特許第6106315号(P6106315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スプレッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6106315
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】水耕栽培用ベッド
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20170316BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A01G31/00 611A
   A01G31/00 609
   A01G31/00 610
   A01G9/02 103G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-109723(P2016-109723)
(22)【出願日】2016年6月1日
【審査請求日】2016年6月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506212167
【氏名又は名称】株式会社スプレッド
(72)【発明者】
【氏名】松村 康裕
(72)【発明者】
【氏名】大門 靖史
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−023076(JP,B1)
【文献】 特開平02−195826(JP,A)
【文献】 実開昭62−045961(JP,U)
【文献】 特開平02−171123(JP,A)
【文献】 特開平10−266538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培用ベッドユニットを一方向に少なくとも2つ以上、接着剤又は溶接を施すことで連結して形成される水耕栽培用ベッドであって、
前記水耕栽培用ベッドユニットは、
対向する二枚の側板と、
前記二枚の側板を接続する底板と、
前記側板に張り合わされ、植物を植栽する植栽パネルが載置されるパネル載置部を備える補強板とを備え、
前記側板、底板及び補強板は、隣接する水耕栽培用ベッドユニットと接する当接面を有し、
前記補強板の当接面の上端部には、面取り加工を施した補強板カット部が形成されており、
前記補強板カット部は、接着剤又は溶接が施される補強板接着用ミゾを有する
ことを特徴とする水耕栽培用ベッド。
【請求項2】
前記側板および前記底板が有する当接面の辺のうち、水耕栽培用ベッドの内側にあたる辺には、接着剤又は溶接が施される側板接着用ミゾおよび底板接着用ミゾが形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用ベッド。

【請求項3】
前記水耕栽培用ベッドユニットの、
前記二枚の側板の間にもうけられ、
前記底板から前記側板と平行かつ、前記パネル載置部と略水平となる高さまで延びるパネル支持部を備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物工場などで野菜の栽培に用いられる水耕栽培用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場などの水耕栽培では、水耕栽培用ベッドに植栽パネルを複数枚載置して、水耕栽培用ベッドの一端側から他端側へと玉突き移動させながら、水耕栽培用ベッドの終端部で収穫する方法が一般に採られている。この水耕栽培用ベッドは、栽培規模が大きくなるにつれ一方向に長くなる傾向がある。
【0003】
水耕栽培用ベッドの全長が長くなると、ベッドを複数のユニットに分割して運搬し、現場で組み立てる方法が考えられる。
たとえば、下記特許文献1に記載の植物栽培槽は端部ユニットと接続ユニットとユニット間を連結する接続片から構成されており、下記特許文献2に記載の水耕栽培装置は複数の水槽分割部材から構成されている。
【0004】
特許文献1では、各ユニット間の接続部を接続片で被着し、連結部分に形成される隙間部をシリコン防水剤等の隙間埋め部材からなる防水層でふさいで栽培槽を構成している。植物育成用の栽培棚は各ユニットの段部に架け渡すように載置されるが、この時、ユニット間の防水層で凹凸が生じると、段部の高さが一定でなくなるため載置された植物育成用の栽培棚をスムーズに玉突き移動することが困難になる。
【0005】
