(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転しながら表面上に静電潜像を担持する静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の前記静電潜像を現像する現像装置とを有する画像形成装置において、前記現像装置として請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置を適用したことを特徴とする画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による現像装置及び画像形成装置の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明の現像装置及び画像形成装置をプリンタに適用した例について説明する。
【0013】
(A−1)実施形態の構成
図2は、この実施形態の画像形成装置(プリンタ)1の全体構成を示す概略断面図である。
【0014】
プリンタ1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の現像剤(トナー)30(30K、30C、30M、30Y)に対応した現像装置2(2K、2C、2M、2Y)と、トナー30(30K、30C、30M、30Y)をそれぞれ収容する現像剤収容体としてのトナーカートリッジ3(3K、3C、3M、3Y)を有している。
【0015】
また、プリンタ1は、後述する静電潜像担持体としての感光ドラム21(21K、21C、21M、21Y)に現像されたトナー像を用紙Pに転写する転写ユニット4(4K、4C、4M、4Y)と、感光ドラム21の表面に光を照射して静電潜像を形成させる露光ユニット5(5K、5C、5M、5Y)を有している。
【0016】
さらに、プリンタ1は、用紙P(媒体)を収容すると共に、
図2のXの方向に用紙Pを給紙する給紙カセット6と、転写ユニット4により用紙Pに転写されたトナー像を定着させる定着ユニット7と、プリンタ1内で概ねS字状に形成(
図2の方向から見て概ねS字形状に形成)された用紙搬送経路8とを有している。
【0017】
現像装置2K、2C、2M、2Yは、用紙搬送経路8に沿って、用紙Pを搬送する際の上流側(給紙側)から下流側(排出側)の方向(
図2のYの方向)に順次配設されている。また、現像装置2K、2C、2M、2Yは、プリンタ1本体(シャーシ)に対して着脱自在に配設されている。現像装置2K、2C、2M、2Yは現像するトナー30K、30C、30M、30Yの色のみが異なり、基本的な構成は同一であるものとする。以下では、1つの現像装置2についてのみ
図3を用いて詳細構成を説明する。
【0018】
現像装置2は、感光ドラム21と感光ドラム21表面を均一に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ22と、トナー30を感光ドラム21に現像する現像剤担持体としての現像ローラ23を有している。
【0019】
また、現像装置2は、現像ローラ23に供給されたトナー30の層厚を規制する現像ブレード24と、現像ローラ23にトナー30を供給する2つの現像剤供給部材としての供給ローラ251、252を有している。
【0020】
さらにまた、現像装置2は、用紙Pに転写されなかった感光ドラム21上に残留する残留トナー30を除去するクリーニングブレード26と、クリーニングブレード26により除去された残留トナー30を廃棄トナー30として搬送する搬送手段27とを有している。
【0021】
この実施形態では、例として、感光ドラム21は、導電性支持体と光導電層とによって構成され、導電性支持体としてのアルミニウム等の金属パイプに、ブロッキング層、光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した構成の有機系感光体であるものとする。
【0022】
この実施形態では、例として、帯電ローラ22は、金属シャフトとエビクロルヒドリンゴム等の半導電性ゴム層によって構成されているものとする。また、帯電ローラ22は感光ドラム21と所定の圧力もって圧接しており、感光ドラム21の回転により従動回転するものとする。
【0023】
この実施形態では、例として、現像ローラ23は、芯金としてのシャフト(金属シャフト)23aの表面に、半導電性弾性層(弾性層)としての半導電性ゴム層(半導電性ウレタンゴム層)23bが形成された構成となっているものとする。現像ローラ23は感光ドラム21と所定の圧力をもって圧接しており、感光ドラム21の回転に対して連れ回り方向(
図3のZ1の方向)に所定の周速比を持って回転する。
【0024】
