特許第6083160号(P6083160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083160
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   B43K21/16 K
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-197778(P2012-197778)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2013-82206(P2013-82206A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-215045(P2011-215045)
(32)【優先日】2011年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉原 直人
(72)【発明者】
【氏名】小出 菜採
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00353379(EP,A1)
【文献】 特開昭54−004621(JP,A)
【文献】 実開昭60−060285(JP,U)
【文献】 特開平03−010899(JP,A)
【文献】 特開昭63−017097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に芯の前進は許容するが芯の後退は阻止するチャック体を配し、前記軸筒の先端
に芯戻り止めを備えた芯繰り出し孔を有する先部材を配置し、前記先部材に固定され、軸
筒内を前後移動自在なスライド体を、軸筒内におけるチャック体の後部にまで配すると共
に、軸筒の外部に、軸筒中心方向への押し込み操作によって、前記チャック体とスライド
体との位置関係が伸長、もしくは、収縮するスライド体移動手段を配したシャープペンシ
ル。
【請求項2】
前記スライド体を軸筒に対して後方付勢するバネを、前記チャック体よりも後部に配す
る請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記スライド体移動手段が、押し込み操作によって伸長する把持部である請求項1または請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記スライド体移動手段が、前記軸筒の前方側面に設けた短形のスリットから外部に一
部露出した状態で配された、軸筒中心方向へ押し込み可能なボタンである請求項1または
請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記スライド体移動手段が、前記軸筒の前方部に設けられた中心方向に倒し込み可能な
可撓部である請求項1または請求項2に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒を持ち替えることなく芯の繰り出し操作ができるシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルにおいて、把持部にボタンを配したり、把持部を介して内部機構を操作することで、芯の繰り出し操作を行うシャープペンシルの検討がなされており、この様なシャープペンシルは、軸筒を持ち替えることなく芯の繰り出し操作が行えることを目的としている。
【特許文献1】特開昭61−272198号公報
【特許文献2】特開昭54−4621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の実施例に記載されているシャープペンシルの本体は、口金、先軸、後軸の螺合により構成されている。前記口金の先端には芯パイプが配され、その芯パイプの後方にはスライダーが接続されている。さらに、前記口金と前記先軸の間には、芯保持具を内蔵する摺動体が、口金との間に介在されたスプリングにより、常時後方へ付勢された状態で配置されている。また、前記先軸の外周には、複数条の板状又は棒状のものを集合した形状でありヒンジ部を有する押え部材が配置され、この押え部材をつまむことで、その前端が伸びて、前記摺動体が前進する。この時、前記芯保持具が、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体から芯を引き出す構造となっている。
しかし、前記摺動体は、前記口金の後方に設けられた2〜3条のスリットを介して組み合わせられているのみであり、口金に対して完全には固定されていない。その結果、摺動体及び芯保持具が、芯の繰り出し操作の際に口金及び先端パイプとチャックに対して斜めになると、芯に対して前後方向以外の力がかかることになり、芯折れを引き起こす恐れがあった。
また、前記シャープペンシルの本体を構成している口金に複数条のスリットが設けられることで、口金の全周に対してスリットが占める割合が大きくなり、強度が低下している。加えて、前記スリット上に、押え部材の前端が位置し、押え部材をつまんだ時に負荷が集中する部分であることから、シャープペンシル本体の軸折れが発生し易い構造となってしまっている。その他、摺動体やスライド体にも、他部品との結合の為にスリットが設けられており、組立時には各部品のスリット位置を1つ1つ正確に合わせる必要があるため、強度だけでなく、組立の複雑さも懸念される。
【0004】
一方、特許文献2の実施例に記載されているシャープペンシルは、特許文献1と同様に、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体と、芯保持体の前後動を利用して芯の繰り出しを行うものである。前記シャープペンシルの本体は、口金と軸筒の螺合により構成され、前記口金の先端には先端パイプ(芯パイプ)を配し、その芯パイプの後方に芯保持体が圧入等により固定されている。また、前記軸筒の前方寄り全周には、可撓性材料からなる大径部が形成され、この大径部を指により押圧・解除することで、口金及び芯保持体が前方又は後方へ移動させられる構造となっている。
