(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081310
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】航空機用ラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20170206BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20170206BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
B60C9/08 D
B60C9/18 H
B60C9/18 K
B60C11/00 F
B60C9/08 N
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-154718(P2013-154718)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-24715(P2015-24715A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】大北 洋平
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特表平1−502508(JP,A)
【文献】
米国特許第4947915(US,A)
【文献】
特開昭57−201702(JP,A)
【文献】
特開2005−271863(JP,A)
【文献】
特開平7−149107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/18
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、該一対のビードコア間に跨るカーカスと、トレッドと、を備えた航空機用ラジアルタイヤにおいて、
前記タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした、基準状態の際のタイヤ幅方向断面において、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Mとタイヤ内面との2つの交点のうちタイヤ径方向外側の交点であるタイヤ内面上の点をPとし、タイヤ赤道面におけるタイヤ内面上の点をQとし、
前記タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、規定荷重の3倍の荷重を負荷した、3倍荷重状態の際のタイヤ幅方向断面において、タイヤ幅方向最外側となるタイヤ表面上の点をRとし、
前記タイヤは、1層以上のベルト層からなるベルトを備え、
前記基準状態でのタイヤ幅方向断面において、ビードトウの先端の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lを基準として、タイヤ赤道面から該直線Lまでのタイヤ幅方向範囲をセンター部とし、該直線Lよりタイヤ幅方向外側をショルダー部とするとき、
前記ベルトは、ショルダー部におけるベルト層の層数が、センター部におけるベルト層の層数より少なく、
ショルダー部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D1は、センター部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D2より、タイヤ径方向内側に位置し、
前記3倍荷重状態において、前記点Pは、タイヤ赤道面におけるタイヤ内面上の点Qと前記点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする、航空機用ラジアルタイヤ。
【請求項2】
トレッド端TEから前記カーカスに下ろした垂線の延長線と、タイヤ内面との交点であるタイヤ内面上の点をDとするとき、
前記トレッド厚さは、前記点Pから、前記点Dまで、タイヤ幅方向外側へ向かうにつれて漸減することを特徴とする、請求項1に記載の航空機用ラジアルタイヤ。
【請求項3】
タイヤ内面上の一の点から、該一の点から前記カーカスに下ろした垂線の延長線とトレッド踏面との交点までの距離を、該一の点におけるトレッド厚さと定義し、
前記点Qにおけるトレッド厚さをd1、ビードトウの先端の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lとタイヤ内面との交点であるタイヤ内面上の点Cにおけるトレッド厚さをd2、前記点Pにおけるトレッド厚さをd3とするとき、
比d2/d1は、比d3/d2より小さい、請求項1又は2に記載の航空機用ラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記基準状態での、タイヤ幅方向断面において、前記点Pと前記ビードコアの中心Aとのタイヤ径方向の距離h1が、前記点Qと、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線との距離h2に対して90%以上100%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の航空機用ラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記基準状態での、タイヤ幅方向断面において、前記直線Mとタイヤ内面との2つの交点であるタイヤ内面上の前記点P、及び点T間のタイヤ径方向の距離h3が、前記点Qと、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線との距離h2に対して76%以上90%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の航空機用ラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記3倍荷重状態での、タイヤ幅方向断面において、
