特許第6044089号(P6044089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044089
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20161206BHJP
   F02D 41/06 20060101ALI20161206BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20161206BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F02D41/04 335H
   F02D41/04 335G
   F02D41/04 330P
   F02D41/06 335Z
   F02D41/06 330J
   F01N3/24 R
   F01N3/24 U
   F02D29/02 321C
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-58249(P2012-58249)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-189951(P2013-189951A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】天内 将
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163898(JP,A)
【文献】 特開2000−104597(JP,A)
【文献】 特開2002−138883(JP,A)
【文献】 特開2006−090264(JP,A)
【文献】 特開2005−337185(JP,A)
【文献】 特開2002−201983(JP,A)
【文献】 特開2004−176602(JP,A)
【文献】 特開2008−169747(JP,A)
【文献】 特開2008−101540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/04
F01N 3/24
F02D 41/06
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の惰性走行中に所定のコーストストップ条件が成立したら内燃機関への燃料噴射を停止することで内燃機関の燃焼を停止し、前記コーストストップ条件を満たしている限り前記車両が停車するまで前記内燃機関の燃焼の停止を継続する内燃機関の制御装置において、
前記コーストストップ条件を検出する条件検出手段と、
前記内燃機関の排気浄化触媒の酸素吸着量を検出する酸素吸着量検出手段と、
前記コーストストップ条件が成立した場合に前記内燃機関の燃焼を停止するコーストストップ制御手段と、
燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記コーストストップ条件が成立することで前記内燃機関の燃焼が停止し、前記内燃機関が惰性回転中であり、前記酸素吸着量が所定値以上である場合に、
前記内燃機関が直噴型内燃機関である場合は、排気行程において、また、
前記内燃機関がポート噴射型内燃機関である場合は、吸気バルブと排気バルブが開いた状態の吸気行程において、
前記内燃機関の惰性回転が停止する直前に燃料を噴射するように前記燃料噴射手段を制御する制御手段と、を備える内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関が搭載された車両のトルクコンバータのロックアップ状態を検出するロックアップ検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記コーストストップ条件が成立して前記トルクコンバータのロックアップが解除された後に前記燃料を噴射するように前記燃料噴射手段を制御する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記酸素吸着量に基づいて当該酸素を還元できる前記燃料の噴射量を演算するとともに、前記内燃機関を停止する直前に前記噴射量の燃料を噴射するように前記燃料噴射手段を制御する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記内燃機関が再始動した際のクランキング状態の間にも燃料を噴射するように前記燃料噴射手段を制御する請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、再始動時の燃焼に必要とされる燃料圧力が保持できるように、前記燃料の噴射量を設定する請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射が遮断されている状態から復帰する際に、車両の運転状態に応じて設定した燃料噴射量をエンジンへ供給するとともに点火を設定時間遮断することで、未燃ガスに含まれている未燃HCを触媒へ供給し、当該触媒内の過酸素状態を解消してNOx排出量を低減するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−138883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