特許第6066078号(P6066078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066078
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両のドアアウタハンドル構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20170116BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   E05B77/06 A
   B60J5/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-130459(P2013-130459)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4227(P2015-4227A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸和
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−21326(JP,A)
【文献】 特開2003−13630(JP,A)
【文献】 特開2012−92640(JP,A)
【文献】 特開2013−14988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
E05B 77/06
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両の内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、
前記連係機構が、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられていて揺動可能な入力アーム部と出力アーム部を有し前記入力アーム部にて前記アウタハンドルの揺動部と係合するベルクランクと、このベルクランクと前記ベース部材間に介装されていて前記ベルクランクをドア閉位置に向けて付勢するスプリングと、前記ドアが閉じた状態で車両の前後方向に延在する連結軸にて前記出力アーム部に対して回転可能に組付けられていて揺動可能でありドア開方向移動によりドアラッチ機構のアンラッチ動作が可能である連結レバーを備え、
前記ドア開放防止機構が、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられて車両の内外方向に揺動可能なレバー部材と、このレバー部材をセット位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、
前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット位置に保持され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット位置より車外方向に揺動してロック位置に移動するように設定されており、
前記レバー部材が前記セット位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に対して相対移動可能であって、前記連結レバーのドア開方向移動が許容され、前記レバー部材が前記ロック位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制されるように設定されている
車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のドアアウタハンドル構造であって、
前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置と前記ドア開位置間にて操作されるとき、前記連結軸の前記延長部位と摺動可能に係合して前記付勢部材に抗して回動され、前記ベース部材に対して所定量回転するように設定されている
車両のドアアウタハンドル構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両のドアアウタハンドル構造であって、
前記レバー部材は、前記慣性力と同程度で前記慣性力とは逆方向の慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット位置より車内方向に揺動して第2のロック位置に移動するように設定されており、
前記レバー部材が前記第2のロック位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制されるように設定されている
車両のドアアウタハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアアウタハンドル構造、特に、車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両の内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制する(前記連係機構の機能を無効とする)ドア開放防止機構を備えている車両のドアアウタハンドル構造に関する。
【0002】