しかし、前記口金は、前記軸筒に固定されているのみであり、軸筒の大径部が全周で均一に変形しなければ、芯を狭持しているチャックに対して傾いてしまう。その結果、芯の繰り出し操作の際に、口金及び口金に圧入されている芯保持体と、チャックとの中心ズレから、芯に対して前後方向以外の力がかかることとなり、芯折れを引き起こす恐れがあった。
さらに、前記大径部の内側には、チャック体を囲繞している締め具までの間に他の部品が存在せず、また、可撓性を持たせる為に、軸線方向に複数のスリットが設けられていることから、強い押圧力がかけられた場合には、スリットから亀裂が広がり、大径部やひいてはシャープペンシル本体の軸折れに繋がってしまう恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を鑑み、軸筒を持ち替えることなく芯の繰り出し操作ができるシャープペンシルにおいて、軸筒の強度を保ち、また、製品組立における部品間の位置決めや部品の嵌め込みといった複雑な作業を軽減し、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現すると共に、芯の繰り出し操作の際には、芯折れの発生を極力防止したシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸筒内に芯の前進は許容するが芯の後退は阻止するチャック体を配し、前記軸筒の先端に芯戻り止めを備えた芯繰り出し孔を有する先部材を配置し、前記先部材に固定され、軸筒内を前後移動自在なスライド体を、軸筒内におけるチャック体の後部にまで配すると共に、軸筒の外部に、軸筒中心方向への押し込み操作によって、前記チャック体とスライド体との位置関係が伸長、もしくは、収縮するスライド体移動手段を配したことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸筒内に芯の前進は許容するが芯の後退は阻止するチャック体を配し、前記軸筒の先端に芯戻り止めを備えた芯繰り出し孔を有する先部材を配置し、前記先部材に固定され、軸筒内を前後移動自在なスライド体を、軸筒内におけるチャック体の後部にまで配すると共に、軸筒の外部に、軸筒中心方向への押し込み操作によって、前記チャック体とスライド体との位置関係が伸長、もしくは、収縮するスライド体移動手段を配したことを特徴とするシャープペンシルである。
このため、軸筒の側面に、内部部品と外部部品とを接合する為のスリットが必ずしも必要ではなく、軸筒の全周に対してスリット部が占める割合を減らすことで、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、軸筒のほぼ全周で支える事ができる。
つまり、軸筒の変形によるスリットからの亀裂発生や、その亀裂の進展によるシャープペンシル本体の軸折れに対して高い強度を有するシャープペンを得ることができる。また、スリットの数を減らすことで、組立作業における、スリットを通る複数の部品を1つ1つ正確に位置合わせして嵌め込むといった複雑さを軽減し、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
更に、芯を繰り出す孔を有する先部材に芯戻り止めを固定し、また、その先部材に結合されたスライド体と軸筒の摺動部を可能な限り長く設定することにより、芯を繰り出す孔と芯戻り止めが、チャックに対して傾くこと(中心ズレ)を防止している。その結果、芯に対して前後方向以外の力がかかることがなく、芯折れの発生を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を使用した実施例1の初期状態の外観図。
図2図1の縦断面図。
図3】実施例1の把持部を変形させた時の外観図。
図4図3の縦断面図。
図5】実施例1の把持部の変形が解除され、芯引き出しが完了した図。
図6図5の縦断面図。
図7】本発明を使用した実施例2の初期状態の外観図。
図8図7の縦断面図。
図9】実施例2の把持部を変形させた時の外観図
図10図9の縦断面図。
図11】実施例2の芯引き出し完了時の外観図。
図12図11の縦断面図。
図13】本発明を使用した実施例3の初期状態の外観図。
図14図13の縦断面図。
図15図14のA−A断面図。
図16】実施例3のボタンの斜視図。
図17】実施例3のボタンを押しこんだ時の縦断面図。
図18】実施例3の芯引き出し完了時の縦断面図。
図19】本発明を使用した実施例4の初期状態の外観図。
図20図18の縦断面図。
図21図19のB−B断面図。
図22】実施例4のボタンの斜視図。
図23】実施例4のボタンを押しこんだ時の縦断面図。
図24】実施例4の芯引き出し完了時の縦断面図。
図25】本発明を使用した実施例5の初期状態の外観図。
図26図20の縦断面図。
図27図21のC−C断面図。
図28】実施例5のボタンを押しこんだ時の縦断面図。
図29】実施例5の芯引き出し完了時の縦断面図。
図30】実施例5の後端ノック時の縦断面図。
図31】実施例5の後端ノックでの芯引き出し完了時の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、チャック2、ボール3、チャックスプリング4、テーパー5、テーパー外筒6及びガイド7によって構成されており、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で溝が設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。
