(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器を備えた受電モジュールに対して、共振現象によって電力を供給する無線電力伝送装置であって、
前記給電共振器及び前記受電共振器における、電力の電源周波数に対する伝送特性の値が、二つのピーク帯域を有するように設定し、
前記給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、前記伝送特性の二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数帯域に設定することにより、
前記給電共振器及び前記受電共振器の近辺に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成したことを特徴とする無線電力伝送装置。
前記給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、前記伝送特性の二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定したことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
前記給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、前記伝送特性の二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定したことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
前記給電モジュール及び前記受電モジュールに関する調整パラメータを変化させて、前記給電共振器と前記受電共振器との間に発生する磁界結合の強度を変更することにより、前記磁界空間の大きさを調整したことを特徴とする請求項5に記載の無線電力伝送装置。
前記調整パラメータは、前記給電コイルと前記給電共振器との間の距離、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間の距離の少なくとも一つであることを特徴とする請求項6に記載の無線電力伝送装置。
少なくとも給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器を備えた受電モジュールに対して、共振現象によって電力を供給する無線電力伝送装置における磁界空間の形成方法であって、
前記給電共振器及び前記受電共振器における、電力の電源周波数に対する伝送特性の値が、二つのピーク帯域を有するように設定し、
前記給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、前記伝送特性の二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数帯域に設定することにより、
前記給電共振器と前記受電共振器との間に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成することを特徴とする磁界空間の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明である無線電力伝送に用いる無線電力伝送装置1、及び、無線電力伝送装置1における磁界空間G1・G2の形成方法について説明する。
【0028】
(実施形態)
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1(G2)の形成を実現する、給電共振器22を備えた給電モジュール2及び受電共振器32を備えた受電モジュール3を主な構成要素とする無線電力伝送装置1を、給電モジュール2を搭載した充電器101、及び、受電モジュール3を搭載した無線式ヘッドセット102を例に説明する。なお、
図1は、充電時における充電器101及び無線式ヘッドセット102の状態を示している。
【0029】
(充電器101及び無線式ヘッドセット102の構成)
充電器101は、
図1及び
図2に示すように、給電コイル21及び給電共振器22を有した給電モジュール2を備えている。また、無線式ヘッドセット102は、イヤホンスピーカ部102a、受電コイル31及び受電共振器32を有した受電モジュール3を備えている。そして、給電モジュール2の給電コイル21には、給電モジュール2に供給する電力の電源周波数を所定の値に設定した、発振回路を備えた交流電源6が接続されている。また、受電モジュール3の受電コイル31には、受電された交流電力を整流化する安定回路7及び過充電を防止する充電回路8を介して充電池9が接続されている。そして、安定回路7、充電回路8及び充電池9は、充電時に、給電共振器22と受電共振器32との間に位置するように配置されており、詳細は後述するが、これら安定回路7、充電回路8及び充電池9が配置された、給電共振器22と受電共振器32との間に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1が形成されている。なお、本実施形態における安定回路7、充電回路8、及び、充電池9は、
図1及び
図2に示すように、最終的な電力の給電先となる被給電機器10であり、被給電機器10は、受電モジュール3に接続された電力の給電先の機器全体の総称である。また、給電モジュール2及び受電モジュール3を無線電力伝送装置1としている。
【0030】
また、図示しないが、充電器101は、無線式ヘッドセット102を収納するための、無線式ヘッドセット102の形状に即した収納溝が設けられており、この充電器101の収納溝に無線式ヘッドセット102を収納することにより、充電器101が備える給電モジュール2と無線式ヘッドセット102が備える受電モジュール3とが対向配置されるように無線式ヘッドセット102を位置決めすることができるようになっている。
【0031】
給電コイル21は、交流電源6から得られた電力を電磁誘導によって給電共振器22に供給する役割を果たす。この給電コイル21は、
図3に示すように、抵抗器R
1、及び、コイルL
1を要素とするRL回路を構成している。なお、コイルL
1部分には、ソレノイドコイルを使用している。また、給電コイル21を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
1としており、本実施形態では、給電コイル21を構成する抵抗器R
1、及び、コイルL
1を要素とするRL回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
1とする。また、給電コイル21に流れる電流をI
1する。
【0032】
受電コイル31は、給電共振器22から受電共振器32に磁界エネルギーとして伝送された電力を電磁誘導によって受電し、安定回路7及び充電回路8を介して充電池9に供給する役割を果たす。この受電コイル31は、給電コイル21同様に、
図3に示すように、抵抗器R
4、及び、コイルL
4を要素とするRL回路を構成している。なお、コイルL
4部分には、ソレノイドコイルを使用している。また、受電コイル31を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
4としており、本実施形態では、受電コイル31を構成する抵抗器R
4、及び、コイルL
4を要素とするRL回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
4とする。また、受電コイル31に接続された被給電機器10(安定回路7、充電回路8及び充電池9)の合計のインピーダンスをZ
Lとする。また、受電コイル31に流れる電流をI
4する。なお、
図3に示すように、受電コイル31に接続された被給電機器10(安定回路7、充電回路8及び充電池9)の各負荷インピーダンスを合わせたものを便宜的に抵抗器R
L(Z
Lに相当)としている。
【0033】
給電共振器22は、
