(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明のIII族窒化物結晶塊について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0013】
(定義)
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
まず、
図1を用いて、六方晶系の結晶構造の軸と面との関係について説明する。
図1は、六方晶系の結晶構造の軸と面を説明する図である。本明細書において種結晶または窒化物結晶の「主面」とは、当該種結晶または窒化物結晶における最も広い面であって、通常は結晶成長を行うべき面を指す。本明細書において「C面」とは、六方晶構造(ウルツ鋼型結晶構造)における{0001}面と等価な面であり、極性面である。例えば、
図1の[2−1]に示す(0001)面とその反対面である(000−1)面を指し、それぞれ+C面、−C面と称することがある。周期表13族(III族)窒化物結晶では、+C面は周期表13族面で−C面は窒素面であり、窒化ガリウムではそれぞれGa面又はN面に相当する。また、本明細書において「M面」とは、{1−100}面、{01−10}面、[−1010]面、{−1100}面、{0−110}面、{10−10}面として包括的に表される非極性面であり、具体的には
図1の[2−2]で示す(1−100)面や、(01−10)面、(−1010)面、(−1100)面、(0−110)面、(10−10)面を意味する。さらに、本明細書において「A面」とは、{2−1−10}面、{−12−10}面、{−1−120}面、{−2110}面、{1−210}面、{11−20}面として包括的に表される非極性面である。具体的には
図1の[2−3]で示すような(11−20)面や、(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面、を意味する。本明細書において「c軸」「m軸」「a軸」とは、それぞれC面、M面、A面に垂直な軸を意味する。
【0015】
また、本明細書において「非極性面」とは、表面に周期表13族(III族)元素と窒素元素の両方が存在しており、かつその存在比が1:1である面を意味する。具体的には、M面やA面を好ましい面として挙げることができる。本明細書において「半極性面」とは、例えば、周期表13族(III族)窒化物が六方晶であってその主面が(hklm)で表される場合、[0001]面以外で、m=0ではない面をいう。すなわち(0001)面に対して傾いた面で、かつ非極性面ではない面をいう。表面に周期表13族元素と窒素元素の両方あるいは片方のみが存在する場合で、かつその存在比が1:1でない面を意味する。h、k、l、mはそれぞれ独立に−5〜5のいずれかの整数であることが好ましく、−2〜2のいずれかの整数であることがより好ましく、低指数面であることが好ましい。
なお、非極性面、極性面は±15°範囲のオフ角を有していてもよく、±5°の範囲内であることが好ましい。
また、本明細書において主面とは、結晶を構成する面のうち最大面積を有する面を意味し、側面とは主面に隣接して交差する面を意味する。下地基板やIII族窒化物結晶塊の各方向の寸法は、特に明記しない限り、下地基板やIII族窒化物結晶塊が有する各方向の最大長さをさすものとする。
【0016】
[III族窒化物結晶塊]
本発明のIII族窒化物結晶塊は、表側の主面と裏側の主面を有する板状のIII族窒化物結晶である下地基板(以下、種結晶と称する場合がある)と、前記下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶とを有し、前記下地基板の表側の主面および裏側の主面が極性面、非極性面または半極性面であり、結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面を少なくとも含み、下記式(1)を満たすことを特徴とする(但し、下地基板の表側の主面と裏側の主面は平行でなくともよく、面積が異なっていてもよい)。
式(1) A2/A1≧0.5
(式中、A1は下地基板の表側の主面の面積を表す。A2は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
ここで、下地基板またはIII族窒化物結晶塊の主面とは、結晶を構成する一方の表面側の結晶面において、最大面積を有する面を意味する。また、前記下地基板は板状であるため、表側と裏側にそれぞれ主面を有する。III族窒化物結晶塊についても、板状の場合は同様である。前記下地基板の表側と裏側の設定は任意に選択することができ、前記下地基板の表側の主面と裏側の主面は平行である必要はない。
また、III族窒化物結晶塊の側面とは、下地基板の表側の主面に相当する表面に交差する面を意味し、直接隣接していなくてもよい。
また、前記下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶のことを成長結晶とも言う。
【0017】
本発明のIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表側の主面および裏側の主面が極性面、非極性面または半極性面であり、極性面または非極性面であることが好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表側の主面が非極性面である第1の態様であるか、前記下地基板の表側の主面が極性面である第2の態様であることがより好ましい。以下、本発明の第1の態様と第2の態様について、それぞれ説明する。
【0018】
<第1の態様>
本発明の第1の態様では、III族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表側の主面が非極性面である。前記非極性面としては、M面、A面であることが好ましく、M面であることが特に好ましい。本発明の第1の態様の特に好ましい態様におけるIII族窒化物結晶塊の概略図を
図4および
図5に示す。
図4に示すように、本発明の第1の態様においては、表側の主面と裏側の主面を有する板状のIII族窒化物結晶である下地基板上に、III族窒化物単結晶を成長させて、M面を表側の主面として有するIII族窒化物結晶塊を得ることができる。なお、下地基板の主面面方位は上記の態様に限定されるものではないが、M面であることが好ましく、具体的には(10−10)±15°の面であることが好ましい。
以下、本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊に用いられる下地基板、第1の態様のIII族窒化物結晶塊の結晶表面、下地基板からの成長などについて説明する。
【0019】
(下地基板)
本発明の第1の態様に用いられる下地基板(種結晶)は非極性面である表側の主面と裏側の主面を有する板状のIII族窒化物結晶であれば特に制限はないが、表側の主面と裏側の主面が略平行であることが好ましい。表側の主面と裏側の主面がいずれもM面であることがより好ましい。
【0020】
前記III族窒化物の種結晶は、六方晶系の結晶構造を有する。III族窒化物の種結晶としては、成長結晶として成長させる窒化物の単結晶が用いられる。前記III族窒化物の種結晶の具体例としては、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)またはこれらの混晶等の窒化物単結晶が挙げられる。
【0021】
前記III族窒化物の種結晶は、成長結晶との格子整合性などを考慮して決定することができる。例えば、種結晶としては、サファイア等の異種基板上にエピタキシャル成長させた後に剥離させて得た単結晶、Gaなどの金属からNaやLi、Biをフラックスとして結晶成長させて得た単結晶、液相エピタキシ法(LPE法)を用いて得たホモ/ヘテロエピタキシャル成長させた単結晶、溶液成長法に基づき作製された単結晶及びそれらを切断した結晶などを用いることができる。前記エピタキシャル成長の具体的な方法については特に制限されず、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE)法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)、液相法、アモノサーマル法などを採用することができる。
【0022】
前記種結晶は、成長結晶がエピタキシャル成長されることが好ましい。本明細書において、種結晶の上に結晶が成長する面を「成長面」と称する場合がある。
【0023】
種結晶としては、形状は特に限定されないが、大面積の成長結晶を効率よく得ることができるので主面の外形が長方形や楕円形などのように長手方向と短手方向を有する形状であることが好ましく、長手方向に伸びる直線と短手方向に伸びる直線とが略垂直に交わることがより好ましい。種結晶の側面は平面でも曲面であってもよい。種結晶の形状としては例えば、直方体、三角板状、五角板状、六角板状、円板状、三角柱、五角柱、六角柱、円柱などが挙げられる。その中でも、本発明の第1の態様に用いられる下地基板は、板状の直方体の結晶であることがより好ましい。
【0024】
種結晶の主面の結晶面はM面であることが好ましいが、側面はいずれも特に限定されない。
【0025】
種結晶の側面は劈開して形成してもよい。例えば、種結晶の側面が劈開して形成したA面であると、未研磨のA面を有する種結晶を用いて結晶成長させた場合に比べて、成長面を半極性面とする成長を促すことができ、高品質の窒化物結晶を速い成長速度で製造することができる。また種結晶界面から発生する転位が未研磨の場合よりも減少するため、成長した結晶中の転位密度をさらに低減することができる。
【0026】
図2を用いて、本発明の第1の態様に用いられる種結晶の好ましい形状について説明する。
図2は、本発明の第1の態様における種結晶の一態様を示す模式図であり、側面は必ずしも主面と直交する面である必要はない。
図2に示すように、前記種結晶は、M面を主面とし、a軸方向が長い板状のものが好ましいが、後述するサイズなどは種結晶の形状が、三角板状、五角板状、六角板状、円板状、三角柱、五角柱、六角柱、円柱などの形状であっても同様に考えることができる。
【0027】
本発明の第1の態様に用いられる下地基板は、前記種結晶の厚さ(M面を主面とする場合にはm軸方向の寸法)は、取り扱い性の観点から0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上が更に好ましい。また、種結晶の厚さが厚過ぎなければ(剛性が高い)、m軸方向への成長の際に種結晶の反りを矯正しきれずに、成長結晶中に欠陥が増殖したり、クラックが発生しにくい。このため、前記種結晶の厚さは、2mm以下が好ましく、1mm以下が更に好ましい。
【0028】
本発明の第1の態様に用いられる下地基板は、下地基板の表側の主面41の寸法に制限はないが、前記種結晶のサイズとして、下地基板の表側の主面41のたて方向であるc軸方向の寸法c1が200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがより好ましく、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。一方、下地基板の表側の主面41の横方向であるa軸方向の寸法a1が300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。
また、本発明の第1の態様に用いられる下地基板は、表側の主面41の寸法と裏側の主面42の寸法が略同一であることが好ましく、本発明の第1の態様に用いられる下地基板の裏側の主面42の寸法の好ましい範囲は表側の主面41の寸法の好ましい範囲と同様である。
【0029】
本発明の第1の態様では、下地基板の表側の主面41の面積A1が100mm
2以上であることが好ましく、200mm
2以上であることがより好ましく、400mm
2以上であることが特に好ましい。また下地基板の表側41の主面の面積A1が60000mm
