(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143263
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置と排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
B01D53/50 200
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-94243(P2013-94243)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213288(P2014-213288A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】今田 典幸
(72)【発明者】
【氏名】大峰 成人
(72)【発明者】
【氏名】石坂 浩
(72)【発明者】
【氏名】片川 篤
【審査官】
松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−078412(JP,A)
【文献】
特開2007−275715(JP,A)
【文献】
特開平09−173764(JP,A)
【文献】
特開2000−176321(JP,A)
【文献】
特開昭55−13178(JP,A)
【文献】
特開平11−267448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
B01D 47/00−47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置からの燃焼排ガスを導入し、下方から上方に流れる排ガスに対して脱硫液を噴霧するスプレノズルを複数段設置した脱硫装置と脱硫装置の下部に設けられたスプレノズルに脱硫液を循環ポンプにより循環供給する循環タンクを備えた排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する排ガス処理装置において、
脱硫装置の上段側のスプレノズルには下段側のスプレノズルよりも低噴霧圧で、下段側スプレノズルと同液滴噴霧量、同液滴噴霧速度及び同液滴径となるような内部流路形状を有するスプレノズルを備えたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記スプレノズルは、脱硫液を導入する円筒状の横向き入口通路と該横向き入口通路に続く水平断面が円形であり、鉛直方向断面が上部の幅広形状部と該幅広形状部から下側になるほど順次幅狭となる幅狭形状部からなる旋回室と該旋回室の幅狭形状部に続く脱硫液を排出する円筒状の下向き出口通路からなり、該スプレノズルの入口直径及び旋回室の幅広形状部の直径を上段側のスプレノズルほど大きくし、脱硫液の円筒状の下向き出口通路の直径を上段側と下段側のスプレノズルで同じ大きさにすることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
上段側のスプレノズルと下段側のスプレノズルに共に単一の循環ポンプにより循環タンクからの脱硫液を供給することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
上段側のスプレノズルと下段側のスプレノズルにそれぞれ別々の同一仕様の循環ポンプにより循環タンクからの脱硫液を供給することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
燃焼装置からの燃焼排ガスを導入し、下方から上方に流れる排ガスに対して脱硫液を噴霧するスプレノズルを複数段設置した脱硫装置と脱硫装置の下部に設けられたスプレノズルに脱硫液を循環ポンプにより循環供給する循環タンクを用いて、排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する排ガス処理方法において、
上段側のスプレノズルには下段側のスプレノズルよりも低噴霧圧で、該下段側スプレノズルと同液滴噴霧量、同液滴噴霧速度及び同液滴径となるように内部流路形状が形成された前記スプレノズルを使用して、脱硫液を循環供給することを特徴とする排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれる硫黄酸化物を除去する排煙処理装置と排ガス処理方法に係わり、特に脱硫液を排ガス中に噴霧する湿式脱硫処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所のボイラ等の燃焼装置から生じる排ガスを浄化処理する排ガス処理装置として、脱硫液を排ガス中に噴霧することで排ガス中の硫黄酸化物(主にSO
