(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
添加剤を貯留するタンク、および、同タンク内の添加剤を送液するポンプ、および、同ポンプから送液される添加剤をエンジンの排気通路に供給する供給通路を有して、エンジンルームの外部に位置する添加剤供給系と、
前記添加剤供給系内の添加剤を加熱する加熱部と、
前記エンジンルームの内部に位置して前記エンジンの吸気温度を検出する吸気温度センサと、
前記吸気温度センサにより検出される吸気温度が低いときに前記加熱部を作動させるとともに、同吸気温度が高くなると前記加熱部の作動を停止させる加熱制御部と
を備えるエンジンの添加剤供給装置において、
前記エンジンは車両に搭載されるものであり、
前記加熱制御部は、前記車両の走行速度が所定速度以下のときに、前記加熱部の作動時において前記吸気温度センサにより検出される吸気温度と前記添加剤供給系内の添加剤の温度とが乖離しているとする条件が成立しているとして、前記加熱部の作動を継続する
ことを特徴とするエンジンの添加剤供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、尿素水温度を直接検出するセンサが設けられていない装置では、吸気温度センサにより検出される吸気温度を尿素水温度の指標値として用いて、タンクヒータを作動させることが考えられる。
【0007】
吸気温度センサは、その機能上、エンジンルームの内部などのエンジン近傍に設けられる。これに対して、尿素水タンクは、設置スペースの都合上、エンジンルームの外部などのエンジンから離れた位置に設けられることが多い。そのため、吸気温度センサによって検出される温度と実際の尿素水の温度とにずれが生じやすく、そうした吸気温度センサの検出温度に基づきタンクヒータの作動を制御しても、同ヒータを適切に作動させることができない場合がある。
【0008】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、添加剤を加熱して解凍するための加熱部を適切に作動させることができるエンジンの添加剤供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を達成するためのエンジンの添加剤供給装置は、添加剤を貯留するタンク、および、同タンク内の添加剤を送液するポンプ、および、同ポンプから送液される添加剤をエンジンの排気通路に供給する供給通路を有して、エンジンルームの外部に位置する添加剤供給系を備える。また添加剤供給装置は、前記添加剤供給系内の添加剤を加熱する加熱部と、前記エンジンルームの内部に位置して前記エンジンの吸気温度を検出する吸気温度センサと、前記吸気温度センサにより検出される吸気温度が低いときに前記加熱部を作動させるとともに、同吸気温度が高くなると前記加熱部の作動を停止させる加熱制御部とを備える。
なお、前記エンジンは車両に搭載されるものである。そして、前記加熱制御部は、
前記車両の走行速度が所定速度以下のときに、前記加熱部の作動時において前記吸気温度センサにより検出される吸気温度と前記添加剤供給系内の添加剤の温度とが乖離しているとする条件が成立している
として、前記加熱部の作動を継続する。
【0010】
上記添加剤供給装置では、エンジンの運転に際して同エンジンから放射される熱によってエンジンルームの温度が高くなるため、エンジンルーム内に配設された吸気温度センサにより検出される吸気温度が高くなり易いのに対して、エンジンルームの外部に配設された添加剤供給系内の添加剤の温度は高くなり難い。そのため、吸気温度センサによって検出される吸気温度と添加剤供給系の内部の添加剤温度とに差が生じてしまう。
【0011】
上記添加剤供給装置では、
車両の走行速度が所定速度以下のときに、吸気温度センサにより検出される吸気温度と添加剤供給系内の添加剤の温度とが乖離しているとする条件が成立した
として、添加剤を加熱する加熱部の作動が継続される。そのため、実際の添加剤温度が低いのにも関わらず、エンジンの放射熱によって吸気温度の検出値が高くなったときに、加熱部の作動が誤って停止されることを抑えることができる。したがって上記添加剤供給装置によれば、添加剤の凍結を抑えるべく加熱部を適切に作動させることができる。
【0013】
エンジンが搭載された車両では、走行速度が低く走行風の風量が少ないときや、車両停止によって走行風が無いときに、エンジンルーム内においてエンジンの雰囲気である空気が滞留するため、同エンジンの周囲の温度が高くなり易い。こうした場合には、吸気温度センサによって検出される吸気温度も高くなるため、これに起因して同吸気温度と添加剤温度とが乖離するようになる。上記添加剤供給装置によれば、車両が低速で走行していることや停止していることをもって、吸気温度センサにより検出される吸気温度と添加剤温度とが乖離していることを適正に判断することができ、その判断に基づき加熱部を適切に作動させることができる。
