特許第6132111号(P6132111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6132111
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ダイプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/46 20060101AFI20170515BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H03H7/46 A
   H03H7/075 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-143803(P2015-143803)
(22)【出願日】2015年7月21日
(62)【分割の表示】特願2013-152370(P2013-152370)の分割
【原出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-222975(P2015-222975A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和寛
(72)【発明者】
【氏名】堤 誠典
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−154138(JP,A)
【文献】 特開2009−159328(JP,A)
【文献】 特開平9−266430(JP,A)
【文献】 特開2009−218756(JP,A)
【文献】 特開2005−323064(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0043300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/46
H03H 7/38
H03H 7/075
H04B 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、前記第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号が入力される入力端子と、
前記第1の信号を出力するための第1の出力端子と、
前記第2の信号を出力するための第2の出力端子と、
前記入力端子と前記第1の出力端子との間に設けられ、前記第1の信号を選択的に通過させる第1のバンドパスフィルタと、
前記入力端子と前記第1のバンドパスフィルタとの間に設けられたインダクタと、
前記入力端子に入力される前記第1および第2の信号のうち前記第2の信号を選択的に通過させて前記第2の出力端子から出力させる第2のバンドパスフィルタとを備えたダイプレクサであって、
前記第1のバンドパスフィルタは、複数の第1の共振器を含み、
前記第1の共振器は、一端がグランドに接続され、並列共振を生じるものであり、
前記インダクタは、インダクタンス成分と浮遊容量を有し、
前記インダクタのインダクタンス成分と前記浮遊容量とによって並列共振回路が構成され、
前記第2のバンドパスフィルタは、前記入力端子と前記第2の出力端子との間に設けられた1つの第2の共振器と、前記並列共振回路とを含むことを特徴とするダイプレクサ。
【請求項2】
前記第2の共振器は、一端が前記第2の出力端子に接続され、他端がグランドに接続され、並列共振を生じるものであることを特徴とする請求項1記載のダイプレクサ。
【請求項3】
前記第2のバンドパスフィルタは、更に、前記入力端子と前記第2の共振器との間に設けられたキャパシタを含み、
前記キャパシタは、前記並列共振回路と前記第2の共振器を容量結合させることを特徴とする請求項1または2記載のダイプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力端子に入力される周波数帯域の異なる2つの信号を分離して、それぞれに対応する出力端子より出力するダイプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やスマートフォンに代表される小型無線通信装置は、小型化が求められている一方で、本来の通信機能の他に、ブルートゥース(登録商標)規格の通信や無線LAN(ローカルエリアネットワーク)用の通信等の他の通信機能を有するものが増えている。
【0003】
1台の無線通信装置で、周波数帯域の異なる複数の受信信号を処理するためには、アンテナで受信した複数の受信信号を互いに分離する手段が必要になる。周波数帯域の異なる2つの受信信号を分離する手段としては、ダイプレクサが知られている。
【0004】