2)を吸収、除去する湿式脱硫装置を使用した装置構成の一例を
図7に示す。
【0003】
燃料として石炭を使用する例を示すが、硫黄含有量の多い重油などでも同様な構成となるのが一般である。ボイラ1に石炭21と燃焼用空気36を供給し、石炭21の燃焼反応によって発生した熱により、図示しないボイラ熱交換器で高圧蒸気を作る。上記高圧蒸気により図示しないタービンを回転させ、タービンと連結した発電機により発電する。
【0004】
一方、ボイラ1から排出される燃焼排ガスは、空気予熱器(A/H)3で燃焼用空気と熱交換した後、集塵機4で煤塵が除去される。集塵機4としては、濾布を使用したバグフィルタや、流路内に電極を設置した電気式集塵器などがある。バグフィルタは、設備コストは安価であるが、圧力損失が大きいこと、濾布を定期的に交換する必要があるなどの問題もあり、圧力損失が小さく、比較的メンテナンスが容易な電気式集塵器が広く使用されている。一般に集塵機部のガス温度は160〜200℃程度である。
【0005】
次に、集塵機4を出た排ガスは湿式脱硫装置5に供給され、排ガス中のSO
2が除去された後、煙突2から放出される。
ここで、湿式脱硫装置5では、内部にスプレノズル27が複数段設置され、循環タンク28内の脱硫液を循環ポンプ26により昇圧してスプレノズル27から噴霧する構成となっている。一般に脱硫液として、CaCO
3やNaOH溶液が使用される。脱硫装置5内に噴霧された脱硫液は、排ガス中のSO
2を吸収し、脱硫装置5の下部にある脱硫液タンク28で捕集され、排水ライン29より図示しない排水処理設備に送られる。
【0006】
図7に示す排煙脱硫装置は、例えば特開昭62−225226号公報などに開示されている。
また、特許文献2(特開平9−173764号公報)には脱硫装置内の複数の吸収液スプレ段の中で、最上流スプレ段のスプレノズルから噴霧される液滴よりも微粒な液滴を下流スプレ段のスプレノズルから噴霧することで、前記下流スプレ段のスプレノズルから噴霧される表面積の大きな液滴による脱硫性能と除塵性能を最上流スプレ段のスプレノズルから噴霧される液滴より高くすることができることが開示されている。
【0007】
また、特許文献3(特公平2−1523号公報)には縦型の脱硫装置内に設ける複数の吸収液スプレ段の中で、最上流スプレ段(下段)のスプレノズルから噴霧される液滴の粒径を100〜500μm、中段のスプレ段のスプレノズルから噴霧される液滴の粒径を500〜800μm、上段のスプレノズルから噴霧される液滴の粒径を800〜1500μmとすることで、上段のスプレノズルから噴霧される大きな液滴は、塔内に滞留している時間がより長く、落下中に塔内のヘッダなどに衝突するので、大きな液滴でも無駄がなく、高い吸収効率(脱硫効率)が得られ、下段のスプレノズルから噴霧される小さな液滴は比表面積が大きく、塔内滞留時間が長く効果的な吸収(脱硫)を行うことができるという発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−225226号公報
【特許文献2】特開平9−173764号公報
【特許文献3】特公平2−1523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記
図7に示す従来技術においては、脱硫装置内部に脱硫液のスプレノズル27を多段に設置している。このような場合、循環ポンプで脱硫液を昇圧し、各段のスプレノズル27に供給した場合、上段のスプレノズル27は高さ分だけ、噴霧圧が低下してしまうため、噴霧液量が減少し、液滴噴霧速度が遅くなり、さらに液滴径が小さくなってしまう。
【0010】
図6に、同じスプレノズル27を使用した場合の、噴霧圧と噴霧液量、液滴径及びSO
2吸収量との関係をそれぞれ示す。噴霧圧力が低下すると、噴霧流量が低下し、また、噴霧する液滴径が大きくなることが分かる。それらのことから噴霧圧力が低下すると、排ガス中のSO
2吸収量も低下することが分かる。
【0011】
そのため、従来は
図7に示すように下段側のスプレノズル27に脱硫液を供給する配管の途中にオリフィス24を設置することで、各段のスプレノズル27にかかる背圧が同じになるようにしている。しかし、このようなオリフィス24を設置することでポンプ26の動力が無駄に消費されることとなり、ポンプ動力が大きくなってしまうという問題があった。
【0012】
また、各段のスプレノズル27に脱硫液を供給する配管に循環ポンプ26を設置する方法も考えられるが、この場合は、上記の理由によりそれぞれポンプ26の仕様を変えて、各段のスプレノズル27にかかる圧力が同じになるようにしている。そのため、それぞれのポンプ26に対して、異なる消耗品を用意する必要があるなどの問題があった。
【0013】