【0014】
前記エンジンの排気温度を上昇させる昇温制御を実行する排気温制御部を備えた上記添加剤供給装置においては、前記加熱制御部は、前記昇温制御が実行されるときに、同昇温制御が実行されないときと比較して、前記所定速度を高い速度にすることが好ましい。
【0015】
上記添加剤供給装置では、昇温制御が実行されて排気温度が高くなっているときには、エンジンの周囲の温度が高くなり易く、吸気温度センサにより検出される吸気温度も高くなり易い。そのため、エンジンの放射熱による影響を十分に小さくするために必要な走行風の風量も多いと云える。上記添加剤供給装置によれば、そうした昇温制御の実行時に、前記所定速度を高い速度にすることによって、加熱部の作動を継続する速度範囲を高速側に拡大することができる。これにより、誤って加熱部の作動が停止されることを的確に抑えることができるため、加熱部をより適切に作動させることができる。
【0016】
なお、前記昇温制御としては、エンジンの排気を浄化する排気浄化装置の機能回復を図るために同エンジンの排気温度を上昇させる制御を採用することができる
。
【0020】
前記添加剤供給装置において、前記ポンプを回転式のものとし、前記加熱制御部は、前記加熱部の作動時に前記ポンプの回転速度が所定速度以下である状態が継続されるときにも、前記加熱部の作動を継続することが好ましい。
【0021】
添加剤の状態が凍結状態に近いときほど同添加剤の粘度が高いために、これを送液するポンプの負荷が大きくなる。そして、回転式のポンプでは、負荷が大きいときには回転軸の回転速度が低くなる。上記添加剤供給装置によれば、ポンプの回転速度が低いことをもって添加剤の凍結を判定して、加熱部の作動を継続することができる。そのため、加熱部を適切に作動させて添加剤の凍結を抑えることができる。
【0022】
上記添加剤供給装置において、前記乖離していることを、前記吸気温度と前記添加剤供給系内の添加剤の温度との差が所定温度以上であることにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、エンジンの添加剤供給装置を具体化した一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の添加剤供給装置が適用されたディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という)、並びにそれらの周辺構成を示す。
【0025】
エンジン1には複数の気筒#1〜#4が設けられている。シリンダヘッド2には複数の燃料噴射弁4a〜4dが取り付けられている。これら燃料噴射弁4a〜4dは各気筒#1〜#4の燃焼室に燃料を噴射する。また、シリンダヘッド2には新気を気筒内に導入するための吸気ポートと、燃焼ガスを気筒外へ排出するための排気ポート6a〜6dとが各気筒#1〜#4に対応して設けられている。
【0026】
燃料噴射弁4a〜4dは、高圧燃料を蓄圧するコモンレール9に接続されている。コモンレール9はサプライポンプ10に接続されている。サプライポンプ10は燃料タンク内の燃料を吸入するとともにコモンレール9に高圧燃料を供給する。コモンレール9に供給された高圧燃料は、各燃料噴射弁4a〜4dの開弁時に同燃料噴射弁4a〜4dから気筒内に噴射される。
【0027】
吸気ポートにはインテークマニホールド7が接続されている。インテークマニホールド7は吸気通路3に接続されている。この吸気通路3内には吸入空気量を調整するための吸気絞り弁16が設けられている。
【0028】
排気ポート6a〜6dにはエキゾーストマニホールド8が接続されている。エキゾーストマニホールド8は排気通路26に接続されている。
排気通路26の途中には、排気圧を利用して気筒に導入される吸入空気を過給するターボチャージャ11が設けられている。同ターボチャージャ11の吸気側コンプレッサと吸気絞り弁16との間の吸気通路3にはインタークーラ18が設けられている。このインタークーラ18によって、ターボチャージャ11の過給により温度上昇した吸入空気の冷却が図られる。
【0029】
また、排気通路26の途中にあって、ターボチャージャ11の排気側タービンの排気下流には、排気を浄化する第1浄化部材30が設けられている。この第1浄化部材30の内部には、排気の流れ方向に対して直列に酸化触媒31およびフィルタ32が配設されている。
【0030】
酸化触媒31には、排気中のHCを酸化処理する触媒が担持されている。また、フィルタ32は、排気中のPM(粒子状物質)を捕集する部材であって、多孔質のセラミックで構成されている。このフィルタ32には、PMの酸化を促進させるための触媒が担持されており、排気中のPMは、フィルタ32の多孔質の壁を通過する際に捕集される。