この実施形態では、例として、現像ブレード24は、厚さ0.08[mm]で、現像ローラ23の長手方向の長さと略同じ長さを有し、トナー30の層厚を規制する金属薄板部材で構成されているものとする。現像ブレード24の長手方向の一端側は図示せぬフレーム(プリンタ1本体のシャーシ)に固定され、他端側はその先端部から僅かに内側の面が現像ローラ23と圧接するように配置されている。
【0025】
この実施形態では、例として、供給ローラ251、252は、芯金としてのシャフト(例えば、金属製シャフト)251a、252aの表面上に、導電性発泡層(例えば、半導電性発泡シリコーンスポンジ層)251b、252bが形成された構成となっているものとする。供給ローラ251、252は、それぞれ現像ローラ23と所定の圧力をもって圧接しており、現像ローラ23の回転方向(
図3のZ1の方向)に対してカウンター方向(
図3のZ2、Z3の方向)に所定の周速比をもって回転する。
【0026】
なお、以下では、供給ローラ251、252と現像ローラ23が圧接する量(幅)を「NIP量」と呼ぶものとする。言い換えると、NIP量とは
図1に示す現像ローラ23と供給ローラ251、252が圧接し押込まれる度合いを表すことになる。
【0027】
クリーニングブレード26は、その一端が感光ドラム21と所定の当接量をもって当接する位置に配置されており、ウレタンゴムを用いて構成されているものとする。
【0028】
搬送手段27は、クリーニングブレード26により除去された残留トナー30及び付着物を廃棄トナー30として、感光ドラム21の回転軸方向手前側に向けて搬送するものである。搬送手段27により搬送されたトナー30は、廃棄トナー30の搬送路(図示せず)を通過し、廃棄トナー回収部(図示せず)へ回収されるものとする。
【0029】
トナー供給口253は、トナーカートリッジ3から現像装置2内トナー収容部へトナー30を供給する開口部(口穴)である。
【0030】
トナー撹拌機構254は、長手方向にスパイラル形状を施した回転部材である。
【0031】
トナー受け部255は、トナー供給口253から供給されたトナー30の一部を受けるものである。
【0032】
なお、これまでに説明した現像装置2、及びトナーカートリッジ3はいずれもプリンタ1において交換可能な部品(交換ユニット)であるものとする。したがって、現像装置2、及びトナーカートリッジ3は、収容するトナー30が消費された場合や構成部品が劣化した場合等に交換する事が可能である。
【0033】
転写ユニット4は、用紙Pを静電吸着して搬送する転写ベルト9と、図示せぬ駆動部により回転されて転写ベルト9を駆動する図示せぬドライブローラと、ドライブローラと対を成して転写ベルト9を張架する図示せぬテンションローラとが、感光ドラム21K、21C、21M、21Yに対向当接するように配設されている。また、転写ユニット4は、トナー像を用紙Pに転写するよう電圧を印加する転写ローラ4K、4C、4M、4Yを備える。
【0034】
露光ユニット5K、5C、5M、5Yは、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子とレンズアレイとを備えたLEDヘッドであるものとする。
【0035】
給紙カセット6は、内部に用紙Pを積層した状態で収容し、プリンタの下部に着脱自在に装着されているものとする。給紙カセット6の上部には用紙Pを1枚ずつ捌いて繰り出すホッピングローラ等を備えた図示せぬ用紙給紙部が配設されているものとする。
【0036】
定着ユニット7は、用紙搬送経路8の下流側(用紙搬送方向の下流側)に配設され、加熱ローラ7a、加圧ローラ7b、図示せぬサーミスタ及び加熱ヒータを備える。加熱ローラ7aは、例えばアルミニウム等からなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロルアルキルビニルエーテル共重合体)、チューブを被覆する事によって形成されている。そして、その芯金内には例えば、ハロゲンランプ等の加熱ヒータが設けられている。加圧ローラ7bは、例えばアルミニウム等からなる芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAチューブを被覆した構成であり、加熱ローラ7との間に圧接部が形成されるように配設されている。サーミスタは、加熱ローラ7aの表面温度検出手段であり、加熱ローラ7aの近傍に非接触で配設される。
【0037】
次に、供給ローラ251、252の詳細構成について
図4を用いて説明する。
【0038】
図4は、供給ローラ251、252の平面図である。
【0039】
この実施形態では、例として、供給ローラ251、252は、いずれも同一形状で同一構造であるものとして説明する。
