-OH)とのエステル生成を妨げるものである。アシル基はアミド結合されているので、そのカルボキシル炭素は、アルコール等の求電子剤による求核性アタックを受けないか、又は受けることが少ない。
【0040】
本発明で用いられることができる化合物の例は、一部又は全部が親油性(疎水性)であり、分子量は約200, 250, 300, 350, 400, 450, 500, 550又は600より下である。一般的に、化合物の親油性は、その大部分がR基によってもたらされる。一部分が親油性である本発明のこれら化合物は、R基は疎水性であり、R基は、選択的に、中間のコア-CO-NH-と共にいくらかの疎水性を具えている点において極性化されることができる。本発明の化合物及び/又はそのR成分又はR成分は、約100%, 95%, 90%, 85%, 80%, 75%, 70%, 65%, 60%, 55%, 50%, 45%, 40%, 35%又は30%が親油性又は疎水性である。
【0041】
本発明の他の例は、化学式R-CO-NH-Rを有する化合物であって、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸又はN-イソペンチルオクタンアミドと同じ活性(例えば、脂肪分解活性)を有する化合物、又はどちらかの化合物の活性の少なくとも約10%, 20%, 30%, 40%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%又は99%と同じ活性を有する化合物である。
【0042】
本発明の態様は全て「単離された(isolated)」状態にある。例えば、単離された化合物は、全部又は一部が精製されたものである。単離化合物は、より大きな組成物、緩衝系又は試薬ミックスの一部であることもある。また、状況に応じて、単離化合物は、均質となるように精製されることもできる。組成物は、その中に存在する他の全ての種の少なくとも50, 80, 90又は95%(モルベース又は重量ベースにて)である化合物を含むことができる。開示された化合物の混合物は、本発明による方法の実施に用いられることができる。
【0043】
本発明のさらなる態様は、開示された化合物を、例えば治療剤として配合物(formulations)に使用する方法にも向けられる。これらの方法は、単一化合物の使用又は複数化合物(すなわち混合物)の使用を含むことができる。それゆえ、本発明の幾つかの態様は、開示された化合物を含む薬剤及びそのような薬剤を製造する方法に向けられる。
【0044】
また、本発明の組成物は、皮膚の上、中又は下に配置される装置の中に配備されることもできる。そのような装置は、受動的又は能動的な放出(release)機構の何れかの機構により、物質を、皮膚又は毛包に接触させることができる装置であり、例えば、経皮パッチ、インプラント及びインジェクション(例えばメソセラピー)がある。物質は、適当な媒体の中に有効濃度で入れられて、例えば、毎日1又は2回のような定期的間隔で、表皮に局所的に適用されることができる。他の方法として、皮膚へ1又は複数回インジェクションすることにより、本発明のペプチドを皮膚又はその他のあらゆる組織に投与することもできる。
【0045】
開示された方法において、化合物を送達するのに用いられる組成物の態様は、例えば、エアロゾル、乳剤、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、粉末、フォーム又は薬学的に許容される配合物である。さらにまた、化合物は、脱イオン水/蒸留水、PBS又は標準の医療用食塩水等の物質を用いて送達されることもできる。一般的に、薬学的に許容され得る前記物質には、人間の皮膚又は粘膜面への使用に適したあらゆるキャリアが含まれる。そのような薬学的に許容され得るキャリアとして、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、シリカ、アルミナ、スターチ、等価キャリア及び希釈剤が挙げられる。前記物質は、所望により、化粧用美観を有することもできるし、及び/又は、本発明のペプチドの治療作用の補助剤として作用することができるレチノイド又は他のペプチド等の他の製剤を含むこともできる。前記物質には、感染を防ぐために、抗生物質を加えることもできるし、これによって最大の治癒効果を得ることが可能になる。治療用及び/又は化粧用のペプチドは、本発明の化合物と共に用いられることができる。組成物中の化合物の濃度は、約0.1 mg/ml〜約50 mg/ml、又は約0.1 mg/ml〜約100 mg/mlであってよい。しかしながら、用いられる最終濃度は、標的組織、本発明化合物の生物活性及び組成物の吸収向上のためのアジュバント又は技術の使用に応じて、これらの範囲外に変動することもある。それらは、当該分野の通常の技術内での決定事項である。例えば、本発明の実施に用いられる化合物の濃度は、約0.1, 1, 2, 5, 10, 15, 20, 25, 50, 75, 100, 200, 500又は1000 mg/mlであってよい。