前記チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12が配されている。その前記先部材12と螺合によって接合されたスライド体13は、軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。前記スライド体13は、そのスライド体13の外周部に形成した段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し、前方、もしくは後方に付勢されている。
【0010】
(実施例1)
図1は、本発明のシャープペンシルの初期状態の外観図である。図2図1の縦断面図である。本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、芯10を中心に両側から挟む位置にチャック2、そのチャック2のボール受け座2aにボール3が配されており、前記チャック2の後方に配したチャックスプリング4によって、チャック2は後方(図1の上方向)に付勢されており、その付勢力によって前記ボール3は外周に配したテーパー5に接している。そのテーパー5の外周には、固定の為のテーパー外筒6があり、そのテーパー筒6はガイド7に圧入されている。また、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で4つの溝が設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。前記突起8a及び前記溝は、本実施例のように各々4つずつでなくとも構わないが、固定の均一性と組立性の点から、2つ以上を等間隔で設けることが望ましい。
前記チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12を配している。その先部材12と螺合によって接合されたスライド体13は、前記軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。そのスライド体13は、スライド体13の外周部に形成した段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し後方に付勢されている。
また、前記先部材12及びスライド体13を前方に移動させる手段としては、軸筒8の外周に配置された把持部15である。その把持部15は、把持した際の軸筒8の中心方向への変形によって前方(図1の下方向)に全長が伸長する。その把持部15の前端面15aは、前記先部材4の後端部12aに全周で当接し、一方、把持部15の後端面15bは軸筒8の当接段部8cに当接している。更に、把持部15は円筒内外径共に軸方向に対する中心部が両端部より拡径した樽形状となっており、軸筒8との間に空間が形成されている。そして、把持力などにより外部から荷重が加わると、把持部15の拡径部15cが軸筒8の中心方向に押し込まれ、円周方向の変形と共に、前後の伸長によって力を分散する。次いで、荷重が解除されると元の樽形状に復元する。この時、バネ14の後方へ付勢するバネ荷重よりも、把持部15の伸長よって発生する荷重を大きくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてある。
尚、把持部15には、軸方向の細い溝15dが形成されている(図1)。その溝15dにより、前記把持部15を変形による繰り返し荷重に耐え得る強度の材料、肉厚としても、指先で容易に変形が加えられるようになっているが、元より変形・復元性を十分備えた材料、肉厚であれば、前記溝は必ずしも必要としない。
【0011】
図3は、本発明のシャープペンシルの把持部15を押し込み変形させた時の外観図である。図4図3の縦断面図である。芯の引き出しは、把持部15の軸筒8の中心方向への押し込み変形によって行われる。この際、把持部15は把持した際の押し込み変形によって伸長するが、後端が軸筒8と当接していること及び、バネ14の後方へ付勢するバネ荷重よりも、把持部15の伸長よって発生する荷重を大きくしてあることから、把持部15の前端面15aと先部材12の後端部12aにおいて全周で当接している先部材12を前方に押し出す。この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくしてあることから、前記チャック体1は芯の前進は許容するので、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に前方に引き出される。尚、この際、把持部15と先部材後端部12aにおいて全周で当接している先部材12は移動の際に全周で押し出される為、中心がずれることなく移動することができる。
【0012】
図5は、本発明のシャープペンシルの把持部15の押し込み変形を解除し、芯引き出しが完了した時の外観図である。図6図5の縦断面図である。把持部15の軸筒8の中心方向への変形が解除されると、具体的には把持力を弱めると、前方に押し出された先部材12は把持部の形状復元に伴いバネ14によって後退する。
この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
【0013】
本実施例では、把持部の伸縮のみで芯の繰り出し操作が可能であるため、指の、筆記中に把持していた位置から、芯の繰り出し操作部(把持部15)への移動が全く必要なく、また、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を採用していることで、芯の繰り出し操作部(把持部15)上に指が置かれ、その把持部15を押し込む力が加わったとしても、筆記中に誤って芯10を後退させてしまうことがなく、安定した筆記を行うことができる。
更に、本実施例は、軸筒8の側面に、内部部品と外部部品とを接合する為のスリットを全く必要としない構成である。よって、組立作業における、スリットを通る複数の部品を1つ1つ正確に位置合わせして嵌め込むといった複雑さがない。また、把持部15より後部にバネ14やガイド7と軸筒8の固定部を設けているので、軸筒8の後端側から順番に部品を入れていけばよく、組立性が非常に良いため、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