【0031】
また、エキゾーストマニホールド8の集合部近傍には、酸化触媒31やフィルタ32に添加剤として燃料を供給するための燃料添加弁5が設けられている。この燃料添加弁5は、燃料供給管27を介して前記サプライポンプ10に接続されている。なお、燃料添加弁5の配設位置は、排気系にあって第1浄化部材30の上流側であれば適宜変更することも可能である。
【0032】
フィルタ32に捕集されたPMの量が所定値を超えると、フィルタ32の再生処理が開始されて燃料添加弁5からはエキゾーストマニホールド8内に向けて燃料が噴射される。この燃料添加弁5から噴射された燃料は、酸化触媒31に達すると燃焼され、これにより排気温度の上昇が図られる。そして、酸化触媒31にて昇温された排気がフィルタ32に流入することにより、同フィルタ32は昇温され、これによりフィルタ32に堆積したPMが酸化処理されてフィルタ32の再生が図られる。本実施形態では、この再生処理が、エンジン1の排気温度を上昇させる昇温制御に相当する。
【0033】
また、排気通路26の途中にあって、第1浄化部材30の排気下流には、排気を浄化する第2浄化部材40が設けられている。第2浄化部材40の内部には、還元剤を利用して排気中のNOxを還元浄化する選択還元型NOx触媒(以下、SCR触媒という)41が配設されている。
【0034】
さらに、排気通路26の途中にあって、第2浄化部材40の排気下流には、排気を浄化する第3浄化部材50が設けられている。第3浄化部材50の内部には、排気中のアンモニアを浄化するアンモニア酸化触媒51が配設されている。
【0035】
エンジン1には、上記SCR触媒41に還元剤を供給する尿素水供給機構200が設けられている。尿素水供給機構200は、添加剤としての尿素水を貯留するタンク210、排気通路26内に尿素水を噴射供給する尿素添加弁230、尿素添加弁230とタンク210とを接続する供給通路240、供給通路240の途中に設けられたポンプ220にて構成されている。
【0036】
尿素添加弁230は、第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26に設けられており、その噴射孔はSCR触媒41に向けられている。この尿素添加弁230が開弁されると、供給通路240を介して排気通路26内に尿素水が噴射供給される。
【0037】
ポンプ220は電動式のポンプであり、正回転時には、タンク210から尿素添加弁230に向けて尿素水を送液する。一方、逆回転時には、尿素添加弁230からタンク210に向けて尿素水を送液する。つまり、ポンプ220の逆回転時には、尿素添加弁230および供給通路240から尿素水が回収されてタンク210に戻される。
【0038】
図2に示すように、本実施形態では、タンク210の底面にポンプ220が設けられている。なお、ポンプ220は、タンク210の側面であって底面に近い部位に設けてもよい。ポンプ220には、同ポンプ220の回転軸の回転速度であるポンプ回転速度NEPを検出する回転速度センサ221が設けられている。
【0039】
また、タンク210内には、尿素水を加熱するタンクヒータ310が設けられている。ポンプ220内には、尿素水を加熱するポンプヒータ320が設けられている。そして供給通路240の外周にも、尿素水を加熱する通路ヒータ330が設けられている。これらヒータ310,320,330は、電気式のヒータであり、ヒータ制御装置300に接続されている。このヒータ制御装置300によって、各ヒータ310,320,330への通電と同通電の遮断とを切り替えるヒータ制御が実行される。ヒータ制御装置300は、後述する制御装置80と相互通信を行う。
【0040】
先の
図1に示すように、尿素添加弁230とSCR触媒41との間の排気通路26内には、尿素添加弁230から噴射された尿素水を分散させることにより同尿素水の霧化を促進する分散板60が設けられている。
【0041】
尿素添加弁230から噴射された尿素水は、排気の熱によって加水分解されてアンモニアとなる。そしてこのアンモニアがNOxの還元剤としてSCR触媒41に供給される。SCR触媒41に供給されたアンモニアは、同SCR触媒41に吸蔵されてNOxの還元に利用される。
【0042】
この他、エンジン1には排気再循環装置(以下、EGR装置という)が備えられている。このEGR装置は、排気の一部(いわゆるEGRガス)を吸入空気に導入することで気筒内の燃焼温度を低下させ、NOxの発生量を低減させる装置である。このEGR装置は、吸気通路3とエキゾーストマニホールド8とを連通するEGR通路13、同EGR通路13に設けられたEGR弁15、およびEGRクーラ14等により構成されている。EGR弁15の開度が調整されることにより排気通路26から吸気通路3に導入される排気再循環量、すなわちEGR量が調量される。また、EGRクーラ14によってEGR通路13内を流れる排気の温度が低下される。
