特許第6052868号(P6052868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6052868エポキシ樹脂の硬化剤、製法、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052868
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂の硬化剤、製法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20161219BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08G59/62
   C08L63/00 C
   H01L23/30 R
   H01L23/14 R
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-252154(P2012-252154)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-253220(P2013-253220A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年7月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-109574(P2012-109574)
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100075524
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 重光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 航
【審査官】 柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−086745(JP,A)
【文献】 特開2004−168930(JP,A)
【文献】 特開平05−331263(JP,A)
【文献】 特開2008−063371(JP,A)
【文献】 特開平07−090054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00− 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基当量が50〜250g/eqおよび150℃溶融粘度が50〜500mPa・sでありフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するフェノール化合物、下記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を、ビスマレイミド化合物のフェノール化合物に対する重量比が0.5〜5.0、ジヒドロキシナフタレン化合物のフェノール化合物に対する重量比が0.1〜1.0で、100〜200℃の温度範囲で混合する、150℃溶融粘度が50〜500mPa・sであり、水酸基当量が250〜400g/eqであるエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)中、Arは式(2)で示されるアリーレン基であり、Xはメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、硫黄原子または直接結合であり、nは0〜1の整数である。式(2)中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、aは0〜4の整数である。式(3)中、R、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、b、cは0〜4の整数であり、dおよびeはそれぞれ0〜2の整数であってd+e=2である。)
【請求項2】
前記フェノール化合物と前記ジヒドロキシナフタレン化合物を溶融混合した後に、前記ビスマレイミド化合物を添加することを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【請求項3】
前記フェノール化合物が、下記一般式(4)で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【化4】
(式中、nは1以上の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。)
【請求項4】
前記フェノール化合物が、下記一般式(5)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【化5】
(式中、nは1以上の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。)
【請求項5】
前記フェノール化合物が、下記一般式(6)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【化6】
(式中、mおよびnは、m+n=1〜10およびm/n=0.7〜1.5の関係を満たすそれぞれが0.4〜6.0の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。)
【請求項6】
前記フェノール化合物が、一般式(4)、(5)または(6)で示される化合物と、下記一般式(7)または(8)で示されるベンゾキノン類との付加化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【化7】
【化8】
(式(7)および(8)中、R〜Rは、それぞれ水素又は炭素数が1〜6の炭化水素基であり、R10は炭素数が1〜6の炭化水素基であって、yは0〜4の整数である。)
【請求項7】
前記ビスマレイミド化合物の融点が120〜250℃、ジヒドロキシナフタレン化合物の融点が100〜200℃である請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により製造されたエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを混合するエポキシ樹脂組成物の製造方法
【請求項9】
請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法において、さらに硬化促進剤を混合するエポキシ樹脂組成物の製造方法
【請求項10】
請求項8または9に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法において、さらに無機充填材を混合するエポキシ樹脂組成物の製造方法
