特許第6043340号(P6043340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6043340多孔質材料、ハニカム構造体及び多孔質材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043340
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】多孔質材料、ハニカム構造体及び多孔質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20161206BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 35/565 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 35/584 20060101ALI20161206BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C04B38/00 303Z
   C04B38/06 J
   C04B35/56 101A
   C04B35/58 102A
   B01J35/04 301P
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-507989(P2014-507989)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2013059143
(87)【国際公開番号】WO2013146953
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73702(P2012-73702)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】泉 有仁枝
(72)【発明者】
【氏名】小林 義政
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−176185(JP,A)
【文献】 特許第4111439(JP,B2)
【文献】 特表2010−502546(JP,A)
【文献】 特開2011−213497(JP,A)
【文献】 特開2011−189241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00−38/10
B01J 35/04
C04B 35/565
C04B 35/584
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材と、結合材であるコージェライト中に強化粒子であるムライト粒子が分散されたものであり細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する複合結合材と、を含有し、
金属珪素の含有量が15質量%未満であり、
前記複合結合材の質量に対する前記ムライト粒子の含有量が31.8質量%以下である多孔質材料。
【請求項2】
前記骨材、前記複合結合材及び前記金属珪素の合計質量に対する、前記複合結合材の含有量の下限値が12質量%であり、前記複合結合材の含有量の上限値が50質量%である請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
前記骨材、前記複合結合材及び前記金属珪素の合計質量に対する、前記ムライト粒子の含有量の下限値が0.5質量%であり、前記ムライト粒子の含有量の上限値が15質量%である請求項1又は2に記載の多孔質材料。
【請求項4】
強化粒子である前記ムライト粒子の長径の下限値が0.5μmであり、前記ムライト粒子の長径の上限値が35μmである請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項5】
強化粒子である前記ムライト粒子のアスペクト比の下限値が1.5であり、前記ムライト粒子のアスペクト比の上限値が4.7である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項6】
前記骨材が、炭化珪素(SiC)粒子及び窒化珪素(Si)粒子の中の少なくとも一方を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項7】
気孔率の下限値が40%であり、気孔率の上限値が90%である請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項8】
細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項9】
曲げ強度が6.5MPa以上であり、曲げ強度/ヤング率比が1.4×10−3以上である請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項10】
熱膨張係数が4.2×10−6/K以下である請求項1〜9のいずれかに記載の多孔質材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質材料により構成され、
一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する、隔壁を備えたハニカム構造体。
【請求項12】
前記一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備える請求項11に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
骨材原料、複合結合材生成用原料、造孔材及びバインダを含有する成形原料を押出成形して成形体を作製する成形工程と、
前記成形体を不活性雰囲気にて1400〜1500℃で焼成して多孔質材料を作製する焼成工程とを有し、
前記複合結合材生成用原料が、34.9質量%超、71.8質量%未満の酸化アルミニウム成分、28.2質量%超、52.0質量%未満の二酸化珪素成分、及び5.0質量%超、13.8質量%未満の酸化マグネシウム成分を含有し、
前記多孔質材料中の金属珪素含有量が15質量%未満であり、
前記複合結合材生成用原料中に、金属珪素が含有されないか、又は得られる前記多孔質材料中の金属珪素含有量が15質量%未満となるような量の金属珪素が含有される、多孔質材料の製造方法。
【請求項14】
前記複合結合材生成用原料に含有される前記酸化アルミニウム成分が酸化アルミニウムであり、前記酸化アルミニウムの平均粒子径が、下限値2.5μm、上限値15.0μmである請求項13に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項15】