【0046】
本発明の化合物及び関連する組成物の投与は、全ての哺乳動物(例えば、豚、牛、馬、羊、山羊、マウス、ラット、猫、犬、フェレット、霊長類)を含む人間及び動物に対して行われることができる。投与は、典型的及び/又は実験的材料(移植組織片、組織培養生成物、酸素及びドレッシング等)と共に行われることができる。一般的に、組成物は、局所的、経口、経皮、皮下、筋肉内、全身的に行われることができ、その他にも当該分野で本発明化合物を標的組織へ送達するのに有用であることが知られているあらゆる方法によって行われることができる。組成物はまた、インビトロ即ち生体外で、例えば細胞又は培養で増殖する患者移植片のどちらかへ施されることができる。
【0047】
本発明の化合物は、サイズが小さいために、化合物自体が皮膚の中を通って浸透できると考えられる。しかしながら、移動を促進するために、幾つかの技術を用いられることができる。例えば、親油性(非極性)側基を化合物に加えられることもできるし、親油性賦形剤を用いて皮膚の中へ送達されるようにして、化合物の角質層への接近可能性を高めてさらに下の表皮層に移動できるようにすることもできる。このように親油性を改変することは、プロドラッグ効果を有すると考えられる。浸透性エンハンサー(既知の溶媒及び界面活性剤等)を賦形剤の中で用いることにより、化合物の吸収を向上させることができる。化合物の標的組織/損傷部への接近可能性を高めるのに有用である特別な技術として、注射法、イオントフォレシス、電気泳動及び超音波がある。これらの処理は様々な効果(例えば、キャビテーション、混合、温度上昇)をもたらし、皮膚又はその他標的組織への化合物の浸透を高めることができる。
【0048】
スキンケア調製物の中に含有される成分は当該分野で広く知られている。本発明の組成物は、生物活性化合物成分の他に、ナイアシン、フィタントリオール、ファルネソール、ビサボロール、サリチル酸等のような他の活性剤を含有することができる。追加の活性剤の中には、生物活性化合物成分と相乗効果を発揮したり、組成物の有効期間を拡大するものもある。
【0049】
この明細書に記載された化合物を含む組成物の中に、脂肪分解剤を含めることができる。脂肪分解剤の例として、カルニチン, レスベラトロル, イソプロテレノール, アミノフィリン, テオフィリン, カフェイン, キサンチン誘導体, テオブロミン, ホルスコリン, ジブチル環状AMP, 環状AMPホスホジエステラーゼ阻害剤、エピネフィリン、カテコールアミン, ナイアシンアミド及びペントキシフィリンがある。本発明の組成物はまた、スリミング剤として作用することが知られている幾つかの植物/野菜抽出物を含むことができる。例えば、米国特許第4,795,638(引用を以てその全体が本願に組み込まれるものとする)には、スリミング作用を有する油溶性植物抽出物が含まれる化粧用熱スリミング組成物が開示されている。これら油溶性植物抽出物の代表例は野菜抽出物であり、例えば、ツタ(Hedera helix), アルニカ(Arnica montana), ローズマリー(RosmaR1nus officinalis N), マリーゴールド(Calendula officinalis), セージ(Salvia officinalis N), 朝鮮人参(Panax ginseng), セントジョーンズワート(HypeR1cum perforatum), ナギイカダ(Ruscus aculeatus), シモツケ(Filipendula ulmaR1a L)及びオルトシフォン(Ortosifon stamincus Benth)がある。
【0050】
本発明の実施に含まれる脂肪分解剤は、脂質細胞(すなわち、脂肪細胞)又は他の細胞内の脂質貯蔵の分解を誘導する製剤、又は細胞外(すなわち、脂肪貯蔵細胞に含まれていない)の脂質の分解を誘導する製剤であってよい。本発明の化合物を他の脂肪分解剤と共に用いたときのトータルとしての脂肪分解活性は、互いに別個に用いられたときの夫々の脂肪分解活性よりも大きく、相乗作用がある。脂質分解は、トリ-、ジ-及び/又はモノ-グリセリドのグリセロール及び遊離脂肪酸への代謝又は分解のことを言うこともできる。また、脂質分解は、トリグリセリドからジ-及び/又はモノ-グリセリド及び遊離脂肪酸への分解を包含することができる。
【0051】
皮膚へのスリミング効果を示す製剤は、脂肪分解活性を有するものも有しないものも、本発明の実施に含まれることができる。そのような製剤の例として、脂質生成を阻害するものがあり、これによって脂肪沈着が阻止される。
【0052】
