(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066223
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】強化用繊維及びコンクリートを強化するためのその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 28/00 20060101AFI20170116BHJP
C03C 25/10 20060101ALI20170116BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20170116BHJP
C04B 20/10 20060101ALI20170116BHJP
D06M 13/513 20060101ALI20170116BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20170116BHJP
D06M 101/00 20060101ALN20170116BHJP
【FI】
C04B28/00
C03C25/02 N
C04B14/42 Z
C04B20/10
D06M13/513
D06M15/564
D06M101:00
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-531320(P2014-531320)
(86)(22)【出願日】2011年9月23日
(65)【公表番号】特表2014-534147(P2014-534147A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】IB2011002624
(87)【国際公開番号】WO2013041902
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】508076428
【氏名又は名称】オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】タルディ ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ジル ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マッツィ ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】アンテパゾ レティシア
(72)【発明者】
【氏名】リコ マルティネス マリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】フォンクビエルタ アリアス ホセ アントニオ
【審査官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−120541(JP,A)
【文献】
特表平06−511227(JP,A)
【文献】
特開2009−084116(JP,A)
【文献】
特開昭63−035441(JP,A)
【文献】
特開昭63−035440(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/093759(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0237682(US,A1)
【文献】
特表2011−507787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00−25/70
C04B 14/42
C04B 20/10
C04B 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートと、少なくとも1つの強化用ガラス繊維ストランドとを含む強化コンクリートであって、前記少なくとも1つの強化用ガラス繊維ストランドが、サイジング組成物でコーティングされた複数の個別のガラス繊維を含み、前記サイジング組成物が少なくとも1種のシランカップリング剤と、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤と、第2の皮膜形成剤と、水とを含み、前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、前記サイジング組成物において、全固形組成物の25〜75質量%(乾燥固形分)の量で存在し、前記第2の皮膜形成剤が、エポキシ、ポリエステル、ポリビニルアセテート、非反応性ポリウレタン及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の皮膜形成剤が、前記サイジング組成物中に全固形組成物の5〜60質量%(乾燥固形分)の量で存在し、前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、ブロックイソシアネートを有するポリウレタンである、強化コンクリート。
【請求項2】