前記複合結合材生成用原料に含有される前記酸化アルミニウムが、α−アルミナである請求項14に記載の多孔質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材料、ハニカム構造体及び多孔質材料の製造方法に関する。更に詳しくは、耐熱衝撃性が高い多孔質材料及びハニカム構造体、並びにそのような多孔質材料を製造することができる多孔質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素粒子を酸化物相等で結合した多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れるため、触媒担体用材料、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)用材料等として利用されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4111439号公報
【特許文献2】特許第4227347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、触媒担体やDPFは、サイズが大型化し、更にセル構造が複雑化してきている。また、触媒担体やDPFの使用環境が過酷になってきている。そのため、これらの用途に用いられる多孔質材料は、さらなる耐熱衝撃性の向上が求められている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、耐熱衝撃性が高い多孔質材料及びハニカム構造体、並びにそのような本発明の多孔質材料を製造することができる多孔質材料の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の多孔質材料、ハニカム構造体及び多孔質材料の製造方法を提供する。
【0007】
[1] 骨材と、結合材であるコージェライト中に強化粒子であるムライト粒子が分散されたものであり細孔を形成した状態で前記骨材同士を結合する複合結合材と、を含有し、金属珪素の含有量が15質量%未満であり、前記複合結合材の質量に対する前記ムライト粒子の含有量が31.8質量%以下である多孔質材料。
【0008】
[2] 前記骨材、前記複合結合材及び前記金属珪素の合計質量に対する、前記複合結合材の含有量の下限値が12質量%であり、前記複合結合材の含有量の上限値が50質量%である[1]に記載の多孔質材料。
【0009】
[3] 前記骨材、前記複合結合材及び前記金属珪素の合計質量に対する、前記ムライト粒子の含有量の下限値が0.5質量%であり、前記ムライト粒子の含有量の上限値が15質量%である[1]又は[2]に記載の多孔質材料。
【0010】
[4] 強化粒子である前記ムライト粒子の長径の下限値が0.5μmであり、前記ムライト粒子の長径の上限値が35μmである[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0011】
[5] 強化粒子である前記ムライト粒子のアスペクト比の下限値が1.5であり、前記ムライト粒子のアスペクト比の上限値が4.7である[1]〜[4]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0012】
[6] 前記骨材が、炭化珪素(SiC)粒子及び窒化珪素(Si)粒子の中の少なくとも一方を含有するものである[1]〜[5]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0013】
[7] 気孔率の下限値が40%であり、気孔率の上限値が90%である[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0014】
[8] 細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0015】
[9] 曲げ強度が6.5MPa以上であり、曲げ強度/ヤング率比が1.4×10−3以上である[1]〜[8]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0016】
[10] 熱膨張係数が4.2×10−6/K以下である[1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0017】
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の多孔質材料により構成され、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する、隔壁を備えたハニカム構造体。
【0018】
[12] 前記一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備える[11]に記載のハニカム構造体。
【0019】
[13] 骨材原料、複合結合材生成用原料、造孔材及びバインダを含有する成形原料を押出成形して成形体を作製する成形工程と、前記成形体を不活性雰囲気にて1400〜1500℃で焼成して多孔質材料を作製する焼成工程とを有し、前記複合結合材生成用原料が、34.9質量%超、71.8質量%未満の酸化アルミニウム成分、28.2質量%超、52.0質量%未満の二酸化珪素成分、及び5.0質量%超、13.8質量%未満の酸化マグネシウム成分を含有し、前記多孔質材料中の金属珪素含有量が15質量%未満であり、前記複合結合材生成用原料中に、金属珪素が含有されないか、又は得られる前記多孔質材料中の金属珪素含有量が15質量%未満となるような量の金属珪素が含有される、多孔質材料の製造方法。
【0020】
[14] 前記複合結合材生成用原料に含有される前記酸化アルミニウム成分が酸化アルミニウムであり、前記酸化アルミニウムの平均粒子径が、下限値2.5μm、上限値15.0μmである[13]に記載の多孔質材料の製造方法。
【0021】
[15] 前記複合結合材生成用原料に含有される前記酸化アルミニウムが、α−アルミナである[14]に記載の多孔質材料の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多孔質材料は、従来の多孔質材料に比べて、耐熱衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の多孔質材料の一の実施形態の断面を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0025】
(1)多孔質材料:
本発明の多孔質材料の一の実施形態は、図1に示されるように、骨材1と、「結合材3であるコージェライト中に強化粒子2であるムライト粒子が分散されたものであり細孔4を形成した状態で上記骨材1同士を結合する複合結合材5」と、を含有するものである。そして、本実施形態の多孔質材料は、金属珪素の含有量が15質量%未満である。また、金属珪素の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)−AES(発光分光分析)法で測定したSi、C、OからSiCとSiO量を同定し、残りのSi量の値である。図1は、本発明の多孔質材料の一の実施形態(多孔質材料100)の断面を拡大して示す模式図である。