近年、無線通信装置の小型化、低コスト化の観点から、ダイプレクサには、単に複数の受信信号を互いに分離するだけでなく、従来はダイプレクサの後段に設けられていたバンドパスフィルタを内蔵することが要求されるようになってきた。バンドパスフィルタを内蔵したダイプレクサは、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
一般的に、バンドパスフィルタを内蔵したダイプレクサは、入力端子と、第1の出力端子と、第2の出力端子と、入力端子と第1の出力端子との間に設けられた第1のバンドパスフィルタと、入力端子と第2の出力端子との間に設けられた第2のバンドパスフィルタと、ダイプレクサの入力端子と第1のバンドパスフィルタの入力端の間に設けられた第1の整合素子と、ダイプレクサの入力端子と第2のバンドパスフィルタの入力端の間に設けられた第2の整合素子とを備えている。
【0006】
第1のバンドパスフィルタは、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる。第2のバンドパスフィルタは、第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる。以下、入力端子から第1の出力端子に至る信号経路を第1の信号経路と呼び、入力端子から第2の出力端子に至る信号経路を第2の信号経路と呼ぶ。第1の整合素子は例えばインダクタであり、第2の整合素子は例えばキャパシタである。
【0007】
第1および第2のバンドパスフィルタとしては、例えば特許文献1に記載されているような複数の共振器を含むものが多く用いられている。特許文献1に記載されたバンドパスフィルタでは、隣接する2つの共振器は電磁界結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−278361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それぞれ複数の共振器を含む第1および第2のバンドパスフィルタを備えたダイプレクサでは、第1および第2の信号経路を構成するための素子の数が多く、小型化が難しいという問題点がある。また、このダイプレクサでは、小型化しようとすると、第1の信号経路を構成するための複数の素子と第2の信号経路を構成するための複数の素子が接近し、これらの素子の間で意図しない結合や浮遊容量が生じ、その結果、アイソレーションが劣化したり、スプリアスが発生したりして、特性が劣化するおそれがある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、2つのバンドパスフィルタを備えたダイプレクサであって、特性を劣化させることなく小型化できるようにしたダイプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様のダイプレクサは、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号が入力される入力端子と、第1の信号を出力するための第1の出力端子と、第2の信号を出力するための第2の出力端子と、入力端子と第1の出力端子との間に設けられ、第1の信号を選択的に通過させる第1のバンドパスフィルタと、入力端子と第2の出力端子との間に設けられ、第2の信号を選択的に通過させる第2のバンドパスフィルタとを備えている。
【0012】
本発明の第1の態様のダイプレクサにおいて、第1のバンドパスフィルタは、複数の第1の共振器を含んでいる。第2のバンドパスフィルタは、1つの第2の共振器と、入力端子と第2の共振器とを接続する直列共振回路とを含んでいる。直列共振回路は、入力端子と第2の共振器との間に設けられたキャパシタと、このキャパシタを介して入力端子と第2の共振器とを接続する線路のインダクタンス成分とによって構成されている。
【0013】
本発明の第1の態様のダイプレクサにおいて、第2の共振器は、一端が第2の出力端子に接続され、他端がグランドに接続され、並列共振を生じるものであってもよい。
【0014】
また、本発明の第1の態様のダイプレクサにおいて、第2の共振器の共振周波数と直列共振回路の共振周波数は、いずれも、第2の周波数帯域内に存在していてもよい。
【0015】
また、本発明の第1の態様のダイプレクサは、更に、入力端子と第1のバンドパスフィルタとの間に設けられたインダクタを備えていてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様のダイプレクサは、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号が入力される入力端子と、第1の信号を出力するための第1の出力端子と、第2の信号を出力するための第2の出力端子と、入力端子と第1の出力端子との間に設けられ、第1の信号を選択的に通過させる第1のバンドパスフィルタと、入力端子と第1のバンドパスフィルタとの間に設けられたインダクタと、入力端子に入力される第1および第2の信号のうち第2の信号を選択的に通過させて第2の出力端子から出力させる第2のバンドパスフィルタとを備えている。
