(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グラファイト基板上に複数のナノワイヤーを含む組成物であって、前記ナノワイヤーが、触媒堆積物が前記ナノワイヤーの少なくともいくつかの上に配置されるように金属触媒の存在下で前記基板上にエピタキシャルに成長したものであり、
前記ナノワイヤーが、少なくとも1つのIII−V族化合物又は少なくとも1つのII−VI族化合物を含むか少なくとも1つの非炭素IV族元素を含み;且つ
グラファイト層が前記ナノワイヤーの上の前記触媒堆積物の少なくともいくつかと接触している、
組成物。
前記ナノワイヤーが、AlAs、ZnO、GaSb、GaP、GaN、GaAs、InP、InN、InGaAs、InAs、又はAlGaAsを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
前記グラファイト基板が、グラフェン、グラファン、又は酸化グラフェンであり、前記グラフェン、グラファン、又は酸化グラフェンが、10以下の原子層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
前記グラファイト基板及び/又はグラファイト層が、金属性の膜又はホイル上のキッシュグラファイト、高配向熱分解グラファイト(HOPG)、CVD成長グラフェン層から剥離された積層基板である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
前記基板の表面及び/又は前記グラファイト層が、その成長中に置換ドーピング法によりドープされてドーパントが導入されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
前記基板が、孔がパターニングされたマスクでコーティングされ、前記触媒が、孔パターンを介して露出した基板表面に導入される、請求項18又は19に記載のプロセス。
前記孔がパターニングされたマスクが、電子ビーム蒸着法、CVD、PE−CVD、スパッタリング、又はALDにより堆積された、少なくとも1つの絶縁性材料を含む、請求項19または20に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーが重要なエンジニアリング分野となり、半導体ナノワイヤーへの関心が高まっている。ナノワイヤーは、一部の著者にナノウィスカー、ナノロッド、ナノピラー、又はナノコラム等とも呼ばれ、センサー、太陽電池からLED等の種々の電気的デバイスにおける重要な応用例が見出されている。
【0003】
本願の目的のためには、ナノワイヤーという用語は、基本的に一次元形態の構造、すなわちその幅又は直径がナノメートルの寸法であり且つその長さが典型的には数百nmから数μmのものと解釈されるべきである。通常、ナノワイヤーは、500nm以下、例えば350nm以下、特に300nm以下、例えば200nm以下の少なくとも2つの次元を有すると考えられる。
【0004】
金属性(例えば、Ni、Pt、Au)、半導電性(例えば、Si、InP、GaN、GaAs、ZnO)、及び絶縁性(例えば、SiO
2、TiO
2)のナノワイヤーを含む多くの異なる種類のナノワイヤーが存在する。本発明者らは、半導体ナノワイヤーに主に関係するが、以下に詳細に記載する原則は全ての種類のナノワイヤー技術に応用可能であると考えられる。
【0005】
従来、半導体ナノワイヤーはナノワイヤー自体と同じ基板上で成長させてきた(ホモエピタキシャル成長)。したがって、例えばGaAsナノワイヤーはGaAs基板上で成長させる。これにより、当然、基板の結晶構造と成長するナノワイヤーの結晶構造との間で格子整合が確実になる。基板及びナノワイヤーはどちらも同一の結晶構造を有し得る。
【0006】
しかし、整合する基板上でナノワイヤーを成長させるのは高価且つ限定的である。例えば、GaAs基板は、特別に製造する必要があり、高価である。通常好ましい[111]B方向でのナノワイヤー成長を確実にするために、より一般的な(001)配向表面を有する基板と比べ、基板を(111)B配向表面を有するように特別にスライスしなければならない。(111)B配向GaAs基板は(001)配向GaAs基板より高価である。また、いずれにしろ、GaAsはナノワイヤーの保持に理想的な材料ではない。例えば、GaAsは機械的に強くない又は不活性である。GaAsはフレキシブル又は透明でない。他のより魅力的な基板を用いることができればより良い。
【0007】
本発明者らはより多くの基板の使用方法を探索した。当然、これは異なる基板を用いるというだけではない。基板が成長させるナノワイヤーと異なれば、当然、基板とナノワイヤーとの間の格子不整合の可能性及び多くの他の可能性のある検討すべき問題がある。
【0008】
本発明の一実施形態で、本発明者らはグラファイト基板上でエピタキシャルにナノワイヤーを成長させる。グラファイト基板は、グラフェン又はその誘導体の1又は複数の層で構成される基板である。最も微細な形態では、グラフェンは、ハニカム格子パターンに配列された二重電子結合(sp
2結合と呼ばれる)により結合された炭素原子の1原子層厚のシートである。他の半導体基板と異なり、グラファイト基板は薄く、軽く、フレキシブルであり、更に非常に強い。
【0009】
グラファイト基板は任意の他の基板上に容易に移すことができる。最近のレビュー記事である非特許文献1に示されているように、ITO、ZnO/Ag/ZnO、TiO
2/Ag/TiO
2等の他の既存の透明導体と比べ、グラフェンは優れた光電気的特性を有することが示されている。
【0010】
多くの応用において、ナノワイヤーが基板表面に直角に垂直に成長できることが重要である。半導体ナノワイヤーは通常[111]方向(立方晶構造の場合)又は[0001]方向(六方晶構造の場合)に成長する。このことは、基板の表面原子が6角形の対称形に配列されるように基板表面が(111)又は(0001)配向でなければならないことを意味する。
【0011】
本発明者らは、グラファイト基板上で特定の化合物/元素のエピタキシャルなナノワイヤーが成長できることを見出した。グラファイト基板は表面にダングリングボンドを有さず、シリコン及びGaAs等の典型的な半導体と比べて原子結合の長さが非常に短いので、その上でのナノワイヤーの核形成及びエピタキシャル成長を予想する理由はない。以下に記載するように、驚くべきことに、グラフェンを用いた時、グラフェンの表面にどのように半導体原子が配置されるかによって、多くの半導体との間で格子整合が良好になる。
【0012】
特に、分子線エピタキシーを用いることで、ナノワイヤー成長の点で優れた結果が得られる。特に、本発明は、グラファイト基板上でのIV、II−VI族、又は特にIII−V族半導体ナノワイヤーの成長を可能にする。
【0013】
ナノワイヤーを基板上で成長させることができたとしても、デバイス中でのそれらのナノワイヤーの使用を成功させるという問題がある。ナノワイヤーが純粋に半導体で構成される場合、これは自然に、接触金属の仕事関数に依存して金属へのショットキーコンタクトを形成する。したがって、半導体に接触させた金属性グラファイト層も、非特許文献2に示されているようにショットキー接合部を形成すると予想される。グラファイト層と半導体との間での非オーム性ショットキー接合部の形成は、コンタクトを介した適切な電流の流れをブロックするため、LED及び太陽電池等のデバイスの効率に好ましくない。