特許文献2では、定植板を水槽の上に直接載置しており、移動用のレールなどを備えていないことから、定植板の玉突き移動は養液の水面に浮かせる方法が想定される。一般に植物の栽培に用いられる養液は植物プランクトン等の微生物の栄養源にもなりうるため、衛生管理の観点からすると、養液が定植板に接触する方法は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第318870号公報
【特許文献2】WO2013/128593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明では、水耕栽培用ベッドをユニット化しつつ、組み立てたベッド上で植栽パネルが養液に接することなく、かつパネルの玉突き移動に支障をきたさないようパネル載置部の高さが一定に保たれる水耕栽培用ベッドユニットの作成を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、水耕栽培用ベッドユニットを一方向に少なくとも2つ以上、接着剤又は溶接を施すことで連結して形成される水耕栽培用ベッドであって、前記水耕栽培用ベッドユニットは、対向する二枚の側板と、前記二枚の側板を接続する底板と、前記側板に張り合わされ、植物を植栽する植栽パネルが載置されるパネル載置部を備える補強板とを備え、前記側板、底板及び補強板は、隣接する水耕栽培用ベッドユニットと接する当接面を有し、 前記補強板の当接面の上端部には、面取り加工を施した補強板カット部が形成されており、 前記補強板カット部は、接着剤又は溶接が施される補強板接着用ミゾを有する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、底板からパネル載置部までの高さは、補強板の高さで一定に保たれる。したがって、同じ高さの補強板を備えた水耕栽培用ベッドユニット同士を連結して形成された水耕栽培用ベッドは、始端から終端までパネル載置部の高さが一定に保たれ、植栽パネルの玉突き移動に支障をきたさない。
【0010】
また、請求項1の発明では、二枚の側板に補強板が貼りあわされることによって、側面が肉厚状となる。一般に水耕栽培用ベッドには養液からの水圧がかかるため、長期間使用すると応力で側板が外側にたわんでくる。肉厚状の側面を備えることで、側板にかかる応力が小さくなり、その結果水耕栽培用ベッドを長期間使用しても変形を生じない。
【0011】
請求項2の発明は、前記側板および前記底板が有する当接面の辺のうち、水耕栽培用ベッドの内側にあたる辺には、接着剤又は溶接が施される側板接着用ミゾおよび底板接着用ミゾが形成されている、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項1に記載の水耕栽培用ベッドであって、前記水耕栽培用ベッドユニットの、前記二枚の側板の間にもうけられ、前記底板から前記側板と平行かつ、前記パネル載置部と略水平となる高さまで延びるパネル支持部を備えている、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項の発明によれば、パネル支持部によって植栽パネルが下方向から支えられ、植栽パネルが自重によって下向きに変形することを防止できる。植栽パネルを玉突き移動するためには、同じ幅の植栽パネルが載置されている必要があるため、植栽パネルの変形を防止することで、長期間の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る水耕栽培用ベッドの平面図。
図2】水耕栽培用ベッドの正面図。
図3図1の水耕栽培用ベッドの一部(始端側)を拡大した平面図。
図4図3に示したI−I線に沿った断面図。
図5図3に示したII−II線に沿った断面図。
図6-A】図6−A、図6−B、図6−Cは植栽パネルの一連の動作を示す水耕栽培用ベッドの斜視図であり、図6−Aは新しい植栽パネルを水耕栽培用ベッドに載置する前の図。
図6-B】新しい植栽パネルを水耕栽培用ベッドに載置している最中を示す斜視図。
図6-C】新しい植栽パネルを水耕栽培用ベッドに載置し終えた後を示す斜視図。
図6-A(2)】図6−Aの拡大図。
図6-B(2)】図6−Bの拡大図。
図7】水耕栽培用ベッドユニットの斜視図。