【0040】
この実施形態では、供給ローラ251、252では、シャフト251a、252aの周囲に導電性発泡層251b、252bが形成されている。導電性発泡層251b、252bには、無数のセルCが存在する。
【0041】
導電性発泡層251b、252bの材料としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーン変性ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロブレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエーテルゴム等のゴム材料、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエンブロック重合体、ポリオレフィン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエラストマー等を適用することができる。導電性発泡層251b、252bの材料としては、これら1種又は2種以上の混合ゴム又は変性ゴムを用いる事が可能である。さらに、導電性発泡層251b、252bの材料は、ミラブルタイプ又は液状タイプの材料を任意に選択する事が可能であり、特にはミラブルタイプの材料が好ましい。
【0042】
シャフト251a、252aは所定の剛性を有すると共に十分な導電性を有する金属であればよく、例えば鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、金属以外の材料でも導電性と適度な剛性を有する材料であれば用いる事が出来る。シャフト251a、252aとしては、例えば、導電性粒子を分散した樹脂成型品や、セラミックス等を使用する事も可能である。シャフト251a、252aは、ロール形状のほか、空中のパイプ形状としても良い。また、シャフト251a、252aの両端にはギア装着段差やピン穴が形成されていてもよい。また、シャフト251a、252aの両端には、通常駆動源(モータ)とリンクするための部分(先端軸受け部)が形成されるため、当該両端部分は、導電性発泡層251b、252bが形成された部分よりも外径が細くなっているものとする。
【0043】
供給ローラ251、252の製造方法としては、例えば、上述したゴム材料に補強性充填剤、加硫硬化に必要な加硫剤及び発泡剤、導電性付与剤を添加、加圧ニーダーやミキシングロール等により十分に混錬した後、シャフト251a、252a上に未加硫の状態でゴムパウンドを押しだす方法等で形成し、加熱による加硫発泡を行う方法を適用するようにしてもよい。また、予めゴムパウンドをチューブ状に押し出すとともに加熱して加硫発泡させ、スポンジゴムチューブを成形し、これをシャフト251a、252aに被せて供給ローラ25を形成するようにしてもよい。この時、必要に応じてシャフト251a、252aと導電性発泡層251b、252bとの間を接着剤で固定しても良い。そして、その後、その成形された供給ローラ25は所定の外径に切削加工される必要がある。
【0044】
この実施形態では、例として、半導電性ゴム層23bの幅を220.00mmとしている。そして、
図4の方向から見て、半導電性ゴム層23bの幅方向の左端をD0、左端から5.00mmの箇所をD1、左端から110.00mmの箇所(幅方向の中間箇所)をD2、左端から215.00mmの箇所(右端から5.00mmの箇所)をD3とそれぞれ図示している。そして以下では、D1、D2、D3のそれぞれの箇所における供給ローラ251、252の外径(導電性発泡層251b、252bの外径)を、φD1、φD2、φD3と表すものとする。
【0045】
供給ローラ251、252の形状としてはφD1、φD2、φD3が同一径であるストレート形状が一般的であるが、φD2部が最も径が大きくなる様なクラウン形状、あるいはテーパー形状であっても良く、反対にφD2の部分が最も径が小さくなる様な形状であってもよい。
【0046】
また、
図3では、供給ローラ251の外周面から、現像装置2の筐体256の内壁面までの距離(最短距離)をw1と図示している。
【0047】
次に、供給ローラ251、252と現像ローラ23の構成詳細について説明する。
【0048】
図1は、現像ローラ23及び2つの供給ローラ251、252の関係について示した説明図である。
【0049】
NIP量とは
図1に示す現像ローラ23と供給ローラ251、252が圧接し押込まれる度合いを表している。
図1では、現像ローラ23、供給ローラ251、及び供給ローラ252の回転軸の中心位置を、それぞれP1、P2、P3と図示している。また、
