特許第6063326号(P6063326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063326
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】オイルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20170106BHJP
【FI】
   F16J15/3204 201
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-72845(P2013-72845)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196794(P2014-196794A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104490
【氏名又は名称】キーパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】山中 和也
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−170009(JP,A)
【文献】 実開平02−127854(JP,U)
【文献】 特開平08−184377(JP,A)
【文献】 実開平04−063869(JP,U)
【文献】 実開平02−109076(JP,U)
【文献】 特開2012−087892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204−15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主シールリップのシール面が、リップ先端から非密封流体側に順に配置されたシール面角度γの第1の斜面と、シール面角度αの第2の斜面と、シール面角度βの第3の斜面とを備えて構成され、前記シール面角度α,γ,βの関係がα<γ≦βであり、少なくとも前記第1の斜面と前記第2の斜面が軸に接触することを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
前記第1の斜面と前記第2の斜面との間の谷部は前記軸に対して非接触であることを特徴とする請求項1記載のオイルシール。
【請求項3】
前記シール面角度γが10〜25度、前記シール面角度αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度の関係であることを特徴とする請求項1または2記載のオイルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオイルシールに関する。さらに詳述すると、本発明はオイルシールのシール面の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なオイルシールは、シールリップの先端が、密封流体側(油側)斜面(仕上げ面)と非密封流体側(大気側)斜面(シール面)の二面から構成されており、この両斜面の間に、シャープなエッヂ(角度の小さなリップ先端)が形成されている。したがって、このオイルシールの使用初期においては、シールリップのシール面と摺動の相手方である軸との接触幅(摺動幅)は小さい(狭い)ものとなる。また密封流体側斜面の角度(中心軸線に対する斜面の傾斜角度、以下同じ)θ1については、従来、40〜50度という値が知られており、また非密封流体側斜面の角度θ2については、同じく従来、20〜30度という値が知られている(図5図6参照)。
【0003】
このようなオイルシールのリップ先端並びにシール面の構造では、機器内部で発生する異物が主シールリップの軸への接触面に噛みこまれると、接触面に密封流体側と非密封流体側とを連結する隙間が形成されて油漏れが発生する虞がある。
【0004】
そこで、図5及び図6に示すように、主シールリップ101のリップ先端101aのシール面角度θ3を5°から15°と仕上げ面の傾斜角度θ1よりも小さくし、主シールリップ101の軸方向の接触幅を拡大することが行われている。かかる構成にすることで、シール面101bに異物を噛みこんでも、その異物が非密封流体側102にまで到達し難くなり、密封流体側103と非密封流体側102とを連通する隙間が形成されることを抑制することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−301339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、主シールリップ101のリップ先端101aのシール面角度θ3を小さくすると、接触幅が拡大されてしまい、主シールリップ101のリップ先端101aの接触圧力が弱くなり、密封初期状態でのシール性が得られないという問題がある。即ち、リップ先端101aの接触幅の確保による異物噛み込み時のシール性と接触圧力の確保による密閉初期状態でのシール性とをともに高レベルで両立させることが困難である。
【0007】
本発明は、リップ先端の接触幅の確保による異物噛み込み時のシール性と接触圧力の確保による密閉初期状態でのシール性とをともに高レベルで両立させることができるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1記載のオイルシールは、主シールリップのシール面が、リップ先端から非密封流体側に順に配置されたシール面角度γの第1の斜面と、シール面角度αの第2の斜面と、シール面角度βの第3の斜面とを備えて構成され、シール面角度α,γ,βの関係がα<γ≦βであり、少なくとも第1の斜面と第2の斜面が軸に接触するものである。
