特許第6110520号(P6110520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110520
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/46 20060101AFI20170327BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   A47C7/46
   A47C7/40
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-3895(P2016-3895)
(22)【出願日】2016年1月12日
(62)【分割の表示】特願2015-509326(P2015-509326)の分割
【原出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2016-93536(P2016-93536A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】102012207467.8
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ホルン
【審査官】 城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−325689(JP,A)
【文献】 特開2008−035933(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2100539(EP,A1)
【文献】 米国特許第4685730(US,A)
【文献】 特開2010−094305(JP,A)
【文献】 米国特許第4856846(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0304183(US,A1)
【文献】 特表2008−532625(JP,A)
【文献】 特開2006−231088(JP,A)
【文献】 特表2010−505507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/40
A47C7/46
A47C1/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート及びこれとは別体の背もたれを有しており、
前記背もたれは、上端部が着座者の腰椎部に位置する背面下部域と、下端部が着座者の腰椎部に位置する肩部域とを有していて、これら背面下部域と肩部域を、その境界部が手前にせり出すように側面視で山形の姿勢に配置することにより、着座者の腰部を支持する腰椎部域が形成されており、かつ、前記背面下部域と肩部域とは、前記腰椎部域の個所に位置した左右横長の腰椎軸を中心に相対回動可能な構成であって、
前記背面下部域と肩部域とは、それぞれ、中心部域とその左右両側に位置した側部域とを有していて、前記背面下部域の中心部域と前記肩部域との相互間、及び、前記背面下部域の側部域と肩部域の側部域との相互間が相対回動するようにヒンジ連結されており、
かつ、前記背面下部域の中心部域と側部域、及び、肩部域の中心部域と側部域とは、それぞれ上下長手の垂直軸を中心にして相対回動するようにヒンジ連結されており、
着座者の体圧によって前記背面下部域の中心部域と肩部域の中心部域とが相対回動すると、これに連動して隣り合った部域が相対的に回動し、着座者の体圧が解除されると、隣り合った各部域は元の姿勢に戻るようになっている、
椅子。
【請求項2】
前記背面下部域及び肩部域における左右の側部域は、それぞれ前記中心部域の手前側において互いに向き合うように配置されており、このため、前記腰椎部域は、着座した人の腰部を後ろから抱くような形態になっている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記肩部域の中心部域は左右幅が下から上に向かって大きくなる台形である一方、前記背面下部域の中心部域は、左右幅が上から下に向かって大きくなる台形であり、このため、前記肩部域における左右の垂直軸は、上に向かって左右間隔が広がるように鉛直線に対して傾斜して、前記背面下部域における左右の垂直軸は、下に向かって左右間隔が広がるように鉛直線に対して傾斜している、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記肩部域の上には背面上部域が配置されていて、前記背面上部域も中心部域と左右の側部域とを有しており、
