(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、下記成分(a)〜(d)を含有する。
(a)後述する一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、
(b)活性光線照射によってラジカルを発生する化合物
(c)後述する一般式(4a)又は(4b)で表される化合物
(d)溶剤
【0011】
本発明の樹脂組成物は、(c)成分は架橋剤として機能し、当該(c)成分がプロピレンを含む構造の化合物であることで分解温度が低く、低温での最終硬化であっても重量減少温度が高い樹脂組成物となりうる。
以下、樹脂組成物の各成分について説明する。
【0012】
[(a)成分:ポリイミド前駆体]
本発明の樹脂組成物の(a)成分であるポリイミド前駆体は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。
【化7】
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(2a)〜(2e)で表される4価の有機基のいずれかである。
Bは、下記一般式(3)で表される2価の有機基である。
R
1及びR
2は、各々独立に水素原子、又は1価の有機基である。
但し、式(1)中のR
1及びR
2の80%以上は、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化8】
(一般式(2d)中、X及びYは、各々独立に各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合を示す。
一般式(2e)中、Zはエーテル結合(−O−)又はスルフィド結合(−S−)である。)
【化9】
(一般式(3)中、R
3〜R
10は、各々独立に水素原子又は1価の基である。
但し、R
3〜R
10はハロゲン原子及びハロゲン原子を有する1価の有機基ではない。)
【0013】
一般式(1)中のAは、ポリイミド前駆体の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物に由来する構造であり、樹脂組成物から得られる硬化膜を低応力化するために、一般式(2a)〜(2e)で表される4価の有機基のいずれかである。
【0014】
一般式(2d)のX及びYの「結合するベンゼン環と共役しない2価の基」としては、−O−、−S−、から選択される−R
11−、又は下記式で表わされる2価の基である。
【化10】
(式中、R
12は炭素原子又は珪素原子である。
R
13は水素原子、又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選択されるハロゲン原子である。
n=3である。)
【0015】
Aの構造である式(2a)〜(2e)で表される4価の有機基を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオエーテルジフタル酸無水物、下記式(8)〜(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化11】
【0016】
ポリイミド前駆体の重合時、これらは単独で用いてもよいし、2つ以上のテトラカルボン酸二無水物を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオエーテルジフタル酸無水物、式(8)及び式(10)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオエーテルジフタル酸無水物、式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いることがより好ましく、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオエーテルジフタル酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0017】
一般式(1)中のBは、ポリイミド前駆体の原料として用いるジアミンに由来する構造であり、低応力及びi線透過率の観点から、一般式(3)で表わされる2価の有機基である。
式(3)において、R
3〜R
10はハロゲン原子及びハロゲン原子を有する1価の有機基ではない。R
3〜R
10が、ハロゲン原子やハロゲン原子を含む1価の有機基の場合、硬化膜をプラズマ処理した際に、炭素−ハロゲン原子間の結合が解裂して、硬化膜が劣化するおそれがある。
【0018】
R
3〜R
10の1価の基としては、炭素数1〜20のアルキル基(メチル基等)、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコキシ基(メトキシ基等)が挙げられる。
【0019】
Bの構造を与えるジアミンとしては、例えば、2,2’−ジアミノベンジジン、3,3’−ジアミノベンジジン、2,2’,3,3’−テトラメチルベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン等を用いることができる。これらの中でも、2,2’−ジアミノベンジジン、3,3’−ジアミノベンジジンを用いることが好ましく、2,2’−ジアミノベンジジンを用いることがさらに好ましい。
尚、ポリイミド前駆体の重合時、これらジアミンは単独で用いてもよいし、2つ以上のジアミンを組み合わせて用いてもよい。
【0020】
一般式(1)で表されるポリイミド前駆体中のR
1及びR
2は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基である。但し、R
1及びR
2の80%以上は、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。
ポリイミド前駆体が、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基を有することによって、活性光線照射(例えば、i線露光)でラジカルを発生する化合物と組み合わせて、ラジカル重合による分子鎖間の架橋が可能となり、ネガ型樹脂組成物とすることが容易になる。
【0021】
R
1及びR
2の1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基等が挙げられる。
R
1及びR
2の炭素炭素不飽和二重結合を有する基としては、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜20のアルキル基としては具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
炭素数3〜20のシクロアルキル基としては具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
炭素数が1〜10のアルキル基を有するアクリロキシアルキル基としては、アクリロキシエチル基、アクリロキシプロピル基、アクリロキシブチル基等が挙げられる。