組成物が動物又は人間の皮膚と接触される場合、角質組織への適用に適した追加の成分(すなわち、安定性、低毒性、低アレルギー性)が選択されるべきである。CTFA化粧品成分ハンドブック(1992年、第2版)には、スキンケア産業で一般的に使用され、本発明の組成物の使用に適した様々な化粧用及び薬学的成分が記載されており、このハンドブックは、引用を以て本願に組み込まれるものとする。本発明は、これら成分の例として、研磨剤、吸収剤、香料、顔料、色素剤/着色剤、エッセンシャルオイル、スキンセンセート、収斂剤等の美的向上成分(例えば、丁子油、メントール、樟脳、ユーカリ油、ユージノール、楽酸メンチル、ハマメリス水(witch hazel distillate))、にきび抑制剤(例えば、レゾルシノール、硫黄、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、亜鉛)、凝固防止剤、泡止め剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピル、ブチルカルバメート)、抗酸化剤、結合剤、生物活性剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加剤、変性剤、外部鎮痛剤、ポリマー(例えば、エイコセンとビニルピロリドンのコポリマー)、乳白剤、pH調節剤、推進剤(propellants)、還元剤、金属イオン封鎖剤、皮膚脱色及び美白剤(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビルグルコサミン)、皮膚調整剤(例えば、保湿剤、混合型及び閉塞型を含む)、皮膚鎮静及び/又は治癒剤(例えば、パンテノール及び誘導体(例えば、エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸及びその誘導体、アラントイン、グリシルリジン酸ジカリウム)、増粘剤、粒子状物質、構造化剤(structuring agent)及びビタミンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら製剤の多くは米国特許第6,492,326号に詳細に記載されており、該米国特許は、引用を以てその全体、特に種々成分に関する記載が本願に組み込まれるものとする。
【0053】
本発明の組成物は、金属酸化物等の粒子状物質を含むことができる。粒子は、コーティングされていてもされていなくてもよく、荷電されていてもされていなくてもよい。本発明を調製するのに有用な粒子状物質の限定されない例として、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄、マイカ、硫酸バリウム及びTi0で処理されたマイカ、シリカ、ナイロン、ポリエチレン、タルク、スチレン、ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸コポリマー、絹雲母、酸化アルミニウム、シリコーン樹脂、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酢酸セルロース、二酸化チタン、ポリメチルメタクリレート及びその混合物がある。また、Ti0, ZnO(酸化亜鉛)又はZr0等の無機粒子状物質は、多くのソースから商業的に入手可能である。組成物の中に存在し得る粒子状物質の量は、重量%で、約0.01%〜2%、又は約0.05%〜1.5%、又は約0.1%〜1%である。
【0054】
本発明の組成物は、保湿剤、モイスチャー又は皮膚コンディショナーから選択される調整剤を含むことができる。様々なこれら材料を用いられることができ、各々は、重量%で、組成物の約0.01%〜20%、又は0.1%〜10%、又は約0.5%〜7%存在することができる。これら材料の例として、グアニジン、尿素、グリコール酸及びグリコール酸塩(例えば、アンモニウム及び第4アルキルアンモニウム)、サリチル酸、乳酸及び乳酸塩(例えば、アンモニウム及び第4アルキルアンモニウム)、種々の形態のアロエ(例えば、アロエゲル)、ポリヒドロキシアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、グリセロール、グリセリン、ヘキサントリオール、ブタントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコール等)、ポリエチレングリコール、砂糖(例えば、メリビオース)及びスターチ、砂糖及びスターチ誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース、フルクトース、グルコサミン)、ヒアルロン酸、ラクトアミドモノエタノールアミン、アセタミドモノエタノールアミン、パンテノール、アラントイン、ワセリン及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の組成物は、水中油型乳剤の調製に用いられることができる構造化剤を含むことあができる。いかなる理論にも拘束されるものでないが、構造化剤は、組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を組成物に付与するのに補助的役割を果たすものと考えられている。例えば、構造化剤は、液晶ゲルネットワーク構造の形成を補助する作用を有する。構造化剤は、乳化剤又は表面活性剤として作用することもできる。本発明は、1又は複数種の構造化剤を、重量%で、組成物の約0.1%〜20%、又は約0.1%〜10%、又は約0.5%〜9%を含むことができる。