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法により製造されたエポキシ樹脂組成物を熱硬化するエポキシ樹脂硬化物の製造方法
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法により製造されたエポキシ樹脂組成物を用いて半導体装置を封止する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材、各種バインダー、コーティング材、積層材などに有用なエポキシ樹脂の硬化剤、およびそれを用いた組成物、硬化物、その用途に関する。さらに詳しくは、本発明は難燃性及び耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化剤、およびそれを用いた組成物、硬化物、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂の硬化剤の中でも大きな一群をなすフェノール系硬化剤は、種類が豊富なことに加えて低コストなどのメリットより各種産業に用いられている。これらは産業の技術革新にともない様々な要求性能に応えるべく多種多様なものがこれまでに開発されてきた。
【0003】
電子材料分野では近年、半導体パッケージの小型・薄型化及び形状の複雑化に伴い、半導体封止材料用樹脂には、益々低粘度のものが要求されるようになってきている。低粘度であればその流動性が向上することで複雑形状のパッケージ、例えばBGAなどにも対応が可能となり、またフィラーの高充填化が可能となることで、これらの用途に求められる難燃性、半田耐熱性、耐湿信頼性の面でも有利となる。
【0004】
また、地球環境への配慮により、これまで利用されてきたハロゲン含有系化合物や、アンチモン化合物などの難燃剤に代わる、新規な難燃性エポキシ樹脂組成物の要求が高まっており、汎用パッケージから先端パッケージ用に至る用途で使用されていたフェノールアラルキル樹脂にもハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を用いなくても優れた難燃性を有することが求められている(例えば特許文献1など)。なかでもビフェニル骨格を導入したフェノールアラルキル樹脂は、高難燃性であることが知られており、先端パッケージ用途で使用されているが、ガラス転移温度(Tg)が低くなるという欠点がある(例えば特許文献2など)。Tgの低下は一般に高温信頼性と耐熱性の低下を引き起こすため、これを改善できるエポキシ樹脂硬化剤の提供が望まれていた。
【0005】
一方、耐熱性を有するフェノール系硬化剤としてはトリフェノールメタン型ノボラック樹脂が知られており、高流動性を具備するものもいくつか報告がある(例えば特許文献3〜4など)。しかしこのようなトリフェノールメタン構造を持つ樹脂は耐燃性に乏しいことが難点であった(例えば特許文献5など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−97965
【特許文献2】特開2000−129092
【特許文献3】特開2002−275228
【特許文献4】特開2010−229203
【特許文献5】特開2011−252037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビスマレイミドモノマーは高結晶性で他配合成分との相溶が困難なため、エポキシ系材料への応用例は限られていた。とりわけ均質な相溶状態が求められる製品形態への応用には不向きであり、高耐熱化を目的として公知のフェノール系硬化剤にビスマレイミドモノマーを相溶させた報告はない。
【0008】
本発明者らは、従来技術の課題を解決できる硬化剤について鋭意研究を行った結果、本発明に到達したものである。本発明者らは、材料の耐熱性賦与の手段としてビスマレイミドモノマーの配合は簡便かつ効果的な手法になると考え、特定のジヒドロキシナフタレンを添加することにより、高結晶性のビスマレイミドモノマーをフェノール系樹脂に相溶させ、高耐熱性、高難燃性および高流動性を満たすフェノール系硬化剤が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たす新規のフェノール系硬化剤、およびそれを用いた組成物、並びにその硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水酸基当量が50〜250g/eqおよび150℃溶融粘度が50〜500mPa・sでありフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するフェノール化合物、下記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を、ビスマレイミド化合物のフェノール化合物に対する重量比が0.5〜5.0、ジヒドロキシナフタレン化合物のフェノール化合物に対する重量比が0.1〜1.0で、100〜200℃の温度範囲で混合する、150℃溶融粘度が50〜500mPa・sであり、水酸基当量が250〜400g/eqであるエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
式(1)中、Arは式(2)で示されるアリーレン基であり、Xはメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、硫黄原子または直接結合であり、nは0〜1の整数である。式(2)中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、aは0〜4の整数である。式(3)中、R、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、b、cは0〜4の整数であり、dおよびeはそれぞれ0〜2の整数であってd+e=2である。
【0014】
前記フェノール化合物が、下記一般式(4)で示される化合物である前記したエポキシ樹脂硬化剤は本発明の好ましい態様である。
【化4】
式中、nは1以上の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。
【0015】
前記フェノール化合物が、下記一般式(5)で示される化合物である前記したエポキシ樹脂硬化剤は本発明の好ましい態様である。
【化5】
式中、nは1以上の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。
【0016】
前記フェノール化合物が、下記一般式(6)で示される化合物である前記したエポキシ樹脂硬化剤は本発明の好ましい態様である。