【0014】
本発明者らは、基板に垂直に成長させた半導体ナノワイヤーアレイへのトップコンタクトの材料としてグラファイト層を用いたオーミックなトップコンタクトを作製する方法を探索した。これにより、グラファイト層(トップコンタクトとして)の柔軟性及び透明度の点で好ましい特性を有用な電気的特性と組み合わせることができる。
【0015】
本発明者らは、半導体ナノワイヤーの成長に金属触媒粒子が関わり得ることを見出した。特に、分子線エピタキシー(MBE)又は有機金属気相成長法(MOVPE)技術を用いたナノワイヤーの成長に、Au、Ga、又はIn等の金属触媒が好ましくはナノワイヤー成長のシードとして用いられる。金属触媒は、ナノワイヤー成長の完了後に各ナノワイヤーの上に残るナノ粒子の形態である。本発明者らは、成長ナノワイヤーの上に堆積させた金属触媒を用いて、成長したナノワイヤーアレイとトップコンタクト材料としてのグラファイト層との間に自己整合オーミックコンタクトを作ることができることを見出した。
【0016】
グラファイト層と成長させたナノワイヤーとの間の前述のトップコンタクトは、成長させたままの(as−grown)ナノワイヤーとSi(111)、GaAs(111)等の基板、特にグラファイト基板との間のボトムコンタクトとは根本的に異なり得ることに留意されたい。ナノワイヤーは高温で基板への物理的及び化学的結合を伴いエピタキシャルに成長するので、ボトムコンタクトははるかに良好且つ密であり、好ましくはオーム性であると予想される。
【0017】
文献中におけるこの種のアイディアについての考察は限られている。非特許文献3は、原子間力顕微鏡の先端を用いて単一ナノワイヤーの上のAu触媒粒子に接触させることによりAu支援MBEにより成長させたナノワイヤーにおけるオーム性I−V曲線の観察を報告している。
【0018】
非特許文献4は、垂直ピラー超格子アレイ及びグラフェンのハイブリッドLEDの作製を報告している。この論文中では、GaAsナノピラーの垂直アレイが「トップダウン」式のエッチングにより作製されており、グラフェンが透明トップコンタクト材料として用いられている。半導電性ナノピラーのトップとグラフェンとの間の予想されるショットキーコンタクトを回避するために、Ti/Auの金属薄層(約4nm)をグラフェン上に堆積させている。グラフェンの金属を堆積させた側をナノピラーへのトップコンタクトとして用い、その後、ポストアニールしている。金属薄層堆積のため、グラフェントップコンタクトの透明度は、裸のグラフェンでの約98%から金属/グラフェンコンタクトでの約70%に大きく低下している。
【0019】
これに対し、金属触媒支援気相−液相−固相(VLS)「ボトムアップ」法により成長したナノワイヤーは自然に上に金属性ナノ粒子が残る。これらの金属ナノ粒子は、ポストアニール処理又はグラファイト層のドーピングが可能なグラファイト層への自己整合オーミックコンタクトの形成を容易化するために用いることができる。自己整合コンタクトとしてこのような金属性粒子を用いることの更なる利点として、金属性粒子は、ナノワイヤー/グラファイト層接点にのみ配置されるので、トップコンタクトグラファイト層の全体的光透過性に影響しないことが挙げられる。トップコンタクト材料としてのグラファイト層の優れた特性は、得られる光電子デバイスに完全に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、金属触媒の存在下で、理想的には金属触媒支援気相−液相−固相(VLS)法により、エピタキシャルに成長させた半導体ナノワイヤーアレイへのトップコンタクト電極材料としてのグラファイト層の使用に関する。理想的には、グラファイト層は、透明、導電性、且つフレキシブルである。半導体ナノワイヤーアレイは、基板上にエピタキシャルに成長させた複数のナノワイヤーを含む。
【0038】
ナノワイヤーをエピタキシャルに成長させることで、形成される材料に均一性が付与され、これにより、種々の最終特性、例えば機械的、光学的、又は電気的特性が増強され得る。
【0039】
エピタキシャルナノワイヤーは、ガス状又は液体状の前駆体から成長され得る。基板がシード結晶として作用するので、堆積されるナノワイヤーは基板と同じ格子構造及び配向をとり得る。これは、単結晶基板上でさえ多結晶又非晶質の膜が堆積される他の薄膜堆積法とは異なる。
【0040】
ナノワイヤー成長のための基板
本発明のナノワイヤーの成長に用いられる基板は、半導体基板等の任意の従来の基板であり得る。ナノワイヤーのエピタキシャル且つ垂直な成長に用いられる半導体基板は、ナノワイヤーのベースと同じ種類の結晶構造及び結晶配向並びに近い格子整合性を有し得る。これらは、基板に直角な[111](立方晶構造の場合)又は[0001](六方晶構造の場合)方向にナノワイヤーが成長できる(111)配向表面を有するようなシリコン又はGaAs基板であり得る。GaAs(111)及びSi(111)が特に好ましい基板である。
【0041】
したがって、関心のある半導体基板は、例えばII−VI族元素、III−V族元素、又は少なくとも1つの非炭素IV族元素をベースとする。
【0042】
基板は、好ましくはグラファイト基板、より好ましくはグラフェンである。本発明において、グラフェンという用語は、ハニカム(六方晶)結晶格子中に密にパッキングされているsp
2結合炭素原子の平面シートを意味する。このグラフェン基板は、10層以下、好ましくは5層以下のグラフェン又はその誘導体を含むべきである(数層グラフェンと呼ばれる)。グラフェンの1原子厚の平面シートであることが特に好ましい。
【0043】
結晶又は「フレーク」形態のグラファイトは、積み重ねられた多くのグラフェンシート(すなわち、11シート以上)からなる。したがって、グラファイト基板とは、1又は複数のグラフェンシートから形成されたものを意味する。
【0044】
基板の全体的な厚さは20nm以下であることが好ましい。グラフェンシートを積み重ねて格子面間隔が0.335nmのグラファイトを形成する。好ましいグラファイト基板は、そのような層をほんの少ししか含まず、理想的には厚さが10nm未満であり得る。更により好ましくは、グラファイト基板の厚さは5nm以下であり得る。基板全体の面積は限定されない。面積は0.5mm
2以上、例えば5mm
2以上まで、例えば10cm
2までと大きくてもよい。したがって、基板の面積は実用性によってのみ限定される。
【0045】
基板は、特に基板がグラファイト状(graphitic)である場合、その上にナノワイヤーが成長できるように支持される必要があってもよい。基板は、従来の半導体基板及び透明ガラスを含むあらゆる種類の材料上に支持され得る。シリカ又はSiCの使用が好ましい。支持体は不活性である必要がある。
【0046】
非常に好ましい実施形態では、基板は、キッシュグラファイトから剥離した積層基板、グラファイトの単結晶、又は高配向熱分解グラファイト(HOPG)である。あるいは、基板は、化学蒸着(CVD)法を用いてNi膜又はCuホイル上に成長させることもでき、これは米国の「グラフェンスーパーマーケット」から容易に購入することができる。基板は、Cu、Ni、若しくはPtでできた金属性の膜又はホイル上の化学蒸着(CVD)成長グラフェン基板であり得る。
【0047】