【0009】
また、請求項2記載のオイルシールは、第1の斜面と第2の斜面との間の谷部が軸に対して非接触になっている。
【0010】
さらに、請求項3記載のオイルシールは、シール面角度γが10〜25度、シール面角度αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度の関係になっている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のオイルシールでは、主シールリップのシール面を構成する第1〜第3の斜面のシール面角度α,γ,βの関係がα<γ≦βとされており、少なくとも第1の斜面と第2の斜面を軸に接触させるようにしているので、軸との接触面の構成がシール面角度γの第1の斜面とシール面角度αの第2の斜面との2段構成となる。そのため、シール面の軸への接触幅が広くなり、例えば機器内部に異物が発生し、密封側の第1の斜面に異物を噛み込んだとしても、密封側と非密封側とを連通させる隙間が生じ難くなり、異物に対するシール性を向上させることができる。また、第1の斜面のシール面角度γの設定がシール面の軸への接触幅の増減に影響し難くなり、シール面角度γの設定の自由度を向上させることができる。そのため、シール面角度γを大きくしてリップ先端角度を小さくすることができ、リップ先端の軸への接触圧力を大きくして密封初期状態のシール性を良好にすることができる。このようにトレードオフの関係にある接触圧力の増加と接触幅の増加をともに高レベルで達成することができる。
【0012】
また、請求項2記載のオイルシールでは、第1の斜面と第2の斜面との間の谷部が軸に対して非接触になっているので、主シールリップの軸との接触面が第1の斜面と第2の斜面との2重構成になる。そのため、接触面の圧力分布は、非接触部(第1の斜面と第2の斜面の間の谷部)の接触圧力が小さく、非接触部から離れるほど接触圧力が高くなる構成である。例えば、図4に示すように、リップ先端(第1の斜面先端)1bと、第2の斜面5と第3の斜面6との間の山部(第2の斜面先端)9との双方において、最も接触圧力が高くなると共に、第1の斜面と第2の斜面との間の谷部8付近の非接触部においては接触圧力が0となる。そのため、軸が回転すると、非接触部の空間内の空気が主シールリップの両側(密封側及び非密封側)に排出され、非接触部の空間は負圧になり、第1の斜面と第2の斜面は非接触部の空間側に引っ張られる。よって、第1の斜面と第2の斜面の接触圧力が増加し、密封初期のシール性をより一層向上させることができる。
【0013】
また、主シールリップの軸への接触面が第1の斜面と第2の斜面との2重になるので、リップ先端の接触幅(第1の斜面の接触幅)が狭くなり、接触圧力を集中させてリップ先端の接触圧力をより一層高めることができる。そのため、密封初期状態のシール性をより一層向上させることができる。
【0014】
また、主シールリップの軸への接触面を第1の斜面と第2の斜面との2重にしているので、どちらか一方の斜面に異物を噛み込んでしまっても、もう一方の斜面が軸に接触しており、主シールリップの両側(密封側と非密封側)を連通する隙間が発生し難く、油漏れをより一層防止することができる。
【0015】
さらに、主シールリップの軸への接触面を第1の斜面と第2の斜面との2重にしているので、異物がどちらか一方の斜面を通過したとしても、この異物を非接触部の空間で受け止めて保持することができる。そのため、もう一方の斜面まで異物が侵入するのを防止することができ、この点からも主シールリップの両側(密封側と非密封側)を連通する隙間の発生を防止して油漏れをより一層防止することができる。
【0016】
また、請求項3記載のオイルシールのように、シール面角度γを10〜25度、シール面角度αを(γ−2)度≧α≧(γ−8)度にすることが好ましく、この場合には、接触幅の確保による異物の噛み込みによる油漏れ防止と接触圧力の確保による密閉初期状態でのシール性をともに高レベルで確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のオイルシールの実施形態の一例を示す断面図である。
図2】同オイルシールのリップ先端及びシール面の形状を説明するための図である。
図3】同オイルシールの軸への装着状態を示し、そのリップ先端部分の拡大図である。
図4】同オイルシールを軸に装着した状態における接触部分の圧力分布を示す図である。
図5】従来のオイルシールの断面図である。
図6】同オイルシールのリップ先端及びシール面の形状を説明するための図である。
図7】本発明のオイルシールのシール性を調べるために行った試験とFEM解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1図3に本発明のオイルシールの実施形態の一例を示す。このオイルシールは、主シールリップ1のシール面1aが、リップ先端1bから非密封流体側3に順に配置されたシール面角度γの第1の斜面4と、シール面角度αの第2の斜面5と、シール面角度βの第3の斜面6とを備えて構成され、シール面角度の関係がα<γ≦βであり、少なくとも第1の斜面4と第2の斜面5を軸7に接触させるようにしている。
【0020】