なお、車両の衝突時において、前記連係機構の構成部材がドア開方向に作動するのは、例えば、車両衝突時にドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力でアウタハンドルが開作動することに因るものである。また、ドアラッチ機構のアンラッチ動作は、ラッチ状態のドアラッチ機構をアンラッチ状態とする作動であって、ドアラッチ機構のラッチ状態では車両の閉じたドアを車外方向に向けた力で開放することが不能であり、ドアラッチ機構のアンラッチ状態では車両の閉じたドアを車外方向に向けた力で開放することが可能である。
【背景技術】
【0003】
この種の車両のドアアウタハンドル構造は、例えば、下記特許文献1に示されていて、前記ドア開放防止機構が、セット回転位置から少なくとも車内方向の退避回転位置に回転可能なレバー部材と、このレバー部材を前記退避回転位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット回転位置に保持され、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置から前記ドア開位置に操作されるときにはその操作初期に前記付勢部材の付勢力によって前記セット回転位置から車内方向に回転して前記退避回転位置に移動され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置より車外方向に回転してロック回転位置に移動されるように設定(又は、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット回転位置に留まるように設定)されており、前記レバー部材が前記セット回転位置または前記ロック回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を規制し、前記レバー部材が前記退避回転位置にあるときには、前記構成部材のドア開方向移動を許容するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−92640号公報
【0005】
上記した特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造においては、ドア開放防止機構におけるレバー部材の一部が、連係機構の一構成部材である連結レバーに設けた突起に対して係合・退避可能に構成されていて、レバー部材が、セット回転位置またはロック回転位置にあるときには、レバー部材の一部が、連係機構の連結レバーにおける突起のドア開方向移動軌跡内に介在して、突起のドア開方向移動を規制するようになっている。
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、上記した特許文献1に記載されている車両のドアアウタハンドル構造においては、レバー部材が、ロック回転位置にあるときは勿論のこと、セット回転位置にあるときにも、レバー部材の一部が、突起のドア開方向移動軌跡内に介在して、突起のドア開方向移動を規制するようにするため、連結レバーに設けた突起が、連結レバーの車内側端面から、車内方向に向けて必要十分に突出している。このため、車両のドア内にて、連結レバーに突起を設けるための車幅方向スペースや、レバー部材の一部がセット回転位置から退避回転位置に回転するための車幅方向スペースを、連結レバーの車内側にそれぞれ確保する必要があり、車幅方向でのスペース効率が悪い。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、
車両のドアに固定されるベース部材と、このベース部材に車両の内外方向にて揺動可能に設けられてドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置間にて操作可能なアウタハンドルと、このアウタハンドルのドア開動作をドアラッチ機構のアンラッチ動作として伝達可能な連係機構を備えるとともに、車両の衝突時に前記ドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で前記連係機構の構成部材のドア開方向作動を規制するドア開放防止機構を備えていて、
前記連係機構が、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられていて揺動可能な入力アーム部と出力アーム部を有し前記入力アーム部にて前記アウタハンドルの揺動部と係合するベルクランクと、このベルクランクと前記ベース部材間に介装されていて前記ベルクランクをドア閉位置に向けて付勢するスプリングと、前記ドアが閉じた状態で車両の前後方向に延在する連結軸にて前記出力アーム部に対して回転可能に組付けられていて揺動可能でありドア開方向移動によりドアラッチ機構のアンラッチ動作が可能である連結レバーを備え、
前記ドア開放防止機構が、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられて車両の内外方向に揺動可能なレバー部材と、このレバー部材をセット位置に向けて付勢する付勢部材を備えていて、