図1では、現像ローラ23、供給ローラ251、及び供給ローラ252の半径(回転軸の中心位置から半導電性ゴム層23bの外周面までの幅)を、それぞれr1、r2、r3と図示している。さらに、
図1では、現像ローラ23と供給ローラ251、252が圧接し押込まれた状態(圧接している状態)での、P1からP2までの幅をL1、P1からP3までの幅をL2と図示している。そして、
図1では、現像ローラ23の回転(Z1の方向への回転)に対して、下流側に位置する供給ローラ251のNIP量を「Δ1」、現像ローラ23の回転(Z1の方向への回転)に対して上流側に位置する供給ローラ252のNIP量を「Δ2」と図示している。NIP量Δ1、Δ2は、それぞれ以下の(1)式、(2)式により表される。
【0050】
Δ1=r1+r2−L1 …(1)
Δ2=r1+r3−L2 …(2)
また、
図1では、供給ローラ251、252が、現像ローラ23と接触開始箇所から接触終了箇所までの幅(以下、「NIP幅」と呼ぶ)を、それぞれLv1、Lv2と図示している。
【0051】
さらに、
図1では、供給ローラ251、252のを構成する導電性発泡層251b、252bの層厚(導電性発泡層251b、252bの内周面から外周面までの幅(肉厚))を、それぞれt1、t2と図示している。供給ローラ251、252では、導電性発泡層251b、252bの層厚t1、t2が厚くなると、その分導電性発泡層251b、252bが変形しやすくなる傾向となるため、同じ圧力(押圧力)でもNIP量Δ1、Δ2が増加することになる。
【0052】
さらにまた、以下では、供給ローラ251、252の外周面(導電性発泡層251b、252bの外周面)の硬度(AskerF硬度)を、それぞれHs1、Hs2と表すものとする。供給ローラ251、252では、導電性発泡層251b、252bの硬度Hs1、Hs2が少なくなると、その分導電性発泡層251b、252bが変形しやすくなるため、同じ圧力(押圧力)でもNIP量Δ1、Δ2が増加することになる。
【0053】
下流側の供給ローラ251と上流側の供給ローラ252は、いずれも、トナーカートリッジ3からのトナー30と、現像ローラ23とに接触しながら回転しているため、現像ローラ23との接触部分のトナー30を掻き取りながら、摩擦によりトナー30を帯電させてトナー30を現像ローラ23に供給する動作を行っている。ただし、現像装置2において、下流側の供給ローラ251は、主として現像ローラ23へトナー30を供給する機能を担うことになる。一方、上流側の供給ローラ252は、主として現像ローラ23に現像後に残ったトナー30を掻きとる機能を担うことになる。
【0054】
上述の通り、現像ローラ23の各領域は、下流側の供給ローラ251と上流側の供給ローラ252とにより、2度トナー30の掻きとりと供給を受けることになる。そのため、上流側の供給ローラ252の不具合(トナー30掻きとり不足や、供給過多)が、下流側の供給ローラ251である程度修正されることになる。
【0055】
以上のように、現像ローラ23に供給されるトナーの量や状態(ダメージや帯電の状態等)は、供給ローラ251、252のNIP量Δ1、Δ2、層厚t1、t2、及び硬度Hs1、Hs2のそれぞれの大きさやバランスに応じた状態となる。言い換えると、現像ローラ23では、供給ローラ251、252のNIP量Δ1、Δ2、層厚t1、t2、及び硬度Hs1、Hs2のそれぞれの大きさやバランスが、現像処理の品質(画像形成の品質)に影響を与える。
【0056】
また、上述の通り、下流側の供給ローラ251と上流側の供給ローラ252とでは、位置関係から主たる機能が異なる。したがって、現像装置2では、供給ローラ251、252のNIP量Δ1、Δ2、層厚t1、t2、及び硬度Hs1、Hs2について、それぞれの位置関係に基づく主たる機能や摩耗度合に応じた大きさやバランスで設定することが好ましい。
【0057】
以下、供給ローラ251、252のNIP量Δ1、Δ2、層厚t1、t2、及び硬度Hs1、Hs2の調整方法について説明する。
【0058】
以下では、供給ローラ251、252において、導電性発泡層251b、252bの層厚と、NIP量Δ1、Δ2との比率を「圧接比」と呼ぶものとする。供給ローラ251、252の圧接比B1、B2は、それぞれ以下の(3)、(4)式のように表すことができる。
【0059】
B1=Δ1/t1 …(3)
B2=Δ2/t2 …(4)
また、以下では、供給ローラ251、252において、圧接比B1、B2に硬度Hs1、Hs2を乗じた値(設計値)を、「圧接力」と呼ぶものとする。供給ローラ251、252の圧接力A1、A2は、それぞれ以下の(5)、(6)式のように表すことができる。
【0060】