【0026】
本発明の多孔質材料は、上記のような構成であるため、強度が高く、「強度/ヤング率比」の値が高いものである。そのため、本発明の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れたものである。尚、「強度/ヤング率比」における「強度」は、曲げ強度のことである。本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子が強化粒子として機能している。例えば、多孔質材料に亀裂が生じたときに、ムライト粒子は、当該亀裂の進行を妨げることができる。コージェライトには、ムライト粒子以外に、スピネル粒子やフォルステライト粒子が含有され得る。しかし、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、ムライト粒子に比べて強度が低いため、強化粒子として機能し得ないものである。これに対し、ムライト粒子は、スピネル粒子やフォルステライト粒子に比べて、強度が高いため、多孔質材料に生じた亀裂の進行を妨げることができ、強化粒子として機能するものである。また、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、熱膨張係数が高いため、結合材中に存在すると多孔質材料全体の熱膨張係数が高くなり、多孔質材料の耐熱衝撃性が低下する。そのため、スピネル粒子やフォルステライト粒子は、強化粒子としては適していない。
【0027】
本発明の多孔質材料は、上記のように、骨材間に細孔が形成されるように、骨材同士が複合結合材で結合されている。また、複合結合材は、結合材であるコージェライト中に、強化粒子であるムライト粒子が分散されたものである。また、骨材の一部が結合材中に分散するような形態でも良い。また、複合結合材は、結晶質成分が50質量%超であることが好ましい。つまり、複合結合材は、非晶質成分が50質量%未満であることが好ましい。複合結合材中の非晶質成分は、X線回折データを解析して定量することができる。具体的には、「六方晶コージェライトの(100)面の回折ピーク高さに対し、2θが20°〜30°の範囲におけるバックグラウンドの最大高さが25%である」ときの非晶質量を、複合結合材全体に対し50質量%とする。そして、「六方晶コージェライトの(100)面の回折ピーク高さに対し、2θが20°〜30°の範囲におけるバックグラウンドの最大高さが2.8%である」ときの非晶質量を、複合結合材全体に対し0質量%とする。そして、サンプルの測定結果を上記関係(検量線)に当てはめて複合結合材中の非晶質成分を求める。測定は、多孔質材料を粉砕した粉末を測定試料とし、回転対極型X線回折装置(理学電気社製、RINT)を用いて行うことができる。
【0028】
本発明の多孔質材料において、骨材は、炭化珪素(SiC)粒子及び窒化珪素(Si)粒子の中の少なくとも一方を含有するものであることが好ましい。また、骨材は、炭化珪素(SiC)粒子又は窒化珪素(Si)粒子であることが好ましく、炭化珪素(SiC)粒子であることが更に好ましい。以下、骨材が炭化珪素粒子である場合の、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体の実施形態について説明するが、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体は、これに限定されるものではない。また、本発明の多孔質材料及びハニカム構造体は、骨材が窒化珪素粒子の場合も、骨材が炭化珪素粒子の場合と同様の条件であることが好ましい。
【0029】
本発明の多孔質材料は、金属珪素の含有量が15質量%未満であり、10質量%以下が好ましく、9質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が特に好ましい。金属珪素の含有量は、0質量%が最も好ましい。金属珪素の含有量が15質量%未満であることより、比熱容量が高く維持されるため、耐熱衝撃性が向上する。金属珪素の含有量が15質量%以上であると、比熱容量が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがあるため好ましくない。
【0030】
本発明の多孔質材料は、気孔率の下限値が40%であることが好ましく、50%であることが更に好ましい。また、気孔率の上限値は、90%であることが好ましく、70%であることが更に好ましい。気孔率が40%未満であると、圧力損失が大きくなることがある。特に、気孔率が50%以上であると、DPF等に使用するのに好ましい、低い圧力損失となる。また、気孔率が90%を超えると、強度が低くなることがある。特に、気孔率が70%以下であると、DPF等に使用するのに好ましい、高い強度となる。本明細書において、気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm/g)とアルキメデス法により測定した見掛け密度(単位:g/cm)から、算出した値である。気孔率を算出する際には、「気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積}×100」という式を用いる。なお、気孔率は、例えば、多孔質材料を製造する際に用いる造孔材の量や、焼結助剤量、焼成雰囲気などにより調整することができる。また、気孔率は、骨材と、複合結合材との比率によっても調整することができる。
【0031】
本発明の多孔質材料は、平均細孔径の下限値が10μmであることが好ましく、15μmであることが更に好ましい。また、平均細孔径の上限値は、40μmであることが好ましく、30μmであることが更に好ましい。平均細孔径が10μm未満であると、圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が40μmを超えると、本発明の多孔質材料をDPF等として用いたときに、排ガス中の粒子状物質の一部が捕集されずにDPF等を透過することがある。本明細書において、平均細孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
【0032】
本発明の多孔質材料は、細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下であることが好ましい。細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%を超えると、細孔径10μm未満の細孔は触媒を担持する際に詰まり易いため、圧力損失が増大し易くなることがある。細孔径40μm未満の細孔が細孔全体の10%を超えると、細孔径40μm未満の細孔は粒子状物質が通過し易いため、DPF等のフィルター機能を十分に発揮し難くなることがある。
