(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
音高がそれぞれ割り当てられていて、演奏者の押離鍵操作によって前端が上下方向に揺動するように鍵支点部にてそれぞれ支持され、側面と上面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の白鍵、及び下側の側面と前記下側の側面に対して内側に傾斜した上側の側面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の黒鍵であって、前記押離鍵操作される操作部と、前記操作部の前端よりも前方又は後方にて下方へ延設された駆動部をそれぞれ有していて、前記操作部の前端から鍵支点部までの距離を互いに異ならせた複数の白鍵及び複数の黒鍵と、
前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の前記駆動部に係合する係合部をそれぞれ有していて、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動に連動して揺動するようにハンマー支点部にてそれぞれ支持された複数のハンマーと、
前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の並び方向に延設されていて、前記複数のハンマーの揺動を規制して、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動範囲を規定する規制部材であって、前記複数のハンマーの揺動角度の範囲が同一となるように前記複数のハンマーの揺動を規制する規制部材とを備えた鍵盤装置において、
前記複数の白鍵及び複数の黒鍵のうちの第1の鍵及び前記距離が前記第1の鍵の前記距離よりも長い第2の鍵であって、白鍵同士又は黒鍵同士である第1の鍵及び第2の鍵の前記駆動部の上下方向の長さを共通とし、
前記第1の鍵及び前記第2の鍵の前端の上方への変位が規制されているとき、又は前記第1の鍵及び前記第2の鍵の前端の下方への変位が規制されているとき、前記第1の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置が前記第2の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置と共通であり、かつ前記第1の鍵の上面が前記第2の鍵の上面と同一面内にあるように、前記第1の鍵の鍵支点部及び前記第1の鍵の操作部の前端を含む平面と、前記第1の鍵の上面との位置関係を設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【発明の概要】
【0004】
上記従来の鍵盤装置においては、鍵の揺動を規制するストッパを備えていて、鍵の押鍵深さの最大値が全ての鍵について同じ深さになっている。しかし、ハンマーの回動支点が前後方向にずれているため、割り当てられた音高ごとに、ハンマーの回動角度の範囲が異なる。そのため、ハンマーの揺動によって押されるゴムスイッチの位置及び特性を割り当てられた音高ごとに異ならせておく必要があった。また、離鍵状態及び押鍵状態における各鍵の前端の高さ、各鍵の傾斜角度などを共通にしてアコースティックピアノの外観を模擬するためには、鍵の揺動を規制するストッパの位置及び厚さなどを割り当てられた音高ごとに異ならせておく必要があった。したがって、部品の種類が多く、鍵盤装置の生産性が低かった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、各鍵の支点の位置を前後方向に異ならせてアコースティックピアノの鍵タッチ感及び外観を模擬した鍵盤装置のコストを削減するとともに、生産性を向上させることにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、音高がそれぞれ割り当てられていて、演奏者の押離鍵操作によって前端が上下方向に揺動するように鍵支点部(Kw,Kb)にてそれぞれ支持され、側面と上面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の白鍵、及び下側の側面と前記下側の側面に対して内側に傾斜した上側の側面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の黒鍵であって、前記押離鍵操作される操作部と、操作部の前端よりも前方又は後方にて下方へ延設された駆動部(11w1,11b1)をそれぞれ有していて、操作部の前端から鍵支点部までの距離を互いに異ならせた複数の白鍵及び複数の黒鍵(11w,11b)と、複数の白鍵及び複数の黒鍵の駆動部に係合する係合部をそれぞれ有していて、複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動に連動して揺動するようにハンマー支点部(Hw,Hb)にてそれぞれ支持された複数のハンマー(16w,16b)と、複数の白鍵及び複数の黒鍵の並び方向に延設されていて、複数のハンマーの揺動を規制して、複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動範囲を規定する規制部材(20,21)であって、前記複数のハンマーの揺動角度の範囲が同一となるように前記複数のハンマーの揺動を規制する規制部材とを備えた鍵盤装置において、複数の白鍵及び複数の黒鍵のうちの第1の鍵及び前記距離が第1の鍵の前記距離よりも長い第2の鍵であって、白鍵同士又は黒鍵同士である第1の鍵及び第2の鍵
の前記駆動部の上下方向の長さを共通とし、前記第1の鍵及び第2の前端の上方への変位が規制されているとき、又は前記第1の鍵及び第2の鍵の前端の下方への変位が規制されているとき、第1の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置が第2の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置と共通であり、かつ第1の鍵の上面が第2の鍵の上面と同一面内にあるように、第1の鍵の鍵支点部及び第1の鍵の操作部の前端を含む平面と、第1の鍵の上面との位置関係を設定したことにある。なお、規制部材によってハンマーを制動する制動力が、鍵とハンマーとの係合部を介して伝達されている状態においては、実質的にハンマーの規制部材によって、鍵の揺動が規制されている状態とみなす。