前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置にあるときには前記セット位置に保持され、前記慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット位置より車外方向に揺動してロック位置に移動するように設定されており、
前記レバー部材が前記セット位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に対して相対移動可能であって、前記連結レバーのドア開方向移動が許容され、前記レバー部材が前記ロック位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制されるように設定されている
車両のドアアウタハンドル構造に特徴がある。
(作用効果)
【0008】
上記した本発明の車両のドアアウタハンドル構造においては、前記レバー部材が前記ロック位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制されるように設定されている。このため、車両の衝突時において、ロック位置にあるレバー部材によって連結レバーのドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作(ドアが閉じた状態(ラッチ状態)からドアを開き得る状態(アンラッチ状態)に移行する動作)を的確に防止することができる。
【0009】
また、上記した本発明の車両のドアアウタハンドル構造においては、前記連結軸の延長部位が、ロック位置にある前記レバー部材に当接して、前記連結レバーのドア開方向移動を規制されるように設定されているため、アウタハンドルがドア閉位置からドア開位置に操作されるときに、連結軸が移動する領域の車幅方向スペースに合わせて、ドア開放防止機構のレバー部材と付勢部材を配設することが可能である。このため、車両のドア内にて車幅方向でのスペース効率が良くて、当該車両のドアアウタハンドル構造を車幅方向にてコンパクトに構成することができる。
【0010】
上記した本発明の実施に際して、前記レバー部材は、前記慣性力が作用しない状態にて前記アウタハンドルが前記ドア閉位置と前記ドア開位置間にて操作されるとき、前記連結軸の前記延長部位と摺動可能に係合して前記付勢部材に抗して回動され、前記ベース部材に対して所定量回転するように設定されていることも可能である。この場合には、レバー部材がアウタハンドルの通常操作(日常的なドア開放操作)に伴って付勢部材と協働してセット位置から所定量の範囲にて回転する。したがって、レバー部材の回転部分に塵や埃が付着して固化することを防止することができて、ベース部材に対するレバー部材の回転が長期間保証される。
【0011】
また、上記した本発明の実施に際して、前記レバー部材は、前記慣性力と同程度で前記慣性力とは逆方向(車内方向)の慣性力が作用するときには前記付勢部材の付勢力に抗して前記セット位置より車内方向に揺動して第2のロック位置に移動するように設定されており、前記レバー部材が前記第2のロック位置にあるときには、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制されるように設定されていることも可能である。この場合には、レバー部材がロック位置にあるときは勿論のこと、レバー部材が第2のロック位置にあるときにも、前記連結軸の延長部位が前記レバー部材に当接して相対移動を規制され、前記連結レバーのドア開方向移動が規制される。このため、車両の衝突時において、車両の衝突時における慣性力の方向が、車両に内外方向にて交互に入れ替わって、レバー部材に作用する慣性力が車両の内外方向にて変動することがあっても、ロック位置にあるレバー部材(このときには、車外方向に向けて所定の慣性力(正G)が作用している)または第2のロック位置にあるレバー部材(このときには、車内方向に向けて所定の慣性力(逆G)が作用している)によって、連結レバーのドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作を的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による車両のドアアウタハンドル構造を備えた車両用ドアの一実施形態を車両の外側からみた部分斜視図である。
図2図1に示した車両のドアアウタハンドル構造における主要構成のドア内側で車両前方から見た斜視図である。
図3図2に示した主要構成のドア内側で車両後方から見た斜視図である。
図4図2および図3に示した連結軸の延長部位とレバー部材の関係を概略的に示した部分縦断背面図である。
図5】車両の衝突時にドアの車外方向に向けて作用する所定の慣性力で、図2および図3に示したセット位置のレバー部材がロック位置に移動したときの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1図5は本発明による車両のドアアウタハンドル構造を備えた車両用ドアの一実施形態を示していて、この実施形態のドアアウタハンドル構造では、図1に示したように、車両の後方右側に装備されるドア100にベース部材10が固定されている。このベース部材10には、アウタハンドル20、連係機構30、ドア開放防止機構40等が組付けられている。ベース部材10は、ドア100におけるアウタパネル101の内側に固定されていて、車両後方端部11にはアウタパネル101を挟む状態にてキャップ50(ベース部材10に対してアウタハンドル20を抜け止めするもの)が組付けられている。
