(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
実装されるヘッドスライダを変位させる伸縮自在なアクチュエータ素子の一方の電極に接続される第1素子接続領域と、当該アクチュエータ素子の他方の電極に接続される第2素子接続領域と、を有するサスペンション用基板において、
絶縁層と、
前記絶縁層の前記アクチュエータ素子側の面に設けられた配線層と、
前記絶縁層の他方の面に設けられた金属支持層と、を備え、
前記配線層は、前記第1素子接続領域および前記第2素子接続領域にそれぞれ設けられた、前記アクチュエータ素子の対応する前記電極に接続される素子接続端子を有し、
前記第1素子接続領域に設けられた前記素子接続端子および前記第2素子接続領域に設けられた前記素子接続端子の少なくとも一方に、前記アクチュエータ素子の伸長力を受ける力受け部が設けられ、
前記力受け部は、導電性材料により形成され、
前記力受け部は、ニッケルめっきにより形成されていることを特徴とするサスペンション用基板。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブについて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、ヘッド付サスペンション51は、サスペンション41と、サスペンション用基板1に実装されたヘッドスライダ52と、を備えている。このうちヘッドスライダ52は、後述するディスク63(
図5参照)に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うためのものであり、後述するサスペンション用基板1のタング部31に接着剤を用いて接合され、ヘッド端子5に電気的に接続されている。
【0025】
サスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられたロードビーム43と、ロードビーム43に取り付けられたサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1に接続された一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子)44と、を備えている。このうちベースプレート42およびロードビーム43は、いずれも、好適にはステンレスにより形成され、互いに溶接されて固定されている。
【0026】
また、ロードビーム43は、サスペンション用基板1の金属支持層11(後述)に、溶接により取り付けられるようになっている。また、ロードビーム43には、サスペンション用基板1の各治具孔25(後述)に対応して、ビーム治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1にロードビーム43を取り付ける際に、サスペンション用基板1とロードビーム43との位置合わせを行うことができるようになっている。このロードビーム43の治具孔は、
図1に示す長手方向軸線(X)上に配置されている。
【0027】
ピエゾ素子44は、ヘッドスライダ52をスウェイ方向(旋回方向、
図1の矢印Q方向)に変位させるためのものであり、ヘッドスライダ52の両側に配置されている。各ピエゾ素子44は、一対の電極44aと、一対の電極44a間に設けられ、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部44bと、を有している。なお、一対の電極44aは、互いに離間して圧電材料部44bに電圧を印加した場合に所望の伸縮量を得ることが可能であれば、任意の形状とすることができる。
【0028】
一対のピエゾ素子44の圧電材料部44bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に、他方のピエゾ素子44が伸長するようになっている。すなわち、ピエゾ素子44は、電極44a間に所定の電圧が印加されることにより
図1の矢印P方向に伸縮自在な圧電素子として構成されている。このようなピエゾ素子44は、
図1に示すように、長手方向軸線(X)に沿って細長の矩形状に形成されており、その伸縮方向が、当該長手方向軸線(X)に平行となっている。また、ピエゾ素子44は、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されており、各ピエゾ素子44の伸縮が、ヘッドスライダ52に均等に伝達されるようになっている。
【0029】
次に、サスペンション用基板1について説明する。
【0030】
図1に示すように、サスペンション用基板1は、ヘッドスライダ52が実装されるジンバル部2aと、FPC基板71が接続されるテール部2bと、を有している。ジンバル部2aには、ヘッドスライダ52に接続される複数のヘッド端子5が設けられ、テール部2bには、FPC基板71に接続される複数のテール端子(外部接続基板端子)6が設けられており、ヘッド端子5とテール端子6とが、後述する複数の信号配線13を介してそれぞれ接続されている。
【0031】
また、サスペンション用基板1は、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48(例えば、銀ペースト)を介して接続される第1素子接続領域3aと、当該ピエゾ素子44の他方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続領域3bと、を有している。第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bは、ヘッドスライダ52の両側にそれぞれ配置されている。
