特許第6052786号(P6052786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052786
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】加熱炉の炉床支持構造
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/00 20060101AFI20161219BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20161219BHJP
   F27B 9/32 20060101ALI20161219BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20161219BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20161219BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F27B9/00
   F27B9/24 W
   F27B9/32
   E02D27/32 A
   C21D1/00 114B
   C21D9/00 101R
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-52887(P2013-52887)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-178073(P2014-178073A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】大谷 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中野 正昭
(72)【発明者】
【氏名】笹田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−072512(JP,U)
【文献】 特開昭50−141574(JP,A)
【文献】 実開昭55−124457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00
C21D 1/00
C21D 9/00
E02D 27/32
F27B 9/24
F27B 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉殻基礎の上面に、先端部が炉内側に片持ち式に張出す炉床支持金物の基部を固定し、この基部に炉体荷重を直接支持させるとともに、該炉床支持金物の先端部の水平な上面に受板を設け、炉床横梁の先端をこの受板の上面に載せて炉床荷重を支持させたことを特徴とする加熱炉の炉床支持構造。
【請求項2】
前記の炉床横梁は、前記基部と前記受板との間で切断し、隙間を空けたことを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の炉床支持構造。
【請求項3】
炉床支持金物は基部の上面よりも先端部の上面が低い段付き形状であり、受板はこの先端部の上面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の炉床支持構造。
【請求項4】
加熱炉がウォーキングビーム炉であることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の炉床支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄工場においてスラブ等の加熱に用いられる加熱炉の炉床支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の連続鋳造機において鋳造された鋳片は所定長さに切断されてスラブとなり、加熱炉において加熱されたうえで熱間圧延工程に送られる。このための加熱炉としては、特許文献1に示されるようなウォーキングビーム炉が広く用いられている。このような加熱炉は、耐火壁面を備えた炉体と炉床とを備えたものであり、炉殻基礎(加熱炉基礎)により炉体荷重と炉床荷重とを支持している。なお、炉床荷重には加熱中のスラブ荷重も含まれる。
【0003】
図1は従来の加熱炉の炉床支持構造を示す説明図である。この図1において、1は鉄筋コンクリート製の炉殻基礎、2は炉殻基礎1の上面に設置された受板、3は加熱炉の炉床横梁、4は炉体側壁支柱である。図1のように、従来構造では炉床横梁3の端部は受板2を介して炉殻基礎1の上面に支持されており、炉体側壁支柱4の下端も炉床横梁3の先端部に固定されていた。
【0004】
炉体側壁支柱4には炉体側壁部および天井部自体の重量Fが作用し、炉床横梁3には炉床自体の重量の他に、炉床によって支えられているスラブの重量および炉床耐火物・炉内スケールの重量も作用する。これらをあわせた荷重をfとする。このため図1に示した従来構造では、炉体荷重と炉床荷重の全てが受板2を介して炉殻基礎1に支持されている。炉殻基礎1はこれらの垂直荷重F+fに耐えられるに十分な強度を備えているため、垂直方向の荷重に関しては問題はない。
【0005】
しかし加熱炉の内部は運転中には高温になるため、炉床横梁3も100℃前後にまで昇温し、熱膨張することが避けられない。炉床横梁3の長さを約10mとすると、その熱膨張量は10〜15mmとなる。このように加熱炉の昇温時には炉床横梁3の端部は水平方向に移動するため、この熱膨張によって垂直荷重(F+f)×摩擦係数(0.3)の水平力(基礎スラスト力)が炉殻基礎1の上端に加えられることとなる。炉殻基礎1はこのような水平方向の荷重に対する強度は不十分であるため、長期間の使用によりコンクリートが損傷するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−126346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、炉床横梁の熱膨張による炉殻基礎の損傷を生ずるおそれのない加熱炉の炉床支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の加熱炉の炉床支持構造は、炉殻基礎の上面に、先端部が炉内側に片持ち式に張出す炉床支持金物の基部を固定し、この基部に炉体荷重を直接支持させるとともに、該炉床支持金物の先端部の水平な上面に受板を設け、炉床横梁の先端をこの受板の上面に載せて炉床荷重を支持させたことを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、炉床横梁は前記基部と前記受板との間で切断し、隙間を空けた構造とすることもできる。