また、上記特許文献2,3にはスプレ液滴の粒径をスプレ段毎に変化させて、高い脱硫率を達成させる発明が開示されているが、異なるスプレ段で液滴を噴霧するためのポンプの動力を複雑に調整する必要がある。
【0014】
本発明の課題は、排ガス流路内の複数段の脱硫液噴霧用のスプレノズルでの脱硫液噴霧吐出圧を低減させながら脱硫性能を従来と同等に保つことができる排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、燃焼装置からの燃焼排ガスを導入し、下方から上方に流れる排ガスに対して脱硫液を噴霧するスプレノズルを複数段設置した脱硫装置と脱硫装置の下部に設けられたスプレノズルに脱硫液を循環ポンプにより循環供給する循環タンクを備えた排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する排ガス処理装置において、脱硫装置の上段側のスプレノズルには下段側のスプレノズルよりも低噴霧圧で、下段側スプレノズルと同液滴噴霧量、同液滴噴霧速度及び同液滴径となるような
内部流路形状を有するスプレノズルを備えたことを特徴とする排ガス処理装置である。
【0016】
請求項2記載の発明は、
前記スプレノズルは、脱硫液を導入する円筒状の横向き入口通路と該横向き入口通路に続く水平断面が円形であり、鉛直方向断面が上部の幅広形状部と該幅広形状部から下側になるほど順次幅狭となる幅狭形状部からなる旋回室と該旋回室の幅狭形状部に続く脱硫液を排出する円筒状の下向き出口通路からなり、該スプレノズルの入口直径及び旋回室の幅広形状部の直径を上段側のスプレノズルほど大きくし、脱硫液の円筒状の下向き出口通路の直径を上段側と下段側のスプレノズルで同じ大きさにすることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置である。
【0017】
請求項3記載の発明は、上段側のスプレノズルと下段側のスプレノズルに共に単一の循環ポンプにより循環タンクからの脱硫液を供給することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置である。
【0018】
請求項4記載の発明は、上段側のスプレノズルと下段側のスプレノズルにそれぞれ別々の同一仕様の循環ポンプにより循環タンクからの脱硫液を供給することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置である。
【0019】
請求項5記載の発明は、燃焼装置からの燃焼排ガスを導入し、下方から上方に流れる排ガスに対して脱硫液を噴霧するスプレノズルを複数段設置した脱硫装置と脱硫装置の下部に設けられたスプレノズルに脱硫液を循環ポンプにより循環供給する循環タンクを用いて、排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する排ガス処理方法において、上段側のスプレノズルには下段側のスプレノズルよりも低噴霧圧で、該下段側スプレノズルと同液滴噴霧量、同液滴噴霧速度及び同液滴径となるように
内部流路形状が形成された前記スプレノズルを使用して、脱硫液を循環供給することを特徴とする排ガス処理方法である。
【0020】
排ガス処理装置で一般に用いられる脱硫装置内で脱硫液を噴出するスプレノズルの水平断面図を
図3(a)に示し、鉛直断面図を
図3(b)に示す。
図3(a)の図面左側より脱硫液が円筒状の横向き入口通路からスプレノズル内に入り、該横向き入口通路に続く水平断面が円形であり、鉛直方向断面が上部の幅広形状部と該幅広形状部から下側になるほど順次幅狭となる幅狭形状部からなる旋回室で脱硫液は旋回流を形成し、該旋回室の幅狭形状部に続く脱硫液の円筒状の下向き出口通路から脱硫液を噴出する構成となっている。
【0021】
このようなスプレノズルの噴霧圧と噴霧液量、噴霧速度及び液滴径との関係は
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)に示す。
図6に示すようにスプレノズルからの脱硫液の噴霧圧が下がると、噴霧液量及び噴霧速度は低下し、液滴径は大きくなる。そのため、排ガス中のSO
2吸収特性は噴霧圧が低下するとSO
2吸収量は低下する。
【0022】
一方、このようなスプレノズルでは、噴霧圧と噴霧量の関係は
図3に示す入口直径Diによって調整できる。また、スプレノズル出口部から噴出する液滴径は、旋回室の水平断面円形の内径Dr及び出口直径Dgを調整することで調整できる。具体的には、入口直径Diを大きくすることで、噴霧圧力が低下しても、噴霧量を同じにすることができる。また、入口直径Diを大きくすることで、旋回室に流入する液の速度が遅くなるが、旋回室内径Drを大きくし、出口直径Dgを一定とすることで、スプレノズル出口から噴出する液滴径、液滴速度を同じにすることができる。