【0014】
併せて、軸筒8の側面にスリットが全く形成されていない、即ち、全周に渡って側壁が形成されているため、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、側壁によって軸筒の変形を抑えられる。よって、軸折れに対して高い強度を有するシャープペンとすることができる。
尚、軸筒8の強度をより良く保つと共に、芯折れ防止効果を更に高める為には、前記先部材12及びスライド体13の前後移動を規制している軸筒8とスライド体13の摺動部は可能な限り長くすることが望ましい。本実施例では、把持部15の内部層を全て軸筒8とスライド体13の摺動部とすることで、軸筒8とスライド体13を互いに補強し、且つ、芯折れの原因となる前後方向以外の力が芯10にかかることのないように、芯10とチャック体1と先部材12の間での中心ずれを防止している。
【0015】
(実施例2)
図7は、本発明のシャープペンシルの初期状態の外観図である。図8図7の縦断面図である。本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、芯10を中心に両側から挟む位置にチャック2、そのチャック2のボール受け座2aにボール3が配されている。前記チャック2は、後方に配したチャックスプリング4によって後方(図8の上方向)に付勢される。その為、ボール3は外周に配したテーパー5に接している。そのテーパー5の外周には固定の為のテーパー外筒6があり、そのテーパー筒6はガイド7に圧入されている。
また、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で4つの溝が設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。前記突起8a及び前記溝は、本実施例のように各々4つずつでなくとも構わないが、固定の均一性と組立性の点から、2つ以上を等間隔で設けることが望ましい。
前記チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12が配されており、その先部材12と螺合によって接合されたスライド体13を、前記軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。また、そのスライド体13はスライド体13の段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し前方(図8の下方向)に付勢されている。
更に、前記先部材12及びスライド体13を後方に移動させる手段としては、軸筒8の外周に配置された把持部15である。その把持部15は、把持した際の軸筒8の中心方向への変形によって全長が収縮する。また、把持部15の前端面15aは先部材4の後端部12aに全周で接着固定され、一方、把持部15の後端面15bは軸筒8の把持部15の当接段部8bに接着固定されている。更に、把持部15は円筒内径の軸方向に対する中心部が両端部より拡径しており、軸筒8との間に空間が形成されている。把持部15を把持するなどして、外部からの荷重により拡径部が軸中心方向に押し込まれると、円周方向の変形と共に、前後の収縮によって力を分散する。次いで、荷重が解除されると元の形状に復元する。この時、バネ14の前方へ付勢するバネ荷重よりも、把持部15の収縮よって発生する荷重を大きくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてある。
【0016】
図9は、本発明のシャープペンシルの把持部15を押し込み変形させた時の外観図である。図10図9の縦断面図である。前記実施例と同様に、芯の引き出しは、把持部15の軸筒8の中心方向への押し込み変形によって行われる。把持部15は把持した際の押し込み変形によって収縮するが、把持部15の前端面15aは先部材4の後端部12aに全周で固定され、把持部15の後端面15bは軸筒8の把持部15の当接段部8bに固定されていること及び、バネ14の前方へ付勢するバネ荷重よりも、把持部15の収縮によって発生する荷重を大きくしてあることから、前端面15aにおいて全周で固定している先部材12を後方に引き戻す。この時、芯戻り止めの芯保持荷重9よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
尚、把持部15と全周で固定されている先部材12は、移動の際に全周で引き戻される為、中心がずれることなく移動することができる。
【0017】
図11は、本発明のシャープペンシルの把持部15の押し込み変形を解除し、芯引き出しが完了した時の外観図である。図12図11の横断面図である。前記把持部15に対する把持力を弱めるなどして、把持部15の軸筒中心方向への変形が解除されると、後方に引き戻された前記先部材12は把持部15の形状復元に伴いバネ14によって前進する。この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくしてあることから、チャック体1は芯10の前進を許容する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯10を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に前方に引き出され、芯引き出しが完了する。
【0018】