前記点Pが、前記点Qを通りタイヤ幅方向に平行な直線よりタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の航空機用ラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機用タイヤにおいては、耐摩耗性などの特性に優れたラジアルタイヤが主流になっている(例えば、特許文献1参照)。ところで、このような航空機用ラジアルタイヤにおいては、緊急停止時などを想定した過度の高荷重(過荷重)の試験で、特に前輪用のタイヤで内圧の保持が困難となる場合があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−220211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、緊急停止時などにおいても内圧を保持することのできる航空機用ラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、緊急停止時などにおいて発生する以下の現象が、内圧の保持を困難にする主たる原因であることを突き止めた。すなわち、緊急停止時などにおいては、急速な減速により、特に前輪に過荷重が加わることがあり、その際タイヤは転動を続けるが、過荷重によりタイヤの撓みが増大し、その結果、
図1に示すように、タイヤ内面90においてビード部91とクラウン部92とが接触する、いわゆるボトミングが発生し、これによりタイヤの内圧保持が困難になる。特に、航空機用ラジアルタイヤにおいては、前輪用のタイヤは、格納庫の容積によって制限された小径のものが多く、このようなタイヤではビード部とクラウン部との距離が短くなるため、上記ボトミングが発生しやすいということが判明した。さらに、発明者は、過荷重といっても、実際上一定の限度があるという知見を得た。
【0006】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は、以下の通りである。本発明の航空機用ラジアルタイヤは、一対のビードコアと、該一対のビードコア間に跨るカーカスと、トレッドと、を備え、前記タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした、基準状態の際のタイヤ幅方向断面において、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Mとタイヤ内面との2つの交点のうちタイヤ径方向外側の交点であるタイヤ内面上の点をPとし、タイヤ赤道面におけるタイヤ内面上の点をQとし、前記タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、規定荷重の3倍の荷重を負荷した、3倍荷重状態の際のタイヤ幅方向断面において、タイヤ幅方向最外側となるタイヤ表面上の点をRとし、前記タイヤは、1層以上のベルト層からなるベルトを備え、前記基準状態でのタイヤ幅方向断面において、ビードトウの先端の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lを基準として、タイヤ赤道面から該直線Lまでのタイヤ幅方向範囲をセンター部とし、該直線Lよりタイヤ幅方向外側をショルダー部とするとき、前記ベルトは、ショルダー部におけるベルト層の層数が、センター部におけるベルト層の層数より少なく、ショルダー部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D1は、センター部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D2より、タイヤ径方向内側に位置し、前記3倍荷重状態において、前記点Pは、タイヤ赤道面におけるタイヤ内面上の点Qと前記点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする。この構成により、トレッド部の肉厚を薄くして、荷重負荷時にタイヤ内部が接触してボトミングが発生するのを抑制することができるからである。ここで、「ビードコアの中心」とはビードコアの重心を意味するものとする。また、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation)STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に規定された標準リムをいうものとする。また、また、「規定荷重」とは、上記所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、「規定内圧」とは、上記最大荷重に対応する空気圧である。なお、「ベルトの層数」について、ベルトのタイヤ径方向外側にベルト保護層を設けた場合には、当該ベルト保護層も含めるものとする。
【0007】
また、本発明の航空機用ラジアルタイヤにあっては、トレッド端TEから前記カーカスに下ろした垂線の延長線と、タイヤ内面との交点であるタイヤ内面上の点をDとするとき、前記トレッド厚さは、前記点Pから、前記点Dまで、タイヤ幅方向外側へ向かうにつれて漸減することが好ましい。トレッド部の肉厚を漸減させることにより、荷重負荷時にタイヤ内部が接触してボトミングが発生するのを抑制することができるからである。ここで、「カーカスに下ろした垂線」とは、カーカスが複数枚のカーカスプライからなる場合は、タイヤ径方向最内側のカーカスプライに対して垂線を下ろすものとする。また、「トレッド端」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した際の接地端(接地面のタイヤ幅方向両端)をいうものとする。
【0008】