炭素数が1〜10のアルキル基を有するメタクリロキシアルキル基としては、メタクリロキシエチル基、メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシブチル基等が挙げられる。
【0023】
ポリイミド前駆体に感光性を付与する方法として、対応するポリアミド酸に炭素炭素不飽和二重結合を有する3級アミン化合物を添加する方法が知られている。しかしながら、ポリアミド酸中のカルボキシル基と3級アミンがイオン結合を形成しており、ワニスのpHや水分の影響でイオン結合の状態が変化して、保存安定性が低下する場合がある。
従って、R
1及びR
2は水素原子ではなく、エステル結合によって導入される基であることが好ましい。中でも、良好な感光特性の観点から、R
1及びR
2は、それぞれエステル結合によって導入された、アクリロキシエチル基、アクリロキシブチル基、メタクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基であることが好ましい。
【0024】
(a)成分であるポリイミド前駆体は、一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有していてもよい。
一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有するポリイミド前駆体を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[イソプロピリデンビス[(p-フェニレン)オキシ]]ジフタル酸1,2:1’,2’−二無水物等が挙げられる。
一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有するポリイミド前駆体を与えるジアミンとしては4,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0025】
低応力化の観点から、一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有するポリイミド前駆体を与える、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの総量は、一般式(1)で表される構造単位を与える原料として用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの総量に対して、20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましく、一般式(1)の構造を与えるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンのみを用いることが特に好ましい。
【0026】
(a)成分であるポリイミド前駆体の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10000〜100000であることが好ましく、15000〜100000であることがより好ましく、20000〜85000であることがさらに好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量が10000より小さいと、硬化後の応力が充分に低下しないおそれがあり、100000より大きいと、溶剤への溶解性が低下したり、溶液の粘度が増大して取り扱い性が低下するおそれがある。
尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求められる。
【0027】
樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量は、樹脂組成物中に20〜60質量%であると好ましく、25〜55質量%であることがより好ましく、30〜55質量であることがさらに好ましい。
【0028】
(a)成分であるポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを付加重合させて合成することができる。
ポリイミド前駆体を合成する際に用いられるテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比[テトラカルボン酸二無水物/ジアミン]は、通常1.0であることが好ましいが、分子量や末端残基を制御する目的で、0.7〜1.3の範囲のモル比で行ってもよい。モル比が0.7〜1.3であると、得られるポリイミド前駆体の分子量が適度となり、硬化後の応力がより十分に低くなる傾向がある。
【0029】
ポリイミド前駆体は、原料であるテトラカルボン酸二無水物を下記一般式(15)で表されるジエステル誘導体に誘導した後、下記一般式(16)で表される酸塩化物に変換し、ジアミンと塩基性化合物存在下で縮合させる酸塩化物法によって合成することができる。
【化12】
(式(15)中、Eは4価の有機基であって、式(1)のAを含む4価の有機基である。
R
1及びR
2は、それぞれ式(1)中のR
1及びR
2と同じである。)
【化13】
(式(16)中、Eは4価の有機基であって、式(1)のA含む4価の有機基である。
R
1及びR
2は、それぞれ式(1)中のR
1及びR
2と同じである。)
【0030】
式(15)で表されるジエステル誘導体は、原料であるテトラカルボン酸二無水物1モルに対して、少なくとも2モル当量以上のアルコール類を塩基性触媒存在下で反応させることによって合成することができる。
但し、式(15)で表されるジエステル誘導体を式(16)で表される酸塩化物に変換する場合、未反応のアルコール類が残っていると、塩素化剤が未反応のアルコール類と反応してしまい、酸塩化物への変換が充分に進行しないことが懸念される。従って、アルコール類の当量としては、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して2.0〜2.5モル当量であることが好ましく、2.0〜2.3モル当量であることがより好ましく、2.0〜2.2モル当量であることがさらに好ましい。
【0031】
式(1)で表わされるポリイミド前駆体のR
1及びR
2の80%以上が炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基とするため、使用するアルコール類の80%以上は、アクリロキシアルキル基を有するアルコール、メタクリロキシアルキル基を有するアルコール等の炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基を有するアルコールを用いる。
【0032】
アルコール類としては、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を有するアルコール、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基又は炭素数1〜10のメタクリロキシアルキル基を有するアルコールを用いることができる。
例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0033】