【0023】
図4にはスプレノズルの噴霧圧(MPa)に対してスプレノズルの噴霧流量(L/min)、液滴径(μm)及び液滴速度(m/s)について、実線で示す基準の入口直径Diと旋回室内径Drを有するスプレノズルAの値に対して入口直径Diと旋回室の水平断面円形の内径Drを大きくしたスプレノズルBの一例を破線で示す。
【0024】
図4に示す結果より、噴霧圧を0.06MPaから0.045MPaに下げても、噴霧液量、噴霧速度及び液滴径は0.06MPaの時とほぼ同等となっていることが分かる。また、この時の排ガス中のSO
2吸収特性を
図5中に示すが、噴霧圧を0.06MPaから0.045MPaに下げても、同じSO
2吸収量となることが分かる。
【0025】
このような脱硫用のスプレノズルを排ガス処理装置(脱硫装置)の上段部に設置することで、上段部のスプレノズルの背圧(噴霧圧)が下がっても、下段部にある噴霧圧がより高いスプレノズルと同じ脱硫液量を同じ噴霧速度、液滴径で噴霧することができるようになり、SO
2吸収特性も同様に維持できることが分かる。
【0026】
本発明は、すでに運用中の排ガス処理装置の脱硫装置に対して特に有効となる。すなわち、既設の縦型脱硫装置において、下段側のスプレノズル内の入口直径Di、旋回室内径Dr、出口直径Dgに対応した部分の上段側のスプレノズルの構造を
図3に示す構造、即ち入口直径Diを大きくすることで、噴霧圧力が低下しても、噴霧量を同じにすることができる。また上段側のスプレノズルの入口直径Diを大きくすることで旋回室に流入する液の速度が遅くなるが、旋回室内径Drを大きくし、出口直径Dgを一定とした構造に変更し、
図7に示すスプレノズル27に脱硫液を循環する配管中のオリフィス24を撤去することで脱硫性能はそのままで、循環ポンプ26の吐出圧を低く運転することが可能となり、運転動力を低減できるという効果がある。
【0027】
また、本発明により、従来と同等のスプレノズルからの脱硫液の吐出圧で脱硫装置を運転した場合は、脱硫装置の上段部の改良スプレノズルからの吐出液量が増加するため、同じ消費動力で循環液量を増加することが可能となり脱硫性能が向上できるという利点もある。
【発明の効果】
【0028】
請求項1、5記載の発明によれば、循環ポンプの吐出圧を、上段側のスプレノズルからの脱硫液の吐出圧を下段側のスプレノズルからの脱硫液の吐出圧より低減しても下段側のスプレノズルと同じ脱硫液量を同じ噴霧速度、液滴径で排ガス中に噴霧することができるようになり、SO
2吸収特性も同様とすることができ、消費電力を節減できる。
【0029】
請求項2記載の発明によれば、スプレノズルの入口直径及び旋回室の幅広形状部の直径を、上段側のスプレノズルほど大きくし、旋回室からの円筒状の下向き出口通路の直径を上段側と下段側のスプレノズルで同じとすることで請求項1記載の発明の効果を達成することができる。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、上段側スプレノズルと下段側スプレノズルに共に単一の循環ポンプにより循環タンクからの脱硫液を供給することで、単一の循環ポンプを調整するだけで、上段側スプレノズルと下段側スプレノズルで同一のSO
2吸収特性を得ることができる。
【0031】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、上段側スプレノズルと下段側スプレノズルにそれぞれ別々の同一仕様の循環ポンプを用いることで上段側スプレノズルと下段側スプレノズルで同一のSO
2吸収特性を得ることができるので、消耗品の種類を少なくして、循環ポンプ管の部品を流用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例の排ガス処理装置の構成を示す。
【
図2】本発明の一実施例の排ガス処理装置の構成を示す。
【
図3】本発明の一実施例のスプレノズルの構造を示す(
図3(a)は水平断面図、
図3(b)は鉛直断面図)。
【
図4】
図1、
図2のスプレノズルA、Bの噴霧圧と噴出する液量、速度、液滴径の特性を示す。
【
図5】
図1、
図2のスプレノズルA、Bの噴霧圧とSO
2吸収特性との関係を示す。
【
図6】
図1、
図2のスプレノズルAの噴霧圧と噴霧流量、液滴径及びSO
2吸収量比の特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1にはボイラ1の燃料として石炭21を使用する排ガス処理装置の構成図を示す。
ボイラ1に石炭21と燃焼用空気36を供給し、石炭21の燃焼反応によって発生した熱により、図示しないボイラ熱交換器で高圧蒸気を作り、得られた高圧蒸気により図示しないタービンを回転させ、タービンと連結した発電機により発電する。
