特許第6104461号(P6104461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104461濃縮セレンイオン注入のための供給源および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104461
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】濃縮セレンイオン注入のための供給源および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/02 20060101AFI20170316BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20170316BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20170316BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01J27/02
   H01J37/08
   H01J37/317 Z
   H01L21/265 Z
   H01L21/265 603A
【請求項の数】22
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-512042(P2016-512042)
(86)(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公表番号】特表2016-524273(P2016-524273A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】US2014036392
(87)【国際公開番号】WO2014179585
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】61/818,706
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/267,390
(32)【優先日】2014年5月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイダーマン、ダグラス、シー.
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、アシュウィニ、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ロイド、エイ.
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−244071(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/106750(WO,A1)
【文献】 特開平08−288233(JP,A)
【文献】 特開平05−225923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097882(US,A1)
【文献】 特開昭62−95820(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/137872(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26、37/08、37/30−37/36、
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンを注入する方法であって、
濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質であって、複数のセレン質量同位体を有する材料を選択するステップと、
前記複数のセレン質量同位体から、天然存在比のレベルを超える濃縮レベルで前記前駆体物質に含有されている特定のセレン質量同位体を選択するステップと、
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質を、前記選択された濃縮されたセレン系ドーパント前駆体に適合している貯蔵および配送容器内に提供するステップと、
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質を、気相で、前記貯蔵および配送容器から引き出すステップと、
前記物質をイオン源まで既定の流れで流すステップと、
前記特定のセレン質量同位体のイオンを生成するために前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質をイオン化するステップと、
前記イオン源から前記イオン化された特定のセレン質量同位体を引き出すステップと、
前記イオン化された特定のセレン質量同位体を基板に注入するステップと、を備え、
前記特定のセレン質量同位体は、対応する天然存在比のセレンドーパント前駆体物質における前記特定のセレン質量同位体の濃度よりも高い濃度に濃縮され、これにより、前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質の既定の流量が、天然存在比のセレン系ドーパント前駆体物質の対応する流量よりも少なくできる、方法。
【請求項2】