【化6】
式中、mおよびnは、m+n=1〜10およびm/n=0.7〜1.5の関係を満たすそれぞれが0.4〜6.0の数であって、水酸基当量が50〜250g/eqを満足させる数である。
【0017】
前記フェノール化合物が、前記一般式(4)、(5)または(6)で示される化合物と、下記一般式(7)または(8)で示されるベンゾキノン類との付加化合物である前記したエポキシ樹脂硬化剤もまた本発明の好ましい態様である。
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
式(7)および(8)中、R〜Rは、それぞれ水素又は炭素数が1〜6の炭化水素基であり、R10は炭素数が1〜6の炭化水素基であって、yは0〜4の整数である。
【0020】
前記フェノール化合物と前記ジヒドロキシナフタレン化合物を溶融混合した後に、前記ビスマレイミド化合物を添加する前記したエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法は本発明の好ましい態様である。
また、前記ビスマレイミド化合物を添加する温度が、前記フェノール化合物と前記ジヒドロキシナフタレン化合物の溶融混合温度より低い前記したエポキシ樹脂硬化剤を製造する方法も本発明の好ましい態様である。
【0021】
本発明はまた、前記したエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物およびそれを硬化させたエポキシ樹脂硬化剤を提供する。
【0022】
本発明は、前記したエポキシ硬化剤を用いて半導体装置を封止する方法も提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たすフェノール系硬化剤の製造方法が提供される。
本発明によりまた、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たす新規のフェノール系硬化剤を用いた組成物の製造方法が提供される。
【0024】
本発明によりまた、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たす新規のフェノール系硬化剤を用いた組成物の硬化物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で得られた混合生成物1のGPC分析のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、フェノール化合物1重量部に対し、前記一般式(1)で示されるビスマレイミド化合物が0.5〜5.0重量部、前記一般式(3)で示されるジヒドロキシナフタレン化合物が0.1〜1.0重量部を、100〜200℃の温度範囲で混合する、エポキシ樹脂硬化剤を製造する方法を提供するものである。
【0027】
本発明に用いられるフェノール化合物は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有し、前述のビスマレイミド化合物およびジヒドロキシナフタレン化合物との溶融混合に際して相溶しやすく、高流動性の混合生成物を与えるものが用いられる。たとえば、ビスフェノールF,ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール系化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などのノボラック化合物、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル化合物、トリフェノールメタン樹脂などの公知のポリフェノール化合物を用いることができる。高耐熱性、高難燃性、および高流動性のバランスを考慮すると、水酸基当量は50〜250g/eq、150℃溶融粘度は50〜500mPa・sの範囲のものが適する。その中でもアラルキル化合物の使用が好ましく、これらアラルキル化合物はパラキシリレングリコール、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、またはこれらの誘導体を架橋剤としてフェノール類またはナフトール類などのフェノール性水酸基含有化合物と反応させることにより得ることができる。
【0028】
本発明に用いられる前記一般式(1)で示されるビスマレイミド化合物は、無水マレイン酸と2官能型芳香族アミン類を縮合させることで、容易に得ることが可能である(例えば特開昭60−260623号公報など参照)。本発明に用いられるビスマレイミド化合物としては、融点が100〜250℃、より好ましくは120〜250℃の物性を有するものが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる前記一般式(3)で示されるジヒドロキシナフタレン化合物としては、融点が100〜200℃の物性を有するものが好ましい。例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが挙げられるが、エポキシ樹脂との反応性を考慮すると水酸基同士が隣接していないものが特に好ましい。
【0030】
フェノール化合物と、前記一般式(1)で示されるビスマレイミド化合物と、前記一般式(3)で示されるジヒドロキシナフタレン化合物との混合において、好ましくはフェノール化合物とビスマレイミド化合物の重量比が0.5〜5.0、より好ましくは1.0〜4.5であり、フェノール化合物とジヒドロキシナフタレン化合物の重量比が0.1〜1.0、より好ましくは0.2〜0.8で混合することが望ましい。
【0031】
上記混合方法には特に制限はなく、通常の混合容器において好ましくは攪拌条件下に混合される。混合条件にも特に制限はないが、各成分を120〜200℃の温度範囲で混合することによって、150℃溶融粘度が50〜500mPa・s、水酸基当量が250〜400g/eqである混合生成物を得ることができる。混合させる時間は、混合温度によって異なるが、15〜60分間程度が好ましい。
【0032】
フェノール化合物、前記一般式(1)で示されるビスマレイミド化合物、前記一般式(3)で示されるジヒドロキシナフタレン化合物を混合して得られる混合生成物は、各成分が均質な相溶状態にあるものと推定される。本発明により得られる混合生成物は、後記の実施例に示されているようにGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)分析によれば混合した各成分に対応したピークが認められることから、各成分が混合状態で存在するものと考えられる。
【0033】
前記一般式(4)、(5)または(6)で示される化合物に対する、前記一般式(7)または(8)の反応割合は、通常、架橋基のモル数に対し0.2〜5.0モル倍のベンゾキノン類が使用される。