前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、ブロックイソシアネートを含むポリエステル系ポリウレタン皮膜形成剤及びブロックイソシアネートを含むポリエーテル系ポリウレタン皮膜形成剤から選択される、請求項1に記載の強化コンクリート。
【請求項3】
前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、前記ポリウレタン皮膜形成剤の同時又はほぼ同時の脱ブロック化及び硬化を可能にする温度で脱ブロック化する、請求項1又は2に記載の強化コンクリート。
【請求項4】
前記ブロックイソシアネートが、107.2℃(225°F)〜176.7℃(350°F)の温度で脱ブロック化する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化コンクリート。
【請求項5】
前記ブロックイソシアネートが、125℃(250°F)〜165.6℃(330°F)の温度で脱ブロック化する、請求項4に記載の強化コンクリート。
【請求項6】
前記少なくとも1種のシランカップリング剤が、アミノシラン、シランエステル、ビニルシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシシラン、サルファシラン、ウレイドシラン、イソシアナートシラン及びこれらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の強化コンクリート。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、前記サイジング組成物において、全固形組成物の2〜15質量%(乾燥固形分)の量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の強化コンクリート。
【請求項8】
前記サイジング組成物を、乾燥繊維上で0.8〜2.5の強熱減量で繊維に塗布する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の強化コンクリート。
【請求項9】
前記ガラス繊維が耐アルカリ性ガラス繊維である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の強化コンクリート。
【請求項10】
前記ガラス繊維ストランドが、コンクリートの0.02〜3体積%の量で存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の強化コンクリート。
【請求項11】
前記ガラス繊維ストランドが、0.64〜5.08cmの長さ及び12〜24μmの直径を有する、請求項10に記載の強化コンクリート。
【請求項12】
前記ガラス繊維ストランドがチョップドストランドの形態である、請求項10又は11に記載の強化コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、強化用繊維材料のためのサイジング組成物、より具体的にはコンクリートの強化に使用するチョップド(chopped)強化用繊維のための化学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は多種多様なテクノロジーにおいて有用である。例えば、ガラス繊維は一般に、ガラス繊維強化プラスチック又は複合材を形成するためのポリマーマトリックス中の強化材として使用される。ガラス繊維は、ポリマーを強化するための、連続又はチョップドフィラメント、ストランド、ロービング、織物、不織布、チョップド及び連続フィラメント、マット、メッシュ並びにスクリムの形態で使用されてきた。
【0003】
チョップドガラス繊維は一般に、複合材における強化材として使用される。慣用的には、ガラス繊維を、ブッシング又はオリフィスから溶融ガラス材料流を細糸化(attenuate)することで形成する。水性サイジング組成物又は化学処理は、典型的には、ブッシングからの延伸後に、ガラス繊維に適用される。一般に潤滑剤、カップリング剤及び皮膜形成バインダ樹脂を含有する水性サイジング組成物を繊維に塗布する。このサイジング組成物が繊維をフィラメント間での摩擦から保護し、フィラメント同士を良好に凝集させ、またガラス繊維とガラス繊維をその中で使用するマトリックスとの間での適合性を向上させる。熱硬化性樹脂の強化に使用するサイジング組成物は、国際公開第2008/085304号パンフレットに記載されている。
【0004】