【0043】
エンジン1には、エンジン運転状態を検出するための各種センサが取り付けられている。例えば、エアフロメータ19は吸気通路3内の吸入空気量GAを検出する。絞り弁開度センサ20は吸気絞り弁16の開度を検出する。エンジン回転速度センサ21はエンジン1の出力軸の回転速度、すなわちエンジン回転速度NEを検出する。アクセルセンサ22はアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル操作量ACCPを検出する。吸気温度センサ23は、吸気通路3内におけるターボチャージャ11より吸気上流側の部分の吸気温度THAを検出する。車速センサ24はエンジン1が搭載された車両の走行速度、すなわち車速SPDを検出する。イグニッションスイッチ25は、車両の運転者によるエンジン1の始動操作および停止操作を検出する。
【0044】
また、酸化触媒31の排気上流に設けられた第1排気温度センサ100は、酸化触媒31に流入する前の排気温度である第1排気温度TH1を検出する。差圧センサ110は、フィルタ32の排気上流および排気下流の排気圧の圧力差ΔPを検出する。
【0045】
第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26にあって、尿素添加弁230の排気上流には、第2排気温度センサ120および第1NOxセンサ130が設けられている。第2排気温度センサ120は、SCR触媒41に流入する前の排気温度である第2排気温度TH2を検出する。第1NOxセンサ130は、SCR触媒41に流入する前の排気中のNOx濃度である第1NOx濃度N1を検出する。
【0046】
第3浄化部材50の排気下流の排気通路26には、SCR触媒41で浄化された排気のNOx濃度である第2NOx濃度N2を検出する第2NOxセンサ140が設けられている。
【0047】
これら各種センサ等の出力は制御装置80に入力される。この制御装置80は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。なお、CPUや上述した各種センサには、バッテリから電力が供給される。
【0048】
そして、制御装置80により、例えば燃料噴射弁4a〜4dや燃料添加弁5の燃料噴射量制御・燃料噴射時期制御、サプライポンプ10の吐出圧力制御、吸気絞り弁16を開閉するアクチュエータ17の駆動量制御、EGR弁15の開度制御等、エンジン1の各種制御が行われる。また、上記フィルタ32に捕集されたPMを燃焼させる上記再生処理等といった各種の排気浄化制御も同制御装置80によって行われる。
【0049】
制御装置80は、排気浄化制御の一つとして、上記尿素添加弁230による添加剤の添加制御も行う。この添加制御では、エンジン1から排出されるNOxを還元処理するために必要な尿素の供給量が算出される。そして算出された供給量の尿素水が尿素添加弁230から噴射されるように、尿素添加弁230の開弁状態が制御される。このようにエンジン1の運転中は、NOxを浄化するために排気通路26に対して尿素水の供給が行われて排気中に尿素が添加される。
【0050】
また、ヒータ制御装置300は、前述したヒータ制御を実行する。このヒータ制御は、基本的に、次のように実行される。すなわち、尿素水温度の指標となる温度として吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAが用いられる。そして、吸気温度THAが所定温度T1(例えば、−3℃)より低いときには、尿素水が凍結している、あるいは凍結する可能性があるとして、ヒータ制御装置300を介した通電が開始されて各ヒータ310,320,330が作動する。そして、各ヒータ310,320,330の作動中において、吸気温度THAが所定温度T2(例えば、0℃)より高くなると、尿素水が凍結している可能性が低く、凍結を招く可能性も低いとして、各ヒータ310,320,330への通電が遮断されてその作動が停止される。
【0051】
ここで、
図3に示すように、吸気温度センサ23は、エンジン1が設置されたエンジンルーム1aの内部に配設されており、尿素水供給機構200(具体的には、タンク210、ポンプ220、尿素添加弁230、供給通路240など)はエンジンルーム1aの外部に配設されている。
【0052】