図8図7に示したIII線の部分を拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係る水耕栽培用ベッド1は、図1および図2に示すように、複数の水耕栽培用ベッドユニット2を一方向に連結し、始端側と終端側に端部壁3を有している。図示していないが、水耕栽培用ベッド1の内部には、栽培用の養液が貯留される。始端側と終端側の水耕栽培用ベッドユニット2の底板21にはパイプ孔21hがもうけられており、給水パイプ4と排水パイプ5を水耕栽培用ベッド1の外部から内部に導入できるようになっている。栽培時には、図1に示すように、植物体7を植栽した植栽パネル6を複数枚載置する。
【0017】
水耕栽培用ベッドユニット2は、図3に示すように、底板21と、対向する2枚の側板22と、側板に張り合わされた補強板23と、パネル支持部24とを備えている。 底板21と側板22と補強板23とには、それぞれ底板連結部21a、側板連結部22a、補強板連結部23aを備えており、水耕栽培用ベッド1を形成する際に底板連結部21a、側板連結部22a、補強板連結部23aは隣接する水耕栽培用ベッドユニット2に接着される。
補強板23の上部には、パネル載置部23pを備えており、植栽パネル6が載置される。
パネル支持部24は、対向する補強板23の間にもうけられており、側板22と平行になるように底板21から上方に向けて延び、その高さはパネル載置部23pと略水平である。
【0018】
端部壁3は、図4および図5に示すように、養液に接する面に水流抑止板31を有し、また、上部を切り欠いてパネル用凹部32が形成されている。
パネル用凹部32の寸法は植栽パネル6の寸法に対応しており、パネル用凹部32の幅は植栽パネル6の辺の内、水耕栽培用ベッド1に載置した際にベッドの長手方向と垂直な辺の長さと等しく、また端部壁3の上端からパネル用凹部32の上端までは植栽パネル6の厚みと等しい。
【0019】
植栽パネル6を水耕栽培用ベッド1上に載置すると、図4に示すように、各水耕栽培用ベッドユニット2のパネル載置部23pとパネル支持部24の少なくとも3か所で下から支持される。植物体7を載せた植栽パネル6は、植栽パネル6の自重と植物体の重さで下向きにたわんでくるが、3か所で支持されることでこの下向きのたわみが防止される。
【0020】
また、補強板23を側板22に張り合わすことで、水耕栽培用ベッド1の側面を肉厚状にする効果がある。水耕栽培時には水耕栽培用ベッド1の内側に養液が供給され、水耕栽培用ベッドの側面には養液の水圧がかかるが、側面が肉厚状となることでこの応力が小さくなり、側板22が外側にたわむのを防ぐことができる。
【0021】
次に、図6−A、図6−B、図6−C、図6−A(2)および図6−B(2)を参照して、水耕栽培用ベッド1上における植栽パネル6の玉突き移動について解説する。
【0022】
図6−Aに示すように、水耕栽培用ベッド1には複数枚の植栽パネル6が載置されている。植栽パネル6の始端側の面は、図6−A(2)に示すように、端部壁3のパネル用凹部32にはまっている。
【0023】
新しい植栽パネル6を載置する場合は、図6−Bおよび図6−B(2)に示すように、始端側のパネル用凹部32に沿わせて新しい植栽パネル6を嵌めこみ、水耕栽培用ベッド1の終端側に向けて押し出す。
このとき、パネル載置部23pが、水耕栽培用ベッド1の始端側から終端側まで連続して形成されており、植栽パネル6はこの連続したパネル載置部23p上を始端側から終端側に植栽パネル1枚分の距離を玉突き移動される。終端側に載置されていた植栽パネル6は、終端側の端部壁3のパネル用凹部32に沿って水耕栽培用ベッド1の外部に押し出され、ここで収穫される。
【0024】
植栽パネルの玉突き移動をスムーズにする観点から、パネル載置部23pとパネル支持部24と植栽パネル6の素材は摩擦係数が小さいものが好ましい。さらに、パネル載置部23pに、例えば、摩擦低減用のテープ等を張って植栽パネル6の玉突き移動を補助することもできる。
【0025】
次に養液の給排水について、図1図2および図5を参照しつつ解説する。
【0026】
一般的に、植物の生育の観点から、養液の成分は水耕栽培用ベッドの内部で均一であることが望ましく、一方向に長い水耕栽培用ベッドの場合、養液の流れはベッドに対し、水平方向であることが好ましい。
【0027】
本実施形態では、図5に示すように、養液を給水する給水パイプ4が、水耕栽培用ベッド1の外部から、始端側の底板21のパイプ孔21hを通じて、水耕栽培用ベッド1の内部に導入される。このとき、パイプ孔21hの直上に、端部壁3が有する水流抑止板31がもうけられている。
【0028】