図3に示すように、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成している。また、受電共振器32は、
図3に示すように、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成している。そして、給電共振器22及び受電共振器32は、それぞれ共振回路となり、磁界共鳴状態を創出する役割を果たす。ここで、磁界共鳴状態(共振現象)とは、2つ以上のコイルが共振周波数帯域において共振することをいう。また、給電共振器22を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
2とし、本実施形態では、給電共振器22を構成する、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
2とする。また、受電共振器32を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
3とし、本実施形態では、受電共振器32を構成する、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
3とする。また、給電共振器22に流れる電流をI
2とし、受電共振器32に流れる電流をI
3とする。
【0034】
また、給電共振器22、及び、受電共振器32における共振回路としてのRLC回路では、インダクタンスをL、コンデンサ容量をCとすると、(式1)によって定まるfoが共振周波数となる。
【数1】
・・・(式1)
【0035】
また、給電共振器22及び受電共振器32には、ソレノイドコイルを使用している。また、給電共振器22及び受電共振器32における共振周波数は一致させている。なお、給電共振器22及び受電共振器32は、コイルを使用した共振器であれば、スパイラル型やソレノイド型などのコイルであってもよい。
【0036】
また、給電コイル21と給電共振器22との間の距離をd12とし、給電共振器22と受電共振器32との間の距離をd23とし、受電共振器32と受電コイル31との間の距離をd34としている(
図5参照)。
【0037】
また、
図3に示すように、給電コイル21のコイルL
1と給電共振器22のコイルL
2との間の相互インダクタンスをM
12、給電共振器22のコイルL
2と受電共振器32のコイルL
3との間の相互インダクタンスをM
23、受電共振器32のコイルL
3と受電コイル31のコイルL
4との間の相互インダクタンスをM
34としている。また、給電モジュール2及び受電モジュール3において、コイルL
1とコイルL
2との間の結合係数をk
12と表記し、コイルL
2とコイルL
3との間の結合係数をk
23と表記し、コイルL
3とコイルL
4との間の結合係数をk
34と表記する。
【0038】
上記無線電力伝送装置1(給電モジュール2及び受電モジュール3)によれば、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界共鳴状態(共振現象)を創出することができる。給電共振器22及び受電共振器32が共振した状態で磁界共鳴状態が創出されると、給電共振器22から受電共振器32に電力を磁界エネルギーとして伝送することが可能となり、給電モジュール2を備えた充電器101から、受電モジュール3を備えた無線式ヘッドセット102に電力が無線伝送され、無線式ヘッドセット102内に設けられた充電池9が充電される。
【0039】
(磁界空間の形成)
本実施形態では、給電モジュール2及び受電モジュール3の内部・周辺に発生する磁界の強度を抑制するために、磁界強度を弱めた磁界空間G1・G2を形成する。具体的には、
図1〜
図5に示すように、給電モジュール2の給電共振器22から受電モジュール3の受電共振器32に共振現象を利用した電力供給をする際に、給電共振器22及び受電共振器32の近辺に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1・G2を形成する。
【0040】
磁界空間G1・G2を形成するためには、給電共振器22及び受電共振器32における、電源周波数に対する伝送特性『S21』を示すグラフが、二つのピーク帯域を有するように設定し、給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数に設定することにより実現する。本実施形態では、
図1〜
図5に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1を形成するために、電源周波数を、二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域に対応する電源周波数に設定する。なお、給電共振器22及び受電共振器32の外側に、磁界空間G2を形成したい場合は(
図5参照)、電源周波数を、二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域に対応する電源周波数に設定する。
【0041】
ここで、伝送特性『S21』とは、無線電力伝送装置1(給電モジュール2及び受電モジュール3)をネットワークアナライザ110(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社製のE5061Bなど、
図5参照)に接続して計測される信号を表しており、デシベル表示され、数値が大きいほど電力伝送効率が高いことを意味する。また、電力伝送効率とは、ネットワークアナライザ110に無線電力伝送装置1を接続した状態で、出力端子111から給電モジュール2に供給される電力に対する入力端子112に出力される電力の比率のことをいう。
【0042】
具体的には、
図5に示すように、ネットワークアナライザ110を使用して、給電共振器22及び受電共振器32における、電源周波数に対する伝送特性『S21』を、給電共振器22に供給する交流電力の電源周波数を変えながら解析する。この際、
図4のグラフに示すように、横軸を出力端子111から出力される交流電力の電源周波数とし、縦軸を伝送特性『S21』として解析する。ここで、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を測定するにあたり、給電コイル21と給電共振器22との間の結合が強いと、給電共振器22と受電共振器32との間の結合状態に影響を与えてしまい、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の正確な測定ができないため、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12は、給電共振器22が十分に励振でき、給電共振器22による磁界を生成させ、かつ、給電コイル21と給電共振器22とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。また、同様の理由で受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34も、受電共振器32が十分に励振でき、受電共振器32による磁界を生成させ、かつ、受電共振器32と受電コイル31とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。そして、解析された給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、
図4に示すように、低周波数側に形成されるピーク帯域(f(Low P))と高周波数側に形成されるピーク帯域(f(High P))との二つのピーク帯域を有するように設定される。
【0043】
なお、上記のように給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、低周波側と高周波側とにピークが分離して二つのピーク帯域を有するには、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を調整したり、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、結合係数k