2以下であることが好ましく、40000mm
2以下であることがより好ましく、20000mm
2以下であることが特に好ましい。
【0030】
前記種結晶は、結晶成長後のクラック発生の抑制や成長中の結晶破損防止の観点から、内在する内在する転位密度数が1x10
8/cm
2以下であることが好ましく、1x10
7/cm
2以下が更に好ましく、5x10
6/cm
2以下が特に好ましい。
【0031】
前記種結晶の主面の結晶格子面の曲率半径は、結晶成長後のクラック発生の抑制や成長中の結晶破損防止の観点から、0.5m以上であることが好ましく、1m以上が更に好ましく、2m以上が特に好ましい。
【0032】
種結晶として本発明のIII族窒化物結晶塊を用いて、さらに成長結晶を成長させてもよい。この場合、種結晶として用いる窒化物結晶はスライス、研削や研磨などの加工を施すことなくアズグロウン状態のまま用いてもよい。また、本発明の製造方法によって得られるIII族窒化物結晶塊にスライス、研削や研磨などの加工を施して、成長結晶の一部を種結晶として用いてもよい。
【0033】
(下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶)
以下、
図2、
図4および
図5を適宜参照しながら、下地基板の表側の主面41上に形成された、III族窒化物結晶塊の主面51がM面である場合について説明する。
【0034】
本発明のIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶(成長結晶)を有する。前記III族窒化物単結晶は、種結晶と同種のIII族窒化物結晶を成長させることで得られる。前記III族窒化物単結晶は、六方晶系の結晶構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、種結晶及び成長結晶を構成する周期表13族(III族)窒化物として、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムやこれらの混晶などを用いたものが好ましく、この中でも窒化ガリウムがさらに好ましい。
【0035】
前記成長結晶を種結晶上に成長させる具体的な方法については特に限定はなくハイドライド気相成長法(HVPE)法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)などの気相法;液相エピタキシ法(LPE法)などの液相法;アモノサーマル法などが挙げられるが、好ましくはアモノサーマル法を採用することができる。前記アモノサーマル法としては、特にフッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種とを含む鉱化剤を用いたアモノサーマル法が好ましい。前記アモノサーマル法については後述する。
【0036】
本発明の第1の態様では、本発明のIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表面がすべて覆われており、前記III族窒化物単結晶が本発明のIII族窒化物結晶塊のすべての結晶表面を構成することが好ましい。このような態様を
図4に示した第1の態様のIII族窒化物結晶塊の断面を表す
図5に示す。
本発明のIII族窒化物結晶塊は、結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面を少なくとも1つ含む。本発明のIII族窒化物結晶塊は、このような[10−11]または[10−1−1]面が形成されるように、半極性面(Semi−Polar面)が表面になるように制御して成長されてなる。この際、半極性面を、詳細に観察すると、複数の結晶面が集合した面であってもよい。本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は、
図4および
図5に示すように主面51としてM面を有し、側面として{10−1−1}面と{10−11}面を少なくとも出現させながら成長してなり、アズグロウンの状態で主面としてM面を有し、側面として{10−1−1}面と{10−11}面を少なくとも含むことが好ましい。さらに、
図4および
図5における結晶塊の図中の下側の面のように(0001)面及び(000−1)面の少なくとも一つを出現させながら成長してなり、アズグロウンの状態で(0001)面及び(000−1)面の少なくとも一つを有していてもよい。アズグロウンの状態のIII族窒化物結晶塊としては、結晶表面が主として[10−11]、[10−1−1]、[10−10]および(0001)面からなることが好ましい。
【0037】
結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面を少なくとも含むように制御する方法として、例えば、後述する鉱化剤として、少なくともフッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つとを含む鉱化剤を用いることが好ましい。前記鉱化剤としては、特にフッ素元素とヨウ素元素とを含むものが好ましい。このように鉱化剤としてフッ素元素を含むものを用いると、結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面のうち少なくとも一方を含み、前記式(1)を満たす大型の主面を有する結晶塊を得やすい。これに対し、例えば、鉱化剤として塩素元素のみを含む鉱化剤を用いると、種結晶のa軸方向に成長結晶を成長させた場合に、純粋なA面が出現しやすい傾向にある。
【0038】
また、成長結晶中の不純物の濃度を低減することで成長面を半極性面とする成長を促すことができる。この際、前記不純物濃度としては酸素濃度やアルカリ金属、Ni等の遷移金属等の濃度を基準とすることができる。例えば、成長結晶中の酸素濃度を10
20atoms/cm
3未満とすることで成長面を半極性面とする成長を促すことができるため好ましい。
成長結晶における不純物原子として酸素原子を含有する場合の酸素原子濃度は、1×10
20atoms/cm
3以下であることが好ましく、5×10
19atoms/cm
3以下であることがより好ましい。
【0039】
また、後述するように、種結晶の形状、加工方法などを適宜選択することによっても、成長面を半極性面とする成長を促すことができる。
【0040】
成長面を半極性面に制御するための手段としては、上述の方法に限られず、またこれらの方法を適宜組み合わせることによって達成し得る。
【0041】
本発明のIII族窒化物結晶塊は、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1) A2/A1≧0.5
(式中、A1は下地基板の表側の主面の面積を表す。A2は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
前記「下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積A2」は、下地基板の表側の主面側のIII族窒化物結晶塊の主面の面積であることが好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶塊は、このように下地基板の主面に対して、一定以上の面積である主面を有する。このような大きな主面を有し、かつ、結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面のうち少なくとも一方を含むIII族窒化物結晶塊は従来知られていなかった。
本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊はA2/A1の下限値が0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
また、本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3) 10≧A2/A1≧0.5
さらに本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は、A2/A1の上限値が10以下であることがより好ましく、5以下であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) (A2+A4)/(A1+A3)≧0.5
(式中、A1は下地基板の表側の主面の面積を表す。A2は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。A3は下地基板の裏側の主面の面積を表す。A4は下地基板の裏側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の裏側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は(A2+A4)/(A1+A3)の下限値が0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
さらに本発明の第1の態様のIII族窒化物結晶塊は、(A2+A4)/(A1+A3)の上限値が10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明の第1の態様では、本発明のIII族窒化物結晶塊の下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積A2が50mm
2以上であることが好ましく、100mm
2以上であることがより好ましく、200mm
2以上であることが特に好ましい。またA2が100000mm
2以下であることが好ましく、60000mm
2以下であることがより好ましく、30000mm
2以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の第1の態様では、III族窒化物結晶塊の主面(M面)の寸法として、III族窒化物結晶塊の表側の主面51のたて方向であるc軸方向の寸法(最大長さ)が3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが特に好ましく、200mm以下であることが好ましく、180mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることが特に好ましい。
一方、III族窒化物結晶塊の表側の主面51の横方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)が5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることが特に好ましく、200mm以下であることが好ましく、180mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることが特に好ましい。
また、本発明の第1の態様では、III族窒化物結晶塊は表側の主面51の寸法と裏側の主面52の寸法が略同一であることが好ましく、III族窒化物結晶塊の裏側の主面52の寸法の好ましい範囲は表側の主面51の寸法の好ましい範囲と同様である。
【0045】
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のm軸方向の厚みm2は、種結晶の反りの矯正と結晶成長後の結晶破損抑制の観点から、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることが特に好ましく、3mm以上であることがより特に好ましく、5mm以上であることがよりさらに特に好ましい。前記III族窒化物結晶塊全体のm軸方向の厚みm2は、厚すぎると成長期間が長くなり生産性が低下するという観点から、30mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のたて方向であるc軸方向の寸法(最大長さ)c2が5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが特に好ましく、220mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、170mm以下であることが特に好ましい。