【0007】
この場合、第1の鍵の鍵支点部を、
第2の鍵の前端の上方への変位が規制されている状態における第2の鍵の鍵支点部と第2の鍵の前端とを含む基準平面(S1,S3)よりも下方に設け、
第1の鍵及び第2の鍵の前端の下方への変位が規制されているとき、第1の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置が第2の鍵の操作部の前端の上下方向及び前後方向の位置と共通であり、かつ第1の鍵の上面が第2の鍵の上面と同一面内にあり、第1の鍵及び第2の鍵の前端の上方への変位が規制されているとき、第1の鍵の操作部の前端を、第1の鍵の鍵支点部を含み、かつ基準平面に第2の鍵の前端よりも第2の鍵の駆動部側にて交差する平面(S2,S4)内に位置させるとよい。
【0008】
また、この場合、第1の鍵及び第2の鍵は、隣接する白鍵であって、第1の鍵、第2の鍵、及び第1の鍵と第2の鍵との間に位置する黒鍵の離鍵状態において、黒鍵の稜線が、第1の鍵の上面と第2の鍵の上面の間に位置しているとよい。
【0009】
また、この場合、第1の鍵及び第2の鍵は、隣接する白鍵であって、第1の鍵、第2の鍵、及び第1の鍵と第2の鍵との間に位置する黒鍵が押鍵されて、第1の鍵、第2の鍵及び黒鍵の揺動が規制された状態において、黒鍵の稜線が、第1の鍵の上面及び第2の鍵の上面よりも下方に位置しているとよい。なお、上記の揺動が規制された状態とは、例えば、白鍵の前端部と黒鍵の前端部に同一の荷重を印加して、鍵の揺動が規制されている状態である。また、本発明には、黒鍵の稜線のうちの前端側の一部分が、第1の鍵の上面及び第2の鍵の上面よりも下方に位置している場合も含まれる。
【0010】
また、この場合、複数の白鍵の駆動部を操作部の前端よりも後方に設け、複数の白鍵のうち、操作部の前端から鍵支点部までの距離が短い白鍵ほど、離鍵状態における操作部の前端の位置を高くし、複数の黒鍵の駆動部を操作部の前端よりも前方に設け、複数の黒鍵のうち、操作部の前端から鍵支点部までの距離が短い黒鍵ほど、離鍵状態における操作部の前端の位置を低くするとよい。
【0011】
上記のように構成した鍵盤装置によれば、離鍵状態及び押鍵状態における鍵の前端の高さを鍵ごとに調整することなく、外観をアコースティックピアノの鍵盤の外観に近づけることができる。したがって、鍵ごとに鍵の前端の高さを調整する場合に比べて、部品点数を削減して、鍵盤装置のコストを削減できる。とくに、複数の白鍵及び黒鍵が押鍵されて、これらの鍵の揺動が規制されたとき、白鍵の上面及び黒鍵の上面がそれぞれ同一平面上に位置するようにすれば、アコースティックピアノの押鍵状態の外観を模擬することができる。なお、揺動角度とは、離鍵状態を基準とした鍵の稜線を含む平面の角度である。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、第1の鍵の稜線を含む平面と第1の鍵の鍵支点部との距離を、第2の鍵の稜線を含む平面と第2の鍵の鍵支点部との距離と同一にしたことにある。この場合、第1及び第2の鍵の鍵支点部の上下方向の位置を同一にするとよい。これによれば、鍵の長さ以外に関する部位を出来るだけ共通化することができる。また、鍵を支持する支持部材(フレーム)の設計が簡単である、また、支持部材を加工し易く、精度を向上させることができる。さらに、第1の鍵の稜線を含む平面と第1の鍵の鍵支点部との距離を、第2の鍵の稜線を含む平面と第2の鍵の鍵支点部との距離と同一にし、かつ第1及び第2の鍵の鍵支点部の上下方向の位置を同一にすれば、押鍵状態において、第1及び第2の鍵の上面を同一の水平面上に位置させて、アコースティックピアノの鍵盤の外観を模擬できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。以下の説明では、演奏者に近い側を「前側」とし、演奏者から遠い側を「後側」とする。また、高音部側を「右側」とし、低音部側を「左側」とする。
【0015】
この鍵盤装置は、
図1乃至
図3に示すように、複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bを有している。この複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bには、互いに異なる音高がそれぞれ割り当てられている。本実施形態においては、白鍵11wには、「C3」、「D3」・・・「C6」のうちのいずれか1つの音高がそれぞれ割り当てられており、黒鍵11bには、「C#3」、「D#3」・・・「B#5」のうちのいずれか1つの音高がそれぞれ割り当てられている。白鍵11w及び黒鍵11bは、それぞれ合成樹脂によって長尺状に一体成型されている。低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って、白鍵11wの長さを徐々に短くし、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って、黒鍵11bの長さを徐々に短くしている。なお、黒鍵11bの後端の位置は、隣り合う白鍵11wの後端よりも後方に位置している。
【0016】
割り当てられた音高が異なる白鍵11wは、前後方向の長さが異なっているが、他の構成は同様である。また、割り当てられた音高が異なる黒鍵11bは、前後方向の長さが異なっているが、他の構成は同様である。白鍵11wは、黒鍵11bに比べて、上下方向の幅が小さく、左右方向の幅が大きい。白鍵11w及び黒鍵11bは、前後方向に延設された薄肉の上壁及び上壁の左右端からそれぞれ下方へ延設された薄肉の側壁を有し、下方に開放した中空状に形成されている。
【0017】