【0056】
本発明の中に組み込まれることができる構造化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、平均約1〜約5の酸化エチレンユニットを有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均約1〜約5の酸化エチレンユニットを有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物から選択される。本発明で用いれることができる他の構造化剤は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、平均約2の酸化エチレンユニット(ステアレス-2)を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均約2の酸化エチレンユニットを有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物から選択される。
【0057】
方法
【0058】
本発明は、この明細書に記載された化合物を皮膚の治療に用いる方法を対象とする。そのような治療は、例えば、皮膚の表皮、真皮又は皮下層に向けられることができる。そのような治療の目的は、皮下脂肪の量を低減すること、又は皮下脂肪の蓄積を防止することにある。皮膚の治療の例は、正常な皮下組織に比べて異常な脂肪が分布した皮下層のある皮膚に化合物を投与することである。皮膚の治療の他の例は、正常な皮下組織に比べて異常な脂肪が分布し易い皮下層のある皮膚に化合物を投与することである。セルライト(非脂肪向性浮腫、皮膚組織層の変形、皮層が突出した状態、ジノイドリポジストロフィーとも称される)は、これらの方法によって治療又は予防されることができる皮膚状態である。本発明が対象とするセルライトが形成され易い皮膚領域は、例えば、大腿部、臀部、骨盤部、下肢及び腹部である。いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の化合物は、皮膚における異常な脂肪の沈積/蓄積を治療又は予防するもので、(i)脂肪細胞、特に皮下組織の脂肪細胞における脂質分解を刺激すること、及び/又は(ii)皮下組織における脂肪細胞を減少させるか又は生成を予防することにより行なう。
【0059】
本発明の方法はまた、皮膚の異常な脂肪沈積について、セルライト以外の他の状態の治療又は予防を対象とすることができる。例えば、化合物は、脂肪性浮腫(有痛性脂肪症候群としても知られている)の治療又は予防に用いられることができる。本発明はまた、脂肪腫又は他の脂肪増殖を治療又は予防を対象とすることができる。本発明はまた、局部的過剰体重の治療又は予防を対象とすることができる。本発明はまた、脂質生成又は脂肪生成の阻止又は低減(抗脂質生成又は抗脂肪生成の促進)を対象とすることができる。本発明の抗脂肪生成は、脂肪細胞の細胞質における脂質の蓄積を低減できる能力である。細胞レベルでのこの効果の結果、本発明の抗脂肪生成特性の他の特性として、脂肪組織の増殖又は肥大を低減できる能力がある。これらの他にさらなる特徴として、前脂肪細胞又は線維芽細胞の脂肪細胞への分化を阻止又は低減できる能力がある。この明細書において、「低減(reducing)」、「阻害(inhibiting)」、「阻止(blocking)」又は「予防(preventing)」という語は、化合物の状態又は活性の発生、重度、サイズ、体積又は関連症候について、組成物又は当該化合物を含む化合物を適用しないときの通常の状態と比べて、少なくとも約 7.5%, 10%, 12.5%, 15%, 17.5%, 20%, 22.5%, 25%, 27.5%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 90%又は100%減少させることができることを意味する。
【0060】
本発明の他の態様は、この明細書に記載された化合物を用いて、例えば脂肪細胞、特に皮膚又は皮膚の皮下層における脂肪細胞のような細胞中の脂質分解を刺激することである。そのような方法は、セルライト等の状態を治療又は予防(阻害)するのに有用である。この明細書において、脂肪細胞等の細胞中の脂質分解を刺激すること、誘導すること、上方調節すること、上昇させること、向上させることは、細胞中の脂質分解レベルを脂質分解の基礎レベル(化合物を添加しない安静状態)又は水等の非活性剤によって誘導される脂質分解レベルよりも増大させることを意味する。そのような増大は、少なくとも約 5%, 10%, 15%, 20%, 25%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 60%, 75%, 80%, 90%, 100%, 150%, 200%, 300%, 400%, 500%, 1000%又は10000%である。
