【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係るガスタービンエンジンの排気部の概略構成図である。
図2は、
図1のA−A’断面図である。実施例1に係るガスタービンエンジン(ガスタービン)1は、航空機用のガスタービンエンジンである。
図1に示すように、ガスタービンエンジン1は、回転軸となるロータ5と、タービン10と、排気部20とを備えている。ここで、図示は省略したが、ロータ5の軸方向において、タービン10の反対側には、圧縮機及び燃焼器が設けられている。なお、実施例1では、航空機用のガスタービンエンジンに適用して説明するが、排気部20を有するガスタービンであれば、いずれであってもよい。
【0021】
圧縮機は、外部から空気を吸い込むと共に、吸い込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を燃焼器へ向けて供給する。燃焼器は、燃料を噴射し、噴射した燃料と圧縮された空気とを混合させると共に燃焼させ、燃焼ガス(主流ガス)を発生させる。発生した燃焼ガスは、タービン10に流入する。
【0022】
タービン10は、複数の静翼11と、複数の動翼12と、複数のディスクプレート13とを有している。複数のディスクプレート13は、複数の動翼12に応じて設けられ、ロータ5に固定されると共に、各動翼12が連結される。そして、複数の静翼11と複数の動翼12とは交互に配設されている。
【0023】
上記のようなガスタービンエンジン1は、圧縮機により、空気が圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器により、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン10を構成する複数の静翼11と複数の動翼12とを通過することでロータ5を回転駆動させる。一方、ロータ5を回転駆動させた後の燃焼ガスである排気ガスGは、排気部20から大気に放出される。
【0024】
次に、排気部20周りの構成について詳細に説明する。排気部20は、筒状の排気内筒部材21と、排気内筒部材21の径方向外側に設けられる筒状の排気外筒部材22とを有している。また、排気部20は、排気内筒部材21と排気外筒部材22とを接続する排気ストラット23を有している。排気内筒部材21と排気外筒部材22との間は、タービン10から排出された排気ガスGが流通する排気流路31となっている。また、排気部20は、排気流路31に接続されるエジェクタ24を有している。
【0025】
排気内筒部材21は、排気ガスGの流れ方向の上流側(図示左側)の端部が、タービン10に接続されている。排気内筒部材21の上流側の端部は、径方向において、動翼12の基端側とディスクプレート13とが接続される部位に位置している。排気内筒部材21は、上流側端部から下流側端部にかけて所定の径となるように形成されている。
【0026】
排気外筒部材22は、排気ガスGの流れ方向の上流側(図示左側)の端部が、タービン10に接続されている。排気外筒部材22の上流側の端部は、径方向において、動翼12の先端側に位置している。排気外筒部材22は、上流側端部から下流側端部にかけて径方向が大きくなるように形成されている。排気外筒部材22は、上流側排気外筒部材22aと、下流側排気外筒部材22bとを有している。
【0027】
上流側排気外筒部材22aは、タービン10の下流側に設けられ、且つ下流側排気外筒部材22bの上流側に設けられている。上流側排気外筒部材22aは、その下流側の端部の径が、下流側排気外筒部材22bの上流側の端部の径よりも小さな径となっており、下流側排気外筒部材22bの内側に配置されている。換言すれば、下流側排気外筒部材22bは、その上流側の端部の径が、上流側排気外筒部材22aの下流側の端部の径よりも大きな径となっており、上流側排気外筒部材22aの外側に配置されている。
【0028】
上流側排気外筒部材22aと下流側排気外筒部材22bとは、その一部が径方向において重複している。具体的に、上流側排気外筒部材22aの下流側の端部22a1と、下流側排気外筒部材22bの上流側の端部22b1とは、径方向において重複しており、2重管の構成となっている。なお、後述するが、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1と、下流側排気外筒部材22bの上流側端部22b1とが、エジェクタ24の一部を構成している。
【0029】
排気ストラット23は、排気内筒部材21と下流側排気外筒部材22bとを連結する部材であり、所定の間隔を空けて周方向に複数設けられている。
図2に示すように、各排気ストラット23は、径方向に直交する面で切った断面が翼形状となっており、排気ガスGを上流側から下流側へ案内している。排気ストラット23は、周方向における長さ(幅)が最大となる最大幅Lが、軸方向における上流側端部と中央部との間に位置している。
【0030】