【0033】
骨材、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、複合結合材の含有量の下限値は12質量%であることが好ましい。また、骨材、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、複合結合材の含有量の上限値は50質量%であることが好ましい。更に、骨材、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、複合結合材の含有量の下限値は、17質量%であることが更に好ましく、20質量%であることが特に好ましい。また、骨材、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、複合結合材の含有量の上限値は、40質量%であることが更に好ましく、35質量%であることが特に好ましい。複合結合材の含有量が12質量%未満であると、曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。複合結合材の含有量が50質量%を超えると、気孔率が小さくなることがある。
【0034】
「複合結合材中に含有され、強化粒子として作用するムライト粒子」の含有量の、骨材、複合結合材及び金属ケイ素の合計質量に対する比率の下限値は、0.5質量%であることが好ましい。また、当該ムライト粒子の含有量の、骨材、複合結合材及び金属ケイ素の合計質量に対する比率の上限値は、15質量%であることが好ましい。そして、上記ムライト粒子の含有量の下限値は、0.9質量%であることが更に好ましい。また、上記ムライト粒子の含有量の上限値は8.0質量%であることが更に好ましく、4.5質量%であることが特に好ましい。「複合結合材中に含有されるムライト粒子」の、骨材、複合結合材及び金属ケイ素の合計質量に対する含有率(以下、「ムライト粒子の含有率」ということがある。)が、0.5質量%未満であると、強度/ヤング率比が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。また、ムライト粒子の含有率が、15質量%を超えると、強度/ヤング率比が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0035】
「ムライト粒子の含有率」は、X線回折分析によって得られた値に基づき求めた値である。具体的には、「RIR(Reference Intensity Ratio)法を用いて、X線回折データを解析して各成分を定量する」簡易定量分析により算出する。X線回折データの解析は、例えば、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行うことが好ましい。X線回折分析に用いるX線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機社製、RINT)を挙げることができる。
【0036】
本発明の多孔質材料においては、骨材である炭化珪素粒子の平均粒子径の下限値が5μmであることが好ましく、10μmであることが更に好ましい。また、骨材である炭化珪素粒子の平均粒子径の上限値は、100μmであることが好ましく、40μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、焼成収縮量が大きくなり、焼成体の気孔率が40%未満となることがある。また焼成体中の10μm未満の細孔が細孔全体の20%超となることがある。100μmより大きいと、焼成体中の40μmを超える細孔が細孔全体の10%以上となることがある。さらに、ハニカム構造体を成形する場合には、口金の目詰まりの原因となり成形不良を起こすことがある。本発明の多孔質材料においては、骨材である炭化珪素の平均粒子径は、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径より大きい。また、骨材である炭化珪素の平均粒子径は、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径の1.5倍以上であることが好ましい。骨材である炭化珪素の平均粒子径の、強化粒子であるムライト粒子の平均粒子径に対する倍率の上限値は、40倍であることが好ましい。炭化珪素の平均粒子径が、ムライト粒子の平均粒子径の1.5倍より小さいと、結合材との接点が減少するため焼成不良を起こすことがある。そして、それによって曲げ強度が大きく低下し、耐熱衝撃性が劣ることがある。
【0037】
本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子のアスペクト比が1.5以上であることが好ましい。ムライト粒子のアスペクト比の下限値は、1.8であることが更に好ましく、2.1であることが特に好ましい。ムライト粒子のアスペクト比の上限値は、4.7であることが好ましく、4.2であることが更に好ましい。アスペクト比が1.5未満であると、強化粒子として作用する効果が低くなるために曲げ強度が低くなり、更に「曲げ強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。尚、アスペクト比が4.7を超える場合、ムライト粒子の形状は、板状又は繊維状である。ムライト粒子のアスペクト比は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定した値である。具体的には、樹脂にて包含した本発明の多孔質材料をダイヤモンドスラリー等を用いて鏡面研磨したものを観察試料とし、この断面研磨面を3000倍の倍率で観察し、微構造写真を得る。得られた微構造写真中の全てのムライト粒子の長径と短径を測定し、その比率「長径/短径」を算出し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライトのアスペクト比とする。
【0038】
本発明の多孔質材料においては、ムライト粒子の長径の下限値が0.5μmであることが好ましく、1.8μmであることが更に好ましく、2.0μmであることが特に好ましい。ムライト粒子の長径の上限値は、35μmであることが好ましく、30.1μmであることが更に好ましい。ムライト粒子の長径が0.5μm未満であると、強化粒子として作用しないために曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。ムライト粒子の長径が35μmを超えると、強化粒子ではなく欠陥として作用し曲げ強度が低くなり、更に「強度/ヤング率比」が低くなり、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0039】