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体は、金属セレン、酸化セレン、六フッ化セレン、セレン化水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体はセレン化水素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体の既定の流量は、濃縮されていないセレン化合物の流量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記濃縮されたセレン化水素は、天然に存在するレベルより高い濃縮濃度である質量80のセレン同位体を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質は、天然存在比のレベルよりも少なくとも10%高く前記特定のセレン質量同位体が濃縮されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記濃縮レベルは天然存在比のレベルよりも50%高い、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質は、前記セレン同位体のうちの1つが約10%以上濃縮された六フッ化セレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮された六フッ化セレンは、前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質とともに並流されるかまたは連続的に流される希釈剤とともにイオン源に流される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記貯蔵および配送容器から前記濃縮された六フッ化セレンを引き出すステップをさらに備え、前記容器は減圧配送分配システムである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記濃縮された六フッ化セレンからの前記イオン化された特定のセレン質量同位体を注入した後に、ハロゲン化物含有ドーパントガスが前記イオン源チャンバ内に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記希釈剤は水素化物を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
セレン系ドーパントガス組成物用の供給源であって、
天然に存在する質量同位体のうちの1つが濃縮された気体セレンドーパント含有ガス原料と、
その内部容積の中に加圧状態で前記濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料を保持するための減圧配送および貯蔵装置であって、当該配送装置は排出流路と流体連通しており、当該配送装置は、前記排出流路に沿って達成される減圧条件に応答して当該装置の内部容積からの前記濃縮されたセレン系ドーパント含有ガス原料の制御流れを可能にするように作動される、減圧配送および貯蔵装置と、
を備える供給源。
【請求項14】
前記セレンドーパントガス源は濃縮された六フッ化セレンである、請求項13に記載の供給源。
【請求項15】
前記減圧配送および貯蔵装置内に前記セレンドーパント含有ガスと予混合された希釈剤またはトレーサガスをさらに備える、請求項13に記載の供給源。
【請求項16】
、Xe、Ar、Kr、Ne、N、PH3、およびこれらの混合物からなる群より選択される希釈剤をさらに備える、請求項15に記載の供給源。
【請求項17】
ホスフィン、水素、アルシン、ゲルマン、およびシランから成る群より選択されたトレーサガスをさらに備える、請求項15に記載の供給源。
【請求項18】
希釈剤またはトレーサガスを備える二次減圧貯蔵および配送装置をさらに備える、請求項13に記載の供給源。
【請求項19】
イオン注入プロセスで使用するためのセレン含有ドーパント組成物であって、
対応する天然存在比のセレンドーパント前駆体物質における前記特定のセレン質量同位体の濃度よりも高い濃度までその天然に存在する質量同位体のうちの1つが濃縮されたセレン含有ドーパントガス原料であって、前記セレン含有物質は、ガス相で貯蔵および配送され、これによって気化器からの貯蔵および配送がないことを特徴とする、セレン含有ドーパントガス原料
を備える、セレン含有ドーパント組成物。
【請求項20】
金属セレン、セレン酸化物、六フッ化セレン、セレン化水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項19に記載のセレン含有ドーパント組成物。
【請求項21】
六フッ化セレンを備える、請求項19に記載のセレン含有ドーパント組成物。
【請求項22】
トレーサまたは希釈剤物質をさらに備える、請求項21に記載のセレン含有ドーパント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンイオン注入中のイオン源の性能を改善する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体/マイクロエレクトロニクス製造における重要なプロセスである。イオン注入プロセスは、集積回路製造において、半導体ウエハにドーパント不純物を導入するために使用される。一般的に言えば、半導体応用に関連して、イオン注入は、基板材料の物理的、化学的、および/または電気的特性を変更するために、広くドーパント不純物とも称されるドーパント種からのイオンの半導体基板材料への導入を伴う。所望の深さにドープ領域を形成するために、所望のドーパント不純物が半導体ウエハ内に導入される。ドーパント不純物は、電気キャリアを作り出し、それによって半導体ウエハ材料の導電率を変化させるために、半導体ウエハ材料と結合するように選択される。導入されるドーパント不純物の濃度は、ドープ領域の導電率を決定する。全体で半導体デバイスとして機能する、トランジスタ構造、絶縁構造、およびその他の電子構造を形成するために、必然的に多くの不純物領域が作成される。
【0003】