【0032】
図1および
図2に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面(接続されるピエゾ素子44の側の面)に設けられた配線層12と、絶縁層10の他方の面(ピエゾ素子44の側とは反対側の面)に設けられた金属支持層11と、を備えている。すなわち、サスペンション用基板1においては、金属支持層11に絶縁層10を介して配線層12が積層されており、配線層12の側にピエゾ素子44が配置されるようになっている。
図2は、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの断面を示しているが、ここでは、図面を明瞭にするために、配線13、14、後述する絶縁層10のスリット状開口部10a等は省略されている。
【0033】
配線層12は、複数の配線、すなわち、一対の読取配線と一対の書込配線とを含む信号配線13と、ピエゾ素子44に接続される一対の素子配線14と、を有している。このうち、信号配線13は、ヘッド端子5とテール端子6とを接続しており、この信号配線13に電気信号が流されることによって、ヘッドスライダ52がディスク63(
図5参照)に対してデータの書き込みまたは読み取りを行うようになっている。また、素子配線14は、後述する第2素子接続端子16bを介してピエゾ素子44に所定の電圧を印加するようになっている。
【0034】
配線層12は、第1素子接続領域3aに設けられた、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第1素子接続端子16aを有している。第1素子接続領域3aは、ピエゾ素子44の対応する電極44aを接地するためのものであり、第1素子接続端子16aは、第1素子接続端子16aおよび絶縁層10を貫通する導電導電部(接地ビア)18を介して、金属支持層11の金属支持層先端部33(後述)に電気的に接続されている。
【0035】
配線層12は、第2素子接続領域3bに設けられた、ピエゾ素子44の他方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続端子16bを有している。第2素子接続端子16bには、配線層12の素子配線14が接続され、ピエゾ素子44の対応する電極44aに、所定の電圧を印加するようになっている。なお、本実施の形態においては、一対のピエゾ素子44に対応して、テール端子6から延びる2つの素子配線14が第2素子接続端子16bにそれぞれ接続されている例を示しているが、これに限られることはなく、テール端子6から延びる1つの素子配線14を一方の第2素子接続端子16bに接続して、当該一方の第2素子接続端子16bから他方の第2素子接続端子16bに他の配線(図示せず)を介して接続するようにしてもよい。
【0036】
第1素子接続端子16aおよび第2素子接続端子16bは、各配線13、14と同一の材料により形成され、各配線13、14と略同一の厚さを有しており、ヘッド端子5、テール端子6および配線13、14と共に配線層12を構成している。
【0037】
図2に示すように、第1素子接続領域3aにおける第1素子接続端子16aの上面(ピエゾ素子44の側の面)に、ピエゾ素子44の伸長力を受ける第1力受け部19aが設けられている。この第1力受け部19aは、
図2に示すように、ピエゾ素子44の側面44cに当接するようにしてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1力受け部19aが、導電性接着剤48を介してピエゾ素子44の側面44cに当接するようにしてもよい。なお、
図1においては、図面を明瞭にするために、第1力受け部19aは省略されている。
【0038】
本実施の形態においては、このような第1力受け部19aは、導電性材料、好適にはニッケルめっきにより形成されている。
【0039】
また、第1力受け部19aには、第1素子接続端子16aおよび絶縁層10を貫通する導電接続部18が接続されている。本実施の形態においては、第1力受け部19aと導電接続部18は、同一材料により、好適にはニッケルめっきにより、一体に形成されている。
【0040】
第2素子接続領域3bにおける第2素子接続端子16bの上面に、ピエゾ素子44の伸長力を受ける第2力受け部19bが設けられている。この第2力受け部19bは、
図2に示すように、ピエゾ素子44の側面44cに当接するようにしてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第2力受け部19bが、導電性接着剤48を介してピエゾ素子44の側面44cに当接するようにしてもよい。なお、
図1においては、図面を明瞭にするために、第2力受け部19bは省略されている。
【0041】
第2力受け部19bは、第1力受け部19aと同様に、導電性材料、とりわけニッケルめっきにより形成されている。
【0042】
第1力受け部19aおよび第2力受け部19bの厚さは、ピエゾ素子44の厚さの1/3〜2/3の厚さを有していることが好適である。このことにより、ピエゾ素子44の伸長力の伝達損失を低減するとともに、第1力受け部19aおよび第2力受け部19bが、ピエゾ素子44から上方に突出することを確実に防止することができる。
【0043】
また、第1力受け部19aおよび第2力受け部19bは、金(Au)めっき層15によりそれぞれ覆われていることが好ましい。このことにより、導電性接着剤48との接触抵抗を低減することができる。
【0044】
金属支持層11は、