本発明の多孔質材料は、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.4×10−3以上であることが好ましい。そして、曲げ強度の下限値が7.0MPaであり、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」の下限値が1.5×10−3であることが更に好ましい。また、曲げ強度の上限値が14.0MPaであり、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」の上限値が5.0×10−3であることが更に好ましい。曲げ強度及び「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」を上記範囲とすることにより、多孔質材料の耐熱衝撃性を向上させることができる。なお、曲げ強度は高いほどよいが、本発明の構成上、50MPa程度が上限となる。本明細書において、曲げ強度は、JIS R1601に準拠した「曲げ試験」により測定した値である。また、本明細書において、ヤング率は、上記「曲げ試験」で得た応力−歪み曲線より算出した値である。
【0040】
本発明の多孔質材料は、40〜800℃の線熱膨張係数が、4.2×10−6/K以下であることが好ましい。そして、40〜800℃の線熱膨張係数の下限値が、2.0×10−6/Kであることが更に好ましく、2.0×10−6/Kであることが特に好ましい。また、40〜800℃の線熱膨張係数の上限値が、3.9×10−6/Kであることが更に好ましい。4.2×10−6/Kより大きいと、耐熱衝撃性が低下することがある。尚、線熱膨張係数は小さいに越したことはないが、本発明の構成上、2.0×10−6/Kが下限となる。本明細書において、熱膨張係数は、JIS R1618に準拠する方法で、測定した値である。具体的には、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の熱膨張係数を測定した値である。
【0041】
本発明の多孔質材料は、ナトリウム(Na)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。また、本発明の多孔質材料は、カリウム(K)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。また、本発明の多孔質材料は、カルシウム(Ca)を、酸化物換算質量で、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満含有してもよい。ナトリウムの酸化物換算質量は、ナトリウムが全てNaOとして存在していると仮定したときの当該NaOの質量である。カリウムの酸化物換算質量は、カリウムが全てKOとして存在していると仮定したときの当該KOの質量である。カルシウムの酸化物換算質量は、カルシウムが全てCaOとして存在していると仮定したときの当該CaOの質量である。ナトリウム、カリウム及びカルシウムのそれぞれの含有量が、多孔質材料全体に対して0.4質量%未満であれば、多孔質材料の特性は、これらの物質を含有することによっては影響を受けない。多孔質材料中の、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)−AES(発光分光分析)法で測定した値である。
【0042】
(2)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体は、上述した本発明の多孔質材料により構成され、「一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル」を区画形成する隔壁、を備えたものである。上記セルは、流体の流路となるものである。また、ハニカム構造体は、最外周に位置する外周壁を有する構造であることが好ましい。隔壁の厚さの下限値は、30μmが好ましく、50μmが更に好ましい。隔壁の厚さの上限値は、1000μmが好ましく、500μmが更に好ましく、350μmが特に好ましい。セル密度の下限値は、10セル/cmが好ましく、20セル/cmが更に好ましく、50セル/cmが特に好ましい。セル密度の上限値は、200セル/cmが好ましく、150セル/cmが更に好ましい。
【0043】
ハニカム構造体の形状としては、特に限定されず、円筒状、底面が多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)の筒状等を挙げることができる。
【0044】
ハニカム構造体のセルの形状は、特に限定されない。例えば、セルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)、円形、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0045】
ハニカム構造体の大きさは、用途に合わせて適宜決定することができる。本発明のハニカム構造体は、本発明の多孔質基材によって構成されているため、耐熱衝撃性に優れるものである。そのため、ハニカム構造体の大きさを大きくすることが可能である。そして、ハニカム構造体の大きさの下限値としては、例えば、10cm程度とすることができる。ハニカム構造体の大きさの上限値としては、例えば、2.0×10cm程度とすることができる。
【0046】
本発明のハニカム構造体は、DPFや触媒担体として用いることができる。また、DPFに触媒を担持することも好ましい態様である。本発明のハニカム構造体をDPF等として使用する場合には、以下のような構造であることが好ましい。すなわち、本発明のハニカム構造体は、一方の端面における所定のセルの開口部及び他方の端面における残余のセルの開口部、に配設された目封止部を備えるものであることが好ましい。両端面において、目封止部を有するセルと目封止部を有さないセルとが交互に配置され、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0047】
(3)多孔質材料(ハニカム構造体)の製造方法:
本発明の多孔質材料の製造方法について、以下に説明する。以下に説明する多孔質材料の製造方法は、多孔質材料によって構成される「ハニカム構造体」を、製造する方法でもある。
【0048】