イオン源は、ドーパント種からのイオン種の明確な(well-defined)イオンビームを発生するために使用される。イオン源は、イオン注入システムの重要な構成要素であり、注入プロセスの間に注入されることになるドーパント種をイオン化するのに役立つ。ドーパントイオンは一般に、素となるドーパント種から導出される。イオン源は、素となるドーパントガスから導出されるイオン種のうちの一種の明確なイオンビームを発生する。イオン源は、タングステン(W)またはタングステン合金で作られたフィラメントまたはカソードであってもよい。イオン注入機の中で素となるドーパント種をイオン化するために、フィラメントに電流が印加される。素となるドーパント種は、その後所与の基板に注入される、対応するイオン種に解離する。
【0004】
現在の半導体デバイス技術は、様々なドーパント種を利用している。特定の用途において、半導体ウエハの特定のセクションまたは領域へのセレン(Se)イオンの注入は、デバイスの機能を強化するために広範に用いられるドーパント導入法として、出現してきた。たとえば、シリサイド接点上へのSe注入は、nMOSデバイスにおける接触抵抗を低減し、その性能を改善すると報告されている。
【0005】
今日、業界では、Se金属またはSeO2の形態のSe含有固体源をイオン注入に利用している。しかしながら、Se含有固体源を用いるSeイオンの効果的な注入のために数多くのプロセスに関する挑戦が、現在、存在している。具体的には、固体源は、イオン源アセンブリへの蒸気の運搬を可能にするのに十分な蒸気圧を有するSe含有蒸気を発生するために、気化器アセンブリおよび固体の十分な加熱を必要とする。しかしながら、固体源は、安定した動作を妨げる不十分なフロー制御を呈する。加えて、ユーザがSe注入プロセスを開始できるまでに、気化器アセンブリが所望の温度まで加熱されるために十分な立ち上げ時間が必要とされる。同様に、Se注入プロセスの完了時に生じる十分なクールダウンのため、動作不能時間が許容および考慮されなければならない。固体源を利用するときに長い時間が要求される結果、著しい生産性の損失が生じる可能性がある。
【0006】
固体前駆体に関わる問題の観点から、Se含有ガス源が利用されてきた。H2Seは、Se注入向けに一般的に知られているガス源である。しかしながら、出願人らは、H2Seの利用が、イオン源の短寿命を招く可能性のあるSe含有堆積物をイオン注入機器の中に生じさせることを見出した。その結果、高頻度の間隔でイオン源の保守が必要とされ、イオン注入機の動作不能時間、および短縮された生産時間という結果をもたらしている。
【0007】
代替として、SeO2が利用されてきた。しかしながら、酸素の存在は酸素によるポイゾニングを招く可能性があり、セレンイオン注入中の供給源の寿命を限定または短縮する可能性がある。
【0008】
さらに、Se前駆体ドーパント物質は人間にとって有毒であり、したがってSe前駆体物質の取り扱いは、接触や吸入を介しての曝露を予防するように、注意深く実行されなければならない。イオン源の中でイオン化されるSe種の供給のために使用される前駆体Seドーパント物質の多くは有毒である。このような物質の取り扱いは、曝露を予防するように注意深く行われる必要があり、このような物質の取扱量を最小限に抑えることが有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、その欠点を考慮すると、Seイオン注入を実行するために成功しそうなドーパント源はない。したがって、イオン源の保守サイクルの間隔を延長し、ならびに、Seイオン注入中に安全で信頼できるやり方でのイオン注入を斟酌するために、必要とされるSeドーパント物質の量を制限するという、満たされていない要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、様々な組み合わせにおいて以下の態様のいずれを含んでもよく、また本明細書または添付図面において以下に記載されたその他いずれの態様を含んでもよい。
【0011】
第一の態様において、濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質であって、複数のセレン質量同位体を有する材料を選択するステップと;前記複数のセレン質量同位体から、天然存在比のレベルを超える濃縮レベルで前記前駆体物質に含有されている特定のセレン質量同位体を選択するステップと;前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質を、前記選択された濃縮されたセレン系ドーパント前駆体に適合している貯蔵および配送容器内に提供するステップと;前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質を、気相で、前記貯蔵および配送容器から引き出すステップと;イオン源まで既定の流れで前記物質を流すステップと;前記特定のセレン質量同位体のイオンを生成するために前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質をイオン化するステップと;前記イオン源から前記イオン化された特定のセレン質量同位体を引き出すステップと;前記イオン化された特定のセレン質量同位体を基板に注入するステップと、を備え;前記特定のセレン質量同位体は、対応する天然存在比のセレンドーパント前駆体物質における前記特定のセレン質量同位体の濃度よりも高い濃度に濃縮され、これにより、前記濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質の既定の流量が、天然存在比のセレン系ドーパント前駆体物質の対応する流量よりも少なくできる方法が提供される。
【0012】