【0061】
当業者であれば、治療が最終的に皮膚の皮下層を対象とする場合、配合物は、標的とする皮下領域の上にある皮膚に適用してもよいことは理解し得るであろう。あるいはまた、注射法を用いるメソセラピー等の方法を用いて、皮下層等のような皮膚の内部層の中に治療用又は化粧用化合物を直接適用することもできる。
【0062】
ここに開示した化合物は、脂肪細胞等の細胞によるグリセロールの生成を増大させる。いかなる理論にも拘束されるものでないが、この活性は、化合物の脂肪分解活性に関係し、トリグリセリド(ジ−グリセリド及びモノ−グリセリドも同様)の遊離グリセロール及び遊離脂肪酸への代謝/分解を刺激する。本発明の幾つかの実施態様は、皮膚、特に皮膚の皮下層内の脂肪細胞によるグリセロール生成を、ここに記載された1又は複数の化合物を用いて皮膚を治療することによって増大させるものである。皮膚内でのグリセロール生成の増大は、その保湿及び保護に効果的である。本発明の特徴は、皮膚内に貯蔵された脂肪の脂質分解として起こる皮膚の刺激及び調整に有効である。乾燥皮膚又は敏感皮膚の人や正常な皮膚の調整及び円滑性を維持したい人は、例えば、本発明の効果であるグリセロール生成による恩恵を受けるであろう。
【0063】
開示した方法は、治療用又は化粧用に用いられることは明らかであろう。化粧用の場合、本発明は、正常で健康な皮膚特性、例えば、トーン(tone)、弾力性(elasticity)、水和(hydration)、着色(coloration)、堅さ(firmness)及び滑らかさ(smoothness)を維持する。これらは全て、皮下脂肪沈積の増加によって低下する特性である。
【0064】
ここでの開示は、全体として、本発明が細胞中の脂質分解を促進するものとして記載しているが、本発明は、本質的に脂質生成に抗する作用を有しており、この作用により、脂肪酸がグリセロールにエステル結合して、トリ−、ジ−及びモノ−グリセリドを生成するものである。
【0065】
本発明の実施で標的とされることができる組織は、皮膚及び皮膚の関連粘膜組織である。皮膚の関連粘膜組織は、皮膚と同じように組織化されるあらゆる組織であり、上皮細胞を含み、皮膚と直接連続している。そのような皮膚の例として、口腔、鼻咽頭、耳、肛門及び泌尿生殖器の表面、目の眼瞼結膜がある。本発明の実施で標的とされることができる他の組織として、外胚葉、中胚葉及び内胚葉に由来する組織があり、または、上皮細胞、間葉細胞(例えば、線維芽細胞)、筋肉細胞又は神経細胞(例えば、ニューロン)を含む組織がある。本発明が標的とする他の器官、器官系及び組織として、例えば、循環系(例えば、心臓、血液、血管)、消化器系(例えば、唾液分泌腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、小腸、大腸、直腸)、内分泌系(例えば、視床下部、脳下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎)、外皮系(例えば、皮膚、髪の毛、爪)、リンパ系(例えば、リンパ節、リンパ管)、免疫系(例えば、扁桃腺、咽頭扁桃腺、胸腺、脾臓)、筋肉系(例えば、心筋、平滑筋、骨格筋)、神経系(例えば、脳、脊髄、末梢神経、神経)、生殖器系(例えば、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、睾丸、輸精管、精嚢、前立腺、陰茎)、呼吸器系(例えば、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、横隔膜)、骨格系(例えば、骨、軟骨、靱帯、腱)、及び排泄系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道)がある。本発明の幾つかの態様は、化合物を、前記組織(例えば、皮膚)又は細胞(例えば、脂肪細胞、ケラチン生成細胞、上皮細胞、皮膚細胞、線維芽細胞)の1つに対して、毒性を誘導することなく適用することである。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明の幾つかの態様を示すために提供される。
【0067】
<実施例1:4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸(HB2031)の合成>
【0068】