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の横方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)a2が10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが特に好ましく、220mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、170mm以下であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の第1の態様では、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4) c2/c1≧1.05
(式中、c1は下地基板のc軸方向の長さを表し、c2はIII族窒化物結晶塊のc軸方向の長さを表す。)
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のc軸方向の寸法c2は、前記下地基板のc軸方向の寸法c1の1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることが特に好ましく、10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることが特に好ましい。
【0047】
本発明の第1の態様では、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5) a2/a1≧1.05
(式中、a1は下地基板のa軸方向の長さを表し、a2はIII族窒化物結晶塊のa軸方向の長さを表す。)
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のa軸方向の寸法a2は、前記下地基板のa軸方向の寸法a1の1.07倍以上であることがより好ましく、1.1倍以上であることが特に好ましく、3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のm軸方向の寸法m2は、前記下地基板のm軸方向の寸法m1の3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが特に好ましく、100倍以下であることが好ましく、80倍以下であることがより好ましく、70倍以下であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のc軸方向の成長厚みは、
図4または
図5においてc2−c1で表される長さであり、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが特に好ましく、40mm以下であることが好ましく、35mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。
【0050】
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のa軸方向の成長厚みは、
図4または
図5においてa2−a1で表される長さであり、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることが特に好ましく、30mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の第1の態様では、M面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のm軸方向の成長厚みは、
図4または
図5においてm2−m1で表される長さであり、0.3mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましく、1.8mm以上であることが特に好ましく、29.8mm以下であることが好ましく、24.8mm以下であることがより好ましく、19.8mm以下であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の第1の態様では、m軸方向の成長に対するc軸方向の成長厚みが下記式(6)を満たすことが好ましい。
式(6) 20≧(c2−c1)/(m2−m1)≧0.2
(式中、c1は下地基板のc軸方向の長さを表し、c2はIII族窒化物結晶塊のc軸方向の最大長さを表す。m1は下地基板のm軸方向の長さを表し、m2はIII族窒化物結晶塊のm軸方向の最大長さを表す。)
(c2−c1)/(m2−m1)の下限値は0.2以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.6以上であることが特に好ましい。(c2−c1)/(m2−m1)の上限値は20以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0053】
本発明の第1の態様では、m軸方向の成長に対するa軸方向の成長厚みが下記式(7)を満たすことが好ましい。
式(7) 2≧(a2−a1)/(m2−m1)≧0.4
(式中、a1は下地基板のa軸方向の長さを表し、a2はIII族窒化物結晶塊のa軸方向の最大長さを表す。m1は下地基板のm軸方向の長さを表し、m2はIII族窒化物結晶塊のm軸方向の最大長さを表す。)
(a2−a1)/(m2−m1)の下限値は0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることが特に好ましい。(a2−a1)/(m2−m1)の上限値は2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
【0054】
本発明のIII族窒化物結晶塊中のフッ素濃度は、高い結晶品質と成長速度のバランスの観点から、1x10
20cm
-3未満が好ましく、1x10
19cm
-3未満が更に好ましく、5x10
18cm
-3未満が特に好ましく、1x10
15cm
-3以上が好ましく、5x10
15cm
-3以上が更に好ましく、1x10
16cm
-3以上がとくに好ましい。
【0055】
本発明のIII族窒化物結晶塊中の塩素、臭素及びヨウ素の合計濃度は、結晶品質を維持する観点から、1×10
17cm
-3以下であることが好ましく、1×10
16cm
-3以下であることがより好ましく、5×10
15cm
-3以下であることがさらに好ましい。
【0056】
本発明のIII族窒化物結晶塊を製造する際に、種結晶の形状を適宜選択することにより、所望の形状を有するIII族窒化物結晶塊を得ることができる。本発明のIII族窒化物結晶塊は、そのまま使用してもよいし、加工してから使用してもよい。
【0057】
本発明のIII族窒化物結晶塊は、種結晶として用いたり光デバイスや電子デバイスに好適に用いたりするための観点から、内在するGa面に貫通する転位密度が1x10
4cm
-2以下であることが好ましく、1x10
3cm
-2以下が更に好ましく、5x10
2cm
-2以下が特に好ましい。
本発明の窒化物結晶は、前記と同様の観点から、内在する内在するクラック数が5本以下であることが好ましく、3本以下が更に好ましく、0本が特に好ましい。
【0058】
<第2の態様>
本発明の第2の態様では、III族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表側の主面が極性面である。前記極性面としては、C面であることが好ましく、−C面であることがより特に好ましい。本発明の第2の態様の特に好ましい態様におけるIII族窒化物結晶塊の概略図を
図6〜
図8に示す。
図6に示すように、本発明の第2の態様においては、前記下地基板の表側の主面が(000−1)面であることが好ましく、下地基板の裏側の主面が(0001)面であることが好ましい。このような表側の主面と裏側の主面を有する板状のIII族窒化物の種結晶である下地基板上に、III族窒化物単結晶を成長させて、N面である−C面を表側の主面として有するIII族窒化物結晶塊を得ることができる。なお、下地基板の主面面方位は上記の態様に限定されるものではないが、(0001)±15°の面、(000−1)±15°の面であることが好ましい。
以下、本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊に用いられる下地基板、第2の態様のIII族窒化物結晶塊の結晶表面、下地基板からの成長などについて、特に前述の第1の態様と異なる点について説明する。
【0059】
(下地基板)
本発明の第2の態様に用いられる下地基板は極性面である表側の主面と裏側の主面を有する板状のIII族窒化物の種結晶であれば特に制限はないが、表側の主面と裏側の主面が略平行であることが好ましい。表側の主面と裏側の主面がいずれもC面であることがより好ましい。
【0060】
本発明の第2の態様における前記III族窒化物の種結晶の好ましい種類とその具体例、好ましい成長方法などは、前述の第1の態様と同様である。
【0061】
本発明の第2の態様における種結晶の形状は特に限定されず、前述の第1の態様と同様の形状を挙げることができる。その中でも、本発明の第2の態様に用いられる下地基板は、板状の六角板状または円板状の種結晶であることがより好ましい。
【0062】
種結晶の主面の結晶面はC面であることが好ましい。また、側面はいずれも特に限定されない。
【0063】
本発明の第2の態様に用いられる下地基板は、前記種結晶の厚さ(C面を主面とする場合にはc軸方向の寸法)の好ましい範囲は、前述の第1の態様における好ましい範囲と同様である。
【0064】
本発明の第2の態様に用いられる下地基板は、下地基板の表側の主面41の寸法に制限はないが、前記種結晶のサイズとして、下地基板の表側の主面41のたて方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)La1が300mm以下であることが好ましく、250mm以下であることがより好ましく、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。
下地基板の表側の主面41の横方向であるm軸方向の寸法(最大長さ)Lm1が300mm以下であることが好ましく、250mm以下であることがより好ましく、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。
また、本発明の第2の態様に用いられる下地基板は、表側の主面41の寸法と裏側の主面42の寸法が略同一であることが好ましく、本発明の第2の態様に用いられる下地基板の裏側の主面42の寸法の好ましい範囲は表側の主面41の寸法の好ましい範囲と同様である。
【0065】
本発明の第2の態様では、下地基板の表側の主面41の面積A1が100mm
2以上であることが好ましく、200mm
2以上であることがより好ましく、400mm
2以上であることが特に好ましい。また下地基板の表側41の主面の面積A2が50000mm
2以下であることが好ましく、40000mm
2以下であることがより好ましく、30000mm
2以下であることが特に好ましい。
【0066】
(下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶)
以下、
図6〜
図8を適宜参照しながら、下地基板の表側の主面41上に形成された、III族窒化物結晶塊の主面51が(000−1)面である場合について説明する。
【0067】
本発明の第2の態様におけるIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板上に形成されたIII族窒化物単結晶(成長結晶)を有する。本発明の第2の態様における前記III族窒化物単結晶は、種結晶と同種のIII族窒化物単結晶を成長させることで得られる。本発明の第2の態様における前記III族窒化物単結晶の好ましい範囲と、前記成長結晶を種結晶上に成長させる具体的な方法の好ましい範囲は、前述の第1の態様における好ましい範囲と同様である。