テトラカルボン酸二無水物とアルコール類の反応に用いる塩基性触媒としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等を用いることができる。
【0034】
原料として、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、それぞれのテトラカルボン酸二無水物を別々にエステル誘導体に導いたものを混合して用いてもよい。また、あらかじめ、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を混合した後、同時にエステル誘導体に導いてもよい。
【0035】
式(15)で表されるジエステル誘導体を式(16)で表される酸塩化物に変換するには、ジエステル誘導体1モルに対して、通常2モル当量の塩素化剤を反応させることによって用いて行うが、合成されるポリイミド前駆体の分子量を制御するために、当量を適宜調整してもよい。
塩素化剤としては、塩化チオニルやジクロロシュウ酸を用いることができ、その当量としては1.5〜2.5モル当量が好ましく、1.6〜2.4モル当量がより好ましく、1.7〜2.3モル当量がさらに好ましい。1.5モル当量より少ない場合には、ポリイミド前駆体の分子量が低すぎて硬化後の応力が充分に低下しないおそれがあり、2.5モル当量より多い場合には、未反応の塩素化剤と原料であるジアミンが反応してしまうおそれがある。
【0036】
式(16)で表される酸塩化物に、塩基性化合物存在下で、原料であるジアミンを添加することによって、本発明で使用するポリイミド前駆体が得られる。塩基性化合物は、酸塩化物とジアミンが反応した際に発生する塩化水素を捕捉する目的で用いられる。
塩基性化合物としては、例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等を用いることができる。使用量は、塩素化剤の量に対して、1.5〜2.5モル当量用いることが好ましく、1.7〜2.4モル当量であることがより好ましく、1.8〜2.3モル当量であることがさらに好ましい。1.5モル当量より少ないと、ポリイミド前駆体の分子量が低くなって、硬化後の応力が充分低下しないおそれがあり、2.5モル当量より多いと、ポリイミド前駆体が着色するおそれがある。
【0037】
尚、上述したポリイミド前駆体は、上記のような酸塩化物法以外にもイソイミド法やDCC法で合成することもできる。
イソイミド法では、原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重縮合させてポリアミド酸を合成し、トリフルオロメチル無水酢酸を添加してイソイミドに変換した後、アルコール化合物を添加して、エステル結合を有するポリイミド前駆体を合成する。
DCC法では、式(15)で表されるジエステル誘導体を2モル当量のDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)と反応させた後、ジアミンを添加することによって、ポリイミド前駆体を得ることができる。
【0038】
イソイミド法で用いるアルコール化合物としては、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基又はアルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基を有する、アルコールであることが好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
イソイミド法において、分子量を制御する目的で、原料であるテトラカルボン酸二無水物の一部をあらかじめ上記アルコール化合物と反応させて式(17)で表されるようなエステル化合物に変換した後、ジアミンとの重縮合を行ってもよい。
【化14】
(式(17)中、Gは4価の有機基であって、式(1)のAを含む4価の有機基である。
R
18は、式(1)中のR
1又はR
2と同じである。)
【0040】
上記付加重合、縮合反応、及びジエステル誘導体や酸塩化物の合成反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
使用する有機溶媒としては、合成されるポリイミド前駆体を完全に溶解する極性溶媒が好ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0041】
[(b)成分:活性光線照射によってラジカルを発生する化合物]
(b)成分である活性光線照射によってラジカルを発生する化合物は、光開始剤として用いられる。
活性光線照射によってラジカルを発生する化合物(以下、光開始剤という場合がある)は、特に制限はないが、好ましくは下記一般式(5)で表わされる化合物である。
【化15】
(一般式(5)中、R
11〜R
17は、各々独立に水素原子又は1価の基を示す。)
【0042】
具体的に、R
11は、例えばフェニル基(炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルコキシ基及びアルキルメルカプト基、炭素数1〜10のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(ただし、アルキル基の炭素数が2〜20の場合、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されていてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、ベンゾイル基(ただし、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、チオエーテル基、ジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(ただし、アルコキシル基の炭素数が2〜11の場合、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されていてもよい)、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基及びアルキルスルホニル基、アリールスルフィニル基及びアリールスルホニル基(ただし、アリール基は炭素数6〜12のアリール基であり、炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルコキシスルホニル基、炭素数6〜10のアリーロキシスルホニル基、又はジフェニルホスフィノイル基のいずれかである。
【0043】
R
12は、例えば炭素数2〜12のアルカノイル基(ただし、1個以上のハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい)、α、β不飽和カルボニル構造を有さない炭素数4〜6のアルケノイル基、ベンゾイル基(ただし、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、チオエーテル基、ジアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基(ただし、1個以上の炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)のいずれかである。