以下に記載のプロセスにより、ロイシンをオクタン酸と反応させて、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸を生成した(図2A参照)。Fmoc-ロイシン-(Fmoc-2-アミノ-4-メチルペンタン酸)-Wang樹脂を、25%ピペリジンを含むジメチルホルムアルデヒド(DMF)の中で室温にて20分間撹拌した。濾過してDMFで6回洗浄した後、カイザー試験で陽性を示した(結合可能状態)。オクタン酸の結合は、3モル当量のロイシン樹脂アミノ基で行ない、その後、等モル当量をベンゾイル-l-オキシ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBop)及びDMFのヒドロキシベンゾトリアゾールヒドレート(HOBt)のオクタン酸に加えた。1.3当量のジイソプロピルチルアミン(DIEA)を、反応中の他の試薬に加える際、室温で2時間撹拌した。濾過し、DMFで3回洗浄し、DCM(ジクロロメタン)で3回洗浄した後、カイザー試験で陰性を示した。これは、反応が完了したことを意味する。
【0069】
乾燥樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA)及び水(149:1)の中に懸濁させて、2時間撹拌した。樹脂を濾過し、TFAで3回洗浄した。濾液を回転蒸発し、TFAを除去した。生成物をジエチルエーテル(EtO)の中で溶解し、5%酢酸水、水、飽和重炭酸ナトリウム水及び水で3回抽出した。EtO相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。硫酸ナトリウムはEtOで3回洗浄した。濾過液は回転蒸発させて固体にした。
【0070】
<実施例2: N-イソペンチルオクタンアミド(HB2032)の合成>
【0071】
以下に記載のプロセスにより、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸のアナログであるN-イソペンチルオクタンアミドを合成した(図2B参照)。オクタン酸をDCM(ジクロロメタン)中で等モル量のN-イソペンチルアミンと混合し、5分間撹拌した。最初の2成分のモル量と等しいベンゾイル-l-オキシ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBop)及びヒドロキシベンゾトリアゾールヒドレート(HOBt)を加えた後、1.3当量のジイソプロピルチルアミン(DIEA)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。5%酢酸水、水、飽和重炭酸ナトリウム水及び水で3回抽出した。DCM相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。硫酸ナトリウムはDCMで3回洗浄した。濾過液は回転蒸発させてオイルにした。
【0072】
<実施例3: 4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドの脂質分解及び脂肪生成に及ぼす効果>
【0073】
脂質分解:
【0074】
図3に示されるように、遊離脂肪酸及びグリセロールは両方とも脂質分解の生成物であるので、遊離脂肪酸の放出量は、脂肪細胞における脂肪分解活性度と直接相関関係がある。それゆえ、脂肪酸の放出程度は、グリセロール放出の相対的レベルを評価するのに用いられることができる。以下の方法を用いて、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドが脂肪細胞内の脂質分解に及ぼす効果を求めた。
【0075】
脂肪細胞3T3-L1について、分化した脂肪細胞における脂質分解の誘導を、Bio Vision(マウンティンビュー、カリフォルニア)製造の脂肪酸アッセイキット(遊離脂肪酸定量化キット、カタログNo. K612-100)を用いて求めた。遊離脂肪酸の放出は、グリセロールのレベル上昇と相関関係がある。脂肪細胞は、これらアッセイのために次のとおり調製した。3T3-L1マウスの前脂肪細胞(CL-173(登録商標))を、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。細胞は、完全培地(ATCC調製、10%子ウシ血清が添加されたダルベッコ変法イーグル培地)の中で培養され、100%コンフルーエンスに達することができた。分化又は脂肪生成の誘導は、完全培地の中で行われた。0日目、細胞は、誘導剤(イソブチルメチルキサンチン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ)100 mg/ml、インスリン5 mg/ml及びデキサメタゾン2mg/ml)が含まれる完全培地で処理した。3日目、細胞は、インスリン5 mg/mlを含む完全培地に変化し、2〜3日間培養した。次に、細胞は3〜6日間完全培地の中で維持し、細胞の大部分は、観察可能な細胞内脂質液滴(intracellular lipid droplets)に成長した(developed)。
【0076】
4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドの脂質分解に及ぼす影響を分析するために、細胞(上記のとおり調製された脂肪細胞)を、これら化合物のうちの何れかの化合物100 mg/mlで処理した。もう1つの方法として、細胞を、脂質分解誘導剤として知られている幾つかの物質(例えば、レスベラトロル、ソプロテレノール、アミノフィリン、テオフィリン)(100 mg/ml)で一晩処理した。培養物の各々から採取した上清について、Bio Vision製の遊離脂肪酸アッセイキットを使用し、製造メーカーのインストラクションに基づき、相対的グリセロール放出量の推定値を求めた。