23などの給電共振器22及び受電共振器32を構成する変更可能なパラメータを調整したりすることにより実現される。
【0044】
そして、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、二つのピーク帯域を有する場合に、高周波数側に形成されるピーク帯域(f(High P))に、供給する交流電力の電源周波数を設定した場合、給電共振器22及び受電共振器32が逆位相で共振状態となり、
図6に示すように、給電共振器22に流れる電流の向き(22A)と受電共振器32に流れる電流の向き(32A)とが逆向きになる。その結果、
図6の磁界ベクトル図に示すように、給電共振器22の内周側に発生する磁界と受電共振器32の内周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の内周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の内周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の外周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成することができる。ここで、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが逆向きとなる共振状態を逆相共振モードと呼ぶことにする。
【0045】
一方、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、二つのピーク帯域を有する場合に、低周波数側に形成されるピーク帯域(f(Low P))に、供給する交流電力の電源周波数を設定した場合、給電共振器22及び受電共振器32が同位相で共振状態となり、
図7に示すように、給電共振器22に流れる電流の向き(22A)と受電共振器32に流れる電流の向き(32A)とが同じ向きになる。その結果、
図7の磁界ベクトル図に示すように、給電共振器22の外周側に発生する磁界と受電共振器32の外周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の外周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の外周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の内周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を形成することができる。ここで、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが同じ向きとなる共振状態を同相共振モードと呼ぶことにする。
【0046】
(給電コイル、給電共振器及び受電共振器、受電コイルにおけるS21)
上記では、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が二つのピーク帯域を有するように設定した場合における磁界空間の形成について説明した。次に、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が二つのピーク帯域を有するように設定したうえで、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』の解析波形が単峰性又は双峰性を示す場合の磁界空間G1・G2について説明する。
【0047】
ここで、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)に供給する電力の電源周波数に対する伝送特性『S21』は、それぞれのコイル間の磁界による結びつき度合い(磁界結合)の強度により、単峰性の性質を有するものと多峰性の性質を有するものに分かれる。そして、単峰性とは、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における、電源周波数に対する伝送特性『S21』の解析波形のピークが一つで、そのピークが共振周波数帯域(fo)において現れるものをいう(
図8の破線51参照)。一方、多峰性とは、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における、電源周波数に対する伝送特性『S21』の解析波形のピークが複数現れるものをいう(
図8の実線52参照:この例では、ピークは二つ)。更に詳細に多峰性を定義すると、
図5に示すように、ネットワークアナライザ110に給電モジュール2及び受電モジュール3を接続して計測される反射特性『S11』が二つ以上のピークを有する状態をいう。従って、電源周波数に対する伝送特性『S21』のピークが一見して一つに見えたとしても、計測されている反射特性『S11』が二つ以上のピークを有する場合には、多峰性の性質を有するものとする。
【0048】
例えば、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が、単峰性の性質を有するように設定すると、伝送特性『S21』は、
図8の破線51に示すように、電源周波数が共振周波数foの帯域で最大化する(電力伝送効率が最大化する)。
【0049】
一方、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が、多峰性の性質を有するように設定すると、一般的に、給電共振器22と受電共振器32との間の距離が同じであれば、多峰性における伝送特性『S21』の最大値(複数のピークでの値)は、単峰性における伝送特性『S21』の最大値(foでの伝送特性『S21』の値)よりも低い値になる。
【0050】
なお、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が単峰性又は多峰性の性質を有するには、給電モジュール2及び受電モジュール3(無線電力伝送装置1)を構成する、給電コイル21のRL回路のR
1、L
1(給電コイル21をRLC回路にした場合には、更にC
1)給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のRL回路のR
4、L
4(受電コイル31をRLC回路にした場合には、更にC
4)における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、結合係数k
12、k
23、k
34、コイル間距離d12、d23、d34などを、変更可能なパラメータとして調整することにより実現される。
【0051】
(電磁界解析による磁界空間の測定)
次に、
図5に示すように、無線電力伝送装置1(給電モジュール2及び受電モジュール3)をネットワークアナライザ110に接続し、磁界空間G1・G2が形成されることを測定実験により説明する。磁界空間G1・G2を測定するに際しては、電磁界解析を用いて解析し、磁界強度を色調で表示させることによって測定する。
【0052】
なお、磁界空間G1・G2の測定に使用する無線電力伝送装置1(給電モジュール2、受電モジュール3)は、上記充電器101及び無線式ヘッドセット102に組み込まれた無線電力伝送装置1を測定用に拡大構成したもので、スケール以外は同様の仕様である。具体的には、測定に用いる無線電力伝送装置1に関して、給電コイル21は、抵抗器R
1、及び、コイルL
1を要素とするRL回路であり、コイルL
1部分は、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を1回巻にして、コイル径100mmφに設定している(共振なし)。受電コイル31は、抵抗器R
4、及び、コイルL
4を要素とするRL回路であり、コイルL