【0017】
本発明の第2の態様のダイプレクサにおいて、第1のバンドパスフィルタは、複数の第1の共振器を含んでいる。第1の共振器は、一端がグランドに接続され、並列共振を生じるものである。インダクタは、インダクタンス成分と浮遊容量を有している。そして、インダクタのインダクタンス成分と浮遊容量とによって並列共振回路が構成される。第2のバンドパスフィルタは、入力端子と第2の出力端子との間に設けられた1つの第2の共振器と、前記並列共振回路とを含んでいる。
【0018】
本発明の第2の態様のダイプレクサにおいて、第2の共振器は、一端が第2の出力端子に接続され、他端がグランドに接続され、並列共振を生じるものであってもよい。
【0019】
また、本発明の第2の態様のダイプレクサにおいて、第2のバンドパスフィルタは、更に、入力端子と第2の共振器との間に設けられたキャパシタを含んでいてもよい。このキャパシタは、前記並列共振回路と第2の共振器を容量結合させてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の態様のダイプレクサでは、キャパシタと線路のインダクタンス成分とによって構成された直列共振回路と、1つの第2の共振器とを用いて、第2のバンドパスフィルタが構成される。そのため、本発明によれば、それぞれ専用のインダクタとキャパシタによって構成された複数の共振器を用いて第2のバンドパスフィルタを構成する場合に比べて、ダイプレクサに含まれる素子の数を少なくすることができる。これにより、本発明によれば、2つのバンドパスフィルタを備えたダイプレクサであって、特性を劣化させることなく小型化することのできるダイプレクサを実現することが可能になるという効果を奏する。
【0021】
本発明の第2の態様のダイプレクサでは、入力端子と第1のバンドパスフィルタとの間に設けられたインダクタのインダクタンス成分と浮遊容量とによって並列共振回路が構成される。そして、この並列共振回路と、1つの第2の共振器とを用いて、第2のバンドパスフィルタが構成される。そのため、本発明によれば、それぞれ専用のインダクタとキャパシタによって構成された複数の共振器を用いて第2のバンドパスフィルタを構成する場合に比べて、ダイプレクサに含まれる素子の数を少なくすることができる。これにより、本発明によれば、2つのバンドパスフィルタを備えたダイプレクサであって、特性を劣化させることなく小型化することのできるダイプレクサを実現することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るダイプレクサの構成を示す回路図である。
図2図1に示したダイプレクサの第2の周波数帯域に関しての等価回路を示す回路図である。
図3図1に示したダイプレクサにおける第1の信号経路の周波数特性の一例を示す特性図である。
図4図1に示したダイプレクサにおける第2の信号経路の周波数特性の一例を示す特性図である。
図5】比較例のダイプレクサの構成を示す回路図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るダイプレクサの構成を示す回路図である。
図7図6に示したダイプレクサの第2の周波数帯域に関しての等価回路を示す回路図である。
図8図6に示したダイプレクサにおける第2の信号経路の周波数特性の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るダイプレクサの回路構成について説明する。本実施の形態に係るダイプレクサ1は、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号とを分離するものである。第1の周波数帯域は、例えば、IEEE802.11bやIEEE802.11gにおいて使用される2.4GHz帯である。第2の周波数帯域は、例えば、IEEE802.11aにおいて使用される5GHz帯である。
【0024】
ダイプレクサ1は、第1の信号と第2の信号が入力される入力端子2と、第1の信号を出力するための第1の出力端子3と、第2の信号を出力するための第2の出力端子4とを備えている。以下、入力端子2から第1の出力端子3に至る信号経路を第1の信号経路と呼び、入力端子2から第2の出力端子4に至る信号経路を第2の信号経路と呼ぶ。
【0025】
ダイプレクサ1は、更に、第1のバンドパスフィルタ10と、第2のバンドパスフィルタ20と、インダクタL30とを備えている。第1のバンドパスフィルタ10は、入力端子2と第1の出力端子3との間に設けられ、第1の信号を選択的に通過させる。インダクタL30は、入力端子2と第1のバンドパスフィルタ10との間に設けられている。第2のバンドパスフィルタ20は、入力端子2と第2の出力端子4との間に設けられ、第2の信号を選択的に通過させる。
【0026】