また、白鍵11w及び黒鍵11bの側壁の後部には、それぞれ対向する貫通孔Kw及び貫通孔Kbが設けられている。貫通孔Kw及び貫通孔Kbから、それぞれの鍵の後端までの距離は、全ての鍵について同一である。そして、白鍵11w及び黒鍵11bは、貫通孔Kw及び貫通孔Kbにて、後述する鍵フレーム12の鍵支持部13w及び鍵支持部13bによって支持されている。なお、白鍵11wの後端部は、この鍵盤装置が電子楽器に組み付けられたとき、電子楽器の筐体の内側に入り込んでいる。この筐体の内側に入り込む部分よりも前方の部分を白鍵11wの見え掛り部と言う。また、白鍵11wの側面と上面とが交差する部分には稜線が形成されている。また、黒鍵11bが押鍵されておらず、かつ隣り合う白鍵11wが押鍵されていない状態において、前記黒鍵11bは、前記白鍵11wの上面よりも上方に突出した部分を有する。この突出した部分を黒鍵11bの見え掛り部という。また、黒鍵11bの見え掛り部よりも下方の部分を本体部という。演奏者は、白鍵11w及び黒鍵11bの見え掛り部を押離鍵操作する。すなわち、見え掛り部が本発明の操作部に相当する。黒鍵11bの見え掛り部は、上端部ほど左右方向の幅が狭くなっており、本体部の左右方向の幅は共通である。黒鍵11bの見え掛り部の下端と、前記見え掛り部の下端よりも下方の部分との境界部には、稜線が形成されている(
図3参照)。
【0018】
鍵フレーム12は、前後方向及び左右方向に延設された上板部12aを有する。上板部12aの低音部側の前端と高音部側の前端の位置は同一であるが、低音部側の後端は、高音部側の後端よりも後方に位置している。また、鍵フレーム12は、上板部12aの前端から下方へ垂直に延設された前板部12b、前板部12bの下端から前方へ水平に延設された底板部12c、底板部12cの前端から上方へ垂直に延設された前板部12dを有する。また、鍵フレーム12は、上板部12aの後端から下方へ垂直に延設された後板部12e及び後板部12eの下端から後方へ水平に延設された底板部12fを有する。底板部12cの下面の高さと底板部12fの下面の高さは同じであり、底板部12cの下面と底板部12fの下面を電子楽器のフレームFRに当接させて固定することにより、この鍵盤装置が、電子楽器のフレームFRに支持される。上記の鍵支持部13w及び鍵支持部13bは、上板部12aの上面から上方へ突出するように形成されている。鍵支持部13bは、隣り合う鍵支持部13wよりも後方に位置している。鍵支持部13w及び鍵支持部13bは、それぞれ対向する2枚の板状に形成されていて、内側に対向する突出部13w1及び突出部13b1をそれぞれ備えている。突出部13w1及び突出部13b1は、貫通孔Kw及び貫通孔Kbに嵌合している。これにより、白鍵11w及び黒鍵11bは、突出部13w1及び突出部13b1回りに回転可能にそれぞれ支持され、貫通孔Kw及び貫通孔Kb並びに突出部13w1及び突出部13b1の中心軸を揺動中心として、前端部が上下方向にそれぞれ揺動可能となっている。白鍵11wの見え掛り部の上面(すなわち、白鍵11wの左右の稜線を含む平面)からその揺動中心までの上下方向の距離は、全ての白鍵11wについて共通である。また、黒鍵11bの操作部の上面(すなわち、黒鍵11bの左右の稜線を含む平面)からその揺動中心までの上下方向の距離は、すべての黒鍵11bについて共通である。
【0019】
また、白鍵11wの見え掛り部の中間部から下方へ向かって駆動部11w1が延設されている。駆動部11w1は、上下に延設された薄肉の前壁及び前壁の左右端からそれぞれ後方へ延設された薄肉の側壁を有し、後方に開放した中空状に形成されている。駆動部11w1の下端は下端壁により閉じている。駆動部11w1の上下方向の長さは、全ての白鍵11wについて共通である。一方、黒鍵11bも白鍵11wと同様の駆動部11b1を有する。ただし、駆動部11b1は、黒鍵11bの見え掛り部の前端から下方へ延設された後、僅かに前方へ湾曲させられた連結部と、この連結部の先端から下方へ延設された垂直部からなる。垂直部の構成は、駆動部11w1と同様である。駆動部11b1の上下方向の長さも、すべての黒鍵11bについて共通である。
【0020】
白鍵11wの前端から駆動部11w1までの前後方向の距離Lw1は、最高音の白鍵11w(すなわち、複数の白鍵11wのうちで最も短い鍵)の前端から貫通孔Kwまでの距離Lw2の30%以内である。距離Lw1は、全ての白鍵11wについて共通である。また、黒鍵11bの見え掛り部の前端から駆動部11b1までの前後方向の距離Lb1は、最高音の黒鍵11b(すなわち、複数の黒鍵11bのうちで最も短い鍵)の見え掛り部の前端から貫通孔Kbまでの距離Lb2の30%以内である。距離Lb1は、全ての黒鍵11bについて共通である。そして、白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵状態において、駆動部11w1と駆動部11b1の前後方向の位置は同一であり、駆動部11w1と駆動部11b1の下端壁の上下方向の位置も同一である。すなわち、駆動部11w1及び駆動部11b1は、黒鍵11bの見え掛り部の前端よりも前方に位置しており、駆動部11w1及び駆動部11b1は、左右方向に並設されている。言い換えれば、離鍵状態において、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端の上下方向及び前後方向の位置が同一である。
【0021】
上記のように、全ての白鍵11wの駆動部11w1の上下方向の長さが同一であり、かつ離鍵状態における駆動部11w1の下端の上下方向及び前後方向の位置が同一なので、白鍵11wの離鍵状態においては、中間部の上面の上下方向及び前後方向の位置が同一である。そして、
図4に示すように、離鍵状態において、白鍵11wは、前端よりも後端が低くなるように傾斜しており、かつ前後方向の長さが短い白鍵11wほど、前端の位置が高い。本実施形態においては、低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って前後方向の長さを徐々に短くしているので、
図5に示すように、低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って離鍵状態における前端の高さが徐々に高くなっている。また、隣接する2つの白鍵11w及び前記2つの白鍵11wの間に位置する黒鍵11bが離鍵されている状態において、前記黒鍵11bの稜線Rは、前記2つの白鍵11wのうちの低音部側の白鍵11wの上面よりも下方に位置しており、かつ前記2つの白鍵11wの内の高音部側の白鍵11wの上面よりも上方に位置している。