前記背面上部域の中心部域と左右の側部域とは、それぞれ上下長手の垂直軸を中心に相対回動するようにヒンジ連結されている一方、
前記背面上部域の中心部域と肩部域の中心部域との相互間、及び、背面上部域の左右側部域と肩部域の左右側部域との相互間は、それぞれ、左右横長のヘッド軸を中心にして相対回動し得るようにヒンジ連結されている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項5】
前記背面上部域の中心部域は、左右幅が下から上に向かって小さくなる台形であり、このため前記背面上部域における左右の垂直軸は、左右間隔上から下に向かって広がるように鉛直線に対して傾斜しており、背面上部域の垂直軸と肩部域の垂直軸と背面下部域の垂直軸とがジグザグ状に並んでいる、
請求項4に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子(特に事務用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
事務用椅子の例は、例えばEP2173218B1から知ることができる。
【0003】
最新の事務用椅子は、通例、背もたれが傾斜(傾動)すると同時にシートも傾斜させるいわゆるシンクロ機構を備えている。
【0004】
このシンクロ機構は、通常、シート下側でサポートユニット(ここではベースサポートユニットと呼ぶ)の中に一体化されている。サポートユニットは、通常、ベースサポートアーム上で締結され、これを介して台脚と連結されている。基本的に、様々な作りのシンクロ機構が知られている。また、背もたれに作用する復元力(後傾動に対する抵抗)が使用者の体重に自動的に合わせられる自動重量調整機能を持つ機構も知られている。このようなシンクロ機構と自動重量調整機能を持つ事務用椅子の1つの例を、上に挙げたEP2173218B1から知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP2173218B1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから出発して、本発明は、いっそう高い快適性を持つ椅子の提供を課題に置いている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を持つ椅子により解決される。
【0008】
請求項1の椅子は、
シート及びこれとは別体の背もたれを有しており、
前記背もたれは、上端部が着座者の腰椎部に位置する背面下部域と、下端部が着座者の腰椎部に位置する肩部域とを有していて、これら背面下部域と肩部域を、その境界部が手前にせり出すように側面視で山形の姿勢に配置することにより、着座者の腰部を支持する腰椎部域が形成されており、かつ、前記背面下部域と肩部域とは、前記腰椎部域の個所に位置した左右横長の腰椎軸を中心に相対回動可能な構成であって、
前記背面下部域と肩部域とは、それぞれ、中心部域とその左右両側に位置した側部域とを有していて、前記背面下部域の中心部域と前記肩部域との相互間、及び、前記背面下部域の側部域と肩部域の側部域との相互間が相対回動するようにヒンジ連結されており、
かつ、前記背面下部域の中心部域と側部域、及び、肩部域の中心部域と側部域とは、それぞれ上下長手の垂直軸を中心にして相対回動するようにヒンジ連結されており、
着座者の体圧によって前記背面下部域の中心部域と肩部域の中心部域とが相対回動すると、これに連動して隣り合った部域が相対的に回動し、着座者の体圧が解除されると、隣り合った各部域は元の姿勢に戻るようになっている。
【0009】
背面下部域が、肩部域の下端とヒンジ継手で結合されて、肩部域が肩軸を中心として旋回できることにより、肩部域による背面下部域の機械的な強制ガイドが達成される。つまり、肩部域が肩軸を中心として傾斜(傾動)すると、背面下部域と肩部域との相対的な角度が変えられ、例えば、肩部域が肩軸を中心として直立位置から後ろにもたれた位置へ傾斜するときに、背もたれの腰椎部域が前方につまりシートの方に)せりだす
れにより、全体として椅子の快適性は高められる。
【0010】
請求項2では、請求項1において、前記背面下部域及び肩部域における左右の側部域は、それぞれ前記中心部域の手前側において互いに向き合うように配置されており、このため、前記腰椎部域は、着座した人の腰部を後ろから抱くような形態になっている。
請求項3では、請求項1又は2において、