これらのCVD成長グラファイト層は、エッチングにより又は電気化学的剥離法によりNi又はCu膜等の金属ホイルから化学的に剥離することができる。次いで、剥離後のグラファイト層はナノワイヤー成長のための支持基板に転移及び堆積される。剥離及び転移中、電子ビームレジスト又はフォトレジストを用いてグラフェン薄層を支持することができる。これらの支持材料は堆積後にアセトンによって容易に除去することができる。
【0048】
グラファイト基板を改質せずに用いることが好ましいが、グラファイト基板の表面を改質してもよい。例えば、水素、酸素、NO
2、又はこれらの組合せのプラズマで基板を処理することができる。基板の酸化はナノワイヤーの核形成を促進し得る。例えばナノワイヤー成長前に純度を確かにするために、基板を前処理することが好ましいこともある。HF又はBOE等の強酸を用いた処理も選択肢である。表面の不純物を除去するためにイソプロパノール、アセトン、又はn−メチル−2−ピロリドンで基板を洗浄してもよい。
【0049】
清浄化したグラファイト表面をドーピングにより更に改質してもよい。ドーパント原子又は分子は、成長するナノワイヤーのシードとして作用し得る。FeCl
3、AuCl
3、又はGaCl
3の溶液をドーピングステップに用いることができる。
【0050】
グラファイト層、より好ましくはグラフェンは、その優れた光学的、電気的、及び機械的特性が周知である。これらは非常に薄いが非常に強く、軽く、フレキシブルであり、不浸透性である。本発明中で最も重要なこととして、これらは非常に電気的及び熱的に伝導性が高く、フレキシブルであり、透明である。現在商業的に使用されているITO、ZnO/Ag/ZnO、及びTiO
2/Ag/TiO
2等の他の透明導体と比べて、グラフェンは、はるかに高い透明性(目的の波長250〜900nmの太陽光スペクトル範囲で透過率約98%)及び導電性(1nmの厚さで1000オーム未満のシート抵抗)が証明されている。
【0051】
ナノワイヤーの成長
商業的に重要なナノワイヤーを製造するためには、これらが基板上でエピタキシャルに成長することが必須である。また、成長が基板に直角に且つしたがって理想的には[111](立方晶構造の場合)又は[0001](六方晶構造の場合)方向に起これば理想的である。これは、適切にカットした基板を用意することにより、成長するナノワイヤーと同じ材料から形成された基板を用いることで実現できると上記した。
【0052】
前述したように、成長させるナノワイヤーと基板材料が異なる特定の基板を用いてこれが可能であることは保証されない。しかし、本発明者らは、半導体ナノワイヤー中の原子とグラフェンシート中の炭素原子との間の可能な格子整合を確認することによりグラファイト基板上でのエピタキシャルな成長が可能であることを確認した。
【0053】
グラフェン層中の炭素−炭素結合の長さは約0.142nmである。グラファイトは六方晶形状をしている。これは
図1aに示されている。驚くべきことに、本発明者らは、成長させるナノワイヤー材料とグラファイト基板との間の格子不整合が非常に低くなり得るため、グラファイトから、その上に半導体ナノワイヤーを成長させることができる基板が得られることを見出した。
【0054】
本発明者らは、立方晶構造で[111]方向に成長するナノワイヤーの(111)面中(あるいは、六方晶構造で[0001]方向に成長するナノワイヤーの(0001)面中)におけるグラファイト基板の六方対称性及び半導体原子の六方対称性のため、成長するナノワイヤーと基板との間で格子整合性を実現できることを見出した。
【0055】
図1a〜1dは、格子不整合が起こらないように配置された、グラフェン層中の炭素原子六方格子の上のナノワイヤーの(111)(又は(0001))面中の半導体原子の4つの異なる六方晶構造のコンフィグレーションを示す図である。グラフェン上の可能な半導体吸着部位として、本発明者らは
図1aに矢印で示されているように(1)グラフェンの6角形炭素環の中心の上(H部位)及び(2)炭素原子間のブリッジの上(B部位)を検討した。
【0056】
この図は、原子が(1)H部位及びB部位(
図1a、1b、及び1d)並びに(2)H部位又はB部位(
図1c)に配置された時の、立方晶の(111)面(六方晶の場合は(0001)面)中の半導体原子の理想化された格子整合させた配列を示している。破線は、(111)面中の半導体原子の格子の六方対称性を強調している。各原子配置についてのこれら六角形の相対的回転を各図の上に記す。(
図1a)及び(
図1d)では、2つの相対的配向、それぞれ±10.9°及び±16.1°が可能である(画像には+回転のみが示されている)。
【0057】
図1eは、(a)、(b)、(c)、及び(d)中の原子配列の、人為的に格子整合させた格子定数を示す図である。破線及び実線はそれぞれ、これらの格子の六方晶相(a
1)及び立方晶相(a=a
1×√2)に対応する。四角(■)及び六角形は、Si、ZnO、及びIII−V族半導体のそれぞれ立方晶相及び六方晶相を表す。2つの異なる色の四角(GaAs、AlAs、AlSb)は、半導体がグラフェン上で2つの原子配列のいずれかを採用できることを示している。この図は、グラファイト基板上での垂直半導体ナノワイヤーのエピタキシャル成長の膨大な可能性を視覚化している。
【0058】
図1aに示されるようにH部位及びB部位の上に交互に半導体原子が配置される場合、立方晶系半導体結晶の格子定数a(格子定数aは立方単位格子の辺長として定義される)が4.607Åに等しい時、正確な格子整合を実現することができる。格子定数がこの値に近い少数の立方晶系半導体が存在し、最も近いのはSiC(a=4.36Å)、AlN(a=4.40Å)、及びGaN(a=4.51Å)である。六方晶系半導体の結晶では、格子定数a
1が3.258Åに等しい時に正確な格子整合が達成される。格子定数がこの値に近い少数の六方晶系半導体が存在し、最も近いのはSiC(a
1=3.07Å)、AlN(a
1=3.11Å)、GaN(a
1=3.19Å)、及びZnO(a
1=3.25Å)の結晶である。
【0059】
図1bに示されるようにH部位及びB部位の上に交互に半導体原子が配置される場合、立方晶系半導体結晶の格子定数aが1.422Å(炭素原子距離)×3/2×√6=5.225Åに等しい時、正確な格子整合を達成することができる。これはSi(a=5.43Å)、GaP(a=5.45Å)、AlP(a=5.45Å)、InN(a=4.98Å)、及びZnS(a=5.42Å)の格子定数に近い。六方晶系半導体結晶では、格子定数a
1が1.422Å×3/2×√3=3.694Åに等しい時、正確な格子整合を達成することができる。これは六方晶形態のInN(a
1=3.54Å)及びZnS(a
1=3.82Å)結晶の格子定数a
1に近い。
【0060】
図1cに示されるような原子コンフィグレーションでは、立方晶系半導体結晶の格子定数aが1.422Å(炭素原子距離)×3×√2=6.033Åに等しい時、正確な格子整合を達成することができる。これは、InAs、GaAs、InP、GaSb、AlSb、及びAlAs等のIII−V族化合物並びにMgSe、ZnTe、CdSe、及びZnSe等のII−VI族化合物の半導体結晶の格子定数に近い。特にこれは、InAs(a=6.058Å)、GaSb(a=6.096Å)、及びAlSb(a=6.136Å)等のIII−V族化合物並びにZnTe(a=6.103Å)及びCdSe(a=6.052Å)等のII−VI族化合物の半導体結晶の格子定数に近い。