【0022】
例えば、割り当てられた音高が「C6」である白鍵11w(C6)及び割り当てられた音高が「B5」である白鍵11w(B5)の離鍵状態において、白鍵11w(C6)の前端は、白鍵11w(B5)の前端よりも若干上方に位置する(
図4参照)。なお、白鍵11w(C6)の揺動中心は、白鍵11w(B5)の離鍵状態における、白鍵11w(B5)の揺動中心及び白鍵11w(B5)の見え掛り部の前端を含む平面S1よりも下方に位置している。したがって、白鍵11w(C6)及び白鍵11w(B5)の離鍵状態において、白鍵11w(C6)の見え掛り部の前端は、前記白鍵11w(B5)の揺動中心を含む平面S2であって、平面S1に白鍵11w(B5)の見え掛り部の前端よりも駆動部11w1側にて交差する平面S2内に位置している。なお、
図4においては、白鍵11w(B5)及び白鍵11w(C6)が離鍵状態及び押鍵状態にあるときの姿勢を表わしている。すなわち、離鍵状態における白鍵11w(B5)を太い破線で表し、押鍵状態にある白鍵11w(B5)を細い破線で表している。また、離鍵状態における白鍵11w(C6)を太い実線で表し、押鍵状態にある白鍵11w(C6)を細い実線で表している。また、同図においては、前後方向の長さの異なる白鍵11wの見え掛り部の前端の高さの違いを説明するために、白鍵11w(C6)と白鍵11w(B5)の長さを大きく異ならせているが、実際には隣り合う鍵の長さの違いは僅かなので、白鍵11wの高さの違いも僅かである。また、
図4においては、図面が煩雑になるのを避けるために、鍵の形状を簡略化している。
【0023】
上記のように、離鍵状態においては、前後方向の長さが短い白鍵11wほど、傾斜角度が大きい。
後述するように、複数の白鍵11wが押鍵されて、ハンマー13wが緩衝材20bに当接して、白鍵11wの揺動が規制されたとき、前記複数の白鍵11wの上面が水平になるように、各白鍵11wにおける、揺動中心と見え掛り部の前端とを含む平面と、上面との位置関係がそれぞれ設定されている。言い換えれば、各白鍵11wにおける、揺動中心と見え掛り部の前端とを含む平面に対する上面の角度がそれぞれ設定されている。そして、前記複数の白鍵11wの上面が水平である状態において、前記複数の白鍵11wの見え掛り部の前端の上下方向及び前後方向の位置が共通である。
【0024】
また、上記のように、全ての黒鍵11bの駆動部11b1の上下方向の長さが同一であり、かつ離鍵状態における駆動部11b1の下端の上下方向及び前後方向の位置が同一なので、例えば、
図6に示すように、割り当てられた音高が「G#5」である黒鍵11b(G#5)及び割り当てられた音高が「A#5」である黒鍵11b(A#5)の離鍵状態において、駆動部11b1の軸線と、各黒鍵11bの上面を含む各平面との交点POの上下方向及び前後方向の位置が共通である。また、黒鍵11bも、離鍵状態においては、前端よりも後端が低くなるように傾斜しており、前後方向の長さが短い鍵ほど傾斜角度が大きい。ただし、白鍵11wの見え掛り部が駆動部11w1の前方に位置するのに対し、黒鍵11bの見え掛り部の前端は、駆動部11b1よりも後方に位置するので、短い鍵ほど見え掛り部の前端の位置が低い。例えば、黒鍵11b(G#5)及び黒鍵11b(A#5)の離鍵状態においては、黒鍵11b(A#5)の見え掛り部の前端は、黒鍵11b(G#5)の見え掛り部の前端よりも低い。なお、黒鍵11b(A#5)の揺動中心は、黒鍵11b(G#5)の離鍵状態における、黒鍵11b(G#5)の揺動中心及び黒鍵11b(G#5)の見え掛り部の前端を含む平面S3よりも下方に位置している。また、黒鍵11b(G#5)及び黒鍵11b(A#5)の離鍵状態において、黒鍵11w(A#5)の見え掛り部の前端は、黒鍵11b(A#5)の揺動中心を含む平面S4であって、平面S3に黒鍵11b(G#5)の見え掛り部の前端よりも駆動部11w1側にて交差する平面S4内に位置している。本実施形態においては、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って前後方向の長さを徐々に短くしているので、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って離鍵状態における前端の高さが徐々に高くなっている。
【0025】
後述するように、複数の黒鍵11bが押鍵されて、ハンマー13bが緩衝材21bに当接して、黒鍵11bの揺動が規制されたとき、前記複数の黒鍵11bの上面が水平になるように、各黒鍵11bにおける、揺動中心と見え掛り部の前端とを含む平面と、上面との位置関係がそれぞれ設定されている。言い換えれば、各黒鍵11bにおける、揺動中心と見え掛り部の前端とを含む平面に対する上面の角度がそれぞれ設定されている。そして、前記複数の黒鍵11bの上面が水平である状態において、前記複数の黒鍵11bの見え掛り部の前端の上下方向及び前後方向の位置が共通である。
【0026】
前板部12bと前板部12dとの間に設けられた上方に開口した開口部内にて、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端部が、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部にそれぞれ係合している。離鍵状態において、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端部と、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部との当接部Pw1及び当接部Pb1は、左右方向(鍵の並び方向に平行な方向)に延びる同一直線上に位置している。
【0027】