【0068】
本発明の第2の態様では、本発明のIII族窒化物結晶塊は、前記下地基板の表面がすべて覆われており、前記III族窒化物単結晶が本発明のIII族窒化物結晶塊のすべての結晶表面を構成することが好ましい。このような態様を
図6に示した第1の態様のIII族窒化物結晶塊の断面を表す
図7に示す。
本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は、
図6および
図7に示すように表側主面51としてN面である(000−1)面を有し、裏側主面52としてGa面である(0001)面を有し、側面として{10−1−1}面と{10−11}面を少なくとも出現させながら成長してなり、アズグロウンの状態で主面としてN面である(000−1)面とGa面である(0001)面とを有し、側面として{10−1−1}面と{10−11}面を少なくとも含むことが好ましい。アズグロウンの状態のIII族窒化物結晶塊としては、結晶表面が主として[10−11]、[10−1−1]、[10−10]および(0001)、(000−1)面からなることが好ましい。
さらに、
図6および
図7における本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊のように側面にM面出現させながら成長してなり、アズグロウンの状態でのM面を有していてもよい。このような態様においてIII族窒化物結晶塊の下地基板付近の側面がM面を有すると、下地基板の主面と同等口径を有する結晶厚みが増えるため、このような結晶塊から複数枚の基板を切り出すことができるため好ましい。一方、
図8における本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊のように、アズグロウンの状態でM面が消失して、側面として[10−1−1]面と[10−11]面などの半極性面のみを有する態様も好ましい。このような態様においてIII族窒化物結晶塊の下地基板付近の側面のM面が消失し、m軸方向への横方向成長が進むと、下地基板の主面よりも大きい口径を有するIII族窒化物結晶塊を得ることができるため、このような結晶塊から大口径の基板を切り出すことができるため好ましい。
【0069】
結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面のうち少なくとも一方を含むように制御する方法は、前述の第1の態様における方法と同様である。
また、
図8における本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊のように、アズグロウンの状態でM面を消失させる方法としては、結晶成長の生育日数を長くする方法を挙げることができる。また、鉱化剤の濃度や混合比率を変える、ドーパントを添加するなどの方法によってもアズグロウンの状態でM面を消失するように結晶成長を制御できる。
【0070】
本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は、「下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積A2」/「下地基板の表側の主面の面積A1」の下限値が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
さらに本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は、A2/A1の上限値が10以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.7以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) (A2+A4)/(A1+A3)≧0.5
(式中、A1は下地基板の表側の主面の面積を表す。A2は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。A3は下地基板の裏側の主面の面積を表す。A4は下地基板の裏側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の裏側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は(A2+A4)/(A1+A3)の下限値が0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
さらに本発明の第2の態様のIII族窒化物結晶塊は、(A2+A4)/(A1+A3)の上限値が10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明の第2の態様では、III族窒化物結晶塊の表側の表面の面積A2が10mm
2以上であることが好ましく、20mm
2以上であることがより好ましく、40mm
2以上であることが特に好ましい。またA2が100000mm
2以下であることが好ましく、80000mm
2以下であることがより好ましく、60000mm
2以下であることが特に好ましい。
【0072】
本発明の第2の態様では、III族窒化物結晶塊の主面(C面)の寸法として、III族窒化物結晶塊の表側の主面51のたて方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)La3が10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが特に好ましく、350mm以下であることが好ましく、320mm以下であることがより好ましく、280mm以下であることが特に好ましい。
【0073】
本発明の第2の態様では、下記式(12)を満たすことが好ましい。
式(12)La3/La1≧0.5
(式中、La1は下地基板の表側の主面におけるa軸方向の最大長さを表し、La3は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面におけるa軸方向の最大長さを表す。)
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊の表側の主面のa軸方向の最大長さLa3は、前記下地基板のa軸方向の最大長さLa1の0.6倍以上であることがより好ましく、0.7倍以上であることが特に好ましく、2.0倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましく、1.4倍以下であることが特に好ましい。
【0074】
一方、本発明の第2の態様では、III族窒化物結晶塊の表側の主面51の横方向であるm軸方向の寸法(最大長さ)Lm3が8mm以上であることが好ましく、12mm以上であることがより好ましく、16mm以上であることが特に好ましく、300mm以下であることが好ましく、280mm以下であることがより好ましく、240mm以下であることが特に好ましい。
【0075】
本発明の第2の態様では、下記式(11)を満たすことが好ましい。
式(11) Lm3/Lm1≧0.5
(式中、Lm1は下地基板の表側の主面におけるm軸方向の最大長さを表し、Lm3は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面におけるm軸方向の最大長さを表す。)
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊の表側の主面のm軸方向の最大長さLm3は、前記下地基板のm軸方向の最大長さLm1の0.6倍以上であることがより好ましく、0.7倍以上であることが特に好ましく、1.5倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることがより好ましく、1.3倍以下であることが特に好ましい。
【0076】
本発明の第2の態様では、前述の第1の態様と異なり、III族窒化物結晶塊の裏側の主面(Ga面)は、表側の主面(N面)と寸法が異なっていることが通常である。
本発明の第2の態様では、III族窒化物結晶塊の裏側の主面(Ga面)の寸法として、III族窒化物結晶塊の裏側の主面52のたて方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)が10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが特に好ましく、350mm以下であることが好ましく、320mm以下であることがより好ましく、280mm以下であることが特に好ましい。また、III族窒化物結晶塊の裏側の主面(Ga面)のたて方向であるa軸方向の寸法についても、上述の式(11)を満たすことが好ましい。
一方、III族窒化物結晶塊の裏側の主面52の横方向であるm軸方向の寸法(最大長さ)が8mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましく、17mm以上であることが特に好ましく、300mm以下であることが好ましく、280mm以下であることがより好ましく、240mm以下であることが特に好ましい。また、III族窒化物結晶塊の裏側の主面(Ga面)の横方向であるm軸方向の寸法についても、上述の式(12)を満たすことが好ましい。
【0077】
本発明の第2の態様では、下記式(13)を満たすことが好ましい。
式(13) A4/A3≧0.8
(式中、A3は下地基板の裏側の主面の面積を表す。A4は下地基板の裏側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の裏側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
A4/A3は以上であることがより好ましく、0.9以上であることがより好ましく、1以上であることが特に好ましく、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
【0078】
本発明の第2の態様では、下記式(14)を満たすことが好ましい。
式(14) A4/A2>1.0
(式中、A2は下地基板の表側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の表側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。A4は下地基板の裏側の主面上に形成されたIII族窒化物結晶塊の表面のうち、下地基板の裏側の主面と略平行であり、かつ、面方位が略同一である表面の面積を表す。)
A4/A2は1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることが特に好ましく、10以下であることが好ましい。一方で、上限値は設定されないが、これは[10−11]面および[10−1−1]面の成長が優位となり(000−1)面が消失するがあるからである。
【0079】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のc軸方向の厚みLc2は、種結晶の反りの矯正と結晶成長後の結晶破損抑制の観点から、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることが特に好ましく、3mm以上であることがより特に好ましく、5mm以上であることがさらに特に好ましい。
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のたて方向であるa軸方向の寸法(最大長さ)La2が10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが特に好ましく、350mm以下であることが好ましく、320mm以下であることがより好ましく、280mm以下であることが特に好ましい。