本実施例では、実施例1と同様に、把持部15の伸縮のみで芯10の繰り出し操作が可能であるため、指の、筆記中に把持していた位置から、芯の繰り出し操作部(把持部15)への移動が全く必要なく、また、芯10の前進は許容するが芯10の後退を阻止するチャック体1を採用していることで、芯の繰り出し操作部(把持部15)上に指が置かれ、その把持部15を押し込む力が加わったとしても、筆記中に誤って芯10を後退させてしまうことがなく、安定した筆記を行うことができる。
更に、本実施例は、軸筒8の側面に、内部部品と外部部品とを接合する為のスリットを全く必要としない構成である。よって、組立作業における、スリットを通る複数の部品を1つ1つ正確に位置合わせして嵌め込むといった複雑さがない。また、把持部15より後部にバネ14やガイド7と軸筒8の固定部を設けているので、軸筒8の後端側から順番に部品を入れていけばよく、組立性が非常に良いため、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
【0019】
併せて、軸筒8の側面にスリットが全く形成されていない、即ち、全周に渡って側壁が形成されているため、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、側壁によって軸筒の変形を抑えられる。よって、軸折れに対して高い強度を有するシャープペンとすることができる。
尚、軸筒8の強度をより良く保つと共に、芯折れ防止効果を更に高める為には、前記先部材12及びスライド体13の前後移動を規制している軸筒8とスライド体13の摺動部は可能な限り長くすることが望ましい。
本実施例では、把持部15の内部層を全て軸筒8とスライド体13の摺動部とすることで、軸筒8とスライド体13を互いに補強し、且つ、芯折れの原因となる前後方向以外の力が芯10にかかることのないように、芯10とチャック体1と先部材12の間での中心ずれを防止している。
【0020】
(実施例3)
図13は、本発明のシャープペンシルの初期状態の外観図である。また、図14は、図13の縦断面図、図15図14のA−A断面図である。本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、芯10を中心に両側から挟む位置にチャック2、そのチャック2のボール受け座2aにボール3が配されており、前記チャック2の後方に配したチャックスプリング4によって、チャック2は後方(図13の上方向)に付勢されており、その付勢力によって前記ボール3は外周に配したテーパー5に接している。そのテーパー5は、ガイド7に圧入されている。また、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で4つの溝が設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。前記突起8a及び前記溝は、本実施例のように各々4つずつでなくとも構わないが、固定の均一性と組立性の点から、2つ以上を等間隔で設けることが望ましい。
前記チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12を配している。その先部材12と螺合によって接合されたスライド体13は、前記軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。そのスライド体13は、スライド体13の段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し後方に付勢されている。
前記先部材12及びスライド体13を前方に移動させる手段としては、軸筒8の前方部に配されたボタン16(図16参照)である。ボタン16は、剛性を有する材質から形成されている。
前記軸筒8の前方側面には、矩形のスリットが設けられており、軸筒8内部に配された断面コの字状のボタン16が、コの字の開放側を軸筒8中心に向け、その反対側を前記スリットから外部に一部露出した状態で配置されている。さらに、前記ボタン16の開放端は、前端が面取りをされたような傾斜面16aとなっており、先部材12の後端に設けられた、前記傾斜面16aと同じ角度の傾斜面12bに接触している。なお、ボタン16は軸筒8のスリット壁面によって前後・左右方向への移動が規制され、先部材12は、スライド体13外周および軸筒8の内周によって径方向への移動が規制されている。
【0021】
図17は、本発明のシャープペンシルのボタン16を押し込んだ時の横断面図である。図18は、本発明のシャープペンシルの芯の引き出しが完了した時の横断面図である。芯の引き出しは、ボタン16の軸筒8の中心方向への押し込みによって行われる。把持力などにより外部から荷重が加わると、ボタン16は、軸筒8の中心方向へと押し込まれ、同時に、傾斜面16aと傾斜面12bを介して、先部材12を前方へと突き出す。
この時、バネ14の後方へ付勢するバネ荷重よりも、ボタン16の押し込みによって発生する荷重を大きくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくしてあることから、前記チャック体1は芯の前進は許容するので、芯10は先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に前方に引き出される。
次いで、ボタン16の軸筒8の中心方向への押し込みが解除されると、具体的には把持力を弱めると、前方に押し出されていた先部材12は、バネ14によって後退させられ、同時に、傾斜面16aと傾斜面12bを介して、ボタン16を、元の位置へと突き返す。
この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
【0022】
本実施例では、ボタン16の押し込みのみで芯の繰り出し操作が可能であるため、指の、筆記中に把持していた位置から、芯の繰り出し操作部(ボタン16)への移動が全く必要ない。また、実施例1・2と同様に、芯10の前進は許容するが芯10の後退を阻止するチャック体1を使用していることで、芯の繰り出し操作部(ボタン16)上に指が置かれ、そのボタン16を押し込む力が加わったとしても、筆記中に誤って芯10を後退させてしまうことがなく、安定した筆記を行うことができる。