ハンマー16wは、合成樹脂製の基部16w1と、金属製の連結棒16w2及び質量体16w3とからなる。ハンマー16bは、ハンマー16wと同様に、基部16b1、連結棒16b2及び質量体16b3からなる。基部16w1及び基部16b1は、板状の部材であって、右側面から左側面に貫通する貫通孔Hw及び貫通孔Hbをそれぞれ有する。上板部12aの下面には、下方に突出するようにして、ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bが形成されている。ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bは、それぞれ対向する2枚の板状に形成されていて、それぞれ内側に対向する突出部18w1及び突出部18b1を備えている。前記突出部18w1及び突出部18b1は、貫通孔Hw及び貫通孔Hbにそれぞれ嵌合している。これにより、基部16w1及び基部16b1は、突出部18w1及び突出部18b1回りに回転可能に支持されている。すなわち、ハンマー16w及びハンマー16bは、前端部及び後端部が上下方向に揺動可能に支持されている。ハンマー支持部18wとハンマー支持部18bの前後方向及び上下方向の位置は全てのハンマーについて同一である。すなわち、複数のハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bが、左右方向に並設されていて、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動中心の前後方向及び上下方向の位置は、全てのハンマー16w及びハンマー16bについて同一である。言い換えれば、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動中心は、左右方向に延びる同一直線上に位置している。
【0028】
また、基部16w1は、前端部に上下一対の脚部Fw1及び脚部Fw2を備え、上側に位置する脚部Fw1は下側に位置する脚部Fw2より短く形成されている。基部16b1も、基部16w1と同様に、前端部に上下一対の脚部Fb1及び脚部Fb2を備えている。前板部12bには、ハンマー16w及びハンマー16bごとに、上下方向に長いスリット状の開口部12b1が設けられている。各ハンマー16w及びハンマー16bの前端部は、開口部12b1を通って、前板部12bよりも前方に突出している。脚部Fw1と脚部Fw2の間には、駆動部11w1の下端壁が侵入しており、脚部Fb1と脚部Fb2の間には、駆動部11b1の下端壁が侵入している。脚部Fw1及び脚部Fb1は、それぞれ、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁と、駆動部11w1及び駆動部11b1内であって、それぞれの下端壁との間に隙間を形成する中間壁との間に侵入している。駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁には、ゴム、ウレタン、フエルトなどの衝撃吸収材が嵌め込まれて固着されている。この衝撃吸収材は、駆動部11w1と脚部Fw2の上面との衝突、駆動部11b1の下端と脚部Fb2の上面との衝突、駆動部11w1の下端と脚部Fw1の下面との衝突、及び駆動部11b1の下端と脚部Fb1の下面との衝突による衝撃をそれぞれ緩和している。
【0029】
基部16w1及び基部16b1の後端部に、連結棒16w2及び連結棒16b2の前端部がそれぞれ組み付けられている。連結棒16w2及び連結棒16b2は、それぞれ後方へ延設されている。連結棒16w2と連結棒16b2の後端の前後方向の位置は同一である。そして、連結棒16w2及び連結棒16b2の後端には、次に説明する質量体16w3及び質量体16b3が組み付けられている。
【0030】
上記のように、割り当てられた音高によって、鍵の支点の位置が異なる。したがって、白鍵11wの揺動中心から脚部Fw2における駆動部11w1との当接部Pw1までの距離は、割り当てられた音高によって異なる。また、黒鍵11bの揺動中心から脚部Fb2における駆動部11b1との当接部Pb1までの距離も、割り当てられた音高によって異なる。さらに、白鍵11wにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端である押離鍵操作位置W0が当接部Pw1よりも前方に位置するのに対して、黒鍵11bにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端である押離鍵操作位置B0が当接部Pb1の後方に位置している。したがって、全てのハンマーについて質量体の質量が同一であれば、てこの原理によって、押離鍵操作位置W0,B0においては、低音部よりも中音部の鍵タッチ感が重く、中音部よりも高音部の鍵タッチ感がさらに重い。
【0031】
また、この場合、各音域における白鍵11wと黒鍵11bの鍵タッチ感が統一されない。すなわち、鍵11bの鍵タッチ感は隣り合う2つの白鍵11wの鍵タッチ感に比べて重い。そこで、
図7に示すように、質量体16w3及び質量体16b3の質量を鍵ごとに調整している。すなわち、音高順に質量体16w3及び質量体16b3の質量を表した特性曲線図において、質量体16w3の特性曲線と質量体16b3の特性曲線が右下がりの平行な曲線であって、質量体16b3の特性曲線が質量体16w3の特性曲線の下側に位置するように、質量体16w3及び質量体16b3の質量を調整している。これにより、
図8に一点鎖線で示すように、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感を、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くしている。したがって、
図8に破線で示すように、押離鍵操作位置W0,B0からそれぞれ距離dだけ後方に位置する押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感も、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くなっている。ただし、割り当てられた音高が高い鍵ほど鍵の長さが短いので、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感と、押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感との差は、低音から高音に向かうに従って大きくなる。すなわち、押離鍵操作位置の前後方向の違いによる鍵タッチ感の違いは、低音部において小さく、中音部において中程度であり、高音部において大きい。