さらに、本発明の航空機用ラジアルタイヤにあっては、タイヤ内面上の一の点から、該一の点から前記カーカスに下ろした垂線の延長線とトレッド踏面との交点までの距離を、該一の点におけるトレッド厚さと定義し、前記点Qにおけるトレッド厚さをd1、ビードトウの先端の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lとタイヤ内面との交点であるタイヤ内面上の点Cにおけるトレッド厚さをd2、前記点Pにおけるトレッド厚さをd3とするとき、比d2/d1は、比d3/d2より小さいことが好ましい。これにより、トレッド部のセンター部からショルダー部にかけてのトレッド厚さの変化よりも、ショルダー部からトレッド端部にかけてのトレッド厚さの変化が大きく、この領域でトレッド厚さを大きく減少させることができるため、タイヤに過荷重が加わった際にもボトミングの発生を抑制し、内圧を保持することができる。
【0009】
また、本発明の航空機用ラジアルタイヤにあっては、前記基準状態での、タイヤ幅方向断面において、前記点Pと前記ビードコアの中心Aとのタイヤ径方向の距離h1が、前記点Qと、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線との距離h2に対して90%以上100%以下であることが好ましい。上記範囲とすることにより、より厳しい条件でも内圧を保持することができる。
【0010】
さらにまた、本発明の航空機用ラジアルタイヤでは、前記基準状態での、タイヤ幅方向断面において、前記直線Mとタイヤ内面との2つの交点であるタイヤ内面上の前記点P、及び点T間のタイヤ径方向の距離h3が、前記点Qと、前記ビードコアの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線との距離h2に対して76%以上90%以下であることが好ましい。上記範囲とすることにより、より厳しい条件でも内圧を保持することができる。
【0011】
ここで、本発明の航空機用ラジアルタイヤでは、前記3倍荷重状態での、タイヤ幅方向断面において、前記点Pが、前記点Qを通りタイヤ幅方向に平行な直線よりタイヤ径方向外側に位置することが好ましい。これにより、より厳しい条件でも内圧を保持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緊急停止時などにおいても内圧を保持することのできる航空機用ラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ボトミングについて説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかるタイヤの3倍荷重状態でのタイヤ幅方向断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかるタイヤの3倍荷重状態でのタイヤ幅方向断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかるタイヤのタイヤ幅方向部分断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態にかかるタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態にかかるタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる航空機用ラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)について、図面を参照して詳細に例示説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかるタイヤを示すタイヤ幅方向断面図である。
図2に示すタイヤは、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、一方のタイヤ幅方向半部のみを示しており、他方のタイヤ幅方向半部は図示を省略している。
図2は、タイヤを適用リムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした、基準状態の際のタイヤ幅方向断面を示している。
【0015】
図2に示すように、本実施形態のタイヤは、一対のビード部1に埋設したビードコア1aと、該左右一対のビードコア1a間にトロイダル状に跨るカーカス2と、トレッド3と、を備えている。ここで、カーカス2は、少なくとも1枚以上のカーカスプライからなり、図示例では、カーカス2は、2枚のカーカスプライ2a、2bからなる。また、図示例では、カーカス2のタイヤ径方向外側に、主ベルト層4a、4bからなる主ベルトと、副ベルト層4c、4dからなる副ベルトとからなるベルト4を有している。図示例では、主ベルト層4a、4bは、ゴム被覆したコードをタイヤ周方向に沿って螺旋巻きしてなり、また、図示例では、副ベルト層4c、4dは、層間で互いに交差する、ゴム被覆したコードからなる。さらに、図示例では、ベルト4のタイヤ径方向外側にベルト保護層5を有している。図示例では、ベルト保護層5は、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなる。なお、本発明においては、ベルト構造は、特に限定されるものではなく、ベルトの層数等は、適宜変更することができる。また、ベルト保護層は有しても、あるいは、有しなくてもよい。
【0016】
ここで、
図2に示すように、ビードコア1aの中心Aを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Mとタイヤ内面6との2つの交点のうちタイヤ径方向外側の交点である、タイヤ内面上の点をPとし、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ内面6上の点をQとする。
【0017】
図3は、本発明の一実施形態のタイヤを示すタイヤ幅方向断面図であり、
図2と同様に、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部のみを図示している。
図3は、上記基準状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0018】