4部分は、給電コイル21同様に、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を1回巻にして、コイル径100mmφに設定している(共振なし)。また、給電共振器22は、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路であり、コイルL
2部分は、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を2回巻きにしたコイル径100mmφのソレノイドコイルである。受電共振器32は、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路であり、コイルL
3部分は、線径1mmφの銅線材(絶縁被膜付)を2回巻きにしたコイル径100mmφのソレノイドコイルである。そして、給電共振器22、及び、受電共振器32における共振周波数は12.63MHzである。また、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を120mmとし、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を測定条件に合わせて調整している。
【0053】
(単峰性の場合)
そして、まずは、ネットワークアナライザ110を使用して、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を、供給する交流電力の電源周波数を変えながら解析する。この際、
図9のグラフに示すように、交流電力の電源周波数とし、縦軸を伝送特性『S21』として解析する。
【0054】
図9の給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を示す実線150に示すように、12.53MHzで低周波数側のピーク帯域(f(Low P))を有し、12.73MHzで高周波数側のピーク帯域(f(High P))を有している。このように、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』は、二つのピーク帯域を有する。なお、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を測定するにあたり、上記無線電力伝送装置1において、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を120mmに設定している。また、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を100mmに設定することにより、給電共振器22が十分に励振でき、給電共振器22による磁界を生成させ、かつ、給電コイル21と給電共振器22とができるだけ結合しない距離を確保している。同様に、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を100mmに設定することにより、受電共振器32が十分に励振でき、受電共振器32による磁界を生成させ、かつ、受電共振器32と受電コイル31とができるだけ結合しない距離を確保している。
【0055】
また、
図9に示すように、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』(
図9の実線151)を見ると、解析波形のピークが12.6MHz付近にある単峰性の性質を有するように設定されている。このピークは、およそ給電共振器22、及び、受電共振器32における共振周波数fo(12.63MHz)に近いところに出現している。なお、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』を単峰性にして測定するために、上記無線電力伝送装置1において、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を120mmに設定し、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を20mmに設定し、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を20mmに設定している。
【0056】
次に、上記無線電力伝送装置1の給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を12.5MHz(f(Low P))、12.7MHz(f(High P))にそれぞれ設定した場合における、給電共振器22及び受電共振器32周辺の磁界強度分布を、電磁界解析を用いて解析し、磁界強度を色調で表示させた解析結果として
図10に示す。
【0057】
この
図10の磁界強度分布から、12.5MHz(f(Low P))の場合に、給電共振器22及び受電共振器32の外側に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を確認することができた(
図10の12.7MHz(f(High P))の場合における、給電共振器22及び受電共振器32の外側の磁界強度と比べても相対的に磁界強度が弱い磁界空間G2が形成されている)。また、12.7MHzの場合に、給電共振器22と受電共振器32との間に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を確認することができた(
図10の12.5MHz(f(Low P))の場合における、給電共振器22と受電共振器32との間の磁界強度と比べても相対的に磁界強度が弱い磁界空間G1が形成されている)。
【0058】
これにより、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が、単峰性の性質を有する場合であっても、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が二つのピーク帯域を有するように設定したうえで、その二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域(f(High P))に対応する電源周波数に設定することにより、給電共振器22と受電共振器32との間に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成することができることが分かる。また、伝送特性『S21』の二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域(f(Low P))に対応する電源周波数に設定することにより、給電共振器22と受電共振器32との外側に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を形成することができることが分かる。
【0059】
(磁界空間G1・G2における伝送特性『S21』への影響:鉄・銅片を使用した検証)
以下では、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が単峰性の性質を有する場合、給電共振器22と受電共振器32との間、又は、給電共振器22・受電共振器32の外側に、安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合に、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えないか否かを検証する。
【0060】
(給電共振器22と受電共振器32との間に鉄片を挿入した場合:単峰性)
安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を想定した鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入したときの給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を測定することによってその影響を検証する(
図11参照)。鉄片60は、
図11に示すように、厚み10mmで、直径が40mmの円柱形状のものを使用する。