日本国公開特許公報第2002068810号、日本国公開特許公報第2002154853号、日本国公開特許公報第2003246655号及び日本国公開特許公報第2003335559号に記載されるように、ガラス繊維はコンクリートにおける強化材として使用することもできる。これらの特許出願においては、ガラス組成物に重点が置かれ、ガラス組成物は、コンクリートにおける高pH環境に耐える耐アルカリ性でなくてはならない。非耐アルカリ性ガラス繊維で強化したコンクリートが米国特許第6582511号明細書に記載されていて、このようなコンクリートは、改善されたプラスチック収縮性亀裂耐性しか有さないとされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、高い凝集性及び耐摩擦性、また時間が経ってもセメントマトリックスにおいて良好な耐久性を示すガラス繊維を提供することである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種のシランカップリング剤、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤及び水を含むサイジング組成物でコーティングした複数の個別のガラス繊維から形成される強化用ガラス繊維ストランドを提供することである。
【0007】
サイジング組成物において使用し得る、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤の例には、ブロックイソシアネートを含むポリエステル系ポリウレタン皮膜形成剤及びブロックイソシアネートを含むポリエーテル系ポリウレタン皮膜形成剤が含まれる。
【0008】
ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤は、水性分散液、エマルション及び/又は溶液の形態になり得る。
【0009】
ポリウレタン皮膜形成剤のイソシアネートは、好ましくは、このポリウレタン皮膜形成剤の同時又はほぼ同時の脱ブロック化及び硬化を可能にする温度で脱ブロック化する。一実施形態において、ブロックイソシアネートは、約107.2℃(225°F)〜約176.7℃(350°F)の温度、好ましくは約125℃(250°F)〜約165.6℃(330°F)の温度で脱ブロック化する。
【0010】
サイジング組成物において使用し得るシランカップリング剤の例には、アミノシラン、シランエステル、ビニルシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシシラン、サルファシラン、ウレイドシラン、イソシアナートシラン及びこれらの混合物が含まれる。一実施形態においては、1種のシランカップリング剤又は2種若しくは3種のシランカップリング剤の混合物を使用する。
【0011】
ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤は、サイジング調合物において、全固形組成物の約25〜約75質量%(乾燥固形分)の量で存在し得て、シランカップリング剤は、サイジング組成物において、全固形組成物の約2〜約15質量%(乾燥固形分)の量で存在し得る。
【0012】
本発明の別の目的は、コンクリート及び上で定義したようなガラス繊維ストランドを含む強化コンクリートを提供することである。
【0013】
ガラス繊維ストランドは、コンクリートにおいて、コンクリートの約0.02〜約3体積%、好ましくはコンクリートの約0.05〜約2体積%の量で存在し得る。
【0014】
ガラス繊維ストランドは好ましくは、約0.64〜約5.08cm(約0.25〜約2.5インチ)、より好ましくは約1.2〜約4.5cmの長さ及び約13〜約23μmのフィラメント直径を有する。ガラス繊維ストランドは、約50〜約600テックス、好ましくは約130〜約500テックスの質量線密度を有する。
【0015】
一実施形態において、ガラス繊維ストランドはチョップドストランドの形態である。
【0016】
本発明の更に別の目的は強化用ガラス繊維ストランドを形成する方法を提供することであり、この方法は、サイジング組成物を複数の細糸化したガラス繊維に塗布し、ガラス繊維を集めて既定の数のガラス繊維をその中に有するガラス繊維ストランドに仕立て、このガラス繊維ストランドを細断して湿潤チョップドガラス繊維束を形成し、この湿潤チョップドガラス繊維束を乾燥炉において乾燥させてチョップドガラス繊維束を形成するステップを含む。
【0017】
本発明の利点は、ガラス繊維がフレッシュコンクリートにおける混合段階でより良好な耐摩擦性を示すため、繊維がその物理的性質を保持できることである。本発明に従って製造する繊維の利点は、フレッシュコンクリートのワーカビリティを妨げる又は低下させることがないことである。これに加えて、これらの繊維は、ポストクラック段階中に作用し、また靭性を生み出す能力でもって硬化コンクリートの強力な強化材となる。これらの繊維はまた、ガラス繊維の表面で形成される架橋ポリウレタンポリマーの高い耐薬品性により、セメントマトリックス中で長期間にわたって耐久性を示す。
【0018】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は以下、続く詳細な説明及び添付の図面を考察することでより十分に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態によるガラス繊維束を形成するための例示的な方法のステップを示すフロー図である。
【