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の横方向であるm軸方向の寸法(最大長さ)Lm2が8mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましく、17mm以上であることが特に好ましく、300mm以下であることが好ましく、280mm以下であることがより好ましく、240mm以下であることが特に好ましい。
【0080】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のc軸方向の寸法(最大長さ)Lc2は、前記下地基板のc軸方向の寸法Lc1の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましく、15倍以上であることが特に好ましく、100倍以下であることが好ましく、80倍以下であることがより好ましく、70倍以下であることが特に好ましい。
【0081】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のa軸方向の寸法(最大長さ)La2は、前記下地基板のa軸方向の寸法La1の1.03倍以上であることが好ましく、1.05倍以上であることがより好ましく、1.1倍以上であることが特に好ましく、3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることが特に好ましい。ここで、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のa軸方向の寸法(最大長さ)La2は、通常、下地基板の表側の主面直上のa軸方向の最大長さと一致する場合が多い。
【0082】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のm軸方向の寸法(最大長さ)Lm2は、前記下地基板のm軸方向の寸法Lm1の1.01倍以上であることが好ましく、1.03倍以上であることがより好ましく、1.05倍以上であることが特に好ましく、2.5倍以下であることが好ましく、2.2倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることが特に好ましい。ここで、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体のm軸方向の寸法(最大長さ)Lm1は、
図7、8に示されるように通常、下地基板の表側の主面直上のm軸方向の最大長さと一致する場合が多い。
【0083】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のc軸方向の成長厚みは、
図6〜8に不図示の長さであるが、Lc2−Lc1で表される長さであり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが特に好ましく、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。
【0084】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のa軸方向の成長厚みは、
図6〜8に不図示の長さであるが、La2−La1で表される長さであり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが特に好ましく、50mm以下であることが好ましく、45mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが特に好ましい。
【0085】
本発明の第2の態様では、C面を主面とする前記III族窒化物結晶塊全体の前記下地基板のm軸方向の成長厚みは、
図6〜8に不図示の長さであるが、Lm2−Lm1で表される長さであり、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることが特に好ましく、30mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
【0086】
本発明の第2の態様では、主面以外の面として半極性面と非極性面を有し、下記式(15)を満たすことが好ましい。
式(15) A5/A6≧0.1
(式中、A5はIII族窒化物結晶塊の表面のうち非極性面の総面積を表し、A6はIII族窒化物結晶塊の表面のうち半極性面の総面積を表す。)
A5/A6は0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが特に好ましく、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書中、A5/A6の値は、各非極性面と各半極性面の長辺が共通である場合、全非極性面の短辺の合計長さと全半極性面の短辺の合計長さから「全非極性面の短辺の合計長さ」/「全半極性面の短辺の合計長さ」を計算し、これを非極性面面積A5/半極性面面積の合計A6の値の近似値とすることもできる。このような態様においては、III族窒化物結晶塊は
図7のような形態となり、LMの長さ(C軸方向厚み)が大きいため、下地基板の主面と同等口径を有する基板を複数枚切り出すことができるため好ましい。
【0087】
本発明の第2の態様では、下記式(16)を満たすことが好ましい。
式(16) Lm2/Lm1≧1.0
(式中、Lm1は下地基板の表側の主面におけるm軸方向の最大長さを表し、Lm2はIII族窒化物結晶塊のm軸方向の最大長さを表す。)
Lm2/Lm1は1.05以上であることがより好ましく、1.10以上であることが特に好ましく、1.15以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.4以下であることが特に好ましい。このような態様においては、III族窒化物結晶塊は
図8のような形態となり、m軸方向への横方向成長が進んでLm2の長さ(m軸方向の最大長さ)が大きいため、下地基板の主面よりも大きい口径を有する基板を切り出すことができるため好ましい。
本発明の第2の態様では、下記式(17)を満たすことが好ましい。
式(16) La2/La1≧1.0
(式中、La1は下地基板の表側の主面におけるa軸方向の最大長さを表し、La2はIII族窒化物結晶塊のa軸方向の最大長さを表す。)
La2/La1は1.10以上であることがより好ましく、1.15以上であることが特に好ましく、1.2以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.6以下であることが特に好ましい。このような態様においては、III族窒化物結晶塊は
図8のような形態となり、a軸方向への横方向成長が進んでLa2の長さ(a軸方向の最大長さ)が大きいため、下地基板の主面よりも大きい口径を有する基板を切り出すことができるため好ましい。
【0088】
本発明のIII族窒化物結晶塊中のフッ素濃度と、塩素、臭素及びヨウ素の合計濃度の好ましい範囲は、前述の第1の態様の好ましい範囲と同様である。
【0089】
<アモノサーマル法による結晶成長方法>
以下に前記結晶成長方法に用いることのできる、鉱化剤、溶媒、原料について説明する。なお、本発明の第1の態様も第2の態様も、以下のアモノサーマル法による結晶成長方法における好ましい態様は同様である。
【0090】
(鉱化剤)
本発明におけるアモノサーマル法による窒化物結晶の成長に際しては、鉱化剤を用いることが好ましい。アンモニアなどの窒素を含有する溶媒に対する結晶原料の溶解度が高くないために、溶解度を向上させるために鉱化剤を用いる。
【0091】
前記鉱化剤として、フッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つとを含む鉱化剤を用いることが好ましい。
【0092】
前記鉱化剤に含まれるハロゲン元素の組み合わせは、塩素とフッ素、臭素とフッ素、ヨウ素とフッ素といった2元素の組み合わせであってもよいし、塩素と臭素とフッ素、塩素とヨウ素とフッ素、臭素とヨウ素とフッ素といった3元素の組み合わせであってもよいし、塩素と臭素とヨウ素とフッ素といった4元素の組み合わせであってもよい。好ましいのは、上述のようにa軸方向に発現する面を半極性面に制御する観点から、ヨウ素とフッ素を少なくとも含む組み合わせである。本発明で用いる鉱化剤に含まれるハロゲン元素の組み合わせと濃度比(モル濃度比)は、成長させようとしている窒化物結晶の種類や形状やサイズ、種結晶の種類や形状やサイズ、使用する反応装置、採用する温度条件や圧力条件などにより、適宜決定することができる。本発明では、下地基板の上に形成されるIII族窒化物結晶塊の形状が、前記一般式(1)を満たし、さらに本明細書中に記載の各好ましい範囲を満たすことができるように制御する方法の一例として、硬化剤濃度を変化させて、窒化物結晶の成長速度を制御する方法を挙げることができる。
【0093】
例えば、塩素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対して塩素濃度を1倍以上にすることが好ましく、5倍以上にすることがより好ましく、10倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対して塩素濃度を200倍以下にすることが好ましく、100倍以下にすることがより好ましく、50倍以下にすることがさらに好ましい。
例えば、ヨウ素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対してヨウ素濃度を0.1倍以上にすることが好ましく、0.5倍以上にすることがより好ましく、1倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対して塩素濃度を200倍以下にすることが好ましく、100倍以下にすることがより好ましく、50倍以下にすることがさらに好ましい。
【0094】
例えば、臭素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対して臭素濃度を0.1倍以上にすることが好ましく、0.5倍以上にすることがより好ましく、1倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対して臭素濃度を100倍以下にすることが好ましく、50倍以下にすることがより好ましく、20倍以下にすることがさらに好ましい。
例えば、ヨウ素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対してヨウ素濃度を0.1倍以上にすることが好ましく、0.5倍以上にすることがより好ましく、1倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対してヨウ素濃度を100倍以下にすることが好ましく、50倍以下にすることがより好ましく、20倍以下にすることがさらに好ましい。
一般に鉱化剤のフッ素濃度を高くすると、窒化物結晶のm軸方向及びa軸方向の成長速度が速くなる傾向にあり、相対的にc軸方向の成長と半極性面に垂直な方向の成長が遅くなる傾向にある。この意味することは鉱化剤濃度を変化させることで面方位による成長速度の違いを制御することができ、よってアズグロウンのIII族窒化物結晶塊に出現する面の大きさをコントロールすることが出来るということである。すなわち、III族窒化物結晶塊の表面に特定の面の面積を大きくさせるためには、その面に垂直な方向の成長速度を相対的に遅くすればよい。逆に特定の面の面積を小さくするためには、その面に垂直な方向の成長速度を相対的に向上させればよい。たとえば、半極性面の面積を大きくするためには、当該半極性面に垂直な方向の成長速度を低下させればよいので、鉱化剤のフッ素濃度を高くしてやればよい。
一方、鉱化剤の塩素濃度、臭素濃度、ヨウ素濃度を高くすると、原料の溶解度が温度に対して正の相関をより強く示すようになり、また、相対的にC軸方向の成長速度が速くなる傾向にある。塩素、臭素、ヨウ素の順番にこの傾向が強まってゆく。前述のように、成長速度を変化させることにより出現する面の大きさを制御することが出来る。