A1= Hs1×B1 = Hs1×(Δ1/t1) …(5)
A2= Hs2×B2 = Hs2×(Δ2/t2) …(6)
圧接力A1、A2が小さい程、供給ローラ251、252のトナー供給・掻き取りの性能は小さくなり、トナーへ与えるストレスも小さくなる。反対に、圧接力A1、A2が大きい程、供給ローラ251、252のトナー供給・掻き取りの性能は大きくなり且つトナーへのストレスも大きくなる。
【0061】
したがって、プリンタ1では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2に応じて、現像ローラ23へのトナー30供給量が不足し、印刷時にカスレ(トナー30供給不足に伴う印刷のカスレ)が生じたり、ストレス過多(ストレス過多に伴うトナー30への帯電量過多等)により印刷時に汚れ(トナー30の供給過多に伴う汚れ)が生じることになる。
【0062】
そこで、この実施形態では、現像処理及び画像形成の品質が良好(印刷した用紙Pにカスレや汚れが発生しにくい状態)となる圧接力A1、A2の条件を実験により求め、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2が当該範囲となるように構成するものとして説明する。現像処理及び画像形成の品質が良好(印刷した用紙Pにカスレや汚れが発生しにくい状態)となる圧接力A1、A2の組み合わせを求める実験詳細については後述する。
【0063】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態のプリンタ1の動作を説明する。
【0064】
まず、
図1を用いて、プリンタ1全体の動作について説明する。
【0065】
プリンタ1は、印刷データ受信後に現像装置2K、2C、2M、2Yが駆動し、トナーカートリッジ3K、3C、3M、3Yよりトナー30K、30C、30M、30Yを補充する。印刷データ受信後、給紙カセット6内の用紙Pが給紙され、搬送経路8に沿って搬送される。搬送された用紙Pは、現像装置2K、2C、2M、2Yの下方向を順次通過し、LEDヘッド5K、5C、5M、5Yにより露光され形成された感光ドラム21K、21C、21M、21Y上のトナー像が転写ユニット4にて転写され、定着ユニット7にて定着後、プリンタ1外へ排出される。
【0066】
現像装置2K、2C、2M、2Y単体での基本動作は同一であるため、以下1つの現像装置2に関して説明する。
【0067】
感光ドラム21は、帯電ローラ22により感光ドラム21表面が一様均一に帯電され、露光ユニット5が照射する光により静電潜像を形成する。
【0068】
帯電ローラ22には、トナー30と同極性のバイアス電圧を印加する図示せぬ帯電ローラ用電源が接続されている。帯電ローラ22は、帯電ローラ用電源から印加されたバイアス電圧により感光ドラム21の表面を一様均一に帯電させる。
【0069】
現像ローラ23には、トナー30と同極性、又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する図示せぬ現像ローラ用電源が接続されている。現像ローラ23は、現像ローラ用電源から印加されたバイアス電圧によって、帯電したトナー30を感光ドラム21上の静電潜像部に付着させる。
【0070】
現像ブレード24には、トナー30と同極性又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する図示せぬ現像ローラ用電源、あるいは供給ローラ用電源が接続されている。現像ブレード24は、印加されたバイアス電圧及び当接する際の当接圧によって現像ローラ23上のトナー30を帯電及び層規制する。
【0071】
供給ローラ251、252には、トナー30と同極性、又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する図示せぬ供給ローラ用電源が接続されている。供給ローラ251、252は、供給ローラ用電源から印加されたバイアス電圧によって、トナーカートリッジ3が備える供給トナー収容部31から補充されたトナー30を現像ローラ23に供給する。また、供給ローラ251、252は、現像ローラ25との当該摩擦力によりトナー30を帯電し、且つ現像ローラ23上の未現像トナーを掻きとることになる。
【0072】
クリーニングブレード26は、感光ドラム21の表面上に残留するトナー30を掻き取ることで感光ドラム21の表面をクリーニングする。また、微量ではあるが転写ベルト9から感光ドラム21の表面に付着した付着物もクリーニングする。
【0073】