【0061】
そして、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入した状態で、給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を変えながら給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を解析する。なお、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入しない状態の給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』(
図12の実線151)も合わせて記載する。
【0062】
図12に示すように、無線電力伝送装置1において、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入した状態で解析された伝送特性『S21』の解析波形(
図12の実線152)と、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入しない場合の伝送特性『S21』の解析波形(
図12の実線151)とを比較して見ると、12.53MHz(f(Low P))における実線151(鉄片60なし)の伝送特性『S21』は、−5.4dBであり、12.53MHz(f(Low P))における実線152(鉄片あり)の伝送特性『S21』は、−6.2dBであった。これは、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入することによって、伝送特性『S21』が0.8dB低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることを示している。
一方、12.73MHz(f(High P))における実線151(鉄片60なし)の伝送特性『S21』は、−3.1dBであり、12.73MHz(f(High P))における実線152(鉄片あり)の伝送特性『S21』は、−3.2dBであった。これは、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入したとしても、伝送特性『S21』が0.1dBしか低下せず、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えていないことを示している。
即ち、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合には、
図10に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1は形成されていないために、鉄片60による影響を受け、伝送特性『S21』が低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることが分かる。一方、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合には、
図10に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1が形成され、その磁界空間G1に鉄片60が挿入されているため、鉄片60による影響をほとんど受けず、伝送特性『S21』が大幅に低下することもなく、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0063】
(給電共振器22及び受電共振器32の外側に銅片を挿入した場合:単峰性)
次に、安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を想定した銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置したときの給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』を測定することによってその影響を検証する(
図13参照)。銅片61は、
図13に示すように、100mm×100mm×1mmの四角柱形状のものを使用する。また、銅片61は、
図13に示すように給電共振器22及び受電共振器32に対して30mmの距離を置いて配置した。
【0064】
そして、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置した状態で、給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を変えながら給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を解析する。なお、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置しない状態の給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』(
図14の実線151)も合わせて記載する。
【0065】
図14に示すように、無線電力伝送装置1において、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置した状態で解析された伝送特性『S21』の解析波形(
図14の実線153)と、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置しない場合の伝送特性『S21』の解析波形(
図14の実線151)とを比較して見ると、12.73MHz(f(High P))における実線151(銅片61なし)の伝送特性『S21』は、−3.1dBであり、12.73MHz(f(High P))における実線153(銅片61あり)の伝送特性『S21』は、−2.5dBであった。これは、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置することによって、伝送特性『S21』が0.6dB上昇し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることを示している。
一方、12.53MHz(f(Low P))における実線151(銅片61なし)の伝送特性『S21』は、−5.4dBであり、12.53MHz(f(Low P))における実線153(銅片61あり)の伝送特性『S21』は、−5.5dBであった。これは、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置したとしても、伝送特性『S21』が0.1dBしか低下せず、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えていないことを示している。
即ち、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合には、
図10に示すように、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2は形成されていないために、銅片61による影響を受け、伝送特性『S21』が上昇し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることが分かる。一方、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合には、
図10に示すように、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2が形成され、その磁界空間G2に銅片61が配置されているため、銅片61による影響をほとんど受けず、伝送特性『S21』が大幅に低下することもなく、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0066】