鉱化剤濃度を変化させることのほかにも、ドーパントにより成長速度を変化させ、下地基板の上に形成されるIII族窒化物結晶塊の形状が、前記一般式(1)を満たし、さらに本明細書中に記載の各好ましい範囲を満たすことができるように制御することが可能である。例えば、結晶中の酸素濃度を高くすることにより、半極性面に垂直な方向の成長速度を低下させることが出来る。すなわち結晶中の酸素濃度を高くすることで出現する半極性面の面積を大きくすることが出来る。
そのほかのドーパントでも結晶面による成長速度を変化させることが可能である。
【0095】
ハロゲン元素を含む鉱化剤の例としては、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素、アンモニウムヘキサハロシリケート、及びヒドロカルビルアンモニウムフルオリドや、ハロゲン化テトラメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化ベンジルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジプロピルアンモニウム、及びハロゲン化イソプロピルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩、フッ化アルキルナトリウムのようなハロゲン化アルキル金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化金属等が例示される。このうち、好ましくはハロゲン化アルカリ、アルカリ土類金属のハロゲン化物、金属のハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素であり、さらに好ましくはハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アンモニウム、周期表13族(III族)金属のハロゲン化物、ハロゲン化水素であり、特に好ましくはハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化水素である。
【0096】
前記製造方法では、ハロゲン元素を含む鉱化剤とともに、ハロゲン元素を含まない鉱化剤を用いることも可能であり、例えばNaNH
2やKNH
2やLiNH
2などのアルカリ金属アミドと組み合わせて用いることもできる。ハロゲン化アンモニウムなどのハロゲン元素含有鉱化剤とアルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤とを組み合わせて用いる場合は、ハロゲン元素含有鉱化剤の使用量を多くすることが好ましい。具体的には、ハロゲン元素含有鉱化剤100質量部に対して、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤を50〜0.01質量部とすることが好ましく、20〜0.1質量部とすることがより好ましく、5〜0.2質量部とすることがさらに好ましい。アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤を添加することによって、c軸方向の結晶成長速度に対するm軸の結晶成長速度の比(m軸/c軸)を一段と大きくすることも可能である。
【0097】
前記製造方法で成長させる窒化物結晶に不純物が混入するのを防ぐために、必要に応じて鉱化剤は精製、乾燥してから使用することができる。前記鉱化剤の純度は、通常は95%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.99%以上である。
【0098】
前記鉱化剤に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1.0ppm以下であることがさらに好ましい。これらの範囲で酸素濃度をコントロールすることで、酸素が高濃度になるほど半極性面に垂直な方向の成長速度が低下する、すなわち半極性面の面積が大きくなる傾向にある。一方、酸素濃度が低いほど半極性面に垂直な方向の成長速度が向上する、すなわち半極性面の面積が小さくなる傾向にある。
【0099】
なお、前記結晶成長を行う際には、反応容器にハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化リン、ハロゲン化シリコン、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化ビスマスなどを存在させておいてもよい。
【0100】
鉱化剤に含まれるハロゲン元素の溶媒に対するモル濃度は0.1mol%以上とすることが好ましく、0.3mol%以上とすることがより好ましく、0.5mol%以上とすることがさらに好ましい。また、鉱化剤に含まれるハロゲン元素の溶媒に対するモル濃度は30mol%以下とすることが好ましく、20mol%以下とすることがより好ましく、10mol%以下とすることがさらに好ましい。濃度が低すぎる場合、溶解度が低下し成長速度が低下する傾向がある。一方濃度が濃すぎる場合、溶解度が高くなりすぎて自発核発生が増加したり、過飽和度が大きくなりすぎるため制御が困難になるなどの傾向がある。
【0101】
(溶媒)
前記アモノサーマル法に用いられる溶媒としては、窒素を含有する溶媒を用いることができる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒が挙げられる。前記溶媒としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第1級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0102】
前記溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。アンモニアを溶媒として用いる場合、その純度は通常99.9%以上であり、好ましくは99.99%以上であり、さらに好ましくは99.999%以上であり、特に好ましくは99.9999%以上である。
【0103】
(原料)
前記製造方法においては、種結晶上に成長結晶として成長させようとしている窒化物結晶を構成する元素を含む原料を用いる。例えば、周期表13族(III族)金属の窒化物結晶を成長させようとする場合は、周期表13族(III族)金属を含む原料を用いる。好ましくは13族(III族)窒化物結晶の多結晶原料及び/又は13族(III族)金属であり、より好ましくは窒化ガリウム及び/又は金属ガリウムである。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては13族(III族)元素がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有してもよく、例えば、結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。
【0104】
前記多結晶原料の製造方法は、特に制限されない。例えば、アンモニアガスを流通させた反応容器内で、金属又はその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶を用いることもできる。
【0105】
本発明において原料として用いる多結晶原料に含まれる水や酸素の量は、少ないことが好ましい。多結晶原料中の酸素含有量は、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。多結晶原料への酸素の混入のしやすさは、水分との反応性又は吸収能と関係がある。多結晶原料の結晶性が悪いほど表面にNH基などの活性基が多く存在し、それが水と反応して一部酸化物や水酸化物が生成する可能性がある。このため、多結晶原料としては、通常、できるだけ結晶性が高い物を使用することが好ましい。結晶性は粉末X線回折の半値幅で見積もることができ、(100)の回折線(ヘキサゴナル型窒化ガリウムでは2θ=約32.5°)の半値幅が、通常0.25°以下、好ましくは0.20°以下、さらに好ましくは0.17°以下である。
【0106】
(反応容器)
本発明の窒化物結晶の製造方法は、反応容器中で実施することができる。
【0107】
前記反応容器は、窒化物結晶を成長させるときの高温高圧条件に耐え得るもの中から選択することができる。前記反応容器としては、特表2003−511326号公報(国際公開第01/024921号パンフレット)や特表2007−509507号公報(国際公開第2005/043638号パンフレット)に記載されるように反応容器の外から反応容器とその内容物にかける圧力を調整する機構を備えたものであってもよいし、そのような機構を有さないオートクレーブであってもよい。
【0108】
前記反応容器は、耐圧性と耐食性を有する材料で構成されているものが好ましく、特にアンモニア等の溶媒に対する耐食性に優れたNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましい。より好ましくはNi系の合金であり、具体的には、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標、以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標、以下同じ)、RENE41(Teledyne Allvac, Incの登録商標)、Inconel718(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標)、ハステロイ(Haynes International,Incの登録商標)、ワスパロイ(United Technologies,Inc.の登録商標)が挙げられる。
【0109】
これらの合金の組成比率は、系内の溶媒の温度や圧力条件、及び系内に含まれる鉱化剤及びそれらの反応物との反応性及び/又は酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。これらを反応容器の内面を構成する材料として用いるには、反応容器自体をこれらの合金を用いて製造してもよく、内筒として薄膜を形成して耐圧性容器内に反応容器として設置してもよく、任意の反応容器の材料の内面にメッキ処理を施してもよい。
【0110】
反応容器の耐食性をより向上させるために、貴金属の優れた耐食性を利用して、貴金属を反応容器の内表面をライニング又はコーティングしてもよい。また、反応容器の材質を貴金属とすることもできる。ここでいう貴金属としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、及びこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐食性を有するPtを用いることが好ましい。
【0111】
上述のような方法を用いることにより、反応容器に由来するNiなどの不純物や酸素のなどの不純物を低減した窒化物結晶を成長することができる。
【0112】
本発明の窒化物結晶の製造方法に用いることのできる反応容器を含む結晶製造装置の具体例を
図3に示す。
図3は、本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。
図3に示される結晶製造装置においては、オートクレーブ1中に反応容器(内筒)として装填されるカプセル20中で結晶成長を行う。カプセル20中は、原料を溶解するための原料溶解領域9と結晶を成長させるための結晶成長領域6から構成されている。原料溶解領域9には原料8とともに溶媒や鉱化剤を入れることができ、結晶成長領域6には種結晶7をワイヤーで吊すなどして設置することができる。原料溶解領域9と結晶成長領域6の間には、2つの領域を区画バッフル板5が設置されている。バッフル板5の開孔率は2〜60%であるものが好ましく、3〜40%であるものがより好ましい。バッフル板の表面の材質は、反応容器であるカプセル20の材料と同一であることが好ましい。また、より耐食性を持たせ、成長させる結晶を高純度化するために、バッフル板の表面は、Ni、Ta、Ti、Nb、Pd、Pt、Au、Ir、またはこれらの合金、pBNであることが好ましく、Pd、Pt、Au、Ir、またはこれらの合金、pBNであることがより好ましく、Pt、またはその合金であることが特に好ましい。