図2】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による乾燥チョップドストランド束を形成するための加工ラインの概略図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態によるチョップドストランド束の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、サイジング組成物をコーティングした複数の個別の強化用ガラス繊維から形成される強化用ガラス繊維ストランドに関する。このサイジング組成物は、少なくとも1種のシランカップリング剤、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤及び水を含む。このポリウレタン皮膜形成剤で利用されるブロックイソシアネートは、好ましくは、このポリウレタン皮膜形成剤の同時又はほぼ同時の脱ブロック化及び硬化を可能にする温度で脱ブロック化する。サイジング組成物でサイジングしたガラス繊維をインラインで細断、乾燥させてチョップドガラス繊維束を形成することができる。インラインでガラス繊維を細断することによって、サイジングしたガラス繊維から製造する製品の製造コストが低下し、またオフラインでケークを曲げ、乾燥及び細断を行う中間ステップが回避される。繊維上のサイジング組成物を所望の量にするために、サイジング組成物を、キスロール、浸漬延伸(dip−draw)、スライド又は吹き付け塗布を含めたいずれの慣用の方法でもガラス繊維に塗布し得る。いずれのタイプのガラス、例えばAガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラス、E−CRガラス(例えば、Owens Corning社が市販のAdvantex(登録商標)ガラス繊維)、ホウ素非含有ガラス、グラスウール、耐アルカリ性ガラス(例えば、Owens Corning社が市販のCem−FIL(登録商標)ガラス)又はこれらの組み合わせを強化用繊維として使用し得る。好ましくは、強化用繊維は耐アルカリ性ガラス繊維である。サイジング組成物は、繊維に、乾燥繊維上で約0.8〜約2.5、好ましくは約1.4〜約2.2、より好ましくは約1.6〜約2.2の強熱減量(LOI)で塗布され得る。この塗布において、LOIを、ガラス繊維表面上に堆積する有機固形物の百分率であると定義し得る。あるいは、ガラス繊維を、1種以上の合成ポリマー、例えば、以下に限定するものではないが、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ポリアラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物のストランドと組み合わせて使用し得る。
【0021】
上述したように、サイジング組成物は少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する。シランはとりわけ、続く加工での毛羽又は折れる繊維フィラメントの程度を低下させる機能を果たす。必要に応じて、弱酸、例えば酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、コハク酸、クエン酸、ギ酸及び/又はポリアクリル酸をサイジング組成物に添加してシランカップリング剤の加水分解を支援し得る。サイジング組成物において使用し得るシランカップリング剤の例は、官能基アミノ、エポキシ、ビニル、メタクリルオキシ、ウレイド、イソシアナート及びアザミド(azamido)を特徴とし得る。好ましい実施形態において、シランカップリング剤は、1つ以上の官能基、例えばアミン(一級、二級、三級、四級)、アミノ、イミノ、アミド、イミド、ウレイド、イソシアナート又はアザミドを有する1つ以上の窒素原子を含有するシランを含む。
【0022】
適切なシランカップリング剤の非限定的な例には、アミノシラン、シランエステル、ビニルシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシシラン、サルファシラン、ウレイドシラン及びイソシアナートシランが含まれる。本発明で使用するためのシランカップリング剤の具体例には、[ガンマ]−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100)、n−フェニル−[ガンマ]−アミノプロピルトリメトキシシラン(Y−9669)、n−トリメトキシ−シリル−プロピル−エチレン−ジアミン(A−1120)、メチルトリクロロシラン(A−154)、[ガンマ]−クロロプロピル−トリメトキシ−シラン(A−143)、ビニル−トリアセトキシシラン(A−188)、メチルトリメトキシシラン(A−1630)、[ガンマ]−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(A−1524)が含まれる。適切なシランカップリング剤の他の例を表1に挙げる。上記及び表1に挙げたシランカップリング剤の全てがGE Silicone社から市販されている。好ましくは、シランカップリング剤はアミノシラン又はジアミノシランである。