上記の検証結果より、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1を形成し、形成した磁界空間G1に安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。同様に、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2を形成し、形成した磁界空間G2に安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0067】
(多峰性の場合)
上記では、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が、二つのピーク帯域を有するように設定したうえで、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』が単峰性の性質を有する場合の磁界空間G1・G2の形成について説明した。次に、下記では、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が、二つのピーク帯域を有するように設定したうえで、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』が多峰性(本実施形態では双峰性)の性質を有する場合の磁界空間G1・G2の形成について説明する。
【0068】
まずは、単峰性の場合同様に、ネットワークアナライザ110を使用して、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を、供給する交流電力の電源周波数を変えながら解析する。
図15の実線150に示すように、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』は、12.53MHzで低周波数側のピーク帯域(f(Low P))を有し、12.73MHzで高周波数側のピーク帯域(f(High P))を有している。このように、上記単峰性の場合と同様に、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』は、二つのピーク帯域を有する。
【0069】
そして、
図15の実線161に示すように、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』は、解析波形が12.54MHz付近と12.72MHz付近との二か所でピークを形成する双峰性(多峰性)の性質を有するように設定されている。この二つのピークにおける電源周波数は、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の低周波数側のピーク帯域(f(Low P))及び高周波数側のピーク帯域(f(High P))とほぼ一致している。なお、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(給電モジュール2及び受電モジュール3)における伝送特性『S21』を双峰性にして測定するために、上記無線電力伝送装置1において、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を120mmに設定し、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を50mmに設定し、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を50mmに設定している。
【0070】
次に、上記無線電力伝送装置1の給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を12.5MHz(f(Low P))、12.7MHz(f(High P))にそれぞれ設定した場合における、給電共振器22及び受電共振器32周辺の磁界強度分布を、電磁界解析を用いて解析し、磁界強度を色調で表示させた解析結果として
図16に示す。
【0071】
この
図16の磁界強度分布から、12.5MHz(f(Low P))の場合に、給電共振器22及び受電共振器32の外側に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を確認することができた(
図16の12.7MHz(f(High P))の場合における、給電共振器22及び受電共振器32の外側の磁界強度と比べても相対的に磁界強度が弱い磁界空間G2が形成されている)。また、12.7MHzの場合に、給電共振器22と受電共振器32との間に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を確認することができた(
図16の12.5MHz(f(Low P))の場合における、給電共振器22と受電共振器32との間の磁界強度と比べても相対的に磁界強度が弱い磁界空間G1が形成されている)。
【0072】
これにより、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が、多峰性の性質を有する場合であっても、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』が二つのピーク帯域を有するように設定したうえで、その二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域(f(High P))に対応する電源周波数に設定することにより、給電共振器22と受電共振器32との間に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成することができることが分かる。また、伝送特性『S21』の二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域(f(Low P))に対応する電源周波数に設定することにより、給電共振器22と受電共振器32との外側に、磁界による影響が低減されて、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を形成することができることが分かる。
【0073】
(磁界空間G1・G2における伝送特性『S21』への影響:鉄・銅片を使用した検証)
以下では、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』が多峰性の性質を有する場合、給電共振器22と受電共振器32との間、又は、給電共振器22・受電共振器32の外側に、安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合に、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えないか否かを検証する。
【0074】
(給電共振器22と受電共振器32との間に鉄片を挿入した場合:多峰性)
安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を想定した鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入したときの給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を測定することによってその影響を検証する(
図11参照)。鉄片60は、
図11に示すように、厚み10mmで、直径が40mmの円柱形状のものを使用する。
【0075】
そして、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入した状態で、給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を変えながら給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を解析する。なお、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入しない状態の給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』(