【0032】
白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵時には、ハンマー16w及びハンマーの16bの自重により、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部がそれぞれ上方へ変位する。このとき、脚部Fw2及び脚部Fb2により駆動部11w1及び駆動部11b1がそれぞれ上方へ付勢され、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部はそれぞれ上方へ変位する。一方、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時には、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端面が脚部Fw2及び脚部Fb2の上面をそれぞれ押圧し、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部がそれぞれ下方へ変位する。
【0033】
鍵フレーム12には、押鍵時にハンマー16w及びハンマー16bの質量体16w1及び質量体16b1の上面に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の上方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する下限ストッパ20が設けられている。下限ストッパ20は、ストッパレール20a及び緩衝材20bからなる。ストッパレール20aは、上板部12aの中間部の下面から下方へ突出していて、左右方向に延設されていて、ハンマー16w及びハンマー16bの質量体16w3及び質量体16b3の上方に位置している。また、ストッパレール20aの各ハンマーとの当接部における前板部12aの下面からの突出量は左右方向に一定である。そして、ストッパレール20aの下端面に緩衝材20bが固着されている。緩衝材20bは、ゴム、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の部材である。緩衝材20bは、一端から他端に至るまで断面形状が同一である。
【0034】
また、フレームFRの中間部には、離鍵時に、ハンマー16w及びハンマー16bの質量体16w1及び質量体16b1の下面に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の下方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する上限ストッパ21が設けられている。上限ストッパ21は、下限ストッパ20と同様に、ストッパレール21a及び緩衝材21bからなる。すなわち、ストッパレール21aも左右方向に延設されていて、フレームFRからの突出量は、左右方向に一定である。そして、ストッパレール21aの上面に緩衝材21bが固着されている。緩衝材21bも、緩衝材20bと同様に、一端から他端に至るまで断面形状が同一である。また、ストッパレール20a及びストッパレール21aは、左右方向に連続的に延設されていてもよいし、断続的に延設されていてもよい。また、ストッパレール20a及びストッパレール21aは、それぞれ上板部12a及びフレームFRと一体的に設けられていてもよいし、別部品として構成されていて、それぞれ上板部12a及びフレームFRに組み付けられるようにしてもよい。
【0035】
白鍵11w及び前記白鍵11wに隣接する黒鍵11bが同一の押鍵力でそれぞれ押鍵されて、それらの揺動がそれぞれ規制された状態において、黒鍵11bの稜線Rは、前記白鍵11wの上面よりも下方に位置する。なお、緩衝材20b及び緩衝材21bは、弾性を有する。したがって、押鍵時にハンマーが緩衝材に当接した後、さらに鍵を下方へ押すと、緩衝材が弾性変形するので、鍵の前端は下方へ僅かに変位する。
【0036】
また、白鍵11w及び黒鍵11bの中間部の下面には、スイッチ駆動部AC1が設けられている。スイッチ駆動部AC1は、白鍵11w及び黒鍵11bの内部にて上下方向に延設された板状の部分であり、スイッチ駆動部AC1の下端面が、スイッチSW1の上面に当接している。スイッチSW1は、鍵ごとに設けられ、鍵によって押圧されて、各鍵の押離鍵状態を検出する。すなわち、スイッチSW1は、鍵によって押圧されると、ゴム製の本体部が変形して、回路基板23上に形成された2つの接点を短絡することにより、OFF状態からON状態に変化する。回路基板23は、左右方向に延設されている。回路基板23には、上面から下面に貫通した貫通孔が設けられている。この貫通孔は、上板部12aの上面に一体的に形成されたボス24に対応している。この貫通孔にねじを通してボス24にねじ込むことにより、回路基板23が、鍵フレーム12に固定される。各鍵にそれぞれ対応した複数のスイッチSW1の前記本体部が、回路基板23の上面に左右方向に並設されている。白鍵11w用のスイッチSW1と黒鍵11b用のスイッチSW1の前後方向の位置が同一である。白鍵11wの前端からスイッチSW1までの前後方向の距離Lw3が、最高音の白鍵11wの前端から貫通孔Kwまでの距離Lw2の30%以内であり、かつ黒鍵11bの見え掛り部の前端からスイッチSW1までの前後方向の距離Lb3が、最高音の黒鍵11bの見え掛り部の前端から貫通孔Kbまでの距離Lb2の30%以内である。なお、白鍵11w用のスイッチSW1と黒鍵11b用のスイッチSW1をそれぞれ左右方向に並設しておき、両者の前後方向の位置をずらしてもよい。
【0037】