図3に示される結晶製造装置では、オートクレーブ1の内壁2とカプセル20との間の空隙には、第2溶媒を充填することができるようになっている。ここには、バルブ10を介して窒素ボンベ13から窒素ガスを充填したり、アンモニアボンベ12からマスフローメーター14で流量を確認したりしながら第2溶媒としてアンモニアを充填することができる。また、真空ポンプ11により必要な減圧を行うこともできる。なお、本発明の窒化物結晶の製造方法を実施する際に用いる結晶製造装置には、バルブ、マスフローメーター、導管は必ずしも設置されていなくてもよい。
【0113】
前記オートクレーブにより耐食性を持たせるためにライニングを使用することもできる。ライニングする材料として、Pt、Ir、Ag、Pd、Rh、Cu、Au及びCのうち少なくとも一種類以上の金属又は元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金又は化合物であることが好ましく、より好ましくは、ライニングがしやすいという理由でPt,Ag、Cu及びCのうち少なくとも一種類以上の金属又は元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金又は化合物である。例えば、Pt単体、Pt−Ir合金、Ag単体、Cu単体やグラファイトなどが挙げられる。
【0114】
(製造工程)
本発明の窒化物結晶の製造方法の一例について説明する。本発明の窒化物結晶の製造方法を実施する際には、まず、反応容器内に、種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止する。
【0115】
前記材料を反応容器内に導入するのに先だって、反応容器内は脱気しておいてもよい。また、材料の導入時には、窒素ガスなどの不活性ガスを流通させてもよい。反応容器内への種結晶の装填は、通常は、原料及び鉱化剤を充填する際に同時又は充填後に装填する。種結晶は、反応容器内表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に固定することが好ましい。装填後には、必要に応じて加熱脱気をしてもよい。
【0116】
図3に示す製造装置を用いる場合は、反応容器であるカプセル20内に種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止した後に、カプセル20を耐圧性容器(オートクレーブ)1内に装填し、好ましくは耐圧性容器と該反応容器の間の空隙に第2溶媒を充填して耐圧容器を密閉する。
【0117】
その後、全体を加熱して反応容器内を超臨界状態又は亜臨界状態とする。超臨界状態では一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を意味する。例えば、原料充填部では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶成長部では亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
【0118】
超臨界状態にする場合、反応混合物は、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニア溶媒を用いた場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaであるが、反応容器の容積に対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力を遥かに越える。本発明において「超臨界状態」とは、このような臨界圧力を越えた状態を含む。反応混合物は、一定の容積の反応容器内に封入されているので、温度上昇は流体の圧力を増大させる。一般に、T>Tc(1つの溶媒の臨界温度)及びP>Pc(1つの溶媒の臨界圧力)であれば、流体は超臨界状態にある。
【0119】
超臨界条件では、窒化物結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に鉱化剤の反応性及び熱力学的パラメータ、すなわち温度及び圧力の数値に依存する。窒化物結晶の合成中あるいは成長中、反応容器内の圧力は結晶性および生産性の観点から、120MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがより好ましく、180MPa以上にすることがさらに好ましい。また、反応容器内の圧力は安全性の観点から、700MPa以下にすることが好ましく、500MPa以下にすることがより好ましく、350MPa以下にすることがさらに好ましく、300MPa以下にすることが特に好ましい。圧力は、温度及び反応容器の容積に対する溶媒体積の充填率によって適宜決定される。本来、反応容器内の圧力は、温度と充填率によって一義的に決まるものではあるが、実際には、原料、鉱化剤などの添加物、反応容器内の温度の不均一性、及び自由容積の存在によって多少異なる。
【0120】
反応容器内の温度範囲は、結晶性および生産性の観点から、下限値が500℃以上であることが好ましく、515℃以上であることがより好ましく、530℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、安全性の観点から、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、630℃以下であることがさらに好ましい。本発明の窒化物結晶の製造方法では、反応容器内における原料充填領域の温度が、結晶成長領域の温度よりも高いことが好ましい。原料充填領域と結晶成長領域との温度差(|ΔT|)は、結晶性および生産性の観点から、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下が特に好ましい。反応容器内の最適な温度や圧力は、結晶成長の際に用いる鉱化剤や添加剤の種類や使用量等によって、適宜決定することができる。
【0121】
前記の反応容器内の温度範囲、圧力範囲を達成するための反応容器への溶媒の注入割合、すなわち充填率は、反応容器のフリー容積、すなわち、反応容器に多結晶原料、及び種結晶を用いる場合には、種結晶とそれを設置する構造物の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積、またバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積の溶媒の沸点における液体密度を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%とする。
【0122】
反応容器内での窒化物結晶の成長は、熱電対を有する電気炉などを用いて反応容器を加熱昇温することにより、反応容器内をアンモニア等の溶媒の亜臨界状態又は超臨界状態に保持することにより行われる。加熱の方法、所定の反応温度への昇温速度に付いては特に限定されないが、通常、数時間から数日かけて行われる。必要に応じて、多段の昇温を行ったり、温度域において昇温スピードを変えたりすることもできる。また、部分的に冷却しながら加熱したりすることもできる。
【0123】
なお、前記の「反応温度」は、反応容器の外面に接するように設けられた熱電対、及び/又は外表面から一定の深さの穴に差し込まれた熱電対によって測定され、反応容器の内部温度へ換算して推定することができる。これら熱電対で測定された温度の平均値をもって平均温度とする。通常は、原料溶解領域の温度と結晶成長領域の温度の平均値を平均温度とする。
【0124】
本発明の窒化物結晶の製造方法においては、種結晶に前処理を加えておくことができる。前記前処理としては、例えば、種結晶にメルトバック処理を施したり、種結晶の成長結晶成長面を研磨したり、種結晶を洗浄するなどが挙げられる。
【0125】
本発明の窒化物結晶の製造方法においては、オートクレープを昇温する際に、一定の温度を保持して、種結晶の成長結晶成長面にメルトバック処理を施してもよい。当該メルトバック処理によって、種結晶の成長結晶成長面や、装置中の白金部材に付着した結晶核を溶解することができる。前記メルトバック処理の条件としては、温度差(|ΔT|)が0℃以上であることが好ましく、10℃以上が更に好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましく、60℃以下が特に好ましい。また、メルトバック処理の際の結晶成長領域の温度としては、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることがさらに好ましい。また、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましい。原料充填領域の温度としては、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、590℃以上であることがさらに好ましい。また、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましい。
【0126】
メルトバック処理時の反応容器内の圧力は、100MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがさらに好ましく、180MPa以上にすることが特に好ましい。また、メルトバック処理の処理時間は、1時間以上が好ましく、5時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましい。また、200時間以下が好ましく、100時間以下が更に好ましく、50時間以下が特に好ましい。
【0127】
前記前処理において、種結晶の表面(成長結晶成長面)を研磨するには、例えば、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等で行うことができる。前記種結晶の表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡によって計測した二乗平均平方根粗さ(Rms)が、メルトバックとそれに続く結晶成長を均等に行うとの観点から、1.0nm以下であることが好ましく、0.5nmが更に好ましく、0.3nmが特に好ましい。
【0128】
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数百日とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温又は降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内に反応容器を設置したまま放冷してもかまわないし、反応容器を電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
【0129】
反応容器外面の温度、あるいは推定される反応容器内部の温度が所定温度以下になった後、反応容器を開栓する。このときの所定温度は特に限定はなく、通常、−80℃〜200℃、好ましくは−33℃〜100℃である。ここで、反応容器に接続したバルブの配管接続口に配管を接続し、水などを満たした容器に通じておき、バルブを開けてもよい。さらに必要に応じて、真空状態にするなどして反応容器内のアンモニア溶媒を十分に除去した後、乾燥し、反応容器の蓋等を開けて生成した窒化物結晶及び未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
【0130】
