(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の偏光フィルム10、11を、
図1、
図2を参照しながら説明する。偏光フィルム10、11は、偏光子1に、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材から形成された透明樹脂層2が(直接)設けられている。
図1(A)では、偏光子1、透明樹脂層2のみが示されているが、
図1(B)に示すように、
図1(A)における、偏光子1の側には、樹脂基材3が設けられていてもよい。樹脂基材3としては、例えば、薄型の偏光子1を製造する際に用いられる樹脂基材が挙げられる。
【0029】
また、
図2の偏光フィルム11では、
図1(A)の偏光フィルム10に保護フィルム4が設けられている。保護フィルム4は、
図1(A)の偏光フィルム10の偏光フィルムの片面または両面に設けることができる。
図2(A)では、保護フィルム4が偏光子1の側にのみ設けられているが、保護フィルム4は透明樹脂層2の側にのみ設けることもできる。
図2(B)では、
図1(A)の偏光フィルム10の両側に保護フィルム4が設けられている。また、保護フィルム4は、2枚以上を積層して用いることもできる。
図2(C)では、偏光子1の片側に、保護フィルム4が2枚積層されている場合である。なお、
図2では図示していないが、偏光子1または透明樹脂層2と保護フィルム4とは接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層されている。また図示していないが、保護フィルム4に易接着層を設けたり活性化処理を施したりして、当該易接着層と接着剤層を積層することができる。
【0030】
また、図示していないが、本発明の偏光フィルム10、11には、粘着剤層を設けることができる。さらには、粘着剤層にはセパレータを設けることができる。また本発明の偏光フィルム10、11(特に、保護フィルム4を有する場合)には、表面保護フィルムを設けることができる。少なくともセパレータを有する粘着剤層付偏光フィルム(さらには、表面保護フィルムを有するもの)は巻回体として用いることができ、例えば、巻回体から繰り出され、セパレータにより搬送された粘着剤層付偏光フィルムを、粘着剤層を介して画像表示パネルの表面に貼り合せる方式(「ロール・トゥ・パネル方式」ともいう。代表的には、特許第4406043号明細書)へ適用して、画像表示装置を連続的に製造することができる。
【0031】
<偏光子>
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的には2〜25μmである。
【0032】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0033】
前記偏光子としては、厚み15μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。偏光子の厚みは薄型化および熱衝撃によるクラック耐性の観点から12μm以下であるのが好ましく、さらには10μm以下、さらには8μm以下、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0034】
偏光子は延伸安定性や光学耐久性の点からホウ酸を含有させることができる。本発明では、偏光子に含まれるホウ酸含有量を、貫通クラック等のクラック抑制の観点から、偏光子全量に対して20重量%以下であるのが好ましく、さらには18重量%以下、さらには16重量%以下であることが好ましい。偏光子に含まれるホウ酸含有量が20重量%を超える場合には、偏光子の厚みを15μm以下に制御した場合であっても偏光子の収縮応力が高まり貫通クラックが発生しやすくなるため好ましくない。一方、偏光子の延伸安定性や光学耐久性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10重量%以上であることが好ましく、さらには12重量%以上であることが好ましい。
【0035】
厚み15μm以下の薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
特許第5587517号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光膜(偏光子)またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光膜(偏光子)を挙げることができる。
【0036】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>−(10
0.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたことが好ましい。前記条件を満足するように構成された偏光膜は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m
2以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0037】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0038】
<樹脂基材>
なお、
図1(B)に示した樹脂基材(延伸用樹脂基材)は、前記薄型偏光膜の製造に適用されたものを用いることができる。樹脂基材の形成材料としては、各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミドレオ樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合樹脂等が挙げられる。これらのなかでも製造のしやすさ及びコスト軽減の点から、エステル系樹脂が好ましい。エステル系熱可塑性樹脂基材は、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材または結晶性エステル系熱可塑性樹脂基材を用いることができる。
【0039】
<保護フィルム>
前記保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。
【0040】
なお、保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0041】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルムを用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0042】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0043】
保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、さらには、5〜150μm、特に、20〜100μmの薄型の場合に特に好適である。
【0044】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面(特に、
図1の態様)には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0045】