【0035】
一方、ボイラ1から排出される燃焼排ガスは、空気予熱器(A/H)3で燃焼用空気と熱交換した後、集塵機4で煤塵が除去される。集塵機4としては、濾布を使用したバグフィルタや、流路内に電極を設置した電気式集塵器などが使用可能である。一般に集塵機部のガス温度は160〜200℃程度である。次に、集塵機4を出た排ガスは湿式脱硫装置5に供給され、排ガス中のSO
2が除去された後、煙突2から放出される。
【0036】
ここで、湿式脱硫装置5では、下段側のスプレノズルA27と上段側のノズルB30を図面では1段ずつしか示していないが、実際はそれぞれ複数段設置され、循環タンク28内の脱硫液を循環ポンプ26により昇圧して下段側のスプレノズルA27と上段側のノズルB30から噴霧する構成となっている。一般に脱硫液として、CaCO
3やNaOH溶液が使用される。脱硫装置5内に噴霧された脱硫液は、排ガス中のSO
2を吸収し、脱硫装置5の下部にある脱硫液タンク28で捕集され、排水ライン29より図示しない排水処理設備に送られる。
【0037】
下段側スプレノズルA27には
図7の従来例で採用していたオリフィス24は使用していない。また、下段側のスプレノズルA27と上段側のノズルB30をそれぞれ1段ずつ設置した場合を想定して以下説明する。
【0038】
下段側スプレノズルA27は、脱硫液タンク28の脱硫液面の上方15mの位置に、上段側スプレノズルB30は16.5mの位置に設置した。循環ポンプ26は、所定流量時における吐出圧が0.21MPaとなる機器を選定した。
【0039】
循環ポンプ26は、脱硫液を0.21MPaまで昇圧し、所定流量を下段ノズルA27、上段ノズルB30に供給する。この時、下段スプレノズルA27はスプレノズル高さ15m(約0.15MPa)分、圧力が低下するため、スプレノズル部にかかる圧力は0.06(=0.21−0.15)MPaとなる。この時の噴霧液量、噴霧液速度及び液滴径は、
図4に実線で示す特性となる。
【0040】
一方、上段スプレノズルB30では、スプレノズル高さ16.5m(約0.165MPa)分、圧力が低下するため、スプレノズル部にかかる圧力は0.045(=0.21−0.165)MPaとなる。この時の噴霧液量、噴霧液速度及び液滴径は、
図4に破線で示す特性となる。
【0041】
一方、比較例として、
図7に示す従来構造の場合を以下に示す。
従来例の場合は、オリフィス部24で0.015MPaの圧力損失が発生するように絞り部を設置し、上段と下段のスプレノズル27、27とも従来構造のものを設置している。循環ポンプ26には、脱硫液を0.225(=0.21+0.015)MPaまで昇圧し、所定流量を上段と下段のスプレノズル27、27に供給することとなる。この時、下段スプレノズル27はスプレノズル高さ15m(約0.15MPa)分とオリフィス部での0.015MPaとを合わせた0.165MPa圧力が低下し、スプレノズル部にかかる圧力は0.06(=0.225−0.165)MPaとなる。一方、上部スプレノズル27は、ノズル高さ16.5m(約0.165MPa)分、圧力が低下するため、スプレノズル部にかかる圧力は0.06(0.225−0.165)MPaとなり、所定のSO
2吸収性能を得ることができる。
【0042】
上記のように、本発明によれば、循環ポンプ26の吐出圧を、従来の0.225MPaから0.21MPaまで低減することが可能となり、消費電力量もこの分低減することができる。
【実施例2】
【0043】
本発明の他の実施例を
図2に示す。本実施例では、
図1に示す排ガス処理装置に比べて循環ポンプ26をスプレノズル段毎に設置する例を示す。
従来技術においては、このようにスプレノズル段毎に循環ポンプ26を設置する場合は、循環ポンプ26の仕様を変えて、各段のスプレノズルにかかる圧力が等しくなるような構成としている。そのため、消耗品等もそれぞれのポンプに合わせたものをそれぞれ用意する必要があった。特に、脱硫装置5の容量すなわち処理ガス量が多い場合は、スプレノズルの段数が5段と多くなり、循環ポンプ台数も5台必要となる。このような場合は、消耗品の部品数も多くなるという問題がある。
【0044】
これに対し、本実施例の構成とすれば、全てのスプレノズル27、30に用いる循環ポンプ26の仕様は同一となるため、消耗品等の種類も少なくすることができ、また、循環ポンプ26同士の間で部品を流用することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 ボイラ
2 煙突
3 A/H
4 集塵機
5 脱硫装置
21 石炭
24 オリフィス
26 吸収液用循環ポンプ
27 ノズルA
28 循環タンク
29 排水ライン
30 ノズルB
31 酸化用空気
36 燃焼用空気