【0061】
六方晶系半導体結晶では、格子定数a
1が1.422Å(炭素原子距離)×3=4.266Åに等しい時、正確な格子整合が実現される。これは、六方晶形態のII−VI材料CdS(a
1=4.160Å)及びCdSe(a
1=4.30Å)の結晶の格子定数a
1に近い。
【0062】
図1dに示されるようにH部位及びB部位の上に交互に半導体原子が配置される場合、立方晶系半導体結晶の格子定数aが6.28Åに等しい時、正確な格子整合を実現することができる。これは、InSb(a=6.479Å)、MgTe(a=6.42Å)、及びCdTe(a=6.48Å)の格子定数に近い。六方晶系半導体結晶では、格子定数a
1が4.44Åに等しい時に正確な格子整合が実現される。これは、六方晶形態のInSb(a
1=4.58Å)、MgTe(a
1=4.54Å)、及びCdTe(a
1=4.58Å)の結晶の格子定数a
1に近い。
【0063】
理論により限定されるものではないが、グラファイト層中の炭素原子の六方対称性並びにそれぞれ[111]及び[0001]結晶方向(ほとんどのナノワイヤー成長にとって好ましい方向)における立方晶系又は六方晶系半導体の原子の六方対称性のため、半導体原子がグラファイト基板の炭素原子上に理想的には六方晶のパターンで配置された時に、グラファイト基板と半導体との間の格子整合を近くことができる。これは、新規且つ驚くべき発見であり、グラファイト基板上でのナノワイヤーのエピタキシャル成長を可能にすることができる。
【0064】
前述したような半導体原子の4つの異なる6方晶配列は、そのような材料の半導体ナノワイヤーを垂直に成長させて薄い炭素ベースのグラファイト材料の上に自立型ナノワイヤーを形成することを可能にすることができる。
【0065】
成長するナノワイヤーと基板との間に格子不整合がないのが理想的であるが、ナノワイヤーは例えば薄膜よりもはるかに大きな格子不整合を許容できる。本発明のナノワイヤーは、基板と約10%までの格子不整合を有し得、それでもエピタキシャル成長が可能である。理想的には、格子不整合は7.5%以下、例えば5%以下であるべきである。
【0066】
立方晶InAs(a=6.058Å)、立方晶GaSb(a=6.093Å)、立方晶CdSe(a=6.052Å)、及び六方晶CdSe(a
1=4.30Å)等の一部の半導体では、格子不整合が非常に小さいので(約1%未満)、これらの半導体の優れた成長が予想できる。
【0067】
GaAs(a=5.653Å)等の一部の半導体では、格子不整合は、
図1aに示されているのと同じ部位上に半導体原子が配置された場合と非常に近い(a=6.033Å、したがってGaAsの格子定数は6.3%小さい)か、
図1bのようにH部位及びB部位に交互に配置された場合と非常に近い(a=5.255Å、したがってGaAsの格子定数は8.2%大きい)ので、両方の配列が可能である。本発明のプロセスは、前述の材料の半導体ナノワイヤーを垂直に成長させて、薄い炭素ベースのグラファイト材料及び従来の基板、例えば半導体の上に自立型ナノワイヤーを形成できるようにすることができる。
【0068】
本発明における成長させたナノワイヤーの長さは250nm〜数ミクロン、例えば最大5ミクロンであり得る。好ましくは、ナノワイヤーの長さは少なくとも1ミクロンである。複数のナノワイヤーを成長させる場合、それら全てがこれらの寸法要件を満たすことが好ましい。理想的には、基板上に成長させたナノワイヤーの少なくとも90%は長さが少なくとも1ミクロンである。好ましくは、実質的に全てのナノワイヤーの長さが少なくとも1ミクロンである。
【0069】
更に、成長させたナノワイヤーは同じ寸法であること、例えば互いから10%以内であることが好ましい。したがって、基板上のナノワイヤーの少なくとも90%(好ましくは実質的に全て)は、同じ直径及び/又は同じ長さ(すなわち、互いから直径/長さが10%以内)のものであることが好ましい。したがって、基本的に、当業者は均一性及び寸法の点で実質的に同じナノワイヤーを求めている。
【0070】
ナノワイヤーの長さはしばしば、成長プロセスを行う時間の長さで調節される。通常、プロセスが長いほど、ナノワイヤーは(はるかに)長くなる。
【0071】
ナノワイヤーは、典型的には六角形の断面形状である。ナノワイヤーは、25〜200nmの横断面直径(すなわち厚さ)であり得る。前述したように、直径はナノワイヤーの大部分にわたって理想的には一定である。ナノワイヤー直径は、以下に更に説明するようにナノワイヤーの製造に用いる原子の比率を操作することにより調節することができる。
【0072】
更に、ナノワイヤーの長さ及び直径は、それらが形成される温度の影響を受け得る。より高い温度は高いアスペクト比(すなわち、より長い及び/又はより薄いナノワイヤー)を促進する。当業者は、成長プロセスを操作して所望の寸法のナノワイヤーを設計することができる。
【0073】
本発明のナノワイヤーは、少なくとも1つのIII−V化合物、少なくとも1つのII−VI化合物から形成されるか、あるいは、Si、Ge、Sn、又はPb、特にSi及びGeから選択される少なくとも1つのIV群元素から成長させたナノワイヤーであり得る。したがって、純粋なIV族ナノワイヤー又はSiC及びSiGe等のナノワイヤーの形成も予想される。
【0074】
II族元素はBe、Mg、Ca、Zn、Cd、及びHgである。ここで好ましい選択肢はZn及びCdである。
【0075】
III族の選択肢はB、Al、Ga、In.及びTlである。ここで好ましい選択肢はGa、Al、及びInである。
【0076】
V族の選択肢はN、P、As、Sbであり、全て好ましい。
【0077】
VI族の選択肢にはO、S、Se、及びTeが含まれる。Se及びTeの使用が好ましい。
【0078】
III−V族化合物の製造が好ましい。ナノワイヤー成長中に形成する化合物は、以下に記載するように、ドーピングを行う可能性があるので、完全に化学両論的である必要はないと理解される。
【0079】
ナノワイヤー製造のための好ましい化合物にはAlAs、ZnO、GaSb、GaP、GaN、GaAs、InP、InN、InGaA、InAs、又はAlGaAs、又はInAs、GaAs、InP、GaSb、InSb、GaP、ZnTe、SiC、CdSe、及びZnSe、例えばInAs、GaAs、InP、GaSb、InSb、GaP、ZnTe、CdSe、及びZnSeが含まれる。GaAs又はInAsの使用が非常に好ましい。他の選択肢としてはSi、ZnO、GaN、AlN、及びInNが含まれる。
【0080】
2成分材料の使用が好ましいが、3成分又は4成分のナノワイヤー等が本発明の方法により成長できない理由はない。したがって、2つのIII族陽イオンとV族陰イオンがあるInGaAs及びAlGaAs等の3元系がここで選択肢となる。したがって、3元系化合物は式XYZ(式中、Xは、III族元素、Yは、X及びZとは異なるIII族又はV族元素、Zは、V族元素である)のものであり得る。XYZ中のXとY又はYとZのモル比は、好ましくは0.1〜0.9であり、すなわち、式は好ましくはX
xY
1-xZ(又はXY
1-xZ
X)(式中、下付きのxは0.1〜0.9である)である。4元系は、式A
xB
1-xC
yD
1-y(式中、A及びBは、III族元素であり、C及びDは、V族元素である)で表すことができる。ここでも、下付きのx及びyは典型的には0.1〜0.9である。他の選択肢も当業者に明らかである。