まず、骨材となる骨材原料と、焼成により複合結合材が生成する複合結合材生成用原料粉末とを混合し、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製する。骨材原料は、炭化珪素(SiC)及び窒化珪素(Si)の中の少なくとも一方を含有するものであることが好ましい。複合結合材生成用原料は、焼成により「強化粒子であるムライト粒子」及び「結合材であるコージェライト」が生成するものである。尚、複合結合材生成用原料粉末の代わりに、ムライト粉末とコージェライト化原料とを混合してもよい。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライト結晶が生成する原料を意味する。複合結合材生成用原料は、34.9質量%超、71.8質量%未満の酸化アルミニウム(Al)成分を含有することが好ましい。また、複合結合材生成用原料は、28.2質量%超、52.0質量%未満の二酸化珪素(SiO)成分を含有することが好ましい。また、複合結合材生成用原料は、5.0質量%超、13.8質量%未満の酸化マグネシウム(MgO)成分を含有することが好ましい。複合結合材生成用原料中の酸化アルミニウム成分、二酸化珪素成分及び酸化マグネシウム成分をこのような比率にすることにより、焼成により「強化粒子であるムライト粒子」及び「結合材であるコージェライト」を生成させることが可能となる。酸化アルミニウム成分とは、酸化アルミニウム又は「水酸化アルミニウム、カオリン、ベーマイト、長石等の、アルミニウム及び酸素を含有する原料中の、酸化アルミニウムの組成比となる「アルミニウム及び酸素」」のことである。そして、「酸化アルミニウム成分の質量」とは、酸化アルミニウム成分中のアルミニウムの酸化物換算質量(Alの質量)のことである。酸化アルミニウム成分が酸化アルミニウムである場合、平均粒子径の下限値は2.5μmであることが好ましく、平均粒子径の上限値は15.0μmであることが好ましい。また、上記酸化アルミニウムはα−アルミナであることが好ましい。二酸化珪素成分とは、二酸化珪素又は「タルク、カオリン、長石等の、珪素及び酸素を含有する原料中の、二酸化珪素の組成比となる「珪素及び酸素」のことである。酸化マグネシウム成分とは、酸化マグネシウム又は「水酸化マグネシウム、タルク等の、マグネシウム及び酸素を含有する原料中の、酸化マグネシウムの組成比となる「マグネシウム及び酸素」」のことである。複合結合材生成用原料粉末としては、例えば、タルク35.9質量%、水酸化アルミニウム44.3質量%、及びシリカ粉末19.8質量%の混合粉末を挙げることができる。また、複合結合材生成用原料粉末には、アルミニウム成分の原料(アルミニウム(Al)源)として、Al−Siファイバー、Alファイバー、板状アルミナ、粗粒Al、カオリン等が含有されていることが好ましい。Al−Siファイバーは、珪素成分の原料でもある。このとき、板状アルミナの長径の下限値が0.5μmであることが好ましい。また、板状アルミナの長径の上限値は15μmであることが好ましい。また、板状アルミナの短径(厚さ)の下限値が0.01μmであることが好ましい。また、板状アルミナの短径(厚さ)の上限値が1μmであることが好ましい。また、板状アルミナの幅の下限値が0.05μmであることが好ましい。また、板状アルミナの幅の上限値が70μmであることが好ましい。また、板状アルミナのアスペクト比の下限値が、5であることが好ましい。また、板状アルミナのアスペクト比の上限値が、70であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、長さが200μm以下であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、短径が3μm以下であることが好ましい。また、アルミナファイバーは、アスペクト比が、3以上であることが好ましい。粗粒Alの平均粒子径は、2.5〜15μmが好ましい。短径及び長径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値である。具体的には、3000倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全ての粒子の長径と短径を測定し、それぞれを粒子の個数で平均した値である。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。また、マグネシウム(Mg)成分の原料(マグネシウム(Mg)源)としては、MgO又はMg(OH)が好ましい。また、Si(珪素)成分の原料(珪素(Si)源)としては、カオリン、粉末シリカ、及びコロイダルシリカが好ましい。
【0049】
また、複合結合材生成用原料中に、金属珪素が含有されないか、又は得られる多孔質材料中の金属珪素含有量が15質量%未満となるような量の金属珪素が含有される。これにより、得られる多孔質材料中の金属珪素含有量を、15質量%未満とすることができる。
【0050】
骨材原料は、炭化珪素(SiC)粉末又は窒化珪素(Si)粉末であることが更に好ましい。骨材原料の平均粒子径の下限値は、5μmが好ましく、10μmが更に好ましい。骨材原料の平均粒子径の上限値は、100μmが好ましく、40μmが更に好ましい。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0051】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0052】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0053】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径の下限値は10μmであることが好ましい。また、造孔材の平均粒子径の上限値は30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。尚、造孔材が吸水性樹脂の場合、平均粒子径は、吸水後の値である。
【0054】
水の含有量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0055】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0056】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体(成形体)を形成する(成形工程)。尚、坏土も成形原料の概念に含まれる。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。このように、骨材原料、複合結合材生成用原料、造孔材及びバインダを含有する成形原料を押出成形して成形体を作製する工程が成形工程である。
【0057】
こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0058】
次に、ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0059】