反応条件については、特に制限はないが、必要に応じて触媒を加え80〜200℃程度の温度範囲とするのがよい。
【0034】
このようにして得られる混合生成物からなるエポキシ樹脂硬化剤は、成形温度域での溶融粘度が低く加工性に優れており、難燃性、耐熱性に優れることから、成形材、各種バインダー、コーティング材、積層材などに使用することができる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記したエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物である。エポキシ樹脂組成物において、上記エポキシ樹脂硬化剤とともに使用することができるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などの一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独使用でも2種類以上併用してもよい。耐湿性、熱時低弾性率、難燃性を考慮すると、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能型エポキシ樹脂や、フェノ−ルビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物などから選ばれる芳香環の多い多官能型エポキシ樹脂を使用するのが好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂の硬化に際しては、硬化促進剤を併用することが好ましい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール系硬化剤で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができ、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、尿素化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、3−(o−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(p−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、1,1’−フェニレンビス(3,3−ジメチルウレア)、1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3,3−ジメチルウレア)などの尿素化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、トリフェニルホスホニオフェノラート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレートなどのホスホニウム塩を挙げることができるが、エポキシ樹脂の硬化とビスマレイミドの重合の両方に高活性を示す、イミダゾール類、尿素化合物、ホスホニウム塩の使用が好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、低応力剤などを添加または予め反応して用いることができる。また他の硬化剤を併用することもできる。このような他の硬化剤の例として、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂、フェノールナフチルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型ノボラック樹脂などを挙げることができる。
【0038】
無機充填剤の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、とくに非晶性シリカ、結晶性シリカ、硫酸バリウムが好ましい。また優れた成形性を維持しつつ充填剤の配合量を高めたい場合は、細密充填を可能とするような粒度分布の広い球形の充填剤を使用することが好ましい。
【0039】
カップリング剤の例としては、メルカプトシラン系、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系などのシランカップリング剤やチタンカップリング剤を、離型剤の例としてはカルナバワックス、パラフィンワックスなど、また着色剤としてはカーボンブラックなどをそれぞれ例示することができる。難燃剤の例としては、リン化合物、金属水酸化物など、低応力剤の例としては、シリコンゴム、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性シリコンオイルなどを挙げることができる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との配合比は、耐熱性、機械的特性などを考慮すると、水酸基/エポキシ基の当量比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2の範囲にあることが好ましい。また他の硬化剤と併用する場合においても水酸基/エポキシ基の当量比が上記割合となるようにするのが好ましい。硬化促進剤は、硬化特性や諸物性を考慮すると、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で使用するのが好ましい。無機充填剤の配合率については、その種類によっても異なるが、半田耐熱性、成形性(溶融粘度、流動性)、低応力性、低吸水性などを考慮すると、無機充填剤を組成物全体の60〜93重量%を占めるような割合で配合することが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、所定の割合の各原料を、例えばミキサーによって充分混合後、熱ロールやニーダーなどによって混練処理を加え、さらに冷却固化後適当な大きさ粉砕し、必要に応じタブレット化するなどの方法を挙げることができる。このようにして得た成形材料は、例えば低圧トランスファー成形などにより半導体を封止し、半導体装置を製造することができる。
【0042】
エポキシ樹脂組成物を絶縁層材料として調製する場合の一般的な方法としては、所定の割合の各原料を溶剤に溶解させ、これを回路基板に塗布するための層間絶縁用ワニスとすることができ、これをガラス繊維に含浸させて加熱処理を行うことにより該用途のプリプレグとすることができ、またはこれを支持フィルム上で加熱処理してフィルム状とした該用途の接着シートとすることができる。これらはいずれの形態で使用しても層間絶縁層とすることができる。
【0043】