の内燃機関の制御装置をコーストストップ車に適用した場合に、コーストストップ条件が成立してエンジンが停止したまま車両が停止すると還元剤たる燃料を噴射できないので、次にエンジンが再始動する際のNOxエミッション性が悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コーストストップ車において燃料カットによる触媒の過酸素状態を適切に解消できる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コーストストップ条件が成立することで前記内燃機関の燃焼が停止し、内燃機関が惰性回転中であり、排気浄化触媒の酸素吸着量が所定値以上であ場合に、前記内燃機関が直噴型内燃機関である場合は、排気行程において、前記内燃機関がポート噴射型内燃機関である場合は、吸気バルブと排気バルブが開いた状態の吸気行程において、内燃機関の惰性回転が停止する直前において燃料を噴射することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コーストストップ条件が成立してから内燃機関の回転が停止する直前において燃料を噴射しても当該燃料は燃焼しないので、それまでの燃料カットにより過酸素状態となった触媒から酸素を適切にパージすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態が適用されるエンジンを示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る制御装置(図1のEG−CTRに相当する)を示すブロック図(その1)である。
図3図2の制御手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施の形態に係る制御装置(図1のEG−CTRに相当する)を示すブロック図(その2)である。
図5図4の制御手順を示すフローチャートである。
図6図3及び図5のタイミングチャートである。
図7図5のステップS54にて用いられる制御マップの一例を示す図である。
図8】本発明の他の実施の形態に係る制御装置(図1のEG−CTRに相当する)を示すブロック図である。
図9図8の制御手順を示すフローチャートである。
図10図9のタイミングチャートである。
図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御装置(図1のEG−CTRに相当する)を示すブロック図(その1)である。
図12図11の制御手順を示すフローチャートである。
図13】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御装置(図1のEG−CTRに相当する)を示すブロック図(その2)である。
図14図13の制御手順を示すフローチャートである。
図15図12及び図14のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態を適用した直噴型多気筒エンジンEGを示すブロック図であり、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0010】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ116aが設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ116aはアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0011】
燃料噴射バルブ118は、燃焼室123に臨ませて設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を筒内に直接噴射する。なお、本発明の制御装置は直噴型エンジン以外にもポート噴射型エンジンにも適用することができるが、これについては後述する実施の形態にて説明する。
【0012】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0013】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであってもよいし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0014】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒を用いることができる。
【0015】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。なお、図1において129はマフラである。
【0016】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、機関回転速度Neを検出することができる。
【0017】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0018】