図17の実線161)も合わせて記載する。
【0076】
図17に示すように、無線電力伝送装置1において、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入した状態で解析された伝送特性『S21』の解析波形(
図17の実線162)と、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入しない場合の伝送特性『S21』の解析波形(
図17の実線161)とを比較して見ると、12.53MHz(f(Low P))における実線161(鉄片60なし)の伝送特性『S21』は、−9.0dBであり、12.53MHz(f(Low P))における実線162(鉄片あり)の伝送特性『S21』は、−10.0dBであった。これは、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入することによって、伝送特性『S21』が1.0dB低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることを示している。
一方、12.73MHz(f(High P))における実線161(鉄片60なし)の伝送特性『S21』は、−10.2dBであり、12.73MHz(f(High P))における実線162(鉄片あり)の伝送特性『S21』は、−10.3dBであった。これは、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合、鉄片60を給電共振器22と受電共振器32との間に挿入したとしても、伝送特性『S21』が0.1dBしか低下せず、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えていないことを示している。
即ち、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合には、
図16に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1は形成されていないために、鉄片60による影響を受け、伝送特性『S21』が低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることが分かる。一方、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合には、
図16に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1が形成され、その磁界空間G1に鉄片60が挿入されているため、鉄片60による影響をほとんど受けず、伝送特性『S21』が大幅に低下することもなく、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0077】
(給電共振器22及び受電共振器32の外側に銅片を挿入した場合:多峰性)
次に、安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を想定した銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置したときの給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』を測定することによってその影響を検証する(
図13参照)。銅片61は、
図13に示すように、100mm×100mm×1mmの四角柱形状のものを使用する。また、銅片61は、
図13に示すように給電共振器22及び受電共振器32に対して30mmの距離を置いて配置した。
【0078】
そして、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置した状態で、給電モジュール2に供給する交流電力の電源周波数を変えながら給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』を解析する。なお、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置しない状態の給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31における伝送特性『S21』(
図18の実線161)も合わせて記載する。
【0079】
図18に示すように、無線電力伝送装置1において、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置した状態で解析された伝送特性『S21』の解析波形(
図18の実線163)と、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置しない場合の伝送特性『S21』の解析波形(
図18の実線161)とを比較して見ると、12.73MHz(f(High P))における実線161(銅片61なし)の伝送特性『S21』は、−10.2dBであり、12.73MHz(f(High P))における実線163(銅片61あり)の伝送特性『S21』は、−11.5dBであった。これは、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置することによって、伝送特性『S21』が1.3dB低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることを示している。
一方、12.53MHz(f(Low P))における実線161(銅片61なし)の伝送特性『S21』は、−9.0dBであり、12.53MHz(f(Low P))における実線163(銅片61あり)の伝送特性『S21』は、−9.2dBであった。これは、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合、銅片61を給電共振器22及び受電共振器32の外側に配置したとしても、伝送特性『S21』が0.2dBしか低下せず、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えていないことを示している。
即ち、電源周波数を12.73MHz(f(High P))にした場合には、
図16に示すように、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2は形成されていないために、銅片61による影響を受け、伝送特性『S21』が低下し、無線電力伝送装置1の電力伝送効率に影響を与えていることが分かる。一方、電源周波数を12.53MHz(f(Low P))にした場合には、
図16に示すように、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2が形成され、その磁界空間G2に銅片61が配置されているため、銅片61による影響をほとんど受けず、伝送特性『S21』が大幅に低下することもなく、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0080】
上記の検証結果より、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1を形成し、形成した磁界空間G1に安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。同様に、給電共振器22及び受電共振器32の外側に磁界空間G2を形成し、形成した磁界空間G2に安定回路7、充電回路8、充電池9などの電子機器を配置した場合、給電コイル21、給電共振器22及び受電共振器32、受電コイル31(無線電力伝送装置1)における伝送特性『S21』、即ち、無線電力伝送装置1の電力伝送効率にほとんど影響を与えないことが分かる。
【0081】