図3に示すように、金属支持層本体30と、ヘッドスライダ52が実装され、金属支持層本体30とは離間した島状のタング部31と、を有している。タング部31の両側には、一対のアーム部32が設けられている。各アーム部32は、タング部31に沿って延びるように形成されている。また、タング部31に対して金属支持層本体30側とは反対側に金属支持層先端部33が設けられている。この金属支持層先端部33は、長手方向軸線(X)に対して直交する方向に延びて、アーム部32に連結されている。また、金属支持層先端部33は、タング部31と離間しており、タング部31は島状になっている。ここでの島状とは、タング部31が、金属支持層本体30、アーム部32および金属支持層先端部33と、金属支持層11を構成する部材では連結されていないということを意味している。
【0045】
第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、金属支持層先端部33に対応する位置に配置されている。すなわち、第1素子接続端子16aは、金属支持層先端部33上に配置されて、当該金属支持層先端部33に支持されている。
【0046】
第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bは、タング部31に対応する位置に配置されている。具体的には、
図3に示すように、タング部31は、その金属支持層本体30の側の部分に設けられた、アーム部32の側に突出する突出部38を含んでおり、この突出部38上に、第2素子接続端子16bが配置されて当該突出部38に支持されている。
【0047】
なお、
図2に示すように、第1素子接続領域3aには、導電性接着剤48を係止する係止部80が設けられていてもよい。この係止部80は、第1素子接続端子16aに設けられた端子係止開口部83を有しており、この端子係止開口部83は、端子係止開口部83に充填される導電性接着剤48を係止するようになっている。なお、
図2においては、端子係止開口部83は、第1素子接続領域3aではなく、第2素子接続領域3bにも設けられているが、いずれか一方に設けるようにしても良い。また、
図1においては、図面を明瞭にするために、端子係止開口部83は省略されている。
【0048】
端子係止開口部83の平面形状は、特に限定されるものではないが、
図4(a)に示すような矩形状に形成することができる。また、
図4(b)に示すように、端子係止開口部83内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる係止壁82が設けられ、端子係止開口部83が、係止壁82によって2つの開口領域に分離されていても良い。あるいは、
図4(c)に示すように、端子係止開口部83内に、ピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向に延びる島状の係止壁82が設けられるようにしても良い。このような係止壁82を設けることにより、ピエゾ素子44を接続する際、導電性接着剤48がピエゾ素子44と第1素子接続端子16aとの間から周囲に流出することをより一層防止できる。また、ピエゾ素子44が伸縮する際に、導電性接着剤48が第1素子接続端子16aまたはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。なお、係止壁82は、配線層12と同一の材料により形成され、配線層12と略同一の厚さを有するようにすることができる。すなわち、係止壁82は、配線層12を構成しており、配線層12をエッチングすることにより形成することができる。
【0049】
図2に示すように、各ピエゾ素子44は、導電性接着剤48により素子接続端子16a、16bに電気的に接続されている。この場合、導電性接着剤48は、力受け部19a、19bにも接している。また、第1素子接続端子16aにおいては、導電性接着剤48は、端子係止開口部83内に充填されている。
【0050】
また、各ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46により素子接続端子16a、16bに接合されている。この非導電性接着剤46は、導電性接着剤48を覆うように塗布されている。一般に、非導電性接着剤46は導電性接着剤48より接合力が強いため、導電性接着剤48だけでなく、非導電性接着剤46を用いることにより、ピエゾ素子44と各素子接続領域3a、3bとの接合信頼性、すなわち接続信頼性を向上させることができる。
【0051】
ところで、
図2に示すように、絶縁層10の配線層12の側の面に、配線層12を覆う保護層20が設けられている。具体的には、素子接続端子16a、16bとピエゾ素子44との間に、保護層20が介在されている。本実施の形態においては、
図1に示すように、ピエゾ素子44は、各配線13、14と重なり合い、各配線13、14上に保護層20を介して配置されるようになるため、素子接続端子16a、16b上に保護層20の一部が形成されることにより、ピエゾ素子44を安定して取り付けることができる。なお、保護層20は、導電性接着剤48との接触面積が確保できれば、端子係止開口部83内の一部に形成されていてもよい。また、
図1および
図3においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
【0052】
第1素子接続領域3aと第2素子接続領域3bとの間の領域には、金属支持層11、絶縁層10、配線層12および保護層20を貫通する貫通開口部39が形成されている。このことにより、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させている。なお、絶縁層10には、スリット状開口部10aが設けられており、このことにより、ピエゾ素子44の伸縮に対するジンバル部2aの可撓性を向上させている。