エジェクタ24は、排気流路31における排気ガスGの流通によるエジェクタ効果により、外気Aを排気流路31に取り込んでいる。エジェクタ24は、上記したように、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1と、下流側排気外筒部材22bの上流側端部22b1とを含んで構成されている。エジェクタ24は、下流側排気外筒部材22bの上流端における開口が外気Aの流入口24bとなっており、周方向に亘って形成されている。また、エジェクタ24は、上流側排気外筒部材22aの下流端における開口が外気Aの流出口24aとなっており、周方向に亘って形成されている。なお、図示では省略したが、エジェクタ24の流入口24bには、所定の間隔を空けてスリットが周方向に複数形成された、環状のスリット板を配置してもよい。
【0031】
また、エジェクタ24は、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1が、排気ガスGの流れ方向において、排気ストラット23と重複して設けられている。具体的に、上流側排気外筒部材22aの下流端は、排気ガスGの流れ方向において、排気ストラット23の最大幅Lの部位に位置している。このとき、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、排気ストラット23と重複する部位が、排気ストラット23の翼形状と相補的な形状となるように切り欠いて形成されている。このため、エジェクタ24の流出口24aは、排気流路31が周方向において最も絞られる位置に形成される。よって、排気ストラット23は、周方向に排気流路31の流路面積を絞る流路絞り部材として機能する。
【0032】
続いて、エジェクタ24における外気Aの取り込みについて説明する。タービン10から排出された排気ガスGは、排気内筒部材21と上流側排気外筒部材22aとの間の排気流路31を流通する。排気流路31を流通する排気ガスGは、排気ストラット23に流入する。ここで、排気流路31は、排気ストラット23が設けられていることから、周方向における排気流路31の流路面積が絞られることになる。排気ストラット23により排気流路31の流路面積が絞られると、排気ストラット23を通過する排気ガスGの流速は、排気ストラット23に流入する前の流速に比して速くなる。特に、周方向において排気流路31の流路面積が最も絞られる、排気ストラット23の最大幅Lの部位において、排気ガスGの流速が最も速くなる。このため、排気ストラット23の軸方向を前後方向としたときの排気ストラット23の側面及び側面の周辺には、排気ストラット23の上流側及び下流側における静圧に比して低い静圧低下領域Eが形成される。
【0033】
そして、エジェクタ24の流出口24aは、排気ストラット23の最大幅Lの部位に位置していることから、静圧低下領域Eに位置することになる。このため、エジェクタ24は、静圧が低い領域においてエジェクタ効果による外気Aの取り込みが可能になることから、流出口24aが排気ストラット23の上流側に設けられる場合に比して、より多くの外気Aを取り込むことが可能となる。エジェクタ24を介して排気流路31に取り込まれた外気Aは、排気流路31を流通する排気ガスGと混合しながら下流側へ向けて送られることで、排気ガスGを冷却する。
【0034】
以上のように、実施例1の構成によれば、排気ストラット23により排気流路31に静圧低下領域Eを形成することができる。そして、この静圧低下領域Eに、エジェクタ24の流出口24aを設けることで、エジェクタ24の流出口24aから多くの外気Aを取り込むことができる。このとき、静圧低下領域Eにおいて外気Aを取り込んでいることから、排気流路31の圧力の上昇は抑制される。これにより、排気流路31の圧力の上昇を抑制しつつ、外気Aの取り込み量を多くすることができるため、タービン10で取り出す仕事量を低下させることなく、排気ガスGが流通する排気部20を好適に冷却することができる。換言すれば、静圧低下領域Eにエジェクタ24の流出口24aを設け、外気Aの取り込み量を排気部20を冷却可能な所定の取り込み量に抑制することで、外気Aが取り込まれた排気流路31の圧力(静圧)を低下させることができる。これにより、外気Aの取り込み量を所定の取り込み量にしつつ、排気流路31の圧力を低下させることができるため、排気ガスGが流通する排気部20を冷却しつつ、タービン10で取り出す仕事量を向上させることができる。以上から、タービン10で取り出す仕事量と排気部20の冷却とを効率よく行うことができる。
【0035】
また、実施例1の構成によれば、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1を、排気ガスGの流れ方向において排気ストラット23と重複して設けることで、排気ストラット23を、流路絞り部材として活用することができる。このため、大幅な設計変更を伴うことなく、簡易な構成で排気流路31を周方向に絞ることができる。
【0036】
また、実施例1の構成によれば、エジェクタ24の流出口24aを、排気ストラット23の最大幅Lとなる位置に設けることができるため、排気流路31が周方向において最も絞られる部分に、つまり、排気ガスGの流速が最も速い部分に、エジェクタ24の流出口24aを設けることができる。このため、タービン10で取り出す仕事量と排気部20の冷却とを、より効率良く行うことができる。
【0037】
なお、実施例1では、上流側排気外筒部材22aの下流端を、排気ガスGの流れ方向において排気ストラット23の最大幅Lとなる部位に位置させることで、エジェクタ24の流出口24aを、排気ストラット23の最大幅Lとなる位置に形成した。しかしながら、上流側排気外筒部材22aの下流端は、排気ストラット23に重複すれば、いずれの位置であってもよい。