本実施形態では、エンジン1の運転に際してエンジンルーム1aの温度が高くなるため、同エンジンルーム1a内の吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAが高くなり易い。これに対して、尿素水供給機構200はエンジンルーム1aの外部に配設されているため、エンジン1の運転に際して温度が高くなり難く、この尿素水供給機構200の内部の尿素水の温度も高くなり難い。そのため本実施形態では、吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAと尿素水供給機構200内の尿素水温度とに差が生じてしまう。
【0053】
本実施形態では、吸気温度THAが高くなったときに各ヒータ310,320,330の作動を停止するようにしている。しかし、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離しているときでも、吸気温度THAが高くなったことをもって各ヒータ310,320,330の作動を停止してしまうと、尿素水温度が低いのにも関わらず各ヒータ310,320,330の作動が誤って停止されてしまうおそれがある。
【0054】
そこで本実施形態では、車速SPDが所定速度(本実施形態では、5km毎時)以下であるときに、吸気温度THAと尿素水供給機構200内の尿素水温度とが乖離する状況であると判断するようにしている。そして、各ヒータ310,320,330の作動時において、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していると判断されるときには、吸気温度THAが高いときであっても、ヒータ制御装置300による各ヒータ310,320,330の作動を継続するようにしている。
【0055】
以下、このようにして各ヒータ310,320,330の作動を継続することによる作用について説明する。
車速SPDが低く走行風の風量が少ないときや、車両停止によって走行風が無いときには、エンジンルーム1a内においてエンジン1の雰囲気である空気が滞留するため、同エンジンルーム1a内の温度が高くなり易く、エンジン1の周囲の温度も高くなり易い。こうした場合には、エンジンルーム1a内に配置された吸気温度センサ23によって検出される吸気温度THAも高くなるため、これに起因して同吸気温度THAとエンジンルーム1aの外部に配置された尿素水供給機構200内の尿素水温度とが乖離するようになる。
【0056】
本実施形態では、車速SPDが所定速度以下であるときに、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離しているとする条件が成立していると判断される。そのため、車両が低速で走行していることや停止していることをもって、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していることを適正に判断することができる。
【0057】
しかも、そのようにして吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していると判断されたときに、各ヒータ310,320,330の作動が停止されずに継続される。そのため、エンジン1から放射される熱によって吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAが高くなって同吸気温度THAと尿素水温度とが乖離したときに、同尿素水を加熱する各ヒータ310,320,330の作動が停止されなくなる。これにより、実際の尿素水温度が低いのにも関わらず、エンジン1の放射熱によって吸気温度THAが高くなったことをもって、各ヒータ310,320,330の作動が誤って停止されることを抑えることができる。したがって、尿素水の凍結を抑えるべく各ヒータ310,320,330を適切に作動させることができる。
【0058】
以下、こうしたヒータ制御にかかる処理(ヒータ制御処理)の実行手順について具体的に説明する。
図4は上記ヒータ制御処理の実行手順を示している。なお、同図のフローチャートに示される一連の処理は、ヒータ制御処理の実行手順を概念的に示したものであり
、ヒータ制御装置300により実行される。
【0059】
図4に示すように、この処理では先ず、吸気温度THAが所定温度T1より低いか否かが判断される(ステップS101)。そして、吸気温度THAが所定温度T1以上であるときには(ステップS101:NO)、
吸気温度THAが所定温度T1より低くなるまでの間、ステップS101の処理が繰り返し実行される。
【0060】
一方、吸気温度THAが所定温度T1より低いときには(ステップS101:YES)、各ヒータ310,320,330が通電されて作動する(ステップS102)。その後においては、吸気温度THAが所定温度T2より高くなっているか否かを判定する処理や(ステップS103)、車速SPDが所定速度より高いか否かを判定する処理が実行される(ステップS104)。