なお、前記製造方法にしたがって窒化ガリウムを製造する場合、前記以外の材料、製造条件、製造装置、工程の詳細については特開2009−263229号公報を好ましく参照することができる。該公開公報の開示全体を本明細書に引用して援用する。
【0131】
種結晶上に窒化物結晶を成長させた後に、後処理を加えてもよい。前記後処理の種類や目的は特に制限されない。例えば、ピットやクラックなどの結晶欠陥を容易に観察できるようにするために、育成後の冷却過程で結晶表面をメルトバックしてもよい。
【0132】
<III族窒化物結晶塊の用途>
(ウェハー)
本発明のIII族窒化物結晶塊を所望の方向に切り出すことにより、任意の結晶方位を有するウェハー(半導体基板)を得ることができる。よって、III族窒化物結晶塊の形状をコントロールすることで、所望の面方位の口径が大きなウェハーを、簡便に得ることができる。
【0133】
本発明のIII族窒化物結晶塊から、C面を主面とするウェハーを切り出して例えば、種結晶として用いることで、高品質な窒化物結晶を製造することができる。本発明のIII族窒化物結晶塊を種結晶として用いてアモノサーマル法等により例えばc軸方向に窒化物結晶を成長させることで高品質な結晶の大型化を実現することができる。このように、前記C面を主面とするウェハーを種結晶として結晶をc軸方向に成長させた窒化物結晶からは、C面に平行な方向の主面を有するウェハーを効率よく切り出すことが可能となる。加えて、C面に垂直な方向に切り出して例えばA面を主面とするウェハーやM面を主面とするウェハーを得ることもできる。このようにして得られたA面又はM面を主面とするウェハーを更に種結晶として用い、結晶を成長させて大型のA面又はM面を主面とするウェハーを製造してもよい。
【0134】
(デバイス)
本発明のIII族窒化物結晶塊やウェハーは、デバイス、即ち発光素子や電子デバイスなどの用途に好適に用いられる。本発明の窒化物結晶やウェハーが用いられる発光素子としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、それらと蛍光体を組み合わせた発光素子などを挙げることができる。また、本発明の窒化物結晶やウェハーが用いられる電子デバイスとしては、高周波素子、高耐圧高出力素子などを挙げることができる。高周波素子の例としては、トランジスター(HEMT、HBT)があり、高耐圧高出力素子の例としては、サイリスター(IGBT)がある。本発明の窒化物結晶やウェハーは、均一で高品質であるという特徴を有することから、前記のいずれの用途にも適している。中でも、均一性が高いことが特に要求される電子デバイス用途に適している。
【実施例】
【0135】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。以下に記載する実施例では、
図3に示す結晶製造装置を用いて窒化物単結晶を成長させた。
【0136】
[実施例1]
RENE41製のオートクレーブ1を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製のカプセル20を反応容器として結晶成長を行った。原料8として多結晶GaN粒子を、カプセル下部領域(原料溶解領域9)内に設置した。次に鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH
4Iと純度99.999%のGaF
3とをそれぞれ充填NH
3量に対してI濃度が0.75mol%、F濃度が0.375mol%となるよう秤量しカプセル内に投入した。
【0137】
さらに下部の原料溶解領域9と上部の結晶成長領域6との間に白金製のバッフル板5を設置した。種結晶7としてHVPE法により成長した六方晶系GaN単結晶から切り出した板状のウェハー(c軸方向c1が10mm、a軸方向a1が20mm、m軸方向m1が0.3mm)を用いた。種結晶の主面は(10−10)面であるM面であり、主面面積は表裏ともに200mm
2であった。種結晶7を直径0.2mmの白金ワイヤーにより白金製種結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域6に設置した。
【0138】
つぎにカプセル20の上部にPt−Ir製のキャップをTIG溶接により接続したのち、重量を測定した。キャップ上部に接続されたチューブに
図3のバルブ10と同様のバルブを接続し、真空ポンプ11に通ずるようバルブを操作し真空脱気した。その後バルブを窒素ボンベ13に通ずるように操作しカプセル内を窒素ガスにてパージを行った。前記真空脱気、窒素パージを5回行った後、真空ポンプに繋いだ状態で加熱をしてカプセル内の水分や付着ガスの脱気を行なった。カプセルを室温まで自然冷却したのちバルブを閉じ、真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。
【0139】
続いてNH
3ボンベ12に通ずるように導管のバルブを操作したのち再びバルブを開け外気に触れることなくNH
3を充填した。
【0140】
つづいてバルブ10が装着されたオートクレーブ1にカプセル20を挿入した後に蓋を閉じた。次いでオートクレーブに接続されたバルブ10を介して導管を真空ポンプ11に通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した。カプセルと同様に窒素ガスパージを複数回行った。その後、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスエタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブ10を閉じた。次いで導管をNH
3ボンベ12に通じるように操作した後、再びバルブ10を開け連続して外気に触れることなくNH
3をオートクレーブ1に充填した。
【0141】
続いてオートクレーブ1を上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブ外表面の結晶成長領域6の温度が595℃、原料溶解領域9の温度が605℃(平均温度600℃)になるよう昇温し、設定温度に達した後、その温度にて10日間保持した。オートクレーブ内の圧力は215MPaであった。また保持中のオートクレーブ外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
【0142】
その後、オートクレーブ1の外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブ10を開放し、オートクレーブ内のNH
3を取り除いた。その後オートクレーブ1を計量しNH
3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセル20を取り出した。カプセル上部に接続されたチューブに穴を開けカプセル内部からNH
3を取り除いた。カプセル内部を確認したところ種結晶に窒化ガリウム結晶が析出していた。以上の工程により、種結晶と窒化ガリウム結晶を含む実施例1の窒化ガリウム結晶塊を取得した。
成長したアズグロウン状態の結晶塊全体の概略は、
図4および
図5に記載した形状であった。結晶塊は、結晶塊主面の寸法が、たて11.8mm、横21.7mm、種結晶の主面垂直方向の厚み4.1mmであり、主面は(10−10)面であり、結晶塊主面面積は表裏ともに256.06mm
2であった。このときの結晶塊主面面積A2の種結晶主面面積A1に対する面積比を計算し、下記表1に記載した。
また、結晶塊全体の寸法は、c軸長c2が14.4mm、a軸長a2が24.1mm、m軸長m2が4.1mmであった。結晶塊全体の寸法について、種結晶からの成長を計算し、その結果を下記表2に記載した。また、あわせてm軸方向の成長に対する、c軸方向またはa軸方向の成長厚みを計算し、その結果を下記表2に記載した。
【0143】
また、得られた結晶塊の側面には、複数の半極性面と非極性面が複合した面が出現していた。前記半極性面は[10−11]面と[10−1−1]面であり、非極性面は[10−10]面であった。得られた結晶塊全体の概略は、
図4および
図5の形状であり、結晶表面が[10−11]、[10−1−1]、[10−10]および(0001)面からなる非常に特徴的な形状であった。
【0144】
[実施例2〜5]
実施例1において、用いた種結晶のサイズ、各鉱化剤のアンモニアに対する添加濃度、結晶成長時の平均温度、圧力、育成日数を下記表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5の窒化ガリウム結晶塊を取得した。
実施例2〜5の窒化ガリウム結晶塊の形状の概略はいずれも実施例1と同様に
図4および
図5で表される形状であり、非常に特徴的な形状であった。実施例2〜5の窒化ガリウム結晶塊それぞれの主面および全体形状のサイズ、面積を測定した。その結果を下記表1および表2に記載した。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
[実施例6]
実施例1において、主面がC面のGaN単結晶から切り出した板状のウェハーに変更し、結晶成長時の平均温度、圧力、育成日数を下記表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6の窒化ガリウム結晶塊を取得した。但し、種結晶のN面を表側の主面としてその主面面積をA1とし、種結晶のGa面を裏側の主面としてその主面面積をA3とした。
実施例6の窒化ガリウム結晶塊の形状の概略は
図8で表される形状であり、結晶表面が[10−11]、[10−1−1]および[0001]面からなる非常に特徴的な形状であった。実施例6の窒化ガリウム結晶塊それぞれの主面および全体形状のサイズ、面積を測定した。但し、C面基板を種結晶として用いた結晶塊の主面面積は主面が略六角形として算出し、種結晶の表側(N面)側に形成された結晶塊の主面面積をA2とし、種結晶の裏側(Ga面)側に形成された結晶塊の主面面積をA4とした。
さらに、実施例6の窒化ガリウム結晶塊の側面について、
図8に示した非極性面幅LMと、半極性面幅LS1およびLS2を測定した。各非極性面と半極性面の長辺は共通であることから、LM、LS1およびLS2の長さをもとにLM/(LS1+LS2)を計算し、これを非極性面面積A5/半極性面面積の合計A6の値の近似値とした。なお、実施例6ではM面が消失しており、LMが0mmであった。
以上の結果を下記表3および表4に記載した。
【0148】
[実施例7]
実施例6において、用いた種結晶のサイズ、結晶成長時の平均温度、圧力、育成日数、オートクレーブの半径を下記表1に記載のとおりに変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7の窒化ガリウム結晶塊を取得した。
実施例7の窒化ガリウム結晶塊の形状の概略は
図6および
図7の形状であり、結晶表面が[10−11]、[10−1−1]、[10−10]および[0001]面からなる非常に特徴的な形状であった。実施例7の窒化ガリウム結晶塊それぞれの主面および全体形状のサイズ、面積、結晶塊種結晶直上m軸長を実施例6と同様にして測定した。
さらに、実施例7の窒化ガリウム結晶塊の側面について、
図6および
図7に示した側面における非極性面幅LMと半極性面幅LS1およびLS2を実施例6と同様にして測定し、LM/(LS1+LS2)を計算し、非極性面面積A5/半極性面面積の合計A6の値の近似値とした。なお、実施例7では側面にM面が形成されていた。
以上の結果を下記表3および表4に記載した。
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
表1〜表4より、各実施例で得られたIII族窒化物結晶塊は、いずれも下地基板の表側の主面および裏側の主面が極性面、非極性面または半極性面であり、結晶表面が[10−11]および[10−1−1]面を少なくとも含み、A2/A1≧0.5を満たすことがわかった。
なお、各実施例で用いた種結晶と得られたIII族窒化物結晶塊はいずれも、非極性面、極性面、半極性面のオフ角がいずれの面においても0.1°以下であった。