上記構成によれば、共振現象によって電力を無線伝送するに際して、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の値が二つのピーク帯域を有するように設定し、給電モジュール2に供給する電力の電源周波数を、伝送特性『S21』の二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数帯域に設定することにより、給電共振器22及び受電共振器32の近辺に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1・G2を形成することが可能となる。
そして、周辺の磁界強度よりも磁界強度を低減させた磁界空間G1・G2に、磁界の影響を低減させたい電子機器(安定回路7、充電回路8、及び、充電池9等)などを収納することにより、電子機器などに対して、磁界に起因する渦電流の発生を低減・防止して、発熱による悪影響を抑制することが可能となる。
【0082】
また、上記構成によれば、給電モジュール2に供給する電力の電源周波数を、伝送特性『S21』の二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域(f(High P))に対応する周波数帯域に設定することにより、給電共振器22と受電共振器32との間に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成することが可能となる。
【0083】
また、上記構成によれば、給電モジュール2に供給する電力の電源周波数を、伝送特性『S21』の二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域(f(Low P))に対応する周波数帯域に設定することにより、給電共振器22及び受電共振器32の外側に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を形成することが可能となる。
【0084】
また、上記構成によれば、給電モジュール2(給電コイル21、給電共振器22)及び受電モジュール3(受電コイル31、受電共振器32)における、電力の電源周波数に対する伝送特性『S21』の値が、一つのピークを有する、単峰性の特性を有するように設定することにより、伝送特性『S21』の最大化を図ることができる。そして、伝送特性を最大化できるということは、給電モジュール2から受電モジュール3に対する電力伝送効率を最大化することができることを意味しているため、磁界空間G1・G2を形成しつつ、無線電力伝送の電力伝送効率を高めることが可能となる。
また、給電モジュール2(給電コイル21、給電共振器22)及び受電モジュール3(受電コイル31、受電共振器32)における、電力の電源周波数に対する伝送特性『S21』の値が、少なくとも二つのピークを有する、双峰性の特性を有するように設定することにより、電力の電源周波数をピーク付近に設定した場合、磁界空間G1・G2を形成しつつ、無線電力伝送の電力伝送効率を高めることが可能となる。
【0085】
(磁界空間G1・G2の大きさの変更)
上記では、磁界空間G1・G2の形成方法等について説明した。次に、形成する磁界空間G1・G2の大きさを調整することができることを説明する。
【0086】
磁界空間G1・G2の大きさを変更するには、給電モジュール2における給電共振器22と受電モジュール3における受電共振器32との間の磁界による結びつき度合い(磁界結合)の強度を変更することによって行うことが可能である。例えば、この磁界結合を変化させるには、給電モジュール2における給電コイル21や給電共振器22、及び、受電モジュール3における受電コイル31や受電共振器32に関する調整パラメータを変化させることによって行う。この調整パラメータを変化させる態様には、給電モジュール2における給電コイル21と給電共振器22との配置関係や、受電モジュール3における受電コイル31と受電共振器32との配置関係を変化させること、給電モジュール2に供給する電力量を変化させること、給電共振器22及び受電共振器32の各素子(コンデンサ、コイル)の容量やインダクタンスを変化させることなどが挙げられる。
【0087】
上記によれば、給電モジュール2及び受電モジュール3に関する調整パラメータを変化させて、給電共振器22と受電共振器32との間に発生する磁界結合の強度を変更することにより、磁界空間G1の大きさを変更することができる。例えば、給電モジュール2と受電モジュール3との間に発生する磁界結合を相対的に弱めることにより磁界空間G1・G2の大きさを小さくすることができる。一方、給電モジュールと受電モジュールとの間に発生する磁界結合を相対的に強めることにより磁界空間G1・G2の大きさを拡大することができる。これにより、磁界の影響を低減させたい電子機器の大きさに合わせて磁界空間の大きさを調整することが可能となる。
【0088】
例えば、給電モジュール2における給電コイル21と給電共振器22との配置関係、及び、受電モジュール3における受電コイル31と受電共振器32との配置関係、即ち、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を調整パラメータとして、この距離d12及び距離d34を変化させることによって磁界空間G1・G2の大きさを変更することができる。
【0089】
上記構成によれば、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34の少なくとも一つを変更することにより、磁界結合の強度を変更して磁界空間G1・G2の大きさを変更することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
上記の説明では、充電器101及び無線式ヘッドセット102を例示して説明したが、充電池を備えた機器であれば、タブレット型PC、デジタルカメラ、携帯電話、イヤホン型音楽プレイヤー、補聴器、集音器などにも使用することができる。
【0091】
また、上記では、電力が供給される機器として充電池9を例示して説明したが、これに限らず、電力が供給される機器に直接電力を消費しながら可動する機器を採用してもよい。
【0092】
また、上記説明では、給電モジュール2及び受電モジュール3を携帯型の電子機器に搭載した場合を想定して説明したが、用途はこれら小型なものに限らず、必要電力量に合わせて仕様を変更することにより、例えば、比較的大型な電気自動車(EV)における無線充電システムや、より小型な医療用の無線式胃カメラなどにも搭載することができる。
【0093】
(磁界空間の形状の変更)
また、上記実施形態では、磁界空間G1・G2を形成することができることについて説明したが、更に、磁界空間G1・G2の形状を変更することができることについて説明する。
【0094】
磁界空間G1・G2の形状を変更するには、例えば、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、受電コイル31のそれぞれの間・周辺の磁界による結びつき度合い(磁界結合)の強度を変更することによって行うが、この磁界結合を変化させるには、給電コイル21、給電共振器22、受電コイル31、受電共振器32のコイル形状を変えることによって行う。
【0095】
上記方法によれば、給電コイル21、給電共振器22、受電コイル31、受電共振器32を所望の形状にすることにより、磁界強度が相対的に弱い磁界空間G1・G2を、給電コイル21、給電共振器22、受電コイル31、受電共振器32の形状に沿った所望の形状で形成することができる。即ち、給電コイル21・給電共振器22及び受電モジュール3における受電コイル31・受電共振器32の形状を変えることにより、磁界強度が相対的に弱い磁界空間G1・G2の形状を変えることが可能となる。
【0096】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態・実施例に限定されず、その他の実施形態・実施例にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。