【0081】
ナノワイヤーにドープすることは本発明の範囲内である。ドーピングは、典型的には、例えばMBE成長中に、ナノワイヤー中に不純物を導入することを含む。ドーピングレベルは約10
15/cm
3〜10
20/cm
3に調節することができる。ナノワイヤーは、所望に応じて、アンドープ(真性(intrinsic))、pドープ、又はnドープであり得る。ドープされた半導体は外因性導体(extrinsic conductor)であり、アンドープ半導体は真性である。
【0082】
n(p)型半導体は、真性半導体にドナー(アクセプター)不純物をドープすることにより、正孔(電子)濃度より電子(正孔)濃度が高くなっている。III−V化合物の好適なドナー(アクセプター)はTe(Be及びZn)であり得る。Siは両性であり得、Siが行く部位に応じて、成長表面の配向及び成長条件に応じて、ドナー又はアクセプターのいずれにもなり得る。成長プロセス中に、又はナノワイヤー形成後のナノワイヤーへのイオン注入により、ドーパントを導入することができる。
【0083】
本発明のナノワイヤーは、放射状又はアキシャルにヘテロ構造形態を有するように成長させることができる。例えば、アキシャルなヘテロ構造ナノワイヤーでは、p型ドープされたコアを最初に成長させ、次いでn型ドープされたコアを続けることにより、pn接合をアキシャルに形成することができる。放射状のヘテロ構造ナノワイヤーでは、pドープされたナノワイヤーコアを最初に成長させ、次いでnドープされた半導電性シェルを成長させることにより、pn接合を放射状に形成することができる。
【0084】
本発明のナノワイヤーはエピタキシャルに成長する。これらは共有結合、イオン結合、又は準ファンデルワールス(quasi van der Waals)結合を介して下の基板に結合する。したがって、基板とナノワイヤーのベースとの接合部で、ナノワイヤー内で結晶面がエピタキシャルに形成される。これらは同じ結晶学的方向に次々に構築されるので、ナノワイヤーのエピタキシャルな成長が可能になる。好ましくは、ナノワイヤーは垂直に成長する。ここで垂直にという用語は、ナノワイヤーが支持体に直角に成長することを意味して使用される。実験科学において、成長角は正確に90°でなくてもよく、垂直という用語はナノワイヤーが垂直/直角から約10°以内、例えば5°以内であることを意味すると理解される。共有結合、イオン結合、又は準ファンデルワールス結合を介したエピタキシャル成長のため、ナノワイヤーと基板、特にグラファイト基板との間の密な接触があることが予想される。更に接触特性を増強するために、成長させるナノワイヤーの主なキャリアと一致するようにグラファイト基板等の基板にドープしてよい。
【0085】
ナノワイヤーは高温で基板への物理的及び化学的な結合を含んでエピタキシャルに成長させるので、ボトムコンタクトはオーム性であることが好ましい。
【0086】
基板は複数のナノワイヤーを含むと理解される。好ましくは、ナノワイヤーは互いにほぼ平行に成長する。したがって、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、好ましくは実質的に全てのナノワイヤーが基板の同じ面から同じ方向に成長することが好ましい。
【0087】
基板内にはエピタキシャル成長が起こり得る多くの面があると理解される。同じ面から実質的に全てのナノワイヤーが成長することが好ましい。その面は基板表面と平行であることが好ましい。理想的には、成長したナノワイヤーは実質的に平行である。好ましくは、ナノワイヤーは基板に対して実質的に直角に成長する。
【0088】
本発明のナノワイヤーは、好ましくは、立方晶構造のナノワイヤーでは[111]方向に、六方晶構造のナノワイヤーでは[0001]方向に成長するべきである。成長するナノワイヤーの結晶構造が立方晶である場合、ナノワイヤーと触媒液滴との間の(111)界面が、そこからアキシャル成長が起こる面である。ナノワイヤーが六方晶構造である場合、ナノワイヤーと触媒液滴との間の(0001)界面が、そこからアキシャル成長が起こる面である。面(111)及び(0001)はどちらも、ナノワイヤーの同じ(6角形の)面を表し、これは単に、成長するナノワイヤーの結晶構造に応じて面の命名法が異なっているだけである。
【0089】
ナノワイヤーは、好ましくは分子線エピタキシー(MBE)により成長される。有機金属気相成長法(MOVPE)を用いることも可能であるが、MBEの使用が好ましい。この方法では、好ましくは同時に供給される、各反応物(例えばIII族元素及びV族元素)の分子線を基板に与える。例えばIII族及びV族の元素を交互に供給できるマイグレーションエンハンストエピタキシー(migration−enhanced epitaxy:MEE)又は原子層MBE(ALMBE)を用いることにより、MBE技術を用いてグラファイト基板上でのナノワイヤーの核形成及び成長のより高度な調節が実現され得る。
【0090】
好ましい技術は固体ソースMBEであり、ガリウム及びヒ素等の非常に純粋な元素がそれらがゆっくりと蒸発(例えば、ガリウム)又は昇華(例えば、ヒ素)し始めるまで別個の蒸発セル(effusion cell)中で加熱される。次いで、このガス状元素は、基板上で凝縮し、そこで互いに反応し得る。ガリウム及びヒ素の例では、単結晶GaAsが形成される。「線(beam)」という用語の使用は、蒸発させた原子(例えば、ガリウム)又は分子(例えば、As
4又はAs
2)が、それらが基板に到達するまで互いに若しくは真空チャンバーのガスと相互作用しないことを意味する。
【0091】
ドーピングイオンもMBEを用いて容易に導入することができる。
図2はMBE装置の可能な構成を示す図である。
【0092】
MBEは、バックグラウンド圧力が典型的には約10
-10〜10
-9Torrの超高真空で起こる。ナノ構造体は通常ゆっくりと、例えば1時間当たり最大数μm(例えば約10μm)の速度で成長する。これにより、ナノワイヤーはエピタキシャルに成長することができ、構造性能を最大にすることができる。
【0093】
触媒
本発明のナノワイヤーは触媒の存在下で成長される。触媒は、ナノワイヤーを構成する元素の1つ(いわゆる自己触媒)であってもよく、ナノワイヤーを構成する元素のいずれとも異なっていてもよい。
【0094】
触媒支援成長では、触媒はAu又はAgであり得、あるいは、触媒は、ナノワイヤー成長に用いられる族の金属(例えば、II又はIII族金属)、特に実際のナノワイヤーを構成する金属元素の1つ(自己触媒)であり得る。したがって、例えばIn(V族)ナノワイヤーのための触媒としてGaを用いるといったように、III−Vナノワイヤーを成長させるための触媒としてIII族の別の元素を用いることができる。触媒がAuであるか、成長が自己触媒される(すなわち、Ga(V族)ナノワイヤーに対するGa等)ことが好ましい。触媒は、ナノワイヤー成長のための核形成部位として作用するように基板上に堆積させることができる。理想的には、これは基板表面の上に触媒材料の薄膜を設けることにより実現することができる。触媒膜は、温度が成長温度に上昇して溶融する時(多くの場合、半導体ナノワイヤー構成要素の1又は複数と共晶合金を形成する)、基板上にナノメートルサイズの粒子様の液滴を形成し、これらの液滴はナノワイヤーが成長できるポイントを形成する。これは、触媒が液体であり、分子線が気体であり、ナノワイヤーが固体の構成要素を提供するので、気相−液相−固相成長(VLS)法と呼ばれる。場合によっては、いわゆる気相−固相−固相成長(VSS)メカニズムにより、ナノワイヤー成長中に触媒粒子が固体であってもよい。ナノワイヤーが(VLS方法により)成長する際、液体(例えば、金)液滴はナノワイヤーの上に留まる。これは図示されている。これは成長後にナノワイヤーの上に残り、したがって、本明細書中に記載されているように、トップグラファイト層を接触させる際に重要な役割を果たし得る。