上述したように、各種センサ類113,116a,126,128,131,133からの検出信号は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータからなるエンジンコントロールユニット11に入力され、当該エンジンコントロールユニット11は、センサ類からの信号に基づいて検出される運転状態に応じて、スロットルバルブ114の開度を制御するとともに、燃料噴射バルブ118を駆動して燃料噴射量と燃料噴射時期を制御する。燃料噴射量は、例えば、検出した吸気量と、運転状態に応じて予め設定された所定の空燃比とから基本燃料噴射量を算出し、これに各種補正を施して最終燃料噴射量とする。後述のように燃料噴射量を増量補正する場合、例えば、基本燃料噴射量に対して所定の係数(ゲイン)をかけ合わせることによって実現することができる。
【0019】
本例のエンジンEGが搭載された車両では、いわゆるコーストストップ制御が実行される。コーストストップ制御とは、惰性走行中に所定の条件(たとえば、燃料噴射量がゼロ、エンジンの回転速度がゼロより大きく所定値以下、車速がゼロより大きく所定速度以下、シフトポジションがDレンジ、ブレーキペダルの踏込量が所定値以上)が成立したら燃費を向上させるためにエンジンの燃焼を停止し(燃料カットから再始動リカバーさせないようにして)、条件を満たしている限り車両が停車するまで燃焼停止をそのまま継続する制御をいう。アイドルストップ制御も燃費向上のためにエンジンを停止させる制御であるが、アイドルストップ制御は車両が停止(車速がゼロ)していることを条件としているのに対し、コーストストップ制御は車速がゼロより大きく所定速度以下である惰性走行を条件にしている点で相違する。このようなコーストストップ条件が成立したら、例えば、車両が停止する直前にトルクコンバータのロックアップ(接続)を解除することでエンジンの回転を停止させる。
【0020】
ところで、アクセル開度が全閉になり、エンジン回転速度が所定値以上の運転条件などでは、燃料噴射バルブ118から燃料の噴射が停止される。こうした燃料カットが行われている間は、吸気通路111から吸入した空気は燃料と混合されることなくそのまま燃焼室123を介して排気通路125へ流れ、排気浄化触媒127を通過する。これにより、空気中の酸素が排気浄化触媒127に吸着し、NOxの還元能力が一時的に低下する。上述したコーストストップ制御を実行する車両においても、アクセル開度が全閉になり、エンジン回転速度が所定値以上の運転条件になると、コーストストップ条件が成立してトルクコンバータのロックアップが解除されてエンジンEGが停止するまでの間は、排気浄化触媒127に酸素がトラップされ、過酸素状態に近づくことになる。
【0021】
このため、本例のエンジンコントロールユニット11は、燃料カット制御が行われた場合に、コーストストップ条件が成立してエンジンEGが停止する直前において所定量の燃料を噴射する。これにより、排気浄化触媒127に吸着された酸素量を減少させ、NOxの還元能力を回復させる。コーストストップ条件が成立していても、運転者が途中で再加速を求めた場合には条件が解除され、加速の要求度合いが大きい場合には高負荷燃料増量域に入らざるを得ないことがある。このような場合、まだ酸素吸着量は比較的少なく(NOx還元能力の低下は軽度で)、高負荷増量によって自ずと還元能力の回復が期待できるので、酸素量を減少させるための燃料噴射が却って無駄になってしまうことがある。本例では、燃料噴射をエンジンが停止する直前に行なっているので、再加速によって燃料噴射が無駄になる機会をできるだけ少なくすることができる。図2はこの制御内容の一例を示すブロック図、図3は制御手順を示すフローチャート、図6は制御タイミングチャートであり、図6の時間t0〜t1が燃料カット制御を実行している期間、時間t1〜t2が燃料噴射制御を実行している期間である。なお、時間t3〜t4も燃料噴射制御を実行しているがこれについては後述する。
【0022】
まず、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための本例の燃料噴射の前提として、燃料カットが行われて排気浄化触媒127が過酸素状態にあるかどうか、及びコーストストップによるエンジン停止直前の状態であるか否かを判定する。そのため、図2及び図3のST1〜ST3に示す減速判定、燃料カット判定及びロックアップ判定が実行される。ステップST1の減速判定は車速センサによる時間的速度変化量から検出し、ステップST2の燃料カット判定は燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量から検出し、ステップST3のロックアップ判定はトルクコンバータのロックアップ状態から検出する。なお、ステップST3においてトルクコンバータのロックアップが行われている場合、すなわちトルクコンバータが接続されている場合は処理を終了し、トルクコンバータが非接続状態である場合はステップST4へ進む。
【0023】
ここまでの状態が図6の時間t0〜t1に相当する。すなわち、車両が時間t0からアクセル開度がゼロになって減速し始め、エンジン回転速度が所定値以上である場合に燃料カットが実行される。そして、時間t1において所定のコーストストップ条件が成立するとトルクコンバータのロックアップが解除され、時間t2までの間、エンジンEGは惰性回転する。
【0024】