また、前記先部材12及びスライド体13を前方に移動させる手段であるボタン16の材質を、剛性の高いポリブチレンテレフタレート樹脂とすることにより、先部材12及びスライド体13の移動量を常に一定として、正確な芯の繰り出しが行えるようになっている。その他、ボタン16の材質としては、ポリアセタールやポリカーボネートといった樹脂材料、或いはステンレスや真鍮といった金属材料等、指による押し込みによって簡単に変形したり、周囲の温度・湿度によって寸法が変化しにくい材質であれば、適宜採用することができる。
【0023】
更に、本実施例では、軸筒8側面のスリットを介して接合する部品は、ボタン16のみであるため、組立作業における位置合わせや嵌め込みといった複雑さを軽減し、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
併せて、軸筒8の全周に対してスリットの占める割合が小さいため、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、側壁によって軸筒の変形を抑えられる。よって、スリットからの亀裂発生や、その亀裂の進展による軸折れに対して高い強度を有するシャープペンとすることができる。尚、軸筒8の強度をより良く保つと共に、芯折れ防止効果を更に高める為には、前記先部材12及びスライド体13の前後移動を規制している軸筒8とスライド体13の摺動部は可能な限り長くすることが望ましい。
本実施例では、軸筒8とスライド体13の摺動部を、スライド体13の全長の半分以上の長さとすることで、軸筒8とスライド体13を互いに補強し、且つ、芯折れの原因となる前後方向以外の力が芯10にかかることのないように、芯10とチャック体1と先部材12の間での中心ずれを防止している。
【0024】
(実施例4)
図19は、本発明のシャープペンシルの初期状態の外観図である。また、図20図19の縦断面図、図21図20のB−B断面図である。本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、芯10を中心に両側から挟む位置にチャック2、そのチャック2のボール受け座2aにボール3が配されている。前記チャック2は、後方に配したチャックスプリング4によって後方(図19の上方向)に付勢される。その為、ボール3は外周に配したテーパー5に接している。そのテーパー5の外周には固定の為のテーパー外筒6があり、そのテーパー筒6はガイド7に圧入されている。また、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で4つの溝が設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。前記突起8a及び前記溝は、本実施例のように各々4つずつでなくとも構わないが、固定の均一性と組立性の点から、2つ以上を等間隔で設けることが望ましい。
前記チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12が配されており、その先部材12と螺合によって接合されたスライド体13を、前記軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。また、そのスライド体13はスライド体13の段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し前方(図19の下方向)に付勢されている。
前記先部材12及びスライド体13を後方に移動させる手段としては、軸筒8の前方部に配されたボタン16(図22参照)である。
前記軸筒8の前方側面には、矩形のスリットが設けられており、軸筒8内部に配された断面コの字状のボタン16が、コの字の開放側を軸筒8の中心に向け、その反対側を前記スリットから外部に一部露出した状態で配置されている。さらに、前記ボタン16の開放端中腹には突起16bが形成され、その突起16bの側面は、後方から前方に向って軸筒中心方向へと近づく傾斜面16aとなっている。前記ボタンの傾斜面16aは、先部材12の後部に設けられた、前記傾斜面16aと同じ角度の傾斜面12bに接触している。なお、ボタン16は、軸筒8のスリット壁面によって前後方向への移動が規制され、先部材12は、スライド体13の外周および軸筒8の内周によって径方向への移動が規制されている。
【0025】
図23は、本発明のシャープペンシルのボタン16を押し込んだ時の横断面図である。図24は、本発明のシャープペンシルの芯の引き出しが完了した時の横断面図である。芯の引き出しは、ボタン16の軸筒8の中心方向への押し込みによって行われる。把持力などにより外部から荷重が加わると、ボタン16は、軸筒8の中心方向へと押し込まれ、同時に、傾斜面16aと傾斜面12bを介して、先部材12を後方へと引き込む。
この時、バネ14の前方へ付勢するバネ荷重よりも、ボタン16の押し込みによって発生する荷重を大きくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
次いで、ボタン16の軸筒8の中心方向への押し込みが解除されると、具体的には把持力を弱めると、後方に引き込まれていた先部材12は、バネ14によって前進させられ、同時に、傾斜面16aと傾斜面12bを介して、ボタン16を、元の位置へと突き返す。
この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくしてあることから、前記チャック体1は芯の前進を許容するので、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に前方に引き出される。
【0026】