【0095】
前述したように、自己触媒ナノワイヤーを製造することもできる。自己触媒とは、ナノワイヤーの構成要素の1つがその成長のための触媒として作用することを意味する。
【0096】
例えば、Ga層を基板に塗布し、溶融させて、Ga含有ナノワイヤーの成長のための核形成部位として作用する液滴を形成させることができる。この場合も、Ga金属部分は最終的にナノワイヤーの上に位置し得る。構成要素として触媒を含むナノワイヤーに、触媒としてII族又はIII族金属を用いて同様なプロセスを行うことができる。
【0097】
より具体的には、基板表面に一定時間Ga/Inフラックスを供給して、基板加熱後に表面上でGa/In液滴の形成を開始させることができる。次いで、問題のナノワイヤーの成長に適した温度に基板温度が設定され得る。成長温度は300〜700℃であり得る。しかし、使用される温度は、ナノワイヤー中の材料、触媒材料、及び基板材料の性質に特異的である。GaAsの場合、好ましい温度は540〜630℃、例えば590〜630℃、例えば610℃である。InAsでは、この範囲はより低く、例えば420〜540℃、例えば430〜540℃、例えば450℃である。
【0098】
触媒膜が堆積及び溶融した後にGa/In蒸発セル及び対イオン蒸発セルのシャッターを同時に開くことによりナノワイヤー成長を開始させることができる。
【0099】
蒸発セルの温度を用いて成長速度を調節することができる。通常の面(1分子層ずつ)成長中に測定される成長速度は0.05〜2μm/時間、例えば0.1μm/時間が好ましい。
【0100】
分子線の圧力も、成長させているナノワイヤーの性質に応じて調整することができる。ビーム等価圧力(beam equivalent pressure)の好適なレベルは、1×10
-7〜1×10
-5Torrである。
【0101】
反応物(例えば、III族原子及びV族原子)間のビームフラックス比は異なり得、好ましいフラックス比は他の成長パラメーター及び成長させているナノワイヤーの性質によって決まる。
【0102】
反応物間のビームフラックス比がナノワイヤーの結晶構造に影響し得ることが見出された。例えば、触媒としてAu、成長温度540℃のGaAsナノワイヤー成長、面(1分子層ずつの)成長速度0.6μm/時間に相当するGaフラックス、及び9×10
-6Torrのビーム等価圧力(BEP)をAs
4で用いることで、ウルツ鉱結晶構造が得られる。これに対し、GaAsナノワイヤーの成長温度は同じであるが、0.9μm/時間の面成長速度に相当するGaフラックス及び4×10
-6TorrのBEPをAs
4で用いると、閃亜鉛鉱結晶構造となる。
【0103】
場合により、成長パラメーターを変えることによりナノワイヤー直径を変えることができる。例えば、アキシャルなナノワイヤー成長速度がAs
4フラックスにより決まる条件下で自己触媒GaAsナノワイヤーを成長させる場合、Ga:As
4フラックス比を増大/減少させることによりナノワイヤー直径を増大/減少させることができる。したがって、当業者は複数の方法でナノワイヤーを操作することができる。
【0104】
したがって、例えばナノワイヤー核形成及びナノワイヤー成長を別個に最適化するために2ステップ等の複数ステップの成長法を用いることは本発明の実施形態である。
【0105】
MBEの大きな利点は、例えば反射高速電子線回折(RHEED)を用いることで、成長しているナノワイヤーをその場で解析できることである。RHEEDは、結晶材料の表面を特徴解析するために通常用いられる技術である。この技術は、MOVPE等のその他の技術でナノワイヤーが形成される場合には容易に適用することができない。
【0106】
上記の技術の制約の1つは、基板表面のどこでナノワイヤーが成長するのかの制御が限定的なことである。ナノワイヤーは触媒液滴が形成された場所で成長するが、その液滴が形成され得る場所はほとんど制御できない。更なる問題は、液滴のサイズを容易に制御できないことである。ナノワイヤーの核形成を開始させるには小さすぎる液滴が形成される場合、ナノワイヤーの収率が低くなり得る。これは特に金触媒を用いる場合に問題となる。金によって形成される液滴は非常に小さいので高収率のナノワイヤー成長が不可能なためである。
【0107】
成長したナノワイヤーの高さ及び直径がより均一な、より規則的なナノワイヤーアレイを製造するために、本発明者らは、基板上でのマスクの使用を想定する。ナノワイヤーが基板全体で規則的なアレイとして均一なサイズで成長できるように、このマスクに規則的な孔を付加してもよい。マスク中の孔パターンは、従来の光/電子ビームリソグラフィ又はナノインプリンティングを用いて容易に作製することができる。グラファイト表面にナノワイヤー成長のための核形成部位の規則的アレイを作製するために集束イオンビーム技術を用いることもできる。
【0108】
したがって、基板にマスクを塗布し、基板表面を露出させる孔を、必要に応じて規則的パターンで、備えるようにマスクをエッチングすることができる。更に、孔のサイズは慎重に調節することができる。次いで、それらの孔に触媒を導入してナノワイヤー成長のための核形成部位を提供することができる。孔を規則的に配列することにより、規則的パターンのナノワイヤーを成長させることができる。
【0109】
更に、孔のサイズは、各孔に1つのナノワイヤーだけが成長できるように調節することができる。更に、孔は、孔内で形成される触媒液滴がナノワイヤー成長を可能にするのに充分な大きさであるようなサイズで作製することができる。これにより、Au触媒を用いても、ナノワイヤーの規則的アレイを成長させることができる。
【0110】
マスク材料は、堆積時に下の基板にダメージを与えない任意の材料であり得る。この実施形態で使用される孔は、ナノワイヤー直径よりわずかに大きくてよく、例えば最大200nmであり得る。最小孔サイズは50nm、好ましくは少なくとも100〜200nmであり得る。マスクの厚さは50〜300nmであり得る。
【0111】
マスク自体は、二酸化シリコン又は窒化シリコン等の不活性化合物でできていてよい。特に、孔をパターニングしたマスクは、例えば電子ビーム蒸着法(e−beam evaporation)、CVD、PE−CVD、スパッタリング、又はALDにより堆積された、少なくとも1つの絶縁性材料、例えばSiO
2、Si
3N
4、HfO
2、又はAl
2O
3を含む。したがって、マスクは、電子ビーム堆積法(electron beam deposition)、CVD、プラズマCVD、スパッタリング、及び原子層堆積法(ALD)等の任意の都合の良い技術により基板表面に設けることができる。
【0112】