次に、図2及び図3のステップST4〜ST6において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射の実行に移行する。ステップST4では、排気浄化触媒127の酸素パージが未了であるか否かを判定し、ステップST5ではエンジンEGが回転中であるか否かを判定し、酸素パージが未了で且つエンジンEGが回転中である場合はステップST6にて排気行程における燃料噴射実行フラグをセットする。なお、ステップST4にて酸素パージが終了し、又はステップST5にてエンジンEGが停止している場合は処理を終了する。
【0025】
ステップST4の酸素パージが未了か否かの判定は、図2に示すように当該判定直前における排気浄化触媒127の酸素吸着量から現在の酸素吸着量を求めることで行われる。また、ステップST5のエンジンEGが回転中か否かはクランク角センサ131からの検出信号で判定される。
【0026】
次に、ステップST7〜ST8において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射量を演算する。この燃料噴射量は、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するために要求される要求還元剤量Qfと、可能噴射量Tiokとの関係から設定される。要求還元剤量Qfは、ステップST4にて求められた現在の排気浄化触媒127の酸素吸着量から求められ、可能噴射量Tiokは、排気バルブの開時間、燃料圧力及び燃料噴射バルブ特性から求められる。そして、ステップST7では、要求還元剤量Qfと可能噴射量Tiokのいずれか小さい方を燃料噴射量に設定する。すなわち、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより大きい場合は可能噴射量Tiokに設定し、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより小さい場合は要求還元剤量Qfに設定する。
【0027】
ステップST8では、排気バルブの開閉タイミングに基づいて排気行程にて燃料を噴射するためのパルス信号をセットし、ステップST9にて燃料噴射バルブ118を制御し、排気行程において燃料を噴射する。直噴型エンジンEGの排気行程にて燃料を噴射すると、エンジンEGは惰性回転しているので当該未燃HCガスはそのまま排気浄化触媒127に流下し、吸着された酸素を還元することで過酸素状態を解消することができる。この状態が図6の時間t1〜t2に相当する。時間t1〜t2のエンジンEGが惰性回転している間の排気行程において、燃料を噴射することで排気浄化触媒127に吸着された酸素がパージすることが示されている。尚、排気行程以外の行程で燃料を噴射しても良いが、排気行程で噴射すると、燃焼室内に燃料が留まる時間が短くなって燃焼室内壁への燃料付着を抑制できる。
【0028】
さて、上述したエンジン停止直前における燃料噴射により目的とする酸素パージが実行される場合は当該エンジン停止直前のみにおいて燃料噴射を実行すればよいが、酸素パージ量が不足する場合には、コーストストップが解除されてエンジンEGが再始動する際に重ねて燃料を噴射してもよい。このエンジン再始動時の燃料噴射制御を図4及び図5に示す。図6でいえば時間t3〜t4に相当する。
【0029】
まずステップST11にてエンジンEGの再始動を判定する。この判定は、コーストストップ条件が解除される条件、たとえばアクセルの踏込みやクランク角センサ131などにより検出される。エンジンEGの再始動が検出されない場合は処理を終了するが、エンジンEGの再始動が検出されたらステップST12へ進んで排気浄化触媒127の酸素パージが未了であるか否かを判定する。酸素パージが未了か否かは、図4に示すように当該判定時の酸素吸着量から求めることができる。酸素パージが終了している場合は処理を終了するが、未了である場合はステップST13へ進み、排気行程噴射実行フラグをセットする。
【0030】
次に、ステップST14において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射量を演算する。この燃料噴射量は、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するために要求される要求還元剤量Qfと、可能噴射量Tiokとの関係から設定される。要求還元剤量Qfは、ステップST12にて求められた現在の排気浄化触媒127の酸素吸着量から求められ、可能噴射量Tiokは、排気バルブの開時間、燃料圧力、燃料噴射バルブ特性及び再始動燃焼用保持燃圧要求噴射量から求められる。
【0031】
ここで、再始動する際の燃焼用保持燃圧の要求噴射量は、図7に示すように縦軸の始動時排気行程噴射前燃圧と、横軸の可能噴射量との関係を示す制御マップから求めることができる。たとえば、燃焼のために保持が必要とされる所定の燃圧がある一方で、所定値以上の噴射量は燃焼に必要とされる燃圧を保持できない。したがって、同図の左上の領域の可能噴射量に設定される。そして、ステップST14では、要求還元剤量Qfと可能噴射量Tiokのいずれか小さい方を燃料噴射量に設定する。すなわち、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより大きい場合は可能噴射量Tiokに設定し、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより小さい場合は要求還元剤量Qfに設定する。