<介在層>
前記保護フィルムと偏光子は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層される。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。
【0046】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0047】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0048】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0049】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0050】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30〜300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚みは、さらに好ましくは60〜250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1〜200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。
【0051】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0052】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常、調製される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0053】
粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0054】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
<透明樹脂層>
透明樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材から形成される。透明樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂は、「ポリビニルアルコール系樹脂」である限り、偏光子が含有するポリビニルアルコール系樹脂と同一でも異なってもいてもよい。
【0056】
透明樹脂層は、前記形成材を、例えば、偏光子に塗布することにより形成することができる。透明樹脂層は、偏光子の少なくとも片面に設けられる。透明樹脂層の厚さは0.2μm以上であり、当該厚さの透明樹脂層により、クラックの発生を抑制することができる。前記透明樹脂層の厚さは0.4μm以上であるのが好ましく、さらには0.5μm以上であるのが好ましく、さらには0.7μm以上であるのが好ましい。一方、透明樹脂層の厚くなりすぎると光学信頼性と耐水性が低下するため、透明樹脂層の厚さは6μm以下であるのが好ましく、さらには5μm以下、さらには3μm以下であるのが好ましい。
【0057】
また、本発明の透明樹脂層中に含まれる酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量は、加熱加湿試験における光学信頼性の観点から、1重量%未満になるように制御されている。前記酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量は0.5重量%以下であることが好ましく、さらには0.3重量%以下であることが好ましく、さらには0.05重量%以下であることが好ましい。前記酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量の制御は、透明樹脂層の形成に用いる形成材として、ポリビニルアルコール系樹脂として、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量の割合が小さいもの、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂組成物中の酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量の割合が1重量%未満のものを用いることにより制御することができる。
【0058】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。また、ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物が挙げられる。前記共重合性を有する単量体がエチレンの場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体が得られる。また、前記共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。耐湿熱性や耐水性を満足させる観点から、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコールが好ましい。
【0059】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、例えば、96モル%以上のものを用いる。耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、ケン化度は99モル%以上が好ましく、さらには99.3モル%以上が好ましく、さらには99.7モル%以上が好ましい。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。ケン化度は、ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0060】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、500以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、平均重合度は、1000以上が好ましく、さらには1500以上が好ましく、さらには2000以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度はJIS−K6726に準じて測定される。
【0061】
また前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記ポリビニルアルコールまたはその共重合体の側鎖に親水性の官能基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。前記親水性の官能基としては、例えば、アセトアセチル基、カルボニル基等が挙げられる。その他、ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0062】