第二の態様において、天然に存在する質量同位体のうちの1つが濃縮された気体セレンドーパント含有ガス原料と;その内部容積の中に加圧状態で前記濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料を保持するための減圧配送および貯蔵装置であって、当該配送装置は排出流路と流体連通しており、当該配送装置は、前記排出流路に沿って達成される減圧条件に応答して当該装置の内部容積からの前記濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の制御流れを可能にするように作動される、減圧配送および貯蔵装置と、を備えるセレン系ドーパントガス組成物の供給源が提供される。
【0013】
第三の態様において、対応する天然存在比のセレンドーパント前駆体物質における前記特定のセレン質量同位体の濃度よりも高い濃度までその天然に存在する質量同位体のうちの1つが濃縮されたセレン含有ドーパントガス原料であって、前記セレン含有物質は、ガス相で貯蔵および配送され、これによって気化器からの貯蔵および配送がないことを特徴とする、セレン含有ドーパントガス原料を備えるイオン注入プロセスで使用するためのセレン含有ドーパント組成物が提供される。
【0014】
有利なことに、本発明のシステムは、商業的に入手可能なシステム構成要素を利用して構築することが可能であり、これにより、システムの全体的な組み立ておよびその使用方法を可能にし、簡素化する。イオン注入プロセスの態様は、標準的な技術または機器を用いて実行することが可能である。
【0015】
本発明の目的および有利な効果は、全体を通じて類似番号が同じ特徴を表す添付図面と関連付けて、その好適な実施形態の以下の詳細な説明からより良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の原理を組み込んだイオン注入機を示す図。
図2】注入システムの中での図1のイオン注入機を示す図。
図3】Seイオン注入用ドーパントガス源として、天然に存在するH2Seを利用するときの、イオン源チャンバの様々な構成要素上に蓄積する堆積物の性質を示す図。
図4】天然に存在するH2Seおよび濃縮されたSeF6を利用してSeを先に注入したときの、Siイオン注入の効果の比較のグラフ。
図5】Seイオン注入用ドーパントガス源として濃縮されたSeF6を利用するときの、イオン源チャンバの様々な構成要素上に蓄積する堆積物の性質を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な要素の関係および機能は、以下の詳細な説明によってより良く理解される。この詳細な説明においては、本開示の範囲内における様々な並べ替えおよび組み合わせでの特徴、態様、および実施形態が意図されている。したがって本開示は、これら特定の特徴、態様、および実施形態、またはこれらのうちの選択された1つ以上の、そのような組み合わせおよび並べ替えのいずれかを備えるもの、これらから成るもの、または本質的にこれらから成るものとして規定され得る。
【0018】
本明細書において使用される際に、別途明示されない限り、すべての濃度は体積パーセント(vol%)で表される。
【0019】
本発明は、注入のためにイオン源に導入されなければならないSe前駆体物質の量を最小化することによって、イオン源ツールの生産性が改善可能であることを認識している。本発明は、特定の質量同位体の99.99%存在比以下のSeの6つの質量レベルのうちのいずれか1つを、その天然存在比レベル(下記表1に示される)を超えるまで同位体濃縮することを伴う。
【表1】
【0020】
本明細書において使用される際に、および明細書全体を通じて、用語「同位体濃縮された」および「濃縮された」ドーパント種は、ドーパント種が天然に存在する同位体分布とは異なる質量同位体の分布を包含し、これにより質量同位体のうちの1つが天然に存在しているレベルで存在するよりも高い濃縮レベルを有することを意味するために、交換可能に使用される。一例として、60%の80Seは、天然に存在している80Seが49.82%の天然存在比で質量同位体80Seを含有する一方で、60%の濃縮度で質量同位体80Seを含有する同位体濃縮されたまたは濃縮されたドーパント種を指す。
【0021】
濃縮されたセレンイオンは、セレン金属、二酸化セレン、三酸化セレン、六フッ化セレン、およびセレン化水素を含むがこれらに限定されない様々なドーパント種前駆体物質から導出することができる。同位体濃縮されたセレン物質の配送の好適な方法はガス相でのものであり、濃縮セレン化水素、またはより好ましくは濃縮六フッ化セレンなどの前駆体物質を利用する。しかしながら、濃縮が気体物質に限定されないことは、理解されるべきである。セレン金属、二酸化セレン、および三酸化セレンなどの固体源もまた、様々な同位体濃縮レベルで提供されることが可能である。
【0022】
本発明では、100%以下のいずれかの濃縮値までSeのいずれかの質量同位体を濃縮することが意図される。一実施形態において、49.92%の存在比の量で天然に存在する80Seは、50〜60%から濃縮されることが可能である。別の実施形態において、濃縮レベルは60〜70%、70〜80%、80〜90%、または90〜100%の範囲であってもよい。
【0023】
図1および図2を参照すると、本発明の原理による例示的なイオン注入装置100が示されている。具体的には、一例において、図1のイオン源装置100は、その安定質量同位体74、76、77、78、80、または82のうちの1つが天然存在比を超えて同位体濃縮されたSeイオンを注入するための電子ビームを発生するために使用されることが可能である。濃縮されたセレン系ドーパント前駆体物質が選択される。Se系ドーパント物質は、たとえばセレン金属、二酸化セレン、三酸化セレン、六フッ化セレン、またはセレン化水素など、いくつの適切な前駆体からでも選択されることが可能である。次に、特定のセレン質量同位体74、76、77、78、80、または82が選択され、これによって特定のセレン質量同位体は、表1に示される天然存在比を超える、既定の濃縮レベルで前駆体物質に含有される。