第1のバンドパスフィルタ10は、複数の第1の共振器を含んでいる。図1に示した例では、第1のバンドパスフィルタ10は、入力端10aと、出力端10bと、入力端10aと出力端10bとの間において縦続接続された3つの第1の共振器11,12,13と、キャパシタC14,C15,C16とを含んでいる。共振器11は、インダクタL11とキャパシタC11を含んでいる。共振器12は、インダクタL12とキャパシタC12を含んでいる。共振器13は、インダクタL13とキャパシタC13を含んでいる。
【0027】
インダクタL30の一端は、入力端子2に接続されている。インダクタL30の他端は、バンドパスフィルタ10の入力端10aに接続されている。インダクタL11の一端とキャパシタC11,C14の各一端は、入力端10aに接続されている。インダクタL11の他端とキャパシタC11の他端はグランドに接続されている。インダクタL12の一端とキャパシタC12,C15の各一端は、キャパシタC14の他端に接続されている。インダクタL12の他端とキャパシタC12の他端はグランドに接続されている。インダクタL13の一端、キャパシタC13の一端およびバンドパスフィルタ10の出力端10bは、キャパシタC15の他端に接続されている。インダクタL13の他端とキャパシタC13の他端はグランドに接続されている。キャパシタC16の一端は、バンドパスフィルタ10の入力端10aに接続されている。キャパシタC16の他端は、バンドパスフィルタ10の出力端10bに接続されている。バンドパスフィルタ10の出力端10bは、第1の出力端子3に接続されている。
【0028】
共振器11,12,13は、いずれも、並列に接続されたインダクタとキャパシタによる並列共振回路を構成しており、並列共振を生じるものである。キャパシタC14は、隣接する共振器11,12を容量結合させる。キャパシタC15は、隣接する共振器12,13を容量結合させる。キャパシタC16は、隣接しない共振器11,13を容量結合させる。
【0029】
第1のバンドパスフィルタ10を構成する複数のインダクタのインダクタンスと複数のキャパシタのキャパシタンスは、第1の周波数帯域に対応する第1のバンドパスフィルタ10の通過帯域が得られるように設定される。
【0030】
インダクタL30は、第1の信号経路が、第1の周波数帯域に関しては、入力端子2から見た第1の信号経路の反射係数の絶対値が0またはその近傍となる状態となり、第2の周波数帯域に関しては、入力端子2から見た第1の信号経路の反射係数が1またはその近傍となる状態、すなわち入力端子2から見た第1の信号経路が開放またはそれに近い状態となるように、第1の信号経路のインピーダンス特性を調整する整合素子である。
【0031】
第2のバンドパスフィルタ20は、1つの第2の共振器21と、入力端子2と第2の共振器21とを接続する直列共振回路22とを含んでいる。第2の共振器21は、インダクタL21とキャパシタC21を含んでいる。インダクタL21の一端とキャパシタC21の一端は、第2の出力端子4に接続されている。インダクタL21の他端とキャパシタC21の他端は、グランドに接続されている。このように、第2の共振器21の一端(インダクタL21の一端とキャパシタC21の一端)は第2の出力端子4に接続され、第2の共振器21の他端(インダクタL21の他端とキャパシタC21の他端)は、グランドに接続されている。第2の共振器21は、並列に接続されたインダクタL21とキャパシタC21による並列共振回路を構成しており、並列共振を生じるものである。
【0032】
直列共振回路22は、入力端子2と第2の共振器21との間に設けられたキャパシタC22と、このキャパシタC22を介して入力端子2と第2の共振器21とを接続する線路のインダクタンス成分L22とによって構成されている。キャパシタC22の一端は、上記線路の一部を介して入力端子2に接続されている。キャパシタC22の他端は、上記線路の他の一部を介して、インダクタL21の一端とキャパシタC21の一端に接続されている。
【0033】
キャパシタC22は、第2の信号経路が、第2の周波数帯域に関しては、入力端子2から見た第2の信号経路の反射係数の絶対値が0またはその近傍となる状態となり、第1の周波数帯域に関しては、入力端子2から見た第2の信号経路の反射係数が1またはその近傍となる状態、すなわち入力端子2から見た第2の信号経路が開放またはそれに近い状態となるように、第2の信号経路のインピーダンス特性を調整する整合素子である。
【0034】
本実施の形態に係るダイプレクサ1では、第1のバンドパスフィルタ10は、入力端子2に入力された第1の信号および第2の信号のうちの第1の信号を選択的に通過させて、第1の出力端子3から出力させる。また、第2バンドパスフィルタ20は、入力端子2に入力された第1の信号および第2の信号のうちの第2の信号を選択的に通過させて、第2の出力端子4から出力させる。