【0061】
そして、吸気温度THAが所定温度T2以下であると判断されるときには(ステップS103:NO)、尿素水供給機構200の雰囲気の温度が低いために尿素水温度が十分に高くなっていないとして、各ヒータ310,320,330の作動が継続される。
【0062】
一方、吸気温度THAが所定温度T2より高くなった場合であっても(ステップS103:YES)、車速SPDが所定速度以下である場合には(ステップS104:NO)、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離しているとする条件が成立しているとして、各ヒータ310,320,330の作動が継続される。
【0063】
そして、吸気温度THAが所定温度T2より高くなっており(ステップS103:YES)、且つ車速SPDが所定速度より高いと判断される場合には(ステップS104:YES)、各ヒータ310,320,330の作動が停止される(ステップS105)。この場合には、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離している可能性が低く、吸気温度THAが高いことをもって尿素水温度が高いことを適正に判断することができるとして、各ヒータ310,320,330の作動が停止される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)吸気温度THAと尿素水温度とが乖離しているとする条件が成立しているときには、各ヒータ310,320,330の作動を継続するようにした。そのため、尿素水の凍結を抑えるべく各ヒータ310,320,330を適切に作動させることができる。
【0065】
(2)車速SPDが所定速度以下のときに、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離しているとする条件が成立しているとして、各ヒータ310,320,330の作動を継続するようにした。そのため、車両が低速で走行していることや停止していることをもって、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していることを適正に判断することができ、その判断に基づき各ヒータ310,320,330を適切に作動させることができる。
【0066】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・所定温度T1,T2は、尿素水の凍結を的確に抑えることができるのであれば、任意に変更することができる(ただし、T1≦T2)。
【0067】
・ヒータ制御処理(
図4)の所定速度(ステップS104)は、吸気温度THAと尿素水の温度とが乖離している状況であることを適正に判断することができる温度であれば、任意に変更することができる。
【0068】
・ヒータ制御処理(
図4)の所定速度(ステップS104)を、一定速度にすることに限らず、前述した再生処理の実行の有無に応じて可変設定することができる。具体的には、再生処理が実行されるときに、同再生処理が実行されないときと比較して、所定速度を高い速度にしてもよい。再生処理が実行されて排気温度が高くなっているときには、エンジン1の周囲の温度が高くなり易く、吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAも高くなり易い。そのため、エンジン1の放射熱による影響を十分に小さくするために必要な走行風の風量も多いと云える。上記装置によれば、再生処理の実行時に、所定速度を高い速度にすることによって、各ヒータ310,320,330の作動停止が禁止されてその作動が継続されるようになる車速SPDの範囲を高速側に拡大することができる。これにより、誤って各ヒータ310,320,330の作動が停止されることを的確に抑えることができるため、それらヒータ310,320,330を適切に作動させることができる。なお、再生処理の実行の有無に応じて所定速度を可変設定することに限らず、エンジン1の排気温度を上昇させる昇温制御の実行の有無に応じて所定速度を可変設定すれば、上記装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
図5に、そうしたヒータ制御処理の具体例を示す。
図5のフローチャートに示される一連の処理のうち先の
図4に示す処理と同一の処理については同一の符号を付して示し、その詳細な説明は割愛する。