【0024】
前駆体含有原料、特定のSe質量同位体、および特定の濃縮レベルの選択の後、濃縮されたSe系前駆体ドーパント物質が、気体の形態で減圧(sub-atmospheric)貯蔵および配送装置201(図2)から導入される。減圧配送装置201は、典型的には高圧シリンダに関連する漏れまたは致命的な破裂を生じる危険性を最小化または排除しながら、装置201の中に加圧状態でドーパント物質を保持するように設計されている。装置は、装置201の排出流路に沿って減圧条件が達成されたときにのみ、下流のイオン源チャンバ100プロセスへの濃縮されたSe系前駆体ドーパント物質の制御された流れを許容するように、真空作動させられる。濃縮されたSe系前駆体ドーパント物質の排出は、装置の外側に適切な排出条件が存在するときにのみ行われ、これにより、貯蔵および配送装置からの毒性物質の意図しない放出を回避する。このようにして、本発明は、毒性Se系前駆体ドーパント物質の安全かつ信頼できる取り扱いを可能にする。
【0025】
物質の濃縮は、ストリーム102がその濃縮されていない類似物と比較して少ない流量で導入されることを可能にし、これによって特定のセレン質量同位体は、対応する濃縮されていないセレンドーパント前駆体物質におけるその特定のセレン質量同位体の濃度よりも高い濃度まで濃縮される。本明細書において使用される際に、および明細書全体を通じて、用語「濃縮されていない」は「天然存在比レベルの」と交換可能に使用され、安定Se同位体のいずれも表1に示される天然存在比レベルを超えて濃縮されてはいないことを意味するよう意図されることは、理解されるべきである。たとえば、注入用に選択された質量同位体が80Seである場合、天然存在比レベルのこのような物質は49.82%の80Seを含有する。これは、例として、天然存在比レベルで所与の原料(たとえば、HSe)について4sccmの流量を必要とする注入プロセスは49.82%の80Seしか備えないが、100%まで濃縮された80Seを有する原料が当量の80Seイオンを生成するために1.99sccmの同等流量を有することを意味する。この例において、天然存在比レベルでの材料と比較して、100%濃縮された80Se物質を利用することによって実効的な流量はおよそ50%減少させられることが可能である。様々な同位体の様々な濃縮レベルが特定のセレン同位体の所与の要件を達成するために必要とされる原料の流量に影響を及ぼす、その他の例も想定される。このようにして、本発明は、その濃縮されていない類似物と比較して少ないガス消費量を利用して同等のSeイオン注入投与量を達成する能力を可能にする。
【0026】
図1に示されるイオン源100は、ソースフィラメント114と、濃縮されたSe前駆体物質をその対応するSeイオンにイオン化するためのイオン源の役割を果たす間接加熱カソード(IHC)115とを含む様々な構成要素を有する。たとえばフリーマン(Freeman)源、バーナス(Bernas)源、およびRFプラズマ源を含む当該技術分野において既知のその他適切なタイプのイオン源が使用されてもよいことは、理解されるべきである。
【0027】
電源(図示せず)はカソード115に近接して位置決めされたタングステン系フィラメント114を抵抗加熱する。フィラメント114はカソード115に対して負にバイアスされてもよい。フィラメント114を抵抗加熱するために、電源を通じてフィラメント114に電流が印加される。アークチャンバ壁111からカソード115を電気的に絶縁するために、絶縁体118が提供される。カソード115は、Seの必要とされる注入投与量を達成するために、濃縮されたSe前駆体物質の適度なイオン化を維持する。
【0028】
より少ない総量の濃縮されたSe前駆体物質がチャンバ103に導入される必要があるので、カソード115はより少ない総量のSeイオンをイオン化する。より少ない総量のSeイオンが、カソード115を含むイオン源構成要素を物理的にスパッタリングするために利用可能となる。したがって、イオン源の寿命および性能が改善される。
【0029】
まだ図1を参照すると、カソード115からの放出電子は、チャンバ112内にプラズマ環境を生み出すために、濃縮されたSe前駆体物質を加速およびイオン化する。リペラ電極116は負電荷を蓄積し、衝突して濃縮されたSe前駆体物質のイオン化を持続するように、電子を濃縮されたSe前駆体物質に向かって反発して戻す。このようにして、プラズマ環境は、イオン源100の安定性を維持するのに十分なままの圧力で、アークチャンバ112内に維持される。
【0030】
リペラ電極116は好ましくは、チャンバ112の中で濃縮されたSe前駆体物質のイオン化を維持するために、カソード115に対して実質的に正反対に向かい合って構成されている。アークチャンバ壁111は、そこを通じて明確なイオンビーム121がアークチャンバ112から引き出される引き出し開口117を含む。引き出しシステムは、引き出し開口117の前に位置決めされた、引き出し電極120と抑制電極119とを含む。引き出しおよび抑制電極120、119はいずれも、明確なイオンビーム121の引き出し用の引き出し開口117とそろえられた、それぞれの開口を有する。
【0031】
図2は、ビームラインイオン注入システム200に組み込まれた、図1のイオン源装置100を示す。55%以上の濃縮されたSe前駆体物質が、ガスボックス201から導入される。濃縮されたSe前駆体物質は、すでに記載されたように濃縮されたSe前駆体物質をイオン化するためにエネルギーがチャンバ内に導入されるイオン源チャンバ100の中に導入される。マス・フロー・コントローラとバルブとを含むフロー制御装置219が、その濃縮されていない類似物と比較して少ない流量で、濃縮されたドーパントガスの流れを制御するために使用される。
【0032】