【0044】
R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は、例えば各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基(ただし、ヒドロキシル基、メルカプト基、炭素数1〜12のアルコキシル基及びアルキルメルカプト基(ただし、アルキル鎖中の少なくとも1つ以上の水素原子が、水酸基、メルカプト基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、2−シアノエトキシ基、炭素数4〜7の2−(アルコキシカルボニル)エトキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜5のアルコキシルカルボニル基、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有する炭素数2〜6のアルコキシル基、炭素数2〜8のアルキルカルボニルオキシ基、フェニル基のいずれかで置換されていてもよい)、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシルカルボニル基(ただし、アルコキシル基の炭素数が2〜11の場合、該アルコキシル基は主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されていてもよい)、フェノキシカルボニル基、フェノキシ基及びフェニルチオ基(ただし、フェニル環上の少なくとも1つ以上の水素原子が、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキルメルカプト基、炭素数1〜12のアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシ基、ヒドロキシプロピルオキシ基のいずれかで置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基及びアルキルスルホニル基、アリールスルフィニル基及びアリールスルホニル基(ただし、アリール基は炭素数6〜12のアリール基であり、炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルコキシスルホニル基、炭素数6〜10のアリーロキシスルホニル基、炭素数1〜10のアルキル基を二つ有するジアルキルアミノ基のいずれかである。中でも感度の観点から、炭素数1〜12のアルキルメルカプト基(ただし、アルキル鎖中の少なくとも1つ以上の水素原子が、水酸基、メルカプト基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、2−シアノエトキシ基、炭素数4〜7の2−(アルコキシカルボニル)エトキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜5のアルコキシルカルボニル基、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有する炭素数2〜6のアルコキシル基、炭素数2〜8のアルキルカルボニルオキシ基、フェニル基のいずれかで置換されていてもよい)、フェニルチオ基(ただし、フェニル環上の少なくとも1つ以上の水素原子が、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキルメルカプト基、炭素数1〜12のアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシ基、ヒドロキシプロピルオキシ基のいずれかで置換されていてもよい)が好ましい。
【0045】
R
11は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
また、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17のいずれか1つが、炭素数1〜12のアルキルメルカプト基(ただし、アルキル鎖中の少なくとも1つ以上の水素原子が、水酸基、メルカプト基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、2−シアノエトキシ基、炭素数4〜7の2−(アルコキシカルボニル)エトキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜5のアルコキシルカルボニル基、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有する炭素数2〜6のアルコキシル基、炭素数2〜8のアルキルカルボニルオキシ基、フェニル基のいずれかで置換されていてもよい)又はフェニルチオ基(ただし、フェニル環上の少なくとも1つ以上の水素原子が、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキルメルカプト基、炭素数1〜12のアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシ基、ヒドロキシプロピルオキシ基のいずれかで置換されていてもよい)で置換されていることが好ましい。
【0046】
さらに、R
11がヘキシル基であることがより好ましい。
また、R
13、R
14、R
16及びR
17が水素原子で、R
15がフェニルチオ基であることがより好ましい。中でも、式(6)で表される化合物(1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム))がさらに好ましい。
【化16】
【0047】
(b)成分の含有量としては、(a)成分であるポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.1〜15質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることがさらに好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましく、1〜5質量部であることが極めて好ましい。配合量が0.1質量部以上であると、露光部の架橋がより十分に進行し、感光特性(感度、解像度)がより良好となる傾向があり、20質量部以下であると、硬化膜の耐熱性をより良好にすることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、(a)成分と(b)成分とを組み合わせることで、感光特性に優れ、かつ形成される硬化膜の応力が低くなる。特に(a)成分として一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、(b)成分として一般式(5)で表される活性光線照射によってラジカルを発生する化合物を組み合わせて用いた場合、一般式(5)で表される活性光線照射によってラジカルを発生する化合物が特にi線等の電子線を照射した際に高い活性を示すことから、良好な感光特性を実現することができる。さらに、加熱処理することによってポリイミドとなった場合、その剛直な骨格に起因して低い応力を示すという特徴を有する。