【0024】
サイジング組成物は1種以上のカップリング剤を含み得る。カップリング剤は、サイジング組成物において、全固形組成物の約2〜約15質量%(乾燥固形分)の量、好ましくは約5〜約15質量%(乾燥固形分)の量、より好ましくは全固形組成物の約10〜約15質量%(乾燥固形分)の量で存在し得る。
【0025】
上述したように、サイジング組成物はポリウレタン皮膜形成剤を含む。皮膜形成剤は強化用繊維間の接着性を改善し、その結果、ストランド完全性が改善される。サイジング組成物において、皮膜形成剤は高分子結合剤として作用することから強化用繊維が更に保護され、また加工性が改善されることで高速細断で発生し得る毛羽が減少する。
【0026】
本発明のサイジング調合物で使用のポリウレタン皮膜形成剤はブロックイソシアネートを含む。サイジング組成物において使用するための好ましい皮膜形成剤は、ブロックイソシアネートを含むポリエステル系及びポリエーテル系ポリウレタンを含む。本明細書で使用の用語「ブロック(blocked)」は、イソシアネート基がある化合物と可逆的に反応させられているため、得られたブロックイソシアネート基が周囲温度では活性水素に対して安定であるが、高温、例えば約93.33℃(200°F)〜約204.4℃(400°F)の温度では皮膜形成ポリウレタンにおいて活性水素と反応性であることを意味する。
【0027】
サイジング組成物で利用されるイソシアネートを完全にブロック又は部分的にブロックすることによって、科学的に処理した(すなわちサイジングした)ガラス繊維のストランドをブロックイソシアネートの脱ブロック化に十分な温度にまで加熱して皮膜形成剤を硬化させるまで、イソシアネートをその他の成分の活性水素と反応させないことができる。本発明で使用のサイジング組成物において、イソシアネートは、好ましくは、約107.2℃(225°F)〜約176.7℃(350°F)の温度、より好ましくは約125℃(250°F)〜約165.6℃(330°F)の温度で脱ブロック化する。ブロックイソシアネートのブロッカー又はブロック部としての使用に適した基は当該分野で周知であり、アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、アミン、ベンジルt−ブチルアミン(BBA)等の基を含む。1つ又は幾つかの異なるブロック基を使用し得る。
【0028】
ブロックイソシアネートの水分散液の非包括的な例には、Baybond PU 403、Baybond PU RSC 825、Baybond 406、Baybond PU130(Bayer社)、Witcobond 60X(Witco社)、Baxenden 199−76X、Trixene DP/9B1961、Stantex EC 1159 PRO(Pulcra社)が含まれる。
【0029】
ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤は、サイジング組成物において、全固形組成物の約25〜約75質量%(乾燥固形分)の量、好ましくは約30〜約70質量%(乾燥固形分)の量、より好ましくは約35〜約70質量%(乾燥固形分)の量で存在し得る。この皮膜形成剤は、水性分散液、エマルション又は溶液の形態で添加し得る。
【0030】
サイジング組成物は更に、ガラス繊維上に塗布するにあたって活性固形物を溶解又は分散させるための水を含む。水は、水性サイジング組成物を、ガラス繊維へのその塗布に適した粘度まで希釈する及び繊維上での所望の固形分を達成するのに十分な量で添加し得る。特に、サイジング組成物は、最高約90質量%の水を含有し得る。
【0031】
イソシアネートブロックポリウレタンに加えて、サイジング組成物は、ポリマー系二次皮膜形成剤、例えばエポキシ、ポリエステル、ポリビニルアセテート、アクリル、非反応性ポリウレタン、官能化ポリオレフィン又はこれらの混合物を、全固形組成物の約5〜約60質量%(乾燥固形分)の量で含み得る。このようなポリマーの水性分散液の非包括的な例には、Neoxil 1143、Neoxil 9158(DSM社から入手可能)、Epirez 5520(Hexion社から入手可能)、Witcobond 290H(Chemtura社から入手可能)、Airflex EP 740(Wacker社から入手可能)、Filco 310(COIM社から入手可能)、Vinamul 8828、Vinamul 8852、Impranil DLS(Bayer社)が含まれる。幾つかの実施形態において、サイジング組成物は任意で、繊維製造並びに複合材の加工及び作製を促進するための少なくとも1種の潤滑剤を含み得る。潤滑剤を利用する実施形態において、潤滑剤は、サイジング組成物において、全固形組成物の約0.1〜約5質量%(乾燥固形分)の量で存在し得る。