【0032】
ステップST15では、排気バルブの開閉タイミングに基づいて排気行程にて燃料を噴射するためのパルス信号をセットし、ステップST16にて燃料噴射バルブ118を制御し、排気行程において燃料を噴射する。直噴型エンジンEGの排気行程にて燃料を噴射すると、エンジンEGはクランキングしているので当該未燃HCガスはそのまま排気浄化触媒127に流下し、吸着された酸素を還元することでパージすることができる。この状態が図6の時間t3〜t4に相当する。時間t3〜t4のエンジンEGがクランキングしている間の排気行程において、燃料を噴射することで排気浄化触媒127に吸着された酸素がパージすることが示されている。
【0033】
上述した実施の形態では、時間t1においてコーストストップ条件に成立にともなってトルクコンバータのロックアップの解除が検出されてから、排気行程における燃料の噴射を開始したが、排気浄化触媒127の吸着酸素量が多く、時間t1〜t2の間に要求される還元剤量を噴ききれない場合などにおいては、トルクコンバータのロックアップの解除に拘らず燃料の噴射を開始してもよい。図8図10は他の実施の形態に係るエンジンコントロールユニット11の制御内容を示すフローチャート及びタイミングチャートである。図10の時間t0〜t1が燃料カット制御を実行している期間、時間t1〜t3が燃料噴射制御を実行している期間である。
【0034】
まず、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための本例の燃料噴射の前提として、燃料カットが行われて排気浄化触媒127が過酸素状態にあるかどうかを判定する。そのため、図8及び図9のST21〜ST23に示す減速判定、燃料カット判定及びロックアップ解除前排気行程噴射実行判定が実行される。ステップST21の減速判定は車速センサによる時間的速度変化量から検出し、ステップST22の燃料カット判定は燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量から検出し、ステップST23のロックアップ解除前排気行程噴射実行判定は、排気浄化触媒127の酸素吸着量から現在の酸素吸着量を求め、これを適量まで還元するための燃料噴射量を求めることで検出される。
【0035】
排気浄化触媒127に多量の酸素がトラップされている場合は燃料噴射量も多くなり、それだけ時間を要することになるが、この燃料噴射量を噴射する時間が、トルクコンバータのロックアップが解除されてからエンジンEGが停止するまでの時間より長い場合には、ロックアップが解除されたのちに燃料を噴射しても目的とする酸素パージは達成されないので、ステップST25へ進み、燃料噴射の実行に移行する。すなわち、ステップST25では、排気浄化触媒127の酸素パージが未了であるか否かを判定し、ステップST26ではエンジンEGが回転中であるか否かを判定し、酸素パージが未了で且つエンジンEGが回転中である場合はステップST27にて排気行程における燃料噴射実行フラグをセットする。なお、ステップST25にて酸素パージが終了し、又はステップST26にてエンジンEGが停止している場合は処理を終了する。
【0036】
ここまでの状態が図10の時間t0〜t1に相当する。すなわち、車両が時間t0からアクセル開度がゼロになって減速し始め、エンジン回転速度が所定値以上である場合に燃料カットが実行される。そして、時間t2の所定のコーストストップ条件が成立してトルクコンバータのロックアップが解除される前の時間t1において、燃料噴射が開始される。
【0037】
なお、ステップST23において、求められた燃料噴射量を噴射する時間が、トルクコンバータのロックアップが解除されてからエンジンEGが停止するまでの時間より短い場合には、ロックアップが解除されたのちに燃料を噴射すれば目的とする酸素パージは達成されるので、ステップST24へ進み、ロックアップが解除されたか否かを判断する。ステップST24のロックアップ判定はトルクコンバータのロックアップ状態から検出する。なお、ステップST24においてトルクコンバータのロックアップが行われている場合、すなわちトルクコンバータが接続されている場合は処理を終了し、トルクコンバータが非接続状態である場合はステップST25へ進む。これ以降の処理は、図3のステップST4〜ST9と同じである。
【0038】
上述した実施の形態では、直噴型エンジンEGに対して、当該エンジンがコーストストップして停止する直前の排気行程において燃料を噴射したが、いわゆるポート噴射型エンジンに対しては、吸気工程であって吸気バルブと排気バルブとがオーバーラップして開いている間に燃料を噴射すればよい。図11はこの制御内容の一例を示すブロック図、図12は制御手順を示すフローチャート、図15は制御タイミングチャートであり、図15の時間t0〜t1が燃料カット制御を実行している期間、時間t1〜t2が、吸気工程であって吸気バルブと排気バルブとがオーバーラップして開いている間に燃料噴射制御を実行している期間である。