【0053】
また、
図1に示すように、サスペンション用基板1には、サスペンション用基板1をロードビーム43に取り付ける際に、ロードビーム43とアライメント(位置合わせ)を行うための2つの治具孔25が設けられている。各治具孔25は、長手方向軸線(X)上に配置されている。すなわち、当該長手方向軸線(X)は、各治具孔25を通っている。
【0054】
次に、サスペンション用基板1の各層を構成する材料について詳細に述べる。
【0055】
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13、14との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
【0056】
各配線13、14は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13、14の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13、14の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13、14の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16a、16bは、各配線13、14と同一の材料、同一の厚みとなっている。
【0057】
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、ステンレスを用いることが好適である。金属支持層11の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
【0058】
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、2μm〜30μm、とりわけ2〜6μmであることが好ましい。
【0059】
次に、
図5により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61について説明する。
図5に示すハードディスクドライブ61は、ケース62と、このケース62に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク63と、このディスク63を回転させるスピンドルモータ64と、ディスク63に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク63に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ52を含むヘッド付サスペンション51と、を有している。このうちヘッド付サスペンション51は、ケース62に対して移動自在に取り付けられており、ケース62にはヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52をディスク63上に沿って移動させるボイスコイルモータ65が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション51は、ボイスコイルモータ65にアーム66を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ61を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板71(
図1参照)に接続されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、制御部とヘッドスライダ52との間で伝送されるようになっている。
【0060】
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1をサブトラクティブ法により製造する場合について説明する。なお、アディティブ法によって製造することもできる。
【0061】
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12と、を有する積層体(図示せず)を準備する。続いて、配線層12が、所望の形状にエッチングされて、配線13、14、ヘッド端子5、テール端子6および素子接続端子16a、16bが形成される。この際、導電接続部18用の貫通孔が形成される。また、この際、端子係止開口部83、係止壁82が形成されるようにしてもよい。次に、絶縁層10上に、各配線13を覆う保護層20が形成される。続いて、絶縁層10が所望の形状にエッチングされる。この際、導電接続部18用の貫通孔が形成される。次に、力受け部19a、19bおよび導電接続部18がニッケル(Ni)めっきにより形成される。この際、第1力受け部19aは、導電接続部18と一体に形成される。その後、金属支持層11がエッチングされて、外形加工され、タング部31などが形成される。このようにして、本実施の形態におけるサスペンション用基板1が得られる。
【0062】
次に、本実施の形態におけるサスペンション41の製造方法について説明する。
【0063】
まず、ベースプレート42に、ロードビーム43を介して、上述のようにして得られたサスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート42にロードビーム43が溶接により固定され、続いて、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔25とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、サスペンション用基板1の金属支持層11に溶接が施されて、ロードビーム43とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