次に、ハニカム成形体(成形体)を焼成して、ハニカム構造体(多孔質材料)を作製する(焼成工程)。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気(不活性雰囲気)下(酸素分圧は10−4気圧以下)で行うことが好ましい。焼成温度の下限値は1300℃であることが好ましい。焼成温度の上限値は1600℃であることが好ましい。また、焼成温度は、1400〜1500℃であることが好ましい。焼成時の圧力は常圧であることが好ましい。焼成時間の下限値は、1時間であることが好ましい。焼成時間の上限値は、20時間であることが好ましい。このように、成形体を不活性雰囲気にて所定温度で焼成して多孔質材料を作製する工程が焼成工程である。また、焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で、酸化処理を行ってもよい。酸化処理の温度の下限値は1100℃であることが好ましい。酸化処理の温度の上限値は1400℃であることが好ましい。酸化処理の時間の下限値は、1時間であることが好ましい。酸化処理の時間の上限値は、20時間であることが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。得られた多孔質材料中の金属珪素含有量は、15質量%未満である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と複合結合材生成用原料粉末とを、7:3(体積比)の比率で混合して「混合粉末」を作製した。複合結合材生成用原料粉末としては、水酸化アルミニウムを45.1質量%、タルクを32.8質量%、シリカを22.1質量%含有する粉末を用いた。複合結合材生成用原料(粉末)中の酸化アルミニウム成分の含有率は、35.6質量%であった。また、複合結合材生成用原料(粉末)中の二酸化珪素成分の含有率は、51.8質量%であった。また、複合結合材生成用原料(粉末)中の酸化マグネシウム成分の含有率は、12.6質量%であった。そして、上記「混合粉末」に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材としてデンプン、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。バインダの含有量は混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であった。造孔材の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、12質量部であった。水の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、70質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は22.0μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。なお、炭化珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0062】
次に、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
【0063】
得られたハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて550℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成してハニカム焼成体を得た。そして、得られたハニカム焼成体を、1200℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)を得た。
【0064】
このときのハニカム構造体の、隔壁の厚さは300μmであり、セル密度は46.5(セル/cm)であった。また、ハニカム構造体の底面は一辺が35mmの四角形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは50mmであった。
【0065】
ハニカム構造体(多孔質材料)の、炭化珪素、ムライト及びコーディエライトの同定を行った。炭化珪素、ムライト及びコーディエライトの同定は、粉末X線回折による構成相の同定とともに、EPMAによる定性・定量分析及び元素マッピングの結果に基づいて行った。これにより、ハニカム構造体は、炭化珪素、ムライト及びコージェライトを含むことが確認された。
【0066】
ムライト粒子のアスペクト比は4.7であった。また、ムライト粒子の長径の長さは2.5μmであった。また、「ムライトの含有率」は0.5質量%であった。そして、多孔質材料中の複合結合材の含有量は29.9質量%であった。ムライト粒子の長径及びアスペクト比は、以下の方法で測定した。また、ムライト粒子の含有率は、後述する方法で測定した。
【0067】
得られたハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)の気孔率は58.2%であり、平均細孔径は17.0μmであった。また、ハニカム構造体の曲げ強度は6.5MPaであり、ヤング率は4.5GPaであり、「強度/ヤング率比」は、1.4×10−3であった。尚、「強度/ヤング率比」の「強度」は、「曲げ強度」である。また、ハニカム構造体の熱膨張係数(40−800℃)は3.2×10−6−1であった。また、ハニカム構造体の比熱容量は、2.09J/(cm・K)であった。得られた結果を表1に示す。なお、各測定値は、以下に示す方法によって求めた値である。
【0068】
表1〜7において、「結合材」の欄は、炭化珪素粒子、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、複合結合材の質量比率(質量%)を示す。尚、表1〜7においては、「複合結合材」を単に「結合材」と表示している。また、「ムライト」の欄は、炭化珪素粒子、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、ムライト粒子の質量比率(質量%)を示す。また、「金属珪素」の欄は、炭化珪素粒子、複合結合材及び金属珪素の合計質量に対する、金属珪素の質量比率(質量%)を示す。また、「ムライトのアスペクト比」の欄は、「多孔質材料中のムライト粒子」のアスペクト比を示す。また、「ムライトの長径」の欄は、「多孔質材料中のムライト粒子」の長径を示す。また、「気孔率」及び「平均細孔径」の欄は、多孔質材料の気孔率及び平均細孔径を示す。また、「曲げ強度」、「ヤング率」及び「熱膨張係数」の欄は、多孔質材料の曲げ強度、ヤング率及び熱膨張係数を示す。また、「強度/ヤング率比」の欄は、曲げ強度(Pa)をヤング率(Pa)で除した値を示す。また、表4の「Al源」の欄は、複合結合材生成用原料中のアルミニウム源の種類を示している。表7の「Al源」及び「Si源」のそれぞれの欄は、複合結合材生成用原料中の、アルミニウム源の種類及び珪素源の種類をそれぞれ示す。
【0069】