前記肩部域の中心部域は左右幅が下から上に向かって大きくなる台形である一方、前記背面下部域の中心部域は、左右幅が上から下に向かって大きくなる台形であり、このため、前記肩部域における左右の垂直軸は、上に向かって左右間隔が広がるように鉛直線に対して傾斜して、前記背面下部域における左右の垂直軸は、下に向かって左右間隔が広がるように鉛直線に対して傾斜している。
請求項4では、請求項1〜3のうちのいずかにおいて、
前記肩部域の上には背面上部域が配置されていて、前記背面上部域も中心部域と左右の側部域とを有しており、前記背面上部域の中心部域と左右の側部域とは、それぞれ上下長手の垂直軸を中心に相対回動するようにヒンジ連結されている一方、前記背面上部域の中心部域と肩部域の中心部域との相互間、及び、背面上部域の左右側部域と肩部域の左右側部域との相互間は、それぞれ、左右横長のヘッド軸を中心にして相対回動し得るようにヒンジ連結されている。
請求項5では、請求項4において、
前記背面上部域の中心部域は、左右幅が下から上に向かって小さくなる台形であり、このため前記背面上部域における左右の垂直軸は、左右間隔上から下に向かって広がるように鉛直線に対して傾斜しており、背面上部域の垂直軸と肩部域の垂直軸と背面下部域の垂直軸とがジグザグ状に並んでいる。
本願発明では、例えば、肩部域が後方に傾斜するときに側部域が略前方に倒れ、これで、より効果的にサイドガイドの働きをするように変えられる。つまり、使用者の腰椎部分を支えるのと同時に、側部域が前方に案内されて使用者の身体を案内する(サポートする)ように、中心部域と側部域とに同期的な強制運動が行われるのである。
【0011】
側部域の前方への回動を可能にするために、この側部域は、目的に叶う仕方で上下長手の垂直軸を中心として中心部域と向き合って旋回できる。そのため、背もたれ自体は、その側面に沿って、垂直方向(上下長手の方向)を向いたヒンジ継手を介して前方に倒されるか少なくとも曲げられる部域を持つ。そのため、背もたれ自体には、肩部域と背面下部域の間の典型的な水平ヒンジ式継手のほかに、各中心部域と側部域の間に実質的に垂直な(上下長手の)2つのヒンジ式継手が形作られている。これらのヒンジ式継手は、ここで、弾性(曲げ)部域によって形作られていても、ヒンジによって形作られていてもよい。
【0012】
目的に叶う更に進んだ形態として、前記背面下部域の下端部が前記シートヒンジ連結されている背もたれとシートとの直接的な連結により、シートと背もたれの間の過渡部域において、身体を傾斜位置全体にわたってより良くガイドすることができる。
【0013】
【0014】
シート後部が旋回自在に支持され(回動自在に連結され)ていることは、同時に、背もたれ全体がロッキング軸を中心として傾斜するとき、つまり、背面サポートがベースサポートユニット側のロッキング軸を中心として後方に傾斜するときも、快適性を高める働きをする。この運動の時も、シート後部域の効果的な強制ガイドが行われる。ここで、両方のシート部分は通常、プレート又はシェル、つまり機械的剛性に優れたシートサポートから作られ、その上にシートクッションが載せられている。
【0015】
【0016】
請求項4の背面上部域は、頭部を支えるのに役立つこの背面上部域も肩部域と結合しており、目的に叶う形態では、これもヒンジ式である。ここで、背面上部域も、中心部域と左右の側部域を持ち、これらは結合している。これにより、全体として強制ガイドが得られ、側部域が強制的に前方に倒されることになる。
【0017】
原姿勢への復帰は、ばねエレメントによって作られるか、または背面サポートと肩部域の間のヒンジ継手のばね弾性的な作りによっても実現できる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
ましい実施バリエーションによれば、背もたれは、互いに旋回自在に締結された複数の背面エレメント、すなわち、肩部域を限定する少なくとも1つの主背面エレメントと、この主背面エレメントの下端にヒンジ式に締結され、背面下部域を形成する下背面エレメントを具備する。個々の背面エレメントは、ここで、プレート形又はシェル形に作られているか、そのような形材を具備する。
それゆえ、この実施バリエーションでは、背もたれは、互いに連結された複数の板状背面エレメントによってモザイク状に形作られている。サイド部域を形作るため、好ましくは、主背面エレメントと下背面エレメントに、それぞれサイドの側部エレメント(wangenelement)がヒンジ式に締結されている。これらもまた、プレート又はシェルにより作られているか、そのような形材を具備し、同じく互いにヒンジ式に配置されているので、傾斜するとき、サイドの側部エレメントが肩軸を中心として前方にせり出すように、強制ガイドと強制運動が行われる。