安定質量同位体のうちの1つが濃縮された所望のSeイオンビームの発生に際し、イオンビーム引き出しシステム201が、所望のエネルギーおよびビーム電流のイオンビーム121の形態で、イオン源チャンバ113からSeイオンを引き出すために使用される。引き出しは、引き出し電極を越えて高電圧を印加することによって、実行可能である。引き出されたビーム221は、注入されるSe種を選択するために、質量分析器/フィルタ205を通して搬送される。フィルタされたイオンビーム207はその後、加速/減速206され、加工物209へのSeドーパント原子種の注入のために末端ステーション210内に配置された標的加工物209の表面に運搬されることが可能である。ビームのSeイオンは、所望の電気的および物理的特性を有する領域を形成するために、加工物209の表面に衝突して特定の深さまで貫通する。
【0033】
濃縮されたSeドーパント種の少ない流量のおかげで、排気物質の削減が実現可能である。具体的には、上記の例で記されたように、天然存在比レベルでのセレン物質の4sccmの流量では、注入のために80Seが選択されているとき、その他の同位体(74Se、76Se、77Se、78Se、および82Se)は総流量の50.18%を占める。この例において、セレンの流量の50%超は廃棄物であり、この物質は毒性が高いので、収集および除去されなければならない。除去およびその後の廃棄処理は高額で時間もかかる。したがって、このタイプの廃棄物ストリームの削減は環境に優しく、毒性物質への人間の曝露の可能性を低減し、持続可能性を強化する。
【0034】
加えて、濃縮されたセレン物質の利用はツールの動作不能時間および消耗品費の削減を伴う。固体系Se源とは異なり、Seガス系ドーパント源は立ち上げおよび動作不能時間のシーケンスを必要とせず、これにより生産性における著しい利得を可能にする。イオン注入機のイオン源は定期的な保守を必要とするが、保守サイクルは、イオン化されている種、およびイオン源に導入されるこれらの種の量に依存する。80Seが注入用の望ましい質量同位体として選択される上記の例において、100%の80Seを含有する濃縮物質は、天然存在比レベルでのセレン物質に必要とされる流量の〜50%を必要とする。イオン源への原料の流量がより少なくなった結果、イオンチャンバ100、カソード115、アノード116、および引き出し開口117の壁に堆積および/またはスパッタリングされるイオンが減少する。加えて、フッ素含有種を有するSe原料を選択するとき、タングステンで形成されたイオン源チャンバ構成要素のエッチングが生じる可能性があり、通常これは問題となる。しかしながら、本発明の原理によれば、Se濃縮前駆体物質に関連する流量がより少ないので、このような問題となるエッチング反応を低減することができる。
【0035】
したがって、より低い流量でプロセスを動作させることの正味の効果は、保守サイクル間の時間がより長くなること、消耗品であるイオンチャンバ構成要素の交換の必要性が低下すること、ならびに人的曝露に関する安全上の問題の低減である。
【0036】
本発明では、いかなるタイプの濃縮されたSe含有化合物をも意図されている。特定の濃縮されたSe含有物質の選択はいくつかの検討事項に依存するが、そのうちのいくつかは、必要とされるビーム電流レベルおよびその他のイオン源動作パラメータ;Seイオン投与量要件;1つ以上の希釈ガスの存在;流量の動作上の制約;およびイオン源が動作するモード(すなわち、専用モードか非専用モードか)を含む。一例において、濃縮されたH2Seが、選択的にフッ化物ガスまたはその混合物などの希釈ガスの存在下で、利用されてもよい。濃縮されたH2Seは、天然に存在するH2SeからのSeイオン注入と比較して、Se含有堆積物の量を減少させる。
【0037】
好適な実施形態において、濃縮されたセレン含有物質はSeF6である。濃縮されたSeF6は選択的に、いずれのタイプの適切な水素含有ガスとも組み合わせて使用されることが可能である。以下の実施例は、ビーム電流レベルを著しく低下させることなく最小限のフィラメントまたはカソード重量増加が実現されるように、Se含有堆積物を低レベルまで驚くほど減少させる能力をSeF6が有することを示している。濃縮されたSeF6は、特定のレベルの濃縮されたH2Seよりも目に見えて大きい程度まで、Se含有堆積物の量および性質を低減する。
【0038】
濃縮されたSeF6は、本発明による好適なSe含有物であるものの、その検出は難易度が高い。一般的に言えば、イオンチャンバなどのプロセスに供給されるとき、天然に存在するSeF6の漏れを監視するために、通常は熱分解装置に基づく検出機器が使用されてきた。しかしながら、このような検出機器を現在使用されているイオン注入システムに組み込むことは、ハードウェア変更を必要とする可能性がある。したがって、既存のイオン注入システムを改造するために複雑な設計変更を行うよりむしろ、本発明では、水素含有ガス、または減圧源などの単一の供給源または容器内で濃縮されたSeF6と予混合されたその混合物を利用することが意図されており、これによって水素含有ガスをSeF6の漏れを検出するためのトレーサ物質として使用することが可能である。たとえば、PH3が濃縮されたSeF6と予混合され、イオン注入システム上のPH3検出器を濃縮されたSeF6の漏れを検出するために使用することが、可能である。その他の適切なトレーサガスは、一例として、水素、アルシン、ゲルマン、シランを含む。水素含有ガスの濃度およびタイプに応じて、水素含有トレーサガスは、イオン注入プロセスにおける希釈剤としても、二重に役立つことができる。
【0039】