いずれの適切な潤滑剤も使用し得るが、サイジング組成物において使用するための潤滑剤の例には、以下に限定するものではないが、水溶性エチレングリコールステアレート(例えば、ポリエチレングリコールモノステアレート、ブトキシエチルステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ブトキシエチルステアレート)、エチレングリコールオレエート、エトキシル化脂肪アミン、グリセリン、乳化鉱物油、オルガノポリシロキサンエマルション、カルボキシル化ワックス、官能性又は非官能性化学基を有する直鎖又は(超)分岐ワックス又はポリオレフィン、官能化又は修飾ワックス及びポリオレフィン、ナノクレイ、ナノ粒子並びにナノ分子が含まれる。サイズ組成物での使用に適した潤滑剤の具体例には、Lubesize K−12(AOC社から入手可能)の商品名で販売されているステアリン酸エタノールアミド、400個のエチレンオキシド基を有するモノオレエートエステルであるPEG 400 MO(Cognis社から入手可能)、ポリエチレンイミンポリアミド塩であるEmery 6760 L(Cognis社から入手可能)、Lutensol ON60(BASF社から入手可能)、Radiacid(Fina社から入手可能なステアリン酸)、Michemlub 723(Michelman社から入手可能)並びにAstor HP 3040及びAstor HP 8114(IGI International Waxes社から入手可能なマイクロクリスタリンワックス)が含まれる。
【0032】
幾つかの実施形態においては、添加剤、例えばpH調節剤、加工助剤、消泡剤、静電防止剤、増粘剤、定着剤、相溶化剤、安定剤、耐衝撃性改良剤、顔料、染料、着色剤及び/又は香料をサイジング組成物に少量添加し得る。サイジング組成物中に存在し得る添加剤の総量は、全固形組成物の0〜約5.0質量%(乾燥固形分)になり得て、幾つかの実施形態において、添加剤は全固形組成物の約0.2〜約5.0質量%(乾燥固形分)の量で添加し得る。
図1において概略的に説明する実施形態において、本発明の一態様によるチョップドガラス繊維ストランドの形成方法を示す。特に、この方法は、ガラス繊維を形成し(ステップ20)、サイジング組成物をガラス繊維に塗布し(ステップ22)、繊維を分割することによって繊維ストランドを得て(ステップ24)、この繊維ストランドを個別の長さに細断し(ステップ26)、繊維ストランドを乾燥させる(ステップ28)ことによってチョップドガラス繊維束を形成することを含む。
【0033】
図2でより詳細に示すように、ガラス繊維12を、ブッシング又はオリフィス30から溶融ガラス材料流(図示せず)を細糸化することで形成し得る。サイジング組成物を繊維に、約6〜約12%の水分含有量の繊維が得られるのに十分な量で塗布する。細糸化されたガラス繊維12は、約12〜約24ミクロンの直径を有し得る。好ましくは、繊維12は、約14〜約20ミクロンの直径を有する。
【0034】
ガラス繊維12をブッシング30から延伸した後に、水性サイジング組成物を繊維12に塗布する。サイジング組成物は、慣用の方法、例えば塗布ローラー32により塗布し得る。ガラス繊維12をサイジング組成物で一旦処理したら、ガラス繊維を集め、特定の所望の本数の個別のガラス繊維12を有する繊維ストランド36に分割する。スプリッターシュー34は、細糸化されサイジングを施されたガラス繊維12を繊維ストランド36に分割する。繊維ストランド36の細断に先立って、ガラス繊維ストランド36を任意で第2スプリッターシュー(図示せず)に通し得る。繊維ストランド36中に存在する個別のガラス繊維12の具体的な本数(ひいてはガラス繊維12の分割数)はチョップドガラス繊維束10の特定の用途に応じて異なり、また当業者なら容易に決定し得る。本発明においては、各強化用繊維ストランド又は束が100〜2500本以上の繊維を含むことが好ましい。
【0035】
次に、繊維ストランド36をギャザリングシュー38からチョッパー40/コット60の組み合わせに通し、そこで繊維ストランドを湿潤チョップドガラス繊維束42に細断する。ストランド36を、約1.28cm(0.5インチ)〜約5.08cm(2インチ)の長さを有するように細断し得る。この湿潤チョップドガラス繊維束42を、乾燥炉46に搬送するためのコンベヤ44(有孔コンベヤ等)上に落下させ得る。次に、湿潤し、サイジングを施されたチョップド繊維42の束を乾燥させることによってサイジング組成物をガラス繊維12上で固結又は固化させる。好ましくは、湿潤繊維束42を、炉46、例えば流動床炉(すなわち、Cratec(登録商標)炉(Owens Corning社から入手可能))、回転式熱トレイ炉又は誘電炉において乾燥させることによって乾燥チョップドガラス繊維束10を形成する。一実施形態において、繊維を約15〜約90分間にわたって約140〜約170℃の温度で加熱処理する。
【0036】