【0026】
好ましくは、補完的に頭部を支えるために中心部域に上背面エレメントが、また更に好ましくは、更なる側部エレメントが形作られており、これらが、上背面エレメントにヒンジ式に、また同時に、肩部域の側部エレメントにもヒンジ式に連結されている。
【0027】
望みの強制ガイドをできる限り単純な仕方で可能にするために、ここで、個々の背面エレメントはそれぞれ楔形又は台形に形作られており、ここで、隣り合う背面エレメントが有利な仕方でそれぞれ互いに支え合う形で配置されている。それゆえ、肩部域も背面下部域もそれぞれ、好ましくは互いに支え合う形で台形に作られた3つのセパレートの背面エレメントにより作られている。
同時に、隣り合う台形エレメントも、肩部域と背面下部域の間で同じく互いに支えられているので、長手側と短手側がそれぞれ向き合った配置になっている。台形の作りは、ここで特に、側部エレメント間の中心部域が、腰椎の部域で細幅になるように選択されている。同時に、側部エレメントの方は同部域で広幅になっている。
【0028】
隣り合う背面エレメントの間のエッジが、隣り合う背面エレメントを連結するヒンジ継手を限定する。背面エレメントが略台形又は楔形であることから、垂直軸は、中央の背面エレメントと側部エレメントの間を正確に垂直(鉛直)の方向に走っていない。それゆえ、ここで垂直軸と言う時、これは単に略垂直の方向(上下方向)に長いだけで、正確な垂直の方向から、例えば±30%の偏りがあり得るものと理解されたい。これは、上に挙げた請求項のバリエーションにも当てはまる。
【0029】
個々の背面エレメントは、目的に叶う仕方で、その互いに境を接する側又はエッジにおいて、それぞれフィルムヒンジ方式で互いにヒンジ式に連結されている。加えて、好ましい形態では、背面エレメントは、第1の実施バリエーションの通り、個別のセパレートのプレート又はシェルとして形作られている。これらが、それぞれ平面的な、例えば繊維布又はゴム弾性シートからなる弾性ヒンジストリップにより互いに連結されているあるいは代わりに、大面積の、特に背面エレメント群全体を覆う弾性カバー(クッション付きカバー)が使われている。ここで、クッションカバーの場合は、ポケットが縫い込まれ、その中に個々の板状の背面エレメントが差し込まれていてもよい。
【0030】
あるいは代わりに、背面エレメントの群全体が、特に背もたれ全体が、ワンピース形のプラスチック部品(例えば射出成形品)により作られている。個々の背面エレメントは、マテリアルブリッジを介して互いに連結されている。すなわち、ワンピース部品に付けられた切欠き又はマテリアルテーパにより、隣り合った背面エレメントが互いに仕切られている。この切欠きが同時に、フィルムヒンジ方式で形作られたヒンジ継手を限定する。このワンピース形のプラスチック背もたれは、通常、更にクッションカバーで覆われている。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態に係る事務用椅子の斜視正面図である。
図2図2は、図1に示した事務用椅子の背面図である。
図3図3は、背もたれが標準の直立位置にあるときの側面図である。
図4図4は、背もたれが傾斜したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に則して詳細に説明する。図において、同じ働きをする部品はそれぞれ同じ参照符号を付けている。
【0034】
図示された事務用回転椅子は、ベースサポートユニット2を具備し、これにシート4ならびに背面サポート6が取り付けられている。背面サポート6は、左右横長のロッキング軸(傾斜軸A1を中心として回動できるようにベースサポートユニット2に支承(連結)されている。ベースサポートユニット2は、ここで詳細に図示されていないシンクロ機構を受容する。これには重量調整用(ロッキングに対する抵抗の調節用)の機構も含まれている。これは、既述の自動重量調整装置として作ってあっても、手動調整式の重量調整装置として作ってあってもよい。
【0035】
背面サポート6に、複数の部分部域に分割された背もたれ8が連結されている。背もたれ8は、肩部域10と背面下部域12を有する。施形態では更に、上肩部域10の上に、頭部域を形成する背面上部域14がある。
【0036】
また、背もたれ8を構成して上下に並んだ各部域10,12,14は、それぞれ、中心部域16を有し、中心部域16の左右両側に側部域18が連続している。
【0037】