なお、時間t3〜t4はコーストストップが解除されてエンジンが再始動する際の燃料噴射制御を示し、図13はこの制御内容の一例を示すブロック図、図14は制御手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための本例の燃料噴射の前提として、燃料カットが行われて排気浄化触媒127が過酸素状態にあるかどうか、及びコーストストップによるエンジン停止直前の状態であるか否かを判定する。そのため、図11及び図12のST41〜ST43に示す減速判定、燃料カット判定及びロックアップ判定が実行される。ステップST41の減速判定は車速センサによる時間的速度変化量から検出し、ステップST42の燃料カット判定は燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量から検出し、ステップST43のロックアップ判定はトルクコンバータのロックアップ状態から検出する。なお、ステップST43においてトルクコンバータのロックアップが行われている場合、すなわちトルクコンバータが接続されている場合は処理を終了し、トルクコンバータが非接続状態である場合はステップST44へ進む。
【0040】
ここまでの状態が図15の時間t0〜t1に相当する。すなわち、車両が時間t0からアクセル開度がゼロになって減速し始め、エンジン回転速度が所定値以上である場合に燃料カットが実行される。そして、時間t1において所定のコーストストップ条件が成立するとトルクコンバータのロックアップが解除され、時間t2までの間、エンジンEGは惰性回転する。
【0041】
次に、図11及び図12のステップST44〜ST46において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射の実行に移行する。ステップST44では、排気浄化触媒127の酸素パージが未了であるか否かを判定し、ステップST45ではエンジンEGが回転中であるか否かを判定し、酸素パージが未了で且つエンジンEGが回転中である場合はステップST46にて吸気行程における燃料噴射実行フラグをセットする。なお、ステップST44にて酸素パージが終了し、又はステップST45にてエンジンEGが停止している場合は処理を終了する。
【0042】
ステップST44の酸素パージが未了か否かの判定は、図11に示すように当該判定直前における排気浄化触媒127の酸素吸着量から現在の酸素吸着量を求めることで行われる。また、ステップST45のエンジンEGが回転中か否かはクランク角センサ131からの検出信号で判定される。
【0043】
次に、ステップST47〜ST48において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射量を演算する。この燃料噴射量は、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するために要求される要求還元剤量Qfと、可能噴射量Tiokとの関係から設定される。要求還元剤量Qfは、ステップST44にて求められた現在の排気浄化触媒127の酸素吸着量から求められ、可能噴射量Tiokは、吸気バルブ及び排気バルブのオーバーラップ開時間、燃料圧力及び燃料噴射バルブ特性から求められる。そして、ステップST47では、要求還元剤量Qfと可能噴射量Tiokのいずれか小さい方を燃料噴射量に設定する。すなわち、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより大きい場合は可能噴射量Tiokに設定し、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより小さい場合は要求還元剤量Qfに設定する。
【0044】
ステップST48では、吸気バルブ及び排気バルブのオーバーラップタイミングに基づいて吸気行程のオーバーラップ中にて燃料を噴射するためのパルス信号をセットし、ステップST49にて燃料噴射バルブ118を制御し、吸気行程において燃料を噴射する。ポート噴射型エンジンEGの吸気行程のバルブオーバーラップ中に、燃料噴射ポートに燃料を噴射すると、エンジンEGは惰性回転しているので当該未燃HCガスは吸気空気とともに排気浄化触媒127に流下し、吸着された酸素を還元することで過酸素状態を解消することができる。この状態が図15の時間t1〜t2に相当する。時間t1〜t2のエンジンEGが惰性回転している間の吸気行程において、燃料を噴射することで排気浄化触媒127に吸着された酸素がパージすることが示されている。
【0045】
さて、上述したエンジン停止直前における燃料噴射により目的とする酸素パージが実行される場合は当該エンジン停止直前のみにおいて燃料噴射を実行すればよいが、酸素パージ量が不足する場合には、コーストストップが解除されてエンジンEGが再始動する際に重ねて燃料を噴射してもよい。このエンジン再始動時の燃料噴射制御を図13及び図14に示す。図15でいえば時間t3〜t4に相当する。
【0046】
まずステップST51にてエンジンEGの再始動を判定する。この判定は、コーストストップ条件が解除される条件、たとえばアクセルの踏込みやクランク角センサ131などにより検出される。エンジンEGの再始動が検出されない場合は処理を終了するが、エンジンEGの再始動が検出されたらステップST52へ進んで排気浄化触媒127の酸素パージが未了であるか否かを判定する。酸素パージが未了か否かは、図13に示すように当該判定時の酸素吸着量から求めることができる。酸素パージが終了している場合は処理を終了するが、未了である場合はステップST53へ進み、排気行程噴射実行フラグをセットする。