搬送手段27は、クリーニングブレード26により除去された残留トナー30及び付着物を廃棄トナー30として、感光ドラム21の回転軸方向手前側に向けて搬送する。搬送手段27によって搬送された廃棄トナー30は、図示せぬ現像装置2フレーム内搬送経路を通過し廃トナー収容部まで搬送される。
【0074】
トナー供給口253は、トナーカートリッジ3から供給されるトナー30を現像装置2内に供給する連結口で、所定の寸法をもって開口している。
【0075】
トナー撹拌機構254は、トナー受け部255で受けたトナーを軸方向両端部に撹拌している。
【0076】
トナー受け部255は、トナー撹拌機構254がトナーを撹拌する為に、トナー供給口253から供給されたトナー30の一部を受けている。
【0077】
トナーカートリッジ3K、3C、3M、3Yには、トナー収容部31K、31C、31M、31Y内に図示せぬ撹拌供給機構が存在し、未使用のトナー30K、30C、30M、30Yをそれぞれ現像装置2K、2C、2M、2Y内に補充する。
【0078】
転写ユニット4における転写ローラ4K、4C、4M、4Yには、トナー30K、30C、30M、30Yと逆極性のバイアス電圧を印加する図示せぬ転写ローラ用電源が接続されており、転写ローラ用電源から印加されたバイアス電圧により、それぞれの感光ドラム21K、21C、21M、21Yに形成されたトナー像を用紙Pに転写する。
【0079】
LEDヘッド5K、5C、5M、5Yは、入力された印刷データに基づき、感光ドラム21K、21C、21M、21Yの表面に光を照射し、光照射部分の電位を光減衰させて静電潜像を形成する。
【0080】
給紙カセット6内部に給紙された用紙Pは、図示せぬ搬送ローラによって現像装置2下に搬送される。
【0081】
定着ユニット7は、サーミスタが検出した加熱ローラ7aの表面温度の検出に基づき、加熱ヒータを制御することで、加熱ローラ7aの表面温度は所定の温度に維持される。トナー像が転写された用紙Pが所定の温度に維持された加熱ローラ7aと加圧ローラ7bとから形成される圧接部を通過する事で、熱及び圧力が付与され、用紙P上のトナー像は定着される。
【0082】
次に、現像装置2を構成して実際に行った実験(以下、「本実験」と呼ぶ)の実験結果について
図6、
図7を用いて説明する。本実験は、主として圧接力A1、A2に好適な値の組合せを検証するための実験である。なお、以下に本実験に係る各条件について記すが、以下の各条件は、本発明の現像装置を実現する際に良好な結果が得られる(特有な効果を奏する)一例であり、本発明の現像装置の構成を限定するものではない。
【0083】
本実験では、供給ローラ251、252の導電性発泡層251b、252bには、シリコーンゴムパウンドをベースとして発泡させた物を用いた。導電性発泡層251b、252bのセルCは各々が個々に独立した独泡である。導電性発泡層251b、252bを構成する個々のセルCの大きさは、100〜1000μmが一般的で、本実験では導電性発泡層251b、252b表面で200〜400μmとなるものを用いた。また、供給ローラ251、252の抵抗値は、幅2.0mm、直径6.0mmのSUS材ボールベアリングを20gfの力で接触させ、供給ローラ25を回転させながらシャフト251a、252aから300Vを印加した時0.1〜100MΩになる様に調整した物が良好で、本実験では、1MΩの抵抗値とした。
【0084】
また、本実験では、上述の
図4に示すように、導電性発泡層251b、252bの全幅は、220mmであるものとする。そして、導電性発泡層251b、252bの外径はいずれの位置でも14.0mmとなるストレート形状を用いた。なお、本実験では、事前に、導電性発泡層251b、252bの外径(供給ローラ251、252の外径)について、
図4に示すように基準位置D0を基準としてD1(D0から5.0mmの位置)、D2(D0から110.0mmの位置)、D3(D0から215.0mmの位置)の3つの位置で、測定していずれの位置でも直径が14.0mmとなることを確認した。
【0085】
本実験では、感光ドラム21、現像ローラ23、及び供給ローラ251、252が回転する際の周速比を
図5に示す通りに構成した。本実験では、感光ドラム21の周速度を基準(1.000)として、現像ローラ23の周速比を1.257、下流側の供給ローラ251の周速比を0.604、上流側の供給ローラ252の周速比を0.660としている。また、本実験では、現像ローラ23の周速度を基準(1.000)とした場合、下流側の供給ローラ251の周速比を0.480、上流側の供給ローラ252の周速比を0.525となっている。
【0086】