本実施形態の第1〜第3の斜面4〜6を図2に詳しく示す。第1の斜面4のシール面角度γと第2の斜面5のシール面角度αとの関係がα<γであるため、第1の斜面4と第2の斜面5との間は谷部8となる。また、本実施形態では、第2の斜面5のシール面角度αと第3の斜面6のシール面角度βとの関係がγ<βであるため、第2の斜面5と第3の斜面6の間は山部9となる。
【0021】
本実施形態では、第1の斜面4と第2の斜面5との間の谷部8が軸7に対して非接触になるようにしている。
【0022】
ここで、シール面角度γは10〜25度、シール面角度αは(γ−2)度≧α≧(γ−8)度の関係であることが好ましく、このようにすることで接触幅の確保による異物の噛み込みによる油漏れ防止と接触圧力の確保による密閉初期状態でのシール性をともに高レベルで確保することができる。また、シール面角度γが15〜25度、シール面角度αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度の関係であることがより好ましく、このようにすることで、特に接触圧力の確保が容易になり、密閉初期状態でのシール性をより良好にすることができる。ただし、シール面角度α,γの値はこれらに限られない。
【0023】
第1の斜面4と第2の斜面5の軸7の軸方向の長さの比率を、例えば2:8〜8:2としている。この範囲にすることで、オイルシールを軸7に装着した場合に第2の斜面5を軸7に確実に接触させることができる。ただし、第1の斜面4と第2の斜面5の軸7の軸方向の長さの比率はこれには限られず、第2の斜面5を軸7に接触させることができれば適宜変更可能である。
【0024】
また、オイルシールの大きさが軸径φ132mmの場合、第1の斜面4の軸7の軸方向の長さと第2の斜面5の軸7の軸方向の長さの合計を例えば0.2〜0.5mmとすることが好ましいが、これには限られない。
【0025】
オイルシールを軸7に装着すると、少なくとも第1の斜面4と第2の斜面5が軸7に接触し、シールが行われる。第3の斜面6は軸7に接触しても良いし、接触しなくても良い。なお、第3の斜面6のシール面角度βは、主シールリップ1が成立する角度であって、γ≦βであれば特に制限されない。シール面角度βとしては、例えば20度≦β≦35度である。また、第3の斜面6の軸7の軸方向の長さは、主シールリップ1が成立する長さであれば特に制限されない。また、第1の斜面4と第2の斜面5との間の谷部8は軸7に対して非接触であるため、谷部8と軸7との間には空間10が形成される。
【0026】
オイルシールの軸7への装着状態では、図1中左側が密封側(密封流体側2)であり、右側が非密封側(非密封流体側3)である。
【0027】
主シールリップ1のシール面1aを構成する第1〜第3の斜面4〜6のシール面角度の関係がα<γ≦βとされており、摺動の相手側部材である軸7への装着状態では、少なくとも第1の斜面4と第2の斜面5を軸7に接触させるようにしているので、軸7との接触面の構成がシール面角度γの第1の斜面4とシール面角度αの第2の斜面5との2段構成になる。そのため、シール面1aの軸7への接触幅が広くなり、例えば機器内部に異物が発生し、密封側の第1の斜面4に異物を噛み込んだとしても、密封流体側2と非密封流体側3とを連通させる隙間が生じ難くなり、異物に対するシール性を向上させることができる。
【0028】
また、第1の斜面4のシール面角度γの設定がシール面1aの軸7への接触幅の増減に影響し難くなり、シール面角度γの設定の自由度を向上させることができる。そのため、シール面角度γを大きくしてリップ先端角度を小さくすることができ、リップ先端1bの軸7への接触圧力を大きくして密封初期状態のシール性を良好にすることができる。
【0029】
このようにトレードオフの関係にある接触圧力の増加と接触幅の増加をともに高レベルで達成することができる。
【0030】
また、第1の斜面4と第2の斜面5との間の谷部8と軸7との間に空間10が形成されるので、主シールリップ1の軸7への接触面が第1の斜面4と第2の斜面5との間で途切れる2重構成になる。そのため、シール面1aの圧力分布は、非接触部(第1の斜面4と第2の斜面5の間の谷部8)では接触圧力が小さく、非接触部から離れるほど接触圧力が高くなる。例えば、図4に示すように、第1の斜面4と第2の斜面5との間の谷部8付近の非接触部においては接触圧力が0となると共に、リップ先端1b(第1の斜面4の先端)と山部9(第2の斜面5の先端)との双方において最も接触圧力が高くなる。そのため、軸7が回転すると、空間10内の空気が主シールリップ1の両側(密封流体側2及び非密封流体側3)に排出され、空間10内は負圧になり、第1の斜面4と第2の斜面5は空間10側に引っ張られる。よって、第1の斜面4と第2の斜面5の接触圧力が増加し、密封初期のシール性をより一層向上させることができる。
【0031】
また、主シールリップ1の軸7への接触面が第1の斜面4と第2の斜面5との間で途切れる2重構成になるので、リップ先端1bの接触幅(第1の斜面4の接触幅)が狭くなり、接触圧力を集中させてリップ先端1bの接触圧力をより一層高めることができる。そのため、密封初期状態のシール性をより一層向上させることができる。
【0032】
また、主シールリップ1の軸7への接触面を第1の斜面4と第2の斜面5との間で途切れる2重構成にしているので、どちらか一方の斜面に異物を噛み込んでしまっても、もう一方の斜面が軸7に接触しており、主シールリップ1の両側(密封流体側2と非密封流体側3)を連通する隙間が発生し難く、油漏れをより一層防止することができる。
【0033】