濃縮されたSeF6を利用するときの堆積物の排除または実質的な減少は、供給源の寿命を早期に短縮することなくハロゲン化物含有ドーパントガスを引き続き利用する能力を可能にする。実施例(図4)は、この天然に存在するH2Seを驚くほど明らかにする。いかなる理論にも縛られものではないが、濃縮されたSeF6を利用するときに生成されるわずかなSe含有堆積物は、供給源の短寿命を招かずに、ハロゲン化物含有ドーパントガス源(たとえば、BF3、SiF4など)の使用に引き続き移行する能力を可能にする。実施例では、ある試験では濃縮されたSeF6、別の試験では天然に存在するH2Seを利用して80Seイオン注入を完了した後に、イオン源チャンバ内で使用される代表的なハロゲン化物含有ガスとして、SiF4を利用した。Seイオン注入中のSe含有堆積物の深刻度は、その供給源の寿命を短縮するのみならず、その後のイオン注入においてイオン源チャンバ内のSiF4のイオン化からSiイオンを注入する能力にも悪影響を及ぼした。
【0040】
本発明の別の実施形態において、濃縮されたセレン含有原料は、動作中のイオン源のその場での洗浄を容易にするために、1つ以上の物質に連続して流されるか、またはこれとともに流されることが可能である。その場での洗浄物質は、H、Xe、Ar、Kr、Ne、N、およびこれらの混合物、ならびにCF、Cなどのフッ素化された物質を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。洗浄原料は、イオンチャンバ103に加えられる個別の供給源として導入されてもよく、イオンチャンバ103内への導入に先立ってセレン原料と混合されてもよく、あるいは図2の減圧貯蔵および配送装置201内にセレン原料と予混合された状態で提供されてもよい。予混合物質の例は、水素と、その安定質量同位体のうちの1つが天然存在比レベルを超えて同位体濃縮されたセレン化水素(HSe)との混合物を含有するシリンダパッケージであろう。濃縮されたセレンとのその他の並流物質混合物もまた、本発明によって意図されている。少なくとも部分的に、特定のセレン注入プロセス条件に応じて、並流物質に対する濃縮されたセレン含有原料のいかなる混合率も使用され得る。
【0041】
濃縮されたセレン含有ドーパント組成物がガス相で供給され、これによって気化器からの貯蔵および配送の必要性が排除される。好適な実施形態において、装置の内部容積の中に濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料を加圧状態で保持する減圧配送および貯蔵装置によって、濃縮されたセレン含有原料が供給される。セレンドーパント含有原料は、好ましくは気相であり、その天然に存在する質量同位体の1つが濃縮されている。配送装置は排出流路と流体連通しており、ここで前記配送装置は、排出流路に沿って達成される減圧条件に応答して装置の内部容積からの濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の制御流れを可能にするように作動される。
【0042】
好ましくは、配送装置は真空条件下で作動させられる。このような真空作動配送装置は好ましくは、完全に貯蔵容器またはシリンダの中に設けられる。濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の減圧配送を達成するために、様々な機械設計が採用可能である。好適な実施形態において、濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の制御された流量をセレン注入のためにイオン装置に安全に配送するために、Praxair(登録商標)より販売され、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,937,895号明細書、米国特許第6,045,115号明細書、米国特許第6,007,609号明細書、米国特許第7,708,028号明細書、および米国特許第7,905,247号明細書に開示されるような、Uptime(登録商標)配送装置が、本発明において使用されてもよい。装置は、加圧シリンダの出口と連通するためのポート本体を備える。可動弁要素が、封止位置と開放位置との間で移動するように構成されている。封止位置において、弁要素は、シリンダの内部からの加圧された濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の流れを封鎖する。弁要素の下流に位置する拡張可能なダイアフラムが、ダイアフラムの内側と外側との間に圧力差が生じるまで弁要素を封止位置に保持するように弁要素の運動を制御するために、弁要素と動作可能に連結している。ダイアフラムは、大気圧以上で、流体排出路と連通して、封止されている。したがって、ダイアフラムの外側の圧力条件が減圧条件に到達したとき、ダイアフラムはその内部と外側との間の圧力差を達成し、これにより、ダイアフラムが拡張し弁要素を移動させて開放した構成にさせ、濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料がシリンダから流体排出管を通して、セレン注入が行われるイオン装置内に流入するための流路を形成する。流量制限器を、シリンダからの濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料の流れをさらに制御および制限するために、弁要素に取り付けることが可能である。有利なことに、流体排出管に沿って利用されるマス・フロー・コントローラにとって許容可能な圧力までシリンダ圧を低下させるための外部圧力調整器は必要とされない。
【0043】
上記の逆止弁配置は、流体排出路に沿った圧力が真空条件まで低下するまで、弁要素の開放を確実に防止するために設定されることが可能である。典型的なエンドユーザのイオン装置は100トール以下の減圧で動作するので、たとえば500トール以下の圧力の真空で濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料を分配することで、いかなる漏れもすぐに検出され得るイオン装置の中にしか漏れ出さないことを保証する。その結果、濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料を配送するための減圧配送装置を利用するイオン注入プロセスは、漏れがないことを確認する必要はない。