【0047】
次に、ステップST54において、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するための燃料噴射量を演算する。この燃料噴射量は、排気浄化触媒127の過酸素状態を解消するために要求される要求還元剤量Qfと、可能噴射量Tiokとの関係から設定される。要求還元剤量Qfは、ステップST52にて求められた現在の排気浄化触媒127の酸素吸着量から求められ、可能噴射量Tiokは、吸気バルブ及び排気バルブのオーバーラップ開時間、燃料圧力、燃料噴射バルブ特性及び再始動燃焼用保持燃圧要求噴射量から求められる。
【0048】
ここで、再始動する際の燃焼用保持燃圧の要求噴射量は、図7に示すように縦軸の始動時排気行程噴射前燃圧と、横軸の可能噴射量との関係を示す制御マップから求めることができる。たとえば、燃焼のために保持が必要とされる所定の燃圧がある一方で、所定値以上の噴射量は燃焼に必要とされる燃圧を保持できない。したがって、同図の左上の領域の可能噴射量に設定される。そして、ステップST54では、要求還元剤量Qfと可能噴射量Tiokのいずれか小さい方を燃料噴射量に設定する。すなわち、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより大きい場合は可能噴射量Tiokに設定し、要求還元剤量Qfが可能噴射量Tiokより小さい場合は要求還元剤量Qfに設定する。
【0049】
ステップST55では、吸気バルブ及び排気バルブのオーバーラップタイミングに基づいて吸気行程にて燃料を噴射するためのパルス信号をセットし、ステップST56にて燃料噴射バルブ118を制御し、吸気行程において燃料を噴射する。ポート噴射型エンジンEGの吸気行程のバルブオーバーラップ中に燃料を噴射すると、エンジンEGはクランキングしているので当該未燃HCガスは吸気空気とともに排気浄化触媒127に流下し、吸着された酸素を還元することでパージすることができる。この状態が図15の時間t3〜t4に相当する。時間t3〜t4のエンジンEGがクランキングしている間の吸気行程において、燃料を噴射することで排気浄化触媒127に吸着された酸素がパージすることが示されている。
【0050】
以上のとおり、本例のエンジンの制御装置によれば、以下の効果を奏する。
(1)本例では、燃料カットが検出され、コーストストップ条件が成立した場合に、エンジンEGが停止する直前に燃料を噴射するので、その後にコーストストップによりエンジンが停止しても、排気浄化触媒127のNOx除去性能を回復させることができる。これにより、再始動する際のNOxエミッション性が向上する。また、本例では、燃料噴射をエンジンが停止する直前に行なっているので、上述の通り、再加速によって燃料噴射が無駄になる機会をできるだけ少なくすることができる。
【0051】
(2)本例では、コーストストップ条件が成立したのちトルクコンバータのロックアップが解除された後、すなわちエンジンの空転状態で燃料を噴射するので、エンジンが確実に停止し、運転者の意志によっては再始動しない。したがって、運転者が再始動しようとするまでに浪費される燃料を低減することができる。
【0052】
(3)本例では、トルクコンバータのロックアップの解除に拘らず、エンジンEGが停止する直前に、排気浄化触媒127の酸素吸着量に基づいて当該酸素を還元できる噴射量の燃料を噴射するので、確実に排気浄化触媒127のNOx除去性能を回復させることができる。これにより、再始動する際のNOxエミッション性が向上する。
【0053】
(4)本例では、エンジンEGが再始動した際のクランキング状態の間に燃料を噴射するので、コーストストップ時間を短縮することなく燃料の噴射が可能となる。
【0054】
(5)本例では、再始動時の燃焼に必要とされる燃料圧力に基づいて燃料の噴射量を設定するので、再始動が確実に行われるとともに排気浄化触媒127のNOx除去性能をも回復させることができる。
【0055】
(6)本例では、直噴型エンジンに対しては排気行程において燃料を噴射し、ポート噴射型エンジンに対しては吸気工程であってバルブオーバーラップ時に燃料を噴射するので、未燃燃料を還元剤として排気浄化触媒127に供給することができる。
【0056】
上記エンジンコントロールユニット11は本発明に係る制御手段に相当し、上記燃料噴射バルブは本発明に係る燃料噴射手段に相当する。
【符号の説明】
【0057】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントロールユニット
111…吸気通路
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
116a…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
図1
図2
図3
図4
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図6
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