【0049】
[(c)成分:一般式(4a)又は(4b)で表わされる化合物]
本発明の樹脂組成物の(c)成分は、下記一般式(4a)又は(4b)で表わされる化合物である。
【化17】
(一般式(4a)中、nは3以下の整数である。
一般式(4b)中、R
101及びR
102は、各々独立に水素原子又は1価の基である。
mは9以下の整数である。)
【0050】
式(4a)について、nを3以下とすることで、(c)成分の分子量増大による相分離を防ぐことができる。同様に、式(4b)では架橋基を含まないので、mを9以下とすることで、(c)成分の分子量増大による相分離を防ぐことができる。
【0051】
R
101及びR
102の1価の基としては、例えば水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜5のアルケニル基が挙げられる。
【0052】
(c)成分としては、例えば、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロプロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
重量減少温度の観点から、(c)成分はこれらのうち、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましく、トリプロピレングリコールジアクリレートがさらに好ましい。
これら(c)成分は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
付加重合性化合物を含有する場合の(c)成分の含有量は、現像液への溶解性及び得られる硬化膜の耐熱性の観点から、ポリイミド前駆体100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、1〜75質量部とすることがより好ましく、1〜50質量部とすることがさらに好ましい。
【0054】
[(d)成分:溶媒]
(d)成分である溶媒としては、(a)成分であるポリイミド前駆体を完全に溶解する極性溶剤が好ましい。
(d)成分としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、乳酸エチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレアが挙げられる。
これら(d)成分は、単独で用いてもよいし、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(d)成分である溶剤は、樹脂組成物中に40〜80質量%含有することが好ましく、45〜75質量%含有することがより好ましく、45〜70質量%含有することがさらに好ましい。
【0056】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、(a)式(1)で表わされる構造単位を有するポリイミド前駆体、(b)活性光線照射によってラジカルを発生する化合物、(c)式(4a)又は(4b)で表わされる化合物、及び(d)溶剤を含めばよく、さらに以下のその他の成分を含んでもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、硬化後のシリコン基板等への密着性を向上させるために、(e)有機シラン化合物を含んでいてもよい。
有機シラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
有機シラン化合物を含有する場合の含有量は、硬化後の密着性の観点から、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.5〜15質量部とすることがより好ましく、0.5〜10質量部とすることがさらに好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、良好な保存安定性を確保するために、(f)ラジカル重合禁止剤及び/又はラジカル重合抑制剤を含んでもよい。
ラジカル重合禁止剤及び/又はラジカル重合抑制剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ジフェニル−p−ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、クペロン、2,5−トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ラジカル重合禁止剤及び/又はラジカル重合抑制剤を含有する場合の含有量としては、樹脂組成物の保存安定性及び得られる硬化膜の耐熱性の観点から、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、成分(a)〜(d)並びに任意に成分(e)及び/又は(f)を含めばよく、こられ成分から実質的になっていてもよく、これら成分のみからなっていてもよい。
上記「実質的になる」とは、例えば樹脂組成物中の成分(a)〜(d)及び成分(e)〜(f)の合計量が、組成物全体の95重量%以上、又は98重量%以上であることを意味する。
【0062】
[パターン硬化膜、及びパターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜は、本発明の樹脂組成物を露光及び加熱することで得られる。本発明のパターン硬化膜は層間絶縁膜であるLow−k材の保護層として用いられることが好ましい。Low−k材としては、例えば、多孔質シリカ、ベンゾシクロブテン、水素シルセスキオキサン、ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0063】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、本発明の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程、形成した塗膜に活性光線を照射してパターン状に露光する工程、露光部以外の未露光部を現像によって除去してパターン樹脂膜を得る工程と、及び得られたパターン樹脂膜を加熱処理してポリイミドパターンとする工程を含む。
【0064】
樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程において、樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法が挙げられる。
基板としては、例えば、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、低応力の硬化膜を形成可能であるので、特に、12インチ以上の大口径のシリコンウエハへの適用に好適である。