また、前板部12dの上端面から上方に突出するようにして、白鍵11wの揺動をガイドするための鍵ガイド25wが形成されている。鍵ガイド25wは、白鍵11wに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド25wの側面と白鍵11wの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の白鍵11wの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0038】
また、上板部12aの前端部の上面から上方に突出するようにして、黒鍵11bの揺動をガイドするための鍵ガイド25bが形成されている。鍵ガイド25bは、黒鍵11bに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド25bの側面と黒鍵11bの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の黒鍵11bの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0039】
上記のように構成した鍵盤装置によれば、離鍵状態及び押鍵状態における鍵の前端の高さを鍵ごとに調整することなく、外観をアコースティックピアノの鍵盤の外観に近づけることができる。とくに、前記複数の白鍵11w及び黒鍵11bのそれぞれの押鍵深さが最大であるとき、これらの白鍵11w及び黒鍵11bの上面が水平であるので、アコースティックピアノの鍵の押鍵状態における外観を模擬できる。したがって、鍵ごとに鍵の前端の高さを調整する場合に比べて、部品点数を削減して、鍵盤装置のコストを削減できる。また、低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って、離鍵状態における前端の高さが徐々に高くなり、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って、離鍵状態における前端の高さが徐々に低くなるようにした。すなわち、離鍵状態において、隣接する白鍵11w同士及び隣接する黒鍵11b同士の前端の高さの差は小さい。したがって、離鍵状態における外観に違和感を生じさせない。
【0040】
また、白鍵11wの見え掛り部の上面からその揺動中心までの距離は、全ての白鍵11wについて共通であり、黒鍵11bの本体部の上面からその揺動中心までの距離は、すべての黒鍵11bについて共通である。したがって、例えば、白鍵11w及び黒鍵11bの外形を成型加工した後の別工程において、貫通孔Kw,Kbを設ける場合、この別工程を共通化して、鍵の生産性を向上させることができる。
【0041】
また、ハンマー16w及びハンマー16bにおける、質量体16w3及び質量体16b3を除く部分の部品を全てのハンマー16w及びハンマー16bについて共通とした。したがって、部品の種類を削減できるので、鍵盤装置のコストを削減できる。また、全てのハンマーの揺動中心の前後方向及び上下方向の位置を同一とし、上限ストッパ21及び下限ストッパ20の前後方向及び上下方向の位置も全てのハンマーについて同一とした。したがって、上限ストッパ21及び下限ストッパ20を簡単に組み付けることができる。また、ハンマーごとにストッパを設ける場合に比べて、部品点数を削減でき、鍵盤装置のコストを削減できる。また、上記のように、全てのハンマーの揺動中心、上限ストッパ21及び下限ストッパ20の前後方向及び上下方向の位置を同一にしたことにより、全てのハンマーの揺動角度の範囲を同一とすることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、白鍵11wを鍵フレーム12に組み付ける際には、脚部Fw1と脚部Fw2の間に、駆動部11w1の下端壁を侵入させる必要がある。また、黒鍵11bを鍵フレーム12に組み付ける際には、脚部Fb1と脚部Fb2の間に、駆動部11b1の下端壁を侵入させる必要がある。本実施形態においては、離鍵状態における、当接部Pw1及び当接部Pb1の前後方向の位置及び上下方向の位置を全ての鍵及びハンマーについて同一としたので、複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bの駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁を同時に脚部の間に侵入させ易い。すなわち、複数の鍵をまとめて組み付けることができるので、鍵を鍵フレーム12に組み付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0043】
また、上記のように、全てのハンマーの揺動角度の範囲が同一であるので、駆動部11w1の上方に位置する白鍵11wの中間部の上面の揺動範囲D(
図4参照)は、全ての白鍵11wについて同一である。黒鍵11bの駆動部11b1の上方に位置する交点POの揺動範囲D(
図6参照)も、全ての黒鍵11bについて同一である。本実施形態においては、距離Lw1及び距離Lb1を、距離Lw2及び距離Lb2に比べて十分に小さくした。したがって、鍵の前端の押鍵深さの最大値も、全ての鍵についてほぼ同一であるので、演奏し易い。
【0044】
また、各鍵にそれぞれ対応した複数のスイッチSW1を左右方向に並設した。上記のように、全ての鍵について、鍵の前端の押鍵深さの最大値がほぼ同一であるので、鍵の前端に近い位置にて、スイッチSW1を左右方向に並設しておけば、スイッチSW1のON/OFF状態が切り替わるときの押鍵深さもほぼ同一である。したがって、全てのスイッチSW1の特性を同一とすることができる。すなわち、部品の種類を削減して、鍵盤装置のコストを削減できるだけでなく、この鍵盤装置が適用される電子楽器において、各鍵の押離鍵状態を同様の処理によって検出できる。また、複数のスイッチSW1の接点部を含む回路基板23を左右方向に延設したので、スイッチSW1を鍵ごとに組み付ける場合に比べて、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0045】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、黒鍵11bの駆動部11b1は、見え掛り部の前端よりも前方に設けられているが、駆動部11b1が、見え掛り部の前端の直下に設けられていてもよい。この場合、複数の黒鍵11bの離鍵状態において、前記複数の黒鍵11bの見え掛り部の前端の上下方向の位置を同一とすればよい。また、白鍵11wと同様に、駆動部11b1を見え掛り部の前端よりも後方に設けてもよい。この場合、複数の黒鍵11bの離鍵状態において、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って、見え掛り部の前端を徐々に低くすればよい。