また請求項3のように、炉床支持金物は基部の上面よりも先端部の上面が低い段付き形状であり、受板はこの先端部の上面に設けられている構造とすることができる。また請求項4のように、好ましい実施形態においては、加熱炉はウォーキングビーム炉である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炉床支持構造においては、炉体荷重は炉床支持金物の基部により支持させるとともに、炉床横梁の先端は炉床支持金物の先端部の水平な上面に受板を介して支持される。このように従来は全荷重を炉殻基礎の上面の受板で支持していたのに対して、本発明では炉体荷重と炉床荷重とを分離した。このため、運転時に炉床横梁が熱膨張することは従来と同様であるが、炉床支持金物の先端部に作用する垂直荷重は従来よりも小さくなるので、垂直荷重(F+f)×摩擦係数(0.3)の式により算出される水平力も小さくなる。この結果、炉床横梁の熱膨張によって炉殻基礎の作用する水平力(基礎スラスト力)も減少し、長期間使用しても炉殻基礎の損傷を生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の加熱炉の炉床支持構造を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態を示す加熱炉の断面図である。
図3】実施形態の加熱炉の炉床支持構造を示す説明図である。
図4】本発明の他の実施形態を示す加熱炉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図2に示す実施形態の加熱炉は、スラブ加熱用のウォーキングビーム炉である。この図において、10は加熱炉の側壁耐火物、11は同側壁耐火物10の外郭に配置された炉体側壁支柱および側壁鉄皮である。また12は固定炉床を構成する炉床横梁である。ウォーキングビーム炉では炉床横梁12の上面に多数の固定ポスト13が立設されている。また固定炉床を貫通して多数の移動ポスト14が立設されており、固定ポスト13の上面に支持されたスラブSを持ち上げて前進させて降ろす動作を繰り返しながら、スラブSを加熱することは従来と同様である。炉床横梁12には固定炉床の重量のほかに、固定ポスト13の上面に支持されたスラブSの重量および炉床耐火物・炉内スケール等も作用する。これらの荷重を全てあわせたものをfとする。
【0013】
15は鉄筋コンクリート製の炉殻基礎である。従来構造では炉床横梁12の先端が炉殻基礎15に載せられていたのであるが、本発明では炉殻基礎15の上面に炉床支持金物16を設けた。炉床支持金物16は強固な鋼鉄製である。
【0014】
この炉床支持金物16は図3に示すように炉床支持金物の基部17をアンカー金具18によって炉殻基礎15に強固に固定し、その炉床支持金物の先端部19を炉内側に片持ち式に張出したものである。またその上面は水平であるが、炉床支持金物の基部17の上面よりも炉床支持金物の先端部19の上面が低い段付き形状となっている。炉体側壁支柱および側壁鉄皮11の下端は炉床支持金物16の基部17の直上に位置するので、炉体側壁支柱および側壁鉄皮11が受けている炉体荷重(垂直荷重)は基部17に直接作用し、炉殻基礎15に支持される。
【0015】
また、炉床支持金物16の先端部19の水平な上面には受板20が設けられており、炉床横梁12を切断した炉床横梁の先端21をこの受板20の上面に載せた構造となっている。このため炉床横梁12が受ける炉床荷重はこの受板20を介して炉床支持金物16の先端部19に支持される。また、炉床横梁12が熱膨張した場合には、炉床横梁12の先端21が受板20の上を水平方向に移動することとなる。なお、受板20の厚さを炉床支持金物16の上面の段差と等しくしておけば、既設の炉床横梁12をそのまま利用することができる利点がある。
【0016】
22は炉床横梁12の先端切断部であり、この先端切断部22よりも炉内側の炉床横梁12が受ける荷重は、上記したように受板20を介して炉床支持金物16の先端部19に支持される。また先端切断部22よりも炉外側は単に垂直荷重の伝達体となっている。本実施形態においてこのような先端切断部22があるのは、既設の炉床横梁12を切断したためであり、新設の場合には炉床横梁12を短くしておけばよい。
【0017】
このような構造の炉床支持構造においては、炉体側壁支柱11により伝達される炉体荷重は炉床支持金物16の基部17により支持される。一方、炉床横梁12の先端21は炉床支持金物16の先端部19に受板20を介して支持される。このように本発明では炉体荷重Fと炉床荷重fとを分離したので、炉床支持金物16の先端部に作用する垂直荷重は従来よりも小さくなる。そのため、運転時に炉床横梁12が熱膨張しても、垂直荷重(F+f)×摩擦係数(0.3)の式により算出される水平力も小さくなる。
【0018】
すなわち、従来は炉床横梁12が熱膨張すると炉体荷重と炉床荷重との合計であるF+fに摩擦係数を掛けた値の水平スラスト力が炉殻基礎15の上端に作用していたのに対して、本願発明では炉体荷重を受ける部分と炉床荷重を受ける部分とを分散させ、F+fから炉体荷重Fを除いたf(即ちスラブの重量および炉床耐火物・炉内スケール等をあわせた炉床荷重)だけが炉床支持金物16の先端部に作用するようにした。このため、炉床横梁12の熱膨張によって炉殻基礎15に作用する水平スラスト力は、f×摩擦係数となって従来よりも小さくなる。この結果、長期間使用しても炉殻基礎15の損傷を生ずることがない。なお、前記した炉床横梁の先端21の切断部22は、炉床横梁12の熱膨張量を吸収できる幅の隙間を持たせておき、炉床横梁12の上面と炉床耐火物23の下面が滑るものとする。
【0019】
また、図4のように、炉床耐火物23を階段状に二分割し、前記切断部22の隙間と同量のスライドが可能で、炉内雰囲気のシールも可能な構造とすることもできる。このようにすれば、炉床横梁12の上面を炉床耐火物23の下面が滑りにくい場合でも、問題なく熱膨張を吸収することが可能となる。また、炉床支持金物16をその先端部19を炉内側に片持ち式に張出した構造としたので、既設の炉殻基礎15や炉床横梁12をそのまま利用することができる利点がある。なお、上記の実施形態では加熱炉はウォーキングビーム炉であったが、本発明はその他の型式の加熱炉の炉床支持構造としても使用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0020】
1 炉殻基礎
2 受板
3 炉床横梁
4 炉体側壁支柱
10 加熱炉の側壁耐火物
11 炉体側壁支柱および側壁鉄皮
12 炉床横梁
13 固定ポスト
14 移動ポスト
15 炉殻基礎
16 炉床支持金物
17 炉床支持金物の基部
18 アンカー金具
19 炉床支持金物の先端部
20 受板
21 炉床横梁の先端
22 炉床横梁の先端21の切断部
23 炉床耐火物
F 炉体荷重
f 炉床荷重
図1
図2
図3
図4