【0044】
その他の適切な減圧配送装置は、圧力調整器、逆止弁、過流防止弁、および制限流れオリフィスを様々な配置に含み得る。たとえば、濃縮されたセレンドーパント含有ガス原料のシリンダ圧を、流体排出管に沿って収容された下流のマス・フロー・コントローラに適した既定圧力に調整するために、2つの圧力調整器をシリンダの中で直列に設けてもよい。
【0045】
当業者は、濃縮されたセレンの使用を通して得られる付加的な恩恵、ならびに濃縮が80Seに限定されるものではなく、その他いずれの天然に存在する同位体の濃縮も含んでよいことを認識するだろう。加えて、濃縮レベルは、天然存在比レベルを超えて最大100%までのいずれの値にも及ぶことができる。
【0046】
比較例1(事前のSeイオン注入を伴わないSiF4)
基準試験として、イオン源チャンバ内にSeを事前に注入せずに、イオン源チャンバ内にSiF4を流した。時間関数としてのフィラメント電流を監視し、結果を図4に示している。「SiF4のみ」と指示された点線は、事前のSe注入を全く伴わないSiイオン注入中のフィラメント電流のトレンドを示す。フィラメント電流が、およそ10時間の間に20Aまで徐々に上昇することが観察された。SiF4によるSiイオン注入の間、アークチャンバ壁からのWはFイオンおよびラジカルによってエッチングされ、高温のフィラメント上に堆積された。これは徐々にフィラメントの電子放出効率を低下させ、その結果、一連の試験運転を通じてプラズマを持続させるのに十分な電子の発生を維持するために、より高い電流が必要となった。
【0047】
比較例2(天然に存在するHSe)
ドーパントガス源としてHSeを利用するSeイオン注入の間のイオン源性能を評価するための実験が行われた。表1に示されるように天然に存在するSeにおいて最も豊富な質量同位体として存在するため、イオン注入用に望ましい質量同位体として80Seを選択した。H2Seに基づくプロセスは、大投与量のSe注入の用途にとって望ましい、十分な80Se+イオンを発生することが観察された。しかしながら、一連の動作の間、アークチャンバ(図3b)およびアークチャンバの前に位置する引き出しプレート(図3a)を含むイオン源領域にSe含有堆積物が形成されることもまた、観察された。相当量のSe含有堆積物は相当量の重量増加を引き起こした。
【0048】
Seを利用する80Seイオン注入の完了後、SiF4を利用するSiイオン注入が、同じイオン源チャンバ内で行われた。比較例1と比較して、フィラメントはより速い速度でその電子放出効率を低下させ、これにより、プラズマを持続させるためにフィラメント電流をより速く上昇させることが観察された。フィラメント電流は、およそ1.5時間で20Aの上限値に到達した。フィラメントはチャンバ内にプラズマを持続させるのに十分な量の電子の発生を維持することができなかったので、注入プロセスは中断せざるを得なかった。Si注入の間、堆積したSeはアークチャンバおよび近くのイオン源領域から高速でエッチングされ、そしてフィラメント上に再度堆積されることが観察された。Siイオン源の効果の尚早な停止は、「H2Se後のSiF4」と表示された曲線によって図4に示されている。結果は、天然に存在するH2Seを利用した事前の80Seイオン注入プロセスによって、Siイオン注入が大幅な影響を受けたことを示していた。
【0049】
実施例1(濃縮されたSeF6)
キセノンおよび水素の混合物の並流と組み合わせて、ドーパントガス源として濃縮されたSeF6を利用したSeイオン注入中のイオン源性能を評価するための実験が、行われた。濃縮されたSeF6は、80AMUのSeが>90%まで濃縮された。80Seが、イオン注入に望ましい質量同位体として選択された。濃縮された80SeF6は、H2Se(比較例1)に匹敵する十分なビーム電流レベルで高投与量の80Seイオンの注入を可能にする80Se+イオンを発生した。H2Se(比較例1)とは異なり、SeF6のイオン化は、引き出しプレート(図5a)およびアークチャンバ(図5b)のイオン源領域内に著しいSe含有堆積物を生じなかった。図5aおよび図5bは最小限の堆積物を示しており、これらは試験運転に影響を及ぼさなかった。SeF6のイオン化の際に発生したフッ素イオンは、アークチャンバ壁からW成分をエッチングした。しかしながら、SeF6とともにキセノンおよび水素ガスを同時に流すことによって、エッチングは効果的に軽減および制御された。最小限の堆積物は、フィラメントのわずかな重量増加を招いた。
【0050】
次に、同じイオンチャンバ内でSiF4を利用してSiイオン注入が行われた。H2Se後のシナリオ(比較例2)とは異なり、イオン源の寿命の短縮は観察されなかった。フィラメント電流のトレンドは、事前のSe注入なしの基準のSiF4プロセス(比較例1)で観察されたトレンドと類似のものが観察された。結果は、「濃縮されたSeF6後のSiF4」と表示された曲線によって図4に示されている。結果は、濃縮されたSeF6を利用した事前の80Seイオン注入プロセスによって、Siイオン注入が影響を受けなかったことを示していた。
【0051】
本発明の特定の実施形態であると考えられるものが図示および記載されてきたが、当然ながら、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、形状および詳細において様々な修正および変更が容易になされてもよいことは、理解されよう。したがって、本発明は、本明細書に図示および記載されたそのままの形状および詳細や、本明細書に開示され以下に請求される本発明全体に達しないものにも限定されるものではないと見なされるものである。
図1
図2
図3
図4
図5