また、表1〜7において、「総合評価」の欄は、A〜Cが合格、Dが不合格であることを示す。また、A〜Cの中では、「A」が最も耐熱衝撃性に優れていることを示す。また、「B」が「A」の次に耐熱衝撃性に優れていることを示し、「C」が「B」の次に耐熱衝撃性に優れていることを示す。尚、「D」は、耐熱衝撃性に劣ることを示す。総合評価Aの条件は、曲げ強度6.5MPa以上、熱膨張係数4.0×10−6/K以下、「強度/ヤング率比」1.6以上、及び比熱容量が2.05J/(cm・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Bの条件は、曲げ強度6.5MPa以上、熱膨張係数4.0×10−6/K以下、「強度/ヤング率比」1.2以上、及び比熱容量が2.00J/(cm・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Cの条件は、曲げ強度6.5MPa以上、熱膨張係数4.5×10−6/K未満、及び比熱容量が1.95J/(cm・K)以上の全ての条件を満たしていることである。また、総合評価Dの条件は、曲げ強度6.5MPa未満、熱膨張係数4.5×10−6/K以上、及び比熱容量が1.95J/(cm・K)未満の中の、いずれか一つの要件を満たしていることである。
【0070】
(複合結合材の質量比率、ムライト粒子の質量比率、金属珪素の質量比率)
多孔質材料(ハニカム構造体)における、各構成結晶相(複合結合材、ムライト粒子、金属珪素)の質量比率は以下のようにして求める。X線回折装置を用いて多孔質材料のX線回折パターンを得る。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機製、RINT)を用いる。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10〜60°とする。そして、「RIR(Reference Intensity Ratio)法を用いて、得られたX線回折データを解析して、各成分を定量する」簡易定量分析により、各構成結晶相の質量比率を算出する。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行った。
【0071】
(ムライト粒子のアスペクト比)
ムライト粒子のアスペクト比(ムライトのアスペクト比)は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。具体的には、3000倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全てのムライト粒子の長径と短径を測定し、その比率「長径/短径」を算出し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライトのアスペクト比とする。
【0072】
(ムライト粒子の長径)
ムライト粒子の長径は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。具体的には、3000倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全てのムライト粒子の長径を測定し、微構造写真中のムライト粒子の個数で平均した値を、ムライトの長径とする。
【0073】
(気孔率)
気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm/g]と、アルキメデス法により測定した見掛密度[g/cm]から算出する。気孔率の算出に際しては、「開気孔率(%)=100×全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}」の式を用いる。「全細孔容積」の測定(水銀圧入法)には、ハニカム構造体から「縦3セル×横3セル×長さ20mm」の大きさに切り出した試験片を用いる。また、見掛密度の測定(アルキメデス法)には、「20mm×20mm×0.3mm」の大きさ(20mm×20mmの大きさの1枚の隔壁に相当)に切り出した試験片を用いる。
【0074】
(平均細孔径)
ハニカム構造体から、「縦3セル×横3セル×長さ20mm」の大きさの試験片を切り出し、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定する。
【0075】
(細孔容積率)
「10μm以下の細孔容積率」及び「40μm以上の細孔容積率」は、以下のようにして測定する。上記「平均細孔径」の場合と同様の試験片を用いて、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により全細孔容積、細孔径が40μm以上である細孔の細孔容積、細孔径が10μm以下である細孔の細孔容積を測定する。そして、「10μm以下の細孔容積率」は10μm以下の細孔容積/全細孔容積、「40μm以上の細孔容積率」は40μm以上の細孔容積/全細孔容積の式で算出する。
【0076】
(曲げ強度(強度))
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦0.3mm×横4mm×長さ40mm)に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出する。
【0077】
(ヤング率)
上記「曲げ強度」の測定方法により「応力−歪曲線」を作成し、当該「応力−歪曲線」の傾きを算出する。得られた「応力−歪曲線の傾き」をヤング率とする。
【0078】
(熱膨張係数)
JIS R1618に準拠する方法で、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の平均線熱膨張係数(熱膨張係数)を測定する。
【0079】
(比熱容量)
ハニカム構造体から、直径0.5mm×厚さ1.0mmの円盤状の測定試料を切り出す。得られた測定試料を用いてJIS R1611に準拠する方法で、室温における比熱を測定する。更に、測定試料について、アルキメデス法で、見かけ密度を測定する。そして、得られた比熱の値と見かけ密度との積を比熱容量(J/(cm・K))とする。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
(実施例2〜35、比較例1〜6)
各条件を表1〜8に示すものとした以外は実施例1と同様にして多孔質材料(ハニカム構造体)を作製した。実施例1の場合と同様にして、各評価を行った。結果を表1〜7に示す。また、複合結合材生成用原料中の酸化アルミニウム成分、酸化珪素成分及び酸化マグネシウム成分の含有率を表8に示した。尚、複合結合材生成用原料中の酸化アルミニウム成分、酸化珪素成分及び酸化マグネシウム成分の含有率は、使用した各原料の化学組成及び含有率から算出した。
【0089】
表1〜7より、実施例1〜35の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れていることが分かる。また、比較例1〜6の多孔質材料は、耐熱衝撃性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の多孔質材料は、触媒担体用材料、DPF用材料等として利用することができる。そして、本発明のハニカム構造体は、触媒担体、DPF等として利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:骨材、2:強化粒子、3:結合材、4:細孔、5:複合結合材、100:多孔質材料。
図1