本発明の透明樹脂層は、前記のように、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量が1重量%未満になるように制御されている。その制御は、例えば、下記のように透明樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂から、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムを洗浄することにより行うことができる。
【0063】
<酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの洗浄方法>
ポリビニルアルコール樹脂は、酢酸ビニルモノマーを重合し、得られたポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造されるが、その製造過程において酢酸ナトリウム(または酢酸カリウム)が含有される。このポリビニルアルコール樹脂中の酢酸ナトリウム(または酢酸カリウム)の洗浄方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、特開2002−301715号公報、特開2002−60495号公報、特開2007−245432号公報、国際公開第2011/108152号パンフレットなどに記載の方法を採用することができる。なお、洗浄方法は、いかなる手段で酢酸ナトリウム(または酢酸カリウム)を洗浄してもよいが、本発明の効果を得るためには、酢酸ナトリウム(または酢酸カリウム)が目的の含有量になるまで洗浄工程を複数回繰り返して行うことが好ましい。
【0064】
透明樹脂層は、硬化性成分を含有しない形成材から形成することができる。例えば前記ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)を主成分として含有する形成材から形成することができる。
【0065】
前記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分として含有する形成材には、硬化性成分(架橋剤)等を含有することができる。透明樹脂層または形成材(固形分)中のポリビニルアルコール系樹脂の割合は、80重量%以上であるのが好ましく、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上であるのが好ましい。但し、前記形成材には、硬化性成分(架橋剤)を含有しないことが好ましい。
【0066】
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。たとえば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの水溶性ジヒドラジン;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂や水溶性ジヒドラジンが好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好まし。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。
【0067】
前記硬化性成分(架橋剤)は、耐水性向上の観点から用いることができるが、その割合は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であるのが好ましい。
【0068】
前記形成材は、前記ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解させた溶液として調製される。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶剤として水を用いた水溶液として用いるのが好ましい。前記形成材(例えば水溶液)における、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0069】
なお、前記形成材(例えば水溶液)には、添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0070】
前記透明樹脂層は、前記形成材を、偏光子の他の片面(保護フィルムを有しない面)に、塗布して乾燥することにより形成することができる。前記形成材の塗布は、乾燥後の厚みが0.2μm以上になるように行なう。塗布操作は特に制限されず、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等各種手段を採用できる。塗工された前記形成材の乾燥温度は、通常、60〜120℃であるのが好ましく、さらには70〜100℃であるのが好ましい。乾燥時間は10〜300秒間であるのが好ましく、さらには20〜120秒間であるのが好ましい。
【0071】
<粘着剤層>
前記偏光フィルムには粘着剤層を設けて、粘着剤層付偏光フィルムとして用いることができる。粘着剤層は、偏光フィルムの透明樹脂層または偏光子の側に、また、保護フィルムを有する場合には保護フィルムに設けることができる。粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層にはセパレータを設けることができる。
【0072】
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0073】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0074】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、
図2(A)、(B)の態様では透明樹脂層または保護フィルム(または
図2(C)の態様では保護フィルム)に転写する方法、または
図2(A)、(B)の態様では透明樹脂層または保護フィルム(または
図2(C)の態様では保護フィルム)に前記粘着剤を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光子に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0075】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0076】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0077】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0078】
粘着剤層の厚みは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0079】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0080】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0081】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0082】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0083】
<表面保護フィルム>