【0077】
図4は、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸(HB2031)及びN-イソペンチルオクタンアミド(HB2032)による脂肪細胞(遊離脂肪酸の生成を測定することによって求められる)中の遊離脂肪酸の生成の誘導が、試験した他の全ての化合物(イソプロテレノール, アミノフィリン及びテオフィリン)よりも大きかったことを示している。上記アッセイをイソプロテレノール、HB2031及びHB2032の3種について行なったとき、HB2031とHB2032は、イソプロテレノールよりも活性の程度が有意に大きいことを示した(図5参照)。HB2031とHB2032は、脂質分解をシミュレートするのに用いられた濃度では、脂肪細胞3T3-L1に対して細胞毒性はなかった(データは示されていない)。
【0078】
脂肪生成:
【0079】
脂肪細胞中における細胞内脂質滴の生成は、脂肪生成の特徴である。それゆえ、脂肪生成のモニタリングを、Cayman (アナーバー、ミシガン)製の脂肪生成アッセイキットを使用して、 製造メーカーのインストラクションに基づいて細胞中の脂質滴を染色することにより行なった。このアッセイは、細胞脂質を、オイルレッド0染色で染色する。
【0080】
4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドの脂肪生成に及ぼす影響を分析するために、これら化合物を、脂肪生成が誘導された(0日)(上記プロトコル参照)培養細胞に個々に加え、全分化プロセスが行われる間、培養物の中で維持した。脂肪細胞生成を調べるこのアッセイにおける陽性対照は、試験化合物を加えないで前脂肪細胞から脂肪細胞への分化が誘導された培養細胞である(図6B参照)。誘導開始から7日後、陽性対照の細胞の50-70%が、完全に分化され、解剖顕微鏡により、多くの細胞質脂質液滴の蓄積が観察された。陰性対照は、脂肪生成誘導剤を加えないで完全培地の中で培養した培養細胞である(図6A参照)。
【0081】
N-イソペンチルオクタンアミド(HB2032)は、肥大細胞の生成及び細胞内脂質滴の蓄積を抑制することにより、細胞の脂肪細胞への分化を阻害した。これらの効果は、脂肪細胞誘導の陽性対照(図6B)と比べて、濃度依存性であることが観察された(図6C、D、E)。低濃度のHB2032(例えば、図6C参照)で処理した細胞については、多くの細胞が分化していた。しかしながら、細胞内脂質生成の強さは有意に低下した。これは、オイルレッド0染色の低下(reduced)で示される。
【0082】
<実施例4: 4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸及びN-イソペンチルオクタンアミドの細胞毒性レベルの測定>
【0083】
EpiDerm(登録商標)MTTアッセイ(MatTek社、アシュランド、マサチューセッツ)を用いて、4-メチル-2-(オクタノイルアミノ)ペンタン酸(HB2031)及びN-イソペンチルオクタンアミド (HB2032)が、皮膚組織に対して何らかの毒性を示すかどうかを調べた。EpiDerm(登録商標)皮膚モデルは、実際の皮膚に類似した基底層、有棘層、顆粒層及び角質層から構成され、一様で高度に再生可能なインビボ様形態及び成長特性を示す。図7に示されるように、グリセリンビークルに比べて、HB2031又はHB2032で処理したものに細胞活性(OD570nmで求められる)に違いはなかった。lmg/mlで24時間処理したとき、 化合物は両方とも、同じ皮膚組織に対する毒性は示さなかった(データは示されていない)。
【0084】
この明細書及び特許請求の範囲に記載された組成物又は方法は全て、本発明の開示に基づいて、過度の実験を行なうことなくなし得るものである。本発明の組成物及び方法は、幾つかの態様を参照して記載されているが、当該分野の専門家であれば、組成物及び/又は方法において、また、当該方法のステップ及びステップの順序において、発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形をなし得るであろう。例えば、化学的及び生理学的の両方に関連する製剤について、この明細書に記載した製剤に代えて用いても、同じ結果又は同様な結果を達成することができるであろう。当該分野の専門家にとって自明なこれらの置換及び変形は本発明の範囲内に含まれるべきである。
【0085】
この明細書の中で言及した全ての特許及び刊行物は、引用を以てその全体が本願に組み込まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7