位置決めされたAu触媒ナノワイヤーを基板上に製造するために、マスクに孔パターンをエッチングした後に、例えば厚さが50nm未満の、Auの薄膜を堆積させてよい。堆積物は、各孔のエッチング後にマスクの上に残っているフォトレジスト又は電子ビームレジストを用いて作製することができる。いわゆる「リフトオフ」プロセスにおいてフォトレジスト又は電子ビームレジストを除去することにより、基板表面上に規則的に配列されたパターンのAuドットを作製することができる。必要に応じて、作製後にマスクを部分的に又は完全に除去してもよい。
【0113】
特に、単純な気相−固相成長の使用によりナノワイヤー成長を可能にすることができる。したがって、MBEの文脈では、触媒を何ら用いずに、反応物、例えばIn及びAsを基板にただ塗布することで、ナノワイヤーを形成することができる。これは本発明の更なる態様を構成し、したがって、グラファイト基板上で前述の元素から形成される半導体ナノワイヤーの直接的成長を提供する。したがって、直接的という用語は、成長を可能にするための触媒の膜が存在しないことを意味する。
【0114】
前述したように、本発明のナノワイヤーは好ましくは立方晶(閃亜鉛鉱)又は六方晶(ウルツ鉱)の構造体で成長する。本発明者らは、前述したように基板に供給する反応物の量を操作することにより成長するナノワイヤーの結晶構造を変えることができることを見出した。例えば、より多いフィードのGaは、GaAs結晶を立方晶構造にする。より少ないフィードは六方晶構造を促進する。したがって、反応物濃度を操作することにより、ナノワイヤー内の結晶構図を変えることができる。
【0115】
異なる結晶構造の導入により、異なる電子特性をナノワイヤー中に存在させることができる。これにより、結晶相量子ドットの形成が可能になり得、他の興味深い電子技術の開発が可能になり得る。
【0116】
また、ナノワイヤーを形成する材料の性質を成長プロセス中に変えることも本発明の範囲内である。したがって、分子線の性質を変えることにより、一部の異なる構造がナノワイヤー中に導入される。最初はGaAsであるナノワイヤーを、例えばGaフィードからInフィードに変えることにより、InAsナノワイヤーセクションで延ばすことができる。次いで、Gaフィードに再度変えることでGaAs/InAsナノワイヤーをGaAsナノワイヤーセクションで延ばすといったことができる。ここでも、異なる電気的特性を有する異なる構造を発達させることにより、本発明者らは、製造者があらゆる種類の最終用途に適応させることができる興味深い操作可能な電子特性を有するナノワイヤーを提供する。
【0117】
グラファイトトップコンタクト
触媒存在下で基板上にナノワイヤーを成長させた後、ナノワイヤーのいくつかがナノワイヤーの上に触媒堆積物を有することが想定される。理想的には、ナノワイヤーの大部分がそのような堆積物を有し、好ましくは実質的に全てのナノワイヤーがこの堆積物を含む。
【0118】
次いで、本発明は、形成されたナノワイヤーの上にグラファイト層を置いてトップコンタクトを作製することを含む。グラファイトトップコンタクト層は基板層と実質的に平行であることが好ましい。また、グラファイト層の面積は基板の面積と同じである必要はないと理解される。ナノワイヤーのアレイを備えた基板を具備するトップコンタクトを形成するために複数のグラファイト層が必要となり得る。
【0119】
使用されるグラファイト層は、基板に関連して上記で詳細に説明したものと同じであり得る。トップコンタクトは、グラファイト状(graphitic)、より具体的にはグラフェンである。このグラフェン基板は、10層以下、好ましくは5層以下のグラフェン又はその誘導体(数層グラフェンと呼ばれる)を含むべきである。特に好ましくは、これはグラフェンの1原子厚の平面シートである。
【0120】
結晶又は「フレーク」形態のグラファイトは、積層された(すなわち、11シート以上の)多くのグラフェンシートからなる。トップコンタクトの厚さは20nm以下であることが好ましい。更により好ましくは、グラファイトトップコンタクトの厚さは5nm以下であり得る。
【0121】
光電子デバイスの主要構成要素である半導体材料にグラフェンが直接接触する場合、グラフェンは通常ショットキーコンタクトを形成し、これはコンタクト接合部でバリアを形成することにより電流の流れを妨げる。この問題のため、半導体上に堆積されたグラフェンに関する研究はこれまで主に、グラフェン/半導体ショットキー接合部の使用、例えばショットキー接合太陽電池、に限定されていた。
【0122】
しかし、本発明者らは、半導体ナノワイヤーの成長に金属触媒が関与し得ることを見出した。VLS法、例えばMBE又はMOVPEでは、Au、Ga、又はIn等の金属触媒がナノワイヤー成長のシードとして好ましく用いられ、これらはナノワイヤー成長完了後にナノワイヤーの上のナノ粒子の形態で残る。これらの触媒堆積物は、金属性グラフェンと半導体ナノワイヤーとの間の中間材料として用いることができる。残った触媒材料を利用し、金属性グラファイトトップコンタクトと半導体ナノワイヤーとの間の界面で形成されるショットキーコンタクトを回避することができ、オーミックコンタクトを確立することができる。
【0123】
形成されたナノワイヤーへのトップコンタクトの適用は任意の都合の良い方法によって実現することができる。基板キャリアにグラファイト層を移すための前述した方法と同様な方法を用いることができる。キッシュグラファイト、高配向熱分解グラファイト(HOPG)、又はCVDに由来するグラファイト層は機械的又は化学的方法によって剥離することができる。その後、これらは、剥離プロセスに由来する混入物及びCu(Ni、Pt等)(特にCVD成長グラファイト層の場合)を除去するためにHF又は酸溶液等のエッチング液に移され得る。エッチング液を更に脱イオン水等の別の溶液に交換してグラファイト層を清浄にすることができる。その後、形成されたナノワイヤー上にトップコンタクトとしてグラファイト層を容易に移すことができる。ここでも、剥離及び転移プロセス中、グラファイト薄層を支持するために電子ビームレジスト又はフォトレジストを用いることができ、これは堆積後に容易に除去することができる。
【0124】
グラファイト層は、エッチング及びすすぎ後、ナノワイヤーアレイの上に移される前に完全に乾燥させることが好ましい。グラファイト層とナノワイヤーとの間の接触を強化するために、この「乾式」転移中に穏やかな圧力及び熱を加えてもよい。
【0125】
あるいは、グラファイト層は、溶液(例えば、脱イオン水)と共にナノワイヤーアレイの上に移されてもよい。溶液が乾燥すると、グラファイト層が自然に下のナノワイヤーとの密な接触を形成する。この「湿式」転移法では、乾燥プロセス中の溶液の表面張力がナノワイヤーアレイを曲げるか破壊し得る。これを防止するため、この湿式の方法を用いる場合、より頑強なナノワイヤーを用いることが好ましい。直径が80nmを超えるナノワイヤーが好適であり得る。あるいは、垂直ナノワイヤー構造を支持する孔がパターニングされた基板を用いることができる。乾燥プロセス中の表面張力により生じるダメージを避けるために臨界点乾燥法を用いることもできる。
【0126】
水滴がナノワイヤーアレイ上にあり、それを取り除こうという試みが例えば窒素ブローを含む場合、蒸発により水滴は小さくなるが、水滴は表面張力により常に球状の形態を維持しようとする。これは水滴の周辺又は内側のナノ構造体を破損又は破壊し得る。
【0127】