図5に示すように、この処理では、各ヒータ310,320,330の作動時において(ステップ101:YES)、吸気温度THAが所定温度T2より高くなると(ステップS103:YES)、再生処理が実行されているか否かが判断される(ステップS201)。そして、再生処理の非実行時には(ステップS201:NO)、所定値V1(例えば5km毎時)が所定速度として設定される(ステップS202)。一方、再生制御の実行時には(ステップS201:YES)、所定値V2(例えば10km毎時、ただしV2>V1)が所定速度として設定される(ステップS203)。その後、車速SPDが所定速度より高いことを条件に(ステップS104:YES)、各ヒータ310,320,330の作動が停止される(ステップS105)。
【0070】
・ヒータ制御処理(
図4)のステップ104の処理の所定速度を、車速SPDとエンジン回転速度NEとの関係に応じて可変設定してもよい。
図6に、そうしたヒータ制御の具体例を示す。
図6のフローチャートに示される一連の処理のうち先の
図4に示す処理と同一の処理については同一の符号を付して示し、その詳細な説明は割愛する。
図6に示すように、この処理では、各ヒータ310,320,330の作動時において(ステップ101:YES)、吸気温度THAが所定温度T2より高くなると(ステップS103:YES)、エンジン回転速度NE、車速SPD、予め定められた比例定数K1に基づいて、演算式(「所定速度」=K1×NE/SPD)から所定速度が算出される(ステップS301)。そして、この所定速度より車速SPDが高いことを条件に(ステップS104:YES)、各ヒータ310,320,330の作動が停止される(ステップS105)。
【0071】
車速SPDが同一であっても、エンジン回転速度NEが高い高負荷運転時では、エンジン回転速度NEの低い低負荷運転時と比較して排気温度が高いため、吸気温度センサ23により検出される吸気温度THAが高くなり易く、同吸気温度THAと尿素水温度とが乖離し易い。上記装置によれば、そうした車速SPDとエンジン回転速度NEと排気温度との関係に応じて所定速度を設定することができるため、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していることを適正に判断することができる。そして、この判断に基づいて、尿素水の凍結を抑えるべく各ヒータ310,320,330を適切に作動させることができる。なお、こうした車速SPDとエンジン回転速度NEとに基づく所定速度の算出を、演算式を用いて行うことに代えて、演算マップを用いて行うようにしてもよい。
【0072】
・各ヒータ310,320,330の作動を継続する条件を、車速SPDが所定速度以下であること(
図4のステップ104:NO)といった条件に代えて、
図7に示すように、吸気温度THAと外気温度THoutとの差ΔT(THA−THout)が所定温度(例えば5℃)以上であること(ステップS401:NO)といった条件にしてもよい。こうした装置によれば、エンジンルーム1aの外部に設けられた尿素水供給機構200の雰囲気の指標値として外気温度THoutを用いることができ、この外気温度THoutと吸気温度THAとの差が大きくなっていることをもって、吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していることを精度よく判断することができる。なお、こうした装置においては、外気温度THoutを検出する外気温度センサをエンジンルーム1aの外部、あるいはエンジンルーム1aの中でもエンジン1の放射熱の影響を受けにくい部位に設けることが望ましい。
【0073】
・各ヒータ310,320,330の作動を継続する条件を、車速SPDが所定速度以下であること(
図4のステップS104:NO)といった条件にすることに代えて、
図8に示すように、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度(例えば、800回転/分)以下であること(ステップS501:NO)といった条件にしてもよい。ここで、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度以下であるときには、車速SPDがごく低い状況になっている可能性が高い。上記装置によれば、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度以下であることによって車両が低速で走行していることや停止していることを判断し、この判断に基づいて吸気温度THAと尿素水温度とが乖離していることを適正に判断することができる。なお、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度以下であることといった条件に代えて、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度より若干高い所定速度以下であること(エンジン回転速度NE≦所定速度)といった条件を設定してもよい。