偏光フィルムには、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0084】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚みは、一般的には、500μm以下、好ましくは10〜200μmである。
【0085】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚み(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。
【0086】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0087】
<他の光学層>
本発明の偏光フィルムは、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが好ましい。
【0088】
偏光フィルムに上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の偏光フィルムやその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0089】
本発明の偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による、偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばIPS型、VA型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0090】
液晶セルの片側又は両側に偏光フィルムまたは光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光フィルムまたは光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0092】
<光学フィルム積層体A0の作製>
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体A0を得た。
【0093】
<光学フィルム積層体A1の作製>
光学フィルム積層体A0の作製において、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液に配合したホウ酸を3.5重量部に変えたこと以外は光学フィルム積層体A0の作製方法と同様にして光学フィルム積層体A1を得た。得られた偏光子の厚みは5μmであった。
【0094】
<光学フィルム積層体A2の作製>
光学フィルム積層体A0の作製において、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液に配合したホウ酸を4.5重量部に変えたこと以外は光学フィルム積層体A0の作製方法と同様にして光学フィルム積層体A2を得た。得られた偏光子の厚みは5μmであった。
【0095】
<光学フィルム積層体Bの作製>
光学フィルム積層体A0の作製において、厚み15μmのPVA系樹脂層を形成したこと以外は光学フィルム積層体A0の作製方法と同様にして光学フィルム積層体Bを得た。得られた偏光子の厚みは7μmであった。
【0096】
<偏光子Cの作製>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、総延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、PVA系偏光子Cを得た。得られた偏光子の厚みは12μmであった。
【0097】
<偏光子Dの作製>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、総延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、PVA系偏光子Dを得た。得られた偏光子の厚みは23μmであった。
【0098】
(保護フィルムの作製)
保護フィルム:厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂フィルムの易接着処理面にコロナ処理を施して用いた。
【0099】
(保護フィルムに適用する接着剤の作製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0100】
(ポリビニルアルコール樹脂の評価方法)
ポリビニルアルコール樹脂の重合度、ケン化度、粉末時の酢酸ナトリウム含有量はJISK6726に従って測定した。
【0101】
(ポリビニルアルコール系形成材Aの調製)
ポリビニルアルコール樹脂(重合度2500,ケン化度99.8モル%,酢酸ナトリウム含有量1.5重量%)を2Lのビーカーに250gを投入し、そこに、メタノールを250g添加して2日間静置することで固形分50%のゲル状ポリビニルアルコール樹脂500gを得た。次いでビーカーにメタノール500gを加え、攪拌機を用いて20分間攪拌(60回転/分)し、その後、濾過および乾燥してメタノールを除去することにより洗浄した。この洗浄工程を複数回繰り返し、酢酸ナトリウムの含有量が目的の値になるまで繰り返した。上記洗浄方法により、重合度2500、ケン化度99.8モル%、酢酸ナトリウム含有量0.03重量%のポリビニルアルコール樹脂を得た。得られたポリビニルアルコール樹脂を純水に溶解し、固形分濃度4重量%の水溶液を調製した。
【0102】
(ポリビニルアルコール系形成材B乃至Jの調製)
ポリビニルアルコール系形成材Aの調製において、用いるポリビニルアルコール樹脂の種類(重合度,ケン化度,酢酸ナトリウム含有量)を変更したこと、また、ポリビニルアルコール樹脂中の酢酸ナトリウムの含有量が目的の値になるまで洗浄を繰り返したこと以外は、ポリビニルアルコール系形成材Aの調製と同様の操作により、ポリビニルアルコール系形成材B乃至Jを調製した。
なお、実施例15では、添加剤として、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、メチロールメラミン(DIC社製、商品名「ウォーターゾル:S−695」)5部を配合して、固形分濃度4重量%の水溶液(形成材I)を調製した。
【0103】
(活性エネルギー線照射)
活性エネルギー線として、可視光線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm
2、積算照射量1000/mJ/cm
2(波長380〜440nm)を使用した。なお、可視光線の照度は、Solatell社製Sola−Checkシステムを使用して測定した。
【0104】
比較例1
<片保護偏光フィルムの作製>
上記光学フィルム積層体A0の偏光膜の表面に、上記紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚みが0.5μmとなるように塗布しながら、上記保護フィルムを貼合せたのち、活性エネルギー線を照射し、接着剤を硬化させた。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光膜を用いた片保護偏光フィルムを作製した。得られた片保護偏光フィルムの光学特性は、透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0105】