【0038】
また、実施例1では、排気ストラット23を流路絞り部材として機能させたが、この構成に限定されない。つまり、周方向において排気流路31の流路面積を絞る部材(例えば、マンホール)であれば、排気ストラット23とは異なる別部材を排気流路31に設けてもよい。
【実施例2】
【0039】
次に、
図3を参照して、実施例2に係るガスタービンエンジン50について説明する。
図3は、実施例2に係るガスタービンエンジンの排気部の概略構成図である。なお、実施例2では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例1では、排気ストラット23を流路絞り部材として機能させたが、実施例2では、上流側排気外筒部材22aを流路絞り部材として機能させている。以下、実施例2に係るガスタービンエンジン50の排気部20について説明する。
【0040】
図3に示すように、排気部20において、上流側排気外筒部材22aは、その下流側端部22a1が、径方向において排気流路31の流路面積を絞るような形状となっている。具体的に、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、排気内筒部材21へ向けて湾曲した形状となっている。つまり、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、その上流側において、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1と排気内筒部材21との径方向における距離が、短くなるように湾曲させられる。また、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、その下流側において、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1と排気内筒部材21との径方向における距離が、排気ガスGの流れ方向に延在するように上流側に比して僅かに長くなっている。つまり、下流側端部22a1は、その上流側と下流側との間に、排気内筒部材21との径方向における距離が短くなる部位を有する。よって、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、周方向に排気流路31の流路面積を絞る流路絞り部材として機能する。
【0041】
ここで、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、排気流路31の全周に亘って、流路面積を絞っていてもよい。また、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1は、排気流路31の周方向における所定の部位(局所的な部位)において、流路面積を絞っていてもよい。
【0042】
以上のように、実施例2の構成によれば、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1を、排気流路31の径方向において流路面積が狭くなるように絞ることで、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1を流路絞り部材として活用することができる。このため、大幅な設計変更を伴うことなく、簡易な構成で排気流路31を径方向に絞ることができる。
【0043】
また、実施例2の構成によれば、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1により、排気流路31の全周に亘って、流路面積を絞った場合、排気流路31の全周に亘って静圧低下領域Eを形成できることから、全周から多くの外気Aを取り込むことができる。
【0044】
また、実施例2の構成によれば、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1により、排気流路31の周方向における所定の部位(局所的な部位)において、流路面積を絞った場合、排気流路31の所定の部位に静圧低下領域Eを形成できることから、所定の部位から多くの外気Aを取り込むことができる。このとき、所定の部位としては、排気ガスGの流れを阻害し難い部位、または排気ガスGを良好に案内可能な部位等がある。具体的に、周方向に設けられた複数の排気ストラット23の位置を考慮して、例えば、流れ方向から見て排気ストラット23同士の間に位置する部位、または排気ストラット23と重なる位置の部位において、排気流路31の流路面積を絞ってもよい。
【0045】
なお、実施例2では、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1を、排気流路31の径方向において流路面積が狭くなるように絞ったが、この構成に限定されない。例えば、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1を絞らずに、排気内筒部材21を排気流路31の径方向において流路面積が狭くなるように絞ってもよい。また、上流側排気外筒部材22aの下流側端部22a1、及び排気内筒部材21の両方を、排気流路31の径方向において流路面積が狭くなるように絞ってもよい。つまり、排気流路31の径方向において流路面積を狭くすることで、排気流路31に静圧低下領域Eを形成できれば、いずれの構成であってもよい。