エポキシ樹脂組成物の硬化は、上記いずれの製品形態であっても例えば100〜250℃の温度範囲で行うことができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例、比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0045】
[参考例]
フェノール1030.6g(10.964モル)、1,4−ベンゾキノン498.1g(4.698モル)を、下部に抜出口のある4つ口フラスコに仕込み、内温60℃を保ちながら10%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液を0.89g滴下した。その後80℃で2時間保持10%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液をさらに1.25g滴下した。その後120℃で1時間保持した。この段階で未反応の1,4−ベンゾキノンは残存しておらず、全て反応したことをガスクロマトグラフィーで確認した。その後、パラキシレングリコールジメチルエーテル260.0g(1.566モル)を添加し、発生する低沸点成分を系外に揮散させながら内温150℃で4時間保持した。この段階で未反応のパラキシレングリコールジメチルエーテルは残存しておらず、全て反応したことをガスクロマトグラフィーで確認した。その後、未反応フェノールがガスクロマトグラフィーで未検出になるまで30torrで150℃の減圧下でフェノールを除去した。この反応生成物を150℃で抜き出し、黒褐色の1,4−ベンゾキノン変性型フェノールアラルキル樹脂1159.6gを得た。JIS K 2207に基づき、この樹脂の軟化点を測定したところ77℃であった。またICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融粘度は95mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した水酸基当量は94g/eqであった。
【0046】
[実施例1]
フェノールビフェニルアラルキル樹脂24.41g(エア・ウォーター(株)製、HE200C−10、水酸基当量205g/eq、150℃溶融粘度100mPa・s)および1,6−ジヒドロキシナフタレン5.61g(35ミリモル)を150℃で30分間溶融混合したのち、液温を120℃に下げて4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド35.91g(100ミリモル)を添加した。これを同温で30分間攪拌後常温冷却することより、混合生成物として均質な黒褐色のガラス状溶融物65.93g(混合生成物1)が得られた。
混合生成物1の、ICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融粘度は100mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した溶融物の水酸基当量は350g/eqであった。
上記で得られた混合生成物1を、下記条件でGPC分析した。
GPC分析条件
(1)使用機器:東ソー株式会社製、HLC−8220 GPC
(2)カラム:東ソー株式会社製、TSKgelG2000HXL+G1000HXL(6mm×30cm 2本)
(3)溶媒:テトラヒドロフラン
(4)流量:1.000ml/min
(5)温度:40℃
(6)検出器:RI、HLC−8220 GPC内臓RI検出器
GPC分析により得られたチャートを図1として示す。図1のリテンションタイム(RT)10.8〜13.1分はフェノールビフェニルアラルキル樹脂に対応するピークで面積百分率は50%であり、RT13.9分はビスマレイミドに対応するピークで面積百分率は43%であり、RT14.6分は1,6−ジヒドロキシナフタレンに対応するピークで面積百分率は7%であった。
本実施例1で得られた混合生成物1を、エポキシ硬化剤1とする。
【0047】
[実施例2]
フェノールビフェニルアラルキル樹脂24.41g(エア・ウォーター(株)製、HE200C−10)および1,6−ジヒドロキシナフタレン11.22g(70ミリモル)を150℃で30分間溶融混合したのち、液温を120℃に下げて4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド35.91g(100ミリモル)を添加した。これを同温で30分間攪拌後常温冷却することより、混合生成物として均質な黒褐色のガラス状溶融物71.54g(混合生成物2)が得られた。
混合生成物2のICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融物の溶融粘度は80mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した溶融物の水酸基当量は295g/eqであった。
本実施例2で得られた混合生成物2を、エポキシ硬化剤2とする。
【0048】
[実施例3]
参考例で得られた、1,4−ベンゾキノン変性型フェノールアラルキル樹脂(水酸基当量94g/eq、150℃溶融粘度95mPa・s)1159.6gおよび2,7−ジヒドロキシナフタレン626.8g(3.917モル)を150℃で30分間溶融混合したのち、液温を135℃に下げて4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド4675.1g(13.059モル)を添加した。これを同温で30分間攪拌後常温冷却することより、混合生成物として均質な黒褐色のガラス状溶融物6461.3g(混合生成物3)が得られた。
混合生成物2のICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融物の溶融粘度は150mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した溶融物の水酸基当量は397g/eqであった。
本実施例3で得られた混合生成物3を、エポキシ硬化剤3とする。
【0049】
[実施例4]
フェノールノボラック変性トリフェノールメタン樹脂18.8g(エア・ウォーター(株)製、HE910C−10、水酸基当量100g/eq、150℃溶融粘度110mPa・s)および2,7−ジヒドロキシナフタレン9.6g(60ミリモル)を150℃で30分間溶融混合したのち、液温を120℃に下げて4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド71.6g(200ミリモル)を添加した。これを同温で30分間攪拌後常温冷却することより、混合生成物として均質な黒褐色のガラス状溶融物100.0g(混合生成物4)が得られた。