【0074】
また、エンジン回転速度NEと比較する比較値(アイドル回転速度、あるいは所定速度)を、一定速度にすることに限らず、前述した再生処理の実行の有無に応じて可変設定することができる。具体的には、前述した再生処理が実行されるときに、同再生処理が実行されないときと比較して、比較値を高い速度にしてもよい。こうした装置によれば、再生処理の実行時に、比較値を高い速度にすることによって、各ヒータ310,320,330の作動が継続されるようになるエンジン回転速度NEの範囲、ひいては車速SPDの範囲を高速側に拡大することができる。これにより、誤って各ヒータ310,320,330の作動が停止されることを的確に抑えることができるため、それらヒータ310,320,330をより適切に作動させることができる。
【0075】
・各ヒータ310,320,330の作動を継続する条件として、車速SPDが所定速度以下であること(
図4のステップ104:NO)といった条件を設定することに代えて、あるいは併せて、ポンプ回転速度NEPが所定速度以下の状態が所定期間にわたり継続されていることといった条件を設定するようにしてもよい。なお上記所定速度としては、尿素水が凍結していないときにポンプ回転速度NEPがとり得る速度範囲の下限より低い速度が設定される。
【0076】
尿素水の状態が凍結状態に近いときほど同尿素水の粘度が高いために、これを送液するポンプ220の負荷が大きくなる。そして、このポンプ220は、負荷が大きいときにはポンプ回転速度NEPが低くなる。上記装置によれば、ポンプ回転速度NEPが低いことをもって尿素水の凍結を判定して、各ヒータ310,320,330の作動を継続させることができる。そのため、各ヒータ310,320,330を適切に作動させて尿素水の凍結を抑えることができる。
【0077】
図9に、そうした条件を含む変形例のヒータ制御の実行手順を示す。
図9に示すように、この処理では、車速SPDが所定速度より高いときに(
図4のステップS104:YES)、ポンプ回転速度NEPが所定速度以下の状態が継続されているか否かが判断される(ステップS601)。そして、ポンプ回転速度NEPが所定速度以下である状態が所定期間にわたって継続されているときには(ステップS601:YES)、各ヒータ310,320,330の作動が停止されずに継続される。一方、ポンプ回転速度NEPが所定速度以下である状態の継続期間が所定期間未満であるときやポンプ回転速度NEPが所定速度より高いときには(ステップS601:NO)、各ヒータ310,320,330の作動が停止される(
図4のステップS105)。
【0078】
・吸気温度THAが所定温度T1より低いときに(
図4のステップS101:YES),各ヒータ310,320,330の作動を開始し(ステップS102)、外気温度THoutが所定温度T2より高いときに、各ヒータ310,320,330の作動を停止するようにしてもよい。そして、各ヒータ310,320,330の作動時において外気温度THoutを検出する外気温度センサが故障しているときに、各ヒータ310,320,330の作動を継続してもよい。
【0079】
・各ヒータ310,320,330の作動を継続する条件として、以下の[条件1]〜[条件4]を適宜組み合わせた条件を設定してもよい。
[条件1]車速SPDが所定速度以下であること。
[条件2]吸気温度THAと外気温度THoutとの差ΔT(THA−THout)が所定温度以上であること。
[条件3]エンジン回転速度NEが所定速度以下であること。
[条件4]ポンプ回転速度NEPが所定速度以下の状態が所定期間にわたり継続されていること。
【0080】
また、それら条件が満たされた状態が所定期間にわたり継続されたときに、各ヒータ310,320,330の作動を継続するようにしてもよい。
・上記実施形態では、尿素水を加熱する加熱部(タンクヒータ310、ポンプヒータ320および通路ヒータ330)として電気式のヒータを利用するようにした。この他の加熱部として、例えばポンプ220や供給通路240、あるいはタンク210に対して加熱媒体(例えば、エンジン1の冷却水や潤滑オイルなど)による加熱が可能な媒体経路を設けるようにしてもよい。この装置では、媒体経路内に加熱媒体を循環させることによって加熱部が作動し、その加熱媒体の循環を停止させることによって加熱部の作動が停止する。
【0081】
・上記実施形態の添加剤供給装置は、タンクヒータ310、ポンプヒータ320および通路ヒータ330のうちの何れか1つが設けられていない装置や、何れか2つが設けられていない装置にも適用することができる。
【0082】
・添加剤として尿素水を使用するようにしたが、この他の添加剤を使用するようにしてもよい。