【0014】
アウタハンドル20は、略水平状態でベース部材10に車両内外方向(車幅方向)にて揺動可能に設けられているグリップ型のハンドルであり、アウタパネル101を挟む状態にてベース部材10に組付けられていて、ドア閉位置とこれより車外方向のドア開位置(図示省略)間にて操作可能に構成されている。このアウタハンドル20は、車両前方端部21にてベース部材10に車両の内外方向にて揺動可能に組付けられていて、車両後方端部22が図1に示した位置から車外方向に所要量移動可能に構成されている。また、アウタハンドル20の車両後方端部22には、連係機構30の構成部材であるベルクランク31と係合する係合部22a(図2参照)が形成されている。なお、アウタハンドル20がドア閉位置にあるときには、アウタハンドル20の上下端部がクッション(図示省略)を介してアウタパネル101に係合(当接)している。
【0015】
連係機構30は、アウタハンドル20の車外方向へのドア開動作をドアラッチ機構(図示省略)のアンラッチ動作(ラッチ状態からアンラッチ状態に移行する動作)として伝達可能であり、上記したベルクランク31を備えるとともに、コイルスプリング32と、連結レバー33を備えている。なお、ドアラッチ機構(図示省略)は、周知のものであり、車体側に固定されるストライカと、ドア100側に組付けられるラッチおよびポール等を備えていて、ラッチ状態ではポールがストライカに係合するラッチの回転を規制して、ドア開動作(閉じたドア100の開放動作)を不能とし、アンラッチ状態ではポールがストライカに係合するラッチの回転を許容して、ドア開動作を可能とする。
【0016】
ベルクランク31は、図3に示したように、ドア100が閉じた状態で車両の前後方向に延在する軸部31aにてベース部材10に回転可能に組付けられていて、入力アーム部31bと出力アーム部31cを有している。入力アーム部31bは、軸部31aの径方向で下方に延出しており、先端にてアウタハンドル20における係合部22aの車両外側面に係合(当接)している。出力アーム部31cは、軸部31aの径方向で上方に延出していて、連結軸34(これは連結レバー33に一体的に形成されていてもよい)を介して連結レバー33の上端部33aに一体的に連結されている。なお、出力アーム部31cには、軸部31aに沿って延びるウエイト部(慣性部)31dを設けて実施することも可能である。ウエイト部(慣性部)31dは、車両衝突時にドア100の車外方向に向けて作用する慣性力でアウタハンドル20が開作動することを規制するためのものであり、この規制力はウエイト部(慣性部)31dの質量とコイルスプリング32の付勢力によって設定される。
【0017】
コイルスプリング32は、ベルクランク31とアウタハンドル20を図2および図3に示したドア閉位置(初期位置)に向けて付勢するリターンスプリング(アウタハンドル20をドア開位置からドア閉位置に自動的に復帰させる構成部材)であり、ベルクランク31の軸部31a外周に組付けられていて、一端にてベース部材10に係合し他端にてベルクランク31に係合しており、ベルクランク31の入力アーム部31bがアウタハンドル20の係合部22aに係合する方向に所定の付勢力にて回転付勢している。このため、ベルクランク31の入力アーム部31bは、アウタハンドル20の係合部22aに弾性的に係合している。
【0018】
連結レバー33は、上端部33aにて連結軸34を介してベルクランク31の出力アーム部31cに連結され、下端部(図示省略)にてドアラッチ機構のポール(図示省略)と連係するアウトサイドオープンレバー(図示省略)に係合していて、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されて、ベルクランク31がコイルスプリング32の付勢力に抗して所定量回転するときに、図2および図3に示した初期位置から所定量下方に移動するように構成されている。
【0019】
連結軸34は、ドア100が閉じた状態で車両の前後方向に延在するものであり、前後両端部にてベルクランク31の出力アーム部31に対して回転可能に組付けられていて、ベルクランク31と共に揺動可能である。また、連結軸34は、後端にて連結レバー33の上端部33aに一体的に連結されている。このため、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に向けてドア開方向移動されると、ベルクランク31により連結軸34と連結レバー33が駆動されて下方へ移動し、連結レバー33によりドアラッチ機構のアンラッチ動作が可能である。また、連結軸34の前端には、先端に向けて先細で円錐形状の延長部位34aが一体的に設けられている。
【0020】
上記した連係機構30においては、ドア100が閉じた状態で、アウタハンドル20がドア閉位置にあり、連結レバー33が初期位置にあるときには、ドアラッチ機構がラッチ状態とされ、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されて、連結レバー33が初期位置から所定量下方に移動したときには、ドアラッチ機構がアンラッチ状態とされるように設定されている。このため、コイルスプリング32の付勢力に抗したベルクランク31の回転と、連結レバー33および連結軸34の下方への移動は、ドア開方向作動である。