本実験では、供給ローラ251、252のNIP量Δ1、Δ2を、それぞれ0.2mm〜1.5mmの間で設定した。また、本実験では、供給ローラ251、252の層厚t1、t2を、それぞれ2.0mm〜6.0mmの間で設定した。さらにまた、本実験では、供給ローラ251、252の硬度Hs1、Hs2(AskerF硬度)を、それぞれ30〜70の間で設定した。
【0087】
本実験で用いられる現像装置2において、
図3に示すw1は5.00mmであるものとする。
【0088】
本実験では、圧接力A1、A2を、
図6のような組合せで設定して、それぞれの圧接力の組合せで、プリンタ1による連続耐久印刷(装置の仕様上の寿命まで、連続して用紙Pに対する印刷)を実行した後の状態で、印刷品質を評価した。
【0089】
本実験では、現像装置2を、寿命が72000ドラムカウントとなる仕様のプリンタとして実現することを目的として連続耐久印刷を行った。なお、前記ドラムカウントは、感光ドラム21が1回転で1カウントアップするように定めている。本実験では、用紙P(評価用の用紙P(媒体))として、XEROX(登録商標)製の印刷用紙「Xerox4200 LT 201b New92」を用いた。また、本実験では、当該プリンタ(上述の現像装置2を適用したプリンタ)で、用紙Pの印刷可能領域に対してブラック(K)のトナー1.25%印字のパターンを1ページ毎の間欠印刷でドラムカウント72000まで印刷させた。さらに、本実験では、当該プリンタを用いて、72000ドラムカウント(感光ドラム21の寿命)まで印刷し、印刷品質に問題が無かったサンプル(圧接力A1、A2の組合せ)の評価結果を「3」、印刷品質に軽微な問題が発生したサンプル(カスレ、汚れの度合いが所定以下のサンプル)の評価結果を「2」、印刷品質に大きな問題が発生したサンプル(カスレ、汚れの度合いが所定以上のサンプル)の評価結果を「1」としている。
【0090】
具体的には、本実験では、各サンプルの条件のプリンタ1で、72000カウントまで印刷した後、当該プリンタ1を用いて、ブラック(K)のトナーで100%ベタの印刷(印刷可能な全領域にKの最高濃度の画像を印刷)、中間調の印刷(印刷可能な全領域にKの中間濃度(50%)の画像を印刷)、及び白色の印刷(印刷可能な全領域にKの最低濃度(0%)の画像を印刷)の3段階の濃度での印刷を行い、印刷した用紙Pについて汚れ及びカスレの評価を行った。
【0091】
本実験では、各サンプルの印刷結果について汚れ及びカスレのそれぞれについて、評価結果(1、2、3のいずれか)を求めた。そして、本実験では、汚れ及びカスレの評価がいずれも3のサンプルについては、最終的な当該サンプルの評価結果を3とし、汚れ又はカスレの評価結果が1又は2のサンプルについては最も評価の低い評価結果を当該サンプルの最終的な評価結果とした。例えば、汚れの評価結果が3でカスレの評価結果が2のサンプルについては、最終的な評価結果を2とした。
【0092】
本実験では、各サンプルの100%のベタ印刷を行った用紙Pについて、濃度測定機(エックスライト社製「X-Rite528」)を用いて、ページ内(印刷領域内)で最も濃度の濃い領域と、最も濃度の薄い領域(カスレの発生している領域)との濃度段差に基づいてカスレの度合いを測定した。本実験では、ページ内の濃度段差が0.01より小さいサンプルのカスレの評価結果を3、ページ内の濃度段差が0.01以上0.02以下のサンプルのカスレの評価結果を2、ページ内の濃度段差が0.02より大きいサンプルのカスレの評価結果を3とした。
【0093】
本実験では、各サンプルで、中間調の印刷を行った用紙P、及び白色の印刷を行った用紙Pについて、目視で汚れの評価を行った。本実験では、中間調の印刷を行った用紙P及び白色の印刷を行った用紙Pの両方で汚れが認められなかったサンプルの汚れの評価結果を3とした。また、本実験では、中間調の印刷を行った用紙Pに汚れが認められ、白色の印刷を行った用紙Pに汚れが認められなかったサンプルの汚れの評価結果を2とした。さらに、本実験では、少なくとも白色の印刷を行った用紙Pに汚れが認められたサンプルの汚れの評価結果を1とした。
【0094】
図6に示す表は、本実験の各サンプル(圧接力A1、A2の組み合わせごと)の圧接力A1、A2の合計値(A1+A2)を示している。また、
図7に示す表は、本実験の各サンプル(圧接力A1、A2の組み合わせごと)の評価結果について示している。
【0095】
次に、
図7に示す実験結果から、本実験に基づく圧接力A1、A2の合計値と、評価結果の関係について説明する。
【0096】
本実験では、