さらに、主シールリップ1の軸7への接触面を第1の斜面4と第2の斜面5との間で途切れる2重構成にしているので、異物がどちらか一方の斜面を通過したとしても、この異物を空間10で受け止めて保持することができる。そのため、もう一方の斜面まで異物が侵入するのを防止することができ、この点からも主シールリップ1の両側を連通する隙間の発生を防止して油漏れをより一層防止することができる。
【0034】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、軸7への装着状態では、第1の斜面4と第2の斜面5との間の谷部8を軸7に対して非接触にしているが、谷部8を接触させても良い。この場合にも、トレードオフの関係にある接触圧力の増加と接触幅の増加をともに高レベルで達成することができ、異物の挟み込み時と密封初期状態におけるシール性をともに向上させることができる。
【実施例1】
【0035】
(試験1)
γ、α、βの角度を決定するにあたり、まず、γを一般的なオイルシールのリップ角である20度とし、αの角度を変えたシールを形成し、密封試験を実施した。なお、βはγより大きければ良いとの考えから25度とした。
【0036】
試験条件:軸7の回転数:150rpmで240時間作動させた。その結果を表1に示す。符号○:油漏れなし、符号×:異物噛み込みによる油漏れあり、である。なお、試験時のオイルシールの軸方向長さは、第1の斜面4の軸方向長さ:0.2mm、第2の斜面5の軸方向長さ:0.3mm、第1の斜面4の軸方向長さと第2の斜面5の軸方向長さとの合計は、オイルシールの実寸で0.2〜0.5mmである。また、「第1の斜面4の軸方向長さ:第2の斜面5の軸方向長さ」の比率は、ほぼ同等が好ましいが、2:8〜8:2であれば良い。上記範囲から外れると、一方の斜面が接触せず、シール性を確保できない虞がある。
【0037】
【表1】
【0038】
(試験2)
次にγの角度を変えたオイルシールを形成し、密封試験を実施した。ここで、αは上記試験結果より(γ−5)度とし、βは上記試験と同様に25度とした。
【0039】
試験条件:軸7の回転数:150rpmで240時間作動させた。その結果を表2に示す。符号○:油漏れなし、符号△:僅かに油滲みあり、符号×:異物噛み込みによる油漏れあり、である。
【0040】
【表2】
【0041】
(試験3)
上記の試験結果をもとに、FEM解析を実施した。その結果を図7に示す。符号○:油漏れなし(試験結果)、符号△:僅かに油滲みあり(試験結果)、符号×:異物噛み込みによる油漏れあり(試験結果)、符号◇:油漏れなし(FEM解析結果)、符号□:油漏れあり(FEM解析結果)、である。この解析では、上記試験結果において、油漏れが発生しなかったオイルシールの圧力分布と同様のものを油漏れなしとし、油漏れが発生したオイルシールの圧力分布と同様のものを油漏れが発生するとした。
【0042】
上記試験及びFEM解析結果より、γが10度〜25度であり、αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度であれば異物噛み込みによる油漏れは起こらなかった。また、試験結果より、γが15度〜25度であり、αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度であれば、僅かな油滲みもなく良好な密封が図れることが分かった。
【0043】
また、γが10度未満の場合、異物噛み込みによる油漏れが発生してしまうことがわかった。これはγが小さくなりすぎるとシールリップ先端1bの接触圧力を確保できないためであると考えられる。このことからγは少なくとも10度以上、より好ましくは15度以上とする。
【0044】
γが25度より大きい場合、シール面角度αの第2の斜面5が軸7と接触しない、もしくは接触したとしても非常に弱いため、第2の斜面5によるシールが期待できず、十分なシール性を確保することができないことがわかった。
【0045】
αとγとの角度差が8度よりも大きい場合、異物噛み込みによる油漏れが発生する。これは、シール面角度γの第1の斜面4とシール面角度αの第2の斜面5とを軸7に嵌合させた場合に、第1の斜面4と第2の斜面5とが交わる部分の非接触になる谷部8が大きくなり、第1の斜面4と第2の斜面5が十分に軸7に接触しないためにリップの接触面積が小さく、異物を噛み込んだ際に密封流体側2と非密封流体とを連結する隙間が形成されてしまい、油漏れを生じさせることが原因である。
【0046】
αとγとの角度差が2度未満の場合、第1の斜面4と第2の斜面5とを軸7に嵌合させたときに、第1の斜面4と第2の斜面5とが交わる部分(谷部8)が非接触にならないことがわかった。そのため、αは、αとγとの角度差が2度以上であることが好ましい。
【0047】
以上より、シール面角度γが10〜25度、シール面角度αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度の関係であることが好ましく、より好ましくは、シール面角度γが15〜25度、シール面角度αが(γ−2)度≧α≧(γ−8)度であることがわかった。
【符号の説明】
【0048】
1 主シールリップ
1a 主シールリップ1のシール面
1b リップ先端
3 非密封流体側
4 シール面角度γの第1の斜面
5 シール面角度αの第2の斜面
6 シール面角度βの第3の斜面
7 軸
8 第1の斜面と第2の斜面との間の谷部
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図4