【0035】
図3に、第1の信号経路の周波数特性の一例を示す。図3において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図3における曲線は、第1の信号経路の通過減衰特性を示している。第1の周波数帯域すなわちバンドパスフィルタ10の通過帯域は、第1の信号経路の通過減衰特性における減衰量が3dB以下となる周波数範囲である。
【0036】
次に、図2を参照して、第2の周波数帯域におけるダイプレクサ1の作用について説明する。図2は、ダイプレクサ1の第2の周波数帯域に関しての等価回路を示す回路図である。図2において、符号30は、第2の周波数帯域における第1の信号経路と等価な素子を表している。第2の周波数帯域に関しては、ダイプレクサ1の回路構成は、図2に示したように、第2の信号経路に対して素子30が並列に接続された構成とみなすことができる。前述のように、第1の信号経路のインピーダンス特性は、第2の周波数帯域においては、入力端子2から見た第1の信号経路が開放またはそれに近い状態となるように調整されている。従って、第2の周波数帯域に関しては、図2に示した素子30は、開放またはそれに近いインピーダンスを有する。
【0037】
第2のバンドパスフィルタ20は、1つの第2の共振器21と直列共振回路22とによって構成されている。第2の共振器21は、並列に接続されたインダクタL21とキャパシタC21を含んでいる。直列共振回路22は、キャパシタC22と、このキャパシタC22を介して入力端子2と第2の共振器21とを接続する線路のインダクタンス成分L22とによって構成されている。
【0038】
インダクタL21のインダクタンスをL21とし、キャパシタC21のキャパシタンスをC21とすると、第2の共振器21の共振周波数f21は、1/2π√(L2121)となる。また、インダクタンス成分L22のインダクタンスをL22とし、キャパシタC22のキャパシタンスをC22とすると、直列共振回路22の共振周波数f22は、1/2π√(L2222)となる。第2の共振器21の共振周波数f21と直列共振回路22の共振周波数f22は、いずれも、第2の周波数帯域内に存在している。インダクタンスL21とキャパシタンスC21は、所望の共振周波数f21が得られるように設定される。キャパシタンスC22は、インダクタンスL22に応じて、所望の共振周波数f22が得られるように設定される。
【0039】
図4に、第2の信号経路の周波数特性の一例を示す。図4において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図4において、記号S1を付した曲線は、第2の信号経路の通過減衰特性を示し、記号S2を付した曲線は、第2の信号経路の反射減衰特性を示している。第2の周波数帯域すなわちバンドパスフィルタ20の通過帯域は、第2の信号経路の通過減衰特性S1における減衰量が3dB以下となる周波数範囲である。図4に示した例では、第2の信号経路の反射減衰特性S2は、第2の周波数帯域内に存在する互いに異なる2つの共振周波数f22,f21において極大値をとっている。
【0040】
次に、図5に示した比較例のダイプレクサと比較しながら、本実施の形態に係るダイプレクサ1の効果について説明する。初めに、図5に示した比較例のダイプレクサ101の構成について説明する。このダイプレクサ101では、第2の信号経路の構成がダイプレクサ1と異なっている。ダイプレクサ101は、ダイプレクサ1における第2のバンドパスフィルタ20の代わりに、第2のバンドパスフィルタ120と、このバンドパスフィルタ120と入力端子2との間に設けられたキャパシタC123とを備えている。図5において、符号L123は、キャパシタC123を介して入力端子2とバンドパスフィルタ120とを接続する線路のインダクタンス成分を表している。
【0041】
バンドパスフィルタ120は、2つの共振器121,122を含んでいる。2つの共振器121,122は、電磁界結合している。共振器121は、インダクタL121とキャパシタC121を含んでいる。共振器122は、インダクタL122とキャパシタC122を含んでいる。インダクタL121の一端とキャパシタC121の一端は、上記線路を介してキャパシタC123に接続されている。インダクタL121の他端とキャパシタC121の他端は、グランドに接続されている。インダクタL122の一端とキャパシタC122の一端は、第2の出力端子4に接続されている。インダクタL122の他端とキャパシタC122の他端は、グランドに接続されている。
【0042】
比較例のダイプレクサ101では、キャパシタC123のキャパシタンスとインダクタンス成分L123のインダクタンスによって決まる共振周波数が第2の周波数帯域内に入るような設定はされていない。一般的に、この共振周波数は、第2の周波数帯域よりも高い周波数になる。従って、キャパシタC123とインダクタンス成分L123は、バンドパスフィルタ120の一部を構成していない。