【0065】
樹脂組成物を基板上に塗布した後、溶剤を加熱により除去(乾燥)することによって、粘着性の少ない塗膜(樹脂膜)を形成することができる。
尚、乾燥する際の加熱温度は80〜130℃であることが好ましく、乾燥時間は30〜300秒であることが好ましい。乾燥はホットプレート等の装置を用いて行なうことが好ましい。
【0066】
塗膜に活性光線を照射してパターン状に露光する工程及び露光部以外の未露光部を現像によって除去してパターン樹脂膜を得る工程において、パターン状の露光は、得られた塗膜に、所望のパターンが描かれたマスクを通して活性光線を照射することで行う。
本発明の樹脂組成物はi線露光用に好適であるが、照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線等を用いることができる。
【0067】
露光後に未露光部を適当な現像液で溶解除去することによって、所望のパターン樹脂膜を得ることができる。
現像液としては、特に制限はないが、1,1,1−トリクロロエタン等の難燃性溶媒、炭酸ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液等のアルカリ水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒等が用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒(例えば、水、エタノール、2−プロパノール)等でリンス洗浄を行う。
【0068】
パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、得られたパターンを例えば80〜325℃で5〜300分間加熱することによって、樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体のイミド化を進行させてパターン硬化膜を得ることができる。
この加熱処理する工程は、加熱時のポリイミドの酸化劣化を抑制するために、100ppm以下の低酸素濃度で硬化できる硬化炉を用いることが好ましく、例えばイナートガスオーブンや縦型拡散炉を用いて行うことができる。
【0069】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の製造方法により得られるパターン硬化膜を有する。半導体装置としては例えば、MPU等のLogic系半導体装置やDRAMやNANDフラッシュ等のメモリー系半導体装置等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1−4及び比較例1−7
[ポリアミド酸エステル(ポリイミド前駆体)の合成]
4,4’−オキシジフタル酸二無水物1に対して2当量の2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び触媒量の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を、質量比で4,4’−オキシジフタル酸二無水物の4倍量のN−メチル−2−ピロリドン中に溶解して、室温で48時間撹拌してエステル溶液1を得た。
エステル溶液1を氷浴中で冷却しながら、エステル溶液1の総量に対して、2.2当量の塩化チオニルを滴下した後、1時間撹拌して、酸塩化物溶液を調製した。
塩化チオニルの2倍当量のピリジンを、質量比で2,2’−ジメチルベンジジンの4倍量のN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液を準備し、先に調製した酸塩化物溶液に、氷浴中で冷却しながら滴下した。滴下終了後、反応液を蒸留水に滴下して生じた沈殿物をろ別して集め、蒸留水で数回洗浄した後、真空乾燥してポリアミド酸エステルを得た。
【0072】
[感光性樹脂組成物の調製]
上記で得られたポリアミド酸エステル100質量部、表1に示す一般式(4a)又は(4b)で表される化合物20質量部、BASF社製 IRGACURE OXE−01、1―〔4−(フェニルチオ)フェニル〕―1,2―オクタンジオン2―(O−ベンゾイルオキシム)[(b)成分]を所定量、N−メチル−2−ピロリドン[(d)成分]150質量部に均一に溶解するまで撹拌した後、1μmフィルタを用いて加圧ろ過することによって樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
(1)感光特性評価
得られた感光性樹脂組成物を、東京エレクトロン社製Mark−7を用いて6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、100℃200秒間ホットプレート上で乾燥させて、膜厚10μmの塗膜を形成した。このとき塗膜に相分離の有無を確認した。結果を表1に示す。
相分離が無い場合、得られた塗膜にフォトマスクを介して、キヤノン株式会社製i線ステッパーFPA−3000iWを用いて、30〜330mJ/cm
2のi線を30mJ/cm
2刻みで所定のパターンに照射して、露光を行った。また、同じ厚みの未露光の塗膜をシクロペンタノンに浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定し、露光後のウエハをシクロペンタノンに浸漬してパドル現像した後、PGMEAでリンス洗浄を行った。300mJ/cm
2パターンが得られた場合を〇とし、パターンが得られなかった場合を×とした。
【0074】
(2)熱重量減少の測定
得られた感光性樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコンウエハに塗布して、硬化後膜厚が約5μmとなるようにスピンコートした。得られた塗膜を、光洋サーモシステム製縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下、300℃、325℃、350℃及び375℃でそれぞれ1時間加熱硬化して、ポリイミド膜(硬化膜)を得た。
硬化後のポリイミド膜を4.9%フッ化水素酸溶液に浸漬し、6インチシリコンウエハからポリイミド膜を剥離し、剥離した膜を測定した。測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1において、nの数値はエチレン鎖又はプロピレン鎖の繰り返し数を表す。また、
Td1%、Td3%及びTd5%は、それぞれ1、3及び5%重量減少したときの温度を、Tgはガラス転移点温度を、CTEは100℃〜200℃間の平均線熱膨張を表す。
【0077】
プロピレン鎖を有している添加剤を用いた実施例1〜4では、300℃〜325℃で熱重量減少温度が比較例より15度以上高い結果を示すのに対して、エチレン鎖を有している比較例1〜3は実施例より、15℃以上低い結果を示した。比較例4,5の末端にメタクリレート基がある場合又は、比較例6,7のようにnが11以上の場合はPB後に相分離し、評価できなかった。相分離しなかった系すべてで感光特性結果は良好であった。