次に、乾燥繊維をスクリーン(図示せず)に通して長すぎるもの、毛羽玉及び他の望ましくないものを除去してから、チョップドガラス繊維を回収する。一実施形態においては、遊離水(すなわち、チョップド繊維束の外側にある水)の99%より多く(又は99%に等しい)が除去される。しかしながら、実質的に全ての水が乾燥炉46によって除去されることが望ましい。本明細書で使用の表現「実質的に全ての水」とは、繊維束から全て又はほぼ全ての遊離水が除去されることを意味する。
【0037】
好ましい実施形態においては、湿潤チョップド繊維束42をコンベヤ44上で予備乾燥させてから炉46で乾燥させる。これは、例えば、カーペットを介して又はトンネル(図示せず)内に温風流を流すことで行い得る。この予備乾燥処理には、湿潤チョップド繊維束の水分を部分的に減少させることで、乾燥処理中に起こり得るケーキング、目詰まり、ストランド同士の付着を防止する効果がある。湿潤チョップド繊維を予備乾燥させる場合、予備乾燥は好ましくは、数秒にわたって約60〜約130℃の温度で行われる。
【0038】
本発明のチョップドガラス繊維束10の例を
図3に概略的に図示する。
図3に示すように、チョップドガラス繊維束10は、直径16及び長さ14を有する複数の個別のガラス繊維12から形成される。これら個別のガラス繊維12は互いに実質的に平行な方向に結束した、すなわち「束ねられた」形で位置決めされる。本明細書で使用の表現「実質的に平行」とは、個別のガラス繊維12が互いに平行又はほぼ平行であることを意味する。
【0039】
乾燥させ、サイジングを施されたチョップド強化用繊維束を、コンクリートの強化に使用し得る。本明細書で使用の用語「コンクリート」は、セメントと、骨材と、砂と、水と、任意でこの分野で一般的に用いられる添加剤との組み合わせを意味する。
【0040】
本発明について概略的に説明してきたが、以下の特定の具体例を参照することでより深く理解することができ、これらの具体例は説明を目的としたものにすぎず、特に記載がない限り包括的である又は限定的であると意図するものではない。
【実施例】
【0041】
1)サイズ剤の調製及び組成
以下の実施例を、シランカップリング剤溶液を水にゆっくりと添加し、約20分間にわたって撹拌して材料を完全に加水分解することで調製した。次に、残りの原料を水で希釈してから合わせ、シランカップリング剤と混合した。実施例1〜8の組成を以下の表2に示す。
【0042】
実施例において、量は全固形組成物の質量%(乾燥固形分)として表される。
【0043】
【表2】
【0044】
2)ガラス繊維製造
サイジング組成物を直接、耐アルカリ性ガラス繊維にローラー塗布し、これによって強化用ガラス繊維が得られた。この強化用繊維の性質を表3に示す。
【0045】
実施例3a、4a及び5aのサイジング組成物は、実施例3、4、5のサイジング組成物とそれぞれ同じものであった。ただしサイズ剤の総乾燥固形分を変えることで繊維のLOIを変更している。
【0046】
3)コンクリートの強化
耐摩擦性は、6分間にわたるフレッシュモルタル及び骨材(0〜4mm)との混合の前と後での強化ガラス繊維の様相の定性比較である。繊維を1〜5段階にグレード分けした。グレード5は繊維が混合前後で全く同じ形状であることを意味する。グレード1は、繊維が完全に開く又は破壊されることを意味する。
【0047】
試験片を流し込み成形するためのコンクリートを、セメント、砂(0〜4mm)、骨材(4〜16mm)及び水を混合することで調製した。水/セメント比は0.55であり、異なる成分間でのこの比により、圧縮クラスC30及び流動性クラスS2に属するコンクリートが得られた。0.5体積%の本発明の強化繊維を、このようにして得られたコンクリートに混合により添加した。フレッシュコンクリート中での繊維の良好な分散性により、2〜3分間にわたる混合後に均質な分散物が得られた。
【0048】
コンクリートの機械的性質を、規格EN14651に従って28日後に評価した。fR1、fR2及びfR3は、それぞれ0.5mm、1.5mm及び2.5mmの亀裂開口変位(CMOD)についてのMPaでの各強度である。コンクリート中での本発明の繊維を試験した後に計算した。
【0049】
コンクリートの性質も表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3から、約1.6〜2.2のLOIを有する繊維が得られることがわかる。必要量のブロックイソシアネートを含む本発明のサイジング組成物は、良好な耐摩擦性及び亀裂開口特性を呈することから、コンクリートマトリックスの強化に適している。fR1値が極めて高く、またfR3値が対応するfR1値の最高約40%を保持することに特に留意されたい。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕強化用ガラス繊維ストランドであって、サイジング組成物でコーティングされた複数の個別のガラス繊維を含み、前記サイジング組成物が少なくとも1種のシランカップリング剤と、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤と、水とを含み、前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、前記サイジング組成物において、全固形組成物の約25〜約75質量%(乾燥固形分)の量で存在する、強化用ガラス繊維ストランド。