図3に示すように、このタイヤは、1層以上の、図示例で4層のベルト層4a〜4dからなるベルト4を備えている。ここで、
図3に示すように、ビードトウ8の先端の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lを基準として、タイヤ赤道面CLから該直線Lまでのタイヤ幅方向範囲をセンター部とし、該直線Lよりタイヤ幅方向外側をショルダー部とする。
図3に示すように、このタイヤは、ショルダー部におけるベルト層の層数が2層であり、センター部におけるベルト層の層数が4層である。また、
図3に示すように、ショルダー部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層4aのタイヤ径方向最内側位置D1は、センター部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層4aのタイヤ径方向最内側位置D2より、タイヤ径方向内側に位置している。このように、本実施形態のタイヤでは、ベルト4は、ショルダー部におけるベルト層の層数が、センター部におけるベルト層の層数より少なく、かつ、ショルダー部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D1は、センター部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D2より、タイヤ径方向内側に位置している。
【0019】
図4は、本実施形態のタイヤを適用リムに組み込み、規定内圧を充填し、規定荷重の3倍の荷重を負荷した、3倍荷重状態の際のタイヤ幅方向断面を示している。
図4においては、
図2、
図3と同様に、タイヤ赤道面CLを境界とする一方のタイヤ幅方向半部のみを示しており、他方のタイヤ幅方向半部は図示を省略している。また、ビードコア1a以外のタイヤ構成部材(カーカス、ベルト、ベルト保護層)については、図示を省略している。
【0020】
図4に示すように、タイヤ幅方向最外側となるタイヤ表面7上の点をRとする。このとき、
図4に示すように、本実施形態のタイヤでは、点Pが、点Qと点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置する。
【0021】
本実施形態のタイヤによれば、ショルダー部におけるベルト層の層数が、センター部におけるベルト層の層数より少なく、かつ、ショルダー部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D1が、センター部におけるタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ径方向最内側位置D2より、タイヤ径方向内側に位置しているため、ショルダー部でのトレッド厚さをセンター部対比で薄くすることができる。このため、過荷重が負荷された際にも、ビード部とクラウン部との距離を確保してボトミングの発生を抑制することができる。具体的には、点Pが点Qと点Rとを結んだ直線よりタイヤ径方向外側にあるため、タイヤ内面においてクラウン部近傍とビード部近傍とが接触せず、これによりボトミングの発生を抑制することができる。従って、車両の緊急停止時など、タイヤに過荷重が負荷された際にもタイヤの内圧を保持することができる。
【0022】
図5は、本発明のタイヤの一例を示すタイヤ幅方向断面図であり、
図2〜
図4と同様に、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部のみを図示している。また、ビードコア1a以外のタイヤ構成部材(カーカス、ベルト、ベルト保護層)については、図示を省略している。
図5は、上記3倍荷重状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0023】
図5に示すように、本発明においては、3倍荷重状態において、点Pが、点Qを通りタイヤ幅方向に平行な直線よりタイヤ径方向外側に位置することが好ましい。これによって、より厳しい条件でもボトミングの発生を抑制して、内圧を保持することができるからである。
【0024】
図6は、本発明の別の実施形態にかかるタイヤを、上記ベルト4及びベルト保護層5を除いた状態で示すタイヤ幅方向部分断面図である。
図2〜
図5と同様に、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部における一部のみを図示している。
図6は、上記基準状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0025】
ここで、トレッド端TEからカーカス2に下ろした垂線の延長線と、タイヤ内面6との交点であるタイヤ内面6上の点をDとする。このとき、トレッド厚さは、上記点Pから、上記点Dまで、タイヤ幅方向外側へ向かうにつれて漸減することが好ましい。荷重時には、まずセンター部が接地し、徐々に幅方向外側に接地範囲が広がり、タイヤクラウン部が変形するため、トレッド厚さが幅方向外側に向かうにつれて漸減する方が、よりクラウン部とビード部との距離を保ち、ボトミングが発生するのを避けることができるからである。
【0026】
図7は、本発明の一実施形態にかかるタイヤを示すタイヤ幅方向断面図であり、
図2〜6と同様に、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部のみを図示している。
図7は、上記基準状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0027】
ここで、タイヤ内面6上の一の点から、該一の点からカーカス2に下ろした垂線の延長線とトレッド踏面3aとの交点までの距離を、該一の点におけるトレッド厚さと定義する。