【0047】
また、例えば、上記実施形態おいては、スイッチSW1を、駆動部11w1,11b1の後方に設けたが、駆動部11w1,11b1の前方に設けてもよい。この場合、例えば、前板部12dの上端部から前方又は後方へ延設された水平部を設け、この水平部に、回路基板23を組み付ければよい。そして、スイッチ駆動部AC1を、駆動部11w,11b1の前方かつスイッチSW1の上方に設ければよい。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、スイッチSW1に代えて、又は加えて、光センサ、磁気センサ、静電容量センサ、感圧センサなどを用いて、鍵の押離鍵状態を検出してもよい。
【0048】
また、例えば、上記実施形態においては、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動中心をそれらの中間部に設けた。そして、白鍵11w及び黒鍵11bとハンマー16w及びハンマー16bとの係合部を、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部にそれぞれ設けた。しかし、各ハンマーの揺動中心及び係合部の位置は、上記実施形態に限られない。例えば、揺動中心をハンマー16w及びハンマー16bの後端部にそれぞれ設けてもよい。そして、係合部をハンマー16w及びハンマー16bの中間部に設け、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部に質量体16w3及び質量体16b3をそれぞれ設ければよい。この場合、離鍵時において、バネ、ゴムなどの弾性体によって、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部を上方へ付勢しておく。この場合も、各ハンマーの揺動中心及び係合部を左右方向に並設し、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動を規制するストッパを左右方向に延設すればよい。上記のように、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部を中心として、前端部が上下方向に揺動するように構成しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
また、例えば、上記実施形態及においては、質量体16w3及び質量体16b3を連結棒16w2及び連結棒16b2の後端に組み付けているが、質量体16w3及び質量体16b3を組み付けるのではなく、連結棒16w2及び連結棒16b2の先端を前側に折り返すことにより、ハンマー16w及びハンマー16bの後端に質量を集中させるようにしてもよい。そして、折り返す部分の長さを調整することにより、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の質量を調整すればよい。
【0050】
また、上記実施形態及びその変形例においては、質量体16w3及び質量体16b3の質量を調整して、低音側の鍵から高音側の鍵に向かうに従って、鍵の前端の鍵タッチ感を徐々に軽くしたが、必ずしもこのように構成する必要はなく、各音域における鍵の前端の鍵タッチ感を同一とし、高音域に向かうに従って、音域ごとに段階的に鍵タッチ感が軽くなるようにしてもよい。また、一部の音域においてのみ、音高順に鍵タッチ感が軽くなるようにしてもよいし、全ての鍵について、鍵タッチ感を同一にしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態及びその変形例においては、低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って、白鍵11wの長さを徐々に短くし、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って、黒鍵11bの長さを徐々に短くした。しかし、必ずしもこのように構成する必要はなく、複数の鍵において、揺動中心の位置を前後方向にずらしておき、それらの鍵に関する前記各部の位置を統一すればよい。例えば、全体の音域を複数の音域に分割し、前記分割した音域に属する鍵の長さを同一(すなわち、鍵の揺動中心の前後方向及び上下方向の位置を同一)としておき、前記分割した音域ごとに鍵の長さを異ならせてもよい。そして、前記分割した複数の音域の前記各部の位置を統一すればよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
また、アコースティックピアノの外観とは若干異なるが、離鍵時において白鍵11wの上面が同一平面上に位置するようにしてもよい。また、離鍵時において黒鍵11bの上面が同一平面上に位置するようにしてもよい。この場合、離鍵時において、長さの異なる2つの鍵を比較したとき、短い鍵の揺動中心を、長い鍵における平面S1,S3(
図4及び
図6参照)内に位置させればよい。
【0054】
また、上記実施形態及びその変形例においては、ハンマーの前後方向の長さを共通としたが、低音部のハンマーから高音部のハンマーへ向かうに従って、徐々に短くなるようにしてもよい。この場合、低音部から高音部へ向かうハンマーの長さの変化率を一定としておき、下限ストッパ20及び上限ストッパ21を低音部側よりも高音部側が前方に位置するように延設しておけばよい。すなわち、平面視において、下限ストッパ20及び上限ストッパ21を斜めに延設して、各ハンマーの揺動角度の範囲を共通にすればよい。これによっても、ハンマーごとにストッパを設ける場合に比べて、部品点数を削減でき、鍵盤装置のコストを削減できる。