肩部域10の下端と背面下部域12の上端とは、腰椎部域20において互いに境を接し、ここで、ヒンジ継手を介して互いにヒンジ式に締結されている。すなわち、肩部域10の下端と背面下部域12の上端とが連結されていることにより、使用者の腰部を支持する腰椎部域20が形成されている。それゆえ、上肩部域10と背面下部域12とは、左右横長の共通の軸(以下、腰椎軸A2と呼ぶ)を中心として互いに傾斜でき、これで、その相対する方位角が変えられることになる。すなわち、上肩部域10と背面下部域12とは、側面視姿勢が変わるように相対的に回動できる。腰椎部域20は、手前にせり出している。
【0038】
肩部域10の背面は、この肩部域10が左右横長の水平軸(以下、肩軸A3と呼ぶ)を中心として傾斜し得るように、更なるヒンジ継手を介して背面サポート6ヒンジ式に連結されている。肩部域10は、その上端と下端との間の中途部が、背面サポート6の上端部に連結されている。
肩部域10には、補完的に、上下長手の左右2本の主垂直軸B1が左右対称に作られている。左右の主垂直軸B1は、上に向けて間隔が広がるように、鉛直線に対して傾斜している。また、背面下部域12にも、上下長手の左右の下垂直軸B2が左右対称に作られている。左右の下垂直軸B2は、下に向けて間隔が広がるように、鉛直線に対して傾斜している。使用者が背もたれ8にもたれていない原姿勢において、左右の側部域18は中心部域16の側に傾斜しており、垂直軸B1、B2は、側部域18が手前に旋回するのを可能にする(中心部域16と側部域18との成す角度が変化することを、可能にする。)。
【0039】
施形態において、背もたれ8シート4と連結されている。それゆえ、背もたれ8は、背面サポート6を介してベースサポートユニット2に連結されていることに加えて、シート4とも連結されている。また、シート4は、面下部域12と連結された板状シート後部22を具備する。この連結は特にヒンジ継手を介して行われ、少なくとも1つの左右横長の連結軸A4を中心として、或る程度の旋回運動が可能である。
シート後部22、更なるヒンジ継手を介してシート軸A5を中心として旋回できるようにシート前部24に締結されている。つまり、シート4は、シート前部24とシート後部22とで構成されていて、両者は、連結軸A4を中心にして相対的に回動可能である。両シート部分22、24は、ここで、プレート形又はシェル形に作られていて、特にツーピ−ス形のシートサポート体として形成され、それぞれクッションを支持する働きをする。
【0040】
背面サポート6と背もたれ8の間に、ばねエレメント26が配置されている図3及び4を参照)。このばねエレメト26が、復元力を肩部域10に加え、これで、肩軸A3を中心として肩部域10が背面サポート6に対して回動することが可能となる。
【0041】
図1〜4に描かれた実施形態において、背もたれ8の左右中央部は、複数の、プレート形又はシェル形の背面エレメントで構成されている。すなわち、背もたれ8は、肩部域10の中心部域を形成する主中心エレメント28と、背面下部域12の中央部を形成する下中心エレメント30と、背面上部域14の中央部を形成する上中心エレメント32とを具備する上下に隣り合った中心エレメント28,30,32は、左右横長で水平に走るヒンジ継手を介して互いに連結されている。主中心エレメント28と下中心エレメント30は、腰椎軸A2を介して互いにヒンジ式に連結されている。上中心エレメント32は、主中心エレメント28と共にヘッド軸A6を中心として傾斜できるように、主中心エレメント28の上端に連結されている。
【0042】
これらの中心エレメント28,30,32の各々に、それぞれ左右の側部エレメント29,31,33が連続しており、中心エレメント28,30,32と側部エレメント29,31,33とは、それぞれヒンジ式に連結されている。特に図3及び4の側面図から明らかな通り、側部エレメント29,31,33はサイドから中心エレメント28,30,32の手前側に延び、そこで、側部域18は、角度を付けて中心部域16の方に向いている。背面上部域14の中心エレメント32と左右の側部エレメント33とは、それぞれ上垂直軸B3を介して連結されており、左右の上垂直軸B3は、上に向けて間隔が狭くなるように、鉛直線に対して左右対称に傾斜している。
【0043】
エレメント28〜33は、それぞれ台形ないしは楔形又は三角形の基礎面を持ち、これで、長手側から短手側に向かって細幅ないしは先細に延びている。個々の背面エレメント28〜33はそれぞれ支え合う形で配置されているので、隣り合ったエレメント28〜33は、それぞれ長手側又は短手側で互いに接している。これにより、腰椎部域20にウエストが形作られている。同時に、側部エレメント29,31,33は、サイドから前方へ引っ張られている。