臨界点乾燥法によりこの問題が回避される。温度及び圧力を上げることにより、液体と気体の間の界面を除くことができ、水を容易に除くことができる。
【0128】
トップコンタクトグラファイト層は、好ましくは、透明、導電性、且つフレキシブルである。成長させたままの(as−grown)ナノワイヤーの上の金属粒子とのグラファイト層の電気的及び機械的接触を更に強化するために、ポストアニール処理を用いてもよい。グラファイトトップコンタクトの堆積後、試料を、例えばアルゴンの不活性雰囲気中又は真空中でアニールすることができる。温度は最高600℃であり得る。アニール時間は最大10分であり得る。
【0129】
また、グラファイトトップコンタクトのドーピングを用いることもできる。グラファイトトップコンタクトの主なキャリアはドーピングにより正孔又は電子のいずれかとして制御することができる。グラファイトトップコンタクト中及び半導体ナノワイヤー中、特に金属触媒粒子の下の領域でドーピングの種類を同じにすることが好ましく、これにより、ポストアニール処理後により良好なオーム性の挙動が得られる。例えば、シェルがpドープされたコア−シェルナノワイヤーでは、トップグラファイト層のpドープが、ナノワイヤーシェルの上の金属粒子を横切るキャリアの種類と一致する。
【0130】
したがって、グラファイト層及び基板の両方がドープされ得ると理解される。いくつかの実施形態では、基板及び/又はグラファイト層は、有機又は無機分子、例えば金属塩化物(FeCl
3、AuCl
3、又はGaCl
3)、NO
2、HNO
3、芳香族分子、又は化学溶液、例えばアンモニアの吸着を含む化学的方法によってドープされる。
【0131】
基板の表面及び/又はグラファイト層は、その成長中に、置換ドーピング法により、B、N、S、又はSi等のドーパントを導入することによりドープすることもできる。
【0132】
本発明のナノワイヤーは、公知の方法、例えば放射状エピタキシャルシェル(radial epitaxial shell)によってコーティングされてもよい。例えば、真性又は外因性のコアナノワイヤーを他方の種類の半導体のシェルでコーティングすることにより、固有半導体及び外因性半導体の混合物を形成することができる。外因性及び真性の導体の混合物からより複雑なナノワイヤーを形成することもできる。例えば、絶縁性真性層を、pドープ外因性層とnドープ外因性層との間に配置することができる。したがって、pドープコアを、nドープされた外因性導体シェルを外側に備えた真性半導体シェルで覆うことができる(又はその逆)。これは、発光ダイオード及び太陽電池技術において特に用途がある。
【0133】
当業者に公知/明らかである適切な成長パラメーターを用いてMBE又は他のエピタキシャル技術(例えば、MOVPE)によりシェルコーティングを行うことができる。
【実施例1】
【0134】
グラファイト基板上に垂直ナノワイヤーを成長させるための実験方法
2量体と4量体の比率を固定することが可能なGaデュアルフィラメントセル、InSUMOデュアルフィラメントセル、及びAsバルブドクラッカーセルを備えたVarian Gen II Modular分子線エピタキシー(MBE)システム中でナノワイヤーを成長させた。本研究では、ヒ素の主な分子種はAs
4とした。ナノワイヤーの成長はキッシュグラファイトフレーク上で又は酸化シリコンウェーハ上に堆積させたNi又はPt上に化学蒸着(CVD)技術により直接成長させたグラフェン膜(1〜7単分子層厚)上で行う。2つの異なる方法で試料を作製した。第1の方法では、試料をイソプロパノールで清浄化した後、窒素を用いてブロードライし、次いでシリコンウェーハにIn結合させた。第2の方法では、電子ビーム蒸着装置チャンバー中で、第1の方法を用いて作製した試料上に約30nm厚のSiO
2層を堆積させ、その後、電子ビームリソグラフィ及びプラズマエッチングを用いてSiO
2に直径約100nmの孔を作った。
【0135】
次いで、ナノワイヤー成長のためのMBEシステム中に試料をローディングした。次いで、基板温度を、GaAs/InAsナノワイヤー成長に適した温度、すなわち、それぞれ610℃/450℃に上昇させた。Asのシャッターは閉めつつ、Ga/Inフラックス及び所望の液滴サイズに応じて、典型的には5〜10分の期間、最初にGa/Inフラックスを表面に供給して、表面上でGa/In液滴の形成を開始させた。Ga/In蒸発セルのシャッター並びにAs蒸発セルのシャッター及びバルブを同時に開くことによりGaAs/InAsナノワイヤー成長を開始させた。Ga/In蒸発セルの温度は、公称面成長速度が0.1μm/時間となるようにプリセットした。GaAsナノワイヤーの形成には1.1×10
-6TorrのAs
4フラックスを用い、一方、InAsナノワイヤーの形成にはAs
4フラックスを4×10
-6Torrに設定する。
【実施例2】
【0136】
GaAs(111)B又はSi(111)基板上で垂直GaAsナノワイヤーを成長させるための実験方法
GaAs(111)B基板上でAu触媒GaAsナノワイヤーを成長させるために、基板表面を最初に620℃で脱酸素し、次いで、MBEシステム中で原始的に平坦な表面が生じる成長条件下で60nm厚のGaAs膜を成長させた。これを電子ビーム蒸着装置に移してAu薄膜を堆積させた。次いで、ナノワイヤー成長のために試料を再度MBEシステムにローディングした。As
4をAsソースの主な分子種として用いた。6×10
-6TorrのAs
4フラックス下で、基板温度をGaAsナノワイヤー成長のために540℃に上げた。この段階で、Au薄膜はAu粒子に変わり、基板からのGaと合金化してAu−Ga液体粒子を形成した。Ga蒸発セルのシャッターを開けることによりGaAsナノワイヤー成長を開始させた。Ga蒸発セルの温度は、GaAsの公称面成長速度が0.7MLs
-1となるようにプリセットした。GaAsナノワイヤーの成長は常にGa及びAsフラックスをシャットダウンすることにより終わらせ、すぐに基板を一定の速度で室温へと下げた。
【0137】
Si(111)基板上でのGa自己触媒GaAsナノワイヤー成長では、Si基板をHF(5%)中で10秒間エッチングして天然酸化物を除去し、脱イオン水で1分間すすぎ、N
2ガスをブローすることにより乾燥し、次いでMBEチャンバー中に直接ローティングした。使用した主なAs分子種はAs
4とした。基板を一定の速度で成長温度620℃に上げた。Ga及びAsのシャッターを同時に開くことによりGaAsナノワイヤー成長を開始させた。Ga蒸発セルのシャッター並びにAs蒸発セルのシャッター及びバルブを同時に開くことによりGaAsナノワイヤー成長を開始させた。
【実施例3】
【0138】
ナノワイヤーアレイの上にグラファイト層を移すための実験方法
Cuホイル上で成長させたグラファイト層(<5層)を用いた。CVD成長中にCuホイルの両側にグラファイト層が形成されるので、一方の側に形成されたグラファイト層を酸素プラズマにより除去してCuをエッチングに露出させた。次いで、これを希釈硝酸鉄(Fe(NO
3)
3)溶液(<5%)に浸漬してCuをエッチングで完全に除去した。一晩(>8時間)エッチングした後、グラファイト層をエッチング液に浮かべ、これを脱イオン水に交換した。脱イオン水で更に複数回すすいだ後、グラファイト層を脱イオン水と共にナノワイヤーアレイ上に移した。N
2ブローを用いずにクリーンルーム内で脱イオン水を自然に乾燥させた。