水耕栽培用ベッド1内に流入した養液は、給水パイプ4を通じて水耕栽培用ベッド1の内部に流入するが、このとき水流は図5中に示した矢印のように水耕栽培用ベッド1の下から上向きとなる。端部壁3にもうけられた水流抑止板31に衝突し、水流は水耕栽培用ベッド1の水平方向に変化し、水耕栽培用ベッド1で拡散する。
【0029】
水耕栽培用ベッド1の終端側の底板21にも、図1および図2に示すように、パイプ孔21hがもうけられており、このパイプ孔21hから排水パイプ5が水耕栽培用ベッド内に導入されている。水耕栽培用ベッド1内に拡散した養液は、この排水パイプ5を通じて外部に排出される。
【0030】
水耕栽培用ベッド1の素材は、養液の成分によって変質しにくく、かつ溶け出して養液の成分に影響を与えにくいもの、例えば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂などを用いる。これは、養液の成分が植物の生長に影響を与える因子であり、とくに、植物工場等の大規模栽培の場合は、計画的かつ安定した栽培と収穫量が求められるため、養液の成分の安定性が求められるためである。
【0031】
なお、水耕栽培用ベッド1の作成に用いる水耕栽培用ベッドユニット2を、実施者は任意で増減し栽培スペースの大きさにあわせて水耕栽培用ベッド1の長さを変えることができる。
【0032】
次に、図7および図8を参照して水耕栽培用ベッドユニットの連結部を解説する。図7は、水耕栽培用ベッドユニット2の斜視図であり、図8図7中にIII線で示した部分を拡大した図である。
【0033】
水耕栽培用ベッドユニット2は底板21、側板22、補強板23はそれぞれ底板連結部21a、側板連結部22a、補強板連結部23a備えている。底板連結部21a、側板連結部22a、補強板連結部23aはそれぞれ、隣接する水耕栽培用ベッドユニット2と接する底板当接面21b、側板当接面22b、補強板当接面23bを持つ。
【0034】
図8に示すように、底板当接面21b、側板当接面22b、補強板当接面23bの辺のうち、水耕栽培用ベッド1の内側にあたる辺を削って底板接着用ミゾ21d、側板接着用ミゾ22d、補強板接着用ミゾ23dが形成されている。また、補強板当接面23bの上端部には、面取り加工を施して補強板カット部23cが形成されている。
【0035】
水耕栽培用ベッドユニット2同士を連結する際には、底板接着用ミゾ21d、側板接着用ミゾ22d、補強板接着用ミゾ23dに接着剤や溶接を施す。この接着方法は、水耕栽培用ベッドユニット2の素材に応じて実施者により選択される。
【0036】
水耕栽培用ベッドユニット2同士の高さに差が生じると、玉突き移動の際に植栽パネル6が終端側の補強板当接面23bに衝突する恐れがあるが、補強板カット部23cを設けることでこれを回避することができる。
【0037】
以上、実施の形態を挙げて本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
植物工場等に設置されてレタス等の水耕栽培を行う分野、とりわけ数千株から数万株の栽培を行う大規模な植物工場において広く利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 水耕栽培用ベッド
2 水耕栽培用ベッドユニット
21 底板
21a 底板連結部
21b 底板当接面
21d 底板接着用ミゾ
21h パイプ孔
22 側板
22a 側板連結部
22b 側板当接面
22d 側板接着用ミゾ
23 補強板
23a 補強板連結部
23b 補強板当接面
23c 補強板カット部
23d 補強板接着用ミゾ
23p パネル載置部
24 パネル支持部
3 端部壁
31 水流抑止板
32 パネル用凹部
4 給水パイプ
5 排水パイプ
6 植栽パネル
7 植物体
【要約】
【課題】水耕栽培用ベッドをユニット化しつつ、組み立てたベッド上で植栽パネルが養液に接することなく、かつパネルの玉突き移動に支障をきたさないようパネル載置部の高さが一定に保たれる水耕栽培用ベッドユニットの作成を目的とする。
【解決手段】対向する二枚の側板22と、前記二枚の側板22を接続する底板21と、前記側板に張り合わされ植物を植栽する植栽パネル6が載置されるパネル載置部23pを備える補強板23とを備え、一方向に少なくとも2つ以上連結することで水耕栽培用ベッド1を形成する水耕栽培用ベッドユニット2を作成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6-A】
図6-B】
図6-C】
図6-A(2)】
図6-B(2)】
図7
図8