実施例1
<透明樹脂層付の片保護偏光フィルムの作製:
図2(A)に対応>
比較例1で得られた、上記片保護偏光フィルムの偏光膜(偏光子)の面(保護フィルムが設けられていない偏光子面)に、25℃に調整した上記ポリビニルアルコール系形成材Aをワイヤーバーコーターで乾燥後の厚みが1.5μmになるように塗布した後、60℃で1分間熱風乾燥して、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを作製した。得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムの光学特性は、透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0106】
実施例2〜15、比較例2〜7
実施例1において、偏光子の種類、透明樹脂層の形成材の種類(ポリビニルアルコール樹脂のケン化度、重合度、添加剤の有無は表1のとおり)、透明樹脂層の厚みを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを作製した。得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムの光学特性は、いずれも透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0107】
上記実施例および比較例で得られた偏光フィルムについて下記評価を行った。結果を表1に示す。評価は下記に従って作製した粘着剤層付偏光フィルムについて行った。
【0108】
<偏光子中のホウ酸含有量の測定>
実施例および比較例で得られた偏光子について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)(Perkin Elmer社製、商品名「SPECTRUM2000」)を用いて、偏光を測定光とする全反射減衰分光(ATR)測定によりホウ酸ピーク(665cm
−1)の強度および参照ピーク(2941cm
−1)の強度を測定した。得られたホウ酸ピーク強度および参照ピーク強度からホウ酸量指数を下記式により算出し、さらに、算出したホウ酸量指数から下記式によりホウ酸含有量(重量%)を決定した。
(ホウ酸量指数)=(ホウ酸ピーク665cm
−1の強度)/(参照ピーク2941cm
−1の強度)
(ホウ酸含有量(重量%))=(ホウ酸量指数)×5.54+4.1
【0109】
<アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0110】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.075部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0111】
(粘着剤層の形成)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
【0112】
<粘着剤層付偏光フィルムの作製>
次いで、各例で得られた偏光フィルムの透明樹脂層(但し、比較例1では偏光子側)に、上記離型シート(セパレータ)の剥離処理面に形成した粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0113】
<透明樹脂層中の酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量>
(1)透明樹脂層中の酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムの合計含有量は、透明樹脂層中のナトリウム量(酢酸ナトリウム由来)またはカリウム量(酢酸カリウム由来)を、TOF−SIMSで測定した。
(2)予め酢酸ナトリウム含有量が判明しているポリビニルアルコール樹脂(酢酸ナトリウム含有量:0.39重量%、2.38重量%、4.87重量%)をPET基材に塗布し厚さ5μmの検量線測定用フィルムを3種類作製した。
前記3種類のフィルムについて、TOF−SIMS測定を行い、横軸にNa
2OHの2次イオン強度、縦軸に酢酸ナトリウム含有量(重量%)をプロットし、近似直線から検量線を作成した(
図3)。
・サンプルのスパッタイオン源:C60
・一次イオン源:Bi
・測定装置:TOF−SIMS5(ION−TOF社製)
・測定モード:高質量分解能
・測定面積:200μm角
・検出イオン:正
(3)各例の偏光フィルムの透明樹脂層について、検量線作成時と同様の測定条件でTOF−SIMSを測定し、検量線から酢酸ナトリウム含有量を算出した。
ポリビニルアルコール樹脂をケン化する際に水酸化カリウムを使用する場合には、同様に酢酸カリウムの含有量が判明しているフィルムを作製し、横軸にK
2OHの2次イオン強度、縦軸に酢酸カリウム含有量(重量%)の検量線を作成して、酢酸カリウム含有量を算出した。また、ポリビニルアルコール樹脂のケン化をする際に、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムのいずれも使用している場合には、酢酸ナトリウムと酢酸カリウムの検量線を各々作成し、合計含有量を算出した。
【0114】
<耐湿熱性:偏光度の変化率(光学信頼性試験)>
得られた粘着剤付片保護偏光フィルムを25mm×50mmのサイズ(吸収軸方向が50mm)に裁断した。当該片保護偏光フィルム(サンプル)を、85℃/85%RHの恒温恒湿機に150時間投入した。投入前と投入後の片保護偏光フィルムの偏光度を、積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot−3c)を用いて測定し、
偏光度の変化率(%)=(1−(投入後の偏光度/投入前の偏光度))、を求めた。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}
1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
表1には、偏光度の変化率を記載するとともに、当該変化率を下記の基準で判断した。
◎:偏光度の変化率が0.1%以下。
〇:偏光度の変化率が0.1%超0.5%以下。
△:偏光度の変化率が0.5%超1.0%以下。
△×:偏光度の変化率が1.0%超1.5%以下。
×::偏光度の変化率が1.5%超。
【0115】
<耐クラック性>
得られた粘着剤層付偏光フィルムを、縦400mm×横708mmのサイズ(吸収軸方向が400mm)と縦708mm×横400mmのサイズ(吸収軸方向が708mm)に裁断し、縦402mm×横710mm×厚み1.3mmの無アルカリガラスの両面にクロスニコルの方向に貼り合せてサンプルを作製した。当該サンプルを、95℃のオーブンに250時間投入した後に、取り出して粘着剤層付偏光フィルムにクラックが発生しているか否かを目視にて確認した。この試験を1サンプルにつき10枚行い、クラックが発生したサンプルの枚数をカウントした。
【0116】
【表1】
表1中、WSは、メチロールメラミン:ウォーターゾール S−695 (DIC社製))、を示す。