【0064】
次に、ピエゾ素子44が第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bに接続される。この場合、まず、素子接続端子16a、16b上に導電性接着剤48が塗布される。この際、導電性接着剤48は、力受け部19a、19bにも塗布される。続いて、ピエゾ素子44が載置される。この際、ピエゾ素子44の側面44cが、力受け部19a、19bにそれぞれ当接する。なお、ピエゾ素子44の側面44cと力受け部19a、19bとの間に導電性接着剤48が介在されるようにしても良い。その後、導電性接着剤48が、素子接続端子16a、16bおよび力受け部19a、19bおよびピエゾ素子44の電極44aに再び塗布される。このようにして、ピエゾ素子44の電極44aが、導電性接着剤48に接続される。次に、導電性接着剤48を覆うように、非導電性接着剤46が塗布される。その後、導電性接着剤48および非導電性接着剤46を硬化する。このことにより、ピエゾ素子44が、金属支持層11および絶縁層10に接合される。
【0065】
このようにして、本実施の形態によるサスペンション41が得られる。
【0066】
その後、得られたサスペンション41にヘッドスライダ52が実装されて、ヘッドスライダ52がヘッド端子5に接続され、
図1に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、
図5に示すハードディスクドライブ61が得られる。
【0067】
図5に示すハードディスクドライブ61においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ65によりヘッド付サスペンション51のヘッドスライダ52がディスク63上に沿って移動し、スピンドルモータ64により回転しているディスク63に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、ヘッドスライダ52とディスク63との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板71を介して、FPC基板71に接続されている制御部(図示せず)とヘッドスライダ52との間で電気信号が伝送される。このような電気信号は、サスペンション用基板1においては、各信号配線13によってヘッド端子5とテール端子6との間で伝送される。
【0068】
ヘッドスライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、ヘッドスライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子44が、ヘッドスライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の第2素子接続領域3bの側のピエゾ素子44の電極44aに、素子配線14および第2素子接続端子16bを介して所定の電圧を印加することにより、長手方向軸線(X)に沿った方向(
図1の矢印P方向)に、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に他方のピエゾ素子44が伸長する。この場合、当該他方のピエゾ素子44の伸長力が、対応する素子接続端子16a、16b上に設けられた力受け部19a、19bにより受けられる。このことにより、絶縁層10のスリット状開口部10aの近傍部分が弾性変形し、タング部31に実装されているヘッドスライダ52がスウェイ方向(
図1の矢印Q方向)に変位することができる。このようにして、ヘッドスライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。とりわけ、ピエゾ素子44は、ヘッドスライダ52の両側に配置されている。このことにより、ピエゾ素子44をヘッドスライダ52に近接して配置することができ、ピエゾ素子44の伸縮力の伝達損失を低減し、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。
【0069】
このように本実施の形態によれば、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第1素子接続端子16aに、ピエゾ素子44の伸長力を受ける第1力受け部19aが設けられ、当該ピエゾ素子44の他方の電極44bに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続端子16bに、第2力受け部19bが設けられている。このことにより、ピエゾ素子44の伸長力を第1力受け部19aおよび第2力受け部19bで受けて、ヘッドスライダ52に効率良く伝達することができる。このため、ピエゾ素子44の伸長力の伝達損失を低減して、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、力受け部19a、19bは、導電性材料により形成されている。このことにより、素子接続端子16a、16bを、力受け部19a、19bを介して導電性接着剤48と電気的に接続させることができ、素子接続端子16a、16bと導電性接着剤48との接触面積を増大させることができる。とりわけ、本実施の形態によれば、力受け部19a、19bは、ニッケルめっきにより形成されている。