本実施例では、ボタン16の押し込みのみで芯の繰り出し操作が可能であるため、指の、筆記中に把持していた位置から、芯の繰り出し操作部(ボタン16)への移動が全く必要なく、また、実施例1〜3と同様に、芯10の前進は許容するが芯10の後退を阻止するチャック体1を使用していることで、芯の繰り出し操作部(ボタン16)上に指が置かれて、そのボタン16を押し込む力が加わったとしても、筆記中に誤って芯10を後退させてしまうことがなく、安定した筆記を行うことができる。
また、実施例3と同様に、前記先部材12及びスライド体13を前方に移動させる手段であるボタン16の材質を、剛性の高いポリブチレンテレフタレート樹脂とすることにより、先部材12及びスライド体13の移動量を常に一定として、正確な芯の繰り出しが行えるようになっている。その他、ボタン16の材質としては、ポリアセタールやポリカーボネートといった樹脂材料、或いはステンレスや真鍮といった金属材料等、指による押し込みによって簡単に変形したり、周囲の温度・湿度によって寸法が変化しにくい材質であれば、適宜採用することができる。
【0027】
更に、本実施例では、軸筒8側面のスリットを介して接合する部品は、ボタン16のみであるため、組立作業における位置合わせや嵌め込みといった複雑さを軽減し、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
併せて、軸筒8の全周に対してスリットの占める割合が小さいため、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、側壁によって軸筒の変形を抑えられる。よって、スリットからの亀裂発生や、その亀裂の進展による軸折れに対して高い強度を有するシャープペンとすることができる。尚、軸筒8の強度をより良く保つと共に、芯折れ防止効果を更に高める為には、前記先部材12及びスライド体13の前後移動を規制している軸筒8とスライド体13の摺動部は可能な限り長くすることが望ましい。
本実施例では、軸筒8とスライド体13の摺動部を、スライド体13の全長の半分以上の長さとすることで、軸筒8とスライド体13を互いに補強し、且つ、芯折れの原因となる前後方向以外の力が芯10にかかることのないように、芯10とチャック体1と先部材12の間での中心ずれを防止している。
【0028】
(実施例5)
図25は、本発明のシャープペンシルの初期状態の外観図である。図26は、図25の縦断面図、図27図26のC−C断面図である。本発明のシャープペンシルは、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体1を使用している。前記チャック体1は、芯10を中心に両側から挟む位置にチャック2、そのチャック2のボール受け座2aにボール3が配されている。前記チャック2は、後方に配したチャックスプリング4によって後方(図25の上方向)に付勢される。その為、ボール3は外周に配したテーパー5に接している。そのテーパー5は、ガイド7に圧入されている。また、そのガイド7は、その後端部7aを、軸筒8の内壁に径方向に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接させることで、後方への移動が規制されている。尚、前記ガイド7は、その後方外周に径方向に等間隔で4つの溝7bが設けられており、組立の際には、前記突起8aを避けて挿入することで、軸筒8の後方から組み込むことができる。前記突起8a及び前記溝7bは、本実施例のように各々4つずつでなくとも構わないが、固定の均一性と組立性の点から、2つ以上を等間隔で設けることが望ましい。
チャック体1の前方には、芯戻り止め9及び芯を繰り出す孔11を備えた先部材12が配されており、その先部材12と螺合によって接合されたスライド体13を、前記軸筒8の内部に、軸筒8に対して前後移動自在に配されている。また、そのスライド体13はスライド体13の段部13aと軸筒8の内部に設けた段部8bの間に配したバネ14によって、軸筒8に対し後方(図25の上方向)に付勢されている。
前記先部材12及びスライド体13を前方に移動させる手段としては、軸筒8の前方部に設けられた可撓部8dである。可撓部8dの外径および内径は、共に軸筒8の先端に向って緩やかに拡径しており、先部材の後部に対して僅かに重なるように配置されている。
【0029】
図28は、本発明のシャープペンシルの可撓部8dを倒し込んだ時の縦断面図である。また、図29は、芯の引き出しが完了した時の縦断面図である。芯の引き出しは、可撓部8dの軸筒8の中心方向への倒し込みによって行われる。把持力などにより外部から荷重が加わると、可撓部8dは、その前方に配置された先部材12を前方へと押し出す。
この時、バネ14の後方へ付勢するバネ荷重よりも、可撓部8dの倒し込みによって発生する荷重を大きくし、かつ、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1からの芯引き出し荷重を小さくしてあることから、前記チャック体1は芯の前進は許容するので、芯10は先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に前方に引き出される。
次いで、可撓部8dの軸筒8の中心方向への押し込みが解除されると、具体的には把持力を弱めると、可撓部8dは元の形状に復元し、前方に押し出されていた先部材12も、バネ14によって後退させられ、元の位置へと戻る。
この時、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
尚、可撓部8dには、軸方向の細い溝8eが形成されている(図25)。その溝8eにより、前記可撓部8dを変形による繰り返し荷重に耐え得る強度の材料、肉厚としても、指先で容易に変形が加えられるようになっているが、元より変形・復元性を十分備えた材料、肉厚であれば、前記溝は必ずしも必要としない。
【0030】