【0021】
ドア開放防止機構40は、ドア100が閉じた状態での車両の衝突時にドア100の車外方向に向けて作用する所定の慣性力で連係機構30における連結レバー33および連結軸34の下方への移動(ドア開方向作動)を規制するものであり、ベース部材10に回転可能に組付けられたレバー部材41と、このレバー部材41とベース部材10間に組付けられたコイルスプリング42を備えている。
【0022】
レバー部材41は、図2および図3に示したように、同軸的に設けた上方軸部41aと下方軸部41bを有するとともに、上下一対のスプリング取付軸部41c(図5参照)を有している。また、レバー部材41は、内外一対の係合突起部41d、41eと上下一対のスプリング係止部41f、41gを有している。このレバー部材41は、図2および図3に示したセット位置(初期回転位置)から図5に示した車外方向のロック位置または図示省略した車内方向の第2のロック位置に回転可能である。
【0023】
上方軸部41aは、ベース部材10の上方支持部12に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)にて移動不能に組付けられている。下方軸部41bは、ベース部材10の下方支持部13に対して回転可能かつ軸方向(上下方向)にて移動不能に組付けられている。各スプリング取付軸部41cは、上方軸部41aと下方軸部41b間にて上方軸部41aおよび下方軸部41bに対して同軸的に設けられていて、コイルスプリング42の上下各端部(コイル部)を伸縮可能に支持している。
【0024】
外方の係合突起部41dは、レバー部材41がセット位置にあるとき、連結軸34の軸方向に沿って延びていて、アウタハンドル20の操作に伴う連結軸34の延長部位34aの移動軌跡(図4の破線参照)外にあるため、連結軸34の延長部位34aが係合突起部41dに対して相対移動可能であり、連結軸34および連結レバー33のドア開方向移動が許容されている。また、外方の係合突起部41dは、レバー部材41がセット位置から第2のロック位置(内方のロック位置)に移動したとき、アウタハンドル20の操作に伴う連結軸34の延長部位34aの移動軌跡内に移動するため、連結軸34の延長部位34aが係合突起部41dに当接して相対移動を規制され、連結軸34および連結レバー33のドア開方向移動が規制される。なお、レバー部材41がセット位置から第2のロック位置に移動したときには、下方のスプリング係止部41gがベース部材10のストッパ面10a(図2参照)に当接して、レバー部材41の内方への回転(揺動)が規制される。
【0025】
内方の係合突起部41eは、図4に示したように、外側面に円弧状突起41e1を有し、レバー部材41がセット位置にあるとき、連結軸34の軸方向に沿って延びていて、円弧状突起41e1以外の部位はアウタハンドル20の操作に伴う連結軸34の延長部位34aの移動軌跡外にあるため、連結軸34の延長部位34aが係合突起部41eに対して相対移動可能であり、連結軸34および連結レバー33のドア開方向移動が許容されている。しかし、円弧状突起41e1がアウタハンドル20の操作に伴う連結軸34の延長部位34aの移動軌跡内にあるため、アウタハンドル20がドア閉位置とドア開位置間にて操作されるとき(連結軸34および連結レバー33のドア開方向移動時および復帰移動時)には、連結軸34の延長部位34aと円弧状突起41e1が摺動可能に係合してコイルスプリング42の付勢力に抗して回動され、レバー部材41がベース部材10に対して所定量回転する。
【0026】
また、内方の係合突起部41eは、レバー部材41がセット位置からロック位置(外方のロック位置)に移動したとき、アウタハンドル20の操作に伴う連結軸34の延長部位34aの移動軌跡内に移動するため、連結軸34の延長部位34aが係合突起部41eに当接して相対移動を規制され、連結軸34および連結レバー33のドア開方向移動が規制される。なお、レバー部材41がセット位置からロック位置に移動したときには、外方の係合突起部41dがベース部材10のストッパ面10b(図3参照)に当接して、レバー部材41の外方への回転(揺動)が規制される。
【0027】
上方のスプリング係止部41fは、前方に向けて延びていて、レバー部材41がセット位置にあるとき、および、レバー部材41がセット位置から内方に回転するとき、コイルスプリング42の上端部42aと係合していて、コイルスプリング42の付勢力を受けるように設定されている。なお、レバー部材41がセット位置にあるとき、および、レバー部材41がセット位置から内方に回転するときには、コイルスプリング42の下端部42bがベース部材10の下方支持部13と係合している。
【0028】
下方のスプリング係止部41gは、前方に向けて延びていて、レバー部材41がセット位置にあるとき、および、レバー部材41がセット位置から外方に回転するとき、コイルスプリング42の下端部42bと係合していて、コイルスプリング42の付勢力を受けるように設定されている。なお、レバー部材41がセット位置にあるとき、および、レバー部材41がセット位置から外方に回転するときには、コイルスプリング42の上端部42aがベース部材10の上方支持部12と係合している。