【0043】
比較例のダイプレクサ101では、第1および第2の信号経路を構成するための素子の数が多く、小型化が難しいという問題点がある。また、このダイプレクサ101では、小型化しようとすると、第1の信号経路を構成するための複数の素子と第2の信号経路を構成するための複数の素子が接近し、これらの素子の間で意図しない結合や浮遊容量が生じ、その結果、アイソレーションが劣化したり、スプリアスが発生したりして、特性が劣化するおそれがある。
【0044】
これに対し、本実施の形態に係るダイプレクサ1では、キャパシタC22と線路のインダクタンス成分L22とによって構成された直列共振回路22と、1つの第2の共振器21とを用いて、第2のバンドパスフィルタ20が構成される。そのため、本実施の形態に係るダイプレクサ1によれば、比較例のダイプレクサ101のように、それぞれ専用のインダクタとキャパシタによって構成された複数の共振器121,122を用いて第2のバンドパスフィルタ120を構成する場合に比べて、第2のバンドパスフィルタ20を構成する素子の数を少なくすることができる。
【0045】
なお、ダイプレクサ1では、直列共振回路22を構成するためにキャパシタC22が必要であるが、比較例のダイプレクサ101においてもキャパシタC123が設けられている。そのため、ダイプレクサ1では、ダイプレクサ101に比べて、直列共振回路22を構成することによる素子数の増加はない。
【0046】
以上のことから、本実施の形態に係るダイプレクサ1によれば、比較例のダイプレクサ101に比べて、ダイプレクサ1に含まれる複数の素子の数、特に第2の信号経路を構成するための素子の数を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、小型化に伴って、第1の信号経路を構成するための複数の素子と第2の信号経路を構成するための複数の素子との間で意図しない結合や浮遊容量が生じることを抑制することができ、その結果、アイソレーションの劣化やスプリアスの発生といった特性の劣化を抑制することができる。従って、本実施の形態によれば、2つのバンドパスフィルタ10,20を備えたダイプレクサ1であって、特性を劣化させることなく小型化することのできるダイプレクサ1を実現することが可能になる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るダイプレクサについて説明する。図6は、本実施の形態に係るダイプレクサの構成を示す回路図である。以下、本実施の形態に係るダイプレクサ51が第1の実施の形態に係るダイプレクサ1と異なる点について説明する。本実施の形態に係るダイプレクサ51は、第1の実施の形態に係るダイプレクサ1におけるインダクタL30の代わりにインダクタ80を備えている。インダクタ80は、入力端子2と第1のバンドパスフィルタ10との間に設けられている。また、インダクタ80は、インダクタンス成分L80と浮遊容量C80を有している。浮遊容量C80は、インダクタンス成分L80に対して並列に接続されている。そして、インダクタ80のインダクタンス成分L80と浮遊容量C80とによって並列共振回路が構成されている。
【0048】
また、本実施の形態に係るダイプレクサ51は、ダイプレクサ1における第2のバンドパスフィルタ20の代わりに第2のバンドパスフィルタ70を備えている。第2のバンドパスフィルタ70は、入力端子2に入力される第1および第2の信号のうち第2の信号を選択的に通過させて第2の出力端子4から出力させる。第2のバンドパスフィルタ70は、入力端子2と第2の出力端子4との間に設けられた1つの第2の共振器71と、入力端子2と第2の共振器71との間に設けられたキャパシタC72と、上記並列共振回路とを含んでいる。キャパシタC72は、第1の実施の形態におけるキャパシタC22と同様に第2の信号経路のインピーダンス特性を調整する整合素子である。本実施の形態では、キャパシタC72は、直列共振回路を構成するために用いられないため、図6には、キャパシタC72を介して入力端子2と第2の共振器21とを接続する線路のインダクタンス成分を示していない。
【0049】
本実施の形態では、上述のように、インダクタ80のインダクタンス成分L80と浮遊容量C80とによって並列共振回路が構成され、この並列共振回路が、第2のバンドパスフィルタ70の一部を構成する。以下、これについて、図7を参照して詳しく説明する。
【0050】
図7は、ダイプレクサ51の第2の周波数帯域に関しての等価回路を示す回路図である。第2の周波数帯域では、第1のバンドパスフィルタ10に含まれるキャパシタC11,C12,C13,C14,C15のインピーダンスが十分に小さくなる。そのため、第2の周波数帯域に関しては、ダイプレクサ51の回路構成は、図7に示したように、入力端子2とグランドの間にインダクタ80が設けられ、このインダクタ80が第2の信号経路に対して並列に接続された構成とみなすことができる。