このことにより、力受け部19a、19bの強度を増大させて、力受け部19a、19bが、ピエゾ素子44の伸長力により変形することを防止でき、ピエゾ素子44の伸長力の伝達損失を低減することができる。また、図示しない他の導電接続部(ビア)を形成する工程で力受け部19a、19bを形成することができ、サスペンション用基板1の製造工程が煩雑化されることを抑制できる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、第1力受け部19aに、第1素子接続端子16aおよび絶縁層10を貫通する導電接続部18が接続されている。このことにより、第1素子接続端子16aを、導電接続部18を介して金属支持層先端部33に電気的に接続することができ、第1素子接続端子16aを接地することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、第1力受け部19aと導電接続部18は、同一材料により一体に形成されている。このことにより、第1力受け部19aと導電接続部18を同一工程で形成することができ、製造工程の煩雑化を抑制できる。
【0072】
なお、上述した本実施の形態においては、第1素子接続端子16aに第1力受け部19aが設けられるとともに、第2素子接続端子16bに第2力受け部19bが設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、力受け部19a、19bは、第1素子接続端子16aおよび第2素子接続端子16bの一方のみに設けられていてもよい。この場合であっても、ピエゾ素子44の伸長力の伝達損失を低減することができる。また、一対のピエゾ素子44のうち電圧が印加されることにより伸長するピエゾ素子44が一方のみである場合には、当該一方のピエゾ素子44に接続される素子接続端子16a、16bのみに、力受け部19a、19bを設けるようにしてもよい。
【0073】
また、上述した本実施の形態においては、力受け部19a、19bが導電性材料、好適にはニッケルめっきにより形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ピエゾ素子44の伸長力を受けることができれば、ニッケルめっき以外の導電性材料で形成してもよく、あるいは、絶縁材料など任意の材料により形成することができる。
【0074】
また、上述した本実施の形態においては、力受け部19a、19bと導電接続部18は、同一材料により一体に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、力受け部19a、19bと導電接続部18は、別々の材料により形成されていてもよい。
【0075】
(第2の実施の形態)
次に、
図6乃至
図10により、本発明の第2の実施の形態におけるサスペンション用基板について説明する。
【0076】
図6乃至
図10に示す第2の実施の形態においては、力受け部と素子接続端子が、同一材料により一体に形成されている点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図5に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図6乃至
図10において、
図1乃至
図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
図6および
図7に示すように、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bは、金属支持層11のタング部31に対応する位置に配置されている。なお、
図6においては、図面を明瞭にするために、ロードビーム43は省略している。また、
図6および
図7においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略されている。
【0078】
具体的には、
図7(c)に示すように、金属支持層11のタング部31は、金属支持層先端部33側に設けられるとともにアーム部32側に突出する第1突出部91と、金属支持層本体30側に設けられるとともにアーム部32側に突出する第2突出部92と、を含んでいる。そして、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16aは、タング部31の第1突出部91に対応する位置に配置されている。すなわち、第1素子接続端子16aは、第1突出部91上に配置されて、当該第1突出部91に支持されている。第2素子接続領域3bの第2素子接続端子16bは、タング部31の第2突出部92に対応する位置に配置されている。すなわち、第2素子接続端子16bは、第2突出部92上に配置されて、当該第2突出部92に支持されている。
【0079】
また、第1素子接続領域3aと第2素子接続領域3bとの間の領域には、金属支持層11、絶縁層10、配線層12および保護層20を貫通する貫通開口部39が形成されている。このことにより、サスペンション用基板1のジンバル部2aにおいて、ピエゾ素子44の伸縮に対する可撓性を向上させている。
【0080】
タング部31の側部には、アーム部32側に開口するタング切欠部93がそれぞれ設けられている。このタング切欠部93は、第1突出部91と第2突出部92との間に配置されている。なお、
図7(c)に、タング切欠部93の平面形状がV字状である例を示しているが、これに限られることはなく、例えば円弧状など、任意の形状とすることができる。
【0081】
このようにして形成されたタング部31は、ピエゾ素子44が
図6に示すP方向に伸縮した際、
図6および