図7に示すように、上記点Qにおけるトレッド厚さをd1とし、ビードトウ8の先端(タイヤ幅方向最内側)の点Bを通りタイヤ幅方向に対して垂直な直線Lとタイヤ内面6との交点Cにおけるトレッド厚さをd2とする。また、上記点Pにおけるトレッド厚さをd3とする。このとき、本実施形態のタイヤにおいては、比d2/d1は、比d3/d2より小さいことが好ましい。比d2/d1は、比d3/d2より小さいことから、トレッド部のタイヤ赤道面CLからビードトウ先端位置にかけてのトレッド厚さの変化よりも、ビードトウ先端位置からトレッド端部にかけてのトレッド厚さの変化が大きく、この領域でトレッド厚さを大きく減少させることができるため、タイヤに上記過荷重の限度の基準となる規定荷重の3倍の荷重が負荷された際にも、クラウン部とビード部との距離を保つことができる。
【0028】
図8は、本発明の他の実施形態にかかるタイヤを示すタイヤ幅方向断面図であり、
図2〜
図7と同様に、タイヤ赤道面CLを境界として対称な構造であるため、タイヤ赤道面CLを境界とする一方の半部のみを図示している。
図8は、上記基準状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0029】
図8に示すように、点Pとビードコア1aの中心Aとのタイヤ径方向の距離をh1とし、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ内面6上の点Qと、ビードコア1aの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線との距離(すなわち、ビードコア1aの中心Aを通りタイヤ幅方向に平行な直線とタイヤ赤道面CLとの交点をSとするとき、上記点Qと点Sとのタイヤ径方向の距離)をh2とする。このとき、本発明にあっては、比h1/h2は、90%以上100%以下であることが好ましい。上記比h1/h2を90%以上とすることにより、タイヤ内面における、ショルダー部でのクラウン部近傍とビード部近傍とのタイヤ径方向距離を確保して、上記過荷重の限度の基準となる規定荷重の3倍の荷重が負荷された際にも、点Pが点Qと点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置するようにして、クラウン部近傍とビード部近傍とがタイヤ内面にて接触しないようにすることができるからであり、一方で、上記比h1/h2を100%以下とすることにより、カーカスプライの張力負担を適正に保つことができるからである。また、特に比h1/h2を92%以上とすることが好ましい。タイヤ内面における、ショルダー部でのクラウン部近傍とビード部近傍とのタイヤ径方向距離をさらに確保して、上記過荷重の限度の基準となる規定荷重の3倍の荷重が負荷された際にも、点Pが、点Qを通りタイヤ幅方向に平行な線よりタイヤ径方向外側に位置するようにして、より厳しい条件でもクラウン部近傍とビード部近傍とがタイヤ内面にて接触しないようにすることができるからである。
【0030】
また、
図8に示すように、ビードコア1aの中心Aを通りタイヤ幅方向に垂直な直線Mとタイヤ内面6との2つの交点であるタイヤ内面6上の点P、及び点T間のタイヤ径方向の距離をh3とする。このとき、比h3/h2は、76%以上90%以下であることが好ましい。上記比h3/h2を76%以上とすることにより、タイヤ内面における、ショルダー部でのクラウン部近傍とビード部近傍とのタイヤ径方向距離を確保して、上記過荷重の限度の基準となる規定荷重の3倍の荷重が負荷された際にも、点Pが点Qと点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置するようにして、クラウン部近傍とビード部近傍とがタイヤ内面にて接触しないようにすることができるからであり、一方で、上記比h3/h2を90%以下とすることにより、カーカスプライの張力負担を適正に保つことができるからである。また、特に比h3/h2を80%以上とすることが好ましい。タイヤ内面における、ショルダー部でのクラウン部近傍とビード部近傍とのタイヤ径方向距離をさらに確保して、上記過荷重の限度の基準となる規定荷重の3倍の荷重が負荷された際にも、点Pが、点Qを通りタイヤ幅方向に平行な線よりタイヤ径方向外側に位置するようにして、より厳しい条件でもクラウン部近傍とビード部近傍とがタイヤ内面にて接触しないようにすることができるからである。
【実施例】
【0031】
本発明の効果を確かめるため、発明例1〜7にかかるタイヤと、比較例にかかるタイヤを試作した。これら各タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、ボトミング試験を行った。ボトミング試験は、特開平9−11716号公報に記載のボトミング試験機を用いて、規定荷重の3倍の荷重を負荷した際のボトミングの発生の有無を確認した。各タイヤの諸元および評価結果は表1に示している。ここで、表1において、「点Pの位置」が「直線QRより径方向外側」とは、「3倍荷重状態での、タイヤ幅方向断面において、点Pが、上記点Qと上記点Rとを結んだ直線QRよりタイヤ径方向外側に位置する」ことを意味する。また、「点Pの位置」が「点Qより径方向外側」とは、「3倍荷重状態での、タイヤ幅方向断面において、点Pが、点Qを通りタイヤ幅方向に平行な線よりタイヤ径方向外側に位置すること」を意味する。また、点D1と点D2との位置関係は、上記基準状態での位置関係を意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すように、比較例にかかるタイヤでは、規定荷重の3倍の荷重を負荷した際にボトミングが発生したのに対し、発明例1〜7にかかるタイヤは、いずれも規定荷重の3倍の荷重を負荷してもボトミングが発生せず、従って、内圧を保持することができた。
【符号の説明】
【0034】
1:ビード部、1a:ビードコア、2:カーカス、2a、2b:カーカスプライ
3:トレッド、3a:トレッド踏面、4:ベルト、4a、4b:主ベルト層、
4c、4d:副ベルト層、5:ベルト保護層、6:タイヤ内面、7:タイヤ表面、
8:ビードトウ、90:タイヤ内面、91:ビード部、92:クラウン部、
CL:タイヤ赤道面、TE:トレッド端