混合生成物4のICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融物の溶融粘度は80mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した溶融物の水酸基当量は295g/eqであった。
本実施例4で得られた混合生成物4を、エポキシ硬化剤4とする。
【0050】
[比較例1]
フェノールビフェニルアラルキル樹脂24.41g(エア・ウォーター(株)製、HE200C−10)および4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド35.91g(100ミリモル)を120℃で30分間溶融混合した後、さらに30分間攪拌することより均質な黒褐色のガラス状溶融物(混合生成物5)60.32gが得られた。
ICI溶融粘度計により測定した150℃における溶融物の溶融粘度は400mPa・sであった。さらにアセチル化逆滴定法により測定した溶融物の水酸基当量は510g/eqであった。
【0051】
実施例1〜4で得られた混合生成物1〜4の物性を、比較例1で調製した混合生成物5、及び比較例2〜4で使用した公知エポキシ樹脂硬化剤5〜7と対比して、表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例5]
下記一般式(9)で示されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000、フェノールビフェニルアラルキル型、エポキシ当量275g/eq)、実施例1で得られたエポキシ硬化剤1、溶融シリカおよびウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製、U−CAT 3512T)を表2に示す割合で配合し、充分に混合した後、85±3℃の2本ロールで3分間混練し、冷却、粉砕することにより成形用組成物を得た。トランスファー成形機でこの成形用組成物を圧力100kgf/cmで175℃2分間成形した後、180℃6時間のポストキュアを行い、ガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを調製し、その評価を行った。その結果を表2に示した。
【0054】
【化9】
(式中、Gはグリシジル基、nは1〜10の数)
【0055】
[実施例6]
実施例5において、使用したエポキシ硬化剤1に代えて、エポキシ硬化剤2を用い、配合割合を表2のようにした以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0056】
[実施例7]
実施例5において、使用したエポキシ硬化剤1に代えて、エポキシ硬化剤3を用い、配合割合を表2のようにした以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0057】
[実施例8]
実施例5において、使用したエポキシ硬化剤1に代えて、エポキシ硬化剤4を用い、配合割合を表2のようにした以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0058】
[比較例2]
実施例5において、エポキシ硬化剤1に代えて、フェノールノボラック変性トリフェノールメタン樹脂(エア・ウォーター(株)製、HE910C−10、水酸基当量100g/eq、150℃溶融粘度110mPa・s)(本樹脂をエポキシ硬化剤5とする)を使用し以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0059】
[比較例3]
実施例5において、エポキシ硬化剤1に代えて、に代えて、フェノールアラルキル樹脂(エア・ウォーター(株)製、HE100C−10、水酸基当量168g/eq、150℃溶融粘度1100mPa・s)(本樹脂をエポキシ硬化剤6とする)を用いる以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0060】
[比較例4]
実施例5において、エポキシ硬化剤1に代えて、参考例で得られた1,4−ベンゾキノン変性型フェノールアラルキル樹脂(本樹脂をエポキシ硬化剤7とする)を用いる以外は、実施例5と同様にして成形用組成物を調製し、これよりガラス転移温度測定用及び難燃性試験用のテストピースを得た。その結果を表2に示した。
【0061】
これらの成形材料の物性を、次の方法により測定した。
(1)組成物の溶融粘度
エポキシ樹脂組成物2.5gをタブレットにして、高下式フローテスター(温度175℃、オリフィス径1mm、長さ1mm)にて測定した。
(2)ガラス転移温度
TMAによりテストピースの線膨張係数を昇温速度10℃/分で測定し、線膨張係数の変曲点をガラス転移温度とした。
(3)難燃性
厚み1.6mm×幅10mm×長さ135mmのサンプルを用い、UL−94Vに準拠して残炎時間を測定し評価した。
これらの評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表1において、実施例1〜実施例4に示す本発明が与える硬化剤は、比較例2〜比較例4に示す公知の硬化剤と同等の溶融粘度を有する。一方、比較例1では本発明の硬化剤の配合成分であるジヒドロキシナフタレン化合物の添加を省略すると溶融粘度の低い硬化剤が得られず、高流動性の実現に不利になることがわかる。
表2において、本発明の硬化剤1〜4を含むエポキシ樹脂組成物の流動性は、公知の硬化剤由来のエポキシ樹脂組成物と同等であることがわかる。その硬化物は耐熱性と難燃性に優れており、硬化剤5〜7使用時以上の耐熱挙動と難燃挙動を両立する。中でも実施例7と比較例4および実施例8と比較例2に着目すると、本発明の処方で元来の硬化剤を変性することにより耐熱性と難燃性を著しく改善できることがわかる。
したがって、本発明は、従来技術では実現困難であった、高流動性、高耐熱性、および高難燃性を備えたエポキシ樹脂組成物を可能にするものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により提供されるエポキシ樹脂硬化剤は、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たすエポキシ樹脂硬化剤である。
また本発明により、高難燃性、高耐熱性および高流動性を満たす新規のエポキシ樹脂硬化剤を用いた組成物、およびその硬化物が提供される。
本発明により、特にエポキシ樹脂硬化剤として有用であり、とりわけ半導体封止用、層間絶縁材料として用いた場合に、低溶融粘度、難燃性に優れたエポキシ樹脂組成物を形成することができるフェノール系重合体、およびそのエポキシ樹脂組成物が提供される。
図1