図8に示すように、金属支持層先端部33側の部分がスウェイ方向(Q方向)に変位するように、弾性変形することができる。なお、
図6および
図7に示すように、絶縁層10は、タング部31と金属支持層先端部33とを連結するリミッタ部10bを有しているが、このリミッタ部10bは、可撓性を有しているため、タング部31の弾性変形に追従できるようになっている。
【0082】
なお、一対のタング切欠部93の間の中央部に、ロードビーム43のディンプル56が当接するようになる。ディンプル56は、タング部31を揺動自在に支持する支点として機能するものである。そして、ヘッドスライダ52とタング部31とを接合する接着剤は、このディンプル56との当接部の近傍に塗布されることが好適である。このことにより、ピエゾ素子44の伸縮時に、接着剤によってタング部31の弾性変形が阻害されることを抑制できる。
【0083】
図9に示すように、本実施の形態においては、第1素子接続領域3aの第1素子接続端子16a上に設けられた第1力受け部19aと当該第1素子接続端子16aは、同一材料により一体に形成されている。より具体的には、第1力受け部19a、第1素子接続端子16aおよび導電接続部18が、ニッケルめっきにより一体に形成されている。このことにより、第1素子接続端子16aをタング部31の第1突出部91に電気的に接続することができ、第1素子接続端子16aを接地することができる。このように、第1力受け部19aと第1素子接続端子16aとを一体に形成することにより、サスペンション用基板1の製造工程が煩雑化されることを抑制できる。
【0084】
また、
図9に示すように、第1力受け部19aと第1素子接続端子16aは、金めっき層15により覆われていることが好ましい。このことにより、導電性接着剤48との接触抵抗を低減することができる。また、本実施の形態においては、第1力受け部19aは、ピエゾ素子44より上方に突出するように形成されている。
【0085】
なお、
図9および
図10に示すように、第1素子接続領域3aにおいて、絶縁層10に、非導電性接着剤係止開口部86が設けられていてもよい。この非導電性接着剤係止開口部86は、ピエゾ素子44を絶縁層10に接合する非導電性接着剤46を係止するようになっている。なお、非導電性接着剤係止開口部86の平面形状は、
図10に示すように矩形状またはスリット状とすることが好適であるが、これに限られることはない。スリット状にする場合には、
図10に示すように、非導電性接着剤係止開口部86の長手方向をピエゾ素子44の伸縮方向に直交する方向にすることが好適である。このことにより、ピエゾ素子44を接続する際、非導電性接着剤46がピエゾ素子44と絶縁層10との間から周囲に流出することをより一層防止できる。また、ピエゾ素子44が伸縮する際に、非導電性接着剤46が第1素子接続端子16aまたはピエゾ素子44の電極44aから剥離されることを防止できる。また、第1素子接続領域3aの非導電性接着剤係止開口部86は、第1素子接続端子16aよりも第2素子接続領域3bの側に配置されている。
【0086】
図9に示すように、ピエゾ素子44は、絶縁層10上に配置されており、各ピエゾ素子44は、導電性接着剤48により第1素子接続端子16aに電気的に接続されている。また、ピエゾ素子44は、非導電性接着剤46により絶縁層10に接合されている。第1素子接続領域3aにおける非導電性接着剤46は、導電性接着剤48よりも第2素子接続領域3bの側に塗布されている。一般に、非導電性接着剤46は、導電性接着剤48より接合力が強いため、導電性接着剤48だけでなく、非導電性接着剤46を用いることにより、ピエゾ素子44と素子接続領域3aとの接合信頼性を向上させることができる。
【0087】
なお、
図9においては、第1素子接続領域3aの断面構造が示されているが、第2素子接続領域3bにおいても、第1素子接続領域3aと同様にして、導電性接着剤48および非導電性接着剤46により、ピエゾ素子44を第2素子接続領域3bに接合および接続することができる。また、上述した非導電性接着剤係止開口部86は、第1素子接続領域3aではなく、第2素子接続領域3bに設けても良く、あるいは、第1素子接続領域3aおよび第2素子接続領域3bの両方に設けても良い。
【0088】
このように本実施の形態によれば、ピエゾ素子44の一方の電極44aに導電性接着剤48を介して接続される第1素子接続端子16aに、ピエゾ素子44の伸長力を受ける第1力受け部19aが設けられ、当該ピエゾ素子44の他方の電極44bに導電性接着剤48を介して接続される第2素子接続端子16bに、第2力受け部19bが設けられている。このことにより、ピエゾ素子44の伸長力を第1力受け部19aおよび第2力受け部19bで受けて、ヘッドスライダ52に効率良く伝達することができる。このため、ピエゾ素子44の伸長力の伝達損失を低減して、ヘッドスライダ52を精度良く変位させることができる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、第1力受け部19aは、導電接続部18および第1素子接続端子16aと、同一材料により一体に形成されている。このことにより、第1素子接続端子16aをタング部31の第1突出部91に電気的に接続することができ、第1素子接続端子16aを接地することができる。このように、第1力受け部19aと導電接続部18と第1素子接続端子16aとを一体に形成することにより、サスペンション用基板1の製造工程が煩雑化されることを抑制できる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、上述した実施の形態を、部分的に、適宜組み合わせることも可能である。