図7に示すように、圧接力A1、A2の合計値(A1+A2)が10以上50以下の範囲で2ないし3の評価結果を得られることが分かる。また、本実験では、圧接力A1、A2の合計値(A1+A2)が10未満の領域では、印字上掻き取り不足による汚れや、供給不足によるカスレ問題が発生し、全てのサンプルで評価結果が1となった。さらに、本実験では、圧接力A1、A2の合計値(A1+A2)が50より大きい領域では、トナー30へのストレスが大きくなり過剰帯電による汚れや部材摩耗による縦スジ、カスレ等問題が発生し、全てのサンプルで評価結果が1となった。
【0097】
したがって、プリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)を、以下の(7)式を満たすように設定することで、少なくとも2以上(2ないし3)の評価の印刷品質を保持することができる。
【0098】
10≦Hs1X(Δ1/t1)+Hs2×(Δ2/t2)≦50 …(7)
また、本実験では、
図7に示すように、圧接力A1、A2が上記の(7)式を満たす領域内でも、圧接力A1、A2がいずれも5以上25以下となる領域内に、評価結果が3となるサンプルが含まれることが分かる。
【0099】
したがって、プリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)について、上記の(7)式に加えて、以下の(8)式及び(9)式を満たすように設定することで、より高い印刷品質を保持することができる。
【0100】
5≦Hs1X(Δ1/t1)≦25 …(8)
5≦Hs2×(Δ2/t2)≦25 …(9)
上記の(7)式を満たす領域内でも、供給ローラ251、252のいずれかに圧接力が偏って大きい場合には、圧接力が大きい供給ローラの摩耗が大きく、プリンタ1の構成(現像装置2の搭載機種)によっては、印刷品質に問題が発生しやすくなる。そのため、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2の設定条件に、上記の(7)式だけでなく、上記の(8)式及び(9)式を加えることにより、より高い印刷品質を保持(供給ローラ等の摩耗による印刷品質の劣化を低減)することができる。
【0101】
また、本実験では、
図7に示すように、圧接力A1、A2が上記の(7)式〜(9)を満たす領域内でも、上流側の供給ローラ252圧接力A2を、下流側の供給ローラ251の圧接力A1以上の値とする領域内で、全てのサンプルの評価結果が3となることが分かる。
【0102】
したがって、プリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)について、上記の(7)式〜(9)式に加えて、以下の(10)式を満たすように設定することで、さらに高い印刷品質を保持することができる。
【0103】
Hs1X(Δ1/t1)≦Hs2×(Δ2/t2) …(10)
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0104】
この実施形態のプリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)について、上記の(7)式を満たすように構成することにより、長期間にわたって(少なくとも感光ドラム21の寿命までの間)、良好な印刷品質(少なくとも2以上の評価結果の印刷品質)を保持することができる。
【0105】
また、実施形態のプリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)について、上記の(7)式に加えて、さらに上記の(8)式及び(9)式を満たすように構成することにより、長期間にわたって(少なくとも感光ドラム21の寿命までの間)、より良好な印刷品質を保持することができる。
【0106】
さらに、実施形態のプリンタ1(現像装置2)では、供給ローラ251、252の圧接力A1、A2(Hs1、Δ1、t1、Hs2、Δ2、及びt2)について、上記の(7)式〜(9)式に加えて、さらに上記の(10)式を満たすように構成することにより、長期間にわたって(少なくとも感光ドラム21の寿命までの間)、さらにより良好な印刷品質を保持することができる。
【0107】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0108】
(B−1)上記の実施形態では、本発明の現像装置を、現像ローラ23及び供給ローラ251、252以外の構成要素を含む現像装置2に適用する例について説明したが、少なくとも現像ローラ及び供給ローラを有するその他の現像装置に本発明を適用(上記の実施形態と同様に圧接力を設定)するようにしてもよい。
【0109】
(B−2)上記の実施形態では、本発明の現像装置を、プリンタとしての画像形成装置に適用する例について説明したが、複写機(コピー機)や複合機(MFP)、FAX等その他の画像形成装置に本発明を適用するようにしてもよい。