【0029】
上記のように構成したこの実施形態においては、レバー部材41がロック位置にあるときには、連結軸34の延長部位34aがレバー部材41に当接して相対移動を規制され、連結レバー33のドア開方向移動が規制されるように設定されている。このため、車両の衝突時において、ロック位置にあるレバー部材41によって連結レバー33のドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作(ドアが閉じた状態(ラッチ状態)からドアを開き得る状態(アンラッチ状態)に移行する動作)を的確に防止することができる。
【0030】
また、この実施形態においては、連結軸34の延長部位34aが、ロック位置にあるレバー部材41に当接して、連結レバー33のドア開方向移動を規制されるように設定されているため、アウタハンドル20がドア閉位置からドア開位置に操作されるときに、連結軸34が移動する領域の車幅方向スペースに合わせて、ドア開放防止機構40のレバー部材41とコイルスプリング42を配設することが可能である。このため、車両のドア100内にて車幅方向でのスペース効率が良くて、当該車両のドアアウタハンドル構造を車幅方向にてコンパクトに構成することができる。
【0031】
また、この実施形態においては、前記慣性力(車外方向の慣性力)が作用しない状態にてアウタハンドル20がドア閉位置とドア開位置間にて操作されるとき、連結軸34の延長部位34eとレバー部材41の円弧状突起41e1が摺動可能に係合して、レバー部材41がコイルスプリング42の付勢力に抗して回動され、レバー部材41がベース部材10に対して所定量回転するように設定されている。このため、レバー部材41がアウタハンドル20の通常操作(日常的なドア開放操作)に伴ってコイルスプリング42と協働してセット位置から所定量の範囲にて回転する。したがって、レバー部材41の回転部分に塵や埃が付着して固化することを防止することができて、ベース部材10に対するレバー部材41の回転が長期間保証される。
【0032】
また、この実施形態においては、前記慣性力(車外方向の慣性力)と同程度で前記慣性力(車外方向の慣性力)とは逆方向(車内方向)の慣性力が作用するときには、レバー部材41が、コイルスプリング42の付勢力に抗してセット位置より車内方向に揺動して第2のロック位置に移動するように設定されており、レバー部材41が第2のロック位置にあるときには、連結軸34の延長部位34aがレバー部材41の外方の係合突起部41dに当接して相対移動を規制され、連結レバー33のドア開方向移動が規制されるように設定されている。
【0033】
これにより、レバー部材41がロック位置にあるときは勿論のこと、レバー部材41が第2のロック位置にあるときにも、連結軸34の延長部位34aがレバー部材41に当接して相対移動を規制され、連結レバー33のドア開方向移動が規制される。このため、車両の衝突時において、車両の衝突時における慣性力の方向が、車両に内外方向にて交互に入れ替わって、レバー部材41に作用する慣性力が車両の内外方向にて変動することがあっても、ロック位置にあるレバー部材41(このときには、車外方向に向けて所定の慣性力(正G)が作用している)または第2のロック位置にあるレバー部材41(このときには、車内方向に向けて所定の慣性力(逆G)が作用している)によって、連結レバー33のドア開方向移動を規制することができて、ドアラッチ機構のアンラッチ動作を的確に防止することができる。
【0034】
上記した実施形態においては、車両の後方右側に装備されるドア100に本発明による車両のドアアウタハンドル構造を設けて実施したが、本発明による車両のドアアウタハンドル構造は、車両の後方左側に装備されるドアは勿論のこと、車両の前方右側または前方左側に装備されるドアにも同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。また、本発明による車両のドアアウタハンドル構造は、車両の後側に装備されるドア(バックドア)にも同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。また、上記した実施形態においては、ベルクランク31にウエイト部(慣性部)31dを設けて実施したが、ウエイト部(慣性部)31dはベルクランク31に必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0035】
100…ドア、10…ベース部材、11…車両後方端部、12…上方支持部、13…下方支持部、20…アウタハンドル、21…車両前方端部、22…車両後方端部、22a…係合部、30…連係機構、31…ベルクランク、31a…軸部、31b…入力アーム部、31c…出力アーム部、32…コイルスプリング、33…連結レバー、33a…上端部、34…連結軸、34a…延長部位、40…ドア開放防止機構、41…レバー部材、41a…上方軸部、41b…下方軸部、41c…スプリング取付軸部、41d…外方の係合突起部、41e…内方の係合突起部、41f…上方のスプリング係止部、41g…下方のスプリング係止部、42…コイルスプリング(付勢部材)、42a…上端部、42b…下端部、50…キャップ
図1
図2
図3
図4
図5