【0051】
前述のように、インダクタ80のインダクタンス成分L80と浮遊容量C80とによって並列共振回路が構成される。キャパシタC72は、この並列共振回路と第1の共振器71とを容量結合させる。このようにして、本実施の形態では、第2のバンドパスフィルタ70は、並列共振回路と第1の共振器71とキャパシタC72とによって構成される。
【0052】
ここで、インダクタL71のインダクタンスをL71とし、キャパシタC71のキャパシタンスをC71とし、キャパシタC72のキャパシタンスをC72とする。また、インダクタンス成分L80のインダクタンスをL80とし、浮遊容量C80のキャパシタンスをC80とする。
【0053】
上記並列共振回路の共振周波数は、1/2π√(L8080)となる。また、第2の共振器71の共振周波数は、1/2π√(L7171)となる。本実施の形態では、第2の周波数帯域に対応する第2のバンドパスフィルタ70の通過帯域が設定されるように、各インダクタンスL71,L80と各キャパシタンスC71,C72,C80が設定される。
【0054】
図8に、本実施の形態における第2の信号経路の周波数特性の一例を示す。図8において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図8において、記号S3を付した曲線は、第2の信号経路の通過減衰特性を示し、記号S4を付した曲線は、第2の信号経路の反射減衰特性を示している。第2の周波数帯域すなわちバンドパスフィルタ70の通過帯域は、第2の信号経路の通過減衰特性における減衰量が3dB以下となる周波数範囲である。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係るダイプレクサ51では、入力端子2と第1のバンドパスフィルタ10との間に設けられたインダクタ80のインダクタンス成分L80と浮遊容量C80とによって並列共振回路が構成される。そして、この並列共振回路と、1つの第2の共振器71とを用いて、第2のバンドパスフィルタ70が構成される。本実施の形態に係るダイプレクサ51では、図5に示した比較例のダイプレクサ101のように、それぞれ専用のインダクタとキャパシタによって構成された複数の共振器121,122を用いて第2のバンドパスフィルタ120を構成する場合に比べて、第2のバンドパスフィルタ70を構成する素子の数を少なくすることができる。
【0056】
なお、第2のバンドパスフィルタ70は、第2の共振器71の他に、インダクタ80のインダクタンス成分L80と浮遊容量C80とによって構成された並列共振回路を含んでいる。しかし、インダクタ80は、本来、第1の信号経路のインピーダンス特性を調整するために設けられているものであるため、ダイプレクサ51では、ダイプレクサ101に比べて、上記並列共振回路を構成することによる素子数の増加はない。
【0057】
以上のことから、本実施の形態に係るダイプレクサ51によれば、比較例のダイプレクサ101に比べて、ダイプレクサ51に含まれる複数の素子の数、特に第2の信号経路を構成するための素子の数を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、小型化に伴って、第1の信号経路を構成するための複数の素子と第2の信号経路を構成するための複数の素子との間で意図しない結合や浮遊容量が生じることを抑制することができ、その結果、アイソレーションの劣化やスプリアスの発生といった特性の劣化を抑制することができる。従って、本実施の形態によれば、2つのバンドパスフィルタ10,70を備えたダイプレクサ51であって、特性を劣化させることなく小型化することのできるダイプレクサ51を実現することが可能になる。
【0058】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0059】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1のバンドパスフィルタ10の構成は、各実施の形態に示したような3つの第1の共振器11,12,13を含むものに限らず、2つのみまたは4つ以上の第1の共振器を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ダイプレクサ、2…入力端子、3…第1の出力端子、4…第2の出力端子、10…第1のバンドパスフィルタ、11,12,13…第1の共振器、20…第2のバンドパスフィルタ、21…第2の共振器、22…直列共振回路、C22…キャパシタ、51…ダイプレクサ、70…第2のバンドパスフィルタ、C72…キャパシタ、80…インダクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8