【0044】
図1〜4に示した実施形態の椅子の機能の仕方は、下記の通りである。
【0045】
使用者が背もたれ8にもたれ掛かって背面サポート6が後傾すると(後ろに傾斜すると)、背もたれ8の肩部域10は、背面サポート6と一緒に後退しつつ、肩軸A3を中心として後方に傾斜する。すると、肩部域10が背面下部域12にヒンジ連結されていることから、背面下部域12の方は、肩部域10と一緒に後退しつつも、略上方へ引っ張られて、腰椎部域20が背面サポート6に対して手前にせり出し、これにより、腰椎部域20において身体に対する望みの支えが得られる。
同時に、側部エレメント29,31,33同士の結合により、また、個々のエレメント28〜33の特殊な台形の形状により、側部エレメント29,31,33は中心エレメント28,30,32の手前側に折れ込むので、使用者の上体はよりうまく抱え込まれる。従ってまた、使用者の脇も、うまくガイドされることになる
【0046】
背もたれ8が腰椎部域20において前方へせり出すことから、背面下部域12の範囲内で長さ補正が必要である。これは、背面下部域12シート後部22とのヒンジ結合と、シート後部22とシート前部24とのヒンジ結合とによって行われる。肩部域10が後方に傾斜すると、シート後部22は、背面下部域12との連結部域、つまり連結軸A4の部域が略垂直の方向に上方へ引っ張られる。同時に、シート後部22がシート前部24と向き合って旋回運動する。従って、肩部域10が肩軸A3を中心として傾斜した途端、シート後部22は斜め上方へ連れていかれる(引っ張られる)。肩軸A3は、ここで大体、肩部域10の略上部三分の一の高さに位置している。
【0047】
通常、肩部域10の傾き調節は、背もたれ8全体がベースサポートユニット2と向き合って傾斜するのと同時に、つまり、背面サポート6が傾斜軸A1を中心として傾斜するときに行われる。このような複合的な傾斜の様子が、図4図3との比較で描かれている。図3に描かれた、背面サポート6が基本の直立位置にあるこの初期ポジションから出発して、傾き調節(肩部域10と背面サポート6との相対姿勢の変化)のとき図4において矢印36で表された、個々のエレメントのそれぞれの軸A1〜A6を中心とする回動運動が行われる。
【0048】
ロッキング軸A1を中心とする背もたれ8の傾斜により、肩部域10は肩軸A3によって斜め後方(上方)に引っ張られる。これにより、図3に描かれた初期場面と比べて背もたれは伸長される。つまり、肩部域10の後傾角度が背面サポート6の後傾角度よりも小さいため、肩部域10の背面と背面下部域12の背面との成す角度は大きくなる(直線に近くなる。)。これにより、シート後部22の後端は、下方へ背面サポート6の方へ)引っ張られる(或いは、押される。)図3に描かれた初期場面では略直角であったシート後部22と背面下部域12の間の角度は、幾らか小さくなる。
【0049】
従って、個々の軸A1〜A6,B1,B2により互いに連結されたヒンジ鎖またはリンク鎖が作られているのであり、これが、傾き調節時に(ロッキング時に)、背もたれ8の輪郭を望み通りの形状に強制的に適合させることにつながるのである。
【0050】
背もたれの伸長によって、腰椎部域20が後方へ背面サポート6の方にずらされることにより、側部域18において強制補正が引き起こされ、その結果、肩部域10と背面下部域12との側部エレメント29,31が垂直軸B1、B2を中心として前方に折れ込み、また補完的に、背面上部域14の側部エレメント33が、第3の垂直軸B3を中心として前方に折れ込むことになる。
【0051】
背もたれ8が直立位置に戻るとき、運動は逆の順序で行われる。従って、ばねエレメント26のばね力は、背もたれ8が直立位置から図4に描かれた傾斜位置に移行するときの伸長運動に対抗するように方向づけられている。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【符号の説明】
【0059】
2 ベースサポートユニット
4 シート
6 背面サポート
8 背もたれ
10 上肩部域
12 背面下部域
14 背面上部域
16 中心部域
18 側部域
20 腰椎部域
22 シート後部
24 シート前部
26 ばねエレメント
28 主中心エレメント
29 側部エレメント
30 下中心エレメント
31 下側部エレメント
32 上中心エレメント
33 上側部エレメント
36 矢印
38 フレーム
A1 ロッキング
A2 腰椎軸
A3 肩軸
A4 連結軸
A5 シート軸
A6 ヘッド軸
B1 主垂直軸
B2 下垂直軸
B3 上垂直軸
図1
図2
図3
図4