本実施例では、可撓部8dの倒し込みのみで芯の繰り出し操作が可能であるため、指の、筆記中に把持していた位置から、芯の繰り出し操作部(可撓部8d)への移動が全く必要なく、また、実施例1〜4と同様に、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を採用していることで、芯の繰り出し操作部(可撓部8d)上に指が置かれて、その可撓部8dを倒しこむ力が加わったとしても、筆記中に誤って芯を後退させてしまうことがなく、安定した筆記を行うことができる。
更に、本実施例は、軸筒8の側面に、内部部品と外部部品とを接合する為のスリットを全く必要としない構成である。よって、組立作業における、スリットを通る複数の部品を1つ1つ正確に位置合わせして嵌め込むといった複雑さがない。また、把持部15より後部にバネ14やガイド7と軸筒8の固定部を設けているので、軸筒8の後端側から順番に部品を入れていけばよく、組立性が非常に良いため、組立ミスの減少と作業時間の短縮を実現することが可能である。
【0031】
併せて、軸筒8の全周に対してスリットの占める割合が小さいため、軸筒に強い押圧力が加えられた場合にも、側壁によって軸筒の変形を抑えられる。よって、スリットからの亀裂発生や、その亀裂の進展による軸折れに対して高い強度を有するシャープペンとすることができる。
尚、軸筒8の強度をより良く保つと共に、芯折れ防止効果を更に高める為には、前記先部材12及びスライド体13の前後移動を規制している軸筒8とスライド体13の摺動部は可能な限り長くすることが望ましい。
本実施例では、軸筒8とスライド体13の摺動部を、スライド体13の全長の半分以上の長さとすることで、軸筒8とスライド体13を互いに補強し、且つ、芯折れの原因となる前後方向以外の力が芯10にかかることのないように、芯10とチャック体1と先部材12の間での中心ずれを防止している。
【0032】
また、必ずしも必要ではないが、実施例1〜5のシャープペンシルの後端にノック機構を配することで、任意の長さでの芯出しや芯戻しといった機能を持たせることもできる。図30は、実施例5のシャープペンシルにおいて、後端ノックを行った時の、縦断面図である。また、図31は、後端ノックによって芯の引き出しが完了した時の縦断面図である。
ノック17は、中央筒部17aと、2本の側肢17bから成り、前記中央筒部17はガイド7の内部に挿入され、前記側肢17bはガイド7の後方外周に径方向に等間隔で設けられた4つの溝7bのうち、対向する2つの溝に挿入される(図27)。そのノック17の後端に圧入された頭冠18を軸方向前方へ押し込むことで、前記2本の側肢17bによりスライド体13及びその前方に接続された先部材12を押し出し、チャック体1から芯を引き出すことができる。
また、このノック17の側肢17bが、スライド体13の後端に接触した後、僅かな時間差をもって前記中央筒部17aがチャック体1の後端に接触し、先部材12とスライド体13、及びチャック体1が共に前進する。この時点で、チャック体1が開き、芯10は前進後退自由となる。
次いで、頭冠18及びノック17の押し込みが解除されると、先部材12とスライド体13、及びチャック体1が後退する。ノック17の中央筒部17aがチャック体1の後端から離れるまでは、チャック体1が開いた状態となっており、芯10は、先部材12の内部で芯10を保持している芯戻り止め9によって先部材12と共に後方へ引き戻される。
その後、ノック17の中央筒部17aがチャック体1の後端から離れ、チャック体1が閉じると、芯戻り止め9の芯保持荷重よりも、チャック体1の芯後退阻止荷重を大きくしてあることから、チャック体1は芯の後退を阻止する。その結果、芯10は、先部材12の内部で芯を保持している芯戻り止め9に対して滑る形で、先部材12の後退分だけ孔11の先端から突出する。
【0033】
以上のようにして、各実施例のシャープペンシルに後端ノック機構を配することができる。この後端ノック機構を搭載したシャープペンシルにあっても、前記チャック体1は、前記ガイド部7の後端部7aを、軸筒8の内壁に等間隔で設けられた4つの突起8aの前面に当接することで、後方への移動を規制されている(図26図27)。このため、筆記時に、筆記圧により芯10並びにその芯10を把持しているチャック体1を軸筒1の後方に移動させようとする力がかかっても、チャック体1やガイド7が軸筒1内での位置を保った状態となる。また、各実施例のシャープペンシルは、芯10の前進は許容するが芯10の後退を阻止するチャック体1を採用している。よって、筆記中に芯10が後退することなく、安定した筆記を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、シャープペンシルの芯出し構造であるが、はんだ線繰り出し装置など、一定量を簡単な操作で先端から繰り出したい材料の繰り出し構造としても使用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 チャック体
2 チャック
2a ボール受け座
3 ボール
4 チャックスプリング
5 テーパー
6 テーパー外筒
7 ガイド
7a ガイド後端部
7b ガイド後部の溝
8 軸筒
8a 軸筒内突起
8b 軸筒内段部
8c 把持部当接段部
8d 軸筒の可撓部
8e 軸筒の可撓部の溝
9 芯戻り止め
10 芯
11 芯を繰り出す孔
12 先部材
12a 先部材の後端部
12b 先部材の傾斜面
13 スライド体
13a スライド体段部
14 バネ
15 把持部
15a 把持部の前端面
15b 把持部の後端面
15c 把持部の拡径部
15d 把持部の溝
16 ボタン
16a ボタンの傾斜面
16b ボタンの突起
17 ノック
17a ノックの中央筒部
17b ノックの側肢
18 頭冠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31