〔2〕前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、ブロックイソシアネートを含むポリエステル系ポリウレタン皮膜形成剤及びブロックイソシアネートを含むポリエーテル系ポリウレタン皮膜形成剤から選択される、前記〔1〕に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔3〕前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、前記ポリウレタン皮膜形成剤の同時又はほぼ同時の脱ブロック化及び硬化を可能にする温度で脱ブロック化する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔4〕前記ブロックイソシアネートが、107.2℃(225°F)〜176.7℃(350°F)の温度で脱ブロック化する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔5〕前記ブロックイソシアネートが、125℃(250°F)〜165.6℃(330°F)の温度で脱ブロック化する、前記〔4〕に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔6〕前記少なくとも1種のシランカップリング剤が、アミノシラン、シランエステル、ビニルシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシシラン、サルファシラン、ウレイドシラン、イソシアナートシラン及びこれらの混合物から選択される、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔7〕前記シランカップリング剤が、前記サイジング組成物において、全固形組成物の約2〜約15質量%(乾燥固形分)、好ましくは約5〜約15質量%(乾燥固形分)の量で存在する、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔8〕前記サイジング組成物が更に、エポキシ、ポリエステル、ポリビニルアセテート、アクリル、非反応性ポリウレタン、官能化ポリオレフィン及びこれらの混合物から選択される別の皮膜形成剤を、全固形組成物の約5〜約60質量%(乾燥固形分)の量で含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔9〕前記サイジング組成物を、乾燥繊維上で約0.8〜約2.5、好ましくは約1.4〜約2.2、より好ましくは約1.6〜約2.2の強熱減量で繊維に塗布する、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の強化用ガラス繊維ストランド。
〔10〕前記ガラス繊維が耐アルカリ性ガラス繊維である、前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の強化用繊維ストランド。
〔11〕サイジング組成物であって、少なくとも1種のシランカップリング剤と、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤と、水とを含み、前記ブロックイソシアネートを含むポリウレタン皮膜形成剤が、前記サイジング組成物において、全固形組成物の約25〜約75質量%(乾燥固形分)の量で存在する、サイジング組成物。
〔12〕前記ポリウレタン皮膜形成剤が、前記〔2〕〜〔5〕のいずれか一項で定義される通りである、前記〔11〕に記載のサイジング組成物。
〔13〕前記シランカップリング剤が、前記〔6〕又は〔7〕で定義される通りである、前記〔11〕又は〔12〕に記載のサイジング組成物。
〔14〕エポキシ、ポリエステル、ポリビニルアセテート、アクリル、非反応性ポリウレタン、官能化ポリオレフィン及びこれらの混合物から選択される別の皮膜形成剤を、全固形組成物の約5〜約60質量%(乾燥固形分)の量で更に含む、前記〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載のサイジング組成物。
〔15〕コンクリートと、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項で定義される通りのガラス繊維ストランドとを含む、強化コンクリート。
〔16〕前記ガラス繊維ストランドが、コンクリートの約0.02〜約3体積%、好ましくはコンクリートの約0.05〜約2体積%の量で存在する、前記〔15〕に記載のコンクリート。
〔17〕前記ガラス繊維ストランドが、約0.64〜約5.08cmの長さ及び約12〜約24μmの直径を有する、前記〔15〕又は〔16〕に記載のコンクリート。
〔18〕前記ガラス繊維ストランドがチョップドストランドの形態である、前記〔15〕〜〔17〕のいずれか一項に記載のコンクリート。